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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182809
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
A01G9/14 W
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181123
(22)【出願日】2023-10-20
(62)【分割の表示】P 2019233324の分割
【原出願日】2019-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂井 義明
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
(72)【発明者】
【氏名】弓達 武志
(72)【発明者】
【氏名】宮川 沙千
(57)【要約】      (修正有)
【課題】植物栽培施設内の移動を行い易い作業車両を提供する。
【解決手段】植物栽培施設内のメイン通路と、メイン通路に交差する複数条の栽培ベッド505の間のサブ通路に二列に並設された走行レール500とを走行する作業車両であって、走行車体の前部の左右に走行レール500を検出するレール進入位置検出センサ87L,87Rを設け、左右に設けられたレール進入位置検出センサ87L,87R間の距離は、走行レール500の間の距離より大きく、進入しようとするサブ通路をメイン通路から見て、走行車体がメイン通路を右側に向かって横移動時に右側のレール進入位置検出センサ87Rが走行レール500の端部500tを検出している場合には横移動を継続し、右側のレール進入位置検出センサ87Rと左側のレール進入位置検出センサ87Lの双方が端部500tを検出しなくなると次のサブ通路の進入位置に達したと判定され、走行車体を停止させる。
【選択図】図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培施設内のメイン通路(504)と、メイン通路(504)に交差する複数条の栽培ベッド(505)の間のサブ通路(509)に二列に並設された走行レール(500)と、を走行する作業車両であって、
走行車体(3)の前部の左右に走行レール(500)を検出するレール進入位置検出センサ(87L,87R)を設け、
左右に設けられたレール進入位置検出センサ(87L,87R)の間の距離は、二列に並設された走行レール(500)の間の距離より大きく、
進入しようとするサブ通路(509)をメイン通路(504)から見て、走行車体(3)がメイン通路(504)を右側に向かって横移動時に右側のレール進入位置検出センサ(87R)が略U字形状に形成した走行レール(500)の端部(500t)を検出している場合には横移動を継続し、その後、右側のレール進入位置検出センサ(87R)と左側のレール進入位置検出センサ(87L)の双方が走行レール(500)の端部(500t)を検出しなくなると次のサブ通路(509)の進入位置に達したと判定され、前記走行車体(3)を停止させることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
走行車体(3)の前部には車軸線(P1)に対して回転軸を所定角度傾斜させたフリーローラが車軸外周に沿って複数設ける第1多方向移動車輪(404L,404R)を設け、
走行車体(2)の後部には車軸線(P1)に対して回転軸を所定角度傾斜させたフリーローラが車軸外周に沿って複数設ける第2多方向移動車輪(408L,408R)を設け、
第1多方向移動車輪(404L,404R)と第2多方向移動車輪(408L,408R)の間に前記走行車体(3)の荷重を支持するためで、かつ、走行車体(3)の進行方向の全方向に従動可能な従動輪多方向従動車輪(405L,405R)を設け、
第1多方向移動車輪(404L,404R)及び第2多方向移動車輪(408L,408R)の下端よりも上方に位置する走行レール(500)上を走行する際に用いられるレール走行専用ローラを設けたことを特徴する請求項1記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物栽培施設において、収穫作物を収納する収納バケットを運搬する運搬車両等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無人の農耕車両を予定コースに沿って移動させるため、予定コースに沿うガイド手段として磁気テープを用い、農耕車両側の非接触式の磁気スイッチセンサで検出する構成がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-9790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成によると、コントローラは磁気スイッチセンサの検出結果に基づいて予定コースに対する進行方向のズレを判断し、操舵機構に修正出力できる。しかしながら、植物栽培施設における作業車両においては、施設内通路が平面視縦横に交差して形成されるので、この交差地点で方向変換を伴い、予定コースのガイド機能だけでは円滑な作業を行い難い。
【0005】
このため、この発明は、植物栽培施設内の移動を行い易い作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、植物栽培施設内のメイン通路(504)と、メイン通路(504)に交差する複数条の栽培ベッド(505)の間のサブ通路(509)に二列に並設された走行レール(500)と、を走行する作業車両であって、
走行車体(3)の前部の左右に走行レール(500)を検出するレール進入位置検出センサ(87L,87R)を設け、
左右に設けられたレール進入位置検出センサ(87L,87R)の間の距離は、二列に並設された走行レール(500)の間の距離より大きく、
進入しようとするサブ通路(509)をメイン通路(504)から見て、走行車体(3)がメイン通路(504)を右側に向かって横移動時に右側のレール進入位置検出センサ(87R)が略U字形状に形成した走行レール(500)の端部(500t)を検出している場合には横移動を継続し、その後、右側のレール進入位置検出センサ(87R)と左側のレール進入位置検出センサ(87L)の双方が走行レール(500)の端部(500t)を検出しなくなると次のサブ通路(509)の進入位置に達したと判定され、前記走行車体(3)を停止させることを特徴とする作業車両とした。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、走行車体(3)の前部には車軸線(P1)に対して回転軸を所定角度傾斜させたフリーローラが車軸外周に沿って複数設ける第1多方向移動車輪(404L,404R)を設け、
走行車体(2)の後部には車軸線(P1)に対して回転軸を所定角度傾斜させたフリーローラが車軸外周に沿って複数設ける第2多方向移動車輪(408L,408R)を設け、
第1多方向移動車輪(404L,404R)と第2多方向移動車輪(408L,408R)の間に前記走行車体(3)の荷重を支持するためで、かつ、走行車体(3)の進行方向の全方向に従動可能な従動輪多方向従動車輪(405L,405R)を設け、
第1多方向移動車輪(404L,404R)及び第2多方向移動車輪(408L,408R)の下端よりも上方に位置する走行レール(500)上を走行する際に用いられるレール走行専用ローラを設けたことを特徴する請求項1記載の作業車両とした。
【発明の効果】
【0008】
作業車両の停止位置制御の精度を向上するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明における実施の形態の運搬車両の外観を示す斜視図である。
図2】本発明における実施の形態の運搬車両の正面図である。
図3】本発明における実施の形態の運搬車両の側面図である。
図4】(a)本発明における実施の形態の下部支持搬送装置の支持搬送機構の概略平面図、(b)本発明における実施の形態の下部支持搬送装置の支持搬送機構の概略側面図である
図5】(a)本発明における実施の形態の支持姿勢の回動支持部材の正面図、(b)本発明における実施の形態の非支持姿勢の回動支持部材の正面図である。
図6】本発明における実施の形態の下部支持搬送装置の動作を説明する概略平面図である。
図7】本発明における実施の形態の下部支持搬送装置の動作を説明する概略平面図である。
図8】(a)、(b)本発明における実施の形態の収容空間の前部における収容部の動作を説明する概略正面図である。
図9】(a)、(b)本発明における実施の形態の収容空間の後部における収容部の動作を説明する概略正面図である。
図10】(a)、(b)、(c)本発明における実施の形態の収容部の他の動作を説明する概略側面図及び概略正面図である。
図11】(a)、(b)本発明における実施の形態の収容部の他の動作を説明する概略側面図及び概略正面図である。
図12】(a)本発明における実施の形態の収容部の他の動作を説明する概略側面図及び概略正面図、(b)本発明における実施の形態の収容部の他の動作を説明する概略側面図である。
図13】本発明における実施の形態の運搬車両の概略底面図である。
図14】本発明における実施の形態の第2多方向移動車輪周辺の要部側面図である。
図15】本発明における実施の形態の多方向従動車輪の概略斜視図である。
図16】本発明における実施の形態の運搬車両が走行レール上に乗り上げる様子を説明する説明図である。
図17】本発明における実施の形態の運搬車両が走行レール上を走行する様子を説明する説明図である
図18】本発明における実施の形態の運搬車両の制御装置のブロック図である。
図19】本発明における実施の形態の運搬車両が使用される栽培施設の一例を示す概略平面図である。
図20】本発明における実施の形態の走行レールに乗り入れ前の運搬車両を説明する略概平面図である。
図21】(a)本発明における実施の形態の横移動する運搬車両を説明する概略平面図、(b)その正面概略正面図である。
図22】(a)~(e)本発明における実施の形態の横移動する運搬車両を説明する概略平面図である。
図23】(a)、(b)本発明における実施の形態の走行レール上の運搬車両を説明する略概平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態にかかる収容容器運搬車両(以下、運搬車両)1の外観を示す斜視図である。ここで、図1に示されるXYZ直交座標系のX方向を運搬車両1の前方、-X方向を後方、Y方向を左方、-Y方向を右方、Z方向を上方、-Z方向を下方とする。また、以下の説明では、運搬車両1によって、収納容器(以下、収納バケット)に収納された果菜類等の作物を運搬する場合を想定しており、果菜類の作物として、トマトを想定しており、収納バケットにはトマトを並べて収容でき、収納バケットは多段に積み重ね可能に形成される。
【0012】
図1に示されるように、運搬車両1は、収納バケットAを複数収容可能な収容部31が設けられた走行車体3を備え、駆動部2を走行車体3に積載して走行可能に構成されている。
【0013】
駆動部2は、運搬車両1の各種機構を制御する制御装置C及び電力供給を行うバッテリEが搭載された略直方体形状の縦長い筐体21を備えている。筐体21内部にはバッテリE、制御装置C、走行駆動モータM等が搭載されている。
【0014】
バッテリEと走行駆動モータM等を筐体21の後下部に配設したことにより、運搬車両1の重心を低く抑えることができるため安定走行が可能となり、下方に設けられた走行車体3の走行機構4に電力を供給しやすい。
【0015】
走行車体3は、地上及び栽培施設内に敷設された走行レール500上を走行可能とする走行機構4を備えている。なお、走行機構4については、後述する。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態にかかる運搬車両1の正面図であり、図3は、本発明の実施の形態にかかる運搬車両1の側面図である。
【0017】
走行車体3の収容部31は、図2に示されるように、走行車体3の左右両側に設けられて走行車体3の側方を形成する左右の車体フレーム3L,3Rの内側に、複数の収納バケットAを収容可能な収容空間S2を設けて構成されており、この収容空間S2に収納バケットAが複数収容可能となっている。
【0018】
収容部31の収容空間S2には、バケット台B上に積み上げられた前後2列の収納バケットA(A1~A12、A13~A24)を、走行車体3の正面側に設けられた開口部である収容開口部S1から取り込み又は送り出し、走行車体3内の収容空間S2に収容又は送出し排出可能となっている。このとき、前列に積み上げられた12の収納バケットA(A1~A12)は、収容空間S2の前部S2fに、後列に積み上げられた12の収納バケットA(A13~A24)は収容空間S2の後部S2rに収まるように収容される。また、収容空間S2の下部は、収納バケットAを落下排出可能な排出開口部S3が設けられている。これにより、収容部31は、排出開口部S3から収納バケットA(A1~A24)を迅速かつ容易に落下排出可能となっている。このように構成された運搬車両1は、収容開口部S1から複数の収納バケットAを、機体を前進しながら収容空間S2内に取り込むことが可能となっている。これにより、作業能率が大幅に向上する。
【0019】
また、走行車体3の前部には、適宜の位置に、収容部31に収容された収納バケットAを検知する収納バケット検知センサ83が配設されており、これにより、制御装置Cは、収容部31内における各収納バケットAの位置の情報を取得し、収容部31内の収納バケットAの配置状態を判断することができるように構成されている。
【0020】
収容部31は、収容空間S2内で収納バケットAを支持する支持機構であり、かつ、収納バケットAを搬送する下部支持搬送機構312を備えており、この下部支持搬送機構312は、図2及び図3に示されるように、収容空間S2内の下部に配設され、収容空間S2の最下部に位置する収納バケットAを前後方向に支持搬送可能に構成されている。
【0021】
また、収容部31は、前記収容空間S2内で積み上げられた収納バケットAのうち、任意の収納バケットを挟持して上下方向に搬送可能とする挟持リフト機構を備えており、この挟持リフト機構は、収容空間S2内の前部S2fに配設され、収容空間S2の前部S2fに位置する任意の収納バケットAを挟持して上下方向に搬送可能に構成された前部挟持リフト機構313と、収容空間S2内の後部S2rに配設され、収容空間S2の後部S2rに位置する任意の収納バケットAを挟持して上下方向に搬送可能に構成された後部挟持リフト機構314と、を備えて構成されている。また、下部支持搬送装置312は、それぞれ、走行車体3の収容空間S2内に取り込まれた収納バケットAを支持搬送する機構である支持搬送機構5を備えている。
【0022】
図4(a)は、下部支持搬送装置312の支持搬送機構5の概略平面図であり、図4(b)は、下部支持搬送装置312の支持搬送機構5の概略側面図である。
【0023】
次に、下部支持搬送装置312が備えている支持搬送機構5の構成について説明する。支持搬送機構5は、収容空間S2内において、収納バケットAを支持し、前後方向への搬送を可能とするため、収容空間S2内の前後方向に延びる左右の回動軸51(51L,51R)を備え、この回動軸51(51L,51R)の一端に軸回動用モータ52(52L,52R)が連結され、この軸回動用モータ52(52L,52R)の駆動によって、回動軸51が正逆に回動可能となっている。さらに、左右の回動軸51(51L,51R)をそれぞれ回動可能に支持し、収容空間S2内において前後方向に延びる左右の支持フレーム53(53L,53R)を備え、この支持フレーム53(53L,53R)は、長手方向に沿って、複数の回動支持部材54(54L,54R)が等間隔で回動自在に取り付けられている。
【0024】
この回動支持部材54(54L,54R)は、それぞれ、収容空間S2内で左右一対となるように設けられており、左右両側から収納バケットAを支持するように構成されている。また、回動支持部材54(54L,54R)は、それぞれ、支持状態にある収納バケットを搬送するため回動可能に設けられたローラ部541(541R,541L)と、両端が支持フレーム53(53L,53R)を貫通して軸支されている回転軸542(542L,542R)を備えており、該回転軸542(542L,542R)は、それぞれ、内側端にローラ部541(541R,541L)が設けられ、内側端から支持フレーム53(53L,53R)を挟んで外側端に、外側スプロケット544(544R,544L)が設けられ、回転軸542(542L,542R)の外側端よりやや内側の位置に内側スプロケット543(543L,543R)が設けられている。
【0025】
図4(a)に示されるように、左右の支持フレーム53(53L,53R)の後端には、それぞれ、ローラ部541(541R,541L)を回動するためのチェーン用モータ55(55L,55R)が設けられている。
【0026】
チェーン用モータ55(55L,55R)と隣接する最も後端に配設された回動支持部材54(54L,54R)の内側スプロケット543(543L,543R)は、チェーン用モータ55(55L,55R)と無端チェーン56(56L,56R)で連結されており、さらに、複数の回動支持部材54(54L,54R)は、後端の回動支持部材54(54L,54R)から前端の回動支持部材54(54L,54R)に至るまで、隣接する回動支持部材54(54L,54R)の、外側スプロケット544(544R,544L)同士と、内側スプロケット543(543L,543R)同士が、交互に、無端チェーン56(56L,56R)で連結されており、その結果、チェーン用モータ55(55L,55R)が駆動すると、駆動力が、支持フレーム53(53L,53R)の最も後端に配設された回動支持部材54(54L,54R)から最も前端に配設された回動支持部材54(54L,54R)まで伝達される。これにより、複数の回動支持部材54(54L,54R)のローラ部541(541R,541L)が同期しながら、回転軸542(542L,542R)を中心として、チェーン用モータ55(55L,55R)の駆動に応じて、時計回り又は反時計回りに回動するように構成されている。これにより、支持搬送機構5は、回動支持部材54(54L,54R)の回動によって、回動支持部材54(54L,54R)に支持された収納バケットAを前方向及び後方向に切替て搬送できるように構成されている。
【0027】
図5(a)は、支持姿勢の回動支持部材54を示しており、図5(b)は、非支持姿勢の回動支持部材54を示している。支持搬送機構5は、軸回動用モータ52(51L,52R)の駆動によって回転軸542(542L,542R)が回動すると、これと連動して回動支持部材54(54L,54R)のローラ部541(541R,541L)が、回動軸51(51L,51R)を中心として、上下に回動するように構成されている。その結果、回動支持部材54(54L,54R)を、回転軸542(542L,542R)が水平となった支持姿勢と、回転軸542(542L,542R)が傾斜した非支持姿勢とに切り替えることが可能となっている。
【0028】
図5(a)に示されるように、回動支持部材54の支持姿勢においては、ローラ部541(541R,541L)が首を持ち上げるようにして収容空間S2の内側へと張り出し、これにより、収納バケットAの外枠に下方から当接し、左右両側から収納バケットAを支持するように構成されている。図5(b)に示されるように、左右のローラ部541(541R,541L)の非支持姿勢においては、回動軸51(51L,51R)の回動によって、左右のローラ部541(541R,541L)が首を垂れるように下方に回動した状態となり、左右のローラ部541(541R,541L)の間に、収納バケットAの外枠に干渉しない左右幅の空間が確保されるように構成されている。このようにして、左右の回動支持部材54(54L,54R)は、支持姿勢においては収納バケットAを支持し、非支持姿勢においては収納バケットAに干渉しない間隔を設けて構成されており、これにより、非支持姿勢から支持姿勢に切り替えることで、収容空間S2内に位置する収納バケットAを持ち上げて支持したり、支持姿勢から非支持姿勢に切り替えることで、支持していた収納バケットAを解放して載置したり、非支持姿勢の状態において、収納バケットAを走行車体3の収容空間S2に収容する場合や、排出開口部S3から収納バケットAを落下排出し、さらに、走行車体3の走行によって収容空間S2から収納バケットAを外部に移動させる場合に、左右のローラ部541(541R,541L)の間を収納バケットAが通過できるように構成されている。
【0029】
図6及び図7は、下部支持搬送装置312の概略平面図である。図6及び図7に示されるように、走行車体3内における収容空間S2の前後幅は、前後2段に積み上げられた収納バケットAを収容することができる長さに設けられている。また、前記のように、下部支持搬送装置312のチェーン用モータ55(55L,55R)の正転又は逆転駆動に応じて、回動支持部材54(54L,54R)に支持された収納バケットAを前後方向に搬送できるように構成されており、チェーン用モータ55(55L,55R)が正転駆動すると、図6に示されるように、収納バケットAは、左右のローラ部541(541R,541L)の回動動作によって、前方(矢印方向)へと搬送可能となっている。これにより、後方の収容空間S2の後部S2rに位置する収納バケットAを、前方の収容空間S2の前部S2fへと搬送することが可能となっている。
【0030】
また、チェーン用モータ55(55L,55R)が逆転駆動すると、図7に示されるように、収納バケットAは、左右のローラ部541(541R,541L)の回動動作によって、後方(矢印方向)へと搬送可能となっており、これにより、前方の収容空間S2の前部S2fに位置する収納バケットAを、後方の収容空間S2の後部S2rへと搬送することが可能となっている。
【0031】
収容部31は、収納バケットA(A1~A24)を収容空間S2内に収容した後、下部支持搬送装置312(312L,312R)における左右の回動支持部材54(54L,54R)を非支持姿勢から支持姿勢に切り替えることで、収納バケットA(A1~A24)を回動支持部材54(54L,54R)によって支持し、走行車体3内へ収納バケットA(A1~A24)を搭載するよう構成されている。これにより、下部支持搬送装置312(312L,312R)における左右の回動支持部材54(54L,54R)の支持姿勢を維持しながら走行車体3が走行することで、走行車体3の収容空間S2内に搭載した複数の収納バケットAを運搬可能となっている。その結果、運搬車両1は、複数の収納バケットAを搭載して走行することで、従来よりも収穫した作物の収容量を増加できるため、収納バケットの入れ替えに要する負担が大幅に軽減されるとともに、作業能率を向上できる。
【0032】
収容空間S2の前部S2fにおける収容部31の左右両側には、左右の前部挟持リフト機構313(313L,313R)が設けられている。この左右の前部挟持リフト機構313(313L,313R)は、それぞれ、電動スライダによって上下動可能に構成された上下動機構61L,61Rと、上下動機構61L,61Rに取り付けられた左右の挟持爪62L,62Rを備えている。
【0033】
左右の挟持爪62L,62Rは、制御装置Cの制御によって開閉動作を行い、閉状態においては、図8(a)に示されるように、先端が鉛直方向を向いて収納されているが、開状態においては、図8(b)に示されるように、先端を収容空間S2の内側へと向け、収納バケットAの外枠の両側から係合し、収納バケットAを挟持するように構成されている。
【0034】
このように構成された前部挟持リフト機構313(313L,313R)は、収容空間S2内の前部S2fにおいて、左右の挟持爪62L,62Rをスライド移動するとともに開動作する高さ位置を選択することにより、収容空間S2の前部S2fに積み上げられた収納バケットA(A1~A12)のうち、任意の収納バケットAを挟持して上下方向に搬送可能となっており、さらに、収納バケットAを挟持している状態から、左右の挟持爪62L,62Rを閉動作することにより、収納バケットAを解放して載置することが可能となっている。
【0035】
次に、下部支持搬送装置312(312L,312R)及び前部挟持リフト機構313(313L,313R)の連動によるバケットAの前後入れ替え搬送動作について説明する。まず、制御装置Cの制御によって、前部挟持リフト機構313(313L,313R)は、収納バケットAを挟持した状態で、上下動機構61L,61Rを駆動し、上方に左右の挟持爪62L,62Rをスライド移動することにより、図8(b)に示されるように、下部支持搬送装置312(312L,312R)によって支持されている最下段の収納バケットA(A1)から、2段目に位置するバケットA(A2)を分離して持ち上げる。
【0036】
これにより、収容部31は、下から2段目に位置するバケットA(A2)を分離して持ち上げた状態で、制御装置Cの制御によって、下部支持搬送装置312(312L,312R)の回動支持部材54(54L,54R)を回動し、最下段の収納バケットA(A1)を、後方へと搬送する。このようにして、収容部31は、収容空間S2の前部S2fに積み上げられた収納バケットAを、前部S2fから後部S2rへと移動できるように構成されている。
【0037】
図9(a)及び図9(b)に示されるように、収容空間S2の後部S2rにおける収容部31の両側には、前部S2fと同様に、左右の後部挟持リフト機構314(314L,314R)が設けられている。この左右の後部挟持リフト機構314(314L,314R)は、それぞれ、電動スライダによる上下動機構71L,71Rと、上下動機構71L,71Rに取り付けられた左右の挟持爪72L,72Rを備えている。このように構成された後部挟持リフト機構314(314L,314R)は、前部挟持リフト機構313(313L,313R)と同様の基本動作が可能となっている。
【0038】
次に、図10に基づいて、収納バケットAを積み重ねて回収する動作について説明する。4段に積み重ねられた収納バケットA(A13~A16)を収容空間S2の前部S2fから搬送し又は走行車体3の前進によって後部S2rに位置させ、走行車体3の前進によって別の4段の収納バケットA(A1~A4)を前部S2fに位置させる(図10(a))。次いで、収容空間S2の後部S2r側の収納バケットA(A13~A16)を後部挟持リフト機構314(314L,314R)によって上方へ挟持搬送し、収納バケットAの4段分の高さに上昇させる。そして、後部S2rの空いた空間部に前部S2fの収納バケットA(A1~A4)は、チェーン用モータ55(55L,55R)が逆転駆動する下部支持搬送装置312によって搬送され、搬送された収納バケットA(A1~A4)は下部支持搬送装置312の非支持姿勢への切替えによって接地状態で待機する(同図(b))。また、上方に挟持搬送されている収納バケットA(A13~A16)を下降することで全体8段の収納バケットA(A1~A4,A13~A16)を積み重ねることができ、さらに、後部挟持リフト機構314(314L,314R)を下げて最下の収納バケットA1を係合する(同図(c))。このようにすると8段の収納バケットA(A1~A4,A13~A16)を同時に上昇でき、下部支持搬送装置312を支持姿勢とすると収容空間S2の後部S2rに収容できる。又下部支持搬送装置312で積み重ねた状態で前部S2fに送って収容することもできる。さらにはそのまま送り出して機外に搬送することもできる。
【0039】
次いで、図11に基づいて、収納バケットAを所定複数段に区分して下降させる動作について説明する。収容空間S2の前部S2fと後部S2rの両方に収納バケットAを積み重ねている場合は、前部S2f側の収納バケットA(A1~A12)から先に下降させ、その後に後部S2rの収納バケットA(A13~A24)を下降する。前部挟持リフト機構313(313L,313R)が下から5番目の収納バケットA5を係止して持ち上げると、最下部から4段目の収納バケットA(A1~A4)は分離して残される。この残された収納バケットA(A1~A4)を、収容空間S2の下部の排出開口部S3から下方に排出できる。すなわち、非駆動の下部支持搬送装置312(312L,312R)の回動支持部材54を支持姿勢から非支持姿勢に切り換えることにより、4段の収納バケットA(A1~A4)を下方に降ろすことができる(図11(a))。そして、走行車体3を後退させ適宜に位置で停止させた後、前部挟持リフト機構313(313L,313R)を下降して最下位の収納バケットA5は、非駆動の下部支持搬送装置312(312L,312R)の回動支持部材54(54L,54R)位置に達して前部挟持リフト機構313(313L,313R)の支持から解放すると、収納バケットA(A5~A12)の8段が回動支持部材54(54L,54R)で受けられる(同図(b))。この状態から部支持搬送装置312(312L,312R)の回動支持部材54を支持姿勢から非支持姿勢に切り換えると、収納バケットA(A5~A12)は支持が解放されて下方に落下する。このように、多段に積み重ねられた収納バケットA(A1~A12)を分割して落下排出することができ、一挙に落下排出する場合に対して衝撃を緩和し、収納バケットAや収納果実を損傷することなく作業できる。
【0040】
なお、収容空間S2の前部S2fが空になった状態で、後部S2rに積み重ねられた収納バケットA(A13~A24)を上記同様に分割して落下排出するものである。
【0041】
次いで、図12に基づき、多段に積み重ねられた収納バケットAを走行車体3の正面側の収容開口部S1から排出する動作について説明する。収容部31の収容空間S2の前部S2fに収納バケットA(A1~A12)を、後部S2rに収納バケットA(A13~A24の各12段ずつ収容され、そして非駆動の下部支持搬送装置312(312L,312R)の支持姿勢にある回動支持部材54によって支持されている。なお、前部挟持リフト機構313(313L,313R)及び後部挟持リフト機構314(314L,314R)は非挟持状態とされ、12段の収納バケットA(A1~A12,A13~A24)は下部支持搬送装置312(312L,312R)に支持されている(図12(A))。
【0042】
上記の収納バケット収容状態であって、例えば、選果場において後部S2rの収納バケットA(A13~A24)を先に取出す必要がある場合に、下部支持搬送装置312(312L,312R)を駆動、すなわちチェーン用モータ55(55L,55R)を正転駆動すると、前部S2fの収納バケットA(A1~A12)を走行車体3の正面側の収容開口部S1からバケット台B上に移動させると共に、後部S2rの収納バケットA(A1~A12)を前部S2f側に移動する(同図(B))。このように前部S2fに位置させることによって、バケット一段取出しなど作業性を向上できる。
【0043】
下部支持搬送装置312(312L,312R)を設けることによって、収納バケットAを段積み状態で収容部31に取り入れ動作したり、逆に排出動作することができる。また、前部挟持リフト機構313(313L,313R)及び後部挟持リフト機構314(314L,314R)の任意高さでの収納バケットAの挟持動作と相まって、任意の段の収納バケットAを収容部31に取り入れ動作したり、逆に排出動作することができる。
【0044】
図13に基づき、運搬車両の走行機構について詳述する。
【0045】
なお、図13においては図面の左側が運搬車両1の前側であり、図面の右側が運搬車両1の後側である。ここで、左右の車体フレーム3L,3Rの下部には、走行車体3の左右端部よりも内側寄りに、車両の前後方向に伸びる強化フレームである梁部320L,320Rが一体として取り付けられており、この左右一対の梁部320L,320Rによって、左右の車体フレーム3L,3Rの剛性を高めるように構成されている。
【0046】
左右の車体フレーム3L,3Rの下部に設けられた走行機構は、走行車体3の前側から順に、レール案内ローラ401L,401R、第1レール走行ローラ402L,402R、第1レール支持ローラ403L,403R、第1多方向移動車輪404L,404R、多方向従動車輪405L,405R、第2レール走行ローラ406L,406R、第2レール支持ローラ407L,407R、第2多方向移動車輪408L,408R、第3レール走行ローラ409L,409Rが、それぞれ、走行車体3の中心線Clに対して左右対称に配設されている。図13に示した重心点Gは、運搬車両1の重心の位置(以下、重心点Gという。)を表している。
【0047】
運搬車両1は、第1多方向移動車輪404L,404Rを前輪、第2多方向移動車輪408L,408Rを後輪とする四輪駆動で地上を走行するように構成されており、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rは接地輪となっている。多方向従動車輪405L,405Rは、運搬車両1の荷重を支持するための従動輪である。
【0048】
第1多方向移動車輪404L,404R、多方向従動車輪405L,405R及び第2多方向移動車輪408L,408Rは、左右の車体フレーム3L,3R下部において、左右それぞれ、梁部320L,320Rよりも外側に配設されており、前後方向に一直線上並ぶように配設されている。多方向従動車輪405L,405Rは、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rの間に配設される。ここで、二列に並設された走行レール500の端部500tは、温水を循環するために略U字形状に形成されており、この端部から運搬車両1が走行レール500上に進入する。したがって、左右の第1多方向移動車輪404L,404R、多方向従動車輪405L,405R及び第2多方向移動車輪408L,408Rは、それぞれ、二列に並設された走行レール500の左右幅Dよりも左右方向に離間して配設されており、これにより、運搬車両1の走行レール500上への乗り入れが可能となっている。
【0049】
なお、図13には、図示されていないが、走行車体3の前部には、走行レール500の端部500tを検知するレール進入位置検知センサ87と、バケット台Bを検知するバケット台検知センサ85が適宜の位置に設けられている。
【0050】
レール案内ローラ401L,401R、第1レール走行ローラ402L,402R、第1レール支持ローラ403L,403R、第2レール走行ローラ406L,406R、第2レール支持ローラ407L,407R、第3レール走行ローラ409L,409Rは、運搬車両1が走行レール500上を走行する際に用いられるレール走行専用ローラである。したがって、これらのレール走行専用ローラは、いずれも、運搬車両1が走行レール500外を走行しているとき、接地しておらず中空に位置している。すなわち、これらのレール走行専用のローラの下端は、いずれも、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rの下端よりも上方に位置するように配設されている。
【0051】
また、運搬車両1が走行レール500上を走行しているときは、走行車体3は、第1レール走行ローラ402L,402R、第2レール走行ローラ406L,406R、第3レール走行ローラ409L,409Rに走行レール500上で支持されて、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rは接地せず、中空に位置している。
【0052】
第1多方向移動車輪404L,404Rの前方に、第1レール走行ローラ402L,402Rを配し、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rの間に、第2レール走行ローラ406L,406Rを配し、第2多方向移動車輪408L,408Rの後方に、第3レール走行ローラ409L,409Rを配した構成により、走行レール500上を走行する運搬車両1の荷重を良好に分散して走行レール500に支持させることができ、走行レール500の撓みを軽減できる(図17参照。)。
【0053】
運搬車両1の走行機構について、以下さらに詳しく説明する。
【0054】
左右のレール案内ローラ401L,401Rは、走行車体3の前端部に設けられ、走行車体3に対して上下方向の回転軸を有する、すなわち横回転の従動ローラである。
【0055】
左右のレール案内ローラ401L,401Rは、走行レール500と略同一の高さとなるように設けられており、これにより、二列に並設された走行レール500の左右側部と接触すると摩擦力により回転し、運搬車両1を走行レール500に沿って案内し、走行レール500の伸長方向に対する左右方向の位置ずれを防止し、運搬車両1の進行方向が走行レール500から外れることを防止する機能を果たす。
【0056】
左右のレール案内ローラ401L,401Rの配設間隔は、二列に並設された走行レール500の左右幅Dよりも、広い間隔で設けられている。これにより、運搬車両1は、走行レール500への進入時に、走行レール500に対する運搬車両1の位置が左右にずれていたとしても、走行レール500に接触した左右のレール案内ローラ401L,401Rが運搬車両1の進行方向を案内することで、左右方向の位置すれを所定範囲許容しながら走行レール500上へ乗り上げることが可能となっており、その結果、走行レール500の伸長方向に対する運搬車両1の進行方向の左右の位置ずれを軌道修正しながら、走行レール500に安定して乗り上げることができる。その結果、走行レール500への円滑な進入が可能となり、作業効率が向上する。
【0057】
第1レール走行ローラ402L,402Rは、走行車体3の前部に配設され、走行車体3に対して左右方向の回転軸を有する、すなわち縦回転の駆動ローラであり、制御装置Cの制御により、正逆回転可能に設けられている。第1レール走行ローラ402L,402Rは、運搬車両1の走行レール500の進入時及び走行時に、走行レール500上で、走行車体3を支持するとともに、回転駆動によって走行車体3に推進力を付与する機能を果たす。特に、運搬車両1の走行レール500の進入する際、第1レール走行ローラ402L,402Rが走行車体3の前部に配設されていることにより、走行レール500上へスムーズに乗り上げることができる。また、第1レール走行ローラ402L,402Rが正逆回転可能に設けられていることにより、走行レール500への運搬車両の乗り降りの際、第1多方向移動車輪404L,404Rが接地していなくても、十分な駆動力を得ることができる。
【0058】
第1レール走行ローラ402L,402Rは、左右それぞれ、ベベルギア402L1,402R1を介して、レール走行伝動モータ402L2,402R2から動力が伝達されて回転駆動するよう構成されている。ここで、ベベルギア402L1,402R1を用いることにより、直線的に動力伝達する構成よりも左右幅を抑え、収容空間S2内や走行車体3の外方への出っ張りを防ぐように構成されている。また、第1レール走行ローラ402L,402Rは、梁部320L,320Rの下部に設けられて、運搬車両1の荷重に良好に耐えながら支持できるよう構成されている。
【0059】
第1レール走行ローラ402L,402Rの前後方向における同一直線状には、左右それぞれ、第2レール走行ローラ406L,406R、第3レール走行ローラ409L,409Rが配設されており、第2レール走行ローラ406L,406Rは、走行車体3の後部に、第3レール走行ローラ409L,409Rは、走行車体3の後端部に配されている。
【0060】
第2レール走行ローラ406L,406R、第3レール走行ローラ409L,409Rは、左右方向に回転軸を有する、すなわち縦回転の回転自在な従動ローラであり、運搬車両1が走行レール500上を走行する際に、走行車体3を支持するとともに、走行レール500との摩擦力を低減する機能を果たす。
【0061】
第1レール走行ローラ402L,402R、第2レール走行ローラ406L,406R、第3レール走行ローラ409L,409Rは、前後方向に一直線上に配設され、梁部320L,320Rの下部に設けられている。これにより、運搬車両1の荷重に良好に耐えながら支持でき、かつ、梁部320L,320Rの下部に設けられたことにより、走行レール500走行時における接地面積の減少による負荷の増大に対し、左右の車体フレーム3L,3Rの変形を好適に防止できる。
【0062】
第3レール走行ローラ409L,409Rには、回転検出センサ86であるロータリエンコーダ(図13において図示省略)が設けられており、第3レール走行ローラ409L,409Rの回転数を検出可能となっている。この回転検出センサ86の検出情報を制御装置Cが取得することで、運搬車両1の走行距離が計測できるようになっており、加えて、運搬車両1の後部が走行レール500上に乗っているか否かを判断可能となっている。
【0063】
ここで、駆動ローラに回転検出センサ86を配設すると、空滑りした際に、回転数と実際の走行距離に誤差が生じるが、従動ローラである第3レール走行ローラ409L,409Rに回転検出センサ86を配設したことにより、より正確に走行距離を計測できる。
【0064】
第1レール支持ローラ403L,403Rは、走行車体3に対して上下方向の回転軸を有する、すなわち横回転の回転自在な従動ローラであり、第1レール支持ローラ403L,403Rの左右の配設間隔は、左右のレール案内ローラ401L,401Rの左右の配設間隔よりもやや狭く設けられており、二列に並設された走行レール500の左右幅Dと略同一の幅となるよう離間して配設されている。
【0065】
第1レール支持ローラ403L,403Rは走行車体3の前部に設けられ、運搬車両1が走行レール500上を走行するとき、二列に並設された走行レール500の両側に当接して、走行車体3前部の左右の位置ずれを良好に防止する。走行車体3後部には、第1レール支持ローラ403L,403Rと同様の構成で、第2レール支持ローラ406L,406Rが設けられており、走行車体3後部の左右の位置ずれを良好に防止する。
【0066】
このような構成により、運搬車両1が走行レール500を走行しているとき、第1レール支持ローラ403L,403R及び第2レール支持ローラ406L,406Rが、走行レール500の伸長方向に対する左右の位置ずれを良好に防止しながら運搬車両1の走行方向を案内する。その結果、運搬車両1は、二列に並設された走行レール500間に配置された収納バケットA(A1~A8)を正確に取り込むことが可能となっている(図16参照)。
【0067】
走行車体3は、四輪駆動式の前輪としての機能を果たす第1多方向移動車輪404L,404Rと、後輪としての機能を果たす第2多方向移動車輪408L,408Rとを備えており、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rは接地輪となっている。
【0068】
第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rは、左右それぞれが独立して駆動可能に設けられており、制御装置Cが、左右の第1多方向移動車輪404L,404Rと左右の第2多方向移動車輪408L,408Rのそれぞれの回転方向及び回転速度を制御することにより、走行車体3は全方向へ移動可能となっている。
【0069】
具体的には、第1多方向移動車輪404L,404Rは、走行車体3の前部において左右方向に伸びる車軸線P1上に車輪の回転軸を有している。第1多方向移動車輪404L,404Rの車輪の構成は、一般にメカナムホイールと呼ばれるものであり、車軸線P1に対して回転軸を所定角度傾斜させたフリーローラが、車輪外周に沿って複数(本実施形態では、12輪)設けられている。
【0070】
第2多方向移動車輪408L,408Rは、走行車体3の後部において左右方向に伸びる車軸線P3上に車輪の回転軸を有している。第2多方向移動車輪408L,408Rの車輪の構成は、第1多方向移動車輪404L,404Rと同様に、メカナムホイールで構成されている。
【0071】
図13に示されるように、重心点Gが、筐体21前部の下方に位置し、また、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rは、重心点Gから均等距離に配設されている。メカナムホイールは、四輪にかかる荷重がそれぞれ異なると、横移動や旋回にずれが生じるため、運搬車両1の重心から均等距離に第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rをそれぞれ配設することで、均等に荷重をかけ、運搬車両1の横移動や旋回時にスムーズに移動できる。加えて、重心点Gが、筐体21前部の下方に位置するようして収穫部2が走行車体3上に配設されているため、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rによる運搬車両1の走行がさらに安定する。
【0072】
左右の第1多方向移動車輪404L,404Rは、バッテリEから電力の供給を受ける第1電動モータ404L2、404R2から駆動力を得る。第1電動モータ404L2、404R2から第1多方向移動車輪404L,404Rへの動力伝達は、ベベルギア404L1、404R1によって、第1電動モータ404L2、404R2の回転軸の方向を90度変えて動力が伝達されるよう構成されており、これにより、多方向移動車輪404L,404Rの駆動機構の左右幅の増加を抑えて、車体フレーム3L,3R内外への張出し部分の発生を抑え、収容空間S2を確保するとともに、障害物との接触を良好に防止する構成となっている。
【0073】
第2多方向移動車輪408L,408Rは、第1多方向移動車輪404L,404Rと同様、バッテリEから電力の供給を受けて第2多方向移動車輪408L,408Rに駆動力を与える第2電動モータ408L2、408R2と、第2電動モータ408L2、408R2の回転軸の方向を90度変えて動力を第2多方向移動車輪408L,408Rに伝達するベベルギア408L1、408R1とを備えて構成されている。
【0074】
次に、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rの走行車体3への取付方法について、第2多方向移動車輪408Lを例に用いて説明する。
【0075】
なお、第2多方向移動車輪408L、第2電動モータ408L2、ベベルギア408L1は、アセンブリ部品(ASSYユニット)としてモジュール化されており、修理交換が容易となっている。同様に、第1多方向移動車輪404L,404R、第2多方向移動車輪408R、第1レール走行ローラ402L,402R、第2レール支持ローラ407L,407R、回転検出センサ86についても、それぞれ、モジュール化されている。
【0076】
図14は、第2多方向移動車輪408L周辺の要部側面図である。図14に示されるように、第2多方向移動車輪408Lは、走行車体3に取り付けられた取付連結軸410を軸として、第2多方向移動車輪408Lを軸支する取付部材411が回動可能に構成され、該取付部材411と車体フレーム3L間には、弾性部材412であるゴムが配設されている。第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408Rについても同様である。
【0077】
このような構成によって、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rに緩衝能力が付与されている。これにより、運搬車両1が段差や凹凸面を走行するとき、多方向移動車輪404L,404Rが走行車体3の荷重を受けながら接地面の高さに応じて上下動して、接地状態を良好に保持できるように構成されている。
【0078】
ここで、左右の車体フレーム3L,3Rは、第1多方向移動車輪404L,404Rの上方に設けられた矩形の切欠き部321L1,321R1と、第2多方向移動車輪408L,408Rの上方に設けられた矩形の切欠き部321L2,321R2を備える(図1図2)。なお、図14においては、矢線dで示した範囲で切欠きが設けられている。
【0079】
さらに、多方向移動車輪404L,404Rの上端が、該切欠き部321L,321Rよりも上方に位置するよう構成されており、第2多方向移動車輪408L,408R及び切欠き部321L2,321R2についても同様である。これにより、走行車体3の全高を抑え、移動作業中に、運搬車両1と植物と接触することを良好に防止できる。また、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rが緩衝能力により走行車体3に対して上下動しても、車体フレーム3L,3Rとの干渉が防止されるようになっている。
【0080】
図15は、多方向従動車輪405の概略斜視図である。 左右の多方向従動車輪405L,405Rは、走行車体3の進行方向の全方向に従動可能な従動輪である。左右の多方向従動車輪405L,405Rは、一般にオムニホイール(登録商標)と呼ばれるものであり、左右方向に伸びる車軸線P2上に車輪の回転軸を有し、かつ、車軸線P2に対して回転軸が直交するフリーローラが、車輪外周に沿って複数(本実施形態では、6輪)設けられている。
【0081】
ここで、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rは、車輪外周に沿って複数のフリーローラが設けられており、運搬車両1の走行時にフリーローラに過負荷が生じることがある。したがって、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rの間に、全方向に従動可能な多方向従動車輪405L,405Rを配設することによって、運搬車両1の全方向に対する移動に支障なく、運搬車両1の荷重を支持することができ、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rへの過負荷を防止できる。
【0082】
ここで、多方向従動車輪405L,405Rの下端は、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rの下端よりも、上方の高さ位置となるように配設されており、運搬車両1が通常の平坦面を走行しているときは、地面から僅かに上方に位置し、接地しない構成となっている。走行車体3に荷重がかかり、沈んだ際に、多方向従動車輪405L,405Rが接地して運搬車両1の荷重を支持するように構成されている。このように構成することで、通常の走行において、多方向従動車輪405L,405Rは、接地しないことにより、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rによる移動や旋回を妨げず、走行車体3に荷重がかかった場合に、良好に、運搬車両1の荷重を支持することができる。
【0083】
ここで、多方向従動車輪405L,405Rの車軸線P2と、走行車体3の中心線Clの交点は、重心点Gの近傍となるように設けられていることにより、多方向従動車輪405L,405Rが、運搬車両1の荷重を支持しやすいように構成されている。これにより、運搬車両1の走行がより安定する。
【0084】
図15は、運搬車両1の制御装置Cのブロック図である。制御装置Cは、運搬車両1の動作を統括して制御する。
【0085】
制御装置Cの入力側には、収容部31内に収容された収納バケットAの位置を検知する収納バケット検知センサ83と、運搬車両1の栽培施設内の位置を検出する走行位置検出センサ84と、バケット台Bを検知するバケット台検知センサ85と、第3レール走行ローラ409L,409Rの回転数を検出する回転検出センサ86と、走行レール500の端部500tを検知するレール進入位置検知センサ87が接続されている。なお、レール進入位置検知センサ87について、詳細は後述するが、走行車体3の前部左右に設けられ、左右のレール進入位置検知センサ87L,87Rの検知結果に基づき前記運搬車両1左右位置が走行レール500直前の乗り入れ位置にあるか否かを判定できるレール乗り入れ位置判断手段を構成している。
【0086】
また、制御装置Cの出力側には、走行車体3の走行機構4と、軸回動用モータ52と、チェーン用モータ55と、上下動機構61L,61Rと、挟持爪62L,62R,72R,72Lを開閉動作する機構である挟持爪開閉機構88が電気的に接続され、これらの動作が制御装置Cによって制御可能となっている。
【0087】
このように構成された運搬車両1の制御装置Cは、走行レール500への進入時に、レール進入位置検知センサ87により、走行レール500の端部500tを検知すると、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rの駆動に加え、第1レール走行ローラ402L,402Rを駆動するよう構成されている。
【0088】
これにより、走行レール500に進入したことを検知するセンサが不要となり、走行レール500への乗り入れ時に段差やずれがあった場合にも十分な駆動力を確保できる。その結果、円滑に走行レール500上に乗り入れることができる。
【0089】
また、運搬車両1が走行レール500への進入後に、収納バケットAを走行車体3内に取り込み、走行車体3内へ収納バケットA搭載が完了したことを、収納バケット検知センサ83及びバケット台検知センサ85の検知情報により判断すると、運搬車両1が完全に走行レール上に正常に入ったと判断し、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rの駆動を停止するように構成されている。これにより、走行レール500を走行中に駆動輪が不要に駆動すること防止でき、消費電力を削減できる。
【0090】
なお、運搬車両1が走行レール500への進入後に、回転検出センサ86が第3レール走行ローラ409L,409Rの回転を検出すると、運搬車両1が完全に走行レール上に正常に入ったと判断し、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rの駆動を停止するように構成してもよい。これにより、運搬車両1の走行レール500への乗り上げが完了すると、迅速に第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rの駆動を停止できる。
【0091】
さらに、運搬車両1が走行レール500への進入後に、回転検出センサ86が第3レール走行ローラ409L,409Rの回転を検出しなくなると、運搬車両1が走行レール500から出たと判断し、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rの駆動を再開するように構成してもよい。これにより、消費電力を抑えながら好適に地上の走行へと移行できる。
【0092】
また、運搬車両1の制御装置Cは、作業終了後、収容部31の排出開口部S3から、収納バケットAをバケット台B上へ落下排出が完了したことを、収納バケット検知センサ83及びバケット台検知センサ85の検知情報により判断すると、走行レール500上から降りるため、停止していた第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rを駆動するよう構成されている。これにより、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rが駆動して走行レール500上から円滑に運搬車両1を降ろすことができる。
【0093】
運搬車両1が走行レール500への進入後に、収納バケットAを走行車体3内に取り込み、走行車体3内へ収納バケットA搭載が完了したことを、収納バケット検知センサ83及びバケット台検知センサ85の検知情報により判断すると、運搬車両1が完全に走行レール上に正常に入ったと判断し、第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rの駆動を停止するように構成されている。これにより、走行レール500を走行中に駆動輪が不要に駆動すること防止でき、消費電力を削減できる。
【0094】
図19は、運搬車両1が使用される栽培施設の一例を示すものであり、この栽培施設は、暖房機や加湿機等により温度及び湿度等の室内環境が管理される温室である栽培室501と、該栽培室501に隣接する出荷室502とを備えている。前記栽培室1内の中央には作業者又は運搬車両1あるいは防除作業車等が通過できるメイン通路504を設けており、このメイン通路504は、路面がコンクリートで構成されたコンクリート通路である。メイン通路504の両側の側方位置には、栽培ユニットとなる栽培ベッド505を多数列配置した作物を栽培するための栽培スペース506を構成している。尚、前記栽培ベッド505は培地となるロックウールで形成された栽培床部であり、出荷室502内の養液供給装置507から各栽培ベッド505へ養液が供給される構成となっている。また、メイン通路504の両端には開閉扉を備える栽培室501への出入り口508を設け、一方の出入り口508を介して隣接する出荷室502へ行き来できる構成となっている。
【0095】
尚、他方の出入り口8は、栽培施設の屋外から出入りできる構成となっている。そして、運搬車両1をメイン通路504から各々の栽培ユニット(栽培ベッド505)の間のサブ通路509に移動させ、該サブ通路509で栽培ユニット(栽培ベッド505)に沿って運搬車両1を走行させながら栽培する植物に対する各種作業を行うことができる。サブ通路509は、各々の栽培ユニット(栽培ベッド505)の左右間で前後方向に形成される通路となる。なお、図14には図示されていないが、運搬車両1は、それぞれのサブ通路509上に2列で敷設された暖房用管を走行レール500として走行可能に構成されている。なお、暖房用管は、温水を管内に循環させる管状体であり、これにより、栽培室501内を暖房するものである。
【0096】
図20に基づいて、メイン通路504からサブ通路509の走行レール500への運搬車両1の乗り入れ制御について説明する。
【0097】
前記のように、運搬車両1に積載した空の収納バケットAは、サブ通路509の走行レール500に乗り入れて空の収納バケットAを所定間隔に配置して、作業員によって収穫された収穫トマトを収納したり、収穫されたトマトを収納した収納バケットAを一対の走行レール500間に配置したバケット台B上に配置しておくことにより、運搬車両1を走行レール500に沿って移動しながら収容部31に順次収容していくものである。
【0098】
そして、運搬車両1は一のサブ通路509の作業を終えると隣接するサブ通路509に移動するが、その際、サブ通路509から出てメイン通路504に戻った運搬車両1は横移動して隣接のサブ通路509の入口に移動できる。図20において、メイン通路504に運搬車両1の走行移動経路を指定できるガイド手段(ガイド用磁気テープ)91を敷設し、走行車体3に、ガイド手段91を検知できるガイド検知手段92を設け、制御装置Cはガイド検知手段92の検知情報を入力し、メイン通路504に接地する第1多方向移動車輪404L,404R及び第2多方向移動車輪408L,408Rに適宜に回転方向指令信号及び回転速度指令信号を出力し、走行車体3はガイド手段91に沿って横移動することができる。ガイド手段91は例えばガイド用磁気テープとし、ガイド検出手段(磁気センサ)92は磁気センサとして、ガイド用磁気テープ91に対向する上位置に達するとこの磁気テープ91の磁力に反応して磁気センサ92がONする構成である。したがって、所定短時間タイミングでガイド検出することによって走行車体3の軌跡からのずれを演算し、走行車体3の横移動方向を修正できるものである。なお、磁気センサ92は左右に一対設けられ、走行車体3の左右ぶれを少なくできる。
【0099】
また、メイン通路504のサブ通路509への交差部において、前記ガイド用磁気テープ91上の交差基準点Q、つまりサブ通路509の走行レール500に乗り入れる態勢の走行車体3の中心線Clと該ガイド用磁気テープ91との交点、に対して点対称の位置に進入方向確認用磁気テープ93L,93Rを配置する。そして、走行車体3の前部左側及び後部右側のごとくに前後位置を異ならせて磁気センサ94L,94Rを備える。今、左側磁気センサ94Lが進入方向確認用磁気テープ93Lと対向し、右側磁気センサ94Rが進入方向確認用磁気テープ93Rと対向する場合、制御装置Cは走行車体3が紙面上方のサブ通路509の走行レール500に乗り入れると判定される。また走行車体3が180°反転すると、左側磁気センサ94Lが進入方向確認用磁気テープ93Rと対向し、右側磁気センサ94Rが進入方向確認用磁気テープ93Lと対向していて、制御装置Cは走行車体3は紙面下方のサブ通路509の走行レール500に乗り入れると判定される。
【0100】
このように、メイン通路504に運搬車両1の走行移動経路を指定できるガイド手段としてのガイド用磁気テープ91を敷設し、走行車体3に設ける磁気センサ92の検出によって所定の走行経路に沿って横移動できる。
【0101】
また、進入方向確認用磁気テープ93L,93Rをガイド用磁気テープ91の交差基準点Qに対して点対称の位置に進入方向確認用磁気テープ93L,93Rを配置し、走行車体3側には前後位置を異ならせて左右に磁気センサ94L,94Rを備えるものであるから、メイン通路504から交差状に配置されたサブ通路509のうちの一方のサブ通路509の走行レール500に乗り入れるか、他方側のサブ通路509の走行レール500に乗り入れるか判定できる。判定結果の利用については、予め走行経路をプログラム化した自動制御走行の他、走行車体3が判定結果と異なる方向に移動する場合の警報出力、等がある。点対称に設けるものであるから単一設定の場合に比較して精度が高い上、点対称に設けるものであるが、進入方向が180°回転して切り換わっても磁気センサ94L,94Rを兼用でき無駄がない。
【0102】
なお、前記ガイド用磁気テープ91と進入方向確認用磁気テープ93L,93Rとは、N極対応とS極対応とに異なる設定としておく。このように構成すると、誤検知を防止できる。また、走行車体3が横移動中、進入方向確認用磁気テープ93L,93Rの両方又は片方を磁気センサ94L,94Rが検出されると走行車体3停止制御を行うよう構成している。なお、サブ通路509の走行レール500からメイン通路504へ移動する際も進入方向確認用磁気テープ93L,93Rのいずれか一方が検出されると走行車体3を停止制御する構成としてもよい。
【0103】
次に前記レール進入位置検知センサ87によるレール乗り入れ位置判定手段について図21に基づき説明する。レール進入位置検知センサ87は運搬車両1の走行車体3前部の左右に設けられるが、その高さは走行レール500高さに設けられる。レール進入位置検知センサ87は例えば光学式変位センサとされ、対象とセンサとの距離を測定できる公知の構成を採用している。
【0104】
図21における例では、二列に並設された走行レール500、走行レール500に温水を循環するために略U字形状に形成した端部500t、養液供給装置507から各栽培ベッド505へ養液を供給するために立設した給液配管510を複数列に配置しており、制御装置Cは、左右のレール進入位置検知センサ87L,87Rの検出値を入力しこれら左右のレール進入位置検知センサ87L,87Rが共に走行レール500を検知しない状態を進入位置とするものである。そしてその進入位置の判定のため、上記の配置構成例における左右のレール進入位置検知センサ87L,87Rの検知状況及び変化を刻々把握して正規の進入位置であるか否かを判定する。
【0105】
今、メイン通路504を横移動する運搬車両1の走行車体3が、図22において右側に横移動しながら次のサブ通路509進入位置に向かうものとする。図22において矢印表記で左側のレール進入位置検知センサ87L検知状況及び右側のレール進入位置検知センサ87R検知状況を表すものである。上記の横移動の先行側における右側のレール進入位置検知センサ87Rは給液配管510を検知し且つ後行側における左側のレール進入位置検知センサ87Lはレール端部500tを検知する状態(図22(a))、更に横移動し栽培ベッド505の両側で給液配管510から外れて左右のレール進入位置検知センサ87L,87Rとも遠い建屋壁を検知し又はセンサ能力を逸脱して検知範囲圏外と判定される状態(同図(b))、更に横移動し右側のレール進入位置検知センサ87Rがレール端部500tを検知する状態(同図(c))、更に横移動し右側のレール進入位置検知センサ87Rがレール端部500tの検知から外れて遠い壁を検知(又は検知範囲圏外)し且つ左側のレール進入位置検知センサ87Lも遠くの建屋壁を検知(又は検知範囲圏外)する状態(同図(d))に順に移行する。そして、同図(d)の状態で次の進入位置に達したと判定され走行車体3は停止制御される。しかしながら、停止制御によっても行き過ぎて左側のレール進入位置検知センサ87Lがレール端部500tを検知すると(同図(e))、制御装置Cは走行モータに逆転指令信号を出力して走行車体3を後退横移動させ進入位置に戻る構成である。ここで、図22(c)で移動速度を減速し、同図(d)で停止するよう構成し、停止位置制御の精度を向上するものである。
【0106】
上記のように、レール進入位置検知センサ87によるレール乗り入れ位置判定手段を採用すると、前記の通路に敷設するガイド手段91と走行車体3側ガイド検知手段92の構成を不要とする。また、左右のレール進入位置検知センサ87L,87Rの設置で足りるので様々な走行車体仕様に対応でき、栽培施設における各種作業車両に適応できる。
【0107】
図23は、レール進入位置検知センサ87を走行レール500の軌道走行による走行終端を検知するレール走行端判定手段として兼用させている。すなわち、レール進入位置検知センサ87として前記のようにセンサと対象との距離を検知できる形態とすると、レール走行によって接近する建屋壁Wを検知でき、予め設定した所定距離以下に達すると走行終端と判定し走行車体3を停止制御する構成である(図23(a))。また、走行レール500の軌道走行中に、左右のレール進入位置検知センサ87L,87Rのいずれか一方が走行レール500を検知する場合、走行車体3が走行レール500に対して左右に変位すると判定し、走行レール500に沿わせるように左右の走行車輪回転を制御することによって変位状態を解消することができる(同図(b))。
【符号の説明】
【0108】
3 走行車体
91 ガイド用磁気テープ
92 磁気センサ
93L 進入方向確認用磁気テープ
93R 進入方向確認用磁気テープ
94L 磁気センサ
94R 磁気センサ
504 メイン通路
505 栽培ベッド
509 サブ通路
Cl 中心線
Q 交差規準点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23