(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182851
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
F25B49/02 530Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023184670
(22)【出願日】2023-10-27
(62)【分割の表示】P 2021562406の分割
【原出願日】2019-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智隆
(72)【発明者】
【氏名】野本 宗
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷凍サイクル装置における冷媒不足の検出精度を向上させる。
【解決手段】冷凍サイクル装置(100)においては、冷媒が圧縮機(1)、第1熱交換器(2)、レシーバ(3)、配管(Pp)、膨張弁(4)、および第2熱交換器(5)の順に循環する。配管(Pp)には観察孔(Ho)が形成され、光透過性部材(6)と、光検出装置(7)とを備える。光透過性部材(6)は、観察孔(Ho)において配管(Pp)の内壁と対向するように配置され、光検出装置(7)は、配管(Pp)の外部において光透過性部材(6)と対向するように配置され、配管(Pp)の内部からの光に関する情報を出力する。制御装置(10)は、光検出装置(7)から出力される光に関する情報を用いてレシーバ(3)からの冷媒の状態を検出し、冷媒の状態が気液二相状態である場合、冷媒の不足を報知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が圧縮機、第1熱交換器、レシーバ、配管、膨張弁、および第2熱交換器の順に循環する冷凍サイクル装置であって、
前記配管には、観察孔が形成され、
前記レシーバは、液体の前記冷媒を貯留し、
前記冷凍サイクル装置は、
重力方向において前記配管の内壁と対向するように前記観察孔に配置された光透過性部材と、
前記配管の外部において前記光透過性部材と対向するように配置され、前記配管の内部からの光に関する情報を出力する光検出装置と、
前記情報を用いて前記レシーバからの前記冷媒の状態を検出する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記状態が気液二相状態である場合、前記冷媒の不足を報知する、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
冷媒が圧縮機、第1熱交換器、レシーバ、配管、膨張弁、および第2熱交換器の順に循環する冷凍サイクル装置であって、
前記配管には、観察孔が形成され、
前記レシーバは、液体の前記冷媒を貯留し、
前記冷凍サイクル装置は、
前記配管の内壁と対向するように前記観察孔に配置された光透過性部材と、
前記配管の外部において前記光透過性部材と対向するように配置され、前記配管の内部からの光に関する情報を出力する光検出装置と、
前記圧縮機を制御するとともに、前記情報を用いて前記レシーバからの前記冷媒の状態を検出する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記状態が気液二相状態である場合、前記冷媒の不足を報知する、冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記光透過性部材は、ガラスを含む、請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記光検出装置は、前記観察孔から前記配管の内部を撮影するデジタルカメラを含み、
前記情報は、前記デジタルカメラによって撮影された前記観察孔の画像を含み、
前記制御装置は、前記画像の面積に対する、前記画像に含まれる前記内壁の画像の領域の面積の比が基準値よりも小さい場合、前記不足を報知する、請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記光検出装置は、光電センサを含み、
前記光電センサは、
前記観察孔に特定光を出射する発光部と、
前記観察孔からの前記特定光の反射光を受ける受光部とを有し、
前記情報は、前記反射光に関する情報を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の冷媒(液冷媒)を貯留するレシーバを備える冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液冷媒を貯留するレシーバを備える冷凍サイクル装置が知られている。たとえば、特開平4-324083号公報(特許文献1)には、レシーバタンクを備える空調装置が開示されている。当該空調装置においては、レシーバタンクと膨張弁との間の配管に光学式の冷媒センサが設けられている。当該冷媒センサは、冷媒の流路の一部を構成する筒状のケーシングを含む。当該ケーシングにおいては、冷媒の流通する方向と直交する方向(径方向)に同軸の2つの貫通穴が設けられ、当該2つの貫通穴の各々にサイトグラスが配置されている。2つのサイトグラスを介して、受光素子および発光素子が互いに対向するように配置されている。当該空調装置によれば、配管内を流れる冷媒の不足を簡単に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている冷媒センサは、冷媒の流路と一体的に形成される。また、2つのサイトグラスを介して受光素子および発光素子を互いに対向するように配置させる必要がある。冷媒センサの構造が複雑になり易いため、製造ばらつきが生じ易い。その結果、冷媒センサの検出精度が低下し得る。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、冷凍サイクル装置における冷媒不足の検出精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る冷凍サイクル装置においては、冷媒が圧縮機、第1熱交換器、レシーバ、配管、膨張弁、および第2熱交換器の順に循環する。配管には、観察孔が形成されている。レシーバは、液体の冷媒を貯留する。冷凍サイクル装置は、光透過性部材と、光検出装置と、制御装置とを備える。光透過性部材は、観察孔において配管の内壁と対向するように配置されている。光検出装置は、配管の外部において光透過性部材と対向するように配置され、配管の内部からの光に関する情報を出力する。制御装置は、光検出装置から出力される光に関する情報を用いてレシーバからの冷媒の状態を検出する。制御装置は、レシーバからの冷媒の状態が気液二相状態である場合、冷媒の不足を報知する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る冷凍サイクル装置によれば、光検出装置が配管の外部において光透過性部材と対向するように配置され、配管の内部からの光に関する情報を制御装置に出力することにより、冷媒不足の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る冷凍サイクル装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1の制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図1の配管において観察孔が形成されている部分の断面図である。
【
図4】
図1の冷凍サイクル装置において冷媒不足が発生した場合の機能ブロック図である。
【
図5】
図4のデジタルカメラによって撮影された画像を示す図である。
【
図6】
図4の制御装置によって行われる冷媒不足判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態の変形例に係る冷凍サイクル装置において観察孔が形成されている配管の部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
【0010】
図1は、実施の形態に係る冷凍サイクル装置100の構成を示す機能ブロック図である。冷凍サイクル装置100としては、たとえば、冷凍機、空気調和機、あるいはショーケースを挙げることができる。
【0011】
図1に示されるように、冷凍サイクル装置100は、圧縮機1と、凝縮器2と、レシーバ3と、膨張弁4と、蒸発器5と、配管Ppと、ガラス部材6(光透過性部材)と、デジタルカメラ7(光検出装置)と、制御装置10とを備える。冷凍サイクル装置100において冷媒は、圧縮機1、凝縮器2、レシーバ3、配管Pp、膨張弁4、および蒸発器5の順に循環する。
【0012】
レシーバ3は、液冷媒を貯留する。レシーバ3に基準量以上の液冷媒が貯留されている場合、飽和液の冷媒がレシーバ3から流出する。
【0013】
配管Ppは、レシーバ3と膨張弁4とを接続している。配管Ppには、観察孔Hoが形成されている。観察孔Hoには、ガラス部材6が配置されている。ガラス部材6は、可視光を透過させる。
【0014】
デジタルカメラ7は、配管Ppの外部においてガラス部材6と対向するように配置されている。デジタルカメラ7は、ガラス部材6を介して配管Ppの内部の画像を撮影し、当該画像を制御装置10に出力する。
【0015】
制御装置10は、デジタルカメラ7からの画像を解析して、レシーバ3からの冷媒の状態を検出する。制御装置10は、当該状態が気液二相状態である場合、冷媒の不足を報知する。制御装置10は、圧縮機1の駆動周波数を制御して、圧縮機1が単位時間当たりに吐出する冷媒量を制御する。
【0016】
図2は、
図1の制御装置10の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示されるように、制御装置10は、処理回路11と、メモリ12と、入出力部13とを含む。処理回路11は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリ12に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)であってもよい。処理回路11が専用のハードウェアである場合、処理回路11には、たとえば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路11がCPUの場合、制御装置10の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアあるいはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ12に格納される。処理回路11は、メモリ12に記憶されたプログラムを読み出して実行する。メモリ12には、不揮発性または揮発性の半導体メモリ(たとえばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、あるいはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory))、および磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、あるいはDVD(Digital Versatile Disc)が含まれる。なお、CPUは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいはDSP(Digital Signal Processor)とも呼ばれる。
【0017】
入出力部13は、ユーザからの操作を受けるとともに、処理結果をユーザに出力する。入出力部13は、たとえば、マウス、キーボード、タッチパネル、ディスプレイ、およびスピーカを含む。制御装置10は、レシーバ3からの冷媒の状態が気液二相状態である場合、入出力部13を介して冷媒の不足をユーザに報知する。
【0018】
図3は、
図1の配管Ppにおいて観察孔Hoが形成されている部分の断面図である。
図3においてX軸、Y軸、およびZ軸は互いに直交している。後に説明する
図5,
図7においても同様である。
【0019】
図3に示されるように、配管Ppは、X軸方向に延在している。ガラス部材6は、観察孔Hoにおいて配管Ppの内壁Btmと対向するように配置されている。レシーバ3から液冷媒が流出する場合、液冷媒は透明であるため、デジタルカメラ7には、内壁Btmの画像が撮影される。
【0020】
図4は、
図1の冷凍サイクル装置100において冷媒不足が発生した場合の機能ブロック図である。冷媒不足が発生する原因としては、たとえば冷媒漏洩を挙げることができる。
図4に示されるように、冷媒不足が発生すると、レシーバ3に貯留される冷媒が基準量より減少する。その結果、レシーバ3から流出する冷媒の状態が気液二相状態となる。配管Ppを通過する冷媒には、液冷媒と気体の冷媒(ガス冷媒)とが混在し、ガス冷媒による気泡が発生する。当該気泡によりガラス部材6から観察される冷媒は白濁する。
【0021】
図5は、
図4のデジタルカメラ7によって撮影された画像を示す図である。
図5に示されるように、冷媒不足が発生すると、当該画像におけるガス冷媒の気泡による白濁部分の領域が増加する。その結果、当該画像における内壁Btmの画像の領域が減少する。
【0022】
そこで、制御装置10は、デジタルカメラ7によって撮影された画像の面積に対する、当該画像に含まれる内壁Btmの画像の領域の面積の比が基準値(たとえば0.5)よりも小さい場合、冷媒不足のアラームを報知する。
【0023】
冷凍サイクル装置100においては、配管Ppの径方向の一方の側に観察孔Hoを形成し、配管Ppの外部にデジタルカメラ7を配置することにより、配管Ppの内部を流れる冷媒の状態を検出することができる。観察孔Hoの製造ばらつきは、デジタルカメラ7の撮影精度に影響を与えないため、冷媒の状態の検出精度にほとんど影響を与えない。冷凍サイクル装置100によれば、冷媒不足の検出精度を向上させることができる。
【0024】
冷凍サイクル装置100に冷媒漏洩が発生すると、大気に冷媒が放出され得る。そのため、冷凍サイクル装置100の環境負荷の低減のために冷媒漏洩を迅速に検出する必要がある。特に、冷凍サイクル装置100に高GWP(Global Warming Potential)冷媒(たとえばR410A)が使用されている場合には、冷媒漏洩を迅速に検出する必要性は大きい。冷凍サイクル装置100によれば、デジタルカメラ7によって撮影された画像に対する画像処理によって、冷媒不足を迅速かつ高精度に検出することができる。また、冷媒不足の迅速な検出に応じて冷媒を補充することにより、冷媒不足による冷凍サイクル装置100の性能低下の時間を短縮することができる。たとえば、冷凍サイクル装置100が冷凍装置およびショーケースである場合、冷却対象の品質低下を抑制することができる。なお、冷媒不足のアラームの報知は、たとえば、ディスプレイ(不図示)へのアラーム情報の出力、アラーム情報のメール送信、あるいはスピーカ(不図示)からの音声出力によって行うことができる。
【0025】
図6は、
図4の制御装置10によって行われる冷媒不足判定処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示される処理は、冷凍サイクル装置100を統合的に制御する不図示のメインルーチンによってサンプリングタイム毎に呼び出される。以下ではステップを単にSと記載する。
【0026】
図6に示されるように、制御装置10は、S101において、デジタルカメラ7によって撮影された画像の面積S10に対する当該画像に含まれる内壁Btmの画像の領域の面積S1の比γ1を計算し、処理をS102に進める。制御装置10は、S102において、比γ1が基準値δ1より小さいか否かを判定する。比γ1が基準値δ1より小さい場合(S102においてYES)、制御装置10は、S103においてアラームを報知して処理をメインルーチンに返す。比γ1が基準値δ1以上である場合(S102においてNO)、制御装置10は処理をメインルーチンに返す。なお、基準値δ1は、実機実験あるいはシミュレーションによって適宜決定することができる。
【0027】
実施の形態においては、光透過性部材が可視光を透過させるガラス部材である場合について説明した。光透過性部材は、ガラス部材に限定されず、たとえば透明セラミックスを含んでもよい。また光透過性部材を透過する光は、可視光に限定されず、たとえば紫外光および赤外光を含んでもよい。
【0028】
実施の形態においては、光検出装置がデジタルカメラである場合について説明した。光検出装置は、デジタルカメラに限定されず、たとえば光電センサを含んでもよい。
【0029】
図7は、実施の形態の変形例に係る冷凍サイクル装置において観察孔Hoが形成されている配管Ppの部分の断面図である。
図7に示される構成は、
図3のデジタルカメラ7が光電センサ7Aに置き換えられた構成である。これら以外は同様であるため、説明を繰り返さない。
【0030】
図7に示されるように、光電センサ7Aは、発光部71と、受光部72とを含む。発光部71は、観察孔Hoに光(たとえば赤外光)を出射する。受光部72は、観察孔Hoからの当該光の反射光を受ける。光電センサ7Aは、当該反射光に関する情報を制御装置10に出力する。
【0031】
以上、実施の形態および変形例に係る冷凍サイクル装置によれば、冷媒不足の検出精度を向上させることができる。
【0032】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0033】
1 圧縮機、2 凝縮器、3 レシーバ、4 膨張弁、5 蒸発器、6 ガラス部材、7 デジタルカメラ、7A 光電センサ、10 制御装置、11 処理回路、12 メモリ、13 入出力部、71 発光部、72 受光部、100 冷凍サイクル装置、Btm 内壁、Ho 観察孔、Pp 配管。