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特開2023-182853抗クローディン-18.2と抗4-1BBとの二重特異性抗体およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182853
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】抗クローディン-18.2と抗4-1BBとの二重特異性抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20231219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231219BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231219BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20231219BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C07K16/46
C07K16/30
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/55
A61K47/68
A61K39/395 D
A61K39/395 N
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023184798
(22)【出願日】2023-10-27
(62)【分割の表示】P 2021522496の分割
【原出願日】2020-08-12
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/100162
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/104508
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/071954
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/087968
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520035034
【氏名又は名称】アイ-エムエービー バイオファーマ カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519238473
【氏名又は名称】エービーエル バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジアン ウェンキン
(72)【発明者】
【氏名】ファン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ゼンイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ ビンシ
(72)【発明者】
【氏名】パク ウンヨン
(72)【発明者】
【氏名】スン ウンシル
(72)【発明者】
【氏名】スン ビョンジェ
(57)【要約】
【課題】抗クローディン-18.2と抗4-1BBとの二重特異性抗体およびその使用の提供。
【解決手段】提供されるのは、クローディン18.2(CLDN18.2)および4-1BBの両方を標的とする二重特異性抗体および多重特異性抗体である。これらの抗体は、CLDN18.2発現細胞の非存在下で、4-1BBに結合することができるが、4-1BBシグナル伝達を活性化することができない。しかしながら、CLDN18.2発現細胞の存在下では、これらの抗体はCLDN18.2依存的4-1BBシグナル伝達を誘発することができ、CLDN18.2発現腫瘍細胞に対する強力な免疫応答をもたらす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年8月12日に出願されたPCT出願第PCT/CN2019/1
00162号、2019年9月5日に出願された第PCT/CN2019/104508
号、2020年1月14日に出願された第PCT/CN2020/071954号、20
20年4月30日に出願された第PCT/CN2020/087968号の利益を主張し
、それぞれの内容はここで、その全体が参照により引用される。
【背景技術】
【0002】
クローディンは、細胞間密着結合の重要な成分を形成するタンパク質のファミリである
。クローディン-18スプライスバリアント2(CLDN18.2)は、胃特異的な膜タ
ンパク質である。健康な組織において、CLDN18.2は、抗体処置の到達性が限られ
ている密着結合の成分として、胃粘膜の短命な分化した細胞において限定的に発現される
。しかしながら、CLDN18.2は、胃、膵臓、食道および肺の腺癌細胞を含む、上皮
性腫瘍エンティティの様々な原発性病変および転移において有意なレベルで異所的に発現
された。
【0003】
4-1BB(CD137、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリ9)は、TNF-受容
体スーパーファミリ(TNFRSF)のメンバであり、自然および適応免疫細胞の両方に
おいて、免疫細胞の活性化に続いて発現される共刺激分子である。4-1BBは、様々な
免疫細胞の活性を調節する際に重要な役割を果たす。4-1BBアゴニストは、免疫細胞
の増殖、生存期間、サイトカインの分泌、および細胞溶解活性CD8 T細胞を増強する
。多くの他の検討によって、4-1BBの活性化が、免疫応答を増強してマウスの腫瘍を
排除することが示された。したがって、4-1BBはがん免疫学において有望な標的分子
であることが示唆された。
【発明の概要】
【0004】
提供されるのは、クローディン18.2(CLDN18.2)および4-1BBの両方
を標的とする二重特異性抗体および多重特異性抗体である。いくつかの実施形態において
、本技術の抗体は、細胞上に発現されたCLDN18.2タンパク質に結合する抗CLD
N18.2部分なしでは、4-1BBシグナル伝達を活性化できない「条件的アゴニスト
(conditional agonist)」抗4-1BB部分を含む。
【0005】
4-1BBシグナル伝達の活性化は、ウトミルマブ(PF-05082566)および
ウレルマブ(BMS-663513)などのアゴニスト抗体に関して予期される機構であ
る。しかしながら、本発明で開示される抗体の抗4-1BB部分は、そのような活性を必
要としない。実際には、本発明の抗体の抗4-1BB部分は、CLDN18.2結合の非
存在下で、独立して4-1BBを活性化することができないことが好ましい。実証された
実験例としては、興味深いことに、抗CLDN18.2部分が細胞上のCLDN18.2
タンパク質に結合するとき、そのようなCLDN18.2結合は4-1BBシグナル伝達
活性化を誘発し得る。
【0006】
通常、オンターゲット用量制限毒性に関連付けられる公知の抗4-1BBアゴニスト抗
体と比較して、本開示の抗体ははるかに安全であることが企図される。CLDN18.2
が発現されていない肝臓などの組織において、本発明の抗体は、4-1BBシグナル伝達
を活性化することができないために、細胞傷害性の免疫応答を誘発することは予期されな
い。それに対して、CLDN18.2が発現されている、かつ/または到達可能である腫
瘍組織においては、本発明の抗体は腫瘍細胞に対して強力な免疫応答を開始し得る。した
がって、現在臨床的に開発されており、オンターゲット/固有の毒性を起こす抗4-1B
B抗体とは違い、本発明で開示される抗体は、がん処置において、強力であり同時に安全
であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】A~C 本開示において試験された3つの異なる二重特異性型を示す。
【0008】
図2】A~D 4-1BBおよびCLDN18.2結合に関するELISAの結果を提示する。
【0009】
図3】細胞ベースの4-1BB結合を示す。
【0010】
図4】A~C CLDN18.2に関する結合の結果を示す。
【0011】
図5】A~D CLDN18.2依存的4-1BBシグナル伝達活性化を示す。
【0012】
図6】A~E CLDN18.2発現細胞の存在下でのPBMC応答を示す。
【0013】
図7】A~D CLDN18.2発現細胞の存在下でのCD8+T応答を示す。
【0014】
図8】A~B 同系マウスモデルにおける抗CLDN18.2-4-1BB抗体のインビボ効力、および腫瘍浸潤リンパ球に対するその影響のエクスビボ分析を示す。
【0015】
図9】A~C 同系マウスモデルにおけるC-1A10二重特異性抗体のインビボ効力を示す。
【0016】
図10】同系マウスモデルにおける、C-1A10およびD-1A10の用量依存的抗腫瘍効力を示す。
【0017】
図11】A~D 同系マウスモデルにおける、D-1A10の薬物動態学的および薬力学的な関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
用語「a(1つの)」または「an(1つの)」エンティティは、そのエンティティの
1つまたは複数を指し、例えば、「an antibody(1つの抗体)」は、1つま
たは複数の抗体を指すと理解されることに留意されるべきである。したがって、本明細書
において、「a」(または「an」)、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つ
」という用語は、交換可能に使用することができる。
【0019】
本明細書で用いられるように、「ポリペプチド」という用語は、単数形の「ポリペプチ
ド」および複数形の「ポリペプチド」を包含することが意図され、アミド結合(ペプチド
結合としても公知である)によって線状に連結されたモノマー(アミノ酸)で構成される
分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖または鎖(
複数)を指し、生成物の特定の長さを指すものではない。したがって、「ペプチド」、「
ジペプチド」、「トリペプチド」、「オリゴペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖
」、または2つ以上のアミノ酸の鎖または鎖(複数)を指すために用いられる任意の他の
用語は、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの
用語のうちのいずれかの代わりに、またはそれと交換可能に用いられてもよい。「ポリペ
プチド」という用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾の生成物を指すことが意図され、
発現後修飾には、限定することなく、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、
公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、または天然に存在しない
アミノ酸による修飾が含まれる。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源に由来してもよ
く、または組換え技術によって生成されてもよいが、必ずしも指定された核酸配列から翻
訳されるわけではない。ポリペプチドは、化学合成による仕方を含む、任意の仕方で生成
されてもよい。
【0020】
細胞、DNAまたはRNAなどの核酸に関して本明細書で用いられる「単離された」と
いう用語はそれぞれ、巨大分子の天然供給源に存在する他のDNAまたはRNAから分離
された分子を指す。本明細書で用いられる「単離された」という用語は、組換えDNA手
法によって生成される場合、細胞物質、ウイルス性物質、もしくは培養培地を実質的に含
まない、または化学的に合成される場合、化学的前駆体、もしくは他の化学物質を実質的
に含まない、核酸またはペプチドを指す。さらに、「単離核酸」は、断片として天然に存
在せず、天然状態で見出されることはない核酸断片を含むことが意図される。「単離され
た」という用語はまた、他の細胞タンパク質または組織から単離された細胞またはポリペ
プチドを指すために本明細書で使用される。単離されたポリペプチドは、精製されたポリ
ペプチドおよび組換えポリペプチドの両方を包含することが意図される。
【0021】
本明細書で用いられるように、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関係する「組換
え」という用語は、天然に存在しないポリペプチドまたはポリヌクレオチドの形態を意味
し、その非限定的な例は、通常一緒に生ずることのないポリヌクレオチドまたはポリペプ
チドを組み合わせることによって作製され得る。
【0022】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチド間、または2つの核
酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較の目的でアラインメントされていてもよい
各配列における位置を比較することによって決定され得る。比較される配列における位置
が同じ塩基またはアミノ酸によって占められている場合、分子はその位置において相同的
である。配列間の相同性の度合いは、配列によって共有される一致するまたは相同的な位
置の数の関数である。「関係のない」または「非相同」配列は、本開示の配列のうちの1
つと、40%より小さい同一性を共有するが、25%より小さい同一性が好ましい。
【0023】
ポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペ
プチド領域)は、別の配列に対してある特定の割合(例えば、60%、65%、70%、
75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)の配列同一性を有し
、アラインメントされた場合、塩基(またはアミノ酸)の割合は2つの配列の比較におい
て同じであることを意味する。このアラインメントおよび百分率相同性または配列同一性
は、当技術分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば、Ausubel et al
.eds.(2007)Current Protocols in Molecula
r Biologyに記載のものを用いて決定され得る。好ましくは、アラインメントの
ためにデフォルトパラメータが使用される。1つのアラインメントプログラムは、デフォ
ルトパラメータを使用する、BLASTである。具体的には、プログラムは、以下のデフ
ォルトパラメータ、Genetic code=standard;filter=no
ne;strand=both;cutoff=60;expect=10;Matri
x=BLOSUM62;Descriptions=50sequences;sort
by=HIGH SCORE;Databases=non-redundant,G
enBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS transla
tions+SwissProtein+SPupdate+PIRを使用する、BLA
STNおよびBLASTPである。生物学的に同等のポリヌクレオチドは、上に言及した
特定された百分率相同性を有し、同じかまたは類似の生物学的活性を有するポリペプチド
をコードするものである。
【0024】
本明細書で用いられるように、「抗体」または「抗原結合ポリペプチド」は、抗原を特
異的に認識し、その抗原に結合するポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。抗体
は、全抗体、および任意の抗原結合断片、またはその単鎖であり得る。したがって、「抗
体」という用語は、抗原に結合する生物学的活性を有する免疫グロブリン分子の少なくと
も一部を含む分子を含有する任意のタンパク質またはペプチドを含む。そのようなものの
例としては、重鎖もしくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)、またはそれらのリガンド結
合部分、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、フレームワーク(FR
)領域、またはそれらの任意の部分、または結合タンパク質の少なくとも1つの部分が挙
げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で用いられる「抗体断片」または「抗原結合断片」という用語は、例えばF(
ab')、F(ab)、Fab'、Fab、Fv、scFvなどの、抗体の一部である
。構造に関わらず、抗体断片は、無傷の抗体によって認識されるものと同じ抗原と結合す
る。「抗体断片」という用語は、アプタマ、シュピーゲルマ(Spiegelmer)、
および二特異性抗体を含む。「抗体断片」という用語はまた、特異的な抗原に結合し複合
体を形成することによって抗体のように作用する、任意の合成された、または遺伝子操作
されたタンパク質を含む。
【0026】
「単鎖可変断片」または「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖(V)および軽鎖(
)の可変領域の融合タンパク質を指す。いくつかの態様において、領域は、10から
約25アミノ酸の短いリンカペプチドで接続されている。リンカは、柔軟性のためにグリ
シンが、可溶性のためにセリンまたはスレオニンが豊富であり得、VのN末端をV
C末端に、その逆も同様に、接続し得る。このタンパク質は、定常領域の除去およびリン
カの導入にも関わらず、元の免疫グロブリンの特異性を維持する。scFv分子は、当技
術分野で公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号明細書において説明され
ている。
【0027】
抗体という用語は、生化学的に区別することができる、様々で広範なクラスのポリペプ
チドを包含する。当業者には、重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシ
ロン(γ、μ、α、δ、ε)、およびそれらのうちのいくつかのサブクラス(例えば、γ
l~γ4)に分類されることが理解されるであろう。抗体の「クラス」をそれぞれIgG
、IgM、IgA、IgG、またはIgEに決定するのは、この鎖の性質である。免疫グ
ロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG、IgG、IgG、IgG
、IgGなどは、十分に特徴付けられており、機能的な特殊化を付与することが公知で
ある。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの修飾型は、本開示を考慮すると当
業者には容易に認識可能であり、したがって、本開示の範囲内である。すべての免疫グロ
ブリンクラスは、明らかに本開示の範囲内であり、以下の議論は一般に、免疫グロブリン
分子のIgGクラスを対象とする。IgGに関しては、標準的な免疫グロブリン分子は、
分子量が約23,000ダルトンである2つの同一の軽鎖ポリペプチド、および分子量が
53,000~70,000である2つの同一の重鎖ポリペプチドを含む。これらの4つ
の鎖は典型的に、ジスルフィド結合によって「Y」形状に結合されており、ここで、軽鎖
は重鎖とひとまとめになり、「Y」の入口から始まり可変領域を通して伸びる。
【0028】
本開示の抗体、抗原結合ポリペプチド、バリアント、またはその誘導体としては、ポリ
クローナル、モノクローナル、多重特異性、ヒト、ヒト化、霊長類化、またはキメラ抗体
、単鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab'およびF(ab')、Fd
、Fvs、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、
VKまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリによって産生され
る断片、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書で開示されるLI
GHT抗体に対する抗Id抗体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。本開示
の免疫グロブリン分子または抗体分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM
、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、
IgG4、IgAl、およびIgA2)、または免疫グロブリン分子のサブクラスであり
得る。
【0029】
軽鎖は、カッパ(κ)またはラムダ(λ)いずれかに分類される。各重鎖クラスは、カ
ッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のいずれかと結合していてもよい。一般に、免疫グロブリンが
ハイブリドーマ、B細胞、または遺伝子操作された宿主細胞のいずれかによって生成され
る場合、軽鎖および重鎖は、互いに対して共有結合しており、2つの重鎖の「尾」部分は
、共有結合であるジスルフィド結合または非共有結合によって互いに対して結合している
。重鎖においては、アミノ酸配列は、Y形状の分岐した終端のN末端から各鎖の下部のC
末端へ伸びている。
【0030】
軽鎖および重鎖の両方は、構造的および機能的相同性の領域に分割されている。「定常
」および「可変」という用語は、機能に関して用いられる。この関連で、軽鎖および重鎖
部分両方の可変ドメイン(VK、VH)は、抗原認識および特異性を決定することが理解
されるであろう。その反対に、軽鎖の定常ドメイン(CK)および重鎖の定常ドメイン(
CH1、CH2、またはCH3)は、例えば、分泌、経胎盤性移動性、Fc受容体結合、
補体結合などの重要な生物学的特性を付与する。慣例により、定常領域ドメインのナンバ
リングは、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠位になるにしたがって増加す
る。N末端部分は可変領域であり、C末端部分は定常領域である。CH3ドメインおよび
CKドメインはそれぞれ実際に、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端を含む。
【0031】
上記に示したように、可変領域により、抗体は抗原上のエピトープを選択的に認識し、
それに特異的に結合することができる。換言すれば、抗体のVKドメインおよびVHドメ
イン、または相補性決定領域(CDR)のサブセットは、組み合わさって、3次元の抗原
結合部位を画定する可変領域を形成する。この4次抗体構造は、Yの各アームの終端に存
在している抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VH鎖およびV
K鎖(すなわち、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-
L2、およびCDR-L3)のそれぞれ上の3つのCDRによって画定されている。いく
つかの事例、例えば、ラクダ科動物種由来の、またはラクダ科動物免疫グロブリンに基づ
いて操作された、ある特定の免疫グロブリン分子において、完全免疫グロブリン分子は、
軽鎖を有さず重鎖のみからなっていてもよい。たとえば、Hamers-Casterm
an et al.、Nature 363:446-448(1993)を参照された
い。
【0032】
天然に存在する抗体において、各抗原結合ドメインに存在する6つの「相補性決定領域
」または「CDR」は、短い非隣接のアミノ酸配列であり、これらは、抗体が水性環境に
おいてその3次元構成をとる際、抗原結合ドメインを形成するように特異的に位置付けら
れる。抗原結合ドメインのアミノ酸の残りの部分は、「フレームワーク」領域と呼ばれ、
分子間可変性をそれほど示さない。フレームワーク領域は、大部分はβシートコンフォメ
ーションを採用し、CDRは、βシート構造に接続し、場合によってはβシート構造の一
部を形成する、ループを形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結
合相互作用によってCDRを正しい配向に位置付けすることを可能にする足場を形成する
ように働く。位置付けされたCDRによって形成される抗原結合ドメインは、免疫反応性
抗原上のエピトープに対して相補的な表面を画定する。この相補的表面は、抗体のその同
族エピトープに対する非共有結合を促進する。CDRおよびフレームワーク領域それぞれ
を含むアミノ酸は、正確に定義されているため、任意の重鎖または軽鎖可変領域に関して
、当業者によって容易に同定され得る("Sequences of Proteins
of Immunological Interest,"Kabat,E.,et
al.,U.S.Department of Health and Human S
ervices,(1983);およびChothia and Lesk,J.MoI
.Biol.,196:901-917(1987)を参照されたい)。
【0033】
当技術分野内で用いられる、かつ/または許容される用語に2つ以上の定義がある場合
、本明細書で用いられるその用語の定義は、すべてのそのような意味を含むことが意図さ
れるが、その逆が明示的に述べられる場合はこの限りではない。具体的な例は、重鎖およ
び軽鎖のポリペプチド両方の可変領域内に見出される非隣接の抗原結合部位を説明する「
相補性決定領域」(「CDR」)という用語の使用である。この特定の領域は、Kaba
t et al.,U.S.Dept. of Health and Human S
ervices,"Sequences of Proteins of Immuno
logical Interest"(1983)およびChothia et al.
,J.MoI.Biol.196:901-917(1987)によって説明されており
、これらはその全体を参照により本明細書に引用される。KabatおよびChothi
aによるCDRの定義は、互いに対して比較される際の、アミノ酸残基の重複またはサブ
セットを含んでいる。しかしながら、抗体またはそのバリアントのCDRを指すためにど
ちらの定義を適用しても、本明細書において定義され用いられる用語の範囲内であること
が意図される。上記に引用した参考文献のそれぞれによって定義されるCDRを包含する
、適切なアミノ酸残基を、比較として以下の表に記載する。特定のCDRを包含する正確
な残基の数は、CDRの配列および大きさに依存して異なる。当業者は、抗体の可変領域
のアミノ酸配列を考慮して、どの残基が特定のCDRを含むのか、慣例的に決定すること
ができる。
【表1】
【0034】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能な可変ドメイン配列のためのナンバリング
システムを定義した。当業者は、疑いの余地なく、配列そのもの以上の実験データに頼る
ことなく、この「Kabatナンバリング」のシステムを任意の可変ドメイン配列に割り
当てることができる。本明細書で用いられるように、「Kabatナンバリング」は、K
abatらのU.S.Dept. of Health and Human Serv
ices,"Sequence of Proteins of Immunologi
cal Interest"(1983)によって説明されているナンバリングシステム
を指す。
【0035】
上記の表に加えて、KabatナンバーシステムはCDR領域を以下のとおり説明する
。CDR-H1は、約31番目のアミノ酸(すなわち、最初のシステイン残基から約9残
基)で始まり、約5~7個のアミノ酸を含み、次のトリプトファン残基で終わる。CDR
-H2は、CDR-H1の末端から15番目の残基で始まり、約16~19個のアミノ酸
を含み、次のアルギニンまたはリジン残基で終わる。CDR-H3は、CDR-H2の末
端から約33番目のアミノ酸残基で始まり、3~25個のアミノ酸を含み、配列W-G-
X-Gで終わり、式中、Xは任意のアミノ酸である。CDR-L1は、約24番目の残基
(すなわち、システイン残基の後)で始まり、約10~17個の残基を含み、次のトリプ
トファン残基で終わる。CDR-L2は、CDR-L1の末端から約16番目の残基で始
まり、約7個の残基を含む。CDR-L3は、CDR-L2の末端から約33番目の残基
(すなわち、システイン残基の後)で始まり、約7~11個の残基を含み、配列Fまたは
W-G-X-Gで終わり、式中、Xは任意のアミノ酸である。
【0036】
本明細書で開示される抗体は、鳥類および哺乳類を含む任意の動物の起源由来であって
もよい。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ
、ラマ、ウマ、またはニワトリの抗体である。別の実施形態において、可変領域がコンド
リクトイド(condricthoid)起源(例えば、サメ由来)であってもよい。
【0037】
本明細書で用いられる「重鎖定常領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖に由来する
アミノ酸配列を含む。重鎖定常領域を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例
えば、上部、中間、および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3
ドメイン、またはそのバリアントもしくは断片のうちの少なくとも1つを含む。例えば、
本開示で使用される抗原結合ポリペプチドは、CH1ドメインを有するポリペプチド鎖;
CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、およびCH2ドメインを有するポリ
ペプチド鎖;CH1ドメインとCH3ドメインとを有するポリペプチド鎖;CH1ドメイ
ン、ヒンジドメインの少なくとも一部、およびCH3ドメインを有するポリペプチド鎖;
またはCH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、CH2ドメイン、およびCH
3ドメインを有するポリペプチド鎖を備えてもよい。別の実施形態において、本開示のポ
リペプチドは、CH3ドメインを有するポリペプチド鎖を備える。さらに、本開示で使用
する抗体は、CH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインの全部または一
部)を欠いてもよい。上述したように、重鎖定常領域は、アミノ酸配列が天然に存在する
免疫グロブリン分子とは異なるように修飾されてもよいことが当業者には理解されるであ
ろう。
【0038】
本明細書で開示される抗体の重鎖定常領域は、異なる免疫グロブリン分子に由来しても
よい。例えば、ポリペプチドの重鎖定常領域は、IgG分子に由来するCH1ドメイン
およびIgG分子に由来するヒンジ領域を含んでもよい。別の例において、重鎖定常領
域は、部分的にIgG分子に由来し、かつ部分的にIgG分子に由来するヒンジ領域
を含み得る。別の例において、重鎖部分は、部分的にIgG分子に由来し、かつ部分的
にIgG分子に由来するキメラヒンジを含み得る。
【0039】
本明細書で用いられるように、「軽鎖定常領域」という用語は、抗体軽鎖に由来するア
ミノ酸配列を含む。好ましくは、軽鎖定常領域は定常カッパドメインまたは定常ラムダド
メインのうちの少なくとも1つを含む。
【0040】
「軽鎖-重鎖対」は軽鎖と重鎖の集合を指し、これらは軽鎖のCLドメインと重鎖のC
H1ドメインとの間のジスルフィド結合によって二量体を形成することができる。
【0041】
先に示したように、様々な免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造および
3次元構成は周知である。本明細書で用いられるように、「VHドメイン」という用語は
、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端の可変ドメインを含み、「CH1ドメイン」という用
語は、免疫グロブリン重鎖の第1の(最もアミノ末端の)定常領域ドメインを含む。CH
1ドメインは、VHドメインに隣接しており、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域に対
してアミノ末端である。
【0042】
本明細書で用いられるように、「CH2ドメイン」という用語は、従来のナンバリング
スキームを用いて、例えば、抗体の約残基244から残基360まで延在する重鎖分子の
部分を含む(残基244~360、Kabatナンバリングシステム;および残基231
~340、EUナンバリングシステム;Kabat et al.,U.S.Dept.
of Health and Human Services,"Sequences
of Proteins of Immunological Interest"(
1983)を参照されたい)。CH2ドメインは、別のドメインと密接に対になっていな
いという点で独特である。むしろ、2つのN連結分岐炭水化物鎖が、無傷の天然IgG分
子の2つのCH2ドメイン間に挿入される。CH3ドメインは、CH2ドメインからIg
G分子のC末端まで延在し、約108個の残基を含むことも文書で十分に立証されている
【0043】
本明細書で用いられるように、「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインをCH2
ドメインに結合する重鎖分子の部分を含む。このヒンジ領域は、約25個の残基を含み、
かつ可動性があり、したがって、2つのN末端抗原結合領域が独立して動くことを可能に
する。ヒンジ領域は、3つの別個のドメイン:上部、中間、および下部のヒンジドメイン
にさらに分割することができる(Roux et al.,J.Immunol 161
:4083(1998))。
【0044】
「特異的に結合する」または「特異性を有する」によって、一般に、抗体がその抗原結
合ドメインを介してエピトープに結合することを意味し、結合が、抗原結合ドメインとエ
ピトープとのある程度の相補性を伴うことを意味する。この定義によれば、抗体は、ラン
ダムな関係のないエピトープに結合するより容易に、抗体の抗原結合ドメインを介してエ
ピトープに結合するときに、エピトープに「特異的に結合する」と言われる。「特異性」
という用語は、それによってある特定の抗体がある特定のエピトープに結合する相対的親
和性を有するとみなすために、本明細書において用いられる。例えば、抗体「A」は、任
意のエピトープに対して抗体「B」より高い特異性を有すると見なされてもよく、または
抗体「A」は、関係のあるエピトープ「D」に対して有するより高い特異性でエピトープ
「C」に結合すると言われてもよい。
【0045】
本明細書で用いられるように、「処置する」または「処置」という用語は、治療的処置
および予防的または防止的処置の両方を指し、ここで、その目的は、がんの進行などの、
望ましくない生理学的な変化または障害を阻止するか、または遅らせる(弱める)ことで
ある。有利なまたは望ましい臨床結果としては、検出可能であっても検出不可能であって
も、症状の軽減、疾患の程度の減弱、疾患の安定した(すなわち、悪化していない)状態
、疾患進行の遅延または鈍化、疾患状態の回復または緩和、および寛解(部分または完全
を問わず)が挙げられるが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けていな
い場合の予測生存期間と比較して生存期間を延長することも意味し得る。処置を必要とす
る者には、病態もしくは障害を既に有している者、および病態もしくは障害を有する傾向
のある者、または病態もしくは障害を予防する必要がある者が含まれる。
【0046】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」によって、
診断、予後、または治療が所望される任意の対象、特に、哺乳動物対象を意味する。哺乳
動物対象としては、ヒト、飼育動物、農場動物、動物園動物、競技動物、またはペットの
動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、乳牛な
どが挙げられる。
【0047】
本明細書で用いられるように、「処置を必要とする患者」または「処置を必要とする対
象」などの語句は、例えば検出のため、診断手順のため、および/または処置のために使
用される、本開示の抗体または組成物の投与から恩恵を受けるであろう哺乳動物対象など
の対象を含む。
抗クローディン-18.2抗4-1BB抗体
【0048】
4-1BBは、活性化されたT細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞上に発現され
た誘導性共刺激受容体である。T細胞上の4-1BBリガンド(41BBL)三量体によ
る4-1BB三量体のクラスタ形成は、抗アポトーシス性分子のアップレギュレーション
、サイトカイン分泌、および増強されたエフェクタ機能をもたらすシグナル伝達カスケー
ドを誘発する。NK細胞上では、4-1BBシグナル伝達により抗体依存性細胞媒介性細
胞傷害を増加し得る。4-1BBを標的とするアゴニストモノクローナル抗体は、がん免
疫療法のために4-1BBシグナル伝達を利用するために開発されてきた。様々な誘導性
および自発性腫瘍モデルにおける前臨床結果において、アゴニスト抗体を用いて4-1B
Bを標的とすることにより、腫瘍クリアランスおよび耐久性抗腫瘍免疫に至り得ることが
示唆される。
【0049】
2つのアゴニスト抗体、ウレルマブおよびウトミルマブは、現在、臨床試験されている
。ウレルマブは強い効力を有するが、炎症性肝臓毒性を示した。肝臓毒性はオンターゲッ
トであるように思われ、このことにより効力から分離されることが困難となる。ウトミル
マブは、ウレルマブより比較的安全であるが、有効性がより低くもある。
【0050】
本発明の実験例において、4-1BBシグナル伝達を独立して活性化する能力がないこ
とを理由に特に選択された2、3の抗4-1BB抗体を試験した。抗4-1BB抗体は、
その単一特異性の形態において、4-1BB単独または細胞表面上の4-1BBに結合し
得る。しかしながら、細胞表面上の4-1BBの結合によっては、4-1BBシグナル伝
達活性化に至らない(例えば、実施例3および図5を参照されたい)。
【0051】
興味深いことに、これらの条件的アゴニスト4-1BB抗体、1A10のうちの1つの
結合断片が、抗CLDN18.2部分をさらに有する二重特異性抗体に組み込まれる場合
、得られた二重特異性抗体は、CLDN18.2結合依存的な仕方で、効率的に4-1B
Bシグナル伝達を活性化することができた(実施例3および図5を参照されたい)。これ
らの試験された二重特異性抗体が、N297A IgG1 Fcを用いてFcγR媒介4
-1BBアゴニズムを無効にすることは留意するに値する。したがって、4-1BBシグ
ナル伝達活性化は、CLDN18.2結合にのみ帰することができる。
【0052】
抗4-1BBアゴニスト抗体、ウレルマブのオンターゲット毒性は、4-1BBアゴニ
ズムにおいて抗体が選択性を欠いていることに帰する。しかしながら、本技術の抗体は、
この限定を克服する能力が容易に認識され得る。CLDN18.2が発現されていない、
または到達可能でない肝臓などの組織において、抗体は、4-1BB媒介細胞傷害を活性
化することができないため、安全である。それに対して、CLDN18.2が過剰発現さ
れている、または到達可能な腫瘍組織において、抗体は、CLDN18.2結合依存性4
-1BBシグナル伝達を活性化し、4-1BB媒介免疫細胞活性化に至り、それによって
腫瘍が処置される。
【0053】
したがって、本開示の一実施形態によれば、提供されるのは、CLDN18.2タンパ
ク質に対する結合特異性を有する抗クローディン18.2(CLDN18.2)単位、お
よび4-1BBタンパク質に対する結合特異性を有する抗4-1BB単位を含む、抗体で
ある。好ましい実施形態において、抗4-1BB単位は、CLDN18.2タンパク質に
結合する抗CLDN18.2単位の非存在下で4-1BBタンパク質に結合したときに、
4-1BBシグナル伝達を活性化することができない。
【0054】
抗4-1BB部分の4-1BBアゴニズムの欠如は、多くの異なる手段によって達成さ
れ得る。その活性化には細胞表面上の4-1BBクラスタ形成が必要とされることが示唆
されている。したがって、いくつかの実施形態において、抗4-1BB単位の細胞上の4
-1BBタンパク質への結合は、CLDN18.2タンパク質に結合する抗CLDN18
.2単位の非存在下で、4-1BBタンパク質のクラスタ形成をもたらさない。
【0055】
4-1BBタンパク質は、4つの細胞外システイン豊富偽反復ドメイン(CRD)、C
RD1、CRD2、CRD3、およびCRD4を有する(以下の表のアミノ酸配列および
CRD領域を参照されたい)。ウレルマブは、N末端CDR1に結合し、4-1BBリガ
ンド(4-1BBL)依存的な仕方で、4-1BBクラスタ形成を活性化する。いくつか
の実施形態において、本発明で開示される抗体の抗4-1BB単位は、CDR1に結合し
ない。いくつかの実施形態において、本発明で開示される抗体の抗4-1BB単位は、C
DR2に結合する。いくつかの実施形態において、本発明で開示される抗体の抗4-1B
B単位は、CDR3に結合する。いくつかの実施形態において、本発明で開示される抗体
の抗4-1BB単位は、CDR4に結合する。
【表2】
【0056】
いくつかの事例において、4-1BBクラスタ形成は、抗4-1BB抗体のエフェクタ
機能によって媒介される場合がある。したがって、いくつかの実施形態において、本開示
の抗体は、エフェクタ機能が低減されているか、またはエフェクタ機能を有しないFc断
片を有する。いくつかの実施形態において、そのようなエフェクタ機能、抗体依存性細胞
媒介性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、または抗体依存性細胞食
作用(ADCP)。
【0057】
抗体のエフェクタ機能は、当技術分野で公知の手法を用いて改変することができる。い
くつかの実施形態において、抗体のFc断片は、FcγRへのその結合を低減または排除
する仕方で、変異されるか、または製造される。いくつかの実施形態において、Fc断片
は、FcγRI(CD64)への結合が低減しているか、またはFcγRI(CD64)
への結合を有しない、いくつかの実施形態において、Fc断片は、FcγRIIA(CD
32)への結合が低減しているか、またはFcγRIIA(CD32)への結合を有しな
い、いくつかの実施形態において、Fc断片は、FcγRIIB(CD32)への結合が
低減しているか、またはFcγRIIB(CD32)への結合を有しない、いくつかの実
施形態において、Fc断片は、FcγRIIIA(CD16a)への結合が低減している
か、またはFcγRIIIA(CD16a)への結合を有しない、いくつかの実施形態に
おいて、Fc断片は、FcγRIIIB(CD16b)への結合が低減しているか、また
はFcγRIIIB(CD16b)への結合を有しない。いくつかの実施形態において、
Fc断片は、C1q(C1複合体の第1のサブコンポーネント)への結合が低減している
か、またはC1qへの結合を有しない。
【0058】
いくつかの実施形態において、Fc断片は、Fc断片のFcγRまたはC1q結合を低
減または排除する1つまたは複数の変異を含む。そのような変異の非限定的な例としては
、IgG1 Fc断片におけるL235E変異、IgG1 Fc断片におけるL234A
変異および/またはL235A変異、IgG1 Fc断片におけるP329G変異または
P329A変異、IgG4 Fc断片におけるF234A変異および/またはL235A
変異もしくはL235E変異、IgG2 Fc断片におけるH268Q変異、V309L
変異、A330S変異、および/またはP331S変異、ならびにIgG2 Fc断片に
おけるV234A変異、G237A変異、P238S変異、H268A変異、V309L
変異、A330S変異、および/またはP331S変異(EUナンバリング)が挙げられ
る。
【0059】
抗体のエフェクタ機能はまた、Fc断片のグリコシル化を減少させるか、または抑制す
ることによって、低減され得る(例えば、非グリコシル化Fc断片)。いくつかの実施形
態において、そのような減少または抑制は、抗体をグリコシル化することができない細胞
株を使用することによって達成することができる。いくつかの実施形態において、Fc断
片は、変異されている。
【0060】
そのような変異の非限定的な例としては、N297(N297A、N297G、および
N297Qなど)(EUナンバリング)での変異が挙げられる。いくつかの実施形態にお
いて、変異はN297Aである。
抗体型および例となる配列
【0061】
実験例において、3つの異なる二重特異性抗体型を試験した。それらの中で、図1のA
の型は、図1のBおよび図1のCのものより高い活性を示した。これらのデータは、本開
示の抗体に適切な型が、抗CLDN18.2部分のためにFab断片を用いてもよいこと
を示唆する。いくつかの実施形態において、型は、抗4-1BB部分のために単鎖断片(
scFv)を含む。いくつかの実施形態において、抗4-1BB部分はFabとFc断片
との間に位置しない。
【0062】
いくつかの実施形態において、抗CLDN18.2単位は、Fab断片を、好ましくは
Fab断片の対を含む。いくつかの実施形態において、抗4-1BB単位は、Fab断片
を、好ましくはFab断片の対を含む。いくつかの実施形態において、抗4-1BB単位
は、scFvを、好ましくはscFv断片の対を含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、抗CLDN18.2単位は、抗4-1BB単位のN末端
側に位置される。いくつかの実施形態において、Fc断片は、抗CLDN18.2単位と
抗4-1BB単位との間に配置される。
【0064】
例となるCDR配列およびVH/VL配列も、抗CLDN18.2単位および抗4-1
BB単位に提供される。いくつかの実施形態において、抗4-1BB単位は、CDRH1
、CDRH2、およびCDRH3を有する重鎖可変領域(VH)と、CDRL1、CDR
L2、およびCDRL3を有する軽鎖可変領域(VL)とを備え、CDRH1は、配列番
号1のアミノ酸配列、または配列番号1からの1個または2個のアミノ酸置換を有するア
ミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2からの
1個または2個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号3
、56、57、58、もしくは59のアミノ酸配列、または配列番号3、56、57、5
8、もしくは59からの1個または2個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、C
DRL1は、配列番号4もしくは60のアミノ酸配列、または配列番号4もしくは60か
らの1個または2個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL2は、配列番
号5もしくは61のアミノ酸配列、または配列番号5もしくは61からの1個または2個
のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号6もしくは62の
アミノ酸配列、または配列番号6もしくは62からの1個または2個のアミノ酸置換を有
するアミノ酸配列を含む。
【表3】

【表4】
【0065】
いくつかの実施形態において、CDRH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含み、CD
RH2は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配列番号3、56、57、
58または59のアミノ酸配列を含み、CDRL1は、配列番号4または60のアミノ酸
配列を含み、CDRL2は、配列番号5または61のアミノ酸配列を含み、CDRL3は
、配列番号6または62のアミノ酸配列を含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、抗4-1BB単位は、配列番号24、46~51および
63~69からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならび
に配列番号25、52~53および70~74からなる群より選択されるアミノ酸配列を
含む軽鎖可変領域(VL)を備える。
【表5】
【0067】
いくつかの実施形態において、抗CLDN18.2単位は、CDRH1、CDRH2、
およびCDRH3を有する重鎖可変領域(VH)と、CDRL1、CDRL2、およびC
DRL3を有する軽鎖可変領域(VL)とを備え、(a)CDRH1は、配列番号7のア
ミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号8のアミノ酸配列を含み、CDRH3は、配
列番号9のアミノ酸配列を含み、CDRL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含み、C
DRL2は、配列番号11のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号12のアミノ
酸配列を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、抗CLDN18.2単位は、CDRH1、CDRH2、
およびCDRH3を有する重鎖可変領域(VH)と、CDRL1、CDRL2、およびC
DRL3を有する軽鎖可変領域(VL)とを備え、(b)CDRH1は、配列番号13の
アミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、CDRH3は
、配列番号15のアミノ酸配列を含み、CDRL1は、配列番号16のアミノ酸配列を含
み、CDRL2は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号18の
アミノ酸配列を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、抗CLDN18.2単位は、CDRH1、CDRH2、
およびCDRH3を有する重鎖可変領域(VH)と、CDRL1、CDRL2、およびC
DRL3を有する軽鎖可変領域(VL)とを備え、(c)CDRH1は、配列番号19の
アミノ酸配列を含み、CDRH2は、配列番号20のアミノ酸配列を含み、CDRH3は
、配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDRL1は、配列番号22のアミノ酸配列を含
み、CDRL2は、配列番号11のアミノ酸配列を含み、CDRL3は、配列番号23の
アミノ酸配列を含む。
【表6】
【0070】
いくつかの実施形態において、抗CLDN18.2単位のVHは、配列番号26、28
、および30からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、抗CLDN18.2単位の
VLは、配列番号27、29、および31からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む
【0071】
いくつかの実施形態において、提供されるのは、図1のAに例示されるような型を採用
する二重特異性抗体である。いくつかの実施形態において、提供されるのは、2つの第1
のポリペプチドおよび2つの第2のポリペプチドを備える抗体であり、各第1のポリペプ
チドは、N末端からC末端まで、重鎖可変領域(VH)、CH1、CH2、CH3、およ
び4-1BBタンパク質に対して特異性を有する単鎖断片(scFv)を有し、各第2の
ポリペプチドは、軽鎖可変領域(VL)、およびCLを有し、各VHは、VLのうちの1
つと対になり、クローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対して特異性を
有し、scFvは、CLDN18.2タンパク質に結合するVH/VL対の非存在下で4
-1BBタンパク質に結合したときに、4-1BBシグナル伝達を活性化することができ
ない。
【0072】
VH/VL対はここで抗CLDN18.2単位を構成し、scFvは抗4-1BB単位
を構成する。CH2-CH3/CH2-CH3対は、Fc断片を構成する。抗CLDN1
8.2単位、抗4-1BB単位、およびFc断片に関する上述の様々な実施形態は、ここ
でも適用可能であってもよい。
【0073】
以下の表は、第1のポリペプチド(重い成分)および第2のポリペプチド(軽い成分)
の非限定的な例を提供する。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドのそれぞ
れは配列番号40のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドのそれぞれは配列番号41
のアミノ酸配列を含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドのそれぞれは配列番号42のアミノ
酸配列を含み、第2のポリペプチドのそれぞれは配列番号43のアミノ酸配列を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドのそれぞれは配列番号44のアミノ
酸配列を含み、第2のポリペプチドのそれぞれは配列番号45のアミノ酸配列を含む。
【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】
【0076】
本明細書で開示される抗体は、抗体が由来した天然に存在する結合ポリペプチドとアミ
ノ酸配列が異なるように修飾されてもよいことも当業者には理解されるであろう。例えば
、指定されたタンパク質に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は類似であってもよ
く、例えば、出発配列に対してある特定のパーセントの同一性を有し、例えば、出発配列
に対して60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または9
9%同一であってもよい。
【0077】
特定の実施形態において、抗体は、通常は抗体と関連付けられていないアミノ酸配列ま
たは1つまたは複数の部分構造を含む。例示的な修飾は、より詳細に以下で説明される。
例えば、本開示の抗体は、フレキシブルリンカ配列を含んでもよく、または機能性の部分
構造(例えば、PEG、薬物、毒物、または標識)を追加するように修飾されてもよい。
【0078】
本開示の抗体、バリアント、またはその誘導体は、修飾された誘導体、すなわち、共有
結合が抗体がエピトープに結合することを阻止しないような、任意の種類の分子の抗体へ
の共有結合によって、修飾された誘導体を含む。例えば、限定する目的ではないが、例え
ば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、リン酸化、アミド化、公知の保護/
ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質へ
の連結などによって、抗体を修飾することができる。多数の化学修飾のうち任意のものは
、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む
がこれらに限定されない公知の手法によって実行されてもよい。さらに、抗体は1つまた
は複数の非古典的アミノ酸を含有してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、抗体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質
、酵素、ウイルス、脂質、生物学的応答調節物質、医薬剤、またはPEGに結合していて
もよい。
【0080】
抗体は、放射性標識、免疫調節物質、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治
療剤、光活性診断剤、薬物または毒物であってもよい細胞傷害性薬剤、超音波増強剤、非
放射性標識、それらの組み合わせ、および当技術分野で公知のそのような他の薬剤などの
検出可能な標識を含んでもよい治療剤に結合または融合していてもよい。
【0081】
抗体は、それを化学発光化合物にカップリングすることによって検出可能に標識され得
る。次いで、化学発光タグを付けた抗原結合ポリペプチドの存在は、化学反応の過程中に
生じる発光の存在を検出することによって決定される。特に有用な化学発光標識化合物の
例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル(ther
omatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩
、およびシュウ塩エステルである。
【0082】
抗体はまた、152Eu、またはランタニド系列の他のものなどの蛍光発光金属を使用
して検出可能に標識され得る。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA
)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート基を使用して抗体に結
合され得る。様々な部分構造を抗体に結合させる手法は、周知であり、例えば、Arno
n et al.,"Monoclonal Antibodies For Immu
notargeting Of Drugs In Cancer Therapy",
in Monoclonal Antibodies And Cancer Ther
apy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243-56(Alan
R.Liss,Inc.(1985);Hellstrom et al.,"Ant
ibodies For Drug Delivery",in Controlled
Drug Delivery (2nd Ed.),Robinson et al.
,(eds.),Marcel Dekker,Inc.,pp.623-53(198
7);Thorpe,"Antibody Carriers Of Cytotoxi
c Agents In Cancer Therapy:A Review",in
Monoclonal Antibodies '84:Biological And
Clinical Applications,Pinchera et al(ed
s.),pp.475-506(1985);"Analysis,Results,A
nd Future Prospective Of The Therapeutic
Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer
Therapy",in Monoclonal Antibodies For Ca
ncer Detection And Therapy,Baldwin et al
.(eds.),Academic Press pp.303-16(1985),a
nd Thorpe et al.,"The Preparation And Cy
totoxic Properties Of Antibody-Toxin Con
jugates",Immunol.Rev.(52:119-58(1982))を参
照されたい。
抗体をコードするポリヌクレオチドおよび抗体を調製する方法
【0083】
本開示はまた、本開示の抗体、バリアント、またはその誘導体をコードする単離された
ポリヌクレオチドまたは核酸分子を提供する。本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌ
クレオチド分子上の、または別々のポリヌクレオチド分子上の、抗原結合ポリペプチド、
バリアント、またはその誘導体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域全体をコードしてもよ
い。さらに、本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上の、または別々
のポリヌクレオチド分子上の、抗原結合ポリペプチド、バリアント、またはその誘導体の
重鎖可変領域および軽鎖可変領域の部分をコードしてもよい。
【0084】
抗体を作製する方法は当技術分野で周知であり、本明細書で説明される。特定の実施形
態において、本開示の抗原結合ポリペプチドの可変領域および定常領域の両方は、完全に
ヒトである。完全にヒトである抗体は、当技術分野で説明される手法を用いて、および本
明細書で説明されるように作製することができる。例えば、特異的な抗原に対する完全に
ヒトである抗体は、抗原投与に応答してそのような抗体を産生するように修飾されている
が内因性遺伝子座は無効にされたトランスジェニック動物に抗原を投与することによって
調製することができる。そのような抗体を作製するために用いられ得る例示的な手法は、
米国特許第6,150,584号明細書、同第6,458,592号明細書、同第6,4
20,140号明細書に説明されており、その全体を参照により引用される。
処置方法
【0085】
本明細書で説明されるように、本開示の抗体、バリアント、または誘導体は、ある特定
の処置および診断方法において用いられてもよい。
【0086】
本開示はさらに、本明細書に記載される障害または病態のうち1つまたは複数を処置す
るために、動物、哺乳動物、およびヒトなどの患者に本開示の抗体を投与する段階を包含
する抗体ベースの治療法を対象とする。本開示の治療用化合物としては、本開示の抗体(
本明細書で説明されるバリアントおよびその誘導体を含む)、および本開示の抗体をコー
ドする核酸またはポリヌクレオチド(本明細書で説明されるバリアントおよびその誘導体
を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
いくつかの実施形態において、提供されるのは、それを必要とする患者においてがんを
処置するための方法である。一実施形態において、方法は、本開示の抗体の有効量を患者
に投与する段階を伴う。いくつかの実施形態において、患者のがん細胞(例えば、間質細
胞)のうちの少なくとも1つはクローディン18.2を過剰発現する。
【0088】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法などの細胞療法も本開示において提供される。
本開示の抗体に接触される(または代替的に、本開示の抗体を発現するように操作された
)適切な細胞が使用され得る。そのような接触または操作がされると、次いで、細胞は処
置を必要とするがん患者に導入され得る。がん患者は本明細書で開示される種類のうちの
いずれかのがんを有してもよい。細胞(例えば、T細胞)は、限定されることなく、例え
ば、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはそれらの組み合わせ
であり得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、細胞は、がん患者自身から単離された。いくつかの実施
形態において、細胞は、ドナーによって、または細胞バンクから提供された。細胞ががん
患者から単離される場合、望ましくない免疫反応は最小限にされ得る。
【0090】
がんの非限定的な例としては、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、頭頚
部癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、膵臓癌、前立腺癌、および甲
状腺癌が挙げられる。いくつかの実施形態において、がんは、胃癌、膵臓癌、食道癌、卵
巣癌、および肺癌のうちの1つまたは複数である。
【0091】
細胞生存の増加に関連付けられる、本開示の抗体もしくはバリアント、またはその誘導
体で処置されても、予防されても、診断されても、かつ/または予測されてもよい追加の
疾患または病態としては、白血病(急性白血病(例えば急性リンパ球性白血病、急性骨髄
球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病を含む))
および慢性白血病(例えば慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病
)を含む)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えばホジキン病および非ホジキン病)、多
発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、ならびに線維肉腫、
粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endothe
liosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioen
dotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横
紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、
汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、
肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫
瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、
上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangiom
a)、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽腫などの肉腫および癌腫を含むがこれらに限定
されない固形腫瘍などの、悪性腫瘍および関連する障害の進行および/または転移が挙げ
られるが、これらに限定されない。
【0092】
任意の特定の患者のための具体的な投与量および処置レジメンは、使用される特定の抗
体、バリアントまたはその誘導体、患者の年齢、体重、総体的な健康、性別、および食習
慣、ならびに投与時間、排出率、薬物の組み合わせ、および処置される特定の疾患の重症
度を含む様々な因子に依存する。医療介護者がそのような因子を判断することは、当技術
分野の通常の技術の範囲内である。量も、処置される個々の患者、投与経路、製剤の種類
、用いられる化合物の特性、疾患の重症度、および所望の効果に依存する。使用量は、当
技術分野で周知である薬理学的および薬物動態学的原理よって決定され得る。
【0093】
抗体、バリアントの投与の方法としては、真皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻
腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。抗原結合ポリペ
プチドまたは組成物は、任意の簡便な経路、例えば、注入またはボーラス注射によって、
上皮または粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜、腸管粘膜など)を介した吸収
によって投与されてもよく、他の生物学的活性剤と一緒に投与されてもよい。したがって
、本開示の抗原結合ポリペプチドを含有する医薬組成物は、経口的に、経直腸的に、非経
口的に、大槽内に、腟内に、腹腔内に、局所的に(粉剤、軟膏剤、点滴剤、または経皮パ
ッチによってのように)、頬側に、または経口もしくは鼻腔用噴霧剤として投与されても
よい。
【0094】
本明細書で用いられるように、「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸
骨下、皮下、および関節内注射および注入を含む投与の様式を指す。
【0095】
投与は、全身性または局所的であり得る。さらに、脳室内および髄腔内注射を含む任意
の適切な経路で中枢神経系へと本開示の抗体を導入することは望ましく、脳室内注射を、
例えばオマヤレザバなどのレザバに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易にして
もよい。経肺投与を、例えば吸入器または噴霧器、およびエアロゾル化剤を有する製剤を
使用することによって用いることもできる。
【0096】
本開示の抗原結合ポリペプチドまたは組成物を、処置が必要な領域に局所的に投与する
ことが望ましい場合があり、これは、限定する目的ではないが、例えば、外科手術中の局
所的注入、局所適用(例えば外科手術後の創傷被覆材と併せて)、注射によって、カテー
テルを用いて、坐剤を用いて、または留置用剤を用いて達成されてもよく、上記留置用剤
は、シラスティック膜などの膜、もしくは繊維を含む、多孔性、非多孔性、もしくはゼラ
チン状の物質である。好ましくは、本開示の抗体を含むタンパク質を投与する場合、タン
パク質が吸収していかない材料を使用するように注意しなければならない。
【0097】
炎症性、免疫性、または悪性の疾患、障害、または病態の処置、抑制、および予防にお
いて有効となる本開示の抗体の量は、標準的な臨床手法によって決定され得る。さらに、
インビトロアッセイを任意選択で用いて、最適な投与量範囲の同定を容易にしてもよい。
製剤に用いられる厳密な用量はまた、投与経路、疾患、障害、または病態の重症度に依存
し、施術者の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効量はインビト
ロまたは動物モデル試験システムに由来する用量反応曲線から推定されてもよい。
【0098】
一般的な提案として、患者に投与される、本開示の抗原結合ポリペプチドの投与量は、
典型的には、患者の体重に対して、0.1mg/kgから100mg/kg、患者の体重
に対して0.1mg/kgから20mg/kg、または、患者の体重に対して1mg/k
gから10mg/kgの間である。一般的に、外来ポリペプチドに対する免疫応答に起因
して、ヒト抗体は、他の種に由来する抗体よりヒトの体内での半減期が長い。したがって
、ヒト抗体の投与量を少なくすること、および投与の頻度を少なくすることが、しばしば
可能である。さらに、本開示の抗体の投与量および投与の頻度は、例えば脂質化などの修
飾によって、抗体の(例えば脳への)摂取および組織透過性を増強することによって、低
減されてもよい。
【0099】
追加の実施形態において、本開示の組成物はサイトカインと組み合わせて投与される。
本開示の組成物と組み合わせて投与されてもよいサイトカインは、IL-2、IL-3、
IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL
-15、抗CD40、CD40L、およびTNF-αであるが、これらに限定されない。
【0100】
追加の実施形態において、本開示の組成物は、例えば、放射線照射療法などの他の治療
または予防レジメンと組み合わせて投与される。
組成物
【0101】
本開示はまた、医薬組成物を提供する。そのような組成物は、有効量の抗体、および許
容可能な担体を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、第2の抗がん剤(例えば
、免疫チェックポイント阻害剤)をさらに含む。
【0102】
特定の実施形態において、「薬学的に許容可能な」という用語は、連邦政府もしくは州
政府の規制機関によって承認されている、または動物およびより詳細にはヒトにおける使
用に関して、米国薬局方もしくは一般に認識されている他の薬局方に収載されていること
を意味する。さらに、「薬学的に許容可能な担体」は、一般に、非毒性の固体、半固体、
もしくは液体の充填剤、希釈剤、封入材料、または任意の種類の製剤補助剤である。
【0103】
「担体」という用語は、治療効果のあるものが共に投与される、希釈剤、アジュバント
、賦形剤、または溶媒を指す。そのような医薬担体は、水、および石油、動物、野菜また
は合成起源のものを含む油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ごま油などの、滅菌液
であり得る。医薬組成物が静脈内に投与される場合、水は好ましい担体である。生理食塩
水およびデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液はまた、特に、注射用溶液のた
めに、液体担体として用いることができる。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グル
コース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル
、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、
乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールなどが挙げ
られる。組成物はまた、所望であれば、微量の湿潤剤または乳化剤、または酢酸塩、クエ
ン酸塩、もしくはリン酸塩などのpH緩衝剤を含有することができる。ベンジルアルコー
ルまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど
の抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、および塩化ナトリウムまたはデ
キストロースなどの浸透圧調節のための剤も、想定される。これらの組成物は、溶液、懸
濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、および徐放性製剤などの形態をとること
ができる。組成物は、トリグリセリドなどの伝統的な結合剤および担体と共に坐剤として
処方することができる。経口製剤は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトー
ス、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マ
グネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。適切な医薬担体の例は、E.W.M
artinによるRemington's Pharmaceutical Scien
cesに記載されており、当文献は参照により本明細書に引用される。そのような組成物
は、患者に適切に投与するための形態を提供するために、好ましくは精製した形態で、適
切な量の担体と一緒に、治療有効量の抗原結合ポリペプチドを含有する。製剤は、投与の
様式に適ったものであるべきである。非経口調製物は、ガラスもしくは合成樹脂製のアン
プル、使い捨て注射器、または複数回用量バイアルに密封され得る。
【0104】
ある実施形態において、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合させた医薬組成物として
慣例的手順に従って処方される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張緩
衝液水溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤、および注射部位における痛み
を和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔剤を含んでもよい。一般に、成分は、例え
ば、活性剤の量を示すアンプルまたは小袋などの密封された容器中の凍結乾燥粉末または
無水濃縮物として、個別にまたは単位剤形中に一緒に混合されて供給される。組成物が注
入によって投与されることになる場合、医薬品グレードの滅菌水または生理食塩水を含有
する注入瓶を用いて調剤することができる。組成物が注射によって投与される場合、注射
用滅菌水または生理食塩水のアンプルは、成分が投与前に混合され得るように、提供され
得る。
【0105】
本開示の化合物は、中性または塩の形態として処方され得る。薬学的に許容可能な塩と
しては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの陰イオンを有
して形成されるもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化
第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチ
ジン、プロカインなどに由来するものなどの陽イオンを有して形成されるものが挙げられ
る。
【実施例0106】
実施例1: 抗CLDN18.2/4-1BB二重特異性抗体の生成
3つの先に同定された抗CLDN18.2抗体、4F11E2、72C1B6A3、お
よび120B7B2、ならびに抗4-1BB抗体、1A10(配列は以下の表に示される
)を選択して、完全長IgG×scFv形態で、抗CLDN18.2-4-1BB二重特
異性抗体を生成した(図1のAに例示される構造)。抗クローディン-18.2部分を完
全IgG部位に配置し、一方で抗4-1BBは、Fc断片のC末端側に配置されたscF
vであった。二重特異性抗体は、Fcγ機能を無効にするためのN297A変異を有する
IgG1骨格を含んだ。
【表12】

【表13】

【表14】
【0107】
4F11E2および1A10の配列も使用して、図1のBおよび図1のCにおいてそれ
ぞれ例示されるように、2つの異なる型の二重特異性抗体を生成した。図1のBの型にお
いて、抗クローディン-18.2部分もFab型を取り、一方で抗4-1BB部分は、抗
クローディン-18.2 FabとFc断片との間に挿入されたscFab断片として提
示された。ここでもIgG1(N297A)を使用した。
【表15】
【0108】
図1のCの型において、抗クローディン-18.2部分は完全IgG1に提示され、一
方で抗4-1BB部分は、FcのC末端側に配置されたscFab断片であった。
【表16】
【0109】
予備試験において、図1のBおよび図1のCにおける型の二重特異性抗体は、4-1B
B結合に関して図1のAにおける型のものによって上回られた。したがって、型図1のA
のもののみに、以下に示すように追加の試験を行った。さらに、E-1A10は、C-1
A10およびD-1A10より強力さがわずかに劣り、したがって、これらもさらなる検
討に含まなかった。
実施例2。抗CLDN18.2/4-1BB二重特異性抗体の抗原結合
【0110】
この実施例では、タンパク質ベースおよび細胞ベースのアッセイを使用して、実施例1
の二重特異性抗体の、CLDN18.2および4-1BBに対する結合活性を評価した。
2.1 4-1BBに対するELISA結合
【0111】
簡潔に説明すると、マイクロタイタプレートを、PBSに0.5μg/mlで希釈され
た100μlのヒト4-1BB-Hisタンパク質で一晩4℃でコーティングし、次いで
、100μl/ウェルの1%BSAでブロッキングした。100nMから始まる3倍希釈
の抗体を、各ウェルに加え、室温で2時間インキュベートした。プレートをPBS/Tw
eenで洗浄し、次いで、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で結合された
ヤギ抗ヒトIgG抗体と共に室温で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをT
MB基質で現像し、プレートリーダによってOD450nmで分析した。図2のAに示す
ように、抗CLDN18.2-4-1BB抗体(C-1A10およびD-1A10)は、
抗4-1BBモノクローナル抗体(1A10およびウレルマブ(BMUR))と匹敵する
結合を示した。
2.2 CLDN18.2に対するELISA結合
【0112】
CLDN18.2結合を試験するために、天然のコンフォメーションを模倣するウイル
ス様粒子(VLP)においてCLDN18.2タンパク質を発現させた。同様に、マイク
ロタイタプレートを、PBSに3μg/mlで希釈された100μlのCLDN18.2
VLPで一晩4℃でコーティングし、次いで、300μl/ウェルの3%BSAでブロ
ッキングした。100nMから始まる3倍希釈の抗体を、各ウェルに加え、37℃で2時
間インキュベートした。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、次いで、ホースラディ
ッシュペルオキシダーゼ(HRP)で結合されたヤギ抗ヒトIgG抗体と共に室温で30
分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で現像し、プレートリーダによ
ってOD450nmで分析した。図2のBに示すように、抗CLDN18.2-4-1B
B抗体(C-1A10およびD-1A10)は、抗CLDN18.2モノクローナル抗体
(I-MAB362)より強い結合を示した。一方では、同じ実験設定において、CLD
N18.1タンパク質に対する結合も試験した。図2のCに示すように、CLDN18.
1に対して交差反応性を示す抗体はなかった。
2.3 二重抗原に対するELISA結合
【0113】
抗CLDN18.2-4-1BB抗体がCLDN18.2および4-1BBに同時に結
合することができることをさらに実証するために、DACE(二重抗原捕獲ELISA(
Dual antigen captured ELISA))試験を実施した。簡潔に
説明すると、マイクロタイタプレートを、PBSに3μg/mlで希釈された100μl
のCLDN18.2 VLPで一晩4℃でコーティングした。次いで、100nMから始
まる3倍希釈の抗体を、各ウェルに加え、37℃で2時間インキュベートした。洗浄後、
次いでプレートを1μg/mlの濃度の100μlのヒト4-1BBビオチンタンパク質
と共に37℃で1時間、続いてストレプトアビジンHRPと共に室温でさらに30分間イ
ンキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で現像し、プレートリーダによってO
D450nmで分析した。図2のDに示すように、D-1A10は、hCLDN18.2
および4-1BBに同時に結合することができる。それに対して、CLDN18.2 m
Ab 72C1B6A3は、このアッセイにおいてはシグナルを示さなかった。
2.4 4-1BBに対する細胞ベース結合
【0114】
抗原結合特性を評価するために、4-1BBが発現されたHEK293に対する結合に
関して、抗CLDN18.2-4-1BB抗体をFACSによって分析した。各ウェル中
1×10個のHEK293-4-1BB細胞の総数を、連続希釈した抗体と共に、FA
CS緩衝液(PBSに2%FBS)中、4℃で30分間インキュベートした。FACS緩
衝液によって洗浄した後、PE共役抗ヒトIgG抗体を各ウェルに加え、4℃で30分間
インキュベートした。洗浄後、FACS CaliberによってPEのMFIを評価し
た。図3に示すように、試験した抗CLDN18.2-4-1BB抗体(C-1A10お
よびD-1A10)は、モノクローナル抗体(1A10およびBMUR)と匹敵する4-
1BBに対する濃度依存的な結合能を示した。
2.5 CLDN18.2に対する細胞ベース結合
【0115】
CLDN18.2への結合能を評価するために、ヒトCLDN18.2を安定的に発現
するCHO-K1細胞株を作製した。次いで、フローサイトメトリを用いて、CHO-C
18.2細胞株を、高発現するもの(CHO-K1C18.2高)および低発現するもの
(CHO-K1C18.2低)に関して選別した。CHO-K1-C18.2細胞を、連
続希釈した抗体と共に、FACS緩衝液中、4℃で30分間インキュベートした。FAC
S緩衝液によって洗浄した後、PE共役抗ヒトIgG抗体を加え、4℃で30分間インキ
ュベートした。FACSによってPEのMFIを評価した。図4のAおよび図4のBに示
すように、抗CLDN18.2-4-1BB抗体は、CLDN18.2が発現された細胞
に濃度依存的な仕方で結合し、一方では、二重特異性抗体の両方は、現在臨床試験中の参
照モノクローナル抗CLDN18.2抗体であるIMAB362より強い結合を示した。
【0116】
SNU620は内在性CLDN18.2発現を有する胃癌細胞株である。図4のCに示
すように、抗CLDN18.2-4-1BB二重特異性抗体は、SNU620も結合する
ことができた。
実施例3。抗CLDN18.2/4-1BB二重特異性抗体の機能活性
3.1 CLDN18.2-4-1BB二重特異性抗体の細胞株ベースの機能特徴付け
【0117】
二重特異性抗体が4-1BBシグナルを促進する能力を試験するために、市販の4-1
BBアッセイを使用した。このアッセイにおいて、GloResponse(商標)NF
κB-luc2/4-1BB Jurkat細胞株(Promega、cat#CS19
6004)をエフェクタ細胞として、およびCLDN18.2またはSNU620を発現
するまたは発現しないCHO-K1を標的細胞として使用した。GloResponse
(商標)NFκB-luc2/4-1BB Jurkat細胞株は、4-1BBおよび応
答エレメントの下流でルシフェラーゼを安定的に発現するように遺伝子修飾されている。
ルシフェラーゼ発現は、抗体が4-1BB受容体に結合されると誘導される。簡潔には、
ウェル当たり2.5×10個の細胞の密度であるエフェクタ細胞を、白色96ウェルプ
レートにおいて、2.5×10個の標的細胞と混合した。6倍連続希釈した抗体を、1
6.7nMから0.28fmまでの範囲の最終濃度で白色96ウェルアッセイプレートに
加えた。37℃で6時間インキュベーションしたあと、ルシフェラーゼの基質を加えるこ
とによって発光を得、マイクロプレートリーダ(PHERAstar)によって測定した
。4つのパラメータロジスティクス曲線分析を、GraphPadソフトウェアを用いて
実施した。
【0118】
図5に示すように、BMURモノクローナル抗体は、41BBシグナル伝達を用量依存
的に高めることができ、一方で、1A10モノクローナル抗体は、同じ実験設定において
、アゴニスト活性を有さなかった。抗CLDN18.2-4-1BB二重特異性抗体D-
1A10およびC-1A10の活性は、CLDN18.2の発現に依存的であった。
3.2 ヒト末梢血単核球(PBMC)免疫応答を促進するための二重特異性抗体の活
【0119】
二重特異性抗体がヒトPBMC応答を刺激する能力を試験するために、サイトカイン産
生アッセイを使用した。0.5μg/mlのヒト抗CD3抗体で刺激したヒトPBMCを
エフェクタ細胞として使用した。CLDN18.2発現CHO-K1を標的細胞として使
用した。ヒトPBMC(1×10個)を、ヒト抗CD3抗体の存在下、CHO-K1-
CLDN18.2または対照CHO-K1細胞(2.5×10個)と共培養した。混合
培養物に、連続希釈した二重特異性抗体を20nMから始まる最終濃度で加えた。48時
間後、IL-2(ヒト)LANCE Ultra TR-FRET検出キットおよびIF
N-γ(ヒト)LANCE Ultra TR-FRET検出キット(PerkinEl
mer)を用いて、培養培地中のIL2およびIFN-γのレベルを測定した。図6に示
すように、二重特異性抗体のみが、CLDN18.2発現細胞の存在下でPBMC応答を
活性化することができる。
【0120】
二重特異性抗体の活性がCLDN18.2レベルと相関していることをさらに実証する
ために、1ドナー由来のヒトPBMCを異なる胃腺癌(GA)PDX由来細胞と共培養し
、これが異なるレベルのC18.2を発現することが証明された。混合培養物に、連続希
釈した二重特異性抗体を20nMから始まる最終濃度で加えた。48時間後、IL-2(
ヒト)LANCE Ultra TR-FRET検出キット(PerkinElmer)
を用いて、培養培地中のIL2のレベルを測定した。図6のDおよび図6のEに示すよう
に、二重特異性抗体D-1A10の活性は、CLDN18.2レベルと相関した。D-1
A10は、CLDN18.2が低発現から中発現された腫瘍においてさえT細胞を有効に
活性化した。
3.3 ヒトCD8+T細胞応答を促進するための二重特異性抗体の活性
【0121】
二重特異性抗体がヒトCD8+T細胞の活性化における能力をさらに試験するために、
PBMCから単離されたヒトCD8+T細胞をエフェクタ細胞として使用した。CLDN
18.2を発現したCHO-K1またはSNU620を標的細胞として使用した。単離さ
れたCD8+T細胞(7.5×10個)を、ヒト抗CD3抗体の存在下、標的細胞(2
.5×10個)と共培養した。混合培養物に、連続希釈した二重特異性抗体を20nM
から始まる最終濃度で加えた。共培養の48時間後、IL-2(ヒト)LANCE Ul
tra TR-FRET検出キットおよびIFN-γ(ヒト)LANCE Ultra
TR-FRET検出キット(PerkinElmer)を用いて、培養培地中のIL2お
よびIFN-γのレベルを測定した。図7に示すように、二重特異性抗体C-1A10お
よびD-1A10は、CHO-K1を過剰発現しているC18.2(図7のA~図7のB
)、または内在的にC18.2を発現するSNU620(図7のC~図7のD)の存在下
、活性化されたCD8+T細胞のIL2およびIFN-γ両方の産生を増加させることが
できる。
実施例4。抗CLDN18.2-4-1BB二重特異性抗体による腫瘍増殖抑制
【0122】
ヒト4-1BBの細胞外ドメインを発現したヒト化マウスを使用した。マウス結腸腺癌
細胞(MC38)を操作してヒトCLDN18.2.を発現させた。ヒト化マウス(h4
-1BB)にMC38-hCLDN18.2細胞を皮下的に移植した。3日毎に5回、以
下の抗体、アイソタイプ対照(10mg/kg)、抗CLDN18.2抗体(10mg/
kg)、抗4-1BB抗体(10mg/kg)、抗CLDN18.2(10mg/kg)
と抗4-1BB(10mg/kg)との組み合わせ、ならびに抗CLDN18.2-4-
1BB二重特異性抗体(13.3mg/kg)をマウスに腹腔内投与した。キャリパ測定
法によって、実験の期間中週2回、腫瘍体積をモニタリングした。二重特異性抗体によっ
て誘導された腫瘍増殖抑制は、各標的モノクローナル抗体の組み合わせより著しく大きく
図8に示される。抗体の機構をさらに理解するために、腫瘍浸潤リンパ球および末梢リ
ンパ球を回収し、フローサイトメトリによってCD3+T細胞の割合を得るために分析し
た。結果は、二重特異性抗体が、腫瘍微小環境においてCD3+T細胞の数を特異的に増
加させ得る一方で、末梢血には影響を与えないことを示した。
【0123】
同じ動物モデルを使用する別の繰り返し実験において、インビボ効力をさらに証明した
図9のAに、各群における各動物の腫瘍増殖曲線を示した。抗CLDN18.2-4-
1BB抗体(C-1A10)の腫瘍増殖抑制は、検討の終わりにおいて105%に達した
。二重特異性の群の7匹のマウスのうち6匹は、1回目の処置後25日目までに腫瘍なし
となった。
【0124】
さらに、この実施例では、1回目の腫瘍接種の35日後、反対側の側腹部にMC38-
hCLDN18.2腫瘍細胞の2回目の用量を用いて、すべての抗CLDN18.2-4
-1BB抗体(C-1A10)処置済み動物を再暴露させ、追加の処置をせずに腫瘍増殖
をモニタリングした。結果は、ナイーブマウスにおいて腫瘍細胞は増殖し続けるが、すべ
てのBsAb処置済みマウスは腫瘍再暴露に対して耐性があり、検討の終わりまで腫瘍な
しと見なされることを示し(図9のB)、本発明の二重特異性抗体が、MC38腫瘍に対
して長期保護的免疫記憶を誘導し得ることを示唆した。同様に、マウスが同じ処置を受け
たサテライト群(N=3/群)において、抗体の2回目の用量の3日後、腫瘍を抽出して
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を定量化した。CD45TILおよびCD8TILの割
合は、BsAb処置群において、著しく高かった。それに対して、末梢リンパ球への効果
はなかった(図9のC)。
【0125】
抗CLDN18.2-4-1BB二重特異性抗体の抗腫瘍効力をさらに評価するために
、二重特異性抗体を異なる濃度で、MC38-hCLDN18.2抗体を移植された4-
1BBヒト化マウスに与えた。3日毎に4回、以下の抗体、アイソタイプ対照(10mg
/kg)、C-1A10(13.3mg/kg)、C-1A10(2.6mg/kg)、
C-1A10(0.5mg/kg)、D-1A10(13.3mg/kg)、D-1A1
0(2.6mg/kg)、D-1A10(0.5mg/kg)をマウスに腹腔内投与した
。キャリパ測定法によって、実験の期間中週2回、腫瘍体積をモニタリングした。図10
に示すように、C-1A10およびD-1A10両方は、用量依存的な仕方で腫瘍増殖を
抑制することができた。
【0126】
ヒト化マウス様式において、抗CLDN18.2-4-1BBの薬物動態学的(PK)
および薬力学的関係を理解するために、3つの異なる濃度でD-1A10の単回投与を担
腫瘍ヒト化マウスに与えた。血清濃度を様々な時間点で測定した。図11に示すように、
全体として、用量依存的なPKプロファイルを示した。そして、インビボ効力は用量レベ
ルと相関した。エクスビボTIL分析は、CD8+細胞およびCD45+細胞の用量依存
的な増加を示唆した。
実施例5。追加の条件的アゴニスト完全ヒト抗4-1BB抗体の試験
【0127】
以下の抗4-1BB抗体を、高親和性で4-1BBに結合し、結合したとき4-1BB
シグナル伝達を活性化しない能力に関して同定した。
【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

5.1 ELISAによって測定された抗原結合
【0128】
抗原結合活性を評価するために、抗体に対してELISA試験を行った。簡潔に説明す
ると、マイクロタイタプレートを、0.1μg/mlのヒト4-1BB-Fcタンパク質
のPBS溶液で100μl/ウェルで一晩4℃でコーティングし、次いで、100μl/
ウェルの5%BSAでブロッキングした。10μg/mlから始まる5倍希釈の抗体を、
各ウェルに加え、室温で1~2時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween
で洗浄し、次いで、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で結合されたヤギ抗
ヒトIgG抗体と共に室温で1時間インキュベートする。洗浄後、プレートをTMB基質
で現像し、分光光度計によってOD450~630nmで分析した。試験された抗4-1
BB抗体は、4-1BB結合能を示した。
5.2 FACSによって測定された細胞結合
【0129】
抗原結合特性を評価するために、4-1BBが発現された哺乳動物に対する結合に関し
て、候補抗体をFACSによって分析した。簡潔に説明すると、4-1BB-Jurka
t細胞を抗体と共にインキュベートした。FACS緩衝液(PBSに1%BSA)によっ
て洗浄した後、FITC抗ヒトIgG抗体を各ウェルに加え、4℃で1時間インキュベー
トした。FACS CaliberによってFITCのMFIを評価した。試験された抗
4-1BB抗体は、細胞表面上で発現する4-1BBに対する結合能を示したし、哺乳動
物細胞上で発現された4-1BBに効率的に結合し得る。
5.3 4-1BBに関するタンパク質動態
【0130】
抗体の結合動態を調べるために、この実施例では、Octet Red96を使用して
、親和性ランキングを実施した。表5に示すように、試験された抗4-1BB抗体は、高
い4-1BB結合親和性を有した。
【表22】
【0131】
本開示は、本開示の個々の態様の単一の例示として意図される、説明される特定の実施
形態によって範囲を限定されるものではなく、機能的に同等であるいかなる組成物または
方法も本開示の範囲内にある。本開示の方法および組成物において、様々な修正および変
形が、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく行われ得ることは、当業者に明らか
となろう。したがって、本開示は、修正および変形が添付の特許請求の範囲およびその同
等物の範囲内にあることを条件として、本開示の修正および変形を包含することが意図さ
れる。
【0132】
本明細書において言及されるすべての公報および特許出願は、各個別の公報または特許
出願が具体的にかつ個別に参照により引用されることを示された場合と同じ程度に、本明
細書において参照により引用される。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
CLDN18.2タンパク質に対する結合特異性を有する抗クローディン18.2(CLDN18.2)単位と、
4-1BBタンパク質に対する結合特異性を有する抗4-1BB単位とを含み、
前記抗4-1BB単位は、CLDN18.2タンパク質に結合する前記抗CLDN18.2単位の非存在下で4-1BBタンパク質に結合したときに、4-1BBシグナル伝達を活性化することができない、
抗体。
(項目2)
前記抗4-1BB単位の細胞上の4-1BBタンパク質への前記結合は、CLDN18.2タンパク質に結合する抗CLDN18.2単位の非存在下で、前記4-1BBタンパク質のクラスタ形成をもたらさない、項目1に記載の抗体。
(項目3)
低減されたエフェクタ機能を有するFc断片をさらに含む、項目1または2に記載の抗体。
(項目4)
前記エフェクタ機能は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、または抗体依存性細胞食作用(ADCP)である、項目3に記載の抗体。
(項目5)
前記Fc断片は、FcγRもしくはC1qへの結合が低減しているか、またはFcγRもしくはC1qへの結合を有しない、項目4に記載の抗体。
(項目6)
前記Fc断片は、FcγRもしくはC1q結合を低減するか、または排除する1つまたは複数の変異を有する、項目5に記載の抗体。
(項目7)
前記Fc断片は、
L235E変異を有するIgG1 Fc断片、
L234A変異および/またはL235A変異を有するIgG1 Fc断片、
P329G変異またはP329A変異を有するIgG1 Fc断片、
F234A変異および/またはL235A変異もしくはL235E変異を有するIgG4 Fc断片、
H268Q変異、V309L変異、A330S変異、および/またはP331S変異を有するIgG2 Fc断片、ならびに
V234A変異、G237A変異、P238S変異、H268A変異、V309L変異、A330S変異、および/またはP331S変異(EUナンバリング)を有するIgG2 Fc断片
からなる群より選択される、項目6に記載の抗体。
(項目8)
前記Fc断片は非グリコシル化されている、項目3に記載の抗体。
(項目9)
前記Fc断片は、グリコシル化を排除する変異を含む、項目8に記載の抗体。
(項目10)
前記変異は、N297、任意選択でN297A、N297G、またはN297Qにある、項目9に記載の抗体。
(項目11)
前記Fc断片は、N297Aの変異、またはL234AおよびL235Aの変異の組み合わせを含む、項目3に記載の抗体。
(項目12)
前記抗CLDN18.2単位はFab断片を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の抗体。
(項目13)
前記抗CLDN18.2単位はFab断片の対を含む、項目12に記載の抗体。
(項目14)
前記抗4-1BB単位はFab断片または単鎖断片(scFv)を含む、項目1~13のいずれか一項に記載の抗体。
(項目15)
前記抗4-1BB単位はscFv断片の対を含む、項目14に記載の抗体。
(項目16)
前記scFvは、抗CLDN18.2単位のFc断片のC末端側にある、項目14または15に記載の抗体。
(項目17)
前記抗4-1BB単位は、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を有する重鎖可変領域(VH)と、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を有する軽鎖可変領域(VL)とを備え、
前記CDRH1は、配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1からの1個または2個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2は、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2からの1個または2個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3は、配列番号3、56、57、58、もしくは59のアミノ酸配列、または配列番号3、56、57、58、もしくは59からの1個または2個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1は、配列番号4もしくは60のアミノ酸配列、または配列番号4もしくは60からの1個または2個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2は、配列番号5もしくは61のアミノ酸配列、または配列番号5もしくは61からの1個または2個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3は、配列番号6もしくは62のアミノ酸配列、または配列番号6もしくは62からの1個または2個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、
項目1~16のいずれか一項に記載の抗体。
(項目18)
前記抗4-1BB単位は、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を有する重鎖可変領域(VH)と、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を有する軽鎖可変領域(VL)とを備え、
前記CDRH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3は、配列番号3、56、57、58または59のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1は、配列番号4または60のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2は、配列番号5または61のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3は、配列番号6または62のアミノ酸配列を含む、
項目1~16のいずれか一項に記載の抗体。
(項目19)
前記抗4-1BB単位は、配列番号24、46~51および63~68からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに配列番号25、52~53および69~74からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を備える、項目1~18のいずれか一項に記載の抗体。
(項目20)
前記抗CLDN18.2単位は、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を有する重鎖可変領域(VH)と、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を有する軽鎖可変領域(VL)とを備え、
(a)前記CDRH1は、配列番号7のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2は、配列番号8のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2は、配列番号11のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3は、配列番号12のアミノ酸配列を含み、
(b)前記CDRH1は、配列番号13のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3は、配列番号15のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1は、配列番号16のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3は、配列番号18のアミノ酸配列を含み、または
(c)前記CDRH1は、配列番号19のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2は、配列番号20のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3は、配列番号21のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1は、配列番号22のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2は、配列番号11のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3は、配列番号23のアミノ酸配列を含む、
項目1~19のいずれか一項に記載の抗体。
(項目21)
前記抗CLDN18.2単位の前記VHは、配列番号26、28、および30からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、前記抗CLDN18.2単位の前記VLは、配列番号27、29、および31からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、項目20に記載の抗体。
(項目22)
2つの第1のポリペプチドおよび2つの第2のポリペプチドを備える抗体であって、
各前記第1のポリペプチドは、N末端からC末端まで、重鎖可変領域(VH)、CH1、CH2、CH3、および4-1BBタンパク質に対して特異性を有する単鎖断片(scFv)を有し、
各前記第2のポリペプチドは、軽鎖可変領域(VL)、およびCLを有し、
各前記VHは、前記VLのうちの1つと対になり、クローディン18.2(CLDN18.2)タンパク質に対して特異性を有し、
前記scFvは、CLDN18.2タンパク質に結合する前記VH/VL対の非存在下で4-1BBタンパク質に結合したときに、4-1BBシグナル伝達を活性化することができない、
抗体。
(項目23)
前記CH2および前記CH3は、低減されたエフェクタ機能を有するFc断片を構成する、項目22に記載の抗体。
(項目24)
前記Fc断片は、
L235E変異を有するIgG1 Fc断片、
L234A変異および/またはL235A変異を有するIgG1 Fc断片、
P329G変異またはP329A変異を有するIgG1 Fc断片、
F234A変異および/またはL235A変異もしくはL235E変異を有するIgG4 Fc断片、
H268Q変異、V309L変異、A330S変異、および/またはP331S変異を有するIgG2 Fc断片、ならびに
V234A変異、G237A変異、P238S変異、H268A変異、V309L変異、A330S変異、および/またはP331S変異(EUナンバリング)を有するIgG2 Fc断片からなる群より選択される、
項目23に記載の抗体。
(項目25)
前記Fc断片は、N297、任意選択でN297A、N297G、またはN297Qに変異を含む、項目23に記載の抗体。
(項目26)
前記scFvは、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を有する重鎖可変領域(VH)と、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を有する軽鎖可変領域(VL)とを備え、
前記CDRH1は、配列番号1のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3は、配列番号3、56、57、58または59のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1は、配列番号4または60のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2は、配列番号5または61のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3は、配列番号6または62のアミノ酸配列を含む、
項目22~25のいずれか一項に記載の抗体。
(項目27)
前記scFvは、配列番号24、46~51および63~68からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに配列番号25、52~53および69~74からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を備える、項目22~26のいずれか一項に記載の抗体。
(項目28)
前記VH/VL対の前記VHは、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含み、前記VH/VL対の前記VLは、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
(a)前記CDRH1は、配列番号7のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2は、配列番号8のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2は、配列番号11のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3は、配列番号12のアミノ酸配列を含み、
(b)前記CDRH1は、配列番号13のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3は、配列番号15のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1は、配列番号16のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3は、配列番号18のアミノ酸配列を含み、または
(c)前記CDRH1は、配列番号19のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2は、配列番号20のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3は、配列番号21のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1は、配列番号22のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2は、配列番号11のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL3は、配列番号23のアミノ酸配列を含む、
項目22~27のいずれか一項に記載の抗体。
(項目29)
前記VH/VL対の前記VHは、配列番号26、28、および30からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、前記VH/VL対の前記VLは、配列番号27、29、および31からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、項目27に記載の抗体。
(項目30)
前記第1のポリペプチドのそれぞれは配列番号40のアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチドのそれぞれは配列番号41のアミノ酸配列を含む、項目22に記載の抗体。
(項目31)
前記第1のポリペプチドのそれぞれは配列番号42のアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチドのそれぞれは配列番号43のアミノ酸配列を含む、項目22に記載の抗体。
(項目32)
前記第1のポリペプチドのそれぞれは配列番号44のアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチドのそれぞれは配列番号45のアミノ酸配列を含む、項目22に記載の抗体。
(項目33)
項目1~32のいずれか一項に記載の抗体をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド。
(項目34)
項目1~32のいずれか一項に記載の抗体および薬学的に許容可能な担体を含む組成物。
(項目35)
がんを処置するための薬剤の調製のための、項目1~32のいずれか一項に記載の抗体の使用。
(項目36)
それを必要とする患者においてがんを処置するための方法であって、項目1~32のいずれか一項に記載の抗体を前記患者に投与する段階を含む方法。
(項目37)
前記がんは、対応する正常細胞と比較してCLDN18.2を過剰発現するがん細胞によって特徴付けられる、項目35に記載の使用または項目36に記載の方法。
(項目38)
前記がんは上皮性腫瘍である、または前記がんは、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、頭頚部癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、膵臓癌、前立腺癌、および甲状腺癌からなる群より選択される、項目35または項目37に記載の使用、または項目36または項目37に記載の方法。
(項目39)
前記がんは、胃癌、膵臓癌、食道癌、肺癌、および卵巣癌からなる群より選択される、項目35または項目37に記載の使用、または項目36または項目37に記載の方法。
【0133】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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【外国語明細書】