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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182858
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】方向性結合器
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/18 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
H01P5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153794
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】金 良守
(57)【要約】      (修正有)
【課題】方向性結合器において、主線路を通流する高周波信号の伝送特性の劣化を抑制する方向性結合器を提供する。
【解決手段】方向性結合器10は、主線路20、副線路31、副線路32およびスイッチSW91を備える。副線路31および副線路32は、主線路20に電磁気的に結合する。スイッチSW91は、副線路31の端部311と端部312と間に接続され、端部311と端部312の短絡、開放を切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主線路と、
前記主線路に電磁気的に結合する第1副線路および第2副線路と、
前記第1副線路の第1端と第2端との間に接続され、前記第1端と前記第2端との短絡、開放を切り替える短絡スイッチ回路と、
を備える、
方向性結合器。
【請求項2】
前記第1副線路および前記第2副線路に接続する結合端子および終端回路と、
前記第1副線路および前記第2副線路と、前記結合端子および前記終端回路との間に接続される副線路切替スイッチ回路と、
を備える、
請求項1に記載の方向性結合器。
【請求項3】
前記副線路切替スイッチ回路は、
前記結合端子と前記終端回路に対して、前記第1副線路または前記第2副線路を択一的に切り替えて接続する、
請求項2に記載の方向性結合器。
【請求項4】
前記副線路切替スイッチ回路は、前記第2副線路を前記結合端子と前記終端回路とに接続するとき、
前記短絡スイッチ回路は、前記第1副線路の前記第1端と前記第2端とを短絡させる、
請求項3に記載の方向性結合器。
【請求項5】
前記副線路切替スイッチ回路は、前記第1副線路を前記結合端子と前記終端回路とに接続するとき、
前記短絡スイッチ回路は、前記第1副線路の前記第1端と前記第2端とを開放する、
請求項3に記載の方向性結合器。
【請求項6】
前記副線路切替スイッチ回路は、
前記第1端を前記結合端子に接続し、前記第2端を前記終端回路に接続する第1接続態様と、
前記第2端を前記終端回路に接続し、前記第1端を前記結合端子に接続する第2接続態様と、
を有し、
前記第1接続態様と前記第2接続態様とを切り替える、
請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の方向性結合器。
【請求項7】
前記副線路切替スイッチ回路は、
前記第1端と前記第2端とを接続する第3接続態様を有し、
前記第1接続態様、前記第2接続態様、および、前記第3接続態様を切り替え、
前記短絡スイッチ回路の前記短絡の状態は、前記第3接続態様によって実現される、
請求項6に記載の方向性結合器。
【請求項8】
前記副線路切替スイッチ回路は、
前記第1端と前記結合端子との間に接続される第1スイッチと、
前記第2端と前記結合端子との間に接続される第2スイッチと、
前記第1端と前記終端回路との間に接続される第3スイッチと、
前記第2端と前記終端回路との間に接続される第4スイッチと、
を備え、
前記短絡スイッチ回路は、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの組合せ、または、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの組合せによって構成される、
請求項7に記載の方向性結合器。
【請求項9】
前記短絡スイッチ回路は、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの組合せによって構成される、
請求項8に記載の方向性結合器。
【請求項10】
前記副線路切替スイッチ回路は、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチと前記結合端子との間の短絡、開放を切り替える、第5スイッチを備える、
請求項8または請求項9に記載の方向性結合器。
【請求項11】
前記第1スイッチと前記第2スイッチとによって前記第3接続態様が実現されるとき、
前記第5スイッチは、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチと前記結合端子との間を開放する、
請求項10に記載の方向性結合器。
【請求項12】
前記第1スイッチと前記第4スイッチとによって前記第1接続態様が実現されるとき、
前記第5スイッチは、前記第1スイッチと前記結合端子との間を短絡させる、
請求項10または請求項11に記載の方向性結合器。
【請求項13】
前記短絡スイッチ回路は、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの組合せによって構成される、
請求項8に記載の方向性結合器。
【請求項14】
前記副線路切替スイッチ回路は、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチと前記終端回路との間の短絡、開放を切り替える、第6スイッチを備える、
請求項8または請求項13に記載の方向性結合器。
【請求項15】
前記第3スイッチと前記第4スイッチとによって前記第3接続態様が実現されるとき、
前記第6スイッチは、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチと前記結合端子との間を開放する、
請求項14に記載の方向性結合器。
【請求項16】
前記第2スイッチと前記第3スイッチとによって第2接続態様が実現されるとき、
前記第6スイッチは、前記第3スイッチと前記結合端子との間を短絡させる、
請求項14または請求項15に記載の方向性結合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主線路と複数の副線路とを備えた方向性結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主線路と複数の結合線路とを備える方向性結合器が記載されている。複数の結合線路は、第1結合線路と第2結合線路とを有し、それぞれが主線路に電磁界結合可能に配置される。
【0003】
また、特許文献1に記載の方向性結合器は、結合出力端子、終端抵抗、および、スイッチ回路を備える。スイッチ回路は、第1結合線路および第2結合線路を切り替えて、結合出力端子と終端抵抗とに接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許10498004号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すように、複数の結合線路(副線路)を用いる構成では、主線路と複数の副線路との間に生じる結合容量によって、主線路を通流する高周波信号の伝送特性が劣化することがあった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、複数の副線路を有する方向性結合器において、主線路を通流する高周波信号の伝送特性の劣化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の方向性結合器は、主線路、第1副線路、第2副線路、および、短絡スイッチ回路を備える。第1副線路および第2副線路は、主線路に電磁気的に結合する。短絡スイッチ回路は、第1副線路の第1端と第2端と間に接続され、第1端と第2端との短絡、開放を切り替える。
【0008】
この構成では、第1副線路の第1端と第2端とを開放することで、主線路を通流する高周波信号に対する検出信号の取出しに第1副線路を利用できる。さらに、第1副線路の第1端と第2端とが短絡されることで、主線路に対する結合容量を調整できる。これにより、主線路の伝送特性における減衰極を調整でき、主線路の伝送特性の劣化が抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、方向性結合器において、主線路を通流する高周波信号の伝送特性の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る方向性結合器の等価回路図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る方向性結合器の第1の接続構成を示す状態図である。
図4図4は、主線路の伝送特性(S21)のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図5図5は、第1の実施形態に係る方向性結合器の第2の接続構成を示す状態図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る方向性結合器の第3の接続構成を示す状態図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る方向性結合器の第4の接続構成を示す状態図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
図9図9は、第2の実施形態に係る方向性結合器の第1の接続構成を示す状態図である。
図10図10は、第2の実施形態に係る方向性結合器の第2の接続構成を示す状態図である。
図11図11は、第3の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
図12図12は、第3の実施形態に係る方向性結合器の第1の接続構成を示す状態図である。
図13図13は、第3の実施形態に係る方向性結合器の第2の接続構成を示す状態図である。
図14図14は、第4の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
図15図15は、第4の実施形態に係る方向性結合器の第1の接続構成を示す状態図である。
図16図16は、第4の実施形態に係る方向性結合器の第2の接続構成を示す状態図である。
図17図17は、第5の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
図18図18は、第5の実施形態に係る方向性結合器の第1の接続構成を示す状態図である。
図19図19は、第5の実施形態に係る方向性結合器の第2の接続構成を示す状態図である。
図20図20は、第6の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
図21図21は、第6の実施形態に係る方向性結合器の第1の接続構成を示す状態図である。
図22図22は、第6の実施形態に係る方向性結合器の第2の接続構成を示す状態図である。
図23図23は、第7の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
図24図24は、第8の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
図25図25は、第9の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
図26図26は、第10の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
図27図27は、主線路の伝送特性(S21)のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図28図28は、第11の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
図29図29は、第12の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
図30図30(A)、図30(B)、図30(C)は、第13の実施形態に係る方向性結合器の主線路および副線路の平面図である。
図31図31は、第13の実施形態に係る方向性結合器の構造を概略的に示す断面図である。
図32図32は、第14の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。図2は、第1の実施形態に係る方向性結合器の等価回路図である。
【0012】
図1に示すように、方向性結合器10は、主線路20、副線路31、副線路32、スイッチ回路41、スイッチ回路42、スイッチSW91、スイッチSW92、入出力端子P21、入出力端子P22、結合端子Pcp、および、終端回路80を備える。
【0013】
主線路20、副線路31、副線路32は、例えば、絶縁性基板に形成された導体パターンによって形成される。スイッチ回路41、スイッチ回路42、スイッチSW91、スイッチSW92、および、終端回路80は、例えば、絶縁性基板に実装された実装型電子部品、絶縁性基板に形成された導体パターンによって形成される。入出力端子P21、入出力端子P22、および、結合端子Pcpは、例えば、絶縁性基板に形成された端子用導体パターンによって形成される。
【0014】
主線路20は、所定方向に延びる形状(例えば、線状)である。主線路20の一方端は、入出力端子P21に接続し、主線路20の他方端は、入出力端子P22に接続する。
【0015】
副線路31は、主線路20に対して電磁気的に結合するように配置される。例えば、副線路31は、主線路20の延びる方向に沿って、所定間隔を空けて並走する。この際、副線路31は、主線路20に対して第1周波数帯域において所望の結合度が得られるように、形状、主線路20に対する配置が決められている。
【0016】
副線路32は、主線路20に対して電磁気的に結合するように配置される。例えば、副線路32は、主線路20の延びる方向に沿って、所定間隔を空けて並走する。この際、副線路32は、主線路20に対して第2周波数帯域において所望の結合度が得られるように、形状、主線路20に対する配置が決められている。
【0017】
第2周波数帯域は、第1周波数帯域と完全には一致しない。言い換えれば、第2周波数帯域と第1周波数帯域とは異なる。例えば、第2周波数帯域は、第1周波数帯域よりも高周波数側の周波数帯域である。この場合、図1に示すように、副線路32が主線路20に並走する長さは、副線路31が主線路20に並走する長さよりも短い。例えば、第2周波数帯域は、1.5[GHz]以上の周波数帯域であって、所定の周波数帯域幅を有し、第1周波数帯域は、1.5[GHz]未満の周波数帯域であって、所定の周波数帯域幅を有する。なお、この第1周波数帯域と第2周波数帯域とは、一例であり、これに限るものではない。
【0018】
副線路31は、延びる方向の一方端に端部311を有し、延びる方向の他方端に端部312を有する。副線路32は、延びる方向の一方端に端部321を有し、延びる方向の他方端に端部322を有する。これら副線路31および副線路32は、いずれか一方が、本発明の「第1副線路」に対応し、他方が、本発明の「第2副線路」に対応する。そして、副線路31が第1副線路の場合、端部311が、本発明の「第1端」に対応し、端部312が、本発明の「第2端」に対応する。副線路32が第1副線路の場合、端部321が、本発明の「第1端」に対応し、端部322が、本発明の「第2端」に対応する。なお、副線路31が第1副線路の場合、端部312が、本発明の「第1端」に対応し、端部311が、本発明の「第2端」に対応してもよい。また、副線路32が第1副線路の場合、端部322が、本発明の「第1端」に対応し、端部321が、本発明の「第2端」に対応してもよい。
【0019】
スイッチ回路41は、スイッチSW11、スイッチSW12、スイッチSW13、および、スイッチSW14を備える。スイッチSW11は、副線路31の端部311と結合端子Pcpとの間に接続され、端部311と結合端子Pcpとの短絡、開放を切り替える。スイッチSW12は、副線路31の端部312と結合端子Pcpとの間に接続され、端部312と結合端子Pcpとの短絡、開放を切り替える。スイッチSW13は、副線路31の端部311と終端回路80との間に接続され、端部311と終端回路80との短絡、開放を切り替える。スイッチSW14は、副線路31の端部312と終端回路80との間に接続され、端部312と終端回路80との短絡、開放を切り替える。
【0020】
スイッチSW11の結合端子Pcp側とスイッチSW12の結合端子Pcp側とは、互いに接続されている。スイッチSW13の終端回路80側とスイッチSW14の終端回路80側とは、互いに接続されている。副線路31が「第1副線路」のとき、スイッチSW11、スイッチSW12、スイッチSW13、および、スイッチSW14が、それぞれに、本発明の「第1スイッチ」、「第2スイッチ」、「第3スイッチ」、および、「第4スイッチ」に対応する。
【0021】
スイッチ回路42は、スイッチSW21、スイッチSW22、スイッチSW23、および、スイッチSW24を備える。スイッチSW21は、副線路32の端部321と結合端子Pcpとの間に接続され、端部321と結合端子Pcpとの短絡、開放を切り替える。スイッチSW22は、副線路31の端部322と結合端子Pcpとの間に接続され、端部322と結合端子Pcpとの短絡、開放を切り替える。スイッチSW23は、副線路32の端部321と終端回路80との間に接続され、端部321と終端回路80との短絡、開放を切り替える。スイッチSW24は、副線路32の端部322と終端回路80との間に接続され、端部322と終端回路80との短絡、開放を切り替える。
【0022】
スイッチSW21の結合端子Pcp側とスイッチSW22の結合端子Pcp側とは、互いに接続されている。スイッチSW23の終端回路80側とスイッチSW24の終端回路80側とは、互いに接続されている。副線路32が「第1副線路」のとき、スイッチSW21、スイッチSW22、スイッチSW23、および、スイッチSW24が、それぞれに、本発明の「第1スイッチ」、「第2スイッチ」、「第3スイッチ」、および、「第4スイッチ」に対応する。
【0023】
なお、方向性結合器10では、「第1スイッチ」、「第2スイッチ」、「第3スイッチ」、および、「第4スイッチ」が副線路31及び副線路32の双方に備えられているが、「第1スイッチ」、「第2スイッチ」、「第3スイッチ」、および、「第4スイッチ」は副線路31または副線路32のいずれか一方にのみ設けられていてもよい。スイッチ回路41、及び、スイッチ回路42が、本発明の「副線路切替スイッチ」に対応する。
【0024】
スイッチSW91は、副線路31の端部311と端部312との間に接続される。スイッチSW91は、端部311と端部312との短絡、開放を切り替える。副線路31が「第1副線路」のとき、スイッチSW91が、本発明の「短絡スイッチ回路」に対応する。
【0025】
スイッチSW92は、副線路32の端部321と端部322との間に接続される。スイッチSW92は、端部321と端部322との短絡、開放を切り替える。副線路32が「第1副線路」のとき、スイッチSW92が、本発明の「短絡スイッチ回路」に対応する。
【0026】
なお、方向性結合器10では、「短絡スイッチ回路」が副線路31及び副線路32の双方に備えられているが、「短絡スイッチ回路」は副線路31または副線路32のいずれか一方にのみ設けられていてもよい。
【0027】
終端回路80は、可変抵抗Rtと可変コンデンサCtとを備える。可変抵抗Rtと可変コンデンサCtの並列回路は、スイッチSW13、スイッチSW14、スイッチSW23、および、スイッチSW24を基準電位に接続する。
【0028】
このような構成では、図2に示すように、主線路20(インダクタンスL20)と副線路31(インダクタンスL31)との間に、結合容量C231が発生する。また、主線路20(インダクタンスL20)と副線路32(インダクタンスL32)との間に、結合容量C232が発生する。言い換えれば、方向性結合器10は、結合容量C231を調整することで、主線路20と副線路31との電磁気的な結合度を調整でき、所望レベルの結合信号を、第1副線路31に取り出すことができる。また、方向性結合器10は、結合容量C232を調整することで、主線路20と副線路32との電磁気的な結合度を調整でき、所望レベルの結合信号を、第2副線路32に取り出すことができる。
【0029】
[方向性結合器10の接続構成]
上述の構成からなる方向性結合器10は、次に示す各種の接続構成によって、主線路20に通流する高周波信号に対する検出信号を、結合端子Pcpから出力する。
【0030】
(1-1)副線路32の端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する構成
図3は、第1の実施形態に係る方向性結合器の第1の接続構成を示す状態図である。
【0031】
図3に示すように、スイッチ回路42のスイッチSW21およびスイッチSW24は、短絡される。スイッチ回路42のスイッチSW22およびスイッチSW23は、開放される。これにより、副線路32の端部321は、結合端子Pcpに接続し、終端回路80に接続しない。副線路32の端部322は、終端回路80に接続し、結合端子Pcpに接続しない。スイッチSW92は、開放される。
【0032】
スイッチ回路41のスイッチSW11、スイッチSW12、スイッチSW13、および、スイッチSW14は、開放される。
【0033】
この構成によって、方向性結合器10は、副線路32に励起して端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する。なお、このとき、副線路32に励起して端部322側から端部321側に流れる検出信号とは、主線路20を入出力端子P21側から入出力端子P22側に流れる高周波信号に対応する信号である。
【0034】
この際、スイッチSW91は、短絡される。これにより、副線路31の端部311と端部312とは接続される。この構成を実現することで、等価回路的に主線路20に接続される副線路31の容量成分は、副線路31のインダクタンスL31の影響が抑制され、副線路31の端部311と端部312とが接続されていない構成(従来の構成)と比較して、変化する。
【0035】
したがって、主線路20のインダクタンスL20と副線路31の容量成分からなる並列共振の周波数は変化する。これにより、主線路20の伝送特性において所定周波数に生じる減衰極の位置を調整できる。
【0036】
図4は、主線路の伝送特性(S21)のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。図4において、実線は、本願構成の特性を示し、破線は、比較構成1の特性を示す。比較構成は、本願発明におけるスイッチSW91を備えない構成である。
【0037】
図4に示すように、スイッチSW91による副線路31の端部311と端部312との短絡を行うことで、主線路の所定周波数(図4の場合、約5.2[GHz])の減衰極を高周波数側(図4の場合、7.0[GHz]よりも高周波数側)にシフトさせることができる。
【0038】
これにより、主線路20は、より広い周波数帯域で、伝送特性の大幅な劣化を抑制でき、低損失な伝送特性を実現できる。したがって、方向性結合器10は、より広い周波数帯域において、主線路20に流れる高周波信号の伝送損失を抑制しながら、所望の周波数帯域の検出信号を得ることができる。
【0039】
そして、この構成では、主線路20に対する副線路31側の結合容量を、スイッチSW91の短絡のみによって調整できる。すなわち、検出信号を出力しない副線路31と主線路20との結合度を、物理的に変化させることは容易ではなく、主線路20と副線路31とを同じ絶縁性基板に形成する場合はさらに容易ではない。しかしながら、この構成を用いることによって、主線路20と副線路31との物理的な位置関係等を変化させなくても、主線路20に対する副線路31側の結合容量を調整できる。
【0040】
(1-2)副線路32の端部321側から端部322側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様
図5は、第1の実施形態に係る方向性結合器の第2の接続構成を示す状態図である。
【0041】
スイッチ回路42のスイッチSW22およびスイッチSW23は、短絡される。スイッチ回路42のスイッチSW21およびスイッチSW22は、開放される。これにより、副線路32の端部322は、結合端子Pcpに接続し、終端回路80に接続しない。副線路32の端部321は、終端回路80に接続し、結合端子Pcpに接続しない。スイッチSW92は、開放される。
【0042】
スイッチ回路41のスイッチSW11、スイッチSW12、スイッチSW13、および、スイッチSW14は、開放される。
【0043】
この構成によって、方向性結合器10は、副線路32に励起して端部321側から端部322側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する。なお、このとき、副線路32に励起して端部321側から端部322側に流れる検出信号とは、主線路20を入出力端子P22側から入出力端子P21側に流れる高周波信号(主線路20を入出力端子P21側から入出力端子P22側に流れる高周波信号の反射信号)に対応する信号である。
【0044】
この際、スイッチSW91は、短絡される。これにより、副線路31の端部311と端部312とは接続される。この構成を実現することで、(1-1)の態様と同様に、主線路20は、より広い周波数帯域で、伝送特性の大幅な劣化を抑制でき、低損失な伝送特性を実現できる。
【0045】
そして、方向性結合器10は、(1-1)の態様と(1-2)の態様とを切り替えることができる。これにより、方向性結合器10は、副線路32に流れるいずれの方向の検出電流も、結合端子Pcpから出力できる。すなわち、方向性結合器10は、副線路32で検出できる周波数帯域において、主線路20を入出力端子P21から入出力端子P22に流れる高周波信号と、主線路20を入出力端子P22から入出力端子P21に流れる高周波信号との両方に対して、検出信号を出力できる。この際、方向性結合器10は、上述のように、広い周波数帯域で低損失な伝送特性を実現できる。
【0046】
(1-3)副線路31の端部312側から端部311側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様
図6は、第1の実施形態に係る方向性結合器の第3の接続構成を示す状態図である。
【0047】
スイッチ回路41のスイッチSW11およびスイッチSW14は、短絡される。スイッチ回路41のスイッチSW12およびスイッチSW13は、開放される。これにより、副線路31の端部311は、結合端子Pcpに接続し、終端回路80に接続しない。副線路31の端部312は、終端回路80に接続し、結合端子Pcpに接続しない。スイッチSW91は、開放される。
【0048】
スイッチ回路42のスイッチSW21、スイッチSW22、スイッチSW23、および、スイッチSW24は、開放される。
【0049】
この構成によって、方向性結合器10は、副線路31に励起して端部312側から端部311側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する。なお、このとき、副線路31に励起して端部312側から端部311側に流れる検出信号とは、主線路20を入出力端子P21側から入出力端子P22側に流れる高周波信号に対応する信号である。
【0050】
この際、スイッチSW92は、短絡される。これにより、副線路32の端部321と端部322とは接続される。この構成を実現することで、(1-1)、(1-2)の態様と同様に、主線路20は、より広い周波数帯域で、伝送特性の大幅な劣化を抑制でき、低損失な伝送特性を実現できる。
【0051】
(1-4)副線路31の端部311側から端部312側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様
図7は、第1の実施形態に係る方向性結合器の第4の接続構成を示す状態図である。
【0052】
スイッチ回路41のスイッチSW12およびスイッチSW13は、短絡される。スイッチ回路41のスイッチSW11およびスイッチSW14は、開放される。これにより、副線路31の端部312は、結合端子Pcpに接続し、終端回路80に接続しない。副線路31の端部311は、終端回路80に接続し、結合端子Pcpに接続しない。スイッチSW91は、開放される。
【0053】
スイッチ回路42のスイッチSW21、スイッチSW22、スイッチSW23、および、スイッチSW24は、開放される。
【0054】
この構成によって、方向性結合器10は、副線路31に励起して端部311側から端部312側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する。なお、このとき、副線路31に励起して端部311側から端部312側に流れる検出信号とは、主線路20を入出力端子P22側から入出力端子P21側に流れる高周波信号(主線路20を入出力端子P21側から入出力端子P22側に流れる高周波信号の反射信号)に対応する信号である。
【0055】
この際、スイッチSW92は、短絡される。これにより、副線路32の端部321と端部322とは接続される。この構成を実現することで、(1-1)、(1-2)、(1-3)の態様と同様に、主線路20は、より広い周波数帯域で、伝送特性の大幅な劣化を抑制でき、低損失な伝送特性を実現できる。
【0056】
そして、方向性結合器10は、(1-3)の態様と(1-4)の態様とを切り替えることができる。これにより、方向性結合器10は、副線路31に流れるいずれの方向の検出電流も、結合端子Pcpから出力できる。すなわち、方向性結合器10は、副線路31で検出できる周波数帯域において、主線路20を入出力端子P21から入出力端子P22に流れる高周波信号と、主線路20を入出力端子P22から入出力端子P21に流れる高周波信号との両方に対して、検出信号を出力できる。この際、方向性結合器10は、上述のように、広い周波数帯域で低損失な伝送特性を実現できる。
【0057】
さらに、方向性結合器10は、(1-1)の態様、(1-2)の態様、(1-3)の態様、および、(1-4)の態様を切り替えることができる。これにより、方向性結合器10は、主線路20から複数の副線路31、32によって双方向の検出信号を取り出して、結合端子Pcpから出力できる。
【0058】
上述のように、副線路31と副線路32とでは、検出信号の周波数帯域が異なる。したがって、方向性結合器10は、さらに広い周波数帯域に対して検出信号を得ながら、主線路20における伝送特性の劣化を抑制できる。
【0059】
ここで、例えば、副線路31と副線路32とで検出する周波数帯域を、1つの副線路によって実現したとする。この場合、広い周波数帯域において所望値付近で安定した結合度は得られない。すなわち、主線路と副線路との結合量を所望値より大きな値、または、所望値よりも小さな値でしか得られない周波数が存在したり、検出する周波数帯域の全体において、主線路と副線路との結合量が小さくなってしまう。
【0060】
しかしながら、方向性結合器10は、それぞれに担当する周波数が異なる複数の副線路31、32を用いる。したがって、方向性結合器10は、1つの副線路では実現できない広い周波数帯域において、所望値付近で安定した結合度を実現できる。
【0061】
この際、副線路の個数が増加すると、主線路20に対する結合容量が大きくなり、その並列共振から、上述のように、主線路20の伝送損失が所定周波数で劣化してしまうことがある。しかしながら、方向性結合器10では、検出信号の出力に利用しない副線路の両端を短絡することで、上述のように、結合容量を調整し、主線路20の伝送損失が劣化する周波数をシフトさせることができる。これにより、方向性結合器10は、広い周波数帯域において、所望値以上で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0062】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図8は、第2の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【0063】
第2の実施形態に係る方向性結合器10Aは、第1の実施形態に係る方向性結合器10に対して、スイッチ回路41Aおよびスイッチ回路42Aを有し、スイッチSW91およびスイッチSW92を物理的に省略した点で異なる。概略的には、方向性結合器10Aは、スイッチ回路41AでスイッチSW91の機能を兼用し、スイッチ回路42AでスイッチSW92の機能を兼用する。方向性結合器10Aの他の構成は、方向性結合器10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0064】
スイッチ回路41Aは、スイッチSW11、スイッチSW12、スイッチSW13、および、スイッチSW14を備える。スイッチSW11は、副線路31の端部311と結合端子Pcpとの間に接続され、端部311と結合端子Pcpとの短絡、開放を切り替える。スイッチSW12は、副線路31の端部312と結合端子Pcpとの間に接続され、端部312と結合端子Pcpとの短絡、開放を切り替える。スイッチSW13は、副線路31の端部311と終端回路80との間に接続され、端部311と終端回路80との短絡、開放を切り替える。スイッチSW14は、副線路31の端部312と終端回路80との間に接続され、端部312と終端回路80との短絡、開放を切り替える。
【0065】
スイッチSW11の結合端子Pcp側とスイッチSW12の結合端子Pcp側とは、互いに接続されている。スイッチSW13の終端回路80側とスイッチSW14の終端回路80側とは、接続する。副線路31が「第1副線路」のとき、スイッチSW11、スイッチSW12、スイッチSW13、および、スイッチSW14が、それぞれに、本発明の「第1スイッチ」、「第2スイッチ」、「第3スイッチ」、および、「第4スイッチ」に対応する。
【0066】
スイッチ回路42Aは、スイッチSW21、スイッチSW22、スイッチSW23、および、スイッチSW24を備える。スイッチSW21は、副線路32の端部321と結合端子Pcpとの間に接続され、端部321と結合端子Pcpとの短絡、開放を切り替える。スイッチSW22は、副線路31の端部322と結合端子Pcpとの間に接続され、端部322と結合端子Pcpとの短絡、開放を切り替える。スイッチSW23は、副線路32の端部321と終端回路80との間に接続され、端部321と終端回路80との短絡、開放を切り替える。スイッチSW24は、副線路32の端部322と終端回路80との間に接続され、端部322と終端回路80との短絡、開放を切り替える。
【0067】
スイッチSW21の結合端子Pcp側とスイッチSW22の結合端子Pcp側とは、互いに接続されている。スイッチSW23の終端回路80側とスイッチSW24の終端回路80側とは、接続する。副線路32が「第1副線路」のとき、スイッチSW21、スイッチSW22、スイッチSW23、および、スイッチSW24が、それぞれに、本発明の「第1スイッチ」、「第2スイッチ」、「第3スイッチ」、および、「第4スイッチ」に対応する。
【0068】
[方向性結合器10Aの接続構成]
上述の構成からなる方向性結合器10Aは、次に示す各種の接続構成によって、主線路20に通流する高周波信号に対する検出信号を、結合端子Pcpから出力する。
【0069】
(2-1)結合端子Pcpに接続するスイッチを制御して、副線路の両端を短絡させる構成
図9は、第2の実施形態に係る方向性結合器の第1の接続構成を示す状態図である。図9は、副線路32の端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する構成を示す。
【0070】
図9に示すように、スイッチ回路42AのスイッチSW21およびスイッチSW24は、短絡される。スイッチ回路42AのスイッチSW22およびスイッチSW23は、開放される。これにより、副線路32の端部321は、結合端子Pcpに接続し、終端回路80に接続しない。副線路32の端部322は、終端回路80に接続し、結合端子Pcpに接続しない。
【0071】
この構成によって、方向性結合器10は、副線路32に励起して端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する。
【0072】
スイッチ回路41AのスイッチSW11およびスイッチSW12は、短絡される。スイッチ回路41AのスイッチSW13およびスイッチSW14は、開放される。
【0073】
この構成によって、副線路31の端部311と端部312とは接続される。すなわち、第1の実施形態におけるスイッチSW91を短絡した回路(第1の実施形態の(1-1)の態様に対応する)と同等の回路を実現できる。
【0074】
なお、図示および詳細な説明は省略するが、副線路32の端部321側から端部322側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-2)の態様に対応する)、副線路31の端部312側から端部311側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-3)の態様に対応する)、副線路31の端部311側から端部312側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-4)の態様に対応する)についても、同様に、副線路31の両端の短絡、副線路32の両端の短絡を、スイッチ回路41Aまたはスイッチ回路42Aを用いて実現できる。
【0075】
これにより、方向性結合器10Aは、広い周波数帯域において、所望値付近で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0076】
また、方向性結合器10Aでは、検出に利用しない副線路の両端の短絡を制御する専用のスイッチを省略でき、回路規模を小さくできる。また、副線路に接続し、検出信号の出力切り替えに直接的に用いないスイッチ数が減少し、所望の周波数帯域での結合度、および、主線路20の伝送損失の抑制効果は、向上する。
【0077】
また、(2-1)の態様では、両端を短絡させた副線路が終端回路80に接続しない。これにより、方向性結合器10Aは、両端を短絡させた副線路に終端回路80が接続することによる終端回路80への電力漏洩等の悪影響を防止でき、所望の特性を実現し易い。
【0078】
(2-2)終端回路80に接続するスイッチを制御して、副線路の両端を短絡させる構成
図10は、第2の実施形態に係る方向性結合器の第2の接続構成を示す状態図である。図10は、図9と同様に、副線路32の端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する構成を示す。
【0079】
図10に示すように、スイッチ回路42AのスイッチSW21およびスイッチSW24は、短絡される。スイッチ回路42AのスイッチSW22およびスイッチSW23は、開放される。これにより、副線路32の端部321は、結合端子Pcpに接続し、終端回路80に接続しない。副線路32の端部322は、終端回路80に接続し、結合端子Pcpに接続しない。
【0080】
この構成によって、方向性結合器10は、副線路32に励起して端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する。
【0081】
スイッチ回路41AのスイッチSW13およびスイッチSW14は、短絡される。スイッチ回路41AのスイッチSW11およびスイッチSW12は、開放される。
【0082】
この構成によって、副線路31の端部311と端部312とは接続される。すなわち、第1の実施形態におけるスイッチSW91を短絡した回路(第1の実施形態の(1-1)の態様に対応する)と同等の回路を実現できる。
【0083】
なお、図示および詳細な説明は省略するが、副線路32の端部321側から端部322側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-2)の態様に対応する)、副線路31の端部312側から端部311側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-3)の態様に対応する)、副線路31の端部311側から端部312側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-4)の態様に対応する)についても、同様に、副線路31の両端の短絡、副線路32の両端の短絡を、スイッチ回路41Aまたはスイッチ回路42Aを用いて実現できる。
【0084】
これにより、方向性結合器10Aは、(2-2)の態様によって、上述の(2-1)の態様と同様の作用効果を奏することができる。
【0085】
また、(2-2)の態様では、両端を短絡させた副線路が結合端子Pcpに接続しない。これにより、方向性結合器10Aは、両端を短絡させた副線路に結合端子Pcpが接続することによる結合端子Pcpへの電力漏洩等の悪影響、結合端子Pcpに接続する他の回路による悪影響を防止でき、所望の特性を実現し易い。また、(2-2)の態様では、結合端子Pcpに、両端を短絡させた副線路が接続せず、検出信号を出力する副線路と結合端子Pcpとのインピーダンスを、より高精度に整合できる。
【0086】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図11は、第3の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【0087】
第3の実施形態に係る方向性結合器10Bは、第2の実施形態に係る方向性結合器10Aに対して、スイッチ回路491を追加した点で異なる。方向性結合器10Bの他の構成は、方向性結合器10Aと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0088】
スイッチ回路491は、スイッチ回路41Bおよびスイッチ回路42Bと、結合端子Pcpとの間に接続される。スイッチ回路41Bは、スイッチ回路41Aと同様の構成であり、スイッチ回路42Bは、スイッチ回路42Aと同様の構成である。スイッチ回路491は、本発明の「副線路切替スイッチ回路」の一部として機能する。
【0089】
より具体的には、スイッチ回路491は、スイッチSW41、および、スイッチSW42を備える。副線路31が「第1副線路」のとき、スイッチSW41が、本発明の「第5スイッチ」に対応し、副線路32が「第1副線路」のとき、スイッチSW42が、本発明の「第5スイッチ」に対応する。
【0090】
スイッチSW41は、スイッチ回路41BのスイッチSW11およびスイッチSW12と、結合端子Pcpとの間に接続され、これらの短絡、開放を切り替える。スイッチSW42は、スイッチ回路42BのスイッチSW21およびスイッチSW22と、結合端子Pcpとの間に接続され、これらの短絡、開放を切り替える。
【0091】
[方向性結合器10Bの接続構成]
上述の構成からなる方向性結合器10Bは、次に示す各種の接続構成によって、主線路20に通流する高周波信号に対する検出信号を、結合端子Pcpから出力する。
【0092】
(3-1)副線路32の端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する構成
図12は、第3の実施形態に係る方向性結合器の第1の接続構成を示す状態図である。
【0093】
図12に示すように、スイッチ回路42BのスイッチSW21およびスイッチSW24は、短絡される。スイッチ回路42BのスイッチSW22およびスイッチSW23は、開放される。これにより、副線路32の端部321は、スイッチ回路491のスイッチSW42に接続し、終端回路80に接続しない。副線路32の端部322は、終端回路80に接続し、結合端子Pcpに接続しない。
【0094】
スイッチ回路491のスイッチSW42は、短絡される。これにより、副線路32の端部321は、スイッチSW21、および、スイッチSW42を通じて、結合端子Pcpに接続する。
【0095】
この構成によって、方向性結合器10Bは、副線路32に励起して端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する。
【0096】
スイッチ回路41BのスイッチSW11およびスイッチSW12は、短絡される。スイッチ回路41BのスイッチSW13およびスイッチSW14は、開放される。
【0097】
この構成によって、副線路31の端部311と端部312とは接続される。すなわち、第1の実施形態におけるスイッチSW91を短絡した回路(第1の実施形態の(1-1)の態様に対応する)と同等の回路を実現できる。
【0098】
スイッチ回路491のスイッチSW41は、開放される。これにより、スイッチ回路41BのスイッチSW11およびスイッチSW12、さらには、副線路31は、結合端子Pcpに接続しない。
【0099】
なお、図示および詳細な説明は省略するが、副線路32の端部321側から端部322側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-2)の態様に対応する)についても、同様に、副線路31の端部311と端部312とは接続される。
【0100】
これにより、方向性結合器10Bは、広い周波数帯域において、所望値以上で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0101】
また、(3-1)の態様では、両端を短絡させた副線路31が結合端子Pcpに接続しない。これにより、方向性結合器10Bは、両端を短絡させた副線路31に結合端子Pcpが接続することによる結合端子Pcpへの電力漏洩等の悪影響、結合端子Pcpに接続する他の回路による悪影響を防止でき、所望の特性を実現し易い。また、(3-1)の態様では、両端を短絡させた副線路31が結合端子Pcpに接続せず、検出信号を出力する副線路32と結合端子Pcpとのインピーダンスを、より高精度に整合できる。
【0102】
(3-2)副線路31の端部312側から端部311側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する構成
図13は、第3の実施形態に係る方向性結合器の第2の接続構成を示す状態図である。
【0103】
図13に示すように、スイッチ回路41BのスイッチSW11およびスイッチSW14は、短絡される。スイッチ回路41BのスイッチSW12およびスイッチSW13は、開放される。これにより、副線路31の端部311は、スイッチ回路491のスイッチSW41に接続し、終端回路80に接続しない。副線路31の端部312は、終端回路80に接続し、結合端子Pcpに接続しない。
【0104】
スイッチ回路491のスイッチSW41は、短絡される。これにより、副線路31の端部311は、スイッチSW11、および、スイッチSW41を通じて、結合端子Pcpに接続する。
【0105】
この構成によって、方向性結合器10Bは、副線路31に励起して端部312側から端部311側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する。
【0106】
スイッチ回路42BのスイッチSW21およびスイッチSW22は、短絡される。スイッチ回路42BのスイッチSW23およびスイッチSW24は、開放される。
【0107】
この構成によって、副線路32の端部321と端部322とは接続される。すなわち、第1の実施形態におけるスイッチSW92を短絡した回路(第1の実施形態の(1-3)の態様に対応する)と同等の回路を実現できる。
【0108】
スイッチ回路491のスイッチSW42は、開放される。これにより、スイッチ回路42BのスイッチSW21およびスイッチSW22、さらには、副線路32は、結合端子Pcpに接続しない。
【0109】
なお、図示および詳細な説明は省略するが、副線路31の端部311側から端部312側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-4)の態様に対応する)についても、同様に、副線路32の端部321と端部322とは接続される。
【0110】
これにより、方向性結合器10Bは、広い周波数帯域において、所望値以上で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0111】
また、(3-2)の態様では、両端を短絡させた副線路32が結合端子Pcpに接続しない。これにより、方向性結合器10Bは、両端を短絡させた副線路32に結合端子Pcpが接続することによる結合端子Pcpへの電力漏洩等の悪影響、結合端子Pcpに接続する他の回路による悪影響を防止でき、所望の特性を実現し易い。また、(3-2)の態様では、両端を短絡させた副線路32が結合端子Pcpに接続せず、検出信号を出力する副線路31と結合端子Pcpとのインピーダンスを、より高精度に整合できる。
【0112】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図14は、第4の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【0113】
第4の実施形態に係る方向性結合器10Cは、第2の実施形態に係る方向性結合器10Aに対して、スイッチ回路492を追加した点で異なる。方向性結合器10Cの他の構成は、方向性結合器10Aと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0114】
スイッチ回路492は、スイッチ回路41Cおよびスイッチ回路42Cと、終端回路80との間に接続される。スイッチ回路41Cは、スイッチ回路41Aと同様の構成であり、スイッチ回路42Cは、スイッチ回路42Aと同様の構成である。スイッチ回路492は、本発明の「副線路切替スイッチ回路」の一部として機能する。
【0115】
より具体的には、スイッチ回路492は、スイッチSW43、および、スイッチSW44を備える。副線路31が「第1副線路」のとき、スイッチSW43が、本発明の「第6スイッチ」に対応し、副線路32が「第1副線路」のとき、スイッチSW44が、本発明の「第6スイッチ」に対応する。
【0116】
スイッチSW43は、スイッチ回路41CのスイッチSW13およびスイッチSW14と、終端回路80との間に接続され、これらの短絡、開放を切り替える。スイッチSW44は、スイッチ回路42CのスイッチSW23およびスイッチSW24と、終端回路80との間に接続され、これらの短絡、開放を切り替える。
【0117】
(4-1)副線路32の端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する構成
図15は、第4の実施形態に係る方向性結合器の第1の接続構成を示す状態図である。
【0118】
図15に示すように、スイッチ回路42CのスイッチSW21およびスイッチSW24は、短絡される。スイッチ回路42CのスイッチSW22およびスイッチSW23は、開放される。これにより、副線路32の端部321は、結合端子Pcpに接続し、スイッチ回路492のスイッチSW44に接続しない。副線路32の端部322は、スイッチ回路492のスイッチSW44に接続し、結合端子Pcpに接続しない。
【0119】
スイッチ回路492のスイッチSW44は、短絡される。これにより、副線路32の端部322は、スイッチSW24、および、スイッチSW44を通じて、終端回路80に接続する。
【0120】
この構成によって、方向性結合器10Cは、副線路32に励起して端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する。
【0121】
スイッチ回路41CのスイッチSW13およびスイッチSW14は、短絡される。
【0122】
この構成によって、副線路31の端部311と端部312とは接続される。すなわち、第1の実施形態におけるスイッチSW91を短絡した回路(第1の実施形態の(1-1)の態様に対応する)と同等の回路を実現できる。
【0123】
スイッチ回路492のスイッチSW43は、開放される。これにより、スイッチ回路41CのスイッチSW13およびスイッチSW14、さらには、副線路31は、終端回路80に接続しない。
【0124】
また、スイッチ回路41CのスイッチSW11およびスイッチSW12は、開放される。これにより、副線路31と結合端子Pcpとは、接続しない。
【0125】
なお、図示および詳細な説明は省略するが、副線路32の端部321側から端部322側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-2)の態様に対応する)についても、同様に、副線路31の端部311と端部312とは接続される。
【0126】
これにより、方向性結合器10Cは、広い周波数帯域において、所望値以上で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0127】
また、(4-1)の態様では、両端を短絡させた副線路31が終端回路80に接続しない。これにより、方向性結合器10Cは、両端を短絡させた副線路31に終端回路80が接続することによる終端回路80への電力漏洩等の悪影響を防止でき、所望の特性を実現し易い。
【0128】
(4-2)副線路31の端部312側から端部311側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する構成
図16は、第4の実施形態に係る方向性結合器の第2の接続構成を示す状態図である。
【0129】
図16に示すように、スイッチ回路41CのスイッチSW11およびスイッチSW14は、短絡される。スイッチ回路41CのスイッチSW12およびスイッチSW13は、開放される。これにより、副線路31の端部311は、結合端子Pcpに接続し、終端回路80に接続しない。副線路31の端部312は、スイッチ回路492のスイッチSW43に接続し、結合端子Pcpに接続しない。
【0130】
スイッチ回路492のスイッチSW43は、短絡される。これにより、副線路31の端部312は、スイッチSW14、および、スイッチSW43を通じて、終端回路80に接続する。
【0131】
この構成によって、方向性結合器10Cは、副線路31に励起して端部312側から端部311側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する。
【0132】
スイッチ回路42CのスイッチSW23およびスイッチSW24は、短絡される。この構成によって、副線路32の端部321と端部322とは接続される。すなわち、第1の実施形態におけるスイッチSW92を短絡した回路(第1の実施形態の(1-3)の態様に対応する)と同等の回路を実現できる。
【0133】
スイッチ回路492のスイッチSW44は、開放される。これにより、スイッチ回路42CのスイッチSW23およびスイッチSW24、さらには、副線路32は、終端回路80に接続しない。
【0134】
また、スイッチ回路42CのスイッチSW21およびスイッチSW22は、開放される。これにより、副線路32と結合端子Pcpとは、接続しない。
【0135】
なお、図示および詳細な説明は省略するが、副線路31の端部311側から端部312側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-4)の態様に対応する)についても、同様に、副線路32の端部321と端部322とは接続される。
【0136】
これにより、方向性結合器10Cは、広い周波数帯域において、所望値以上で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0137】
また、(4-2)の態様では、両端を短絡させた副線路32が終端回路80に接続しない。これにより、方向性結合器10Cは、両端を短絡させた副線路32に終端回路80が接続することによる終端回路80への電力漏洩等の悪影響を防止でき、所望の特性を実現し易い。また、(4-2)の態様では、両端を短絡させた副線路32が結合端子Pcpに接続せず、検出信号を出力する副線路31と結合端子Pcpとのインピーダンスを、より高精度に整合できる。
【0138】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図17は、第5の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【0139】
第5の実施形態に係る方向性結合器10Dは、第3の実施形態に係る方向性結合器10Cに対して、本発明の「第6スイッチ」に相当するスイッチSW43、SW44を含むスイッチ回路492を無くし、副線路毎に終端回路を独立して備えた点で異なる。方向性結合器10Dの他の構成は、方向性結合器10Cと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0140】
図17に示すように、方向性結合器10Dは、スイッチ回路41D、スイッチ回路42D、終端回路81、および、終端回路82を備える。スイッチ回路41Dは、スイッチ回路41Cと同様の構成であり、スイッチ回路42Dは、スイッチ回路42Cと同様の構成である。
【0141】
終端回路81は、スイッチ回路41Dに接続される。より具体的には、終端回路81は、スイッチ回路41DのスイッチSW13とスイッチSW14とに接続される。終端回路81は、可変抵抗Rt1と可変コンデンサCt1を備える。可変抵抗Rt1と可変コンデンサCt1の並列回路は、スイッチSW13、および、スイッチSW14を基準電位に接続する。終端回路81は、副線路31で検出する高周波信号の周波数帯域において、インピーダンス整合を実現できるように構成されている。
【0142】
終端回路82は、スイッチ回路42Dに接続される。より具体的には、終端回路82は、スイッチ回路42DのスイッチSW23とスイッチSW24とに接続される。終端回路82は、可変抵抗Rt2と可変コンデンサCt2を備える。可変抵抗Rt2と可変コンデンサCt2の並列回路は、スイッチSW23、および、スイッチSW24を基準電位に接続する。終端回路82は、副線路32で検出する高周波信号の周波数帯域において、インピーダンス整合を実現できるように構成されている。
【0143】
(5-1)副線路32の端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する構成
図18は、第5の実施形態に係る方向性結合器の第1の接続構成を示す状態図である。
【0144】
図18に示すように、スイッチ回路42DのスイッチSW21およびスイッチSW24は、短絡される。スイッチ回路42DのスイッチSW22およびスイッチSW23は、開放される。これにより、副線路32の端部321は、結合端子Pcpに接続し、終端回路82に接続しない。副線路32の端部322は、終端回路82に接続し、結合端子Pcpに接続しない。
【0145】
この構成によって、方向性結合器10Dは、副線路32に励起して端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する。
【0146】
スイッチ回路41DのスイッチSW13およびスイッチSW14は、短絡される。
【0147】
この構成によって、副線路31の端部311と端部312とは接続される。すなわち、第1の実施形態におけるスイッチSW91を短絡した回路(第1の実施形態の(1-1)の態様に対応する)と同等の回路を実現できる。
【0148】
なお、図示および詳細な説明は省略するが、副線路32の端部321側から端部322側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-2)の態様に対応する)についても、同様に、副線路31の端部311と端部312とは接続される。
【0149】
これにより、方向性結合器10Dは、広い周波数帯域において、所望値以上で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0150】
また、(5-1)の態様では、両端を短絡させた副線路31が副線路32側の回路に接続しない。これにより、方向性結合器10Dは、両端を短絡させた副線路31に副線路32側の回路が接続することによる悪影響を防止でき、所望の特性を実現し易い。
【0151】
また、副線路32のみに対応する終端回路82を構成することで、副線路32での検出信号に対するインピーダンス整合を、回路規模を大きくすること無く、より高精度に実現できる。
【0152】
(5-2)副線路31の端部312側から端部311側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する構成
図19は、第5の実施形態に係る方向性結合器の第2の接続構成を示す状態図である。
【0153】
図19に示すように、スイッチ回路41DのスイッチSW11およびスイッチSW14は、短絡される。スイッチ回路41DのスイッチSW12およびスイッチSW13は、開放される。これにより、副線路31の端部311は、結合端子Pcpに接続し、終端回路81に接続しない。副線路31の端部312は、終端回路81に接続し、結合端子Pcpに接続しない。
【0154】
この構成によって、方向性結合器10Dは、副線路31に励起して端部312側から端部311側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する。
【0155】
スイッチ回路42DのスイッチSW23およびスイッチSW24は、短絡される。この構成によって、副線路32の端部321と端部322とは接続される。すなわち、第1の実施形態におけるスイッチSW92を短絡した回路(第1の実施形態の(1-3)の態様に対応する)と同等の回路を実現できる。
【0156】
また、スイッチ回路42DのスイッチSW21およびスイッチSW22は、開放される。これにより、副線路32と結合端子Pcpとは、接続しない。
【0157】
なお、図示および詳細な説明は省略するが、副線路31の端部311側から端部312側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-4)の態様に対応する)についても、同様に、副線路32の端部321と端部322とは接続される。
【0158】
これにより、方向性結合器10Dは、広い周波数帯域において、所望値付近で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0159】
また、(5-2)の態様では、両端を短絡させた副線路32が副線路31側の回路に接続しない。これにより、方向性結合器10Dは、両端を短絡させた副線路32に副線路31側の回路が接続することによる悪影響を防止でき、所望の特性を実現し易い。
【0160】
また、副線路31のみに対応する終端回路81を構成することで、副線路31での検出信号に対するインピーダンス整合を、回路規模を大きくすること無く、より高精度に実現できる。
【0161】
また、方向性結合器10Dは、副線路31用の終端回路81と、副線路32用の終端回路82とを個別に備える。これにより、副線路31で検出する周波数帯域に対するインピーダンス整合と、副線路32で検出する周波数帯域に対するインピーダンス整合とを個別に設定できる。したがって、方向性結合器10Dは、回路規模を大きくすること無く、広い周波数帯域の検出信号を、より低損失に出力できる。また、この構成によって、方向性結合器10Dは、主線路20への副線路31および副線路32の悪影響を個別に精度良く抑制でき、主線路20の伝送特性の劣化をさらに抑制できる。
【0162】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図20は、第6の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【0163】
第6の実施形態に係る方向性結合器10Eは、第1の実施形態に係る方向性結合器10に対して、副線路毎に結合端子を個別に備えた点で異なる。方向性結合器10Eの他の構成は、方向性結合器10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0164】
図20に示すように、方向性結合器10Eは、スイッチ回路41E、スイッチ回路42E、結合端子Pcp1、および、結合端子Pcp2を備える。スイッチ回路41Eは、スイッチ回路41と同様の構成であり、スイッチ回路42Eは、スイッチ回路42と同様の構成である。なお、方向性結合器10Eにおいては、本発明の「第5スイッチ」に相当するスイッチは設けられていない。
【0165】
結合端子Pcp1は、スイッチ回路41Eに接続する。より具体的には、結合端子Pcp1は、スイッチSW11およびスイッチW12に接続する。
【0166】
結合端子Pcp2は、スイッチ回路41Eに接続する。より具体的には、結合端子Pcp2は、スイッチSW21およびスイッチW22に接続する。
【0167】
(6-1)副線路32の端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcp2から出力する構成
図21は、第6の実施形態に係る方向性結合器の第1の接続構成を示す状態図である。
【0168】
図21に示すように、スイッチ回路42EのスイッチSW21およびスイッチSW24は、短絡される。スイッチ回路42EのスイッチSW22およびスイッチSW23は、開放される。これにより、副線路32の端部321は、結合端子Pcp2に接続し、終端回路80に接続しない。副線路32の端部322は、終端回路80に接続し、結合端子Pcp2に接続しない。
【0169】
この構成によって、方向性結合器10Eは、副線路32に励起して端部322側から端部321側に流れる検出信号を、結合端子Pcp2から出力する。
【0170】
スイッチ回路41EのスイッチSW11およびスイッチSW12は、短絡される。
【0171】
この構成によって、副線路31の端部311と端部312とは接続される。すなわち、第1の実施形態におけるスイッチSW91を短絡した回路(第1の実施形態の(1-1)の態様に対応する)と同等の回路を実現できる。
【0172】
なお、図示および詳細な説明は省略するが、副線路32の端部321側から端部322側に流れる検出信号を、結合端子Pcp2から出力する態様(第1の実施形態の(1-2)の態様に対応する)についても、同様に、副線路31の端部311と端部312とは接続される。
【0173】
これにより、方向性結合器10Eは、広い周波数帯域において、所望値以上で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0174】
また、(6-1)の態様では、両端を短絡させた副線路31が副線路32側の回路に接続しない。これにより、方向性結合器10Eは、両端を短絡させた副線路31に副線路32側の回路が接続することによる悪影響を防止でき、所望の特性を実現し易い。
【0175】
(6-2)副線路31の端部312側から端部311側に流れる検出信号を、結合端子Pcp1から出力する構成
図22は、第6の実施形態に係る方向性結合器の第2の接続構成を示す状態図である。
【0176】
図22に示すように、スイッチ回路41EのスイッチSW11およびスイッチSW14は、短絡される。スイッチ回路41EのスイッチSW12およびスイッチSW13は、開放される。これにより、副線路31の端部311は、結合端子Pcp1に接続し、終端回路80に接続しない。副線路31の端部312は、終端回路80に接続し、結合端子Pcp1に接続しない。
【0177】
この構成によって、方向性結合器10Eは、副線路31に励起して端部312側から端部311側に流れる検出信号を、結合端子Pcp1から出力する。
【0178】
スイッチ回路42EのスイッチSW21およびスイッチSW22は、短絡される。この構成によって、副線路32の端部321と端部322とは接続される。すなわち、第1の実施形態におけるスイッチSW92を短絡した回路(第1の実施形態の(1-3)の態様に対応する)と同等の回路を実現できる。
【0179】
また、スイッチ回路42DのスイッチSW23およびスイッチSW24は、開放される。これにより、副線路32と終端回路80とは、接続しない。
【0180】
なお、図示および詳細な説明は省略するが、副線路31の端部311側から端部312側に流れる検出信号を、結合端子Pcpから出力する態様(第1の実施形態の(1-4)の態様に対応する)についても、同様に、副線路32の端部321と端部322とは接続される。
【0181】
これにより、方向性結合器10Eは、広い周波数帯域において、所望値以上で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0182】
また、(6-2)の態様では、両端を短絡させた副線路32が副線路31側の回路に接続しない。これにより、方向性結合器10Eは、両端を短絡させた副線路32に副線路31側の回路が接続することによる悪影響を防止でき、所望の特性を実現し易い。
【0183】
[第7の実施形態]
本発明の第7の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図23は、第7の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【0184】
第7の実施形態に係る方向性結合器10Fは、第5の実施形態に係る方向性結合器10Dに対して、副線路毎に結合端子を個別に備えた点で異なる。すなわち、方向性結合器10Fは、方向性結合器10Dの終端回路側の構成と、方向性結合器10Eの結合端子側の構成とを組み合わせた構成を備える。方向性結合器10Fの他の構成は、方向性結合器10D、10Eと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。なお、方向性結合器10Fでは、第6の実施形態に係る方向性結合器10Eと同様に、本発明の「第5スイッチ」に相当するスイッチが設けられていない。
【0185】
方向性結合器10Fは、スイッチ回路41F、スイッチ回路42F、結合端子Pcp1、結合端子Pcp2、終端回路81、および、終端回路82を備える。スイッチ回路41Fは、スイッチ回路41D、41Eと同様の構成であり、スイッチ回路42Fは、スイッチ回路42D、42Eと同様の構成である。
【0186】
結合端子Pcp1と終端回路81とは、スイッチ回路41Fに接続する。より具体的には、結合端子Pcp1は、スイッチ回路41FのスイッチSW11およびスイッチSW12に接続する。終端回路81は、スイッチ回路41FのスイッチSW13およびスイッチSW14に接続する。
【0187】
結合端子Pcp2と終端回路82とは、スイッチ回路42Fに接続する。より具体的には、結合端子Pcp2は、スイッチ回路42FのスイッチSW21およびスイッチSW22に接続する。終端回路82は、スイッチ回路42FのスイッチSW23およびスイッチSW24に接続する。
【0188】
このような構成によって、方向性結合器10Fは、広い周波数帯域において、所望値付近で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0189】
[第8の実施形態]
本発明の第8の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図24は、第8の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【0190】
第8の実施形態に係る方向性結合器10Gは、第1の実施形態に係る方向性結合器10に対して、副線路毎に結合端子および終端回路を個別に備えた点で異なる。方向性結合器10Gの他の構成は、方向性結合器10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0191】
方向性結合器10Gは、結合端子Pcp1、結合端子Pcp2、終端回路81、および、終端回路82を備える。
【0192】
結合端子Pcp1と終端回路81とは、スイッチ回路41に接続する。より具体的には、結合端子Pcp1は、スイッチ回路41のスイッチSW11およびスイッチSW12に接続する。終端回路81は、スイッチ回路41のスイッチSW13およびスイッチSW14に接続する。
【0193】
結合端子Pcp2と終端回路82とは、スイッチ回路42に接続する。より具体的には、結合端子Pcp2は、スイッチ回路42のスイッチSW21およびスイッチSW22に接続する。終端回路82は、スイッチ回路42のスイッチSW23およびスイッチSW24に接続する。
【0194】
このような構成によって、方向性結合器10Gは、広い周波数帯域において、所望値付近で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0195】
[第9の実施形態]
本発明の第9の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図25は、第9の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【0196】
第9の実施形態に係る方向性結合器10Hは、第3、第4の実施形態に係る方向性結合器10B、10Cを組み合わせた構成を備える。より具体的には、方向性結合器10Hは、方向性結合器10Bのスイッチ回路491と方向性結合器10Cのスイッチ回路492とを備える。方向性結合器10Hの他の構成は、方向性結合器10B、10Cと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0197】
方向性結合器10Fは、スイッチ回路41H、スイッチ回路42H、スイッチ回路491、および、スイッチ回路492を備える。スイッチ回路41Hは、スイッチ回路41B、41Cと同様の構成であり、スイッチ回路42Hは、スイッチ回路42B、42Cと同様の構成である。
【0198】
スイッチ回路491は、結合端子Pcpと、スイッチ回路41Hおよびスイッチ回路42Hとの間に接続される。スイッチ回路492は、終端回路80と、スイッチ回路41Hおよびスイッチ回路42Hとの間に接続される。
【0199】
このような構成によって、方向性結合器10Fは、広い周波数帯域において、所望値付近で安定した結合度を実現しながら、主線路20の伝送損失を抑制できる。
【0200】
[第10の実施形態]
本発明の第10の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図26は、第10の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【0201】
図26に示すように、第10の実施形態に係る方向性結合器10Iは、第1の実施形態に係る方向性結合器10に対して、3つの副線路を有する点で異なる。方向性結合器10Iのその他の構成は、方向性結合器10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0202】
方向性結合器10Iは、副線路33、スイッチ回路43、および、スイッチSW93を備える。
【0203】
副線路33は、主線路20に対して電磁気的に結合するように配置される。例えば、副線路33は、主線路20の延びる方向に沿って、所定間隔を空けて並走する。この際、副線路33は、主線路20に対して第3周波数帯域において所望の結合度が得られるように、形状、主線路20に対する配置が決められている。
【0204】
第3周波数帯域は、第1周波数帯域および第2周波数帯域と完全には一致しない。言い換えれば、第3周波数帯域は、第2周波数帯域および第1周波数帯域と異なる。第3周波数帯域は例えば、第1周波数帯域及び第2周波数帯域よりも高い周波数帯域であり、3.3GHz以上の周波数帯域であってもよい。
【0205】
副線路33は、延びる方向の一方端に端部331を有し、延びる方向の他方端に端部332を有する。副線路31、副線路32、および、副線路33は、いずれか2つが本発明の「第1副線路」に対応し、残りの1つが本発明の「第2副線路」に対応する。そして、副線路31が第1副線路の場合、端部311が、本発明の「第1端」に対応し、端部312が、本発明の「第2端」に対応する。副線路32が第1副線路の場合、端部321が、本発明の「第1端」に対応し、端部322が、本発明の「第2端」に対応する。副線路33が第1副線路の場合、端部331が、本発明の「第1端」に対応し、端部332が、本発明の「第2端」に対応する。
【0206】
スイッチ回路43は、スイッチSW31、スイッチSW32、スイッチSW33、および、スイッチSW34を備える。スイッチSW31は、副線路33の端部331と結合端子Pcpとの間に接続され、端部331と結合端子Pcpとの短絡、開放を切り替える。スイッチSW32は、副線路33の端部332と結合端子Pcpとの間に接続され、端部332と結合端子Pcpとの短絡、開放を切り替える。スイッチSW33は、副線路33の端部331と終端回路80との間に接続され、端部331と終端回路80との短絡、開放を切り替える。スイッチSW34は、副線路33の端部332と終端回路80との間に接続され、端部332と終端回路80との短絡、開放を切り替える。スイッチ回路43は、本発明の「副線路切替スイッチ回路」の一部である。
【0207】
スイッチSW31の結合端子Pcp側とスイッチSW32の結合端子Pcp側とは、接続する。スイッチSW33の終端回路80側とスイッチSW34の終端回路80側とは、接続する。副線路33が「第1副線路」のとき、スイッチSW31、スイッチSW32、スイッチSW33、および、スイッチSW34が、それぞれに、本発明の「第1スイッチ」、「第2スイッチ」、「第3スイッチ」、および、「第4スイッチ」に対応する。
【0208】
スイッチSW93は、副線路33の端部331と端部332との間に接続される。スイッチSW93は、端部331と端部332との短絡、開放を切り替える。副線路33が「第1副線路」のとき、スイッチSW93が、本発明の「短絡スイッチ回路」に対応する。
【0209】
図27は、主線路の伝送特性(S21)のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。図27において、実線は、本願構成の特性を示し、破線は、比較構成1の特性を示し、一点鎖線は、比較構成2の特性を示す。比較構成1および比較構成2は、検出信号を出力しない副線路を短絡する構成を備えない場合を示し、比較構成1は、副線路が2つの場合を示し、比較構成2は、副線路が3つの場合を示す。
【0210】
図27に示すように、副線路数が増加すると、減衰極周波数は、低い側にシフトする。例えば、図27の場合であれば、副線路が2つのときの減衰極周波数は、約5.2[GHz]であるが、副線路が3つのときの減衰極周波数は、約4.8[GHz]に低下する。すなわち、方向性結合器10Iの主線路20に通流する高周波信号の周波数帯域に、より大きな悪影響を与える。
【0211】
しかしながら、方向性結合器10Iは、上述の構成を備えることによって、減衰極を高周波数側(図27の場合、7.0[GHz]よりも高周波数側)にシフトさせることができる。
【0212】
これにより、主線路20は、より広い周波数帯域で、伝送特性の大幅な劣化を抑制でき、低損失な伝送特性を実現できる。したがって、方向性結合器10Iは、さらに広い周波数帯域において、主線路20に流れる高周波信号の伝送損失を抑制しながら、所望の周波数帯域の検出信号を得ることができる。
【0213】
特に、方向性結合器10Iでは、3つの副線路を用いることによって、2つの副線路を用いるよりも、広い周波数帯域に対する検波に利用できるが、そのような場合であっても、主線路20に流れる高周波信号の伝送損失を抑制しながら、所望の周波数帯域の検出信号を得ることができる。
【0214】
なお、副線路が3つの場合を示したが、副線路が4つ以上であってもよい。この場合も、1つの副線路は、検出信号の出力に用い、その他の副線路は、両端を短絡させる。
【0215】
[第11の実施形態]
本発明の第11の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図28は、第11の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【0216】
図28に示すように、第11の実施形態に係る方向性結合器10Jは、第1の実施形態に係る方向性結合器10に対して、SP3Tのスイッチを用いる点で異なる。方向性結合器10Jのその他の構成は、方向性結合器10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0217】
方向性結合器10Jは、スイッチ回路41J、および、スイッチ回路42Jを備える。スイッチ回路41J及びスイッチ回路42Jは、本発明の「副線路切替スイッチ回路」に対応する。
【0218】
スイッチ回路41Jは、スイッチSW113、および、スイッチSW123を備える。スイッチSW113およびスイッチSW123は、SP3T(単極3投)のスイッチ素子である。
【0219】
スイッチSW113では、単極側の端子は、結合端子Pcpに接続する。3投側の1端子は副線路31の端部311に接続し、3投側の別の1端子は副線路31の端部312に接続し、3投側の残りの1端子はどこにも接続されないフローティング端子である。スイッチSW123では、単極側の端子は、終端回路80に接続する。3投側の1端子は副線路31の端部311に接続し、3投側の別の1端子は副線路31の端部312に接続し、3投側の残りの1端子はどこにも接続されないフローティング端子である。
【0220】
スイッチ回路42Jは、スイッチSW213、および、スイッチSW223を備える。スイッチSW213およびスイッチSW223は、SP3T(単極3投)のスイッチ素子である。
【0221】
スイッチSW213では、単極側の端子は、結合端子Pcpに接続する。3投側の1端子は副線路32の端部321に接続し、3投側の別の1端子は副線路32の端部322に接続し、3投側の残りの1端子はどこにも接続されないフローティング端子である。スイッチSW223では、単極側の端子は、終端回路80に接続する。3投側の1端子は副線路32の端部321に接続し、3投側の別の1端子は副線路32の端部322に接続し、3投側の残りの1端子はどこにも接続されないフローティング端子である。
【0222】
例えば、副線路32の端部322側から端部321側に流れる検出信号を結合端子Pcpから出力する場合、スイッチSW213は、3投側の端子のうち副線路32の端部321に接続された端子を選択し、スイッチSW223は、3投側の端子のうち副線路32の端部322に接続された端子を選択する。また、スイッチSW91、SW92のうち、スイッチSW91は短絡され、スイッチSW92は開放される。さらに、スイッチSW113及びスイッチSW123は、それぞれ、3投側の端子のうちフローティング端子を選択する。
【0223】
この構成によって、方向性結合器10Jは、第1の実施形態に係る方向性結合器10と同様に、広い周波数帯域において、主線路20に流れる高周波信号の伝送損失を抑制しながら、所望の周波数帯域の検出信号を得ることができる。また、副線路31と副線路32とのうち、結合端子Pcpと終端回路80とに接続されない副線路(例えば、副線路31)が短絡される場合に、スイッチ回路41Jによりフローティング端子を選択して、副線路31が副線路32に接続されることを回避できる。したがって、副線路31が副線路32に接続されることによる悪影響を低減できる。
【0224】
[第12の実施形態]
本発明の第12の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図29は、第12の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【0225】
図29に示すように、第12の実施形態に係る方向性結合器10Kは、第9の実施形態に係る方向性結合器10Hに対して、SPDTのスイッチを用いる点で異なる。方向性結合器10Kのその他の構成は、方向性結合器10Hと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0226】
方向性結合器10Kは、スイッチ回路41K、スイッチ回路42K、スイッチ回路491K、および、スイッチ回路492Kを備える。
【0227】
スイッチ回路41Kは、スイッチSW112、および、スイッチSW122を備える。スイッチSW112およびスイッチSW122は、SPDT(単極双投)のスイッチ素子である。
【0228】
スイッチSW112では、単極側の端子は、スイッチ回路491Kに接続する。双投側の1端子は副線路31の端部311に接続し、双投側の別の1端子は副線路31の端部312に接続する。スイッチSW122では、単極側の端子は、スイッチ回路492Kに接続する。双投側の1端子は副線路31の端部311に接続し、双投側の別の1端子は副線路31の端部312に接続する。
【0229】
スイッチ回路42Kは、スイッチSW212、および、スイッチSW222を備える。スイッチSW212およびスイッチSW222は、SPDT(単極双投)のスイッチ素子である。
【0230】
スイッチSW212では、単極側の端子は、スイッチ回路491Kに接続する。双投側の1端子は副線路32の端部321に接続し、双投側の別の1端子は副線路32の端部322に接続する。スイッチSW222では、単極側の端子は、スイッチ回路492Kに接続する。双投側の1端子は副線路32の端部321に接続し、双投側の別の1端子は副線路32の端部322に接続する。
【0231】
スイッチ回路491Kは、SPDT(単極双投)のスイッチ素子である。スイッチ回路491Kでは、単極側の端子は、結合端子Pcpに接続する。双投側の1端子はスイッチ回路41KのスイッチSW112に接続し、双投側の別の1端子はスイッチ回路42KのスイッチSW212に接続する。
【0232】
スイッチ回路492Kは、SPDT(単極双投)のスイッチ素子である。スイッチ回路492Kでは、単極側の端子は、終端回路80に接続する。双投側の1端子はスイッチ回路41KのスイッチSW122に接続し、双投側の別の1端子はスイッチ回路42KのスイッチSW222に接続する。
【0233】
この構成によって、方向性結合器10Kは、第9の実施形態に係る方向性結合器10Hと同様に、広い周波数帯域において、主線路20に流れる高周波信号の伝送損失を抑制しながら、所望の周波数帯域の検出信号を得ることができる。
【0234】
また、方向性結合器10J、10Kに示すように、スイッチ回路は、SPST(単極単投)のスイッチに限らず、mPnT(m極n投:m,nは正の整数)のスイッチによって実現できる。
【0235】
[第13の実施形態]
本発明の第13の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図30(A)、図30(B)、図30(C)は、第13の実施形態に係る方向性結合器の主線路および副線路の平面図である。図30(A)、図30(C)は、副線路を示し、図30(B)は、主線路を示す。図31は、第13の実施形態に係る方向性結合器の構造を概略的に示す断面図である。図31は、図30(A)、図30(B)、図30(C)のA-A断面を示す。
【0236】
第13の実施形態に係る方向性結合器10Lは、第1の実施形態に係る方向性結合器10の1つの構造態様を実現している。方向性結合器10Lの回路構成は、方向性結合器10の回路構成と同様であり、回路構成の説明は省略する。
【0237】
図30(A)、図30(B)、図30(C)、図31に示すように、方向性結合器10Lは、積層体100を備える。積層体100は、複数の絶縁体層を積層してなる。例えば、積層体100は、1枚のコア材層の両面側に、複数枚のプリプレグ層を積層して形成される。
【0238】
図30(B)に示すように、主線路20は、所定形状で延びる導体である。より具体的には、主線路20は、略1周の巻回形である。なお、本発明のおける巻回形とは、完全な環状である必要はなく、少なくとも環状の一部を有する形状である。
【0239】
図31に示すように、副線路31は、主線路20に対して、積層体100の厚み方向の一方側に配置される。図30(A)に示すように、副線路31は、所定形状で延びる導体である。より具体的には、副線路31は、略2周の巻回形である。副線路31は、延びる方向のほぼ全体にわたって、主線路20に並走している。これにより、副線路31は、主線路20に対して所定の結合度で、電磁気的に結合する。
【0240】
図31に示すように、副線路32は、主線路20に対して、積層体100の厚み方向の他方側に配置される。図30(C)に示すように、副線路32は、所定形状で延びる導体である。より具体的には、副線路32は、略1周の巻回形である。副線路32は、延びる方向のほぼ全体にわたって、主線路20に並走している。これにより、副線路32は、主線路20に対して所定の結合度で、電磁気的に結合する。
【0241】
副線路31の巻回する長さは、副線路32の巻回する長さよりも長い。これにより、副線路31で結合する周波数帯域は、副線路32で結合する周波数帯域よりも低くなる。
【0242】
図30(A)に示すように、副線路31の端部311と端部312とは、近接している。ここで、近接しているとは、例えば、図30(A)に示すように、副線路31が形成する環状の中央開口を形成する短い方の一辺(環状が円形なら直径)よりも短く、より好ましくは、1/2以下、さらには1/4以下の間隔で配置されることである。
【0243】
このような構成によって、端部311および端部312とスイッチSW91との接続距離は、短くできる。これにより、スイッチSW91を短絡した際に、スイッチSW91を含む経路でのインダクタンスを小さくできる。したがって、スイッチSW91の短絡による共振周波数のシフト量が低下することを抑制でき、スイッチSW91の短絡による効果が、より有効になる。
【0244】
同様に、図30(C)に示すように、副線路32の端部321と端部322とは、近接している。ここで、近接しているとは、例えば、図30(C)に示すように、副線路32が形成する環状の中央開口を形成する短い方の一辺(環状が円形なら直径)よりも短く、より好ましくは、1/2以下、さらには1/4以下の間隔で配置されることである。
【0245】
このような構成によって、端部321および端部322とスイッチSW92との接続距離は、短くできる。これにより、スイッチSW92を短絡した際に、スイッチSW92を含む経路でのインダクタンスを小さくできる。したがって、スイッチSW92の短絡による共振周波数のシフト量が低下することを抑制でき、スイッチSW92の短絡による効果が、より有効になる。
【0246】
なお、この実施形態に限らず、上述の説明では、スイッチSW91(低周波数側の副線路の短絡スイッチ)とスイッチSW92(高周波数側の副線路の短絡スイッチ)の両方を備える態様を示したが、スイッチSW91(低周波数側の副線路の短絡スイッチ)とスイッチSW92(高周波数側の副線路の短絡スイッチ)のいずれか一方を備えていればよい。この際、高周波数帯域ほど減衰極の影響を受けやすい。したがって、方向性結合器は、スイッチSW91(低周波数側の副線路の短絡スイッチ)を少なくとも備えているとよい。
【0247】
[第14の実施形態]
本発明の第14の実施形態に係る方向性結合器について、図を参照して説明する。図32は、第14の実施形態に係る方向性結合器の構成図である。
【0248】
第14の実施形態に係る方向性結合器10Xは、第8の実施形態に係る方向性結合器10Gにおけるスイッチ回路41およびスイッチ回路42を省略した構成を備える。方向性結合器10Xの他の構成は、方向性結合器10Gと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0249】
この構成では、副線路31および副線路32で得られる結合信号の方向は一方向になるが、方向性結合器10Xは、第8の実施形態に係る方向性結合器10Gと同様に、広い周波数帯域において、主線路20に流れる高周波信号の伝送損失を抑制しながら、所望の周波数帯域の検出信号を得ることができる。
【0250】
なお、上述の各実施形態の構成は、適宜組み合わせが可能であり、各組合せに応じた作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0251】
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10I、10J、10K、10L、10X:方向性結合器
20:主線路
31、32、33:副線路
41、42、41A、42A、41B、42B、41C、42C、41D、42D、41E、42E、41F、42F、41H、42H、41J、42J、41K、42K、491、492、491K、492K:スイッチ回路
80、81、82:終端回路
100:積層体
311、312、321、322、331、332:端部
P21、P22:入出力端子
Pcp、Pcp1、Pcp2:結合端子
SW11-SW14、SW21-SW24、SW31-SW34、SW112、SW113、SW122、SW123、SW212、SW213、SW222、SW223、SW91、SW92、SW93:スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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