(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182869
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】無線通信装置および無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/0453 20230101AFI20231220BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20231220BHJP
H04W 72/044 20230101ALI20231220BHJP
【FI】
H04W72/04 132
H04W84/12
H04W72/04 135
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186913
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160783
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】白川 淳
(72)【発明者】
【氏名】留場 宏道
(72)【発明者】
【氏名】難波 秀夫
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA11
5K067CC02
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE61
(57)【要約】 (修正有)
【課題】周波数利用効率を向上させる無線通信装置及び無線通信システムを提供する。
【解決手段】320MHz帯域幅のように広帯域周波数を使用したフレーム送受信可能な無線LAN通信システムにおいて、全帯域の中で特にプライマリチャネル周辺に無線フレームが集中し、フレーム送受信に使用できずに空きとなる無線チャネルが生じ、周波数利用効率が低くなることを回避するために、アップリンクフレーム(12-33、12-34)の送信に使用するプライマリチャネルを、ダウンデータフレーム(12-31、12-32)の送信に使用するプライマリチャネルと異なるように設定する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブチャネルから構成される無線チャネルを使用して
アクセスポイント装置と通信するステーション装置であって、
第1のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレームを受信する受信部と、
第2のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレームを送信する送信部、とを備え、
前記第2のサブチャネルは前記第1のサブチャネルとは異なる、
ことを特徴とするステーション装置。
【請求項2】
前記アクセスポイント装置が決定して報知チャネルで通知するサブチャネルを、
前記第2のサブチャネルとする、
ことを特徴とする請求項1記載のステーション装置。
【請求項3】
前記ステーション装置が決定したサブチャネルを、
前記第2のサブチャネルとする、
ことを特徴とする請求項1記載のステーション装置。
【請求項4】
前記ステーション装置が決定したサブチャネルは、
前記アクセスポイント装置の承諾を得た後に、
前記アクセスポイント装置が決定して報知チャネルで通知するサブチャネルを置き換えて、
前記第2のサブチャネルとする、
ことを特徴とする請求項1記載のステーション装置。
【請求項5】
前記無線チャネル内において、
前記第2のサブチャネルは、周波数軸において前記第1のサブチャネルから最も遠くに位置するように決定する、
ことを特徴とする請求項1記載のステーション装置。
【請求項6】
前記無線チャネル内において、
使用頻度の低いサブチャネルを
前記第2のサブチャネルとする、
ことを特徴とする請求項1記載のステーション装置。
【請求項7】
前記アクセスポイント装置が前記第1のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレーム送信中に、
前記ステーション装置が前記第2のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレーム送信する、
ことを特徴とする請求項1記載のステーション装置。
【請求項8】
前記アクセスポイント装置が前記第1のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレーム受信中に、
前記ステーション装置が前記第2のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレーム送信する、
ことを特徴とする請求項1記載のステーション装置。
【請求項9】
複数のサブチャネルから構成される無線チャネルを使用して
端末装置と通信するアクセスポイント装置であって、
第1のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレームを送信する送信部と、
第2のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレームを受信する受信部、とを備え、
前記第2のサブチャネルは、前記第1のサブチャネルとは異なる、
ことを特徴とするアクセスポイント装置。
【請求項10】
複数のサブチャネルから構成される無線チャネルを使用し、
アクセスポイント装置と、前記アクセスポイント装置と通信する端末装置、
から構成される無線通信システムであって、
第1のサブチャネルをプライマリチャネルとするダウンリンク通信と、
第2のサブチャネルをプライマリチャネルとするアップリンク通信、を実施し、
前記第2のサブチャネルは、前記第1のサブチャネルとは異なる、
ことを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE(The Institute of Electrical and ElectronicsEngineers Inc.)は、無線LAN(Local Area Network)通信の速度高速化、周波数利用効率化を実現するために無線LAN標準規格であるIEEE802.11の仕様更新に継続して取り組んでいる。無線LANでは、国・地域からの許可(免許)を必要とせずに使用することが可能なアンライセンスバンドを用いて、無線通信を行うことができる。家庭などの個人向け用途では、インターネットなどへのWAN(Wide Area Network)回線に接続するための回線終端装置に無線LANアクセスポイント機能を含める、もしくは無線LANアクセスポイント装置を回線終端装置に接続するなどして、住居内からのインターネットアクセスが無線化されてきた。つまり、スマートフォンやPCなどの無線LANステーション装置は無線LANアクセスポイント装置に接続して、インターネットにアクセスできる。
【0003】
2020年にはIEEE802.11axの仕様策定が見込まれており、既に仕様ドラフトに準拠した無線LANデバイスや、前記無線LANデバイスを搭載したスマートフォンやPC(Personal Computer)がWi-Fi6(登録商標、Wi-FiAllianceの認証を受けたIEEE-802.11ax準拠品に対する呼称)対応製品として市場に登場している。そして、現在、IEEE802.11axの後継規格として、IEEE802.11beの標準化活動が開始されている。無線LANデバイスの急速な普及に伴い、IEEE802.11be標準化においては、無線LANデバイスの過密配置環境においてユーザあたりの更なるスループット向上の検討が行われている。
【0004】
一方、欧州においてはETSI(European Telecommunications StandardsInstitute)が、米国においてはFCC(Federal CommunicationsCommission)が6GHz帯(5.935~7.125GHz)をアンライセンスバンドとして使用できるように検討しており、その他の世界各国においても同様の検討が進んでいる。このことは、無線LANが2.4GHz帯、5GHzに追加して6GHz帯も使用可能となる見込みがでてきたということである。対象周波数拡大に対応するために、Wi-Fi AllianceはWi-Fi6の拡張版であるWi-Fi6E(登録商標)を策定し、6GHz帯使用するとしている。
【0005】
6GHz帯とは正確には5.935~7.125GHzの周波数であり、帯域幅としては合計で約1.2GHzを新たに使用可能になり、つまりは、80MHz幅チャネル換算で14個のチャネル分が、160MHz幅チャネル換算で7個のチャネル分が増加することとなる。潤沢な周波数リソースを使用できることとなるため、一つの無線LAN通信システム(後述するBSSと同等)が使用可能である最大のチャネル帯域幅は、IEEE802.11axの160MHzから、IEEE802.11beでは2倍の320MHzに広げることが検討されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】IEEE 802.11-20/0693-01-00be、May.2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
320MHz帯域幅に対応したアクセスポイント装置は、最大320MHz帯域幅のフレーム送受信に対応した無線LAN通信システムを構成することができる。ステーション装置は、例えばIEEE802.11ac準拠装置であれば80MHz、160MHzの何れか、IEEE802.11axに準拠であれば、20MHz、40MHz、80MHz、160MHzの何れかの帯域幅で動作する。IEEE802.11ax準拠装置の20MHz帯域幅動作は、IoT(Internet of Things)用途などに求められる低消費電力性能やや製造コスト削減したロースペック装置をサポートすることが目的となる。IEEE802.11be準拠装置は、20MHz、40MHz、80MHz、160MHz、240MHz、320MHzの何れかで動作することが想定される。
【0008】
特に、IEEE802.11be準拠の320MHz帯域幅対応アクセスポイント装置が市場に出て無線通信システムが構築されたとしても、接続するステーション装置の割合はIEEE802.11ax以下の占める割合が大きく、つまりは320MHz帯域幅のうち実質的には160MHz帯域幅しか使用されないことが多いと予想される。その後、IEEE802.11be準拠ステーション装置が市場に出てきて、市場及びフィールドで実使用されるIEEE802.11be準拠ステーション装置の割合も増加していくだろう。しかし、製造コストを抑えるために一部のステーション装置は最大160MHzもしくは80MHzまでしかサポートしないことも考えられる。また、例え320MHz帯域幅をサポートするステーション装置であっても、省電力動作のために、時間帯によっては160MHzもしくは80MHzなど帯域幅を絞って動作し、常には320MHz帯域幅を使用し続けるわけではないことも考えられる。つまり、320MHz帯域幅で運用される無線LAN通信システムであっても、実際には、160MHz帯域幅は頻繁に使用されるが、残りの160MHz帯域幅は空く傾向となり、使用帯域(チャネル)に偏りが生じて全体として周波数を有効活用できない問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明に係る通信装置および通信方法は、次の通りである。
【0010】
(1)すなわち、本発明の一態様に係る通信装置は、複数のサブチャネルから構成される無線チャネルを使用してアクセスポイント装置と通信するステーション装置であって、第1のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレームを受信する受信部と、第2のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレームを送信する送信部、とを備え、前記第2のサブチャネルは前記第1のサブチャネルとは異なる。
【0011】
(2)また、本発明の一態様に係る通信装置は、上記(1)に記載され、前記アクセスポイント装置が決定して報知チャネルで通知するサブチャネルを、前記第2のサブチャネルとする。
【0012】
(3)また、本発明の一態様に係る通信装置は、上記(1)に記載され、前記ステーション装置が決定したサブチャネルを、前記第2のサブチャネルとする。
【0013】
(4)また、本発明の一態様に係る通信装置は、上記(1)に記載され、前記ステーション装置が決定したサブチャネルは、前記アクセスポイント装置の承諾を得た後に、前記アクセスポイント装置が決定して報知チャネルで通知するサブチャネルを置き換えて、前記第2のサブチャネルとする。
【0014】
(5)また、本発明の一態様に係る通信装置は、上記(1)に記載され、前記無線チャネル内において、前記第2のサブチャネルは、周波数軸において前記第1のサブチャネルから最も遠くに位置するように決定する・
【0015】
(6)また、本発明の一態様に係る通信装置は、上記(1)に記載され、前記無線チャネル内において、使用頻度の低いサブチャネルを前記第2のサブチャネルとする。
【0016】
(7)また、本発明の一態様に係る通信装置は、上記(1)に記載され、前記アクセスポイント装置が前記第1のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレーム送信中に、前記ステーション装置が前記第2のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレーム送信する。
【0017】
(8)また、本発明の一態様に係る通信装置は、上記(1)に記載され、前記アクセスポイント装置が前記第1のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレーム受信中に、前記ステーション装置が前記第2のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレーム送信する。
【0018】
(9)本発明の一態様に係る通信装置は、複数のサブチャネルから構成される無線チャネルを使用して端末装置と通信するアクセスポイント装置であって、第1のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレームを送信する送信部と、第2のサブチャネルをプライマリチャネルとするデータフレームを受信する受信部、とを備え、前記第2のサブチャネルは、前記第1のサブチャネルとは異なる。
【0019】
(10)本発明の一態様に係る無線通信システムは、複数のサブチャネルから構成される無線チャネルを使用し、アクセスポイント装置と、前記アクセスポイント装置と通信する端末装置、から構成される無線通信システムであって、第1のサブチャネルをプライマリチャネルとするダウンリンク通信と、第2のサブチャネルをプライマリチャネルとするアップリンク通信、を実施し、前記第2のサブチャネルは、前記第1のサブチャネルとは異なる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、広帯域幅の周波数を使用可能な無線通信システムにおいて、全帯域幅を使用した無線通信を実施しない端末装置の割合が多くとも、使用される無線チャネルの偏りを緩和し、各サブチャネルの使用頻度の平滑化に寄与し、全体として周波数有効利用度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一態様に係るフレーム構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一態様に係るフレーム構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明の一態様に係る通信の一例を示す図である。
【
図4】本発明の一態様に係る無線リソースの分割例を示す概要図である。
【
図5】本発明の一態様に係る通信システムの一構成例を示す図である。
【
図6】本発明の一態様に係る無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図7】本発明の一態様に係る無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図8】本発明の一態様に係る符号化方式の一例を示す概要図である。
【
図9】本発明の一態様に係るフレーム構成の一例を示す図である。
【
図10】本発明の一態様に係るフレームのアドレスに関係する情報の一例である。
【
図11】本発明の一態様に係るフレーム送受信を示す図である。
【
図12】本発明の一態様に係るフレーム送受信を示す図である。
【
図13】本発明の一態様に係るフレーム送受信を示す図である。
【
図14】本発明の一態様に係るフレーム送受信を示す図である。
【
図15】本発明の一態様に係るフレーム送受信を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態における通信システムは、無線送信装置(アクセスポイント装置、基地局装置: Access point、基地局装置)、および複数の無線受信装置(ステーション装置、端末装置: station、端末装置)を備える。また、基地局装置と端末装置とで構成されるネットワークを基本サービスセット(BSS: Basic service set、管理範囲)と呼ぶ。また、本実施形態に係るステーション装置は、アクセスポイント装置の機能を備えることができる。同様に、本実施形態に係るアクセスポイント装置は、ステーション装置の機能を備えることができる。そのため、以下では、単に通信装置と述べた場合、該通信装置は、ステーション装置とアクセスポイント装置の両方を示すことができる。
【0023】
BSS内の基地局装置および端末装置は、それぞれCSMA/CA(Carrier sense multipleaccess with collision avoidance)に基づいて、通信を行なうものとする。本実施形態においては、基地局装置が複数の端末装置と通信を行なうインフラストラクチャモードを対象とするが、本実施形態の方法は、端末装置同士が通信を直接行なうアドホックモードでも実施可能である。アドホックモードでは、端末装置が、基地局装置の代わりとなりBSSを形成する。アドホックモードにおけるBSSを、IBSS(Independent Basic Service Set)とも呼称する。以下では、アドホックモードにおいてIBSSを形成する端末装置を、基地局装置とみなすこともできる。本実施形態の方法は、端末装置同士が通信を直接行なうWiFi Direct(登録商標)でも実施可能である。WiFi Directでは、端末装置が、基地局装置の代わりとなりGroupを形成する。以下では、WiFi DirectにおいてGroupを形成するGroup ownerの端末装置を、基地局装置とみなすこともできる。
【0024】
IEEE802.11システムでは、各装置は、共通のフレームフォーマットを持った複数のフレームタイプの送信フレームを送信することが可能である。送信フレームは、物理(Physical:PHY)層、媒体アクセス制御(Medium accesscontrol:MAC)層、論理リンク制御(LLC: Logical Link Control)層、でそれぞれ定義されている。
【0025】
PHY層の送信フレームは、物理プロトコルデータユニット(PPDU: PHY protocol dataunit、物理層フレーム)と呼ばれる。PPDUは、物理層での信号処理を行なうためのヘッダ情報等が含まれる物理層ヘッダ(PHYヘッダ)と、物理層で処理されるデータユニットである物理サービスデータユニット(PSDU:PHY service data unit、MAC層フレーム)等から構成される。PSDUは無線区間における再送単位となるMACプロトコルデータユニット(MPDU: MAC protocol data unit)が複数集約された集約MPDU(A-MPDU:Aggregated MPDU)で構成されることが可能である。
【0026】
PHYヘッダには、信号の検出・同期等に用いられるショートトレーニングフィールド(STF: Shorttraining field)、データ復調のためのチャネル情報を取得するために用いられるロングトレーニングフィールド(LTF: Long training field)などの参照信号と、データ復調のための制御情報が含まれているシグナル(Signal:SIG)などの制御信号が含まれる。また、STFは、対応する規格に応じて、レガシーSTF(L-STF: Legacy-STF)や、高スループットSTF(HT-STF: Highthroughput-STF)や、超高スループットSTF(VHT-STF: Very highthroughput-STF)や、高効率STF(HE-STF: High efficiency-STF)や、超高スループットSTF(EHT-STF:Extremely High Throughput-STF)等に分類され、LTFやSIGも同様にL-LTF、HT-LTF、VHT-LTF、HE-LTF、L-SIG、HT-SIG、VHT-SIG、HE-SIG、EHT-SIGに分類される。VHT-SIGは更にVHT-SIG-A1とVHT-SIG-A2とVHT-SIG-Bに分類される。同様に、HE-SIGは、HE-SIG-A1~4と、HE-SIG-Bに分類される。また、同一規格における技術更新を想定し、追加の制御情報が含まれているUniversal SIGNAL(U-SIG)フィールドが含まれることができる。
【0027】
さらに、PHYヘッダは当該送信フレームの送信元のBSSを識別する情報(以下、BSS識別情報とも呼称する)を含むことができる。BSSを識別する情報は、例えば、当該BSSのSSID(Service Set Identifier)や当該BSSの基地局装置のMACアドレスであることができる。また、BSSを識別する情報は、SSIDやMACアドレス以外の、BSSに固有な値(例えばBSS Color等)であることができる。
【0028】
PPDUは対応する規格に応じて変調される。例えば、IEEE802.11n規格であれば、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal frequency division multiplexing)信号に変調される。
【0029】
MPDUはMAC層での信号処理を行なうためのヘッダ情報等が含まれるMAC層ヘッダ(MAC header)と、MAC層で処理されるデータユニットであるMACサービスデータユニット(MSDU: MAC service data unit)もしくはフレームボディ、ならびにフレームに誤りがないかをどうかをチェックするフレーム検査部(Frame check sequence:FCS)で構成されている。また、複数のMSDUは集約MSDU(A-MSDU: Aggregated MSDU)として集約されることも可能である。
【0030】
MAC層の送信フレームのフレームタイプは、装置間の接続状態などを管理するマネジメントフレーム、装置間の通信状態を管理するコントロールフレーム、および実際の送信データを含むデータフレームの3つに大きく分類され、それぞれは更に複数種類のサブフレームタイプに分類される。コントロールフレームには、受信完了通知(Ack: Acknowledge)フレーム、送信要求(RTS: Request to send)フレーム、受信準備完了(CTS: Clear
to send)フレーム等が含まれる。マネジメントフレームには、ビーコン(Beacon)フレーム、プローブ要求(Probe request)フレーム、プローブ応答(Probe response)フレーム、認証(Authentication)フレーム、接続要求(Association request)フレーム、接続応答(Association response)フレーム等が含まれる。データフレームには、データ(Data)フレーム、ポーリング(CF-poll)フレーム等が含まれる。各装置は、MACヘッダに含まれるフレームコントロールフィールドの内容を読み取ることで、受信したフレームのフレームタイプおよびサブフレームタイプを把握することができる。
【0031】
なお、Ackには、Block Ackが含まれても良い。Block Ackは、複数のMPDUに対する受信完了通知を実施可能である。
【0032】
ビーコンフレームには、ビーコンが送信される周期(Beacon interval)やSSIDを記載するフィールド(Field)が含まれる。基地局装置は、ビーコンフレームを周期的にBSS内に報知することが可能であり、端末装置はビーコンフレームを受信することで、端末装置周辺の基地局装置を把握することが可能である。端末装置が基地局装置より報知されるビーコンフレームに基づいて基地局装置を把握することを受動的スキャニング(Passive scanning)と呼ぶ。一方、端末装置がプローブ要求フレームをBSS内に報知することで、基地局装置を探査することを能動的スキャニング(Active scanning)と呼ぶ。基地局装置は該プローブ要求フレームへの応答としてプローブ応答フレームを送信することが可能であり、該プローブ応答フレームの記載内容は、ビーコンフレームと同等である。
【0033】
端末装置は基地局装置を認識したあとに、該基地局装置に対して接続処理を行なう。接続処理は認証(Authentication)手続きと接続(Association)手続きに分類される。端末装置は接続を希望する基地局装置に対して、認証フレーム(認証要求)を送信する。基地局装置は、認証フレームを受信すると、該端末装置に対する認証の可否などを示すステータスコードを含んだ認証フレーム(認証応答)を該端末装置に送信する。端末装置は、該認証フレームに記載されたステータスコードを読み取ることで、自装置が該基地局装置に認証を許可されたか否かを判断することができる。なお、基地局装置と端末装置は認証フレームを複数回やり取りすることが可能である。
【0034】
端末装置は認証手続きに続いて、基地局装置に対して接続手続きを行なうために、接続要求フレームを送信する。基地局装置は接続要求フレームを受信すると、該端末装置の接続を許可するか否かを判断し、その旨を通知するために、接続応答フレームを送信する。接続応答フレームには、接続処理の可否を示すステータスコードに加えて、端末装置を識別するためのアソシエーション識別番号(AID: Association identifier)が記載されている。基地局装置は接続許可を出した端末装置にそれぞれ異なるAIDを設定することで、複数の端末装置を管理することが可能となる。
【0035】
接続処理が行われたのち、基地局装置と端末装置は実際のデータ伝送を行なう。IEEE802.11システムでは、分散制御機構(DCF: Distributed Coordination Function)と集中制御機構(PCF: Point Coordination Function)、およびこれらが拡張された機構(拡張分散チャネルアクセス(EDCA: Enhanced distributed channel access)や、ハイブリッド制御機構(HCF: Hybrid coordination function)等)が定義されている。以下では、基地局装置が端末装置にDCFで信号を送信する場合を例にとって説明する。
【0036】
DCFでは、基地局装置および端末装置は、通信に先立ち、自装置周辺の無線チャネルの使用状況を確認するキャリアセンス(CS: Carrier sense)を行なう。例えば、送信局である基地局装置は予め定められたクリアチャネル評価レベル(CCAレベル: Clear channel assessment level)よりも高い信号を該無線チャネルで受信した場合、該無線チャネルでの送信フレームの送信を延期する。以下では、該無線チャネルにおいて、CCAレベル以上の信号が検出される状態をビジー(Busy)状態、CCAレベル以上の信号が検出されない状態をアイドル(Idle)状態と呼ぶ。このように、各装置が実際に受信した信号の電力(受信電力レベル)に基づいて行なうCSを物理キャリアセンス(物理CS)と呼ぶ。なおCCAレベルをキャリアセンスレベル(CS level)、もしくはCCA閾値(CCA threshold:CCAT)とも呼ぶ。なお、基地局装置および端末装置は、CCAレベル以上の信号を検出した場合は、少なくともPHY層の信号を復調する動作に入る。
【0037】
基地局装置は送信する送信フレームに種類に応じたフレーム間隔(IFS: Inter frame space)だけキャリアセンスを行ない、無線チャネルがビジー状態かアイドル状態かを判断する。基地局装置がキャリアセンスする期間は、これから基地局装置が送信する送信フレームのフレームタイプおよびサブフレームタイプによって異なる。IEEE802.11システムでは、期間の異なる複数のIFSが定義されており、最も高い優先度が与えられた送信フレームに用いられる短フレーム間隔(SIFS: Short IFS)、優先度が比較的高い送信フレームに用いられるポーリング用フレーム間隔(PCF IFS: PIFS)、最も優先度の低い送信フレームに用いられる分散制御用フレーム間隔(DCF IFS: DIFS)などがある。基地局装置がDCFでデータフレームを送信する場合、基地局装置はDIFSを用いる。
【0038】
基地局装置はDIFSだけ待機したあとで、フレームの衝突を防ぐためのランダムバックオフ時間だけ更に待機する。IEEE802.11システムにおいては、コンテンションウィンドウ(CW: Contention window)と呼ばれるランダムバックオフ時間が用いられる。CSMA/CAでは、ある送信局が送信した送信フレームは、他送信局からの干渉が無い状態で受信局に受信されることを前提としている。そのため、送信局同士が同じタイミングで送信フレームを送信してしまうと、フレーム同士が衝突してしまい、受信局は正しく受信することができない。そこで、各送信局が送信開始前に、ランダムに設定される時間だけ待機することで、フレームの衝突が回避される。基地局装置はキャリアセンスによって無線チャネルがアイドル状態であると判断すると、CWのカウントダウンを開始し、CWが0となって初めて送信権を獲得し、端末装置に送信フレームを送信できる。なお、CWのカウントダウン中に基地局装置がキャリアセンスによって無線チャネルをビジー状態と判断した場合は、CWのカウントダウンを停止する。そして、無線チャネルがアイドル状態となった場合、先のIFSに続いて、基地局装置は残留するCWのカウントダウンを再開する。
【0039】
次に、フレーム受信の詳細について説明する。受信局である端末装置は、送信フレームを受信し、該送信フレームのPHYヘッダを読み取り、受信した送信フレームを復調する。そして、端末装置は復調した信号のMACヘッダを読み取ることで、該送信フレームが自装置宛てのものか否かを認識することができる。なお、端末装置は、PHYヘッダに記載の情報(例えばVHT-SIG-Aの記載されるグループ識別番号(GID: Groupidentifier, Group ID))に基づいて、該送信フレームの宛先を判断することも可能である。
【0040】
端末装置は、受信した送信フレームが自装置宛てのものと判断し、そして誤りなく送信フレームを復調できた場合、フレームを正しく受信できたことを示すACKフレームを送信局である基地局装置に送信しなければならない。ACKフレームは、SIFS期間の待機だけ(ランダムバックオフ時間は取られない)で送信される最も優先度の高い送信フレームの一つである。基地局装置は端末装置から送信されるACKフレームの受信をもって、一連の通信を終了する。なお、端末装置がフレームを正しく受信できなかった場合、端末装置はACKを送信しない。よって基地局装置は、フレーム送信後、一定期間(SIFS+ACKフレーム長)の間、受信局からのACKフレームを受信しなかった場合、通信は失敗したものとして、通信を終了する。このように、IEEE802.11システムの1回の通信(バーストとも呼ぶ)の終了は、ビーコンフレームなどの報知信号の送信の場合や、送信データを分割するフラグメンテーションが用いられる場合などの特別な場合を除き、必ずACKフレームの受信の有無で判断されることになる。
【0041】
端末装置は、受信した送信フレームが自装置宛てのものではないと判断した場合、PHYヘッダ等に記載されている該送信フレームの長さ(Length)に基づいて、ネットワークアロケーションベクタ(NAV: Networkallocation vector)を設定する。端末装置は、NAVに設定された期間は通信を試行しない。つまり、端末装置は物理CSによって無線チャネルがビジー状態と判断した場合と同じ動作をNAVに設定された期間行なうことになるから、NAVによる通信制御は仮想キャリアセンス(仮想CS)とも呼ばれる。NAVは、PHYヘッダに記載の情報に基づいて設定される場合に加えて、隠れ端末問題を解消するために導入される送信要求(RTS: Request to send)フレームや、受信準備完了(CTS:Clear to send)フレームによっても設定される。
【0042】
各装置がキャリアセンスを行ない、自律的に送信権を獲得するDCFに対して、PCFは、ポイントコーディネータ(PC:Point coordinator)と呼ばれる制御局が、BSS内の各装置の送信権を制御する。一般に基地局装置がPCとなり、BSS内の端末装置の送信権を獲得することになる。
【0043】
PCFによる通信期間には、非期間(CFP: Contention free period)と競合期間(CP:
Contention period)が含まれる。CPの間は、前述してきたDCFに基づいて通信が行われ、PCが送信権を制御するのはCFPの間となる。PCである基地局装置は、CFPの期間(CFP Max duration)などが記載されたビーコンフレームをPCFの通信に先立ちBSS内に報知する。なお、PCFの送信開始時に報知されるビーコンフレームの送信にはPIFSが用いられ、CWを待たずに送信される。該ビーコンフレームを受信した端末装置は、該ビーコンフレームに記載されたCFPの期間をNAVに設定する。以降、NAVが経過する、もしくはCFPの終了をBSS内に報知する信号(例えばCF-endを含んだデータフレーム)が受信されるまでは、端末装置はPCより送信される送信権獲得をシグナリングする信号(例えばCF-pollを含んだデータフレーム)を受信した場合のみ、送信権を獲得可能である。なお、CFPの期間内では、同一BSS内でのパケットの衝突は発生しないから、各端末装置はDCFで用いられるランダムバックオフ時間を取らない。
【0044】
無線媒体は複数のリソースユニット(Resource unit:RU)に分割されることができる。
図4は無線媒体の分割状態の1例を示す概要図である。例えば、リソース分割例1では、無線通信装置は無線媒体である周波数リソース(サブキャリア)を9個のRUに分割することができる。同様に、リソース分割例2では、無線通信装置は無線媒体であるサブキャリアを5個のRUに分割することができる。当然ながら、
図4に示すリソース分割例はあくまで1例であり、例えば、複数のRUはそれぞれ異なるサブキャリア数によって構成されることも可能である。また、RUとして分割される無線媒体には周波数リソースだけではなく空間リソースも含まれることができる。無線通信装置(例えばAP)は、各RUに異なる端末装置宛てのフレームを配置することで、複数の端末装置(例えば複数のSTA)に同時にフレームを送信することができる。APは、無線媒体の分割の状態を示す情報(Resource allocation information)を、共通制御情報として、自装置が送信するフレームのPHYヘッダに記載することができる。更に、APは、各STA宛てのフレームが配置されたRUを示す情報(resource unit assignment information)を、固有制御情報として、自装置が送信するフレームのPHYヘッダに記載することができる。
【0045】
また、複数の端末装置(例えば複数のSTA)は、それぞれ割り当てられたRUにフレームを配置して送信することで、同時にフレームを送信することができる。複数のSTAは、APから送信されるトリガ情報を含んだフレーム(Trigger frame:TF)を受信した後、所定の期間待機したのち、フレーム送信を行なうことができる。各STAは、該TFに記載の情報に基づいて自装置に割り当てられたRUを把握することができる。また、各STAは、該TFを基準としたランダムアクセスによりRUを獲得することができる。
【0046】
APは、1つのSTAに複数のRUを同時に割り当てることができる。該複数のRUは、連続するサブキャリアで構成されることも出来るし、不連続のサブキャリアで構成されることも出来る。APは、1つのSTAに割り当てた複数のRUを用いて、1つのフレームを送信することが出来るし、複数のフレームをそれぞれ異なるRUに割り当てて送信することができる。該複数のフレームの少なくとも1つは、Resource allocation informationを送信する複数の端末装置に対する共通の制御情報を含むフレームであることができる。
【0047】
1つのSTAは、APより複数のRUを割り当てられることができる。STAは、割り当てられた複数のRUを用いて、1つのフレームを送信することができる。また、STAは割り当てられた複数のRUを用いて、複数のフレームをそれぞれ異なるRUに割り当てて送信することができる。該複数のフレームは、それぞれ異なるフレームタイプのフレームであることができる。
【0048】
APは、1つのSTAに複数のAIDを割り当てることができる。APは、1つのSTAに割り当てた複数のAIDに対して、それぞれRUを割り当てることができる。APは、1つのSTAに割り当てた複数のAIDに対して、それぞれ割り当てたRUを用いて、それぞれ異なるフレームを送信することができる。該異なるフレームは、それぞれ異なるフレームタイプのフレームであることができる。
【0049】
1つのSTAは、APより複数のAIDを割り当てられることができる。1つのSTAは割り当てられた複数のAIDに対して、それぞれRUを割り当てられることができる。1つのSTAは、自装置に割り当てられた複数のAIDにそれぞれ割り当てられたRUは、全て自装置に割り当てられたRUと認識し、該割り当てられた複数のRUを用いて、1つのフレームを送信することができる。また、1つのSTAは、該割り当てられた複数のRUを用いて、複数のフレームを送信することができる。このとき、該複数のフレームには、それぞれ割り当てられたRUに関連付けられたAIDを示す情報を記載して送信することができる。APは、1つのSTAに割り当てた複数のAIDに対して、それぞれ割り当てたRUを用いて、それぞれ異なるフレームを送信することができる。該異なるフレームは、異なるフレームタイプのフレームであることができる。
【0050】
以下では、基地局装置、端末装置を総称して、無線通信装置もしくは通信装置とも呼称する。また、ある無線通信装置が別の無線通信装置と通信を行う際にやりとりされる情報をデータ(data)とも呼称する。つまり、無線通信装置は、基地局装置及び端末装置を含む。
【0051】
無線通信装置は、PPDUを送信する機能と受信する機能のいずれか、または両方を備える。
図1は、無線通信装置が送信するPPDU構成の一例を示した図である。IEEE802.11a/b/g規格に対応するPPDUはL-STF、L-LTF、L-SIG及びDataフレーム(MAC Frame、MACフレーム、ペイロード、データ部、データ、情報ビット等)を含んだ構成である。IEEE802.11n規格に対応するPPDUはL-STF、L-LTF、L-SIG、HT-SIG、HT-STF、HT-LTF及びDataフレームを含んだ構成である。IEEE802.11ac規格に対応するPPDUはL-STF、L-LTF、L-SIG、VHT-SIG-A、VHT-STF、VHT-LTF、VHT-SIG-B及びMACフレームの一部あるいは全てを含んだ構成である。IEEE802.11ax標準で検討されているPPDUは、L-STF、L-LTF、L-SIG、L-SIGが時間的に繰り返されたRL-SIG、HE-SIG-A、HE-STF、HE-LTF、HE-SIG-B及びDataフレームの一部あるいは全てを含んだ構成である。IEEE802.11be標準で検討されているPPDUは、L-STF、L-LTF、L-SIG、RL-SIG、U-SIG、EHT-SIG、EHT-STF、HET-LTF及びDataフレームの一部あるいは全てを含んだ構成である。
【0052】
図1中の点線で囲まれているL-STF、L-LTF及びL-SIGはIEEE802.11規格において共通に用いられる構成である(以下では、L-STF、L-LTF及びL-SIGをまとめてL-ヘッダとも呼称する)。例えばIEEE 802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置は、IEEE802.11n/ac規格に対応するPPDU内のL-ヘッダを適切に受信することが可能である。IEEE 802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置は、IEEE802.11n/ac規格に対応するPPDUを、IEEE 802.11a/b/g規格に対応するPPDUとみなして受信することができる。
【0053】
ただし、IEEE 802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置はL-ヘッダの後に続く、IEEE802.11n/ac規格に対応するPPDUを復調することができないため、送信アドレス(TA:Transmitter Address)や受信アドレス(RA:Receiver Address)やNAVの設定に用いられるDuration/IDフィールドに関する情報を復調することができない。
【0054】
IEEE 802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置が適切にNAVを設定する(あるいは所定の期間受信動作を行う)ための方法として、IEEE802.11は、L-SIGにDuration情報を挿入する方法を規定している。L-SIG内の伝送速度に関する情報(RATE field、L-RATE field、L-RATE、L_DATARATE、L_DATARATE field)、伝送期間に関する情報(LENGTH field、L-LENGTH field、L-LENGTH)は、IEEE 802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置が適切にNAVを設定するために使用される。
【0055】
図2は、L-SIGに挿入されるDuration情報の方法の一例を示す図である。
図2においては、一例としてIEEE802.11ac規格に対応するPPDU構成を示しているが、PPDU構成はこれに限定されない。IEEE802.11n規格に対応のPPDU構成及びIEEE802.11ax規格に対応するPPDU構成でも良い。TXTIMEは、PPDUの長さに関する情報を備え、aPreambleLengthは、プリアンブル(L-STF+L-LTF)の長さに関する情報を備え、aPLCPHeaderLengthは、PLCPヘッダ(L-SIG)の長さに関する情報を備える。L_LENGTHは、IEEE802.11規格の互換性をとるために設定される仮想的な期間であるSignal Extension、L_RATEに関連するN
ops、1シンボル(symbol,OFDM symbol等)の期間に関する情報であるaSymbolLength、PLCP Service fieldが含むビット数を示すaPLCPServiceLength、畳みこみ符号のテールビット数を示すaPLCPConvolutionalTailLengthに基づいて算出される。無線通信装置は、L_LENGTHを算出し、L-SIGに挿入することができる。また、無線通信装置は、L-SIG Durationを算出することができる。L-SIG Durationは、L_LENGTHを含むPPDUと、その応答として宛先の無線通信装置より送信されることが期待されるAckとSIFSの期間を合計した期間に関する情報を示す。
【0056】
図3は、L-SIG TXOP Protectionにおける、L-SIG Durationの一例を示した図である。DATA(フレーム、ペイロード、データ等)は、MACフレームとPLCPヘッダの一部または両方から構成される。また、BAはBlock Ack、またはAckである。PPDUは、L-STF,L-LTF,L-SIGを含み、さらにDATA,BA、RTSあるいはCTSのいずれかまたはいずれか複数を含んで構成されることができる。
図3に示す一例では、RTS/CTSを用いたL-SIG TXOP Protectionを示しているが、CTS-to-Selfを用いても良い。ここで、MAC Durationは、Duration/ID fieldの値によって示される期間である。また、InitiatorはL-SIG TXOP Protection期間の終了を通知するためにCF_Endフレームを送信することができる。
【0057】
続いて、無線通信装置が受信するフレームからBSSを識別する方法について説明する。無線通信装置が、受信するフレームからBSSを識別するためには、PPDUを送信する無線通信装置が当該PPDUにBSSを識別するための情報(BSS color,BSS識別情報、BSSに固有な値)を挿入することが好適である。BSS colorを示す情報は、HE-SIG-Aに記載されることが可能である。
【0058】
無線通信装置は、L-SIGを複数回送信する(L-SIG Repetition)ことができる。例えば、受信側の無線通信装置は、複数回送信されるL-SIGをMRC(Maximum Ratio Combining)を用いて受信することで、L-SIGの復調精度が向上する。さらに無線通信装置は、MRCによりL-SIGを正しく受信完了した場合に、当該L-SIGを含むPPDUがIEEE802.11ax規格に対応するPPDUであると解釈することができる。
【0059】
無線通信装置は、PPDUの受信動作中も、当該PPDU以外のPPDUの一部(例えば、IEEE802.11により規定されるプリアンブル、L-STF、L-LTF、PLCPヘッダ等)の受信動作を行うことができる(二重受信動作とも呼称する)。無線通信装置は、PPDUの受信動作中に、当該PPDU以外のPPDUの一部を検出した場合に、宛先アドレスや、送信元アドレスや、PPDUあるいはDATA期間に関する情報の一部または全部を更新することができる。
【0060】
Ack及びBAは、応答(応答フレーム)とも呼称されることができる。また、プローブ応答や、認証応答、接続応答を応答と呼称することができる。
[1.第1の実施形態]
【0061】
図5は、本実施形態に係る無線通信システムの一例を示した図である。無線通信システム3-1は、無線通信装置1-1及び無線通信装置2-1~2-3を備えている。なお、無線通信装置1-1を基地局装置1-1とも呼称し、無線通信装置2-1~2-3を端末装置2-1~3とも呼称する。また、無線通信装置2-1~2-3および端末装置2-1~2-3を、無線通信装置1-1に接続されている装置として、無線通信装置2Aおよび端末装置2Aとも呼称する。無線通信装置1-1及び無線通信装置2Aは、無線接続されており、お互いにPPDUの送受信を行うことができる状態にある。また、本実施形態に係る無線通信システムは、無線通信システム3-1の他に無線通信システム3-2を備えてもよい。無線通信システム3-2は、無線通信装置1-2及び無線通信装置2-4~6を備えている。なお、無線通信装置1-2を基地局装置1-2とも呼称し、無線通信装置2-4~6を端末装置2-4~6とも呼称する。また、また、無線通信装置2-4~6および端末装置2-4~6を、無線通信装置1-2に接続されている装置として、無線通信装置2Bおよび端末装置2Bとも呼称する。無線通信システム3-1、無線通信システム3-2は異なるBSSを形成するが、これはESS(Extended Service Set)が異なることを必ずしも意味していない。ESSは、LAN(Local Area Network)を形成するサービスセットを示している。つまり、同じESSに属する無線通信装置は、上位層から同一のネットワークに属しているとみなされることができる。また、BSSはDS(Distribution System)を介して結合されてESSを形成する。なお、無線通信システム3-1、3-2のそれぞれは、さらに複数の無線通信装置を備えることも可能である。
【0062】
図5において、以下の説明においては、無線通信装置2Aが送信する信号は、無線送信装置1-1および無線通信装置2Bには到達する一方で、無線通信装置1-2には到達しないものとする。つまり、無線通信装置2Aがあるチャネルを使って信号を送信すると、無線通信装置1-1と、無線通信装置2Bは、当該チャネルをビジー状態と判断する一方で、無線通信装置1-2は、当該チャネルをアイドル状態と判断する。また、無線通信装置2Bが送信する信号は、無線送信装置1-2および無線通信装置2Aには到達する一方で、無線通信装置1-1には到達しないものとする。つまり、無線通信装置2Bがあるチャネルを使って信号を送信すると、無線通信装置1-2と、無線通信装置2Aは、当該チャネルをビジー状態と判断する一方で、無線通信装置1-1は、当該チャネルをアイドル状態と判断する。
【0063】
IEEE802.11システムにおいては、前記送信権の獲得は20MHz帯域幅毎に実施されることを、
図11を用いて更に説明する。例えば、IEEE802.11axのアクセスポイント装置により、各々20MHz帯域幅のCH1~CH4から、合計80MHz帯域幅を使用する無線通信システムが構築されているとする。CH1~CH4の何れかがプライマリチャネル(Primary channel)として設定され、このプライマリチャネルでのバックオフ時間のカウントとキャリアセンスとに基づいた送信権の獲得が、他のチャネルにおける送信権の獲得にも影響する。例えば、CH1がプライマリチャネルに設定される場合、CH1と隣接するCH2をセカンダリチャネル(Secondary channel)、CH1とCH2の組み合わせを40MHzプライマリチャネル(40MHz Primary channel)、40MHzプライマリチャネルに隣接するCH3とCH4の組み合わせを40MHzセカンダリチャネル(40MHz Secondary channel)のように呼称する。
【0064】
プライマリチャネルがCH1に設定されているとして、ステーション装置2-1がアクセスポイント装置1-1にフレーム送信する場合のフレーム送信手順の例について説明する。ステーション装置2-1はCH1でランダムバックオフ時間をおいてキャリアセンス実行して無線チャネルがアイドル状態であると判断すると、CH1上にRTSフレーム11-11を送信し、同じタイミングで同等のフレームをCH2~CH4にRTSフレーム11-12~14として送信する。RTSフレームを受信したアクセスポイント装置1-1は、CH1~CH4の無線チャネル状況を確認してアイドル状態であると判断すると、そのことを示すCTSフレーム11-21~11-24をCH1~CH4のそれぞれに送信し、ステーション装置2-1が受信する。ステーション装置は、CH1~CH4の無線チャネルを使用可能と判断して、データフレーム11-31~11-34を送信する。つまり、チャネル帯域幅80MHz全体を使用してデータフレーム送信できる。
【0065】
一方、ステーション装置2-1がRTSフレームを送信しても、CH1~CH4の全てでCTSフレームを受信できない場合がある。例えば、CH1~CH4のそれぞれでRTSフレーム11-41~11-44を受信したアクセスポイント装置1-1が、無線チャネル状況を確認してCH3とCH4のみがアイドル状態であると判断し、CH3とCH4のみにCTSフレーム(11-53、11-54)を送信する場合である。ステーション装置2-1は、プライマリチャネルであるCH1でCTSフレームを受信できない場合には、CH1~CH4の全てでデータフレーム送信をすることができない。つまり、データフレーム送信可否の判断は、プライマリチャネルの状況に依存する。
【0066】
その他の例として、プライマリチャネルであるCH1ではCTSフレームを受信するが、CH1~CH4の全てではCTSフレームを受信できない場合もある。例えば、CH1~CH4のそれぞれでRTSフレーム11-61~11-64を受信したアクセスポイント装置が、無線チャネル状況を確認してCH1とCH2のみがアイドル状態であると判断し、CH1とCH2のみにCTSフレーム(11-71、11-72)を送信する場合である。ステーション装置2-1は、プライマリチャネルであるCH1でCTSフレームを受信したためデータフレーム送信可能ではあるものの、CH1とCH2のみがアイドル状態であることを理解し、データフレーム11-81と11-82を送信する。つまり、80MHz帯域幅のうち、40MHz帯域幅しか使用できない。
【0067】
図9にMAC Frameのフォーマットの例を示す。ここでのMAC Frameとは、
図1におけるDataフレーム(MAC Frame、MACフレーム、ペイロード、データ部、データ、情報ビット等)、
図2におけるMAC Frameのことを指す。MAC Frameは、Frame Control、Duration/ID、Address1、Address2、Address3、Sequence Control、Address4、QoS Control、HT Control、FrameBody、FCSを含んでいる。
【0068】
図10は、
図9に含まれるAddress1、Address2、Address3、Address4のフィールドに書き込まれるアドレスを、FromDSとToDSの値に応じた場合分けをして表にまとめている。FromDS、ToDSの情報は、
図9におけるFrameControlフィールドに含まれる。FromDSの値は、フレームがDSから送信される場合に1、DS以外から送信される場合に0となる。ToDSの値は、フレームがDSに受信される場合に1、DS以外に受信される場合に0となる。なお、SAはSource Address(送信元アドレス、参照元アドレス)を、DAはDestinationAddress(宛先アドレス、転送先アドレス)のことを指す。
図10の表はFromDSとToDSの値に応じて、Address1~Address4の意味が変わることを示している。なお、ToDSが0かつFromDSが0の場合にAddress1は「RA」と「DA」を「=」で結んで「RA=DA」と表示しているが、これはRAとDAが同じアドレスであることを示している。その他の組み合わせにおいても、「=」で結ばれるアドレスは同じであることを示している。
【0069】
図6は、無線通信装置1-1、1-2、2A、2B(以下では、まとめて無線通信装置10000-1とも呼称)の装置構成の一例を示した図である。無線通信装置10000-1は、上位層部(上位層処理ステップ)10001-1と、自律分散制御部(自律分散制御ステップ)10002-1と、送信部(送信ステップ)10003-1と、受信部(受信ステップ)10004-1と、アンテナ部10005-1と、を含んだ構成である。
【0070】
上位層部10001-1は、他のネットワークと接続され、自律分散制御部10002-1にトラフィックに関する情報を通知することができる。トラフィックに関する情報とは、例えば、他の無線通信装置宛ての情報であっても良いし、マネジメントフレームやコントロールフレームに含まれる制御情報でも良い。
【0071】
図7は、自律分散制御部10002-1の装置構成の一例を示した図である。自律分散制御部10002-1は、CCA部(CCAステップ)10002a-1と、バックオフ部(バックオフステップ)10002b-1と、送信判断部(送信判断ステップ)10002c-1とを含んだ構成である。
【0072】
CCA部10002a-1は、受信部から通知される、無線リソースを介して受信する受信信号電力に関する情報と、受信信号に関する情報(復号後の情報を含む)のいずれか一方、または両方を用いて、当該無線リソースの状態判断(busyまたはidleの判断を含む)を行うことができる。CCA部10002a-1は、当該無線リソースの状態判断情報を、バックオフ部10002b-1及び送信判断部10002c-1に通知することができる。
【0073】
バックオフ部10002b-1は、無線リソースの状態判断情報を用いて、バックオフを行うことができる。バックオフ部10002b-1は、CWを生成し、カウントダウン機能を有する。例えば、無線リソースの状態判断情報がidleを示す場合に、CWのカウントダウンを実行し、無線リソースの状態判断情報がbusyを示す場合に、CWのカウントダウンを停止することができる。バックオフ部10002b-1は、CWの値を送信判断部10002c-1に通知することができる。
【0074】
送信判断部10002c-1は、無線リソースの状態判断情報、またはCWの値のいずれか一方、あるいは両方を用いて送信判断を行う。例えば、無線リソースの状態判断情報がidleを示し、CWの値が0の時に送信判断情報を送信部10003-1に通知することができる。また、無線リソースの状態判断情報がidleを示す場合に送信判断情報を送信部10003-1に通知することができる。
【0075】
送信部10003-1は、物理層フレーム生成部(物理層フレーム生成ステップ)10003a-1と、無線送信部(無線送信ステップ)10003b-1とを含んだ構成である。物理層フレーム生成部10003a-1は、送信判断部10002c-1から通知される送信判断情報に基づき、物理層フレーム(PPDU)を生成する機能を有する。物理層フレーム生成部10003a-1は、上位層から送られる送信フレームに対して誤り訂正符号化、変調、プレコーディングフィルタ乗算等を施す。物理層フレーム生成部10003a-1は、生成した物理層フレームを無線送信部10003b-1に通知する。
【0076】
図8は本実施形態に係る物理フレーム生成部の誤り訂正符号化の一例を示す図である。
図8に示すように、斜線の領域には、情報ビット(システマティックビット)系列、白抜きの領域には冗長(パリティ)ビット系列が配置される。情報ビットおよび冗長ビットはそれぞれ適切にビットインターリーバが適用されている。物理フレーム生成部は配置されたビット系列に対し、リダンダンシーバージョン(RV)の値に応じて決定される開始位置として、必要なビット数を読み出すことができる。ビット数を調整することで符号化率の柔軟な変更、すなわちパンクチャリングが可能となる。なお、
図8においては、RVは全部で4通りが示されているが、本実施形態に係る誤り訂正符号化において、RVの選択肢は、特定の値に限定されるものではない。RVの位置については、ステーション装置間で共有されている必要がある。
【0077】
物理層フレーム生成部は、MACレイヤから転送されてきた情報ビットに対して、誤り訂正符号化を施すが、誤り訂正符号化を施す単位(符号化ブロック長)は何かに限定されるものではない。例えば、物理層フレーム生成部は、MACレイヤから転送されてきた情報ビット系列を所定の長さの情報ビット系列に分割し、それぞれに誤り訂正符号化を施し、複数の符号化ブロックとすることができる。なお、符号化ブロックを構成する際に、MACレイヤから転送されてきた情報ビット系列にダミービットを挿入することもできる。
【0078】
物理層フレーム生成部10003a-1が生成するフレームには、制御情報が含まれる。該制御情報には、各無線通信装置宛てのデータが、どのRU(ここでRUには周波数リソースと空間リソースの両方を含む)に配置されているかを示す情報が含まれる。また、物理層フレーム生成部10003a-1が生成するフレームには、宛先端末である無線通信装置にフレーム送信を指示するトリガーフレームが含まれる。該トリガーフレームには、フレーム送信を指示された無線通信装置がフレームを送信する際に用いるRUを示す情報が含まれている。
【0079】
無線送信部10003b-1は、物理層フレーム生成部10003a-1が生成する物理層フレームを、無線周波数(RF:Radio Frequency)帯の信号に変換し、無線周波数信号を生成する。無線送信部10003b-1が行う処理には、デジタル・アナログ変換、フィルタリング、ベースバンド帯からRF帯への周波数変換等が含まれる。
【0080】
受信部10004-1は、無線受信部(無線受信ステップ)10004a-1と、信号復調部(信号復調ステップ)10004b-1を含んだ構成である。受信部10004-1は、アンテナ部10005-1が受信するRF帯の信号から受信信号電力に関する情報を生成する。受信部10004-1は、受信信号電力に関する情報と、受信信号に関する情報をCCA部10002a-1に通知することができる。
【0081】
無線受信部10004a-1は、アンテナ部10005-1が受信するRF帯の信号をベースバンド信号に変換し、物理層信号(例えば、物理層フレーム)を生成する機能を有する。無線受信部10004a-1が行う処理には、RF帯からベースバンド帯への周波数変換処理、フィルタリング、アナログ・デジタル変換が含まれる。
【0082】
信号復調部10004b-1は、無線受信部10004a-1が生成する物理層信号を復調する機能を有する。信号復調部10004b-1が行う処理には、チャネル等化、デマッピング、誤り訂正復号化等が含まれる。信号復調部10004b-1は、物理層信号から、例えば、物理層ヘッダが含む情報と、MACヘッダが含む情報と、送信フレームが含む情報とを取り出すことができる。信号復調部10004b-1は、取り出した情報を上位層部10001-1に通知することができる。なお、信号復調部10004b-1は、物理層ヘッダが含む情報と、MACヘッダが含む情報と、送信フレームが含む情報のいずれか、あるいは全てを取り出すことができる。
【0083】
アンテナ部10005-1は、無線送信部10003b-1が生成する無線周波数信号を、無線装置0-1に向けて、無線空間に送信する機能を有する。また、アンテナ部10005-1は、無線装置0-1から送信される無線周波数信号を受信する機能を有する。
【0084】
無線通信装置10000-1は、送信するフレームのPHYヘッダやMACヘッダに、自装置が無線媒体を利用する期間を示す情報を記載することにより、自装置周辺の無線通信装置に当該期間だけNAVを設定させることができる。例えば、無線通信装置10000-1は送信するフレームのDuration/IDフィールドまたはLengthフィールドに当該期間を示す情報を記載することができる。自装置周辺の無線通信装置に設定されたNAV期間を、無線通信装置10000-1が獲得したTXOP期間(もしくは単にTXOP)と呼ぶこととする。そして、該TXOPを獲得した無線通信装置10000-1を、TXOP獲得者(TXOP holder、TXOPホルダー)と呼ぶ。無線通信装置10000-1がTXOPを獲得するために送信するフレームのフレームタイプは何かに限定されるものではなく、コントロールフレーム(例えばRTSフレームやCTS-to-selfフレーム)でも良いし、データフレームでも良い。
【0085】
TXOPホルダーである無線通信装置10000-1は、該TXOPの間で、自装置以外の無線通信装置に対して、フレームを送信することができる。無線通信装置1-1がTXOPホルダーであった場合、該TXOPの期間内で、無線通信装置1-1は無線通信装置2Aに対してフレームを送信することができる。また、無線通信装置1-1は、該TXOP期間内で、無線通信装置2Aに対して、無線通信装置1-1宛てのフレーム送信を指示することができる。無線通信装置1-1は、該TXOP期間内で、無線通信装置2Aに対して、無線通信装置1-1宛てのフレーム送信を指示する情報を含むトリガーフレームを送信することができる。
【0086】
無線通信装置1-1は、フレーム送信を行なう可能性のある全通信帯域(例えばOperationbandwidth)に対してTXOPを確保してもよいし、実際にフレームを送信する通信帯域(例えばTransmissionbandwidth)等の特定の通信帯域(Band)に対して確保してもよい。
【0087】
無線通信装置1-1が獲得したTXOPの期間内でフレーム送信の指示を行なう無線通信装置は、必ずしも自装置に接続されている無線通信装置には限定されない。例えば、無線通信装置は、自装置の周辺にいる無線通信装置にReassociationフレームなどのマネジメントフレームや、RTS/CTSフレーム等のコントロールフレームを送信させるために、自装置に接続されていない無線通信装置に、フレームの送信を指示することができる。
【0088】
さらに、DCFとは異なるデータ伝送方法であるEDCAにおけるTXOPについても説明する。IEEE802.11e規格はEDCAに関わるもので、映像伝送やVoIPなどの各種サービスのためのQoS(Quality of Service)保証の観点からTXOPについて規定されている。サービスは大きくは、VO(VOice)、VI(VIdeo)、BE(Best
Effort)、BK(BacK ground)の4つのアクセスカテゴリに分類されている。一般的には、優先度の高い方からVO、VI、BE、BKの順番である。それぞれのアクセスカテゴリでは、CWの最小値CWmin、最大値CWmax、IFSの一種であるAIFS(Arbitration IFS)、送信機会の上限値であるTXOP limitのパラメータがあり、優先度の高低差をつけるように値が設定される。例えば、音声伝送を目的とした優先度の一番高いVOのCWmin,CWmax、AIFSは、他のアクセスカテゴリに比較して相対的に小さい値を設定することで、他のアクセスカテゴリに優先したデータ伝送が可能となる。例えば、映像伝送のため送信データ量が比較的大きくなるVIでは、TXOP limitを大きく設定することで、他のアクセスカテゴリよりも送信機会を長くとることが可能となる。このように、各種サービスに応じたQoS保証を目的として、各アクセスカテゴリの4つのパラメータの値が調整される。
【0089】
本実施形態において、ステーション装置の信号復調部は、受信した信号に対して、物理レイヤにおいて、復号処理を行い、誤り検出を行うことができる。ここで復号処理は、受信した信号に適用されている誤り訂正符号に対する復号処理を含む。ここで、誤り検出は、受信した信号に予め付与されている誤り検出符号(例えば巡回冗長検査(CRC)符号)を用いた誤り検出や、もともと誤り検出機能を備える誤り訂正符号(例えば低密度パリティ検査符号(LDPC))による誤り検出を含む。物理レイヤにおける復号処理は、符号化ブロック毎に適用されることが可能である。
【0090】
上位層部は、信号復調部における物理レイヤの復号の結果をMACレイヤに転送する。MACレイヤでは、転送されてきた物理レイヤの復号結果から、MACレイヤの信号を復元する。そして、MACレイヤにおいて、誤り検出を行い、受信フレームの送信元のステーション装置が送信したMACレイヤの信号が正しく復元できたか否かを判断する。
【0091】
前述したように、一つの無線通信システムで使用可能な帯域幅はIEEE802.11axまでは160MHzであったが、IEEE802.11beでは320MHzに拡大される。320MHz帯域幅に対応したアクセスポイント装置は、最大320MHz帯域幅でのフレーム送受信に対応した無線LAN通信システムを構成することができる。ステーション装置は、例えばIEEE802.11ac準拠であれば80MHz、160MHzなどを最大帯域幅とし、IEEE802.11ax準拠であれば、20MHz、80MHz、160MHzなどを最大帯域幅としてフレーム送受信するよう動作する。IEEE802.11be準拠ステーション装置は、20MHz、80MHz、160MHz、240MHz、320MHzなどを最大帯域幅としたフレーム送受信動作をすることが想定される。なお、アクセスポイント装置からステーション装置へのフレーム送信をダウンリンク通信と呼び、ステーション装置からアクセスポイント装置へのフレーム送信をアップリンク通信と呼ぶ。
【0092】
一例として、無線通信システム内に使用する最大帯域幅の異なるステーション装置が混在する場合の、無線チャネルの使われ方について、
図12を用いて説明する。
図12では、無線チャネルがアイドル状態であるかビジー状態であるかの確認シーケンスであるRTS/CTSフレームについては省略しており、全チャネルがアイドル状態でフレーム送信可能であることを前提として説明する。説明の便宜上、CH11~CH14のそれぞれは帯域幅80MHzとするが、実際には後方互換性確保のためにCH11~CH14のそれぞれはさらに4分割された20MHz帯域幅のサブチャネル単位で扱われうる。つまり、16個の20MHz帯域幅のサブチャネルで320MHz帯域幅の無線通信システムが構成され、16個のうちの何れかのサブチャネルがプライマリチャネルに設定される。ここでは例として、CH11が周波数の低い方からCH11-1、CH11-2、CH11-3、CH11-4の4つの20MHz帯域幅のサブチャネルに分割されて管理され、そのうちのCH11-1がプライマリチャネルに設定されていることを前提にして説明する。また、同様に、CH12が周波数の低い方からCH12-1、CH12-2、CH12-3、CH12-4の4つに、CH13が周波数の低い方からCH13-1、CH13-2、CH13-3、CH13-4の4つに、CH14が周波数の低い方からCH14-1、CH14-2、CH14-3、CH14-4の4つに、分割され20MHz帯域幅のサブチャネルとして管理されているとする。ステーション装置2-1と2-2は最大160MHz帯域幅のフレーム送受信が可能であるとし、つまり、CH11とCH12を使用するものとする。ステーション装置2-3は最大320MHz帯域幅のフレーム送受信が可能であり、つまり、CH11~CH14の全てを使用するものとする。
【0093】
アクセスポイント装置1-1が送信するフレーム12-11~12-14は320MHz帯域幅全体を利用してOFDMA(Orthogonal frequency division multiple Access)ダウンリンクデータフレーム送信した場合の例であり、ステーション装置2-1宛のフレーム12-11、ステーション装置2-2宛のフレーム12-12、ステーション装置2-3宛のフレーム12-13、12-14から構成される。ステーション装置2-1はフレーム12-11を受信して、応答フレーム12-21をアクセスポイント装置1-1に送信する。ステーション装置2-2はフレーム12-12を受信して、応答フレーム12-22をアクセスポイント装置1-1に送信する。ステーション装置2-3はフレーム12-13、12-14を受信して、応答フレーム12-23、12-24をアクセスポイント装置1-1に送信する。
【0094】
アクセスポイント装置1-1が送信するフレーム12-31~12-32は160MHz帯域幅を使用してOFDMAダウンリンクデータフレーム送信した場合の例である。アクセスポイント装置1-1が送信するフレームは、そのタイミングにおいてステーション装置2-3宛のデータがなかったという前提で、ステーション装置2-1宛のフレーム12-31、ステーション装置2-2宛のフレーム12-32のみから構成され。ステーション装置2-1はフレーム12-31を受信して、応答フレーム12-41をアクセスポイント装置1-1に送信する。ステーション装置2-2はフレーム12-32を受信して、応答フレーム12-42をアクセスポイント装置1-1に送信する。最大320MHz帯域幅に対応しているステーション装置2-3宛のフレームはない。したがって、320MHz帯域幅の中で、CH11とCH12の160MHz帯域幅しか利用されておらず、残りのCH13とCH14に相当する160MHz帯域幅は未使用となり有効利用できていない。仮に、これらのフレーム(フレーム12-31~12-32、フレーム12-41~フレーム12-42)の送受信シーケンスの途中の時間t1で、ステーション装置2-3がアクセスポイント装置1-1に対して、CH13、CH14のそれぞれでアップリンクデータフレーム12-33、12-34を送信しようとしても、プライマリチャネルであるサブチャネルCH11-1がビジー状態であるためにフレーム送信権を獲得することができない。つまりは、フレーム12-33、12-34を送信することができない。このような結果になるのは、ダウンリンク通信とアップリンク通信とで、同一の20MHz帯域幅のチャネル(本例ではCH11-1)がプライマリチャネルに設定されているためである。
【0095】
そこで、本実施形態に係る無線通信システムにおいては、ダウンリンク通信とアップリンク通信のそれぞれに異なるサブチャネルをプライマリチャネルに設定することができるようにする。これ以降、両者を区別するために、従来のプライマリチャネルはLegacy Primary Channel情報(LPC情報)で指定され、本実施形態において、アップリンク通信に使用するに新しく設定するプライマリチャネルはSecond Primary Channel情報(SPC情報)で指定されることとする。これにより、ある無線通信システムにおいて、ダウンリンク通信とアップリンク通信が共通のプライマリチャネル使用時に、空いている無線チャネル(前述の例ではCH13とCH14)があるにも関わらず使用できない状況、つまりフレーム送信できない状況に陥っていた課題を解決することができる。
【0096】
Second Primary Channel情報の使用方法について、
図12を用いて説明する。プライマリチャネルについての考え方は従来通りであり、該当する無線チャネルがビジー状態である限りは全帯域においてフレーム送信することはできない。しかし、ダウンリンク通信とアップリンク通信とで異なるプライマリチャネルを設定できるようにすることで次のような効果がある。ステーション装置がアップリンクデータフレームを送信しようとしたときに、例えダウンリンク通信用のLegacy Primary Channel情報で指定されるプライマリチャネルがビジー状態であったとしても、アップリンク通信用のSecond Primary channel情報で指定されるプライマリチャネルがアイドル状態であれば、そのプライマリチャネルを含むアイドル状態である無線チャネルでの送信権を獲得して、フレーム送信することが可能となる。
【0097】
具体的な例で説明する。ダウンリンクデータフレーム送信においては、前述したようにCH11に含まれる20MHz帯域幅サブチャネルのCH11-1がLegacy Primary Channel情報でプライマリチャネルに設定されているとする。一方、アップリンクデータフレーム送信においては、CH14が周波数の低い方から順番に20MHz帯域幅サブチャネルのCH14-1、CH14-2、CH14-3、CH14-4に分割されているとして、最も周波数の高いサブチャネルCH14-4がSecond Primary channel情報でプライマリチャネルに設定されているとする。時間t1において、ステーション装置2-3がCH13、CH14のそれぞれでアップリンクデータフレーム12-33と12-34を送信しようとする場合について述べる。まず、Second Primary channel情報で設定されているサブチャネルCH14-4をプライマリチャネルとしてCH13とCH14をキャリアセンスする。CH13とCH14双方ともアイドル状態と判断できると、フレーム12-33と12-34を送信することができる。従来からのプライマリチャネルの考え方には従うため、仮に、CH14はアイドル状態で、CH13がビジー状態と測定されたとしたら、フレーム12-33は送信できないが、フレーム12-34を送信することはできる。もちろん、Second Primary channel情報で設定されているサブチャネルCH14-4がビジー状態と判断される場合には、フレーム12-33、12-34双方とも送信することはできない。
【0098】
基本的にはアクセスポイント装置はフレームの同時送受信(STR:Simultaneously Transmitand Receive)が可能であるから、ステーション装置2-3は、ダウンリンクデータフレーム12-31と12-32の送信時間を考慮せずに、アップリンクデータフレームの送信開始時間t1を任意に決定してもよい。一方で、ステーション装置2-3は、アクセスポイント装置1-1が送信するダウンリンクデータフレーム12-31、12-32のプリアンブルに格納されているTXOPに関わる情報を参照してCH11とCH12のNAVを更新しているから、
図12に示すように応答フレーム12-41と12-42の受信終了時刻がt2となることを知っている。時刻t2までに、応答フレーム12-43、12-44の受信が完了するように、アップリンクデータフレーム12-33、12-34の送信開始時間t1を決定してもよい。また、応答フレーム12-41~12-44でアップリンクOFDMA送信となるように、アップリンクデータフレーム12-33、12-34の送信開始時間t1を決定してもよい。
【0099】
上述した例では、320MHz全帯域において一番周波数の低いサブチャネルCH11-1をダウンリンク用のプライマリチャネル(Legacy Primary Channel情報で設定される)として使用、一番周波数の高いサブチャネルCH14-4をアップリンク用のプライマリチャネル(Second Primary Channel情報で設定される)として使用した。しかし、この組み合わせに限られるものではなく、自由にサブチャネルの組み合わせを設定することが可能である。目的は、無線通信システムにおける通信帯域を構成する各サブチャネル(本実施例では、CH11~CH14、CH11-1~CH11-4、CH12-1~CH12-4、CH13-1~CH13-4、CH14-1~CH14-4)の使用頻度の偏りを解消することである。一般的には、プライマリチャネルの周辺のサブチャネルの使用頻度が高くなる傾向がある。アップリンク通信のために別のプライマリチャネル(Second Primary Channel情報で設定される)を設けて、従来から使用されているプライマリチャネル(Legacy Primary Channel情報で設定される)から周波数軸上で遠くなるように設定すれば、使用されるサブチャネルの偏りを緩和し、各サブチャネルの使用頻度の平滑化に寄与することが考えられる。
【0100】
従来の技術では、ダウンリンク通信とアップリンク通信で共通に使用するプライマリチャネルとセカンダリチャネルが報知フレームであるビーコンに含まれるHT(High Throughput) Information Elementなどで通知されており、このInformation Elementが前述したLegacy Primary Channel情報に相当する。Second Primary Channel情報もビーコンで報知することで、アクセスポイント装置に接続している(Associationしている)ステーション装置に通知することができる。SecondPrimary Channel情報に記載するサブチャネル情報は、HT Information Element に記載されたプライマリチャネルからの20MHz(もしくは40MHzや80MHz)帯域幅サブチャネル単位でのオフセット値で指定してもよいし、チャネル番号を直接記載してもよい。前記オフセット値や前記チャネル番号は、HT Information Elementなどの既存のInformationElementのReserveビットを使用して記載してもよいし、新設するInformation Element(前記Second Primary Channel情報専用のInformation Element)に記載することでもよい。
【0101】
本実施形態の説明において、最大帯域幅が160MHzであるステーション装置2-1、2-2と、最大帯域幅が320MHzであるステーション装置2-3の組み合わせで説明したが、帯域幅の組み合わせはこれらに限定されない。例えば、ステーション装置2-1は最大帯域幅が80MHz、ステーション装置2-2は最大帯域幅が240MHz、ステーション装置2-3は最大帯域幅が360MHzというように、各ステーション装置が準拠するIEEE802.11規格に応じて帯域幅の組み合わせは変わる。
【0102】
また、本実施形態で解決する課題は、最大320MHz帯域幅を使用可能な無線通信システムでのみ発生するものではない。IEEE802.11axのように最大帯域幅が160MHzであっても、アクセスポイント装置に接続している各々のステーション装置が送受信可能な最大帯域幅は、160MHzであったり、80MHzであったり、20MHzであったりと、様々な組み合わせがある。したがって、ダウンリンク通信とアップリンク通信とでプライマリチャネルが同一に設定されている場合においては、プライマリチャネルがビジー状態では送信権を確保することができないという制限のために、例えプライマリチャネル以外に未使用の無線チャネルがあったとしても使用できない、という同じ課題が生じる。また、IEEE802.11beの後継規格では、最大帯域幅が320MHzよりも広くなるかもしれないが、同じ課題が生じうる。
【0103】
前段落まで、ステーション装置は、アップリンクデータフレーム送信時にSecond PrimaryChannel情報で通知されたプライマリチャネルでキャリアセンスして送信権確保する手順について説明してきた。しかし、Legacy Primary Channel情報で通知されるプライマリチャネルも従来どおり、アップリンクデータフレーム送信のために使用してもよい。
【0104】
つまり、ステーション装置2-3の12-33と12-34に相当するアップリンクデータフレーム送信に関して、まず、Legacy Primary Channel情報で設定されたサブチャネルCH11-1をプライマリチャネルとしてキャリアセンスして、仮にCH11とCH12がアイドル状態であるなら、フレーム12-33と12-34のそれぞれを、CH11とCH12で送信してもよい。もし、CH11-1がビジー状態であるなら、プライマリチャネルをSecond Primary Channel情報で通知されたサブチャネルCH14-4としてキャリアセンスを実施し、CH13とCH14がアイドル状態であるなら、フレーム12-33と12-34のそれぞれを、CH13とCH14で送信してもよい。このように、Legacy Primary Channel情報で設定されるサブチャネルは、従来どおりダウンリンク通信とアップリンク通信の双方のプライマリチャネルとして使用可能とし、Second Primary Channel情報で通知されるサブチャネルはバックアップ用のプライマリチャネルの扱いで使用してもよい。
[2.第2の実施形態]
【0105】
第2の実施形態における無線通信システム、アクセスポイント装置の構成及びステーション装置の構成は、第1の実施形態と同様である。第1の実施形態では、アップリンクデータフレーム送信のためのプライマリチャネルとして使用できるサブチャネルをアクセスポイント装置が指定して決定し、Second Primary Channel情報として、接続している(Associationしている)ステーション装置に通知していた。第2の実施形態では、アップリンクデータフレーム送信のためのプライマリチャネルをステーション装置が決定し、アクセスポイント装置に要求し、承諾を得た場合に、アップリンクデータフレーム送信のためのプライマリチャネルとして使用することができる。ここで、本実施形態においてステーション装置が決定するプライマリチャネルはThird Primary Channel情報(TPC情報)に含まれることとする。
【0106】
図13を用いて具体的な手順を説明する。前提として、Legacy Primary Channel情報でサブチャネルCH11-1、Second Primary Channel情報でサブチャネルCH14-4が、それぞれプライマリチャネルに設定されているとする。ステーション装置2-3は、過去の測定情報からCH11-1もCH14-4もビジー状態である確率が高いと判断し、アイドル状態である確率の高いCH13-4にプライマリチャネルを変更したほうが良いと判断したとする。その場合、ステーション装置2-3は、アップリンクデータフレーム送信のために、ステーション装置2-3が使用するプライマリチャネルをサブチャネルCH13-4(CH13を4分割したチャネルの一つ)に変更することを、アクセスポイント装置1-1に対して要求するフレーム(本例ではフレーム13-53、13-54)を送信する。フレーム13-53、13-54には、少なくとも変更するプライマリチャネルが記載されたThird Primary Channel情報が含まれている。さらに、前記プライマリチャネルの変更がいつまで有効であるかを示す時間情報などが含まれていてもよい。さらに、フレーム13-53、13-54のそれぞれが、チャネルCH13、CH14におけるRTSフレームの役割を担ってもよい。なお、CH11-1およびCH11、CH12がアイドル状態であるなら、CH11、CH12のそれぞれにフレーム13-53、13-54が送信されてもよい。つまり、Legacy Primary Channel情報もしくはSecond Primary
Channel情報で設定されたサブチャネルをプライマリチャネルとして、プライマリチャネルの変更を要求するフレームを送信するということである。
【0107】
アクセスポイント装置1-1は、ステーション装置2-3が指定するいつまでの変更要求を受け入れるか否かを示すフレーム13-63、13-64を送信する。さらに、前記プライマリチャネルの変更がいつまで有効であるかを示す時間情報などが含まれていてもよい。さらに、フレーム13-63、13-64のそれぞれが、チャネルCH13、CH14におけるCTSフレームの役割を担ってもよい。フレーム13-63、13-64がステーション装置2-3の要求を受け入れることを示す場合、ステーション装置2-3は、要求したサブチャネルCH13-4にプライマリチャネルを設定して、アップリンクデータフレーム13-33、13-34を送信することができる。
【0108】
前段落の説明は、第2の実施形態を第1の実施形態と組み合わせて実施する例であった。第2の実施形態を第1の実施形態と比較すると、プライマリチャネル変更のためにアクセスポイント装置の承諾を得ることによるオーバヘッドが生じるものの、各ステーション装置が自由度高くプライマリチャネルを決定できる利点がある。第2の実施形態が第1の実施形態と組み合わせて実施される場合、第1の実施形態によりビーコンにより通知されるLegacy Primary Channel情報で指定されたサブチャネル、SecondPrimary Channel情報で指定されたサブチャネルの双方がビジー状態であっても、ThirdPrimary Channel情報で要求したサブチャネルをプライマリチャネルとして送信権を確保できる可能性がる。つまり、要求したステーション装置のみが一時的にプライマリチャネルを変更して送信機会の獲得をできるために、チャネル利用効率を向上させることができる。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と組み合わせずに単独で実施されてもよい。
【0109】
第1の実施形態と第2の実施形態に関係するここまでの説明では、無線通信システムが使用できる帯域幅が320MHzとし、周波数の低い側のサブチャネルをLegacy Primary
Channel情報で設定するプライマリチャネルとし、周波数の高い側のサブチャネルをSecond PrimaryChannel情報で設定するプライマリチャネルとする例を用いて説明した。しかし、2つのプライマリチャネルの配置方法は前述の組み合わせに限られるものではなく、前記無線通信システムを構成する帯域幅の中であれば、互いに依存することなく自由に配置することができる。
[3.第3の実施形態]
【0110】
第1の実施形態と第2の実施形態の説明に使用した
図12と
図13では、ダウンリンクデータフレーム送信にはLegacyPrimary Channel情報で指定されるサブチャネルをプライマリチャネルとして使用し、アップリンクデータフレーム送信にはSecond Primary Channel情報もしくはThird PrimaryChannel情報で指定されるサブチャネルをプライマリチャネルとして使用した。しかし、あるステーション装置のアップリンクデータフレーム送信にLegacy Primary Channel情報で指定されるプライマリチャネルを使用し、別のステーション装置のアップリンクデータフレーム送信にはSecond Primary Channel情報もしくはThird PrimaryChannel情報で指定されるプライマリチャネルを使用することとしてもよい。
【0111】
図14では、ステーション装置2-1がアップリンクデータフレーム14-21を、ステーション装置2-2がアップリンクデータフレーム14-22を、Legacy Primary Channel情報で指定されるチャネルをプライマリチャネル(例えば、CH11に含まれるサブチャネルCH11-1)に設定して送信している。フレーム14-21、14-22が送信されている途中に、ステーション装置2-3は、Legacy Primary Channel情報で指定されるサブチャネルCH11-1をプライマリチャネルとしてはアップリンクデータフレーム14-23、14-24を送信することはできない、なぜならCH11-1がビジー状態であるからである。そこで、Second Primary Channel情報で指定されるサブチャネル(CH11とCH12以外のチャネル、例えば、CH14に含まれるCH14-4)をプライマリチャネルとして使用し、アイドル状態であればアップリンクデータフレーム14-23、14-24を送信することが可能となる。
【0112】
図15では、ステーション装置2-3は、アップリンクデータフレーム送信のために、ステーション装置2-3が使用するプライマリチャネルをCH13に含まれるサブチャネルCH13-4に変更することをアクセスポイント装置1-1に対して要求するためのフレーム(本例ではフレーム15-43、15-44)を送信している。フレーム15-43、15-44には、少なくとも変更するプライマリチャネルが記載されたThird Primary Channel情報が含まれている。さらに、前記プライマリチャネルの変更がいつまで有効であるかを示す時間情報などが含まれていてもよい。さらに、フレーム15-43、15-44のそれぞれが、チャネルCH13、CH14におけるRTSフレームの役割を担ってもよい。アクセスポイント装置1-1は、ステーション装置が指定するプライマリチャネルの変更要求を受け入れるか否かを示すフレーム15-53、15-54を送信する。さらに、前記プライマリチャネルの変更がいつまで有効であるかを示す時間情報などが含まれていてもよい。さらに、フレーム15-53、15-54のそれぞれが、チャネルCH13、CH14におけるCTSフレームの役割を担ってもよい。フレーム15-53、15-54がステーション装置2-3の要求を受け入れることを示す場合、ステーション装置2-3は、要求したCH13-4にプライマリチャネルを設定して、アップリンクデータフレーム15-23、15-24を送信することができる。
【0113】
つまり、重なる同じ時間帯に、プライマリチャネルをCH11-1としてアップリンクデータフレーム15-21と15-22が送信され、プライマリチャネルをCH11-1とは異なるサブチャネルCH14-4(もしくはCH13-4など)としてアップリンクデータフレーム15-23と15-24を送信することが可能となる。異なるプライマリチャネルに基づく2つのアップリンクフレーム送信が同時に可能となる。
[4.第4の実施形態]
【0114】
第1~第3の実施形態では、Second Primary Channel情報もしくはThird Primary Channel情報で指定されるサブチャネルをプライマリチャネルとして、アップリンクデータフレームを送信する実施形態について説明した。Second Primary Channel情報もしくはThird PrimaryChannel情報で指定されるサブチャネルは、ダウンリンクデータフレーム送信のためのプライマリチャネルとして使用されてもよい。
[5.全実施形態共通]
【0115】
本発明に係る通信装置は、国や地域からの使用許可を必要としない、いわゆるアンライセンスバンド(unlicensedband)と呼ばれる周波数バンド(周波数スペクトラム)において通信を行うことができるが、使用可能な周波数バンドはこれに限定されない。本発明に係る通信装置は、例えば、国や地域から特定サービスへの使用許可が与えられているにも関わらず、周波数間の混信を防ぐ等の目的により、実際には使われていないホワイトバンドと呼ばれる周波数バンド(例えば、テレビ放送用として割り当てられたものの、地域によっては使われていない周波数バンド)や、複数の事業者で共用することが見込まれる共用スペクトラム(共用周波数バンド)においても、その効果を発揮することが可能である。
【0116】
本発明に係る無線通信装置で動作するプログラムは、本発明に関わる上記実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的にRAMに蓄積され、その後、各種ROMやHDDに格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行なわれる。プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリカード等)、光記録媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD、BD等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等のいずれであってもよい。また、ロードしたプログラムを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本発明の機能が実現される場合もある。
【0117】
また市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されたサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれる。また、上述した実施形態における通信装置の一部、または全部を典型的には集積回路であるLSIとして実現してもよい。通信装置の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部、または全部を集積してチップ化してもよい。各機能ブロックを集積回路化した場合に、それらを制御する集積回路制御部が付加される。
【0118】
また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能である。
【0119】
なお、本願発明は上述の実施形態に限定されるものではない。本願発明の無線通信装置は、移動局装置への適用に限定されるものではなく、屋内外に設置される据え置き型、または非可動型の電子機器、たとえば、AV機器、キッチン機器、掃除・洗濯機器、空調機器、オフィス機器、自動販売機、その他生活機器などに適用出来ることは言うまでもない。
【0120】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、通信装置、および通信方法に用いて好適である。
【符号の説明】
【0122】
1-1、1-2アクセスポイント装置
2-1~2-6 ステーション装置
3-1、3-2 無線通信システム
10001-1 上位層部
10002-1 自律分散制御部
10002a-1 CCA部
10002b-1 バックオフ部
10002c-1 送信判断部
10003-1 送信部
10003a-1 物理層フレーム生成部
10003b-1 無線送信部
10004-1 受信部
10004a-1 無線受信部
10004b-1 信号復調部
10005-1 アンテナ部
11-11~11-14、11-21~11-24、11-31~11-34、11-41~11-44、11-53~11-54、11-61~11-64、11-71~11-72、11-81~11-82 フレーム
12-11~12-14、12-21~12-24、12-31~12-34、12-41~12-44 フレーム
13-11~13-14、13-21~13-24、13-31~13-34、13-41~13-44、13-53~13-54、13-63~13-64 フレーム
14-11~14-12、14-21~14-24、14-31~14-34 フレーム15-11~15-12、15-21~15-24、15-31~15-34、15-43~15-44、15-53~15-54 フレーム