(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182871
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20231220BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K3/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188570
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 茂樹
【テーマコード(参考)】
5E314
5E338
【Fターム(参考)】
5E314AA24
5E314AA34
5E314AA36
5E314BB03
5E314CC15
5E314EE03
5E314FF06
5E314GG01
5E314GG19
5E314GG24
5E338AA01
5E338AA12
5E338AA16
5E338BB63
5E338CD13
5E338EE27
5E338EE32
(57)【要約】
【課題】大型或いは長尺の配線板を製造する場合であっても、高コスト化の抑制を図ることが可能な配線板を提供する。
【解決手段】配線板1は、ベースフィルム10と、ベースフィルム10上に配置された配線パターン20と、配線パターン20を覆うようにベースフィルム10上に並んで配置された第1及び第2のカバーレイ30,40と、を備え、第1のカバーレイ30は、第2のカバーレイ40の一部401が重なっている重複部分301を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に配置された配線と、
前記配線を覆うように前記基材上に並んで配置された第1及び第2のカバーレイと、を備え、
前記第1のカバーレイは、前記第2のカバーレイの一部が重なっている重複部分を有している配線板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線板であって、
前記第1のカバーレイは、
前記基材に積層されていると共に、前記重複部分に第1の端部を有する第1の層と、
前記第1の層に積層されていると共に、前記重複部分に第2の端部を有する第2の層と、を備え、
前記第1の端部の先端は、前記第2の端部の先端よりも前記第1のカバーレイの先端側に位置している配線板。
【請求項3】
請求項2に記載の配線板であって、
下記の(1)式を満たす配線板。
E1<E2 ・・・ (1)
但し、上記の(1)式において、E1は前記第1の層のヤング率であり、E2は前記第2の層のヤング率である。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の配線板であって、
前記第1及び第2の端部の少なくとも一方の厚みは、前記第1のカバーレイの先端側に向かうに従って薄くなる配線板。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載の配線板であって、
前記第2の端部は、前記第1のカバーレイの先端側に向かうに従って、前記基材に近づく配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(FPC)は、ベースフィルム、回路、及び、カバーレイヤーを備えている。ベースフィルム及びカバーレイヤーとしては、ポリイミド等の柔軟性に優れたプラスチックフィルムが用いられている。回路は、ベースフィルム上に貼り付けられた銅箔をエッチングすることで形成されている。カバーレイヤーは、接着剤を介して回路上に接着されている(例えば特許文献1(段落[0002]~[0004]及び
図1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線が形成された基材へのカバーレイの積層は、プレス装置を用いて行なわれる。大型或いは長尺のフレキシブルプリント配線板を製造するために、カバーレイを基材に一括して積層する場合には、当該プレス装置の大型化や歩留まりの低下によって配線板の高コスト化を招来してしまう場合がある、という問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、大型或いは長尺の配線板を製造する場合であっても、高コスト化の抑制を図ることが可能な配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る配線板は、基材と、前記基材上に配置された配線と、前記配線を覆うように前記基材上に並んで配置された第1及び第2のカバーレイと、を備え、前記第1のカバーレイは、前記第2のカバーレイの一部が重なっている重複部分を有している配線板である。
【0007】
[2]上記発明において、前記第1のカバーレイは、前記基材に積層されていると共に、前記重複部分に第1の端部を有する第1の層と、前記第1の層に積層されていると共に、前記重複部分に第2の端部を有する第2の層と、を備え、前記第1の端部の先端は、前記第2の端部の先端よりも前記第1のカバーレイの先端側に位置していてもよい。
【0008】
[3]上記発明において、下記の(1)式を満たしてもよい。
E1<E2 ・・・ (1)
但し、上記の(1)式において、E1は前記第1の層のヤング率であり、E2は前記第2の層のヤング率である。
【0009】
[4]上記発明において、前記第1及び第2の端部の少なくとも一方の厚みは、前記第1のカバーレイの先端側に向かうに従って薄くなってもよい。
【0010】
[5]上記発明において、前記第2の端部は、前記第1のカバーレイの先端側に向かうに従って、前記基材に近づいてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、基材上に配置されるカバーレイを2つに分割することで、大型或いは長尺の配線板を製造する場合であっても、既存の装置を用いてカバーレイを基材に配置することができ、配線板の高コスト化の抑制を図ることができる。
【0012】
また、本発明では、第2のカバーレイの一部を第1のカバーレイに重ねることで、カバーレイを2つに分割した場合でも、カバーレイ同士の間から配線が露出してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態におけるプリント配線板を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態における重複部分の端部の第1変形例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態における重複部分の端部の第2変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本実施形態におけるプリント配線板を示す平面図であり、
図2は
図1のII部の拡大図であり、
図3は
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【0016】
本実施形態のプリント配線板1は、長尺の帯形状を有しているフレキシブルプリント配線板(FPC)である。特に限定されないが、具体的には、このプリント配線板1の長さL0(図中のX方向に沿った長さ)は、500mm~5000mmであり(500mm≦L0≦5000mm)、当該プリント配線板1の幅W0(図中のY方向に沿った幅)は、1mm~250mmである(1mm≦W0≦250mm)。
【0017】
なお、プリント配線板1の平面形状は、上記のような直線状の帯形状に限定されない。例えば、プリント配線板1が、一本の帯形状が分岐部で複数の帯形状に枝分かれする形状を有していてもよい。また、プリント配線板1の幅は、長手方向の全体に亘って一定でなくてもよく、長手方向の一部においてプリント配線板1の幅が広くなっていてもよい。
【0018】
或いは、プリント配線板1が、250mmよりも広い幅W0を有することで(250mm<W0≦1000mm)、大型の矩形状の平面形状を有してもよい。なお、大型のプリント配線板の平面形状は、特に上記に限定されず、任意の形状とすることができる。この際、当該大型のプリント配線板の平面形状に外接する仮想上の矩形が、上記の長さL0と幅W0を有していればよい。
【0019】
こうした長尺或いは大型の平面形状を有するプリント配線板1は、例えば、自動車、産業用機械、医療機器等の用途に用いられる。なお、本実施形態のプリント配線板1の使用用途は、特に限定されない。
【0020】
図1~
図3に示すように、このプリント配線板1は、ベースフィルム10と、配線パターン20と、第1のカバーレイ30と、第2のカバーレイ40と、を備えている。なお、便宜上、
図2において、第2のカバーレイ40を一点鎖線で示している。本実施形態におけるベースフィルム10が本発明における「基材」の一例に相当し、本実施形態における配線パターン20が本発明における「配線」の一例に相当する。
【0021】
ベースフィルム10は、可撓性を有すると共に長尺の帯形状を有するフィルムである。このベースフィルム10は、樹脂材料等の電気絶縁性を有する材料から構成されている。特に限定されないが、このベースフィルム10を構成する材料としては、例えば、ポリイミド(PI)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び、アラミド等を例示することができる。
【0022】
このベースフィルム10上に複数の配線パターン20が形成されている。この配線パターン20は、金属又はカーボン等の導電性材料から構成されている。この配線パターン20を構成する金属としては、例えば、銅、銀、金を例示することができる。本実施形態では、配線パターン20を構成する材料として銅を用いる。特に限定されないが、この配線パターン20は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法等の方法を用いて形成されており、ベースフィルム10に積層された銅箔を所定の形状にエッチングすることで形成されている。
【0023】
本実施形態では、
図1に示すように、それぞれの配線パターン20がベースフィルム10上にX方向に沿って直線状に延在しており、複数の配線パターン20が等間隔で相互に平行に配置されている。なお、配線パターン20の数や形状、配置等は、特にこれに限定されず、任意に設定することができる。また、ベースフィルム10の両面に配線パターンを形成してもよいし、配線パターンにバイアホール等を含めてもよい。
【0024】
また、
図1に示すように、各々の配線パターン20の両端には端子部21がそれぞれ形成されている。この端子部21は、例えば、他のプリント配線板やケーブル等に設けられたコネクタが接続されて、この端子部21を介してプリント配線板1が外部の電子回路と電気的に接続される。なお、端子部21の形成位置は、配線パターン20の端部に限定されず、配線パターン20における任意の位置を選択することができる。また、配線パターン20における端子部21の数も特に限定されないし、必ずしも配線パターン20に端子部21を形成しなくてもよい。
【0025】
図1~
図3に示すように、第1のカバーレイ30と第2のカバーレイ40は、配線パターン20を覆うようにベースフィルム10上に積層されている。第1及び第2のカバーレイ30,40は、同一のベースフィルム10に積層されており、当該ベースフィルム10の同一の主面上に配置されている。本実施形態では、第1及び第2のカバーレイ30,40は、ベースフィルム10上において、ベースフィルム10の延在方向(長手方向。図中のX方向)に沿って並べられている。なお、第1及び第2のカバーレイ30,40は配線パターン20の端子部21を覆っておらず、当該端子部21は第1及び第2のカバーレイ30,40から露出している。
【0026】
本実施形態の第1のカバーレイ30は、外側層31と内側層32からなる二層構造を有している。外側層31は、配線パターン20を保護するための層である。これに対し、内側層32は、プリント配線板1の屈曲時の応力集中を緩和するための層である。本実施形態における外側層31が本発明における「第2の層」の一例に相当し、本実施形態における内側層32が本発明における「第1の層」の一例に相当する。
【0027】
外側層31は、可撓性を有すると共に長尺の帯形状を有するフィルムから構成されている。この外側層31は、樹脂材料等の電気絶縁性を有する材料から構成されている。特に限定されないが、この外側層31を構成する材料としては、例えば、ポリイミド(PI)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び、アラミド等を例示することができる。
【0028】
これに対し、本実施形態の内側層32は、上述のプリント配線板1の屈曲時の応力集中を緩和する機能に加えて、外側層31をベースフィルム10の上面11に接着する機能を有する接着層である。この内側層32を構成する接着剤の具体例としては、例えば、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤を例示することができる。
【0029】
上述のように、外側層31は、配線パターン20を保護するための層であるのに対し、内側層32は、プリント配線板1の屈曲時の応力集中を緩和するための層である。このため、本実施形態では、内側層32は外側層31よりも柔らかくなっている。より具体的には、内側層32のヤング率E1と外側層31のヤング率E2とが以下の(2)式の関係を満たしている。
【0030】
E1<E2 ・・・ (2)
【0031】
上記の(2)式の関係式を満たしている限り、第1のカバーレイ30の外側層31と内側層32を構成する材料は、特に上記に限定されない。
【0032】
例えば、外側層31を、上述の樹脂フィルムに代えて、感光性カバーレイ材料からなるドライフィルムを用いて形成してもよいし、或いは、液状の感光性カバーレイ材料を内側層32上に塗布した後に露光及び現像することで、外側層31を形成してもよい。或いは、液状のカバーレイインクを内側層32上に印刷することで、外側層31を形成してもよい。
【0033】
或いは、外側層31を所謂ソルダレジストで構成してもよい。具体的には、感光性レジスト材料からなるドライフィルムを用いて外側層31を形成してもよい。或いは、液状の感光性レジスト材料を内側層32上に塗布した後に露光及び現像することで、外側層31を形成してもよい。或いは、液状のソルダレジストインクを内側層32上に印刷することで、外側層31を形成してもよい。
【0034】
内側層32も、上述の接着層に代えて、液状の感光性カバーレイ材料をベースフィルム10上に塗布した後に露光及び現像することで形成してもよい。或いは、液状のカバーレイインクをベースフィルム10上に印刷することで、内側層32を形成してもよい。
【0035】
上記の感光性カバーレイ材料や感光性レジスト材料の具体例としては、例えば、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ポリイミド、ポリウレタン等を用いたものを例示することができる。また、上記のカバーレイインクやソルダレジストインクの具体例としては、ポリイミドやエポキシをベースとしたものを例示することができる。
【0036】
第2のカバーレイ40も、配線パターン20を保護する機能を備えている。本実施形態では、第2のカバーレイ40は、樹脂層と、当該樹脂層をベースフィルム10に接着している接着層を備えている。なお、
図3~
図5においては、便宜上、第2のカバーレイ40を一層構造で図示している。
【0037】
第2のカバーレイ40の樹脂層は、上述の第1のカバーレイ30の外側層31と同様に、例えば、ポリイミド(PI)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、又は、アラミド等からなる樹脂フィルムで構成されている。また、接着層も、上述の第1のカバーレイ30の内側層32と同様に、例えば、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤等の接着剤から構成されている。
【0038】
なお、第2のカバーレイ40を、ドライフィルム、液状の感光性カバーレイ材料若しくは感光性レジスト材料、カバーレイインク、又は、ソルダレジストインクを用いて形成してもよい。また、ベースフィルム10を液晶ポリマ(LCP)で構成すると共に、第2のカバーレイ40も液晶ポリマ(LCP)で構成する場合には、熱融着によってこれらを相互に貼り付けることができるので、接着層を省略してもよい。
【0039】
この第2のカバーレイ40の先端部分401(図中の+X方向側の端部)が、第1のカバーレイ30の上に重なっている。すなわち、第1のカバーレイ30は、第2のカバーレイ40の先端部分401が重なっている重複部分301を有している。
【0040】
本実施形態のプリント配線板1は、
図1に示すように、1枚の第1のカバーレイ30を有しているに対し、2枚の第2のカバーレイ40を有している。そして、これらの第1及び第2のカバーレイ30,40は、第2のカバーレイ40の間に第1のカバーレイ30を挟むように、ベースフィルム10の延在方向(図中のX方向)に沿って並べられている。従って、第1のカバーレイ30の両端が第2のカバーレイ40によってそれぞれ覆われているので、当該第1のカバーレイ30はその両端に重複部分301をそれぞれ有している。
【0041】
なお、プリント配線板1が有する重複部分301の数は特に限定されない。プリント配線板が2枚のカバーレイを備えることで重複部分1つのみ有していてもよい。或いは、4枚以上のカバーレイを備えることで3つ以上の重複部分を有していてもよい。また、プリント配線板が複数の重複部分を有する場合には、重複部分同士の間隔を任意に設定することができる。また、プリント配線板複数が有する複数のカバーレイの長さが実質的に同一であってもよいし、相互に異なっていてもよい。
【0042】
図2及び
図3に示すように、二層構造を有する第1のカバーレイ30の外側層31は、当該第1のカバーレイ30の一方(図中の-X方向側)の重複部分301に、端部311を有している。同様に、内側層32も、第1のカバーレイ30の一方(図中の-X方向側)の重複部分301に端部321を有している。
【0043】
そして、本実施形態では、
図2(平面視)及び
図3(断面視)に示すように、内側層32の端部321の先端(末端)322が、外側層31の端部311の先端(末端)312よりも、第1のカバーレイ30の先端(末端)302側(
図3中の-X方向側)に位置しており、内側層32の先端322が第1のカバーレイ30の先端302を構成している。すなわち、外側層31の先端312が、内側層32の先端322よりも重複部分301の内側(
図3中の+X方向側)に位置しており、この重複部分301において、内側層32の端部321が外側層31の端部311から露出している。
【0044】
特に図示しないが、第1のカバーレイ30の他方(図中の+X方向側)の重複部分301についても同様に、外側層31が重複部分301に端部を有していると共に、内側層32も重複部分301に端部を有しており、内側層32の端部の先端が外側層31の端部の先端よりも、第1のカバーレイ30の先端302側(
図3中の+X方向側)に位置している。
【0045】
ここで、フレキシブルプリント配線板のカバーレイを複数に分割して当該カバーレイ同士の間に重複部分を設けた場合、当該フレキシブルプリント配線板の屈曲時に、その重複部分の厚みの変化点で配線パターンに対する応力集中が発生する。この変化点に集中する応力は、配線パターンからカバーレイの表面までの厚みが厚いほど、大きくなる傾向がある。
【0046】
これに対し、本実施形態では、内側層32の先端322を外側層31の先端312よりも第1のカバーレイ30の先端302側に位置させて、第1のカバーレイ30の端部の形状を階段状とすることで、フレキシブルプリント配線板1の屈曲時に応力を分散させている。
【0047】
第1のカバーレイ30の長手方向(図中のX方向)に沿った重複部分301の長さL2は、特に限定されないが、0.5mm~10mmであることが好ましく(0.5mm≦L2≦10mm)、0.5mm~2.0mmであることがより好ましい(0.5mm≦L2≦2.0mm)。重複部分301の長さL2が0.5mm以上であることで、第1及び第2のカバーレイ30,40の位置決めが比較的容易となる。一方、重複部分301の長さL2が10mm以下として、重複部分301をできる限り短くすることで、フレキシブルプリント配線板1の屈曲性への影響を抑制することができる。
【0048】
また、第1のカバーレイ30の全長L1に対する重複部分301の長さL2の比率(L2/L1)が、1/20以下であることが好ましく(L2/L1≦1/20)、1/100以下であることがより好ましい(L2/L1≦1/100)。この比率(L2/L1)を1/20以下として、重複部分301をできる限り短くすることで、フレキシブルプリント配線板1の屈曲性への影響を抑制することができる。
【0049】
第1のカバーレイ30を、接着剤が塗布された樹脂フィルムから形成する場合には、プレス装置を用いた熱プレス時のプレス圧力やプレス温度を最適化することで、外側層31からの内側層32のはみ出し量を調整することができるので、上述の
図3に示す第1のカバーレイ30の端部の階段形状を形成することができる。なお、第1のカバーレイ30の端部の階段形状を形成するために、プレス装置で使用されるクッション材の厚みや材質等を最適化してもよい。
【0050】
これに対し、印刷や塗布により内側層32を形成する場合には、外側層31の先端312が内側層31の先端よりも重複部301の内側に位置するように、外側層31を形成すればよい。
【0051】
なお、第1のカバーレイ30の重複部分301の形状は、上記のような階段形状に特に限定されない。
図4は本実施形態における重複部分の端部の第1変形例を示す断面図であり、
図5は本実施形態における重複部分の端部の第2変形例を示す断面図である。
【0052】
例えば、
図4に示すように、第1のカバーレイ30の内側層32の端部321の厚みが、当該第1のカバーレイ30の先端302側に向かうに従って薄くなってもよい。これにより、
図3に示す場合と比較して、内側層32の先端322での配線パターン20から第2のカバーレイ40の表面までの厚みD
3を小さくすることができ(D
1>D
3)、フレキシブルプリント配線板1の屈曲時の配線パターン20への応力集中を一層緩和することができる。なお、D
1は、
図3に示す例において、内側層32の先端322での配線パターン20から第2のカバーレイ40の表面までの厚みである。
【0053】
同様に、第1のカバーレイ30の外側層31の端部311の厚みが、当該第1のカバーレイ30の先端302側に向かうに従って薄くなってもよい。これにより、
図3に示す場合と比較して、外側層31の先端312での配線パターン20から第2のカバーレイ40の表面までの厚みD
4を小さくすることができ(D
2>D
4)、フレキシブルプリント配線板1の屈曲時の配線パターン20への応力集中を一層緩和することができる。なお、D
2は、
図3に示す例において、外側層31の先端312での配線パターン20から第2のカバーレイ40の表面までの厚みである。
【0054】
外側層31を樹脂フィルムで形成する場合には、当該樹脂フィルムの端部をエッチングや研磨することで、外側層31の端部311の厚みを徐々に薄くすることができる。一方、外側層31を印刷や塗布により形成する場合には、印刷条件(例えば、印刷版のメッシュの設計、スキージ圧、印刷速度等)や塗布条件(例えば、塗布量、基材の相対的な送り速度等)を最適化することで、外側層31の端部311の厚みを徐々に薄くすることができる。内側層32についても同様に、印刷条件や塗布条件を最適化することで、内側層32の端部321の厚みを徐々に薄くすることができる。
【0055】
なお、内側層32の端部321と外側層31の端部311のいずれか一方が、第1のカバーレイ30の先端302側に向かうに従って薄くなっていればよい。
【0056】
また、
図5に示すように、第1のカバーレイ30の内側層32の端部321の厚みが、当該第1のカバーレイ30の先端302側に向かうに従って薄くなっていると共に、この薄くなっている内側層32の端部321の上に外側層31の端部311がせり出していてもよい。これにより、第1のカバーレイ30の先端30側に向かうに従って、外側層31の端部311全体がベースフィルム10に近づいている。従って、
図3に示す場合と比較して、外側層31の先端312での配線パターン20から第2のカバーレイ40の表面までの厚みD
5を小さくすることができ(D
2>D
5)、フレキシブルプリント配線板1の屈曲時の配線パターン20への応力集中を一層緩和することができる。
【0057】
以上のように、本実施形態では、ベースフィルム10上に配置されるカバーレイを2つに分割することで、大型或いは長尺のプリント配線板1を製造する場合であっても既存の装置を用いてカバーレイ30,40をベースフィルム10に積層することができ、配線板1の高コスト化の抑制を図ることができる。
【0058】
また、本実施形態では、第2のカバーレイ40の一部を第1のカバーレイ30に重ねることで、カバーレイを2つに分割した場合でも、カバーレイ30,40同士の間から配線パターン20が露出してしまうことを防止することができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、内側層32の先端322を外側層31の先端312よりも第1のカバーレイ30の先端302側に位置させることで、フレキシブルプリント配線板1の屈曲時に応力を分散させている。これにより、フレキシブルプリント配線板1の屈曲時に生じる応力集中を緩和することができ、配線パターン20の断線の発生を抑制することができる。
【0060】
また、内側層32の先端322を外側層31の先端312よりも第1のカバーレイ30の先端302側に位置させることで、硬い外側層31が配線パターン20に直接接触してしまうのを防止することもできる。
【0061】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0062】
例えば、上述の実施形態では、内側層32の先端322が外側層31の先端312よりも第1のカバーレイ30の先端302側に位置しているが、第1のカバーレイ30の端部の形状は特にこれに限定されない。プリント配線板1の長手方向(図中のX方向)に沿って、内側層32の先端322が、外側層31の先端312と一致していてもよい。
【0063】
また、上述の実施形態では、第1のカバーレイ30が2層構造を有しているが、第1のカバーレイ30を3以上の層で構成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…プリント配線板
10…ベースフィルム
11…上面
20…配線パターン
21…端子部
30…第1のカバーレイ
301…重複部分
302…先端
31…外側層
311…端部
312…先端
32…内側層
321…端部
322…先端
40…第2のカバーレイ
401…先端部分