(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182875
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】照明装置および測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/484 20060101AFI20231220BHJP
H01S 5/042 20060101ALI20231220BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20231220BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G01S7/484
H01S5/042 630
H01S5/022
H01S5/183
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189789
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】木村 基
(72)【発明者】
【氏名】小林 高志
(72)【発明者】
【氏名】大岩 達矢
(72)【発明者】
【氏名】徐 嘉倫
【テーマコード(参考)】
5F173
5J084
【Fターム(参考)】
5F173AC03
5F173AC13
5F173AC42
5F173AC52
5F173AD04
5F173AH02
5F173AK21
5F173MA10
5F173MC15
5F173MF13
5F173MF39
5F173SA33
5F173SC10
5F173SE10
5F173SJ12
5J084AA05
5J084AD01
5J084AD05
5J084BA04
5J084BA05
5J084BA14
5J084BA34
5J084BA40
5J084BB04
5J084CA07
5J084EA07
(57)【要約】
【課題】複数の発光部群を備える発光素子において、発光部群毎の駆動に適した照明装置および測距装置を提供すること。
【解決手段】本技術に係る照明装置は、発光素子と駆動回路とを具備する。上記発光素子は、複数の第1の発光部および複数の第2の発光部と、上記複数の第1の発光部および上記複数の第2の発光部と接続された下部電極と、上記複数の第1の発光部と接続された第1の上部電極と、上記複数の第2の発光部と接続された第2の上部電極とを備える。上記駆動回路は、上記下部電極と上記第1の上部電極の間を流れる第1の電流と、上記下部電極と上記第2の上部電極の間を流れる第2の電流をそれぞれ規定する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の発光部および複数の第2の発光部と、前記複数の第1の発光部および前記複数の第2の発光部と接続された下部電極と、前記複数の第1の発光部と接続された第1の上部電極と、前記複数の第2の発光部と接続された第2の上部電極とを備える発光素子と、
前記下部電極と前記第1の上部電極の間を流れる第1の電流と、前記下部電極と前記第2の上部電極の間を流れる第2の電流をそれぞれ規定する駆動回路と
を具備する照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置であって、
前記駆動回路は、前記第1の上部電極に電気的に接続され、前記複数の第1の発光部を駆動する第1の駆動部と、前記第2の上部電極に電気的に接続され、前記複数の第2の発光部を駆動する第2の駆動部とを含む
照明装置。
【請求項3】
請求項1に記載の照明装置であって、
前記駆動回路は、前記第下部電極に接続され、前記複数の第1の発光部および前記複数の第2の発光部を駆動する駆動部を含む
照明装置。
【請求項4】
請求項1に記載の照明装置であって、
前記発光素子は、前記複数の第1の発光部が前記第1の上部電極と接触する第1の配線によって接続された第1の発光部列を複数含む第1の発光部群と、前記複数の第2の発光部が前記第2の上部電極と接触する第2の配線によって接続された第2の発光部列を複数含む第2の発光部群とを有し、
前記第1の発光部列を流れる電流の向きは、前記複数の第1の発光部列の間で異なり
前記第2の発光部列を流れる電流の向きは、前記複数の第2の発光部列の間で異なる
照明装置。
【請求項5】
請求項4に記載の照明装置であって、
前記第1の発光部列と前記第2の発光部列は平行であり、前記第1の発光部列と前記第2の発光部列が交互となるように配列され、
前記第1の発光部群は、第1の方向に電流が流れる第1の発光部列と、前記第2の発光部列を介して前記第1の発光部列に隣接し、前記第1の方向とは反対方向である第2の方向に電流が流れる第1の発光部列を含み、
前記第2の発光部群は、前記第1の方向に電流が流れる第2の発光部列と、前記第1の発光部列を介して前記第2の発光部列に隣接し、前記第2の方向に電流が流れる第2の発光部列を含む
照明装置。
【請求項6】
請求項1に記載の照明装置であって、
前記複数の第1の発光部および前記複数の第2の発光部は垂直共振器型面発光レーザ素子である
照明装置。
【請求項7】
請求項1に記載の照明装置であって、
前記複数の第1の発光部から出射された複数の第1の光および前記複数の第2の発光部から出射された複数の第2の光をそれぞれ略平行にして出射する第1の光学部材と、
前記複数の第1の光および前記複数の第2の光のうちの少なくとも一方のビーム形状を成形し、互いに異なるビーム形状を有する光として、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光を出射する第2の光学部材と
をさらに具備する照明装置。
【請求項8】
請求項7に記載の照明装置であって、
前記複数の第1の発光部から出射された前記複数の第1の光は、照射対象物に対して互いに独立したスポット状に照射され、
前記複数の第2の発光部から出射された前記複数の第2の光は、前記照射対象物に対して、一部が隣り合う第2の発光部から出射された第2の光と重畳し、所定の範囲を略一様に照射する
照明装置。
【請求項9】
請求項7に記載の照明装置であって、
前記複数の第1の発光部と前記複数の第2の発光部とは、互いに異なる発光面積を有する
照明装置。
【請求項10】
請求項7に記載の照明装置であって、
前記複数の第1の発光部の発光面積は、前記複数の第2の発光部の発光面積よりも小さい
照明装置。
【請求項11】
請求項7に記載の照明装置であって、
前記第1の光学部材は、コリメータレンズである
照明装置。
【請求項12】
請求項7に記載の照明装置であって、
前記第2の光学部材は、マイクロレンズアレイである
照明装置。
【請求項13】
請求項12に記載の照明装置であって、
前記マイクロレンズアレイは、互いに曲率半径が異なる2種類のレンズを有する
照明装置。
【請求項14】
請求項7に記載の照明装置であって、
前記第2の光学部材は、回折光学素子である
照明装置。
【請求項15】
請求項14に記載の照明装置であって、
前記回折光学素子は、フレネルレンズまたはバイナリレンズである
照明装置。
【請求項16】
請求項8に記載の照明装置であって、
前記複数の第1の光および前記複数の第2の光の光路上に配置され、前記複数の第1の光を屈折または回折することで前記照射対象物に照射されるスポットの数を増やすと共に、前記複数の第2の光を屈折または回折することで、隣り合う前記第2の発光部から出射された前記第2の光との重畳範囲を増やす第3の光学部材をさらに有する
照明装置。
【請求項17】
複数の第1の発光部および複数の第2の発光部と、前記複数の第1の発光部および前記複数の第2の発光部と接続された下部電極と、前記複数の第1の発光部と接続された第1の上部電極と、前記複数の第2の発光部と接続された第2の上部電極とを備える発光素子と、
前記下部電極と前記第1の上部電極の間を流れる第1の電流と、前記下部電極と前記第2の上部電極の間を流れる第2の電流をそれぞれ規定する駆動回路と
前記複数の第1の発光部から出射された複数の第1の光および前記複数の第2の発光部から出射された複数の第2の光をそれぞれ略平行にして出射する第1の光学部材と、
前記複数の第2の発光部から出射された前記複数の第2の光のビーム形状を成形して出射する第2の光学部材と
を具備する照明装置。
【請求項18】
物体に対して光を出射する照明装置と、前記物体からの反射光の受光を検出する受光部と、前記反射光の受光までに要する時間に基づいて、前記物体までの距離を測定する測距部とを具備し、
前記照明装置は、発光素子と駆動回路とを備え、
前記発光素子は、複数の第1の発光部および複数の第2の発光部と、前記複数の第1の発光部および前記複数の第2の発光部と接続された下部電極と、前記複数の第1の発光部と接続された第1の上部電極と、前記複数の第2の発光部と接続された第2の上部電極とを備え、
前記駆動回路は、前記下部電極と前記第1の上部電極の間を流れる第1の電流と、前記下部電極と前記第2の上部電極の間を流れる第2の電流をそれぞれ規定する
測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光素子として、例えば面発光半導体レーザを用いた照明装置およびこれを備えた測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測距方法の1つに光の空間伝搬時間計測(Time of Flight;ToF)方式がある。ToF方式は、レーザ等の発光部から対象物に照射した光が反射して戻ってくるまでの時間を計測することにより距離を測定する。Direct-ToF方式では、例えばパルス幅1nsec等の短いパルス光を照射し、戻ってくるまでの時間を計測する。一方、Indirect-ToF方式では、連続した矩形波や正弦波で変調された光を照射し、戻ってきた光の位相変化を計測する。ここでは,例えば20MHzや100MHzといった周波数の光が用いられる。いずれも、変調速度が高いほど測距精度を高められる事から、こういった高い周波数で発光部を駆動するための駆動回路を備えることが必要である。
【0003】
ToF方式において近距離を広く計測する方法としては、複数の発光部から出射された光を拡散板で拡散させ、測定対象範囲全面に一様に照射(一様照射)し、それを2次元状に分割された受光部を持つ光検出器で検出する方法がある。測距距離を延ばす方法としては、複数の発光部から出射された光をコリメータレンズで略平行にし、測定対象物に対して、点状の光ビームを照射(スポット照射)する方法がある。例えば、特許文献1では、コリメータレンズの位置を調整することで、一様照射およびスポット照射が可能な光学投影器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0018137号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の発光素子は、複数の発光部の全てに共通の電極を備えたものであった。この場合、全ての発光部は同時に駆動され、複数の発光部の一部のみを発光させることはできない。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、複数の発光部群を備える発光素子において、発光部群毎の駆動に適した照明装置および測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る照明装置は、発光素子と駆動回路とを具備する。
上記発光素子は、複数の第1の発光部および複数の第2の発光部と、上記複数の第1の発光部および上記複数の第2の発光部と接続された下部電極と、上記複数の第1の発光部と接続された第1の上部電極と、上記複数の第2の発光部と接続された第2の上部電極とを備える。
上記駆動回路は、上記下部電極と上記第1の上部電極の間を流れる第1の電流と、上記下部電極と上記第2の上部電極の間を流れる第2の電流をそれぞれ規定する。
【0008】
上記駆動回路は、上記第1の上部電極に電気的に接続され、上記複数の第1の発光部を駆動する第1の駆動部と、上記第2の上部電極に電気的に接続され、上記複数の第2の発光部を駆動する第2の駆動部とを含んでもよい。
【0009】
上記駆動回路は、上記第下部電極に接続され、上記複数の第1の発光部および上記複数の第2の発光部を駆動する駆動部を含んでもよい。
照明装置。
【0010】
上記発光素子は、上記複数の第1の発光部が上記第1の上部電極と接触する第1の配線によって接続された第1の発光部列を複数含む第1の発光部群と、上記複数の第2の発光部が上記第2の上部電極と接触する第2の配線によって接続された第2の発光部列を複数含む第2の発光部群とを有し、
上記第1の発光部列を流れる電流の向きは、上記複数の第1の発光部列の間で異なり
上記第2の発光部列を流れる電流の向きは、上記複数の第2の発光部列の間で異なってもよい。
【0011】
上記第1の発光部列と上記第2の発光部列は平行であり、上記第1の発光部列と上記第2の発光部列が交互となるように配列され、
上記第1の発光部群は、第1の方向に電流が流れる第1の発光部列と、上記第2の発光部列を介して上記第1の発光部列に隣接し、上記第1の方向とは反対方向である第2の方向に電流が流れる第1の発光部列を含み、
上記第2の発光部群は、上記第1の方向に電流が流れる第2の発光部列と、上記第1の発光部列を介して上記第2の発光部列に隣接し、上記第2の方向に電流が流れる第2の発光部列を含んでもよい。
【0012】
上記複数の第1の発光部および上記複数の第2の発光部は垂直共振器型面発光レーザ素子であってもよい。
【0013】
上記照明装置は、
上記複数の第1の発光部から出射された複数の第1の光および上記複数の第2の発光部から出射された複数の第2の光をそれぞれ略平行にして出射する第1の光学部材と、
上記複数の第1の光および上記複数の第2の光のうちの少なくとも一方のビーム形状を成形し、互いに異なるビーム形状を有する光として、上記複数の第1の光および上記複数の第2の光を出射する第2の光学部材と
をさらに具備してもよい。
【0014】
上記複数の第1の発光部から出射された上記複数の第1の光は、照射対象物に対して互いに独立したスポット状に照射され、
上記複数の第2の発光部から出射された上記複数の第2の光は、上記照射対象物に対して、一部が隣り合う第2の発光部から出射された第2の光と重畳し、所定の範囲を略一様に照射してもよい。
【0015】
上記複数の第1の発光部と上記複数の第2の発光部とは、互いに異なる発光面積を有してもよい。
【0016】
上記複数の第1の発光部の発光面積は、上記複数の第2の発光部の発光面積よりも小さくてもよい。
【0017】
上記第1の光学部材は、コリメータレンズであってもよい。
【0018】
上記第2の光学部材は、マイクロレンズアレイであってもよい。
【0019】
上記マイクロレンズアレイは、互いに曲率半径が異なる2種類のレンズを有してもよい。
【0020】
上記第2の光学部材は、回折光学素子であってもよい。
【0021】
上記回折光学素子は、フレネルレンズまたはバイナリレンズであってもよい。
【0022】
上記照明装置は、
上記複数の第1の光および上記複数の第2の光の光路上に配置され、上記複数の第1の光を屈折または回折することで上記照射対象物に照射されるスポットの数を増やすと共に、上記複数の第2の光を屈折または回折することで、隣り合う上記第2の発光部から出射された上記第2の光との重畳範囲を増やす第3の光学部材をさらに有してもよい。
【0023】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る照明装置は、発光素子と、駆動回路と、第1の光学部材と、第2の光学部材とを具備する。
上記発光素子は、複数の第1の発光部および複数の第2の発光部と、上記複数の第1の発光部および上記複数の第2の発光部と接続された下部電極と、上記複数の第1の発光部と接続された第1の上部電極と、上記複数の第2の発光部と接続された第2の上部電極とを備える。
上記駆動回路は、上記下部電極と上記第1の上部電極の間を流れる第1の電流と、上記下部電極と上記第2の上部電極の間を流れる第2の電流をそれぞれ規定する。
上記第1の光学部材は、上記複数の第1の発光部から出射された複数の第1の光および上記複数の第2の発光部から出射された複数の第2の光をそれぞれ略平行にして出射する。
上記第2の光学部材は、上記複数の第2の発光部から出射された上記複数の第2の光のビーム形状を成形して出射する。
【0024】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る測距装置は、物体に対して光を出射する照明装置と、上記物体からの反射光の受光を検出する受光部と、上記反射光の受光までに要する時間に基づいて、上記物体までの距離を測定する測距部とを具備する。
上記照明装置は、発光素子と駆動回路とを備える。
上記発光素子は、複数の第1の発光部および複数の第2の発光部と、上記複数の第1の発光部および上記複数の第2の発光部と接続された下部電極と、上記複数の第1の発光部と接続された第1の上部電極と、上記複数の第2の発光部と接続された第2の上部電極とを備える。
上記駆動回路は、上記下部電極と上記第1の上部電極の間を流れる第1の電流と、上記下部電極と上記第2の上部電極の間を流れる第2の電流をそれぞれ規定する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本技術の実施形態に係る照明装置の概略構成の一例を表す断面模式図である。
【
図2】上記照明装置を備える測距装置の概略構成の一例を表すブロック図である。
【
図3】上記照明装置のスポット照射時における照射パターンを表す図である。
【
図4】上記照明装置の一様照射時における照射パターンを表す図である。
【
図5】上記照明装置のスポット照射および一様照射を同時に行った場合の照射パターンを表す図である。
【
図6】上記照明装置が備える発光素子の平面構成の一例を表す模式図である。
【
図7】上記発光素子の各発光部の形状の一例を表す模式図である。
【
図8】上記光素子の発光部の構成の一例を表す断面模式図である。
【
図9】上記発光素子の各発光部と配線の接続関係を示す模式図である。
【
図10A】上記照明装置が備えるマイクロレンズアレイの構成の一例を表す平面模式図である。
【
図10B】上記マイクロレンズアレイの断面構成の一例を表す模式図である。
【
図11A】上記マイクロレンズアレイに対するスポット照射用の発光部の位置を表す模式図である。
【
図11B】上記マイクロレンズアレイに対する一様照射用の発光部の位置を表す模式図である。
【
図12】上記照明装置のビーム成形機能を説明する図である。
【
図13】上記照明装置による対象物に対する照射パターンを表す図である。
【
図14】上記照明装置の駆動回路の構成の一例を表す図である。
【
図15】上記照明装置の駆動回路の構成の一例を表す図である。
【
図16】上記照明装置の駆動回路の構成の一例を表す図である。
【
図17】上記照明装置の駆動回路の構成の一例を表す図である。
【
図18】上記照明装置の駆動回路の構成の一例を表す図である。
【
図19】
図18に示す駆動回路における各ノードの電圧を示すグラフである。
【
図20】
図18に示す駆動回路における電源電圧と電流の関係を示すグラフである。
【
図21】
図18に示す駆動回路における各ノードの電圧を示すグラフである。
【
図22】
図18に示す駆動回路における電源電圧と電流の関係を示すグラフである。
【
図23】上記照明装置の駆動回路の構成の一例を表す図である。
【
図24】上記照明装置の駆動回路の構成の一例を表す図である。
【
図25】上記照明装置の駆動回路の構成の一例を表す図である。
【
図26】
図25に示す駆動回路における各ノードの電圧を示すグラフである。
【
図27】上記照明装置の駆動回路の構成の一例を表す図である。
【
図28】上記発光素子の第1発光部と第2発光部の配線パターンの一例を示す平面図である。
【
図29】上記発光素子の第1発光部と第2発光部の配線パターンの一例を示す平面図である。
【
図31】
図29に示す配線パターンにおける第2発光部列を流れる電流の向きを示す模式図である。
【
図32】上記発光素子の第1発光部と第2発光部の配線パターンの一例を示す平面図である。
【
図34】
図32に示す配線パターンにおける第2発光部列を流れる電流の向きを示す模式図である
【
図35】一般的な測距装置における発光シーケンスの一例を示す模式図である。
【
図36】本技術の実施形態に係る照明装置における発光シーケンスの一例を示す模式図である。
【
図37】本技術の実施形態に係る照明装置における発光シーケンスの一例を示す模式図である。
【
図38】本技術の実施形態に係る照明装置における発光シーケンスの一例を示す模式図である。
【
図39】本技術の変形例1におけるビーム成形機能を説明する図である。
【
図40A】本技術の変形例2におけるマイクロレンズアレイの構成の一例を表す平面模式図である。
【
図40B】
図40Aに示したマイクロレンズアレイの断面構成の一例を表す模式図である。
【
図41】本技術の変形例2におけるビーム成形機能を説明する図である。
【
図42】本技術の変形例3に係る照明装置の概略構成の一例を表す断面模式図である。
【
図43】
図42に示した回折光学素子の構成の一例を表す平面模式図である。
【
図44】
図43に示した回折光学素子のレンズ部分の平面パターンの一例を表す図である。
【
図45】
図43に示した回折光学素子のレンズ部分の断面パターンを表す図である。
【
図46】
図43に示した回折光学素子を介した対象物に対する一様照射時の照射パターンを表す図である。
【
図47】
図42に示した回折光学素子のレンズ部分の断面パターンの他の例を表す図である。
【
図48】
図47に示した回折光学素子を介した対象物に対する一様照射時の照射パターンを表す図である。
【
図49A】
図42に示した回折光学素子のレンズ部分の平面パターンの他の例を表す図である。
【
図49B】
図42に示した回折光学素子のレンズ部分の平面パターンの拡大図である。
【
図50】
図49に示した回折光学素子を介した対象物に対する一様照射時の照射パターンを表す図である。
【
図51】本技術の変形例4に係る照明装置の概略構成の一例を表す断面模式図である。
【
図52A】スポット照射用発光部および一様照射用発光部から対象物に照射される光の照射位置を表す図である。
【
図52B】対象物に対する
図51に示した回折格子を介したスポット照明用発光部から出射される光の照射位置を表す図である。
【
図53】本技術の変形例5に係る照明装置の概略構成の一例を表す断面模式図である。
【
図54】
図53に示した照明装置における発光素子の断面構成の一例およびマイクロレンズアレイとの位置関係を表す図である。
【
図55】
図53に示した照明装置の他の構成を表す断面模式図である。
【
図56】本技術の変形例6における発光素子の断面構成の他の例を表す模式図である。
【
図57】本技術の変形例6における発光素子の断面構成の他の例を表す模式図である。
【
図58】本技術の変形例6における発光素子の断面構成の他の例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比などについても、それらに限定されるものではない。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.実施の形態(ビーム成形機能を有する光学素子としてマイクロレンズアレイを備えた照明装置の例)
1-1.照明装置の構成
1-2.照明装置の駆動方法
1-3.第1発光部および第2発光部の配線パターン
1-4.照明装置の発光シーケンス
1-5.測距装置の構成
1-6.作用・効果
2.変形例
2-1.変形例1(各発光部とマイクロレンズアレイとの位置関係の他の例)
2-2.変形例2(マイクロレンズアレイの構成の他の例)
2-3.変形例3(ビーム成形機能を有する光学素子として回折光学素子を用いた例
)
2-4.変形例4(コリメータレンズの後段にグレーティングを配置した例)
2-5.変形例5(発光素子として裏面出射型の面発光レーザを用いた例)
2-6.変形例6(発光素子の構成の他の例)
【0027】
<1.実施の形態>
図1は、本開示の一実施の形態に係る照明装置(照明装置1)の概略構成の一例を模式的に表した断面図である。
図2は、
図1に示した照明装置1を備えた測距装置(測距装置100)の概略構成を表したブロック図である。本実施形態に係る照明装置1は、発光素子11を備え、発光素子11から出射される光L1,L2のうち、例えば光L2のビーム形状を成形して、照射対象物1000に対して、例えば、
図3に示したようなスポット照射、
図4に示したような一様照射および
図5に示したようなその同時照射を行うものである。
【0028】
(1-1.照明装置の構成)
照明装置1は、例えば、発光素子11と、マイクロレンズアレイ12と、コリメータレンズ13と、回折素子14とを有する。マイクロレンズアレイ12、コリメータレンズ13および回折素子14は、発光素子11から出射された光(光L1,L2)の光路上に、例えば、この順に配置されている。発光素子11およびマイクロレンズアレイ12は、例えば、保持部21によって保持されており、コリメータレンズ13および回折素子14は、例えば、保持部22に保持されている。保持部21は、例えば、発光素子11およびマイクロレンズアレイ12を保持する面21S1とは反対側の面21S2に、共通端子23、第1発光部端子24および第2発光部端子25を有する。以下、照明装置1を構成する各部材について詳細に説明する。
【0029】
発光素子11は、複数の発光部を有し、各発光部は垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)である。複数の発光部は、スポット照射に用いられる複数の第1発光部110と、一様照射に用いられる複数の第2発光部120を含む。第1発光部110および第2発光部120は互いに電気的に分離され、基板130上にアレイ状に配置されている。以下、複数の第1発光部110からなる発光部群を第1発光部群161とし、複数の第2発光部120からなる発光部群を第2発光部群162とする(
図6参照)。
【0030】
複数の第1発光部110および複数の第2発光部120は、それぞれ、互いに電気的に接続されている。具体的には、例えば、
図6に示したように、複数の第1発光部110は、一方向(例えば、Y軸方向)に延在するn個(例えば、
図6では12個)の第1発光部110からなる複数(例えば、
図6では9本)の第1発光部列X(第1発光部列X1~X9)を構成しており、即ち第1発光部群161は複数の第1発光部列Xを含む。
【0031】
また、複数の第2発光部120は、一方向(例えば、Y軸方向)に延在するm個(例えば、
図6では12個)の第2発光部120からなる複数(例えば、
図6では9本)の第2発光部列Y(第2発光部列Y1~Y9)を構成しており、即ち第2発光部群162は複数の第2発光部列Yを含む。
【0032】
各第1発光部列Xおよび各第2発光部列Yは、例えば、
図6に示したように、矩形形状を有する基板130に、交互に配置されており、第1発光部列Xは、例えば、基板130の一の辺に沿って設けられた第1電極パッド240に、第2発光部列Yは、例えば、基板130の一の辺と対向する他の辺に沿って設けられた第2電極パッド250に、それぞれ電気的に接続されている。
【0033】
なお、
図6では、各第1発光部列Xおよび各第2発光部列Yが交互に配置された例を示したが、これに限らない。例えば、第1発光部110および第2発光部120の数は、それぞれ、所望の発光点の数、位置および光出力の量によって、任意の配列とすることができる。
【0034】
図7は、
図6に示した第1発光部列Xおよび第2発光部列Yの配列の一部を拡大して表したものである。同図に示すように、第1発光部列Xは、複数の第1発光部110が第1配線111によって接続されて形成されている。第1配線111は、第1発光部110が備える上部電極151(
図8参照)に接触し、第1発光部110と電気的に接続されている。また、第2発光部列Yは、複数の第2発光部120が第2配線112によって接続されて形成されている。第2配線112は、第2発光部120が備える上部電極151(
図8参照)に接触し、第2発光部120と電気的に接続されている。
【0035】
第1発光部110および第2発光部120は、互いに異なる発光面積(OA径W3,W4)を有していることが好ましい。具体的には、スポット照射用の第1発光部110の発光面積(OA径W3)は、一様照射用の第2発光部120の発光面積(OA径W4)よりも小さいことが好ましい。
【0036】
これにより、第1発光部110から照射されるスポット照射用の光ビーム(レーザビームL110、
図13参照)は、より小さく集光されるようになり、対象物に対してより小さなスポットでの照射が可能となる。また、第2発光部120から照射される一様照射用の光ビーム(レーザビームL120、
図13参照)は、より広い範囲を照射できるようになり、照射対象物1000に対してより均一、且つ、高出力な一様照射が可能となる。また、これに伴い、第1発光部110のそれぞれを接続する配線の開口幅W1は、第2発光部120のそれぞれを接続する配線の開口幅W2よりも小さくなる。
【0037】
図8は、発光素子11の発光部(第1発光部110および第2発光部120)の断面構成の一例を模式的に表したものである。発光素子11は、表面出射型の垂直共振器型面発光レーザである。第1発光部110及び第2発光部120は、それぞれ、基板130の一の面(表面(面130S1))側に下部DBR層141、下部スペーサ層142、活性層143、上部スペーサ層144、上部DBR層145およびコンタクト層146をこの順に含む半導体層140を有する。この半導体層140の上部、具体的には、下部DBR層141の一部、下部スペーサ層142、活性層143、上部スペーサ層144、上部DBR層145およびコンタクト層146は、柱状のメサ部147となっている。
【0038】
基板130は、例えば、n型のGaAs基板である。n型不純物としては、例えば、ケイ素(Si)またはセレン(Se)等が挙げられる。半導体層140は、例えば、AlGaAs系の化合物半導体によりそれぞれ構成されている。AlGaAs系の化合物半導体とは、短周期型周期表における3B族元素のうち少なくともアルミニウム(Al)およびガリウム(Ga)と、短周期型周期表における5B族元素のうち少なくともヒ素(As)とを含む化合物半導体のことをいう。
【0039】
下部DBR(Distributed Bragg Reflector)層141は、低屈折率層および高屈折率層(いずれも図示せず)を交互に積層してなるものである。低屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n1(λは発光波長、n1は屈折率)のn型Alx-1Ga1-x1As(0<x1<1)により構成されている。高屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n2(n2は屈折率)のn型Alx-2Ga1-x2As(0<x2<x1)により構成されている。
【0040】
下部スペーサ層142は、例えば、n型Alx-3Ga1-x3As(0<x3<1)により構成されている。活性層143は、例えばアンドープのn型Alx-4Ga1-x4As(0<x4<1)により構成されている。上部スペーサ層144は、例えば、p型Alx-5Ga1-x5As(0<x5<1)により構成されている。p型不純物としては、例えば、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)およびベリリウム(Be)等が挙げられる。
【0041】
上部DBR(Distributed Bragg Reflector)層145は、低屈折率層および高屈折率層(いずれも図示せず)を交互に積層して形成されている。低屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n3(n3は屈折率)のp型Alx6Ga1-x6As(0<x6<1)により構成されている。高屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n4(n4は屈折率)のp型Alx7Ga1-x7As(0<x7<x6)により構成されている。コンタクト層16は、例えばp型Alx8Ga1-x8As(0<x8<1)により構成されている。
【0042】
発光素子11には、さらに、電流狭窄層148およびバッファ層149が設けられている。電流狭窄層148およびバッファ層149は、上部DBR層145内に設けられている。
【0043】
電流狭窄層148は、バッファ層149との関係で、活性層143から離れた位置に形成されている。電流狭窄層148は、例えば、上部DBR層145内において、活性層143側から数えて例えば数層離れた低屈折率層の部位に、低屈折率層に代わって設けられている。電流狭窄層148は、電流注入領域148Aと、電流狭窄領域148Bとを有している。電流注入領域148Aは、面内の中央領域に形成されており、上述した第1発光部110,120の発光面積(OA径W3,W4)に相当する。電流狭窄領域148Bは、電流注入領域148Aの周縁、即ち、電流狭窄層148の外縁領域に形成されており、環状の形状となっている。
【0044】
電流注入領域148Aは、例えば、p型Alx9Ga1-x9As(0.98≦x9≦1)によって構成されている。電流狭窄領域148Bは、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)を含んで構成され、例えば、p型Alx9Ga1-x9Asによって構成された被酸化層(図示せず)をメサ部17の側面から酸化することにより得られたものである。これにより、電流狭窄層148は電流を狭窄する機能を有している。
【0045】
バッファ層149は、電流狭窄層148との関係で、活性層143寄りに形成されている。バッファ層149は、電流狭窄層148に隣接して形成されている。バッファ層149は、例えば、
図8に示したように、電流狭窄層148のうち活性層143側の面(下面)に接して形成されている。なお、電流狭窄層148とバッファ層149との間に、例えば数nm程度の厚さの薄い層が設けられていてもよい。バッファ層149は、例えば、上部DBR層145内において、電流狭窄層148から数えて例えば数層離れた高屈折率層の部位に、高屈折率層に代わって設けられている。
【0046】
バッファ層149は、未酸化領域と、酸化領域とを有している(いずれも図示せず)。未酸化領域は、主に面内の中央領域に形成されており、例えば、電流注入領域148Aと接する部位に形成されている。酸化領域は、未酸化領域19Aの周縁に形成されており、環状の形状となっている。酸化領域は、主に面内の外縁領域に形成されており、例えば、電流狭窄領域148Bと接する部位に形成されている。酸化領域は、バッファ層149の外縁に相当する部分以外の部分において、電流狭窄層148側に偏って形成されている。
【0047】
未酸化領域は、Alを含む半導体材料によって構成されており、例えば、p型Alx10Ga1-x10As(0.85<x10≦0.98)またはp型InAlx11GaAs(0.85<x11≦0.98)によって構成されている。酸化領域は、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)を含んで構成され、例えば、p型Alx10Ga1-x10Asまたはp型InAlx11GaAsによって構成された被酸化層(図示せず)をメサ部147の側面側および被酸化層側から酸化することにより得られたものである。このバッファ層149の被酸化層は、下部DBR層141および上部DBR層145よりも酸化速度が速く、且つ、電流狭窄層148の被酸化層よりも酸化速度が遅くなるような材料および厚さによって構成されている。
【0048】
メサ部147の上面(コンタクト層146の上面)には、少なくとも電流注入領域148Aとの対向領域に開口(光射出口R)を有する環状の上部電極151が形成されている。また、メサ部147の側面および周辺の表面には、絶縁層(図示せず)が形成されている。
【0049】
上部電極151は、上述した第1配線111又は第2配線112と接続される。
図9は、上部電極151と第1配線111及び第2配線112を示す模式図である。同図に示すように、第1発光部110が備える上部電極151を第1上部電極151Aとし、第2発光部120が備える上部電極151を第2上部電極151Bとする。第1上部電極151Aは第1配線111と接触し、第1配線111を介して第1電極パッド240と電気的に接続される。また、第2上部電極151Bは第2配線112と接触し、第2配線112を介して第2電極パッド250と電気的に接続される。
【0050】
第1電極パッド240は、保持部21の裏面(面21S2)に設けられた第1発光部端子24と電気的に接続され、第2電極パッド250は保持部21の裏面(面21S2)に設けられた第2発光部端子25と電気的に接続されている(
図1参照)。
【0051】
基板130の他の面(裏面(面130S2)には、下部電極152が設けられている。下部電極152は、第1発光部110及び第2発光部120の裏面に一様に設けられ、第1発光部110及び第2発光部120と電気的に接続されると共に、保持部21の裏面(面21S2)に設けられた共通端子23と電気的に接続されている。
【0052】
したがって、第1発光部110は、共通端子23及び第1発光部端子24と電気的に接続され、第2発光部120は共通端子23と及び第2発光部端子25と電気的に接続されている。共通端子23は例えば、第1発光部110及び第2発光部120のカソードであり、第1発光部端子24は第1発光部110のアノード、第2発光部端子25は第2発光部120のアノードである。また、共通端子23は第1発光部110及び第2発光部120のアノードであり、第1発光部端子24は第1発光部110のカソード、第2発光部端子25は第2発光部120のカソードであってもよい。
【0053】
上部電極151、第1電極パッド240および第2電極パッド250は、例えば、チタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)をこの順に積層して構成されたものであり、メサ部147上部のコンタクト層146と電気的に接続されている。下部電極152は、例えば、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金,ニッケル(Ni)および金(Au)とを基板130側から順に積層した構造を有しており、基板130と電気的に接続されている。
【0054】
発光素子11は以上のような構成を有する。なお、上記説明において下部DBR層141側がn型、上部DBR層145側がp型としたが、この伝導型は反対であってもよく、即ち、下部DBR層141側がp型、上部DBR層145側がn型であってもよい。
【0055】
マイクロレンズアレイ12(
図1参照)は、第1発光部110および第2発光部120から出射される光(レーザビームL110およびレーザビームL120)のうちの少なくとも一方のビーム形状を成形して出射するものである。このマイクロレンズアレイ12が、本開示の「第2の光学部材」の一具体例に相当する。
図10Aは、マイクロレンズアレイ12の平面構成の一例を模式的に表したものであり、
図10Bは、
図10Aに示したI-I線におけるマイクロレンズアレイ12の断面構成を模式的に表したものである。マイクロレンズアレイ12は、複数のマイクロレンズがアレイ状に配置されたものであり、複数のレンズ部12Aと、平行平板部12Bとを有している。
【0056】
本実施の形態では、マイクロレンズアレイ12は、
図11Aに示したように、レンズ部12Aが第2発光部120と正対するように、
図11Bに示したように、平行平板部12Bが第1発光部110と正対するように配置されている。これにより、
図12に示したように、第2発光部120から出射されたレーザビームL120は、レンズ部12Aのレンズ面で屈折され、例えばマイクロレンズアレイ12内に仮想発光点P2'を形成する。即ち、第1発光部110の発光点P1と同じ高さにあった第2発光部120の発光点P2が、第1発光部110および第2発光部120から出射される光(レーザビームL110,レーザビームL120)の光軸方向(例えば、Z軸方向)にずれることとなる。
【0057】
従って、第1発光部110および第2発光部120の発光を切り替えることにより、第1発光部110から出射されたレーザビームL110は、例えば、
図3や
図13に示したようなスポット状の照射パターンを形成する。また、第2発光部120から出射されたレーザビームL120は、例えば、
図4や
図13に示したような一部が隣り合う第2発光部120から出射されたレーザビームL120と重畳することにより、所定の範囲を略一様な光強度の照射する照射パターンを形成する。照明装置1では、この第1発光部110の発光と第2発光部120の発光とを切り替えることにより、スポット照射と一様照射との切り替えが可能となる。
【0058】
なお、
図12では、マイクロレンズアレイ12がリレーレンズとして機能している例を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、第2発光部120の仮想発光点P2'は、第2発光部120とマイクロレンズアレイ12との間に形成されてもよい。
【0059】
コリメータレンズ13は、第1発光部110から出射されたレーザビームL110および第2発光部120から出射されたレーザビームL120を略平行光として出射するものである。このコリメータレンズ13が、本開示の「第1の光学部材」の一具体例に相当する。コリメータレンズ13は、例えば、マイクロレンズアレイ12から出射されたレーザビームL110およびレーザビームL120をそれぞれコリメートして、回折素子14と結合するためのレンズである。
【0060】
回折素子14は、第1発光部110から出射されたレーザビームL110および第2発光部120から出射されたレーザビームL120のそれぞれを、分割して出射するものである。回折素子14としては、例えば、第1発光部110から出射されたレーザビームL110および第2発光部120から出射されたレーザビームL120を、3×3に分割する回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)を用いることができる。回折素子14を配置することにより、レーザビームL110およびレーザビームL120のそれぞれの光束をタイリングし、例えば、スポット照射時におけるスポット数を増やしたり、一様照射時における照射範囲を拡大することが可能となる。
【0061】
保持部21および保持部22(
図1参照)は、発光素子11、マイクロレンズアレイ12、コリメータレンズ13および回折素子14を保持するためのものである。具体的には、保持部21は、上面(面21S1)に設けられた凹部C内に発光素子11を保持し、面21S1に沿ってマイクロレンズアレイ12を保持している。保持部22は、コリメータレンズ13および回折素子14を保持している。マイクロレンズアレイ12、コリメータレンズ13および回折素子14は、例えば、接着剤によって、それぞれ、保持部21および保持部22に保持されている。保持部21および保持部22は、発光素子11から出射された光L1(具体的には、レーザビームL110)および光L2(具体的には、レーザビームL120)をマイクロレンズアレイ12の所定の位置に入射させると共に、コリメータレンズ13を透過した光L1,L2が略平行光となるように、互いに接続されている。
【0062】
なお、
図1では、マイクロレンズアレイ12が保持部21に保持されている例を示したが、これに限らず、例えば、保持部22に保持されていてもよい。また、コリメータレンズ13および回折素子14が保持部21に保持されていてもよい。
【0063】
(1-2.照明装置の駆動方法)
本実施の形態の照明装置1では、発光素子11に設けられた第1発光部110および第2発光部120は、互いに独立して駆動される。照明装置1では、第1発光部110と第2発光部120の発光を切り替えることによって、照射対象物1000に対して、互いに独立した点状の光ビーム(レーザビームL110)を照射するスポット照射と、所定の範囲を略一様な光強度の範囲照射を行う光ビーム(レーザビームL120)を照射する一様照射とを、1つの装置内で実現することができる。具体的には照明装置1は、第1発光部110と第2発光部120に流れる電流をそれぞれ規定することが可能な駆動回路を備えるものとすることができる。以下、照明装置1の各種駆動回路について説明する。
【0064】
[スイッチによる切り替え]
図14は、照明装置1の駆動回路の構成の一例を表したものである。同図に示すように第1発光部群161及び第2発光部群162のカソードには駆動部260が接続されている。また、第1発光部群161のアノードにはスイッチ261が接続され、第2発光部群162のアノードにはスイッチ262が接続されている。第1発光部群161および第2発光部群162の発光の切り替えは、スイッチ261及びスイッチ262によって行い、第1発光部群161および第2発光部群162のうち電源(VCC)と接続されている方に駆動部260から駆動信号が供給される。
【0065】
また、第1発光部群161および第2発光部群162の発光の切り替えは、例えば、
図15に示したように、2つの駆動部260A及び駆動部260Bを用いて行うこともできる。同図に示すように第1発光部群161及び第2発光部群162のカソードには駆動部260A及び駆動部260Bが接続されている。また、第1発光部群161のアノードにはスイッチ261が接続され、第2発光部群162のアノードにはスイッチ262が接続されている
【0066】
この構成では2つの駆動部260Aおよび駆動部260Bによって第1発光部群161および第2発光部群162にそれぞれ異なる駆動条件で駆動信号を供給することができる。2つの駆動部260Aおよび駆動部260Bを用いて、第1発光部群161および第2発光部群162の切り替えを行うことにより、第1発光部群161および第2発光部群162の、電流や電圧等の駆動条件を個別に制御することが可能となる。なお、駆動部260は、例えば、照明装置1の外部に設けられていてもよいし、例えば、保持部21に内蔵されていてもよい。また、発光素子11と駆動部260とが直接接続されていてもよい。
【0067】
[独立駆動]
図16は、照明装置1の駆動回路の構成の他の例を表したものである。同図に示すように第1発光部群161及び第2発光部群162のカソードはグランドに接続されている。また、第1発光部群161のアノードは駆動部263に接続され、第2発光部群162のアノードは駆動部264に接続されている。
【0068】
駆動部263および駆動部264はそれぞれトランジスタであり、ON/OFF変調のタイミングを規定する変調信号が供給されると、ONのタイミングで電源(VCC)と第1発光部群161又は第2発光部群162を接続する。これにより、第1発光部群161および第2発光部群162にはONのタイミングで電流が流れ、発光を生じる。第1発光部群161および第2発光部群162のアノードは完全に分離され、それぞれ駆動部263および駆動部264が設けられているため、第1発光部群161と第2発光部群162をそれぞれ異なる波形(タイミングおよび電流)で駆動することが可能である。
【0069】
なお、駆動部263および駆動部264はそれぞれMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタとすることができる。
図16ではP-ch MOSトランジスタとして記載したが、N-ch MOSトランジスタを用いてもよい。また、駆動部263および駆動部264はMOSトランジスタに替えてバイポーラ・トランジスタであってもよい。
【0070】
図17は、照明装置1の駆動回路の構成の他の例を表したものである。同図に示すように第1発光部群161及び第2発光部群162のアノードは電源(VCC)に接続されている。また、第1発光部群161のカソードは駆動部265に接続され、第2発光部群162のカソードは駆動部266に接続されている。
【0071】
駆動部265および駆動部266はそれぞれトランジスタであり、ON/OFF変調のタイミングを規定する変調信号が供給されると、ONのタイミングでグランドと第1発光部群161又は第2発光部群162を接続する。これにより、第1発光部群161および第2発光部群162にはONのタイミングで電流が流れ、発光を生じる。第1発光部群161および第2発光部群162のカソードは完全に分離され、それぞれ駆動部265および駆動部266が設けられているため、第1発光部群161と第2発光部群162をそれぞれ異なる波形(タイミングおよび電流)で駆動することが可能である。
【0072】
なお、駆動部265および駆動部266はそれぞれMOSトランジスタとすることができる。
図17ではN-ch MOSトランジスタとして記載したが、P-ch MOSトランジスタを用いてもよい。また、駆動部265および駆動部266はMOSトランジスタに替えてバイポーラ・トランジスタであってもよい。
【0073】
図16及び
図17に示す発光素子11の駆動回路構成は、発光素子11の電気的特性やトランジスタのプロセス技術に応じて最適な回路構成とすることが可能である。例えば、下部DBR層141(
図8参照)側がn型の場合、
図16に示すアノード分離構造とすることができ、下部DBR層141側がp型の場合、
図17に示すカソード分離構造とすることができる。
【0074】
[一括駆動]
図18は、照明装置1の駆動回路の構成の他の例を表したものである。同図に示すように第1発光部群161及び第2発光部群162のカソードは駆動部267に接続されている。また、第1発光部群161のアノードは第1電源(VCC1)に接続され、第2発光部群162のアノードは第2電源(VCC2)に接続されている。
【0075】
駆動部267はトランジスタであり、ON/OFF変調のタイミングを規定する変調信号が供給されると、ONのタイミングでグランドと第1発光部群161及び第2発光部群162を接続する。第1電源(VCC1)は、所定電圧を第1発光部群161に印加し、第2電源(VCC2)は所定電圧を第2発光部群162に印加する。
【0076】
図19は、
図18の構成における、第1電源(VCC1)と第2電源(VCC2)をはじめ各ノードの電圧を示すグラフである。第1電源(VCC1)の電圧は第1発光部群161のアノード電圧であり、第2電源(VCC2)の電圧は第2発光部群162のアノード電圧である。第1発光部群161のアノード電圧(VCC1)とカソード電圧の差が第1発光部群161の駆動電圧(Vf_1)であり、第2発光部群162のアノード電圧(VCC2)とカソード電圧の差が第2発光部群162の駆動電圧(Vf_2)である。
【0077】
同図に示すように、第1発光部群161のアノード電圧(VCC1)と第2発光部群162のアノード電圧(VCC2)の差異を電位差ΔVとする。ΔVは例えば0.5Vである。第1発光部群161のアノード電圧(VCC1)を第2発光部群162のアノード電圧(VCC2)よりΔVだけ低く設定した場合、カソードは共通であるため、第1発光部群161の駆動電圧(Vf_1)は第2発光部群162の駆動電圧(Vf_2)よりΔVだけ低くなる。
【0078】
図20は、第1発光部群161と第2発光部群162の駆動電圧、駆動電流及び駆動電力を示すグラフである。同図において第1発光部群161の駆動電流を(If_1)、第2発光部群162の駆動電流を(If_2)とする。また、第1発光部群161の駆動電力を(Po_1)、第2発光部群162の駆動電力を(Po_2)とする。同図に示すように、第1発光部群161の駆動電圧(Vf_1)を第2発光部群162の駆動電圧(Vf_2)よりΔVだけ低くした場合、駆動部267が流す電流はこの条件を満たすように、駆動電流(If_1)と駆動電流(If_2)に分配される。
【0079】
このように、第1発光部群161のアノード電圧(VCC1)を第2発光部群162のアノード電圧(VCC2)より低くすることにより、これらのアノード電圧が等しい場合に比べて、駆動電流(If_1)を少なく、駆動電流(If_2)を多くすることができる。反対に、第1発光部群161のアノード電圧(VCC1)を第2発光部群162のアノード電圧(VCC2)より高くすることにより、これらのアノード電圧が等しい場合に比べて、駆動電流(If_1)を多く、駆動電流(If_2)を少なくすることができる。
【0080】
さらに、ΔVをより大きくすることにより、第1発光部群161と第2発光部群162の一方のみを発光させることも可能となる。
図21は、
図18の構成においてΔVをより大きくした場合について、第1電源(VCC1)と第2電源(VCC2)をはじめ各ノードの電圧を示すグラフである。同図に示すように、ΔVをより大きくすると、第1発光部群161の駆動電圧(Vf_1)は第2発光部群162の駆動電圧(Vf_2)よりさらに低くなる。このΔVは例えば1.5Vとすることができる。
【0081】
図22は、第1発光部群161と第2発光部群162の駆動電圧、駆動電流及び駆動電力を示すグラフである。同図に示すように、第1発光部群161の駆動電圧(Vf_1)を第2発光部群162の駆動電圧(Vf_2)よりΔVだけ低くした場合、駆動部267が流す電流はこの条件を満たすように、駆動電流(If_1)と駆動電流(If_2)に分配される。その結果、第1発光部群161の駆動電圧(Vf_1)はバンドギャップ電圧よりも低い電圧となり、第1発光部群161には電流が流れなくなる(If_1=0)。このため、駆動部267が流す電流は全て第2発光部群162に流れることなり、即ち第1発光部群161をオフ、第2発光部群162をオンとしたことになる。
【0082】
このように、第1発光部群161のアノード電圧(VCC1)を第2発光部群162のアノード電圧(VCC2)より一定値以上低くすることにより、第1発光部群161をオフ、第2発光部群162をオンとすることができる。反対に第1発光部群161のアノード電圧(VCC1)を第2発光部群162のアノード電圧(VCC2)より一定値以上高くすることにより、第1発光部群161をオン、第2発光部群162をオフとすることができる。
【0083】
以上のように、
図18に示す回路構成においても第1発光部群161のアノード電圧(VCC1)と第2発光部群162のアノード電圧(VCC2)を調整することにより、駆動電流(If_1)と駆動電流(If_2)をそれぞれ規定し、第1発光部群161の発光量と第2発光部群162の発光量を制御することが可能となる。また、第1発光部群161のアノード電圧(VCC1)と第2発光部群162のアノード電圧(VCC2)の差異(ΔV)を一定値以上に大きくすることにより、第1発光部群161と第2発光部群162のオン/オフを制御することも可能である。なお、
図18では第1発光部群161及び第2発光部群162のアノードが分離している回路構成を示すが、
図17と同様に第1発光部群161及び第2発光部群162のカソードが分離している回路構成とすることも可能である。
【0084】
[スイッチ回路による駆動]
図18に示す回路構成では、上述のように第1電源(VCC1)と第2電源(VCC2)の電圧の差異によって第1発光部群161及び第2発光部群162の発光の切り替えが可能であるが、スイッチ回路によってこれらの発光を切り替えることも可能である。
図23は、照明装置1のスイッチ回路を含む駆動回路の構成を表したものである。
【0085】
同図に示すように第1発光部群161及び第2発光部群162のカソードは駆動部267に接続されている。また、第1発光部群161のアノードはおよび第2発光部群162のアノードは電源(VCC)に接続されている。さらに、第1発光部群161のアノードと電源(VCC)およびグランドの間には第1スイッチ回路268が設けられ、第2発光部群162のアノードと電源(VCC)およびグランドの間には第2スイッチ回路269が設けられている。第1スイッチ回路268及び第2スイッチ回路269はそれぞれ2つのトランジスタ270によって構成されている。
【0086】
図24及び
図25は、この駆動回路の動作を示す模式図である。
図24に示すように、選択信号をLとすると第1発光部群161のアノードは電源(VCC)に接続され、第2発光部群162のアノードはグランドに接続される。これにより、第1発光部群161が発光し、第2発光部群162は発光しない。一方、
図25に示すように、選択信号をHとすると第1発光部群161のアノードはグランドに接続され、第2発光部群162のアノードは電源(VCC)に接続される。これにより、第2発光部群162が発光し、第1発光部群161は発光しない。
【0087】
図26は
図25に示す状態での各ノードの電圧を示すグラフである。同図に示すように、第1発光部群161の駆動電圧(Vf_1)は、カソード電圧と第1発光部端子24でのアノード電圧(VCC1)の差であり、逆バイアスとなるので、第1発光部群161には電流は流れない。このため、駆動部267が流す電流は全て第2発光部群162に流れる。即ち、第1発光部群161をOFFとし、第2発光部群162をONとしたことになる。
【0088】
図23に示す回路構成は、レーザ駆動IC(integrated circuit)の機能として集積することも可能である。
図27は、集積回路により構成した照明装置1の駆動回路を表したものである。同図に示すように、この駆動回路は集積回路271によって実現されている。集積回路271は、上述したトランジスタ270、レジスタ272及び駆動トランジスタ273を備える。
【0089】
第1発光部群161および第2発光部群162の駆動信号を構成する要素としては駆動電流の大きさと、ON/OFF変調のタイミングの2つがある。駆動電流の大きさは,シリアルI/Fを介してデジタルデータとしてレジスタ272に格納され,それに応じた電圧が駆動トランジスタ273に供給される。変調タイミングは,タイミング信号としてデジタル信号が与えられ、それに応じて駆動トランジスタ274をON/OFFするように制御される。このように駆動回路を集積回路によって実現することにより、発光させる発光部群の切替えに必要なスイッチ回路をより小型・低価格で実現することができる。
【0090】
照明装置1は以上のような発光素子11の駆動回路を備えるものとすることができる。各駆動回路は照明装置1の外部に設けられていてもよいし、保持部21に内蔵されていてもよい。また、発光素子11と駆動回路とが直接接続されていてもよい。
【0091】
(1-3.第1発光部および第2光部の配線パターン)
発光素子11では上述のように、第1発光部群161は、一方向に延在する複数の第1発光部110からなる複数の第1発光部列Xを有し、第2発光部群162は、一方向に延在する複数の第2発光部120からなる複数の第2発光部列Yを有する(
図6参照)。第1発光部列Xと第2発光部列Yは交互に配置されている。
【0092】
図28は、発光素子11の配線パターンと電極配置を示す平面図である。同図に示すように、第1発光部列Xは、配線111によって線状に接続され、一方向(Y軸方向)に延伸し、左側の第1電極パッド240に接続されている。また、第2発光部列Yは、配線112によって線状に接続され、一方向(Y軸方向)に延伸し、右側の第2電極パッド250に接続されている。
【0093】
第1電極パッド240は、ワイヤボンディングWによって発光素子11の第1発光部電極241に接続され、第1発光部端子24(
図1参照)に電気的に接続されている。第2電極パッド250はワイヤボンディングWによって発光素子11の第2発光部電極251に接続され、第2発光部端子25(
図1参照)に電気的に接続されている。
【0094】
図29は発光素子11の他の配線パターンと電極配置を示す平面図であり、
図30は
図29の配線パターンのみを示す平面図である。
図30に示すように第1発光部列Xは右側の第1電極パッド240に接続された第1発光部列Xrと、左側の第1電極パッド240に接続された第1発光部列Xlを含み、第1発光部列Xrと第1発光部列Xlは第2発光部列Yを介して交互に配置されている。第2発光部列Yは、右側の第2電極パッド250に接続された第2発光部列Yrと、左側の第2電極パッド250に接続された第2発光部列Ylを含み、第2発光部列Yrと第2発光部列Ylは第1発光部列Xを介して交互に配置されている。
【0095】
図31は、
図29に示す配線パターンにおける、第2発光部列Yの電流の流れを示す模式図であり、電流の流れを矢印で示す。同図に示すように第2発光部列Yrと第2発光部列Ylでは電流の流れる向きが反対方向となる。このため、第2発光部列Yrを流れる電流が発生させる磁界と第2発光部列Ylを流れる電流が発生させる磁界は互いに打ち消し合う。これにより、実効的なインダクタンスを低減し、高速変調特性を向上させることが可能となる。なお、ここでは、第2発光部列Yについて示したが、第1発光部列Xでも同様に、第1発光部列Xrによる磁界と第1発光部列Xlによる磁界は互いに打ち消し合い、高速変調特性を向上させることが可能となる。
【0096】
図32は発光素子11の他の配線パターンと電極配置を示す平面図であり、
図33は
図32の配線パターンのみを示す平面図である。
図33に示すように、第1発光部列Xは、右側の第1電極パッド240に接続された第1発光部列Xrと、左側の第1電極パッド240に接続された第1発光部列X1を含む。2本ずつの第1発光部列Xrと2本ずつの第1発光部列Xlは第2発光部列Yを介して交互に配置されている。第2発光部列Yは、右側の第2電極パッド250に接続された第2発光部列Yrと、左側の第2電極パッド250に接続された第2発光部列Ylを含む。2本ずつの第2発光部列Yrと2本ずつの第2発光部列Ylは第1発光部列Xを介して交互に配置されている。
【0097】
図34は、
図32に示す配線パターンにおける、第2発光部列Yの電流の流れを示す模式図であり、電流の流れを矢印で示す。同図に示すように第2発光部列Yrと第2発光部列Ylでは電流の流れる向き反対方向となる。このため、第2発光部列Yrを流れる電流が発生させる磁界と第2発光部列Ylを流れる電流が発生させる磁界は互いに打ち消し合う。これにより、
図29に示す配線パターンよりは劣るものの、実効的なインダクタンスを低減し、高速変調特性を向上させることが可能となる。
【0098】
また、この構成では
図29に示す配線パターンよりも第1電極パッド240および第2電極パッド250の面積を大きくすることができるため、ワイヤボンディングWを設けやすく、配線間隔が狭い場合にも利用可能である。なお、ここでは、第2発光部列Yについて示したが、第1発光部列Xでも同様に、第1発光部列Xrによる磁界と第1発光部列Xlによる磁界は互いに打ち消し合い、高速変調特性を向上させることが可能となる。
【0099】
(1-4.照明装置の発光シーケンス)
図35は、一般的な、Indirect-ToFにおける測距パルスの発光シーケンスである。1枚の測距画像を生成する区間は「フレーム」と呼ばれ、1フレームは例えば33.3msec(周波数30Hz)といった時間に設定される。測距パルスとしては例えば,100MHz・Duty=50%の矩形連続波が用いられ、これが蓄積区間の間、連続的に発光する。フレーム内には、条件を変えた複数の蓄積区間を設けることができる。
図35では8つの蓄積区間が示されているが、この数に限定されない。
【0100】
図36は、照明装置1の発光シーケンスの例である。同図に示すように照明装置1では、ひとつのフレームで第1発光部群161を発光させ、受光部210(
図2参照)が反射光を受光して測距画像を生成する。次のフレームでは第2発光部群162を発光させ、受光部210が反射光を受光して測距画像を生成する。
図36では1フレーム毎に第1発光部群161と第2発光部群162を切り替えているが、複数フレーム毎に切り替えてもよい。
【0101】
図37は、照明装置1の別の発光シーケンスの例である。同図に示すように照明装置1では、ひとつのフレームで第1発光部群161と第2発光部群162の両方を順に発光させ、受光部210が測距画像を生成するようにしてよい。この発光シーケンスでは、第1発光部群161の出射光による測距情報と第2発光部群162の出射光による測距情報とを合成した測距画像を生成させることができる。
【0102】
図38は、照明装置1のさらに別の発光シーケンスの例である。同図に示すように照明装置1では、蓄積時間毎に第1発光部群161と第2発光部群162を交互に発光させ、受光部210が測距画像を生成するようにしてもよい。
【0103】
(1-5.測距装置の構成)
測距装置100は、ToF方式により距離を測定するものである。測距装置100は、例えば、照明装置1と、受光部210と、制御部220と、測距部230とを有する(
図2参照)。
【0104】
照明装置1は、上記のように、複数の第1発光部110と複数の第2発光部120との発光切替えにより、照射対象物1000に対して、点状の光ビームの照射(スポット照射)と、略一様な光強度の光ビームの照射(一様照射)とを行うものである。照明装置1では、例えば、矩形波の発光制御信号CLKpに同期して照射光を発生する。また、発光制御信号CLKpは、周期信号であれば、矩形波に限定されない。例えば、発光制御信号CLKpは、サイン波であってもよい。
【0105】
受光部210は、照射対象物1000から反射した反射光を受光して、垂直同期信号VSYNCの周期が経過するたびに、その周期内の受光量を検出するものである。例えば、60ヘルツ(Hz)の周期信号が垂直同期信号VSYNCとして用いられる。また、受光部210には、複数の画素回路が二次元格子状に配置されている。受光部210は、これらの画素回路の受光量に応じた画像データ(フレーム)を測距部230に供給する。なお、垂直同期信号VSYNCの周波数は、60ヘルツ(Hz)に限定されず、30ヘルツ(Hz)や120ヘルツ(Hz)としてもよい。
【0106】
制御部220は、照明装置1を制御するものである。制御部220は、発光制御信号CLKpを生成して照明装置1および受光部210に供給する。発光制御信号CLKpの周波数は、例えば20メガヘルツ(MHz)である。なお、発光制御信号CLKpの周波数は、20メガヘルツ(MHz)に限定されず、例えば5メガヘルツ(MHz)としてもよい。
【0107】
測距部230は、画像データに基づいて、照射対象物1000までの距離をToF方式で測定するものである。この測距部230は、画素回路毎に距離を測定して画素毎に物体までの距離を諧調値で示すデプスマップを生成する。このデプスマップは、例えば、距離に応じた度合いのぼかし処理を行う画像処理や、距離に応じてフォーカスレンズの合焦点を求めるオートフォーカス(AF)処理等に用いられる。
【0108】
(1-6.作用・効果)
本実施の形態の照明装置1は、スポット照射用および一様照射用の第1発光部群161および第2発光部群162を構成する複数の発光部(第1発光部110,第2発光部120)を有する発光素子11から出射される光L1(レーザビームL110)および光L2(レーザビームL120)の光路上に、例えば、一様照射用のレーザビームL120のビーム形状を成形して出射するマイクロレンズアレイ12を配置するようにした。これにより、第1発光部110および第2発光部120からそれぞれ出射されるレーザビームL110およびレーザビームL120の、それぞれの発光点の位置を光軸方向にずらすことが可能となる。以下、これについて説明する。
【0109】
前述したように、ToF法を用いた測距装置では、複数の発光部から出射された光を測定対象範囲全面に一様に照射する方法と、複数の発光部から出射された光をコリメータレンズで略平行にし、測定対象範囲全面にスポット状に照射する方法がある。
【0110】
一般に、一様照射用とスポット照射用の2つの光源を備えた測距装置は、測定対象物で散乱された光による測距誤差を低減する技術として用いられているが、一様照射用およびスポット照射用に2つの光源を備えた測距装置では、この他に、スポット照射により光密度を高めて測距距離を伸ばしつつ、一様照射によりXY解像度の低下を補償することがで
きる。
【0111】
このように、照射パターンの異なる2つの光源を用いることは、測距精度を向上させるうえで有効な技術であるが、一方で、2つの光源を用いることによるコストの増加や、装置の大型化が課題となっている。また、測距装置の製造における2つの光源の相対位置の調整や、経時変化による位置ずれも課題となっている。
【0112】
これに対して、本実施の形態では、スポット照射用の第1発光部110および一様照射用の第2発光部120を有する発光素子11から出射されるレーザビームL110およびレーザビームL120の光路上に、マイクロレンズアレイ12を配置した。マイクロレンズアレイ12は、レンズ部12Aおよび平行平板部12Bを有し、例えば、第1発光部110から出射されたレーザビームL110は平行平板部12Bに、第2発光部120から出射されたレーザビームL120はレンズ部12Aに入射するように配置されている。これにより、レンズ部12Aに入射したレーザビームL120は、レンズ部12Aのレンズ面で屈折してビーム形状が変化し、例えば、マイクロレンズアレイ12内に、仮想発光点P2'が形成される。これにより、第1発光部110および第2発光部120の、それぞれの発光点P1,P2の位置を、光軸方向に相違させることが可能となる。
【0113】
以上により、本実施の形態の照明装置1では、例えば、スポット照射用の第1発光部110および一様照射用の第2発光部120の出射方向に配置された光学部材(例えば、コリメータレンズ13)の位置を各照射態様に応じて機械的に調整する等の調整機構を用いることなく、照射対象物1000に対するスポット照射および一様照射を行うことが可能となる。よって、照明装置1およびこれを備えた測距装置100の小型化を実現することが可能となる。
【0114】
また、本実施の形態では、上記のような調整機構が不要であるため、コストを低減することができる。更に、経時変化による光学部材の位置ずれ等が起こらないため、信頼性を向上させることが可能となる。更に、本実施の形態では、照射態様の切替えを高速に行うことができ、移動物体の距離測定を精度良く行うことが可能となる。
【0115】
更にまた、スポット照射用の照明装置と一様照射用の照明装置とを、別々に有する場合と比較して、本実施の形態では、光源として、複数の発光部を有する面発光半導体レーザを用い、そのうちの一部の発光部をスポット照射用の第1発光部110として、残りの発光部を一様照射用の第2発光部120として用いるようにした。これにより、第1発光部110からなる第1発光部群161と、第2発光部120からなる第2発光部群162の発光の切り替えを行うことにより、照射対象物1000に対するスポット照射および一様照射を任意に切り替えることが可能となる。よって、さらにコストを低減することが可能となる。
【0116】
また、上記のようなスポット照射用の光源および一様照射用の光源の相対位置の調整等が不要となるため、より簡易にスポット照射および一様照射が可能な照明装置を提供することが可能となる。
【0117】
更に、本実施の形態では、スポット照射用の第1発光部110および一様照射用の第2発光部120の発光領域(OA径W1,W2)を、第1発光部110のOA径W1が相対的に小さく、第2発光部120のOA径W2が相対的に大きくなるようにした。これにより、スポット照射用のレーザビームL110をより集光させることが可能となる。また、一様照射時における光強度の均一性および光出力を向上させることが可能となる。
【0118】
さらに、発光素子11の駆動に上述した駆動回路を用いることにより、第1発光部110および第2発光部120を高速変調させることが可能である。第1発光部列Xと第2発光部列Yの配線パターンについても、上記のように磁界が打ち消し合うような電流の向きとなる配線パターンとすることにより、高速変調特性を向上させることができる。
【0119】
次に、本開示の変形例1~6について説明する。以下では、上記実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0120】
<2.変形例>
(2-1.変形例1)
図39は、本開示の変形例1におけるマイクロレンズアレイ12によるビーム成形機能を表したものである。上記実施の形態では、レンズ部12Aが一様照射用の第2発光部120と正対するように、平行平板部12Bがスポット照射用の第1発光部110と正対するように配置した例を示したが、これに限らず、レンズ部12Aがスポット照射用の第1発光部110と正対するように、平行平板部12Bが一様照射用の第2発光部120と正対するように配置するようにしてもよい。このような構成としても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0121】
(2-2.変形例2)
図40Aは、本開示の変形例2におけるマイクロレンズアレイ12の平面構成の一例を模式的に表したものであり、
図40Bは、
図40Aに示したII-II線におけるマイクロレンズアレイ12の断面構成を模式的に表したものである。
図40Aおよび
図40Bに示したマイクロレンズアレイ12は、互いに曲率半径が異なる2種類のマイクロレンズがアレイ状に配置されたものであり、互いに曲率半径が異なる複数のレンズ部12Aと、複数のレンズ部12Cとを有している。
【0122】
上記実施の形態等では、第1発光部110から出射されたレーザビームL110および第2発光部120から出射されたレーザビームL120のうち、一方がレンズ部12Aに、他方が平行平板部12Bに入射する構成を示したがこれに限らない。
【0123】
例えば、
図41に示したように、例えば、一様照射用の第2発光部120がレンズ部12Aと正対するように、スポット照射用の第1発光部110がレンズ部12Cと正対するように配置し、各第1発光部110,120から出射されたレーザビームL110およびレーザビームL120が、それぞれ、レンズ部12Cおよびレンズ部12Aに入射するようにしてもよい。
【0124】
これにより、
図41に示したように、第2発光部120から出射されたレーザビームL120は、レンズ部12Aのレンズ面で屈折され、例えばマイクロレンズアレイ12内に仮想発光点P2'を形成する。第1発光部110から出射されたレーザビームL110は、レンズ部12Cのレンズ面で屈折され、例えば第1発光部110の後方に仮想発光点P1'を形成する。
【0125】
このように、本変形例では、互いに曲率半径が異なる2種類のレンズ部(レンズ部12Aおよびレンズ部12C)を有するマイクロレンズアレイ12を用い、それぞれに、スポット照射用の第1発光部110から出射されるレーザビームL110および一様照射用の第2発光部120から出射されるレーザビームL120を入射させることにより、レーザビームL110およびレーザビームL120両方のビーム形状を成形するようにした。これにより、上記実施の形態の効果に加えて、それぞれの発光点(仮想発光点P1'P2')の位置を、光軸方向にさらに大きく相違させることが可能となる。
【0126】
また、このように、第1発光部110および第2発光部120の仮想発光点P1'P2'の位置を光軸方向にさらに大きく相違させることにより、それぞれから出射されるレーザビームL110,L120が重なる前の位置にマイクロレンズアレイ12を配置することが容易となる。これにより、各レーザビームL110,L120を有効に活用することが容易となり、例えば、一様照射時における光強度の均一性をさらに向上させることが可能となる。
【0127】
(2-3.変形例3)
図42は、本開示の変形例3に係る照明装置(照明装置1A)の概略構成の一例を模式的に表した断面図である。本変形例の照明装置1Aは、第2の光学部材として、回折光学素子(DOE)32を用いた点が上記実施の形態とは異なる。
【0128】
回折光学素子32は、例えば、スポット照射用の第1発光部110および一様照射用の第2発光部120から出射される光(レーザビームL110,レーザビームL120)のうちの少なくとも一方のビーム形状を成形して出射するものである。
図43は、回折光学素子32の平面構成の一例を模式的に表したものであり、例えば、領域32Aに第2発光部120が、領域32Bに第1発光部110が、それぞれ正対するように配置されている。
【0129】
回折光学素子32としては、例えば、領域32Aに、
図44に示したような平面パターンおよび
図45に示したような断面パターンを有するフレネルレンズを用いることができる。なお、領域32Bは、例えば平行平板な領域となっている。回折光学素子32としてフレネルレンズを用いた場合には、第2発光部120から出射されたレーザビームL120は、照射対象物1000に対して、例えば、
図46に示したような照射パターンを形成することができる。
【0130】
また、回折光学素子32としては、例えば、領域32Aに、
図47に示したような断面パターンを有するバイナリレンズを用いることができる。回折光学素子32としてバイナリレンズを用いた場合には、第2発光部120から出射されたレーザビームL120は、+1次光および-1次光が重なることにより、例えば、
図48に示したような照射パターンを形成することができる。
【0131】
更に、回折光学素子32としては、例えば、領域32Aに、
図49Aに示したような平面パターンを有する鞍型レンズに相当するDOEを用いることができる。このDOEでは、
図49Bに示したように、
図49Aに示した平面パターンが隣り合う領域で45°回転して配置されている。回折光学素子32としてこのようなDOEを用いることにより、第2発光部120から出射されたレーザビームL120は、例えば、
図50に示したような照射パターンを形成する。これにより、例えば、光軸方向のずれに対する均一性の低下を改善することが可能となる。
【0132】
以上のように、本変形例では、本開示の第2の光学部材としてフレネルレンズ等の回折光学素子32を用いるようにした。これにより、上記実施の形態のように、本開示の第2の光学部材としてマイクロレンズアレイ12を用い、例えば、一様照射用の第2発光部120から出射されたレーザビームL120を屈折によりビーム形状を成形した場合と比較して、一様照射時における光強度の均一性をさらに向上させることが可能となる。
【0133】
なお、本開示の第2の光学部材としては、上述したマイクロレンズアレイ12およびフレネルレンズのような回折光学素子32の他に、拡散板を用いることができる。第2の光学部材として拡散板を用いた場合には、マイクロレンズアレイ12や回折光学素子32を用いた場合と比較して求められる位置精度が緩和されると共に、コストを低減することが可能となる。
【0134】
(2-4.変形例4)
図51は、本開示の変形例4に係る照明装置(照明装置1B)の概略構成の一例を模式的に表した断面図である。本変形例の照明装置1Bは、第1発光部110および第2発光部120からそれぞれ出射されたレーザビームL110およびレーザビームL120の光路上において、例えばコリメータレンズ13の後段に、回折素子14および回折素子34を配置した点が上記実施の形態とは異なる。
【0135】
回折素子34は、第1発光部110から出射されたレーザビームL110および第2発光部120から出射されたレーザビームL120を分割して出射するものである。回折素子34は、例えば、多数の平行スリットが等間隔で配置された、単純回折格子である。この回折素子34が、本開示の「第3の光学部材」の一具体例に相当する。
【0136】
図52Aは、回折素子34を配置しない場合の、照射対象物1000に対する第1発光部110から出射されたスポット照射用のレーザビームL110の照射パターンを表したものである。
図52Aでは、さらに、ビーム成形未処理のレーザビームL120の照射パターンも示しており、レーザビームL110の照射パターンは実線で、レーザビームL120の照射パターンは点線で表している。
図52Bは、回折素子34を配置した場合の照射対象物1000に照射される、第1発光部110から出射されたレーザビームL110の照射パターンを表したものである。
【0137】
図52Bに示したように、回折素子34を配置することにより、回折素子34を透過したレーザビームL110のうち0次光(110X0)は、回折素子34を配置しない場合のレーザビームL110の照射位置に、+1次光(110X
+1)および-1次光(110X
-1)が、それぞれ、ビーム成形未処理のレーザビームL120の照射位置をスポット照射されるようになる。即ち、回折素子34を配置することで、照射対象物1000に照射される光スポットの数をさらに増やすことが可能となる。また、第2発光部120から出射される一様照射用のレーザビームL120も、スポット照射用のレーザビームL110と同様に回折されるため、その回折光の重なりによって、一様照射時の光強度の均一性をさらに向上させることが可能となる。
【0138】
以上のように、本変形例では、第1発光部110および第2発光部120からそれぞれ出射されたレーザビームL1110,L120の光路上に、さらに回折素子34を配置するようにした。これにより、上記実施の形態等と比較して、照射対象物1000に対して、より光密度の高いスポット照射および一様照射が可能となる。即ち、スポット照射では、より遠くの物体の距離を精度よく測定することが可能となる。一様照射では、より高い解像度で近距離の物体の距離を測定することが可能となる。
【0139】
なお、本変形例では、回折素子14と回折素子34とを別々の部品として構成した例を示したが、1つの光学素子の両面に回折光学面を配置してもよい。また、
図51では、回折素子34を、コリメータレンズ13の後段に配置した例を示したが、回折素子34の配置位置はこれに限定されず、例えば、マイクロレンズアレイ12とコリメータレンズ13との間に配置するようにしてもよい。
【0140】
また、本変形例では、回折素子34として単純回折格子を用いた例を示したが、例えば、より複雑な回折パターンを有する回折光学素子(DOE)を用いてもよい。更に、回折素子34は、例えば、マイクロレンズアレイ12と一体化してもよい。その際には、例えば、スポット照射用のレーザビームL110のみ、または一様照射用のレーザビームL120のみに作用する構成とすることができる。また、スポット照射用のレーザビームL110と一様照射用のレーザビームL120とで、互いに異なる回折パターンを形成することもできる。
【0141】
(2-5.変形例5)
図53は、本開示の変形例5に係る照明装置(照明装置1C)の概略構成の一例を模式的に表した断面図である。本変形例の照明装置1Cは、発光素子31として、裏面出射型の面発光半導体レーザを用いた点が上記実施の形態とは異なる。
【0142】
図54は、照明装置1Cにおける発光素子31の断面構成の一例およびマイクロレンズアレイ12との位置関係を表したものである。発光素子31は、上記のように、裏面出射型の垂直共振器型面発光レーザであり、基板130の裏面(面130S2)側に、スポット照射用および一様照射用の複数の発光部310,320がアレイ状に形成されている。また、基板130の面130S2には、さらに、発光部310に電圧を印加する電極パッド340および発光部320に電圧を印加する電極パッド350が設けられている。この点を除き、発光素子31は、上述した発光素子11と同様の構成を有する。
【0143】
このように、本開示の照明装置では、表面照射型の面発光半導体レーザだけでなく、裏面照射型の面発光半導体レーザも用いることができる。裏面照射型の垂直共振器型面発光レーザを発光素子31として用いることにより、複数の電極パッドの領域を小さくすることが可能となる。また、上記実施の形態と比較して、スポット照射と一様照射との切り替えを容易に行うことが可能となる。
【0144】
更に、本変形例のように、発光素子31として裏面出射型の垂直共振器型面発光レーザを用いる場合には、第2の光学部材と発光素子31とを一体形成することができる。具体的には、例えば、
図55に示したように、発光素子31の基板130の表面(面130S1)の、例えば、一様照射用の複数の発光部320と正対する位置に、例えば、マイクロレンズ42を配置する。これにより、高い位置精度で第2の光学部材を配置することが可能となる。また、別途マイクロレンズアレイ12等の光学部材を配置する場合と比較して、コストを低減することが可能となる。
【0145】
なお、
図55では、第2の光学部材としてマイクロレンズ42を配置した例を示したが、これに限らず、フレネルレンズ等の回折光学素子や拡散板を配置するようにしてもよい。
【0146】
(2-6.変形例6)
図56は、本開示の変形例6における発光素子11の断面構成の他の例を模式的に表したものである。上記実施の形態では、同一平面上にスポット照射用の複数の第1発光部110および一様照射用の複数の第2発光部120を有する発光素子11を用いた例を示したが、各第1発光部110および第2発光部120は、互いに異なる平面上に形成されていてもよい。
【0147】
具体的には、例えば、
図56に示した発光素子11Aのように、第1発光部110および第2発光部120が、基板130の表面(面130S1)に、それぞれから出射されるレーザビームL110およびレーザビームL120の光軸方向(例えば、Z軸方向)に対して異なる高さに設けられていてもよい。
【0148】
また、例えば、
図57に示した発光素子11Bのように、第1発光部110および第2発光部120のうち一方(例えば、第1発光部110)が、基板130の表面(面130S1)側に、他方(例えば、第2発光部120)が基板130の裏面(面130S2)側に設けられていてもよい。即ち、スポット照射用の光部および一様照射用の発光部のうち、一方の発光部は表面出射型の垂直共振器型面発光レーザを、他方の複数の発光部は裏面出射型の垂直共振器型面発光レーザを用いるようにしてもよい。
【0149】
更に、例えば、
図58に示した発光素子11Cのように、例えば、スポット照射用の複数の第1発光部110を有する発光素子11Caおよび一様照射用の複数の第2発光部120を有する発光素子11Cbをそれぞれ設け、これらを積層して用いるようにしてもよい。
【0150】
このように、発光素子11において第1発光部110および第2発光部120に段差を設けることにより、例えば、上記変形例4のように回折素子34を別途配置することなく、一様照射時の光強度の均一性をさらに向上させることが可能となる。
【0151】
以上、実施の形態および変形例1~6を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記変形例1~6を互いに組み合わせてもよく、例えば、裏面出射型の垂直共振器型面発光レーザと、フレネルレンズ等の回折光学素子32とを組み合わせてもよい。また、
図44および
図49では、波長よりも大きな周期を有するDOE(回折光学素子32)を示したが、波長よりも小さなサイズの構造、所謂メタマテリアルを用いてビーム成形機能を持たせてもよい。また、本開示に係る発光素子11は第1発光部群161と第2発光部群162の2つの発光部群を備えるものとしたが、3つ以上の発光部群を備えるものとすることも可能である。
【0152】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【0153】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
複数の第1の発光部および複数の第2の発光部と、上記複数の第1の発光部および上記複数の第2の発光部と接続された下部電極と、上記複数の第1の発光部と接続された第1の上部電極と、上記複数の第2の発光部と接続された第2の上部電極とを備える発光素子と、
上記下部電極と上記第1の上部電極の間を流れる第1の電流と、上記下部電極と上記第2の上部電極の間を流れる第2の電流をそれぞれ規定する駆動回路と
を具備する照明装置。
(2)
上記(1)に記載の照明装置であって、
上記駆動回路は、上記第1の上部電極に電気的に接続され、上記複数の第1の発光部を駆動する第1の駆動部と、上記第2の上部電極に電気的に接続され、上記複数の第2の発光部を駆動する第2の駆動部とを含む
照明装置。
(3)
上記(1)に記載の照明装置であって、
上記駆動回路は、上記第下部電極に接続され、上記複数の第1の発光部および上記複数の第2の発光部を駆動する駆動部を含む
照明装置。
(4)
上記(1)から(3)のうちいずれか1つに記載の照明装置であって、
上記発光素子は、上記複数の第1の発光部が上記第1の上部電極と接触する第1の配線によって接続された第1の発光部列を複数含む第1の発光部群と、上記複数の第2の発光部が上記第2の上部電極と接触する第2の配線によって接続された第2の発光部列を複数含む第2の発光部群とを有し、
上記第1の発光部列を流れる電流の向きは、上記複数の第1の発光部列の間で異なり
上記第2の発光部列を流れる電流の向きは、上記複数の第2の発光部列の間で異なる
照明装置。
(5)
上記(4)に記載の照明装置であって、
上記第1の発光部列と上記第2の発光部列は平行であり、上記第1の発光部列と上記第2の発光部列が交互となるように配列され、
上記第1の発光部群は、第1の方向に電流が流れる第1の発光部列と、上記第2の発光部列を介して上記第1の発光部列に隣接し、上記第1の方向とは反対方向である第2の方向に電流が流れる第1の発光部列を含み、
上記第2の発光部群は、上記第1の方向に電流が流れる第2の発光部列と、上記第1の発光部列を介して上記第2の発光部列に隣接し、上記第2の方向に電流が流れる第2の発光部列を含む
照明装置。
(6)
上記(1)から(5)のうちいずれか1つに記載の照明装置であって、
て、
上記複数の第1の発光部および上記複数の第2の発光部は垂直共振器型面発光レーザ素子である
照明装置。
(7)
上記(1)から(6)のうちいずれか1つに記載の照明装置であって、
上記複数の第1の発光部から出射された複数の第1の光および上記複数の第2の発光部から出射された複数の第2の光をそれぞれ略平行にして出射する第1の光学部材と、
上記複数の第1の光および上記複数の第2の光のうちの少なくとも一方のビーム形状を成形し、互いに異なるビーム形状を有する光として、上記複数の第1の光および上記複数の第2の光を出射する第2の光学部材と
をさらに具備する照明装置。
(8)
上記(7)に記載の照明装置であって、
上記複数の第1の発光部から出射された上記複数の第1の光は、照射対象物に対して互いに独立したスポット状に照射され、
上記複数の第2の発光部から出射された上記複数の第2の光は、上記照射対象物に対して、一部が隣り合う第2の発光部から出射された第2の光と重畳し、所定の範囲を略一様に照射する
照明装置。
(9)
上記(7)又は(8)に記載の照明装置であって、
上記複数の第1の発光部と上記複数の第2の発光部とは、互いに異なる発光面積を有する
照明装置。
(10)
上記(7)又は(8)に記載の照明装置であって、
上記複数の第1の発光部の発光面積は、上記複数の第2の発光部の発光面積よりも小さい
照明装置。
(11)
上記(7)から(10)のうちいずれか1つに記載の照明装置であって、
上記第1の光学部材は、コリメータレンズである
照明装置。
(12)
上記(7)から(11)のうちいずれか1つに記載の照明装置であって、
上記第2の光学部材は、マイクロレンズアレイである
照明装置。
(13)
上記(12)に記載の照明装置であって、
上記マイクロレンズアレイは、互いに曲率半径が異なる2種類のレンズを有する
照明装置。
(14)
上記(7)から(11)のうちいずれか1つに記載の照明装置であって、
上記第2の光学部材は、回折光学素子である
照明装置。
(15)
上記(14)に記載の照明装置であって、
上記回折光学素子は、フレネルレンズまたはバイナリレンズである
照明装置。
(16)
上記(8)から(15)に記載の照明装置であって、
上記複数の第1の光および上記複数の第2の光の光路上に配置され、上記複数の第1の光を屈折または回折することで上記照射対象物に照射されるスポットの数を増やすと共に、上記複数の第2の光を屈折または回折することで、隣り合う上記第2の発光部から出射された上記第2の光との重畳範囲を増やす第3の光学部材をさらに有する
照明装置。
(17)
複数の第1の発光部および複数の第2の発光部と、上記複数の第1の発光部および上記複数の第2の発光部と接続された下部電極と、上記複数の第1の発光部と接続された第1の上部電極と、上記複数の第2の発光部と接続された第2の上部電極とを備える発光素子と、
上記下部電極と上記第1の上部電極の間を流れる第1の電流と、上記下部電極と上記第2の上部電極の間を流れる第2の電流をそれぞれ規定する駆動回路と
上記複数の第1の発光部から出射された複数の第1の光および上記複数の第2の発光部から出射された複数の第2の光をそれぞれ略平行にして出射する第1の光学部材と、
上記複数の第2の発光部から出射された上記複数の第2の光のビーム形状を成形して出射する第2の光学部材と
を具備する照明装置。
(18)
物体に対して光を出射する照明装置と、上記物体からの反射光の受光を検出する受光部と、上記反射光の受光までに要する時間に基づいて、上記物体までの距離を測定する測距部とを具備し、
上記照明装置は、発光素子と駆動回路とを備え、
上記発光素子は、複数の第1の発光部および複数の第2の発光部と、上記複数の第1の発光部および上記複数の第2の発光部と接続された下部電極と、上記複数の第1の発光部と接続された第1の上部電極と、上記複数の第2の発光部と接続された第2の上部電極とを備え、
上記駆動回路は、上記下部電極と上記第1の上部電極の間を流れる第1の電流と、上記下部電極と上記第2の上部電極の間を流れる第2の電流をそれぞれ規定する
測距装置。
【符号の説明】
【0154】
1…照明装置
11…発光素子
12…マイクロレンズアレイ
13…コリメータレンズ
14…回折素子
16…コンタクト層
17…メサ部
100…測距装置
110…第1発光部
120…第2発光部
130…基板
140…半導体層
151…上部電極
151A…第1上部電極
151B…第2上部電極
152…下部電極
161…第1発光部群
162…第2発光部群
210…受光部
220…制御部
230…測距部
260、263、264、265、266、267…駆動部