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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182878
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 5/04 20060101AFI20231220BHJP
   F16K 27/06 20060101ALI20231220BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
F16K5/04 C
F16K5/04 A
F16K27/06 B
F01P7/16 502B
F01P7/16 502F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192305
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍太
【テーマコード(参考)】
3H051
3H054
【Fターム(参考)】
3H051AA06
3H051CC15
3H051CC16
3H054AA02
3H054BB22
3H054CB16
3H054CB34
3H054CE01
3H054GG02
(57)【要約】
【課題】弁体の摩擦抵抗の増大を抑制することができる弁装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る弁装置CVは、弁体3を回転可能に収容するハウジング1の外部に支持部材としての第1配管L1が取り付けられ、この第1配管L1に支持された付勢部材としての第1スプリングSP1によって筒状の第1シール部材S1が弁体3に摺接可能に設けられていて、第1シール部材S1における弁体3との摺接面S11に、少なくとも弁体3の回転方向において貫通孔S10を挟むように凹部S14が形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体収容部に開口する第1連通路と、前記第1連通路とは別の位置において前記弁体収容部に開口する第2連通路と、を有するハウジングと、
前記弁体収容部に回転可能に収容され、回転位相に応じて前記第1連通路と前記第2連通路との接続状態を変化させる弁体と、
前記第2連通路の内部に配置された付勢部材と、
前記第2連通路の内部において前記付勢部材により前記弁体に向かって付勢されたシール部材であって、前記弁体の外周面と摺接する摺接面と、前記摺接面に開口する貫通孔と、前記弁体の回転方向において前記貫通孔を挟むようにして前記摺接面に設けられ、前記付勢部材側へ向かって凹む凹部と、を有するシール部材と、
を備えたことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、
前記凹部は、前記貫通孔を囲むように環状に形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項2に記載の弁装置において、
前記弁装置は、前記第1連通路から流入した流体の前記第2連通路からの排出、又は前記第2連通路から流入した流体の前記第1連通路からの排出を制御するものであり、
前記摺接面は、前記弁体の回転方向において、前記貫通孔の中心を通る断面で見たとき、前記摺接面の外周縁と前記凹部との間に形成された外周側シール部と、前記摺接面の内周縁と前記凹部との間に形成された内周側シール部と、を有し、前記外周側シール部のシール幅と前記内周側シール部のシール幅とが異なることを特徴とする弁装置。
【請求項4】
請求項2に記載の弁装置において、
前記弁装置は、前記第1連通路から流入した流体の前記第2連通路からの排出を制御するものであり、
前記摺接面は、前記弁体の回転方向において、前記貫通孔の中心を通る断面で見たとき、前記摺接面の外周縁と前記凹部との間に形成された外周側シール部と、前記摺接面の内周縁と前記凹部との間に形成された内周側シール部と、を有し、前記外周側シール部のシール幅が前記内周側シール部のシール幅よりも大きいことを特徴とする弁装置。
【請求項5】
請求項2に記載の弁装置において、
前記弁装置は、前記第2連通路から流入した流体の前記第1連通路からの排出を制御するものであり、
前記摺接面は、前記弁体の回転方向において、前記貫通孔の中心を通る断面で見たとき、前記摺接面の外周縁と前記凹部との間に形成された外周側シール部と、前記摺接面の内周縁と前記凹部との間に形成された内周側シール部と、を有し、前記内周側シール部のシール幅が前記外周側シール部のシール幅よりも大きいことを特徴とする弁装置。
【請求項6】
請求項4に記載の弁装置において、
前記シール部材は、前記シール部材の外周面に開口する環状のシール溝と、前記シール溝と前記第2連通路の間に設けられたリング部材と、を有することを特徴とする弁装置。
【請求項7】
請求項6に記載の弁装置において、
前記リング部材は、Xリングであることを特徴とする弁装置。
【請求項8】
請求項1に記載の弁装置において、
前記凹部は、前記貫通孔を挟むように一対設けられ、それぞれ円弧状に形成されたことを特徴とする弁装置。
【請求項9】
請求項8に記載の弁装置において、
前記円弧状に形成された前記凹部の弦長が、前記貫通孔の直径よりも大きいことを特徴とする弁装置。
【請求項10】
請求項1に記載の弁装置において、
前記弁装置は、内燃機関の冷却回路を通流する流体の流れを制御するものであり、
前記凹部は、相互に離間した状態で複数設けられ、それぞれ前記流体に混入したコンタミネーションよりも大きく形成されていて、該コンタミネーションを収容可能に形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項11】
請求項1に記載の弁装置において、
前記ハウジングの外部に接続され、前記付勢部材を支持する支持部材を有し、
前記支持部材は、樹脂材料によって形成されていることを特徴とする弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の弁装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この弁装置は、相互に異なる位置に開口する第1、第2連通路が設けられた筒状のハウジングと、このハウジングの内部に回転可能に収容され、回転位相に応じて第1連通路と第2連通路との接続状態を変化させる弁体と、を有する。そして、第1、第2連通路のうち出口側となる第2連通路には、筒状の配管が接続されていて、この配管と弁体との間には、当該配管に支持された付勢部材により弁体に向けて付勢された筒状のシール部材が、弁体の外周面に摺接可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-232454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の弁装置によれば、シール部材によるシール性を向上させるべく付勢部材の付勢力を高めると、シール部材が摺接する弁体の摩擦抵抗が大きくなってしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、かかる技術的課題に鑑みて案出されたものであって、弁体の摩擦抵抗の増大を抑制することができる弁装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その一態様として、弁体を回転可能に収容するハウジングの外部に取り付けられた支持部材を有し、前記支持部材に支持された付勢部材により筒状のシール部材が前記弁体に摺接可能に設けられていて、前記シール部材における前記弁体との摺接面に、前記弁体の回転方向において前記摺接面に開口する貫通孔を挟むようにして凹部が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弁体の摩擦抵抗の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る弁装置が適用される自動車用冷却水の循環回路の構成を表したブロック図である。
図2】本発明に係る弁装置が適用される自動車用冷却水の循環回路の他の構成を表したブロック図である。
図3】本発明に係る弁装置の分解斜視図である。
図4図3に示す弁装置の縦断面図である。
図5】本発明の第1実施形態を表した図4のA-A線断面図である。
図6図4の要部拡大図である。
図7】(a)は図6に示すシール部材の平面図であり、(b)は同図(a)のB-B線断面図である。
図8】本発明の第1実施形態の第1変形例に係るシール部材を示し、(a)は当該シール部材の平面図であり、(b)は同図(a)のC-C線断面図である。
図9】本発明の第1実施形態の第2変形例に係るシール部材を示し、(a)は当該シール部材の平面図であり、(b)は同図(a)のD-D線断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係るシール部材を示し、(a)は当該シール部材の平面図であり、(b)は同図(a)のE-E線断面図である。
図11】本発明の第3実施形態に係るシール部材を示し、(a)は当該シール部材の平面図であり、(b)は同図(a)のF-F線断面図である。
図12】本発明の第3実施形態の変形例に係るシール部材を示し、(a)は当該シール部材の平面図であり、(b)は同図(a)のG-G線断面図である。
図13】本発明の第4実施形態に係るシール部材を示し、(a)は当該シール部材の平面図であり、(b)は同図(a)のH-H線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る弁装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、下記の実施形態では、本発明に係る弁装置を従来と同様の自動車用冷却水(以下、単に「冷却水」と略称する。)の循環系に適用したものを例に説明する。
【0011】
(冷却水の循環回路の構成)
図1は、本発明に係る弁装置CVが適用される冷却水の循環回路の構成を表したブロック図を示している。また、図2は、図1に示す循環回路の変形例を表したブロック図を示している。
【0012】
弁装置CVは、エンジンEG(具体的には図示外のシリンダヘッド)の側部に配置される。そして、この弁装置CVは、図1に示すように、ヒータHTと、オイルクーラOCと、ラジエータRDとの間に配置されている。ヒータHTは、図示外のエアコンの温風を作り出すために熱交換を行う暖房熱交換器である。オイルクーラOCは、エンジンEG内部の摺動部分を潤滑するためのオイルを冷却する。ラジエータRDは、エンジンEGの冷却に供する冷却水を冷却する。
【0013】
ここで、図中の符号WPは、冷却水の循環に供するウォータポンプである。また、符号WTは、弁装置CVの駆動制御に供する水温センサであって、当該水温センサWTの検出結果に応じて電子コントローラCUの制御電流に基づき弁装置CVが駆動制御される。また、符号TCは、エンジンEGの内部で燃焼される燃料と混合される空気の流量を制御するスロットルチャンバーである。
【0014】
具体的には、ウォータポンプWPから吐出された冷却水が、導入通路L0を通じて弁装置CVへと導かれる。そして、水温センサWTによる検出結果などエンジンEGの運転状態に基づき、電子コントローラCUによって弁装置CVの弁体3が駆動制御される。これにより、導入通路L0を介して弁装置CVに導かれた冷却水が、第1~第3配管L1~L3を介して、ヒータHT、オイルクーラOC及びラジエータRDにそれぞれ分配される。
【0015】
また、弁装置CVには、導入通路L0をバイパスすることによって冷却水をエンジンEGからスロットルチャンバーTCへと直接導くためのバイパス通路BLが設けられている。このバイパス通路BLは、導入通路L0を介して弁装置CVに導かれた冷却水を、スロットルチャンバーTCに常時供給する。
【0016】
このように、弁装置CVは、いわゆる1in-3Out形式の分配デバイスとして適用され、導入通路L0より流入した冷却水を第1~第3配管L1~L3に分配すると共に、当該分配時の冷却水の流量を制御する。
【0017】
なお、本実施形態では、自動車の機関の一態様として、内燃機関であるエンジンEGを例示しているが、当該機関には、エンジンEGのみならず、例えばモータや燃料電池など、エネルギを動力に変換するあらゆる装置が含まれる。
【0018】
図2は、本発明に係る弁装置CVが適用される冷却水の循環回路の他の構成を表したブロック図を示している。
【0019】
弁装置CVは、図1に示す形式のほか、例えば図2に示すように、ウォータポンプWPの直前に配置され、いわゆる3in-1Out形式の集合デバイスとして適用することも可能である。すなわち、このような集合デバイスとして用いる場合は、弁装置CVは、第1~第3配管L1~L3より流入する冷却水を集合し、排出通路L4を通じてエンジンEG側へ還流すると共に、当該集合時の冷却水の流量を制御する。
【0020】
(弁装置の構成)
図3は、本発明に係る弁装置CVの分解斜視図を示している。なお、本図の説明では、回転軸2の回転軸線Zに平行な方向を「軸方向」、回転軸2の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸2の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、前記「軸方向」については、図3の上方を「一端側」、下方を「他端側」として説明する。
【0021】
図3に示すように、弁装置CVは、ハウジング1の内部において回転軸2を介して回転可能に支持された筒状の弁体3と、ハウジング1に収容され、弁体3を回転駆動する電動モータ4と、ハウジング1に収容され、電動モータ4の回転を減速して伝達する減速機構5と、を有する。
【0022】
ハウジング1は、軸方向に2分割に形成されていて、弁体3及び電動モータ4を収容する第1ハウジング11と、第1ハウジング11の一端側の開口部を閉塞するように設けられ、減速機構5を収容する第2ハウジング12と、から構成される。第1ハウジング11と第2ハウジング12は、共に合成樹脂材料、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂によって成形されていて、複数のボルト13により固定されている。
【0023】
第1ハウジング11は、弁体3を収容する中空円筒状の弁体収容部111と、弁体収容部111に並列して付設され、電動モータ4のモータ本体41を収容する中空円筒状のモータ収容部112と、を有する。そして、この第1ハウジング11は、後述するフランジ部114を介して図示外のシリンダブロックに、図示外の固定手段、例えば複数のボルトにより固定される。
【0024】
弁体収容部111は、軸方向の一端側が端壁113により閉塞され、他端側が開口形成される。弁体収容部111の軸方向の他端部には、第1ハウジング11の図示外のシリンダブロックへの取り付けに供するフランジ部114が、径方向の外側へ延びるように設けられている。また、弁体収容部111の端壁113には、有蓋円筒状のボス部115が、第2ハウジング12側へ突出形成されている。ボス部115の端壁には、回転軸2が貫通する軸貫通孔116が貫通形成されている。また、弁体収容部111の端壁113には、減速機構5の支持軸51,52の軸受けに供する平板状の1対の軸受部117,117が、直立状に一体に形成されている。1対の軸受部117,117には、それぞれ支持軸51,52を回転可能に支持する軸受孔117a,117aが貫通形成されている。
【0025】
また、第1ハウジング11には、弁体収容部111の側壁(周壁)に、弁体収容部111と第1ハウジング11の外部とを連通する第1~第3排出口E1~E3が開口形成されている。また、第1~第3排出口E1~E3の外側端部には、ヒータHT、オイルクーラOC及びラジエータRD(図1参照)に接続される第1~第3配管L1~L3が取り付けられると共に、第4排出口E4の外側端部には、スロットルチャンバーTC(図1参照)に接続される第4配管L4が取り付けられている。なお、第1~第4配管L1~L4は、いずれも複数のスクリュSWによって第1ハウジング11に固定されている。
【0026】
第2ハウジング12は、弁体収容部111とモータ収容部112とに跨って当該弁体収容部111及びモータ収容部112を被覆可能に開口する有底筒状に形成されている。そして、この第2ハウジング12が、弁体収容部111及びモータ収容部112を覆うように第1ハウジング11に取り付けられることで、第2ハウジング12の内部空間によって、減速機構5を収容する減速機構収容部121が形成される。また、第2ハウジング12の側部には、図示外の電子コントローラとの接続に供するコネクタ接続部120が一体に設けられていて、このコネクタ接続部120を介して、電動モータ4と前記図示外の電子コントローラとが電気的に接続される。
【0027】
電動モータ4は、出力軸42が第2ハウジング12側へ臨むかたちでモータ本体41がモータ収容部112内に収容される。そして、この電動モータ4は、モータ本体41の出力軸42側の端部に径方向の外側へと延びるように設けられたフランジ部43を介して、モータ収容部112の開口縁部に複数のボルト44により固定される。なお、電動モータ4は、図示しない車載の電子コントローラによって制御され、車両の運転状態に応じて弁体3を回転駆動することで、ラジエータRD等(図1参照)に対する冷却水の適切な分配が実現される。
【0028】
減速機構5は、2組の食い違い歯車である第1歯車G1及び第2歯車G2により構成された駆動機構である。第1歯車G1は、電動モータ4の出力軸42と同軸上に設けられ、出力軸42と一体となって回転する第1ねじ歯車WG1と、電動モータ4の出力軸42と直交するように配置される第1支持軸51によって回転支持され、第1ねじ歯車WG1と噛み合う第1斜歯歯車HG1と、で構成される。第2歯車G2は、第2支持軸52によって回転支持され、第1斜歯歯車HG1と一体となって回転する第2ねじ歯車WG2と、回転軸2に固定され、第2ねじ歯車WG2と噛み合う第2斜歯歯車HG2と、で構成される。ここで、第1斜歯歯車HG1と第2斜歯歯車HG2とは、筒状の両歯車HG1,HG2が直列状に並んで一体に構成された複合歯車部材であって、この複合歯車部材の両端部に挿入される第1、第2支持軸51,52を介して、第1ハウジング11の1対の軸受部117,117に回転支持される。このような構成から、電動モータ4の出力軸42から出力された回転駆動力が、第1歯車G1及び第2歯車G2を介して2段階に減速されて弁体3へと伝達される。
【0029】
図4は、弁装置CVを回転軸2の回転軸線Zに沿って切断した弁装置CVの断面図を示している。また、図5は、図4のA-A線に沿って切断した弁装置CVの断面図を示し、(a)は開弁状態、(b)は閉弁状態を示している。なお、本図の説明では、回転軸2の回転軸線Zに平行な方向を「軸方向」、回転軸2の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、そして回転軸2の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、前記「軸方向」については、図4の上方を「一端側」、下方を「他端側」として説明する。
【0030】
図4に示すように、第1ハウジング11には、軸方向の一端側が端壁113により閉塞され、かつ他端側が外部に開口する有底円筒状の弁体収容部111が形成されている。また、弁体収容部111の端壁113に設けられたボス部115には、回転軸2が貫通する軸貫通孔116が、弁体収容部111と後述の減速機構収容部121とを連通するように、軸方向に沿って形成されている。また、第1ハウジング11には、弁体収容部111に隣接するかたちで、内部に電動モータ4のモータ本体41を収容する有底円筒状のモータ収容部112が、軸方向の一端側に向けて開口形成されている(図3参照)。
【0031】
また、第1ハウジング11の一端側に取り付けられる第2ハウジング12は、軸方向の一端側が底壁122により閉塞され、かつ端壁113と対向する他端側が開口する有底筒状に形成されている。すなわち、第1ハウジング11の軸方向の一端側を閉塞するように第2ハウジング12が被せられることで、第2ハウジング12の内部空間に減速機構収容部121が形成され、この減速機構収容部121に減速機構5が収容されている。
【0032】
また、第1ハウジング11は、弁体収容部111の軸方向の他端部の外周縁に設けられたフランジ部114を介して、図示外のシリンダヘッドの側部に、図示外の固定手段、例えば複数のボルトによって固定される。また、フランジ部114の内周側には、図示外のシリンダブロックの内部と連通してシリンダブロック側から冷却水を導入する、本発明の第1連通路に相当する導入口E0が開口形成されている。すなわち、弁装置CVが図示外のシリンダブロックに取り付けられた状態で、この導入口E0が前記シリンダブロック側の開口部と連通し、当該導入口E0を介してシリンダブロック側から弁体収容部111に冷却水が導入されるようになっている。
【0033】
また、弁体収容部111の周壁には、外部と弁体収容部111を連通する横断面ほぼ円形状の複数の貫通孔が、第1~第3排出口E1~E3として形成されていて、これら各排出口E1~E3に、対応する第1~第3配管L1~L3が接続されている。第1排出口E1は、第1配管L1を介して、例えばヒータHTに接続される。第2排出口E2は、第2配管L2を介して、例えばオイルクーラOCに接続される。第3排出口E3は、第3配管L3を介して、例えばラジエータRDに接続される。
【0034】
ここで、第1~第3排出口E1~E3は、それぞれ第1ハウジング11の周壁上において異なる軸方向位置であって、かつ後述する第1~第3シール部材S1~S3が弁体3上においてそれぞれ隣接する軸方向位置に配置される第1~第3開口部M1~M3とオーバーラップ可能な軸方向間隔で配置されている。また、第1~第3排出口E1~E3は、それぞれ第1ハウジング11の周壁上において異なる周方向位置、具体的には、概ね90°ずつ位相をずらした位置に配置されている(図4参照)。
【0035】
また、第1~第3排出口E1~E3の内周側には、当該各排出口E1~E3と弁体3との間を液密にシールするシール機構が設けられている。このシール機構は、合成樹脂材料からなる円筒状の第1~第3シール部材S1~S3と、これら第1~第3シール部材S1~S3を弁体3側へ付勢する金属製の第1~第3スプリングSP1~SP3と、から構成される。また、第1~第3シール部材S1~S3の外周側には、第1~第3排出口E1~E3と摺接可能な第1~第3シールリングSR1~SR3が取り付けられている。
【0036】
第1~第3シール部材S1~S3は、所定のフッ素樹脂(本実施形態では、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン))により形成され、第1~第3排出口E1~E3の内周側に収容されて、それぞれ弁体3側へ向けて進退移動可能に設けられている。そして、この第1~第3シール部材S1~S3は、軸方向の両端が開口するほぼ円筒状を呈し、内周側には、それぞれの中心軸線に沿って貫通する横断面ほぼ円形の貫通孔S10,S20,S30(図示の関係上、S20は省略している。)が設けられている。また、第1~第3シール部材S1~S3は、弁体3と摺接する摺接面S11,S21,S31が、図5に示すように、弁体3の外周面に対応した曲率を有する円弧状の曲面によって構成され、当該弁体3の外周面に密着して摺接可能となっている。
【0037】
第1~第3スプリングSP1~SP3は、第1~第3シール部材S1~S3を所定の付勢力によって付勢可能な付勢部材であって、一例として、いずれも横断面が概ね矩形を成す巻線によって構成された金属製の板ばねである。なお、この第1~第3スプリングSP1~SP3は、上述した金属製の板ばねに限定されず、第1~第3シール部材S1~S3を所定の付勢力によって付勢可能な付勢部材として機能すれば、材質(例えば樹脂材料)及び形態(例えばコイルばね)は任意に変更可能である。
【0038】
そして、第1~第3スプリングSP1~SP3は、伸縮方向の一端が、付勢対象である第1~第3シール部材S1~S3の摺接面S11,S21,S31と反対側の端面である着座面S12,S22,S32に着座し、他端は、支持部材として機能する第1~第3配管L1~L3のうち第1~第3排出口E1~E3に挿入されて接続される接続端部L11,L21,L31側の端面である支持面L12,L22,L32に着座する。すなわち、第1~第3スプリングSP1~SP3は、第1~第3シール部材S1~S3の着座面S12,S22,S32と第1~第3配管L1~L3の支持面L12,L22,L32との間に所定の予圧(セット荷重)をもって配置され、それぞれの予圧(セット荷重)に基づいてシール部材S1~S3を弁体3側へ常時付勢する。
【0039】
第1~第3シールリングSR1~SR3は、横断面がX字状を成すいわゆるXリングであり、第1~第3シール部材S1~S3の外周側に開口形成された環状溝である第1~第3シール溝S13,S23,S33に嵌め込まれている。すなわち、第1~第3シールリングSR1~SR3が第1~第3シール溝S13,S23,S33と第1~第3排出口E1~E3の内周面とに弾性的に当接することにより、第1~第3シール部材S1~S3と第1~第3排出口E1~E3との間が液密にシールされている。
【0040】
回転軸2は、概ね一定の外径を有する棒状を呈し、軸貫通孔116を貫通し、弁体収容部111と減速機構収容部121とに跨って配置されていて、ボス部115の内周側に配置された軸受B1によって回転可能に支持される。また、回転軸2と軸貫通孔116の間は、環状のシール部材20により液密にシールされている。すなわち、このシール部材20により、軸貫通孔116を通じた弁体収容部111内を流れる冷却水の減速機構収容部121側への流出が抑制されている。さらに、シール部材21と軸受B1の間には、ダストシール22が配置されている。すなわち、このダストシール22により、減速機構収容部121内の粉塵の弁体収容部111側への侵入が抑制されている。これにより、軸貫通孔116とシール部材21との間における粉塵の噛み込みが抑制され、シール部材21が保護されている。
【0041】
弁体3は、所定の硬質樹脂材料によって形成され、一定の外径を有する有底円筒状を呈し、他端側の開口部である導入部M0が導入口E0側へ臨むように設けられることで、内周側に形成される内部通路118に冷却水を導入可能となっている。そして、この弁体3は、軸方向の一端部が、当該一端部の内周側に埋設された金属製のインサート部材30を介して回転軸2に圧入固定される一方、導入口E0側へと臨む他端部が、導入口E0の内周側に保持される軸受B2によって回転可能に支持されている。
【0042】
また、弁体3の周壁には、第1ハウジング11の第1~第3排出口E1~E3に対応する軸方向位置に、所定の回転位置(位相)において第1~第3排出口E1~E3と連通可能な第1~第3開口部M1~M3が、それぞれ径方向に沿って貫通形成されている。なお、第1~第3開口部M1~M3については、例えば真円や周方向に延びる長円など、弁体3の制御内容に応じた形状や数量に設定されている。
【0043】
以上のように構成された弁装置CVは、第1開口部M1と第1排出口E1の少なくとも一部が重なる周方向位置に弁体3が制御されることによって、第1排出口E1を介してヒータHTに冷却水を分配する。同様に、弁装置CVは、第2開口部M2と第2排出口E2の少なくとも一部が重なる周方向位置に弁体3が制御されることによって、第2排出口E2を介してオイルクーラOCに冷却水を分配する。また、同様に、弁装置CVは、第3開口部M3と第3排出口E3の少なくとも一部が重なる周方向位置に弁体3が制御されることによって、第3排出口E3(第3配管L3)を介してラジエータRDに冷却水を分配する。そして、この冷却水の分配に際し、第1~第3開口部M1~M3と第1~第3排出口E1~E3との重なり具合(重なり合う面積)が変化することで、当該分配時の冷却水の流量が変化する。
【0044】
〔第1実施形態〕
(シール機構の構成)
図6は、図5に示す第1シール部材S1の近傍を拡大して表示した、図5の要部拡大図を示している。また、図7は、図6に示す第1シール部材S1を単体で表示したものであり、(a)は平面図、(b)は同図(a)に示すB-B線に沿って切断した断面図を示している。なお、前記第1~第3シール部材S1~S3は、いずれも大きさ違いで同一の形状を有するものであることから、本実施形態では、便宜上、図6図7に基づき第1シール部材S1についてのみ説明し、第2、第3シール部材S2,S3については具体的な説明を省略する。また、各図の説明では、第1シール部材S1の中心軸線Pに平行な方向を「軸方向」、第1シール部材S1の中心軸線Pに直交する方向を「径方向」、そして第1シール部材S1の中心軸線P周りの方向を「周方向」として説明する。
【0045】
図6図7に示すように、第1シール部材S1は、フッ素樹脂、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)によって、軸方向の両端が開口するほぼ円筒状に形成されていて、内周側に、中心軸線Pに沿って貫通する横断面ほぼ円形の貫通孔S10が貫通形成されている。すなわち、この貫通孔S10が弁体3の第1開口部M1と重なり合うことにより、弁体3の内部通路18を通流する冷却水が、弁体3の第1開口部M1と第1シール部材S1の貫通孔S10とを通じて第1配管L1から排出される。
【0046】
また、第1シール部材S1の軸方向中間位置の外周面には、第1シール部材S1の径方向外側に開口する断面凹状をなす環状の第1シール溝S13が、周方向に沿って連続して形成されていて、この第1シール溝S13に対し、第1シールリングSR1を外周側から嵌め込むことが可能となっている。すなわち、当該第1シール溝S13に第1シールリングSR1が嵌め込まれた状態で第1シール部材S1が第1排出口E1に挿入されることで、第1シールリングSR1が第1シール溝S13の内面と第1排出口E1の内周面とに弾性的に当接し、当該第1シールリングSR1により、第1シール部材S1と第1排出口E1との間が液密にシールされる。
【0047】
また、第1シール部材S1の軸方向端面のうち、弁体3と対向する側の端面には、弁体3の外周面に沿って湾曲してなる曲面状の摺接面S11が形成されている。この摺接面S11は、図6に示すような弁体3の軸方向に沿って切断した断面が、弁体3の軸方向の外周面に沿う直線状の断面となり、図5に示すような弁体3の径方向に沿って切断した断面が、弁体の周方向の外周面に沿う円弧状の断面となる、曲面状に形成されている。
【0048】
一方、第1シール部材S1の軸方向端面のうち、第1配管L1と対向する側の端面には、第1スプリングSP1の軸方向の一端が着座可能な平坦状の着座面S12が形成されている。同様に、第1配管L1の第1スプリングSP1と対向する接続端部L11の端面には、第1スプリングSP1の軸方向の他端が着座可能な平坦状をなし、第1シール部材S1の着座面S12と平行な支持面L12が形成されている。かかる構成により、第1スプリングSP1の付勢力が、着座面S12及び支持面L12に直交する第1シール部材S1の軸方向に沿って作用し、当該第1シール部材S1を弁体3の径方向に沿って付勢可能となっている。
【0049】
また、第1シール部材S1の摺接面S11には、径方向の中間位置に、弁体3から離間する側(第1スプリングSP1側)へ凹む断面凹状の凹部S14が、貫通孔S10を囲むように、当該摺接面S11の周方向に沿って連続する環状に形成されている。なお、本実施形態では、この凹部S14は、摺接面S11の径方向中央位置に設けられている。換言すれば、第1シール部材S1の摺接面S11の径方向において、当該摺接面S11の外周縁と凹部S14の外周縁との間に形成された外周側シール部S15のシール幅WAと、当該摺接面S11の内周縁と凹部S14の内周縁との間に形成された内周側シール部S16のシール幅WBとが概ね等しくなるように構成されている。
【0050】
また、本実施形態では、第1シール部材S1の凹部S14について、断面が概ね矩形凹状となる形態を例示して説明したが、当該凹部S14の断面形状については、第1シール部材S1の仕様等(例えば摺接面S11の面圧や、第1シール部材S1の生産性等)に応じて任意に変更可能であって、特定の断面に限定されるものではない。
【0051】
(本実施形態の作用効果)
従来の弁装置においては、例えば第1シール部材S1によるシール性を向上させるべく第1スプリングSP1の付勢力を高めた場合、第1シール部材S1が摺接する弁体3の摩擦抵抗(フリクション)が増大してしまい、電動モータ4の駆動トルクの増大や、これに伴う減速機構5の第1、第2歯車G1,G2の摩耗を招来してしまうおそれがあった。
【0052】
特に、本実施形態のように、第1シール部材S1のシール性を高めるために金属製の第1スプリングSP1を用いる場合には、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間の摩擦抵抗(フリクション)が過大となってしまうおそれがあった。
【0053】
また、本実施形態のように、支持部材として機能する第1配管L1を例えば樹脂材料など、金属材料に対して相対的に剛性の低い材質で構成する場合には、金属製の第1スプリングSP1のばね力に基づき、第1配管L1の変形を招来してしまうおそれがあった。
【0054】
また、前記弁装置では、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間に異物(コンタミネーション)、いわゆるコンタミがかみ込んでしまう場合がある。この場合、弁体3の回転に伴い当該コンタミが弁体3に引きずられて第1シール部材S1を径方向に横断移動する結果、摺接面S11において、弁体3の回転方向に沿って傷が形成されてしまう。すなわち、この傷によって摺接面S11の内外周が連通してしまい、第1シール部材S1のシール性が低下してしまうおそれがあった。なお、前記コンタミの例としては、例えばエンジンのシリンダブロック(図示外)の鋳造時に用いた砂中子の砂や、前記シリンダブロックの加工時に発生した切粉、エンジン駆動に伴い発生する前記シリンダブロック等の摩耗粉、樹脂材料、冷却水に含まれる漏れ止め剤などがある。
【0055】
これに対して、本実施形態に係る弁装置CVでは、以下の効果が奏せられることにより、前記従来の弁装置の課題を解決することができる。
【0056】
すなわち、前記弁装置CVは、弁体収容部111に開口する第1連通路(本実施形態では、導入口E0)と、導入口E0とは別の位置において弁体収容部111に開口する第2連通路(本実施形態では、例えば第1排出口E1)と、を有するハウジング1と、弁体収容部111に回転可能に収容され、回転位相に応じて導入口E0と第1排出口E1との接続状態を変化させる弁体3と、第1排出口E1の内部に配置された付勢部材(本実施形態では、例えば第1スプリングSP1)と、ハウジング1の外部に接続され、第1スプリングSP1を支持する支持部材(本実施形態では、例えば第1配管L1)と、第1排出口E1の内部において第1スプリングSP1により弁体3に向かって付勢されたシール部材であって、弁体3の外周面と摺接する摺接面(本実施形態では、例えば摺接面S11)と、摺接面S11に開口する貫通孔(本実施形態では、例えば貫通孔S10)と、弁体3の回転方向において貫通孔S10を挟むようにして摺接面S11に設けられ、第1スプリングSP1側へ向かって凹む凹部(本実施形態では、例えば凹部S14)と、を有するシール部材(本実施形態では、例えば第1シール部材S1)と、を備えている。
【0057】
このように、本実施形態に係る弁装置CVでは、第1シール部材S1の摺接面S11に、凹部S14が設けられている。これにより、凹部S14の分だけ、弁体3に対する第1シール部材S1の摺接面S11の接触面積が減少し、その分、弁体3に対する第1シール部材S1の付勢荷重、すなわち第1スプリングSP1のばね力を低減することが可能となる。その結果、弁体3に対する第1シール部材S1の摺接面S11の規定の面圧(シール性)を維持したままで、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間の摩擦抵抗(フリクション)を低減することが可能となり、電動モータ4の駆動トルクの増大や、これに伴う減速機構5の第1、第2歯車G1,G2の摩耗の抑制を図ることができる。
【0058】
また、弁体3に対する第1シール部材S1の摺接面S11の接触面積の減少に伴い第1スプリングSP1のばね力を低減可能となることにより、第1配管L1の変形を抑制することができる。
【0059】
さらに、第1シール部材S1の摺接面S11に凹部S14が設けられていることによって、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間にコンタミがかみ込んだ際に、このかみ込んでしまったコンタミを、凹部S14内に収容することが可能となる。これにより、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間にかみ込んでしまったコンタミが弁体3の回転に伴い引きずられて第1シール部材S1の摺接面S11を径方向に横断移動してしまうおそれがなくなる。その結果、かかるコンタミの横断移動に伴う摺接面S11の損傷を抑制することが可能となり、第1シール部材S1のシール性の低下を抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る弁装置CVにおいて、凹部S14は、貫通孔S10を囲むように環状に形成されている。
【0061】
このように、本実施形態では、凹部S14が、摺接面S11の全周にわたる環状に形成されていることにより、弁体3に対する第1シール部材S1の摺接面S11の接触面積を最大限に低減することができる。その結果、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間の摩擦抵抗(フリクション)を最大限に低減しつつ、第1配管L1の変形を効果的に抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る弁装置CVにおいて、第1シール部材S1は、第1シール部材S1の外周面に開口する環状の第1シール溝S13と、第1シール溝S13と第2連通路(本実施形態では、例えば第1排出口E1)の間に設けられたリング部材(本実施形態では、例えば第1シールリングSR1)と、を有する。
【0063】
このように、本実施形態では、環状の第1シール溝S13と第1排出口E1との間に、第1シールリングSR1が設けられている。これにより、回転する弁体3に対して比較的高い頻度で広範囲に摺接する第1シール部材S1の摺接面S11については、比較的硬質の樹脂材料を使用し、第1排出口E1との間で比較的低い頻度で極狭い範囲で摺接する第1シール部材S1の外周側については、比較的高い弾性を有する軟質の樹脂材料を使用することが可能となる。その結果、第1シール部材S1と弁体3の間、及び第1シール部材S1と第1排出口E1の間で、それぞれ適切なシール性を確保することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る弁装置CVにおいて、リング部材(本実施形態では、例えば第1シールリングSR1)は、Xリングである。
【0065】
このように、本実施形態では、第1シールリングSR1がXリングによって構成されていることにより、第1シールリングSR1と第1排出口E1との間の摩擦抵抗(フリクション)をさらに低減することが可能となる。これにより、第1シール部材S1を付勢する第1スプリングSP1のばね力を一層低減でき、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間の摩擦抵抗(フリクション)をより効果的に低減することができる。その結果、電動モータ4の駆動トルクの増大や、これに伴う減速機構5の第1、第2歯車G1,G2の摩耗をより効果的に抑制することができる。また、上記第1スプリングSP1のばね力のさらなる低減により、第1配管L1の変形についても、より効果的に抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る弁装置CVにおいて、支持部材である第1配管L1は、樹脂材料によって形成されている。
【0067】
このように、本実施形態では、第1配管L1が比較的剛性の低い樹脂材料によって形成されているため、凹部S14の形成に伴う前記第1スプリングSP1のばね力の低減効果によって、第1配管L1の変形をより効果的に抑制することができる。
【0068】
(第1変形例)
図8は、本発明に係る弁装置の第1実施形態の第1変形例を示し、(a)は平面図、(b)は同図(a)に示すC-C線に沿って切断した断面図を示している。なお、当該第1変形例に係る弁装置CV’は、図1に示すような、導入口E0から流入した冷却水の第1~第3排出口E1~E3からの排出を制御する、いわゆる3in-1outの形式の冷却回路に適用される。また、第1~第3シール部材S1~S3はいずれも大きさ違いで同一の形状を有するものであることから、前記第1実施形態と同様に、本変形例においても、便宜上、図8に基づいて第1シール部材S1についてのみ説明し、第2、第3シール部材S2,S3については具体的な説明を省略する。また、各図の説明では、第1シール部材S1の中心軸線Pに平行な方向を「軸方向」、第1シール部材S1の中心軸線Pに直交する方向を「径方向」、そして第1シール部材S1の中心軸線P周りの方向を「周方向」として説明する。
【0069】
図8に示すように、本変形例に係る弁装置CV’では、第1シール部材S1の凹部S14が、第1シール部材S1の摺接面S11の径方向において内周側、すなわち貫通孔S10側に偏移して配置されている。換言すれば、第1シール部材S1の摺接面S11の径方向において、摺接面S11の外周縁と凹部S14の外周縁との間に形成された外周側シール部S15のシール幅WAが、摺接面S11の内周縁と凹部S14の内周縁との間に形成された内周側シール部S16のシール幅WBよりも大きくなるように構成されている。
【0070】
以上のように、本変形例に係る弁装置CV’において、第1シール部材S1の摺接面S11は、弁体3の回転方向において、貫通孔S10の中心Pを通る断面(図8(b)参照)で見たとき、摺接面S11の外周縁と凹部S14との間に形成された外周側シール部S15と、摺接面S11の内周縁と凹部S14との間に形成された内周側シール部S16と、を有し、外周側シール部S15のシール幅WAと内周側シール部S16のシール幅WBとが異なっている。
【0071】
このように、外周側シール部S15のシール幅WAと、内周側シール部S16のシール幅WBとを異ならしめることにより、第1シール部材S1に対する水圧の作用方向に応じて最適なシール性を確保することができる。
【0072】
とりわけ、本変形例に係る弁装置CV’において、摺接面S11は、弁体3の回転方向において、貫通孔S10の中心Pを通る断面(図8(b)参照)で見たとき、摺接面S11の外周縁と凹部S14との間に形成された外周側シール部S15と、摺接面S11の内周縁と凹部S14との間に形成された内周側シール部S16と、を有し、外周側シール部S15のシール幅WAが、内周側シール部S16のシール幅WBよりも大きいものとなっている。
【0073】
このように、本変形例では、外周側シール部S15のシール幅WAが、内周側シール部S16のシール幅WBよりも大きく設定されている。かかる構成は、本変形例のように、導入口E0から流入した冷却水を第1排出口E1から排出させる、いわゆる1in-3outの形式において有効である。すなわち、かかる1in-3outの形式では、外周側シール部S15のシール幅WAが相対的に大きく設定されていることにより、シール機能を発揮する閉弁時(導入口E0と第1排出口E1とを非連通とする状態)において第1シール部材S1の外周側から作用する水圧に対して効果的に対抗することが可能となり、良好なシール性を確保することができる。
【0074】
(第2変形例)
図9は、本発明に係る弁装置の第1実施形態の第2変形例を示し、(a)は平面図、(b)は同図(a)に示すD-D線に沿って切断した断面図を示している。なお、当該第2変形例に係る弁装置CV”は、図2に示すような、第1~第3排出口E1~E3から流入した冷却水の導入口E0からの排出を制御する、いわゆる3in-1outの形式の冷却回路に適用される。また、第1~第3シール部材S1~S3はいずれも大きさ違いで同一の形状を有するものであることから、前記第1実施形態と同様に、本変形例においても、便宜上、図9に基づいて第1シール部材S1についてのみ説明し、第2、第3シール部材S2,S3については具体的な説明を省略する。また、各図の説明では、第1シール部材S1の中心軸線Pに平行な方向を「軸方向」、第1シール部材S1の中心軸線Pに直交する方向を「径方向」、そして第1シール部材S1の中心軸線P周りの方向を「周方向」として説明する。
【0075】
図9に示すように、本変形例に係る弁装置CV”では、第1シール部材S1の凹部S14が、第1シール部材S1の摺接面S11の径方向において外周側、すなわち当該摺接面S11の外周縁側に偏移して配置されている。換言すれば、第1シール部材S1の摺接面S11の径方向において、摺接面S11の内周縁と凹部S14の内周縁との間に形成された内周側シール部S16のシール幅WBが、摺接面S11の外周縁と凹部S14の外周縁との間に形成された外周側シール部S15のシール幅WAよりも大きくなるように構成されている。
【0076】
以上のように、本変形例に係る弁装置CV”において、第1シール部材S1の摺接面S11は、弁体3の回転方向において、貫通孔S10の中心Pを通る断面(図9(b)参照)で見たとき、摺接面S11の外周縁と凹部S14との間に形成された外周側シール部S15と、摺接面S11の内周縁と凹部S14との間に形成された内周側シール部S16と、を有し、内周側シール部S16のシール幅WBが、外周側シール部S15のシール幅WAよりも大きいものとなっている。
【0077】
このように、本変形例では、内周側シール部S16のシール幅WBが、外周側シール部S15のシール幅WAよりも大きく設定されている。かかる構成は、本変形例のように、第1排出口E1から流入した冷却水を導入口E0から排出させる、いわゆる3in-1outの形式において有効である。すなわち、かかる3in-1outの形式では、内周側シール部S16のシール幅WBが相対的に大きく設定されていることにより、シール機能を発揮する閉弁時(導入口E0と第1排出口E1とを非連通とする状態)において第1シール部材S1の内周側から作用する水圧に対して効果的に対抗することが可能となり、良好なシール性を確保することができる。
【0078】
〔第2実施形態〕
図10は、本発明に係る弁装置の第2実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は同図(a)に示すE-E線に沿って切断した断面図を示している。ここで、本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、第1~第3シール部材S1~S3は、いずれも大きさ違いで同一の形状を有するものであることから、便宜上、図10に基づき第1シール部材S1についてのみ説明し、第2、第3シール部材S2,S3については具体的な説明を省略する。また、各図の説明では、第1シール部材S1の中心軸線Pに平行な方向を「軸方向」、第1シール部材S1の中心軸線Pに直交する方向を「径方向」、そして第1シール部材S1の中心軸線P周りの方向を「周方向」として説明する。
【0079】
図10に示すように、本実施形態に係る弁装置CV2では、第1シール部材S1の摺接面S11において、前記第1実施形態に係る凹部S14が、内周側と外周側に二重に設けられている。具体的には、第1シール部材S1の摺接面S11に、当該摺接面S11の外周縁側に偏倚して環状の外周側凹部S14aが設けられると共に、外周側凹部S14aの内周側に当該摺接面S11の内周縁側(貫通孔S10側)に偏倚して環状の内周側凹部14bが設けられている。また、この外周側凹部14a及び内周側凹部14bは、第1シール部材S1の摺接面S11の径方向において、概ね等間隔に配置されている。換言すれば、第1シール部材S1の摺接面S11には、当該摺接面S11の径方向において、摺接面S11の外周縁と外周側凹部S14aの外周縁との間に形成される第1シール部S11aのシール幅W1と、外周側凹部S14aの内周縁と内周側凹部S14bの外周縁との間に形成される第2シール部S11bのシール幅W2と、内周側凹部S14bの内周縁と摺接面S11の内周縁との間に形成される第3シール部S11cのシール幅W3とが、概ね等しくなるように構成されている。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る弁装置CV2では、第1シール部材S1の摺接面S11の径方向において、環状に形成された外周側凹部S14aと内周側凹部S14bとが、並列状に二重に設けられている。これにより、弁体3に対する摺接面S11の接触面積が一層低減され、第1スプリングSP1のばね力を一層低減することができる。その結果、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間の摩擦抵抗(フリクション)が一層低減され、電動モータ4の駆動トルクの増大や、これに伴う減速機構5の第1、第2歯車G1,G2の摩耗をさらに効果的に抑制することができる。
【0081】
また、外周側凹部S14aと内周側凹部S14bによって、弁体3に対する第1シール部材S1の摺接面S11の接触面積を一層低減することができる。これにより、第1スプリングSP1のばね力が一層低減され、第1配管L1の変形をさらに効果的に抑制することができる。
【0082】
さらに、外周側凹部S14aと内周側凹部S14bにより、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間にかみ込んだコンタミを、外周側凹部S14aと内周側凹部S14bに収容することが可能となる。これにより、前記コンタミが弁体3の回転に伴い引きずられて第1シール部材S1の摺接面S11を径方向に横断移動することにより発生する当該摺接面S11の損傷がより効果的に抑制され、第1シール部材S1のシール性の低下をより効果的に抑制することができる。
【0083】
〔第3実施形態〕
図11は、本発明に係る弁装置の第3実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は同図(a)に示すF-F線に沿って切断した断面図を示している。ここで、本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、第1~第3シール部材S1~S3は、いずれも大きさ違いで同一の形状を有するものであることから、便宜上、図11に基づき第1シール部材S1についてのみ説明し、第2、第3シール部材S2,S3については具体的な説明を省略する。また、各図の説明では、第1シール部材S1の中心軸線Pに平行な方向を「軸方向」、第1シール部材S1の中心軸線Pに直交する方向を「径方向」、そして第1シール部材S1の中心軸線P周りの方向を「周方向」として説明する。
【0084】
図11に示すように、本実施形態に係る弁装置CV3では、環状に形成されていた前記第1実施形態に係る凹部S14が、周方向に非連続となる一対の凹部である第1凹部S17aと第2凹部S17bによって構成されていて、当該第1、第2凹部S17a,S17bが、弁体3の回転方向において、貫通孔S10を挟むように対向して設けられている。換言すれば、第1シール部材S1の摺接面S11には、弁体3の回転方向と直交する方向の両側端部に、第1、第2凹部S17a,S17bが形成されない一対の平坦部S18,S18が形成されている。
【0085】
より具体的には、この第1凹部S17aと第2凹部S17bは、図11(a)の二点鎖線Y,Y間の範囲、すなわち弁体3の回転方向において貫通孔S10とオーバーラップする範囲に設けられている。換言すれば、第1凹部S17aと第2凹部S17bとは、概ね円弧状に形成された第1、第2凹部S17a,S17bの弦長X、すなわち第1、第2凹部S17a,S17bの周方向両端部間の直線距離と、貫通孔S10の直径Dとが概ね一致する周方向範囲に設けられている。
【0086】
なお、図11(b)に示すような、弁体3の回転方向において、第1シール部材S1の摺接面S11の外周縁と第1、第2凹部S17a,S17bの外周縁との間に形成された外周側シール部S15a,S15bのシール幅WAと、当該摺接面S11の内周縁と第1、第2凹部S17a,S17bの内周縁との間に形成された内周側シール部S16b,S16bのシール幅WBとが、概ね等しくなるように構成されている。
【0087】
以上のように、本実施形態に係る弁装置CV3では、第1シール部材S1の凹部(本実施形態では、例えば第1凹部S17a及び第2凹部S17b)は、貫通孔(本実施形態では、例えば貫通孔S10)を挟むように一対設けられ、それぞれ円弧状に形成されている。
【0088】
このように、本実施形態では、第1シール部材S1の摺接面S11において、貫通孔S10を挟むように、一対の第1凹部S17a及び第2凹部S17bが設けられている。かかる構成によっても、第1、第2凹部S17a,S17bの分だけ弁体3に対する摺接面S11の接触面積を低減可能となり、第1スプリングSP1のばね力を低減することができる。これにより、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間の摩擦抵抗(フリクション)が低減され、電動モータ4の駆動トルクの増大や、これに伴う減速機構5の第1、第2歯車G1,G2の摩耗を抑制することができる。
【0089】
また、第1、第2凹部S17a,S17bの分、弁体3に対する第1シール部材S1の摺接面S11の接触面積が低減され、第1スプリングSP1のばね力が低減されることによって、第1配管L1の変形についても抑制可能となる。
【0090】
さらに、第1、第2凹部S17a,S17bが設けられていることで、当該第1、第2凹部S17a,S17bに、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間にかみ込んで弁体3の回転に伴い引きずられたコンタミを収容可能となる。これにより、弁体3の回転に伴い引きずられたコンタミを第1シール部材S1の摺接面S11を径方向に横断移動させるおそれがなく、かかる横断移動により発生する当該摺接面S11の損傷に伴う第1シール部材S1のシール性の低下を抑制することができる。
【0091】
一方で、第1、第2凹部S17a,S17bは、図11(a)中の上端部と下端部の、貫通孔S10の直径を超える範囲には設けられていない。すなわち、貫通孔S10の直径を超える範囲については、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間にかみ込んだコンタミが弁体3に引きずられて移動することによって当該摺接面S11に損傷が生じても、このコンタミの移動によって第1シール部材S1の貫通孔S10の内外が連通してしまうおそれがない。したがって、本実施形態のような、非連続となる一対の第1、第2凹部S17a,S17bによっても、摺接面S11の損傷に伴う第1シール部材S1のシール性の低下を抑制することができる。
【0092】
さらに、本実施形態では、第1、第2凹部S17a,S17bが周方向に非連続となるように構成されているため、第1、第2凹部S17a,S17bの一方の凹部に収容されたコンタミが他方の凹部へと移動して貫通孔S10の内外を連通するように摺接面S11の損傷を拡大してしまうおそれがない。換言すれば、当該第1、第2凹部S17a,S17bでは、内部に収容されたコンタミは、第1、第2凹部S17a,S17bの周方向の両端部に移動することになるため、当該コンタミが弁体3の回転方向に沿って移動しても、当該コンタミによる摺接面S11の損傷が貫通孔S10の内外を連通してしまうおそれがない。
【0093】
(変形例)
図12は、本発明に係る弁装置の第3実施形態の変形例を示し、(a)は平面図、(b)は同図(a)に示すG-G線に沿って切断した断面図を示している。なお、第1~第3シール部材S1~S3は、いずれも大きさ違いで同一の形状を有するものであることから、前記第3実施形態と同様、本変形例においても、便宜上、図12に基づき第1シール部材S1についてのみ説明し、第2、第3シール部材S2,S3については具体的な説明を省略する。また、各図の説明では、第1シール部材S1の中心軸線Pに平行な方向を「軸方向」、第1シール部材S1の中心軸線Pに直交する方向を「径方向」、そして第1シール部材S1の中心軸線P周りの方向を「周方向」として説明する。
【0094】
図12に示すように、本変形例に係る弁装置CV3’では、前記第3実施形態に係る第1、第2凹部S17a,S17bが、それぞれ周方向の両側に延長されている。より具体的には、本変形例に係る第1凹部S17aと第2凹部S17bは、円弧状に形成された第1凹部S17a及び第2凹部S17bの弦長X、すなわち第1、第2凹部S17a,S17bの周方向両端部間の直線距離が、貫通孔S10の直径Dよりも大きくなる周方向範囲に設けられている。
【0095】
以上のように、本変形例に係る弁装置CV3’は、シール部材(本実施形態では、例えば第1シール部材S1)において、円弧状に形成された第1、第2凹部S17a,S17bの弦長Xが、貫通孔(本実施形態では、例えば貫通孔S10)の直径Dよりも大きい。
【0096】
このように、本変形例では、第1、第2凹部S17a,S17bの弦長Xが、貫通孔S10の直径Dよりも大きく設定されるため、第1、第2凹部S17a,S17b内に収容されたコンタミが周方向両端部に移動した際、当該コンタミが弁体3に引きずられて第1、第2凹部S17a,S17bと貫通孔S10とを連通させるような損傷を、より確実に抑制することができる。
【0097】
また、本変形例によれば、第1、第2凹部S17a,S17bの周長を延長した周方向領域Q(図12(a)参照)の分だけ弁体3に対する摺接面S11の接触面積を低減することが可能となり、前記第3実施形態に係る弁装置CV3よりも、第1スプリングSP1のばね力を効果的に低減可能となる。これにより、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間の摩擦抵抗(フリクション)が低減されて、電動モータ4の駆動トルクの増大や、これに伴う減速機構5の第1、第2歯車G1,G2の摩耗を抑制することができる。さらに、前記第1スプリングSP1のばね力の低減により、第1配管L1の変形についても抑制することができる。
【0098】
〔第4実施形態〕
図13は、本発明に係る弁装置の第4実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は同図(a)に示すH-H線に沿って切断した断面図を示している。ここで、本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、第1~第3シール部材S1~S3は、いずれも大きさ違いで同一の形状を有するものであることから、便宜上、図13に基づき第1シール部材S1についてのみ説明し、第2、第3シール部材S2,S3については具体的な説明を省略する。また、各図の説明では、第1シール部材S1の中心軸線Pに平行な方向を「軸方向」、第1シール部材S1の中心軸線Pに直交する方向を「径方向」、そして第1シール部材S1の中心軸線P周りの方向を「周方向」として説明する。
【0099】
図13に示すように、本実施形態に係る弁装置CV4では、第1シール部材S1の摺接面S11において、平面視が概ね円形、かつ縦断面が概ね円弧凹状をなす、いわゆるディンプル状に形成された複数の凹部S19が、当該摺接面S11の周方向に沿って、相互に離間して設けられている。より具体的には、当該凹部S19は、いずれもほぼ同じ外径及び深さを有し、摺接面S11の周方向においてほぼ等間隔に形成されると共に、摺接面S11の径方向において外周側と内周側の2列に形成された、外周側凹部S19a及び内周側凹部S19bによって構成される。なお、外周側凹部S19a及び内周側凹部S19bの一つ一つの凹部については、例えばエンジン駆動に伴って発生する図示外のシリンダブロックの摩耗粉など、冷却水に混入した所定のコンタミを収容可能な外径及び深さに設定されている。換言すれば、前記各凹部S19の外径及び深さ、並びに数量については、収容対象となるコンタミの大きさに応じて任意に設定することができる。
【0100】
また、外周側凹部S19aと内周側凹部S19bは、第1シール部材S1の摺接面S11の径方向において、概ね等間隔に配置されている。換言すれば、第1シール部材S1の摺接面S11には、当該摺接面S11の径方向において、摺接面S11の外周縁と外周側凹部S19aとの間に形成される第1シール部S11aのシール幅W1と、外周側凹部S19aと内周側凹部S19bとの間に形成される第2シール部S11bのシール幅W2と、内周側凹部S19bと摺接面S11の内周縁との間に形成される第3シール部S11cのシール幅W3とが、概ね等しくなるように構成されている。
【0101】
また、前記各凹部S19は、前記第3実施形態と同様、弁体3の回転方向において貫通孔S10とオーバーラップする周方向範囲(図19(a)に示すY,Y間の範囲)にのみ設けられている。換言すれば、第1シール部材S1の摺接面S11には、弁体3の回転方向と直交する方向(図19(a)の上下方向)の両端部に、前記各凹部S19が形成されない一対の平坦部S18,S18が形成されている。
【0102】
以上のように、本実施形態に係る弁装置CV4は、内燃機関の冷却回路を通流する流体の流れを制御するものであり、凹部S19は、相互に離間した状態で複数設けられ、それぞれ前記流体に混入したコンタミネーションよりも大きく形成されていて、該コンタミネーションを収容可能に形成されている。
【0103】
このように、本実施形態では、本発明に係る凹部が、いわゆるディンプル状の複数の凹部S19によって構成されている。かかる構成によっても、当該各凹部S19の分だけ弁体3に対する摺接面S11の接触面積が低減され、第1スプリングSP1のばね力を低減することができる。これにより、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間の摩擦抵抗(フリクション)が低減され、その結果、電動モータ4の駆動トルクの増大や、これに伴う減速機構5の第1、第2歯車G1,G2の摩耗を抑制することができる。さらに、前記第1スプリングSP1のばね力の低減により、第1配管L1の変形についても抑制することができる。
【0104】
また、本実施形態では、前記各凹部S19が、外周側凹部S19aと内周側凹部S19bのように、摺接面S11の径方向において2列に形成されていることから、第1シール部材S1の摺接面S11と弁体3の外周面との間にかみ込んだコンタミを効果的に収容可能となり、当該コンタミによって摺接面S11が損傷することによる第1シール部材S1のシール性の低下を効果的に抑制することができる。
【0105】
さらに、本実施形態では、凹部が、前記第1~第3実施形態に例示したような溝状ではなく、相互に離間したいわゆるディンプル状の複数の凹部S19によって形成されている。これにより、前記第1~第3実施形態のものと比べて、第1シール部材S1の摺接面S11の剛性の低下についても抑制可能となる。
【0106】
本発明に係る弁装置CV等は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の作用効果を奏し得る形態であれば、適用する内燃機関(エンジン)の仕様等に応じて自由に変更可能である。
【0107】
特に、前記実施形態においては、弁装置CVの適用の一例として、冷却水の循環系への適用を例示したが、当該弁装置CVは、冷却水のみならず、例えば潤滑油など様々な流体について適用可能であることは言うまでもない。
【0108】
また、本実施形態では、ハウジング1に第1~第3排出口E1~E3である3つの排出口を設け、弁体3に第1~第3開口部M1~M3である3つの開口部を設けたものを例示したが、当該排出口及び開口部の数量はそれぞれ1以上あればよく、排出口及び開口部をそれぞれ3つ配置してなる、第1~第3排出口E1~E3及び第1~第3開口部M1~M3からなる態様に限定されるものではない。
【0109】
以上説明した実施形態に基づく弁装置としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0110】
すなわち、当該弁装置は、その1つの態様において、弁体収容部に開口する第1連通路と、前記第1連通路とは別の位置において前記弁体収容部に開口する第2連通路と、を有するハウジングと、前記弁体収容部に回転可能に収容され、回転位相に応じて前記第1連通路と前記第2連通路との接続状態を変化させる弁体と、前記第2連通路の内部に配置された付勢部材と、前記第2連通路の内部において前記付勢部材により前記弁体に向かって付勢されたシール部材であって、前記弁体の外周面と摺接する摺接面と、前記摺接面に開口する貫通孔と、前記弁体の回転方向において前記貫通孔を挟むようにして前記摺接面に設けられ、前記付勢部材側へ向かって凹む凹部と、を有するシール部材と、を備えている。
【0111】
前記弁装置の好ましい態様において、前記凹部は、前記貫通孔を囲むように環状に形成されている。
【0112】
別の好ましい態様では、前記弁装置の態様のいずれかにおいて、前記弁装置は、前記第1連通路から流入した流体の前記第2連通路からの排出、又は前記第2連通路から流入した流体の前記第1連通路からの排出を制御するものであり、前記摺接面は、前記弁体の回転方向において、前記貫通孔の中心を通る断面で見たとき、前記摺接面の外周縁と前記凹部との間に形成された外周側シール部と、前記摺接面の内周縁と前記凹部との間に形成された内周側シール部と、を有し、前記外周側シール部のシール幅と前記内周側シール部のシール幅とが異なる。
【0113】
さらに別の好ましい態様では、前記弁装置の態様のいずれかにおいて、前記弁装置は、前記第1連通路から流入した流体の前記第2連通路からの排出を制御するものであり、前記摺接面は、前記弁体の回転方向において、前記貫通孔の中心を通る断面で見たとき、前記摺接面の外周縁と前記凹部との間に形成された外周側シール部と、前記摺接面の内周縁と前記凹部との間に形成された内周側シール部と、を有し、前記外周側シール部のシール幅が前記内周側シール部のシール幅よりも大きい。
【0114】
さらに別の好ましい態様では、前記弁装置の態様のいずれかにおいて、前記弁装置は、前記第2連通路から流入した流体の前記第1連通路からの排出を制御するものであり、前記摺接面は、前記弁体の回転方向において、前記貫通孔の中心を通る断面で見たとき、前記摺接面の外周縁と前記凹部との間に形成された外周側シール部と、前記摺接面の内周縁と前記凹部との間に形成された内周側シール部と、を有し、前記内周側シール部のシール幅が前記外周側シール部のシール幅よりも大きい。
【0115】
さらに別の好ましい態様では、前記弁装置の態様のいずれかにおいて、前記シール部材は、前記シール部材の外周面に開口する環状のシール溝と、前記シール溝と前記第2連通路の間に設けられたリング部材と、を有する。
【0116】
さらに別の好ましい態様では、前記弁装置の態様のいずれかにおいて、前記リング部材は、Xリングである。
【0117】
さらに別の好ましい態様では、前記弁装置の態様のいずれかにおいて、前記凹部は、前記貫通孔を挟むように一対設けられ、それぞれ円弧状に形成されている。
【0118】
さらに別の好ましい態様では、前記弁装置の態様のいずれかにおいて、前記円弧状に形成された前記凹部の弦長が、前記貫通孔の直径よりも大きい。
【0119】
さらに別の好ましい態様では、前記弁装置の態様のいずれかにおいて、前記弁装置は、内燃機関の冷却回路を通流する流体の流れを制御するものであり、前記凹部は、相互に離間した状態で複数設けられ、それぞれ前記流体に混入したコンタミネーションよりも大きく形成されていて、該コンタミネーションを収容可能に形成されている。
【0120】
さらに別の好ましい態様では、前記弁装置の態様のいずれかにおいて、前記ハウジングの外部に接続され、前記付勢部材を支持する支持部材を有し、前記支持部材は、樹脂材料によって形成されている。
【符号の説明】
【0121】
1…ハウジング、10…導入口(第1連通路)、111…弁体収容部、E1…第1排出口(第2連通路)、3…弁体、L1…第1配管(支持部材)、S1…第1シール部材(シール部材)、S10…貫通孔、S11…摺接面、S12…着座面、S13…シール溝、S14…凹部、S15…外周側シール部、S16…内周側シール部、SP1…第1スプリング(付勢部材)、SR1…第1シールリング(リング部材)、WA…外周側シール部のシール幅、WB…内周側シール部のシール幅、CV…弁装置、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13