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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182911
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】表示システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096146
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】舛屋 勇希
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA21
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】複数の表示装置間における視認性を向上できる表示システムを提供する。
【解決手段】本実施形態における表示システムは、実景に重畳させて視認者に視認させる上HUD画像を上HUD表示領域8に表示する上HUDと、実景に重畳させることなく視認者に視認させる下HUD画像を下HUD表示領域9に表示する下HUD30と、上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9に所定条件下で同一形態を有する共通画像28a、39aが表示される場合、上HUD表示領域8に表示される上共通画像28aの表示色である上HUD表示色と下HUD表示領域9に表示される下共通画像39aの表示色である下HUD表示色との間に生じる色相差を抑制するための表示制御を行う表示制御部と、を備える。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実景に重畳させて視認者に視認させる画像を第一表示領域に表示する第一表示装置と、
前記実景に重畳させることなく前記視認者に視認させる画像を第二表示領域に表示する第二表示装置と、
前記第一表示領域及び前記第二表示領域に所定条件下で同一形態を有する共通画像が表示される場合、前記第一表示領域に表示される前記共通画像の表示色である第一表示色と前記第二表示領域に表示される前記共通画像の表示色である第二表示色との間に生じる色相差を抑制するための表示制御を行う表示制御部と、を備える、表示システム。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記第一表示領域及び前記第二表示領域に同時に前記共通画像が表示される場合、前記第一表示領域に表示される前記共通画像の点灯周期が前記第二表示領域に表示される前記共通画像の前記点灯周期よりも短くなるように少なくとも前記第一表示領域に表示される前記共通画像を点滅させる、請求項1記載の表示システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記第一表示領域及び前記第二表示領域に同時に前記共通画像が表示される場合、前記第一表示領域に表示される前記共通画像と前記第二表示領域に表示される前記共通画像との間に、補助表示を表示する、請求項1記載の表示システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記補助表示を、前記第一表示色と前記第二表示色との中間色で前記第二表示領域に表示する、請求項3記載の表示システム。
【請求項5】
前記表示制御部は、
前記第二表示領域から前記第一表示領域に移動するように前記共通画像が表示される場合、前記第二表示領域で前記共通画像を前記第二表示色から前記第一表示色又は前記第二表示色よりも前記第一表示色に近い表示色に変化させた後に前記共通画像を前記第一表示領域に移動し、又は、
前記第一表示領域から前記第二表示領域に移動するように前記共通画像が表示される場合、前記第二表示領域に移動した前記共通画像を前記第一表示色又は前記第二表示色よりも前記第一表示色に近い表示色で表示した後に前記第二表示色で表示する、請求項1記載の表示システム。
【請求項6】
前記表示制御部は、
前記第二表示領域から前記第一表示領域に移動するように前記共通画像が表示される場合、前記第二表示領域に表示された前記共通画像を前記第一表示色及び前記第二表示色とは異なる表示色で表示し、その後第二表示色に変化させた後に前記共通画像を前記第一表示領域に移動し、又は、
前記第一表示領域から前記第二表示領域に移動するように前記共通画像が表示される場合、前記第二表示領域に移動した前記共通画像を前記第二表示色で表示し、その後前記第一表示色及び前記第二表示色とは異なる表示色で表示する、請求項1記載の表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の表示装置を有する車両用等の表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の表示装置が車両内の複数箇所に配置され、これらが連動して制御されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-230625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両には、多様な表示態様で情報の表示が可能なヘッドアップディスプレイや、多くの情報の表示が可能な大型の表示パネルが搭載されるようになっている。また、視認者に特に必要な情報の内容を強調して伝達するために、複数の表示装置間で同一形態の画像を同時に、又は移動させながら表示することも行われ得る。しかしながら、表示装置の態様が異なると、同一の画像を表示することを意図しても、表示装置固有の演色性に起因して、画像間に色相差が生じる虞がある。
【0005】
本開示はこのような事情を考慮してなされたもので、複数の表示装置間における視認性を向上できる表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の表示システムは、上述した課題を解決するために、実景に重畳させて視認者に視認させる画像を第一表示領域に表示する第一表示装置と、前記実景に重畳させることなく前記視認者に視認させる画像を第二表示領域に表示する第二表示装置と、前記第一表示領域及び前記第二表示領域に所定条件下で同一形態を有する共通画像が表示される場合、前記第一表示領域に表示される前記共通画像の表示色である第一表示色と前記第二表示領域に表示される前記共通画像の前記表示色である第二表示色との間に生じる色相差を抑制するための表示制御を行う表示制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の表示システムにおいては、複数の表示装置間における視認性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態における表示システムのシステム構成例を示す図。
図2】2つの表示装置による表示の一例を示す図。
図3】所定の表色系の一例であるCIE1931色空間のxy色度図における、上HUD及び下HUDの色域を示す説明図。
図4】主制御部により実行される同時表示時における表示処理を説明するフローチャート。
図5】上HUD画像としての共通画像及び下HUD画像としての共通画像が同時に表示される場合の表示例を示す図。
図6】第二表示制御処理における補助表示の表示例を示す図。
図7】主制御部により実行される遷移表示時における表示処理を説明するフローチャート。
図8】下HUD表示領域から上HUD表示領域に移動するように共通画像が表示される場合の表示例を示す図。
図9】第三表示制御処理が実行される際の、上共通画像の色相の時間遷移を説明する図。
図10】第三表示制御処理が実行される際の、下共通画像の色相の時間遷移を説明する図。
図11】第四表示制御処理が実行される際の、共通画像としての上HUD画像の色相の時間遷移を説明する図。
図12】第四表示制御処理が実行される際の、共通画像としての下HUD画像の色相の時間遷移を説明する図。
図13】第四表示制御処理により共通画像が表示される場合の表示例を示す図。
図14】第五表示制御処理により共通画像が表示される場合の表示例を示す図。
図15】第六表示制御処理により共通画像が表示される場合の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の表示システムの実施形態を添付図面に基づいて説明する。本開示の表示システムは、例えば自動車や二輪車等の車両や、船舶、農業機械、建設機械に搭載される表示システムに適用することができる。本実施形態においては、本開示の表示システムが、車両に搭載され、車両から取得した各種情報等に基づいて所要の情報を表示する2つのヘッドアップディスプレイ(HUD、Head Up Display)を有する例を用いて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態における表示システム10のシステム構成例を示す図である。
図2は、2つの表示装置による表示の一例を示す図である。
【0011】
以下の説明において、「前」、「後」、「上」、「下」、「右」及び「左」は、図1図2図5図6図8及び図13から図15における定義「Fr.」、「Re.」、「To.」、「Bo.」、「R」、及び「L」に従う。
【0012】
表示システム10は、車両1のインストルメントパネル2内に搭載される。表示システム10は、上HUD20と、下HUD30と、主制御部40と、を有する。
【0013】
上HUD20(第一表示装置)は、ステアリングホイール5に対して前方に配置され、ウインドシールド3に表示光L1を照射する。表示光L1は、ウインドシールド3で運転者4(視認者)側に反射することにより、運転者4に車両1(ウインドシールド3)の前方で虚像V1による画像(以下「上HUD画像28」という。)を視認させる。上HUD画像28は、例えば図2の仮想的な上HUD表示領域8(第一表示領域)内に表示される。上HUD画像28は、路面等の前方の風景である実景に重畳させて運転者4に視認される。
【0014】
下HUD30(第二表示装置)は、上HUD20よりも更に前方(運転者4から離れる方向)に配置され、例えばウインドシールド3の周囲に形成される遮光部3aに表示光L2を照射する。遮光部3aは、黒セラミックス等からなる黒色等の遮光色からなる部分である。遮光部3aは、ウインドシールド3を車両1に固定する接着剤の太陽光による劣化の防止や、接着剤の隠蔽、意匠性の向上等を目的に形成される。表示光L2は、遮光部3aで運転者4側に反射することにより、運転者4に車両1(遮光部3a)の前方で虚像V2による画像(以下「下HUD画像39」という)を視認させる。下HUD画像39は、例えば図2の仮想的な、上HUD表示領域8とは異なる下HUD表示領域9(第二表示領域)内に表示される。下HUD画像39は、上HUD画像28とは異なり、実景に重畳させることなく、遮光部3aに重畳表示されて運転者4に視認される。実景に重畳させない、とは、ウインドシールド3越しに視認される景色に重畳されないことを意味する。
【0015】
上HUD20は、運転者4の通常時(運転時)に想定される視線4aに対して上下方向において距離d1の位置で虚像V1による上HUD画像28が視認されるように、画像を表示する。また、下HUD30は、運転者4の視線4aに対して距離d1よりも大きい距離d2の位置で虚像V2による下HUD画像39が視認されるように、画像を表示する。すなわち、運転者4は、上HUD画像28に視線4aをずらすための移動距離よりも、下HUD画像39に視線4aをずらすための移動距離の方が大きい。言い換えると、視線4aの方向と上HUD画像28を視認するための視線方向とが形成する角度θ1よりも、視線4aの方向と下HUD画像39を視認するための視線方向とが形成する角度θ2の方が、大きい。このため、運転者4は、下HUD画像39を、上HUD画像28よりも視線4aから遠い位置であり、上HUD画像28の下方で視認する。
【0016】
また、本実施形態においては、上HUD20は、下HUD画像39よりも前方に、上HUD画像28を形成する。すなわち、上HUD画像28は、運転者4から前後方向において遠い位置で視認され、下HUD画像39は、運転者4に前後方向において近い位置で視認される。
【0017】
上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9としての表示面は、上下左右の4辺を有する面である。例えば、下辺8a、9a及び上辺8b、9bは、左右方向に略平行な辺である。左辺8c、9c及び右辺8d、9dは、上下方向に対して任意の角度に設定された辺である。例えば、表示面は、左辺8c、9c及び右辺8d、9dが上下方向に沿うように形成される面(路面に垂直な面)や、左辺8c、9c及び右辺8d、9dが上下方向に対して所定角度傾斜した傾斜面(路面に対して傾斜した面)となるように形成される。また表示面は、左辺8c、9c及び右辺8d、9dが前後方向に沿う面(路面に重畳される(略平行な)面)や、左辺8c、9c及び右辺8d、9dが、運転者4に近い側が上下方向に沿い、遠くなるにつれて前後方向に沿うような曲線となるように形成される面となるように形成される。
【0018】
路面に垂直な面以外で形成される表示面は、表示面上での表示位置に応じて運転者4と虚像の表示距離が異なり、奥行き感が表現された画像を表示し得る。例えば、表示面が、左辺8c、9c及び右辺8d、9dが、上辺8b、9bが下辺8a、9aに対して前方に位置するように傾く面である場合、運転者4は、表示面に奥行きを認識し得る。
【0019】
尚、画像の表示距離等を算出するための運転者4の視線4a(視点)に関する情報は、予め固定値として主制御部40等が保持していてもよいし、視線センサ51(後述)より取得してもよい。
【0020】
上HUD20は、表示器21と、凹面鏡22と、筐体24と、上HUD表示制御部25と、を有する。
【0021】
表示器21は、表示光L1を凹面鏡22に向けて出射する。表示器21は、例えばTFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示器や有機EL(Electroluminescence)表示器である。尚、表示器21はプロジェクタ及び表示面を構成するスクリーンを有するものであってもよい。
【0022】
凹面鏡22は、表示器21が出射した表示光L1をウインドシールド3に向けて反射する。凹面鏡22は、拡大鏡としての機能を有し、表示器21に表示された画像を拡大してウインドシールド3側へ反射する。すなわち、運転者4は、表示器21に表示された画像が拡大された画像を上HUD画像28として視認する。
【0023】
筐体24は、筐体24の内部に、凹面鏡22、表示器21及び上HUD表示制御部25が実装された制御基板を支持する。
【0024】
上HUD表示制御部25は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有しており、ROMに書き込まれたプログラムに従って所定の演算処理を実行する。具体的には、上HUD表示制御部25は、主制御部40の指示に基づいて、表示器21を制御して所要の画像を表示する。
【0025】
下HUD30は、表示器31と、筐体34と、下HUD表示制御部35と、を有する。
【0026】
表示器31は、表示光L2を筐体34外の遮光部3aに直接出射する。表示器31は、例えば上HUD20と同様の構成を有する。これにより、運転者4は、表示器31に表示され遮光部3aで反射した画像を視認する。
【0027】
筐体34は、筐体34の内部に、表示器31及び下HUD表示制御部35が実装された制御基板を支持する。
【0028】
下HUD表示制御部35は、CPU、ROM、RAM等を有しており、ROMに書き込まれたプログラムに従って所定の演算処理を実行する。具体的には、下HUD表示制御部35は、主制御部40の指示に基づいて、表示器31を制御して所要の画像を表示する。
【0029】
主制御部40(表示制御部)は、特に、後述する車両1の各部から取得する情報等に基づいて、上HUD20及び下HUD30を制御する。主制御部40は、CPU、ROM、RAM等を有しており、ROMに書き込まれたプログラムに従って所要の演算処理や特に後述する表示制御処理を実行する。
【0030】
車両1は、表示システム10の他に、視線センサ51と、周辺情報取得部52と、車外情報取得部53と、カーナビゲーションシステム54と、車両ECU(Electronic Control Unit)55と、を有する。各部と主制御部40とは、例えばCAN(Controller Area Network)バス50を介して接続される。主制御部40は、例えば周辺情報取得部52、車外情報取得部53、カーナビゲーションシステム54及び車両ECU55から取得する情報に基づいて、上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9に表示する情報(画像)を決定する。
【0031】
視線センサ51は、運転者4を撮影するカメラ及び画像処理装置等から構成され、運転者4の視線4a(視点、注視方向)を検出する。尚、視線センサ51は、例えば上HUD20の筐体24内に配置される等、車両1側ではなく表示システム10側が有していてもよい。
【0032】
周辺情報取得部52は、車両1の周辺(外部)の情報を取得する。周辺情報取得部52は、車両1とワイヤレスネットワークとの通信や、車両1と他車両との通信、車両1と歩行者との通信、車両1と道路側のインフラとの通信を行う。例えば、周辺情報取得部52は、WAN(Wide Area Network)に直接アクセスできる通信モジュール、WANにアクセス可能な外部装置(モバイルルータ等)や公衆無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイント等と通信するための通信モジュール等を有し、インターネット通信を行う。また、周辺情報取得部52は、所定の無線通信規格に準拠した無線通信モジュールを有する。さらに、周辺情報取得部52は、道路側のインフラと無線通信する通信装置を有し、例えば、安全運転支援システム(DSSS、Driving Safety Support Systems)の基地局から、インフラストラクチャーとして設置された路側無線装置を介して、物体情報や交通情報を取得する。
【0033】
車外情報取得部53は、車両1の上下前後左右(車両1の周囲)である外部環境に存在する人や構造物、他の車両等の対象物の内容やそれらの位置を検出する。車外情報取得部53は、例えば車両1の周囲の風景を撮像するステレオカメラ、車両1から対象物までの距離を測定するLIDAR(Laser Imaging Detection And Ranging)等の測距センサ、車両1の周囲に位置する対象物を検出するソナー、超音波センサ、ミリ波レーダ等である。
【0034】
カーナビゲーションシステム54は、人工衛星等から受信したGPS(Global Positioning System)信号に基づいて車両1の位置を算出するGPSコントローラを有する。カーナビゲーションシステム54は、地図データを記憶する記憶部を有し、GPSコントローラからの位置情報に基づいて、現在位置近傍の地図データを記憶部から読み出し、ユーザーにより設定された目的地までの案内経路を決定する。カーナビゲーションシステム54は、現在の車両1の位置や決定した案内経路に関する情報を主制御部40に出力する。
【0035】
また、カーナビゲーションシステム54は、地図データを参照することにより、車両1の前方の施設の名称・種類や、施設と車両1との距離等を示す情報を主制御部40に出力する。地図データでは、道路形状情報(車線、道路の幅員、車線数、交差点、カーブ、分岐路等)、制限速度等の道路標識や通行止めや片側交互通行、速度規制等の交通規制情報に関する交通情報、車線が複数存在する場合の各車線についての情報等の各種情報が位置データと対応付けられている。カーナビゲーションシステム54は、これらの各種情報を主制御部40に出力する。尚、カーナビゲーションシステム54は、車両1に搭載されたものに限られず、主制御部40との間で有線又は無線により通信を行う、カーナビゲーション機能を有する携帯端末(例えばスマートフォン、タブレットPC(Personal Computer))により実現されてもよい。
【0036】
車両ECU55は、車両1に設けられた各種センサから車速やエンジン回転数等の車両1の走行に必要な車両情報を取得し、車両1の動作を制御する。車両ECU55は、車速や車両1自体の警告情報(例えば燃料低下、エンジン油圧異常)等の所要の車両情報を、主制御部40に出力する。
【0037】
次に、表示システム10により実行される、表示制御処理について詳細に説明する。本実施形態における表示システム10は、上HUD20及び下HUD30を連動させて情報を表示する。例えば、危険度が高まり、運転者4に特に強調して警告を通知したい場合等、上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9に同一形態の上HUD画像28及び下HUD画像39である共通画像を表示する。尚、同一形態の画像は、同一色(色相)で表現された、同一形状(相似形を含む)を有する画像であり、同一の内容を伝達するための画像をいう。
【0038】
ここで、上HUD20は、表示光L1を表示器21から出射し、リレー光学系である凹面鏡22を経てウインドシールド3で反射させることにより、運転者4に視認させる。また、下HUD30は、表示光L2を表示器31から出射し、遮光部3aで反射させることにより、運転者4に視認させる。すなわち、下HUD30は、表示光L2を直接投影部材である遮光部3aに出射する。このような相違から、上HUD画像28は、下HUD画像39に比べて、表示器21から出力された表示光L1の色相通りに虚像V1を再現し、運転者4に視認させることが困難である。また、上HUD画像28は実景に重畳表示され、下HUD画像39は黒色の遮光部3aに重畳表示される。このため、上HUD画像28は、下HUD画像39に比べて、実景の影響を受けやすくコントラストが低くなってしまう。すなわち、上HUD20は、下HUD30に比べて演色性が低い。
【0039】
このことから、主制御部40が上HUD画像28と下HUD画像39とを同一形態の画像として表示する場合、下HUD画像39に比べて、上HUD画像28のコントラストが低く、また色相の表現が乏しい(色再現性が低い)ことから両画像に色相差が生じてしまう。ここで、図3は、所定の表色系の一例であるCIE1931色空間のxy色度図における、上HUD20の色域C1及び下HUD30の色域C2を示す説明図である。
【0040】
上HUD20は、色域C1で上HUD画像28を表示する。また、下HUD30は、色域C2で下HUD画像39を表示する。上HUD画像28は、上述した理由から演色性が低いことから、下HUD画像39の色域C2に比べて狭い色域C1を有する。この場合、上HUD20及び下HUD30が座標a2で規定される色相を有する同一形状の画像を生成し表示する場合であっても、上HUD画像28は座標a1で規定される色で表示されてしまう。例えば、同じ「赤」で共通画像を表示したい場合であっても、上HUD画像28と下HUD画像39との間に色相の違いが生じてしまう。すなわち、上HUD画像28は、下HUD画像39に比べて演色性が低く、薄い赤で表示されてしまう。このため、共通画像として表示される上HUD画像28及び下HUD画像39が、異なる情報を伝達するための画像であると運転者4に認識されてしまい、情報が正確に伝達されない虞がある。
【0041】
そこで、本実施形態における表示システム10は、上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9に所定条件下で共通画像が表示される場合、主制御部40が上HUD表示領域8に表示する(運転者4に視認される)共通画像の表示色である上HUD表示色(第一表示色)と下HUD表示領域9に表示する(運転者4に視認される)共通画像の表示色である下HUD表示色(第二表示色)との間に生じる色相差を抑制するための表示制御を行うことにより上記の課題を解消する。
【0042】
本実施形態においては、表示制御部は、上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9に同時に共通画像が表示される場合(同時表示時)と、下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動するように共通画像が表示される場合(遷移表示時)と、を表示制御処理が実行される所定条件として適用して説明する。まず、同時表示時における表示制御処理を詳細に説明する。
【0043】
図4は、主制御部40により実行される同時表示時における表示処理を説明するフローチャートである。以下に説明する図4及び図7の表示制御処理は、表示システム10の起動中において繰り返し実行される処理である。
【0044】
ステップS1において、主制御部40は、上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9に同時に共通画像が表示されるか否かを判定する。ここで、図5は、上HUD画像28としての上共通画像28a及び下HUD画像39としての下共通画像39aが同時に表示される場合の表示例を示す図である。図5に示すように、主制御部40は、運転者4に警告を通知するために、例えば警告マーク(ワーニング)を示す上共通画像28a及び下共通画像39aを上HUD20及び下HUD30にそれぞれ表示させる。主制御部40は、例えば赤色の警告色で警告マークを表示する。
【0045】
主制御部40は、共通画像が上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9に同時に表示されないと判定した場合(ステップS1のNO)、共通画像が同時に表示されると判定されるまで待機する。一方、主制御部40は、共通画像が同時に表示されると判定した場合(ステップS1のYES)、ステップS2において、色相差抑制のための表示制御を実行する。主制御部40は、共通画像の表示態様を変更することで色相差を抑制する第一表示制御処理、及び共通画像の他に補助表示を表示することで色相差を抑制する第二表示制御処理の少なくとも一方を実行する。ステップS2の処理は、共通画像が上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9に表示されると同時に実行されるのが、色相差抑制の観点から好ましい。
【0046】
第一表示制御処理は、上HUD表示領域8に表示される上共通画像28aの点灯周期が下HUD表示領域9に表示される下共通画像39aの点灯周期よりも短くなるように、少なくとも上HUD表示領域8に表示される上共通画像28aを点滅させる処理である。
【0047】
例えば、主制御部40は、上共通画像28aが例えば500msから1sの点灯周期となるように表示する。点灯周期は、消灯よりも点灯の時間が長くなるように点灯周期が設定されることがましい。点灯時間を長くすることにより、必要な情報を適切に運転者4に伝えることができるためである。主制御部40は、下共通画像39aを上共通画像28aの点灯周期よりも長い点灯周期で表示する。尚、上共通画像28a、下共通画像39aの点灯周期は、経時的に変更してもよいし、一定でなくてもよい。
【0048】
また、上共通画像28aの点灯周期よりも長い点灯周期には、上共通画像28aの常時点灯も含まれる。主制御部40は、下共通画像39aを常時点灯させる(点滅させない)ことにより、運転者4の注意を、点滅している上共通画像28aに向け重要性を伝えることができる。これにより、運転者4が上共通画像28a及び下共通画像39aの両者を同時に視認することを抑制でき、運転者4に与える上共通画像28a及び下共通画像39a間の色相差を抑制することができる。
【0049】
また、主制御部40は、運転者4に対して、点滅する上共通画像28aを表示する上HUD表示領域8がワーニング等の重要性の高い情報が表示される領域として認識させ、上共通画像28aに基づいて安全運転に配慮するよう促すことができる。その一方で、主制御部40は、常時点灯等の下共通画像39aを表示する下HUD表示領域9が任意のタイミングで運転に必要な情報が表示される領域として認識させることができる。
【0050】
ステップS2において実行される第二表示制御処理は、上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9に同時に共通画像が表示される場合、上共通画像28aと下共通画像39aとの間に、別途補助表示を表示する処理である。
【0051】
ここで、図6は、第二表示制御処理における補助表示60の表示例を示す図である。補助表示60は、例えば下HUD表示領域9のうち、上HUD表示領域8に表示される上共通画像28aと下HUD表示領域9に表示される下共通画像39aとの間に位置する箇所に表示される。
【0052】
具体的には、補助表示60は、下HUD表示領域9の左右方向に亘って表示される線状の画像である。補助表示60は、例えば上HUD表示色と下HUD表示色との中間色で、左右中央が最も濃く、左右に行くにつれて薄くなるようなグラデーションで表示される。中間色は、例えば図3のCIE1931色空間のxy色度図において、上HUD表示色が座標a1で規定される色であり、下HUD表示色が座標a2で規定される色である場合、座標a1と座標a2との中間に位置する座標a3で規定される色が選択される。この場合においては、色再現性の高い(色域が広い)下HUD画像39が座標a3で規定される色で表示されることが可能であるため、補助表示60は下HUD表示領域9に表示されることになる。
【0053】
補助表示60は、領域が大きいほど、運転者4に与える上共通画像28a及び下共通画像39a間の色相差を抑制する効果が大きくなる。例えば、図6の補助表示60に対して、上下方向の幅を大きくしたり、上下方向に二本の線を並べたりすることにより、効果は大きくなる。
【0054】
しかしながら、例えば上共通画像28aの中心と、下共通画像39aの中心とを結ぶ線上(図6の位置P)に補助表示60が表示されていれば、色相差の抑制効果があるといえる。このため、補助表示60が位置Pを含んでいれば、補助表示60の形状は特に限定されない。また、補助表示60は、上HUD表示色と下HUD表示色との中間色とすることが好ましいが、これに限らず、全く異なる色相で表示されても色相差を抑制する効果は得られる。さらに、上HUD表示領域8の下辺8aと上共通画像28aとの距離(距離D1)と、補助表示60と下共通画像39a(下共通画像39aの下辺や下共通画像39aの中心)との距離(D2)とが等しいことが色相差抑制の観点から好ましいが、これに限らない。
【0055】
次に、遷移表示時における表示制御処理を説明する。
図7は、主制御部40により実行される遷移表示時における表示処理を説明するフローチャートである。
【0056】
ステップS11において、主制御部40は、下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動するように共通画像が表示されるか否かを判定する。ここで、図8は、下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動するように共通画像が表示される場合の表示例を示す図である。図8の例においては、主制御部40は、運転者4に警告を通知するために、例えば警告マーク(ワーニング)を示す下共通画像39aを一次警告として下HUD表示領域9に表示する。その後、警告にも関わらず状況が改善されない場合には、主制御部40は、大きな警告マークを示す上共通画像28aを二次警告として上HUD表示領域8に表示する。
【0057】
主制御部40は、下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動するように共通画像が表示されないと判定した場合(ステップS11のNO)、下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動するように共通画像が表示されると判定されるまで待機する。一方、主制御部40は、下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動するように共通画像が表示されると判定した場合(ステップS11のYES)、ステップS12において、色相差抑制のための表示制御を実行する。主制御部40は、下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動して表示される共通画像の色相差を抑制するため、第三から第六表示制御処理のうち少なくとも一つを実行する。
【0058】
第三表示制御処理は、下HUD表示領域9に表示される共通画像を、下HUD表示色から上HUD表示色に変更した後に上HUD表示領域8に移動するよう表示する処理である。図9は、第三表示制御処理が実行される際の、上共通画像28aの色相の時間遷移を説明する図である。図10は、第三表示制御処理が実行される際の、下共通画像39aの色相の時間遷移を説明する図である。図9から図12においては、時刻T2までは下HUD表示領域9に下共通画像39aが表示され、時刻T2に上HUD表示領域8に下共通画像39aが移動したように上HUD表示領域8に上共通画像28aが表示されるものとする。また、例えば時刻T0は、主制御部40により共通画像が下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動するように表示されると判定されるタイミング(ステップS11のYES)とする。
【0059】
主制御部40は、時刻T0で共通画像が下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動するように表示されると判定した場合、下共通画像39aの通常時の表示色である下HUD表示色(例えば図3の座標a2)で表示されていた下共通画像39aを、上共通画像28aの通常時の表示色である上HUD表示色(例えば図3の座標a1)で表示する。上HUD表示色は下HUD表示色よりも演色性が低いため、下共通画像39aは、演色性を下げることになる。このとき、主制御部40は、下共通画像39aを上HUD表示色による表示に限らず、下HUD表示色よりも上HUD表示色に近い表示色で表示してもよい。上HUD表示色に近い表示色は、例えば、図3のxy色度図において、座標a2(下HUD表示色)と座標a1(上HUD表示色)を結ぶ線上の座標又はその線近傍の座標で規定される色である。その後、主制御部40は、時刻T2で下共通画像39aを非表示とすると同時に、上HUD表示領域8に、上HUD表示色で上共通画像28aを表示する。
【0060】
すなわち、主制御部40は、下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に共通画像を移動する前に、下HUD表示領域9において演色性を低下させた上HUD表示色で下共通画像39aを表示する。その後、主制御部40は、同一色で上HUD表示領域8に上共通画像28aを表示する。このため、主制御部40は、運転者4に下HUD表示領域9と上HUD表示領域8との共通画像の色相差を感じさせることを抑制できる。
【0061】
次に、第四表示制御処理について説明する。第四表示制御処理は、下共通画像39aを、上HUD表示領域8方向に移動しながら上HUD表示色に変更した後に上HUD表示領域8に移動するよう表示する処理である。図11は、第四表示制御処理が実行される際の、上共通画像28aの色相の時間遷移を説明する図である。図12は、第四表示制御処理が実行される際の、下共通画像39aの色相の時間遷移を説明する図である。図13は、第四表示制御処理により共通画像が表示される場合の表示例を示す図である。図13の上方に示される遷移前の表示例は、時刻T2直前の様子を示しているものとする。
【0062】
主制御部40は、時刻T0で共通画像が下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動するように表示されると判定した場合、時刻T1で共通画像を複製した複製共通画像39bを、下共通画像39aと同一色の下HUD表示色で表示する。主制御部40は、複製共通画像39bを、下共通画像39aよりも右斜め上方の上HUD表示領域8に近付いた位置に出現させる。また、主制御部40は、時刻T1から時刻T2にかけて、複製共通画像39bを、更に上HUD表示領域8に近づけるように右斜め上方に移動する。このとき、主制御部40は、図12に示すように、複製共通画像39bの色相を下HUD表示色から上HUD表示色に連続的に変化させる。主制御部40は、複製共通画像39bの表示中も、下共通画像39aは継続して表示する。第三表示制御処理同様、主制御部40は、下共通画像39aを下HUD表示色よりも上HUD表示色に近い表示色で表示してもよい。
【0063】
その後、主制御部40は、時刻T2で下共通画像39a及び複製共通画像39bを非表示とすると同時に、上HUD表示領域8に上HUD表示色で上共通画像28aを表示する。
【0064】
主制御部40は、第四表示制御処理を実行することにより、第三表示制御処理により奏する効果に加えて、複製共通画像39bの移動に誘目させて共通画像を下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動することにより、運転者4に与える色相差による違和感を緩和できる。
【0065】
第五及び第六表示制御処理は、下共通画像39aを下HUD表示色及び上HUD表示色とは異なる表示色で表示し、その後下HUD表示色に変化させた後に下共通画像39aを上HUD表示領域8に移動するように表示する処理である。第五及び第六表示制御処理が第三及び第四表示制御処理と異なる点は、下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に共通画像を移動する前に、下共通画像39aを上HUD表示色に変更することなく、下HUD表示色のまま移動する点である。
【0066】
図14は、第五表示制御処理により共通画像が表示される場合の表示例を示す図である。図14の上方に示される遷移前の表示例は、時刻T2直前の様子を示しているものとする。
【0067】
主制御部40は、時刻T0より前から(例えば常時)、下共通画像39aを下HUD表示領域9に表示している。このとき、主制御部40は、下共通画像39aを下HUD表示色及び上HUD表示色とは異なる表示色(色相)で表示する。下共通画像39aを下HUD表示色及び上HUD表示色とは異なる色相は、例えば、図3のxy色度図において、座標a2(下HUD表示色)に関して座標a1(上HUD表示色)から離れる方向に位置する座標で規定される色である。例えば、主制御部40は、下HUD表示色及び上HUD表示色が赤である場合、例えば青や緑、黄色で下共通画像39aを表示する。
主制御部40は、時刻T0で共通画像が下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動するように表示されると判定した場合、時刻T0から時刻T2にかけて、下共通画像39aを、右斜め上方の上HUD表示領域8に近付いた位置に移動する。このとき、主制御部40は、下共通画像39aが下HUD表示色に近づくように色相を変化しながら下共通画像39aを移動する。主制御部40は、時刻T2に到達する前に、下共通画像39aを下HUD表示色に変化させる。その後、主制御部40は、時刻T2で下共通画像39aを非表示とすると同時に、上HUD表示領域8に上HUD表示色で上共通画像28aを表示する。
【0068】
図15は、第六表示制御処理により共通画像が表示される場合の表示例を示す図である。図15の上方に示される遷移前の表示例は、時刻T2直前の様子を示しているものとする。主制御部40は、時刻T0より前から(例えば常時)、下共通画像39aを下HUD表示領域9に表示されており、下共通画像39aは警告度合の大小を表すインジケータの機能を有する。下共通画像39aは、危険度に応じて色相を変えながら、左から右に移動する。
【0069】
主制御部40は、時刻T0より前において、例えば危険度が低いことを示す緑色で下共通画像39aを表示する。その後、危険度が上昇し、主制御部40は、時刻T0で共通画像が下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動するように表示されると判定した場合、時刻T0から時刻T2にかけて、下共通画像39aの色相を変化しながら下共通画像39aを右方に移動する。このとき、主制御部40は、危険度が上昇していることを示すように、色相を、例えば黄色から下HUD表示色である赤に徐々に変化させる。主制御部40は、時刻T2に到達する前に、下共通画像39aを下HUD表示色に変化させる。下共通画像39aは、時刻T0より前よりも、下HUD表示領域9において運転者4の視線4aに近い位置に移動することで、運転者4に認識されやすくなっている。
【0070】
その後、主制御部40は、時刻T2で下共通画像39aを非表示とすると同時に、上HUD表示領域8に上HUD表示色で上共通画像28aを表示する。これにより、共通画像は下HUD表示領域9から上HUD表示領域8に移動して、運転者4の視線4aに更に近づき、運転者4に認識されやすくなる。
【0071】
主制御部40は、第五及び第六表示制御処理を実行することにより、下HUD表示領域9において下共通画像39aを上HUD表示色に変化させることなく、下HUD表示色とは異なる色から徐々に下HUD表示色に近づけた。これにより、主制御部40は、下共通画像39aの演色性を低下させることなく、下共通画像39aが上HUD表示領域8に移動した後に運転者4に与える色相差を抑制できると共に、視認性も維持できる。
【0072】
尚、上HUD表示領域8から下HUD表示領域9に移動するように共通画像が表示される場合についても、第三から第六表示制御処理が実行されてもよい。この場合の第三表示制御処理において、主制御部40は、上HUD表示領域8から下HUD表示領域9に移動した下共通画像39aを、上HUD表示色又は下HUD表示色よりも上HUD表示色に近い色で表示した後に、下HUD表示色に変化して表示する。また、第四表示制御処理において、主制御部40は、上HUD表示領域8から下HUD表示領域9に移動した下共通画像39a(複製共通画像39b)を、上HUD表示色又は下HUD表示色よりも上HUD表示色に近い色で表示した後に、下HUD表示色に変更しながら上HUD表示領域8から離れる方向に移動する。また、第五及び第六表示制御処理において、主制御部40は、下HUD表示領域9に移動した下共通画像39aを下HUD表示色で表示し、その後上HUD表示色及び下HUD表示色とは異なる表示色で表示する。又は、主制御部40は、下HUD表示領域9に移動した下共通画像39aを下HUD表示色を経ることなく上HUD表示色及び下HUD表示色とは異なる表示色で表示してもよい。
【0073】
このような本実施形態における表示システム10は、演色性の異なる複数のHUD20、30間で共通画像を表示する場合であっても、上述した種々の表示制御処理を実行することにより、意図しない色相差による違和感を抑制できる。これにより、表示システム10は、上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9に表示される各共通画像が、異なる情報を伝えているものではなく、同一の情報を伝えるものであることを運転者4に認識させることができる。ゆえに、表示システム10は、複数の表示装置間における視認性を向上できる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0075】
例えば、第一表示装置及び第二表示装置が、共にHUDである例を説明したが、第二表示装置がTFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示器や有機EL(Electroluminescence)表示器等の表示パネルに表示した実像を視認させるものであってもよい。また、投影部材がウインドシールド3である例を説明したが、これに代えてコンバイナであってもよい。
【0076】
表示システム10においては、CIE1931色空間のxy色度図を表色系の一例として用いたが、他の表色系を適用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 車両
2 インストルメントパネル
3 ウインドシールド
3a 遮光部
4 運転者(視認者)
4a 視線
5 ステアリングホイール
8 上HUD表示領域(第一表示領域)
8a 下辺
8b 上辺
8c 左辺
8d 右辺
9 下HUD表示領域(第二表示領域)
9a 下辺
9b 上辺
9c 左辺
9d 右辺
10 表示システム
20 上HUD(第一表示装置)
21 表示器
22 凹面鏡
24 筐体
25 上HUD表示制御部
28 上HUD画像
28a 上共通画像(共通画像)
30 下HUD(第二表示装置)
31 表示器
34 筐体
35 下HUD表示制御部
39 下HUD画像
39a 下共通画像(共通画像)
40 主制御部(表示制御部)
50 CANバス
51 視線センサ
52 周辺情報取得部
53 車外情報取得部
54 カーナビゲーションシステム
55 車両ECU
L1 表示光
L2 表示光
V1、V2 虚像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15