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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182917
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】電子線照射装置
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/04 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
G21K5/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096170
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】503237806
【氏名又は名称】株式会社NHVコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】水谷 睦
(57)【要約】
【課題】吊り具を支持するための吊り具支持材を照射室に常設した電子線照射装置を提供する。
【解決手段】電子線照射装置1は、電子線を発生させる電子線発生手段2と、電子線が照射される被照射物を搬送する搬送手段3と、電子線発生手段2及び記搬送手段3を収納する開閉可能な照射室4とを備える。照射室4は、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6を備え、互いに接近及び離隔するよう第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の少なくとも一方が水平移動可能である。電子線照射装置1は、吊り具11を支持するための吊り具支持材7であって、照射室4が開いた状態で第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の間に前記水平移動の方向に沿って架け渡された吊り具支持材7をさらに備える。第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の一方は、吊り具支持材7を固定する固定部8を備え、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の他方は、吊り具支持材7を前記水平移動の方向にスライド可能に支持する支持部9を備える。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を発生させる電子線発生手段と、
前記電子線が照射される被照射物を搬送する搬送手段と、
前記電子線発生手段及び前記搬送手段を収納する開閉可能な照射室であって、第一遮蔽部及び第二遮蔽部を備え、互いに接近及び離隔するよう前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の少なくとも一方が水平移動可能な照射室と、を備えた電子線照射装置であって、
吊り具を支持するための吊り具支持材であって、前記照射室が開いた状態で前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の間に前記水平移動の方向に沿って架け渡された吊り具支持材をさらに備え、
前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の一方は、前記吊り具支持材を固定する固定部を備え、
前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の他方は、前記吊り具支持材を前記水平移動の方向にスライド可能に支持する支持部を備える、電子線照射装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記吊り具支持材を摺動させる摺動部材を備える、請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項3】
前記摺動部材は、上側において前記吊り具支持材を摺動させる車輪である、請求項2に記載の電子線照射装置。
【請求項4】
前記摺動部材は、内側において前記吊り具支持材を摺動させるリニアブッシュである、請求項2に記載の電子線照射装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記水平移動の方向に沿って延びるガイドレールと、前記ガイドレールを走行しかつ前記吊り具支持材に固定される走行部材と、を備える、請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項6】
前記走行部材は、前記ガイドレールを転動する車輪である、請求項5に記載の電子線照射装置。
【請求項7】
前記固定部は、前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の一方の天井壁上に設けられ、
前記支持部は、前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の他方の天井壁上に設けられる、請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項8】
前記支持部は、前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の他方の天井壁に前記水平移動の方向に沿って延びるように形成され、前記吊り具支持材が挿入される空洞を有する孔壁であり、
前記孔壁は、前記吊り具支持材と密接する、請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項9】
前記第二遮蔽部が前記第一遮蔽部に対して接近及び離隔するよう水平移動可能であり、
前記第二遮蔽部が前記搬送手段を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の電子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図21は、例えば特許文献1に記載の従来の電子線照射装置の概略構造を示す。図21に示す電子線照射装置において、照射室100は、それぞれの開口部が対向するよう配置された固定遮蔽部101及び可動遮蔽部102で構成されている。電子線発生手段103は固定遮蔽部101に取り付けられ、被照射物を搬送する搬送手段104は可動遮蔽部102に取り付けられている。図21に示す電子線照射装置では、被照射物が例えば絶縁層で被覆された電線やケーブルであり、搬送手段104は軸受によって可動遮蔽部102に回転可能に設けられたローラ105を備える。可動遮蔽部102は、スライドレール106上を固定遮蔽部101に対して接近及び離隔するよう水平方向に移動可能であり、可動遮蔽部102の水平移動により、照射室100の開閉が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-278399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子線照射装置において、照射室のメンテナンスの際には、照射室100を開放して照射室100に収納された機器、例えば搬送手段104のローラ105などを可動遮蔽部102から取り外して搬出する必要がある。ローラ105の搬出作業においては、固定遮蔽部101及び可動遮蔽部102を離隔させた状態で、チェーンブロックなどの吊り具108を支持可能な一対の棒状の吊り具支持材107を、離隔した固定遮蔽部101及び可動遮蔽部102の間に互いに平行となるように架け渡し、一対の吊り具支持材107の両端部を固定遮蔽部101及び可動遮蔽部102の天井壁にそれぞれ固定する。そして、吊り具108によってローラ105を吊り下げて保持しながら可動遮蔽部102から取り外して固定遮蔽部101及び可動遮蔽部102の間の空いたスペースまで搬出する。そして、空いたスペースでクレーンなどにローラ105を移してクレーンでローラ105を輸送する。
【0005】
上述した従来の電子線照射装置では、ローラ105の搬出のために吊り具支持材107を固定遮蔽部101の天井壁及び可動遮蔽部102の天井壁に設置している。よって、吊り具支持材107の設置に労力や時間を要するうえ、固定遮蔽部101の天井壁及び可動遮蔽部102の天井壁は床からおおよそ3mぐらいの高さに位置していて吊り具支持材107の設置は高所で行われるため、作業者の安全確保が必要である。また、吊り具支持材107の管理が必要であり、その保管場所を確保しなければ吊り具支持材107を紛失する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、吊り具を支持するための吊り具支持材を照射室に常設した電子線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電子線を発生させる電子線発生手段と、前記電子線が照射される被照射物を搬送する搬送手段と、前記電子線発生手段及び前記搬送手段を収納する開閉可能な照射室であって、第一遮蔽部及び第二遮蔽部を備え、互いに接近及び離隔するよう前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の少なくとも一方が水平移動可能な照射室と、を備えた電子線照射装置に関する。本発明の電子線照射装置は、吊り具を支持するための吊り具支持材であって、前記照射室が開いた状態で前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の間に前記水平移動の方向に沿って架け渡された吊り具支持材をさらに備え、前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の一方は、前記吊り具支持材を固定する固定部を備え、前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の他方は、前記吊り具支持材を前記水平移動の方向にスライド可能に支持する支持部を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子線照射装置によれば、吊り具を支持するための吊り具支持材を照射室に常設しているので、メンテナンス時に照射室を開放して、照射室に収納された機器、例えば搬送手段を照射室から搬出する際に、吊り具支持材を照射室の天井に設置する必要がなく、その分、作業に要する労力の軽減や時間の短縮を図れるうえ、作業者の安全確保も必要でなくなる。また、本発明の電子線照射装置によれば、吊り具支持材の管理が不要であり、吊り具支持材を紛失する可能性もない。また、本発明の電子線照射装置によれば、照射室に常設された吊り具支持材が照射室の開閉を阻害しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】照射室が閉じた状態の電子線照射装置の正面図である。
図2】照射室が閉じた状態の電子線照射装置の背面図である。
図3】照射室が閉じた状態の電子線照射装置の平面図である。
図4】照射室が閉じた状態の電子線照射装置の底面図である。
図5】照射室が閉じた状態の電子線照射装置の右側面図である。
図6】照射室が閉じた状態の電子線照射装置の左側面図である。
図7図3のA-A断面図であり、照射室以外は省略している。
図8図3のB-B断面図である。
図9】照射室が開いた状態の電子線照射装置の平面図である。
図10】照射室が開いた状態の電子線照射装置の底面図である。
図11】照射室が開いた状態の電子線照射装置の右側面図である。
図12】照射室が開いた状態の電子線照射装置の左側面図である。
図13図9のA-A断面図であり、照射室以外は省略している。
図14図9のB-B断面図である。
図15】(A)支持部を拡大して示す斜視図であり、(B)固定部を拡大して示す斜視図である。
図16】(A)別形態の支持部を拡大して示す斜視図であり、(B)別形態の固定部を拡大して示す斜視図である。
図17】別形態の電子線照射装置において照射室が閉じた状態の断面図である。
図18図17の電子線照射装置において照射室が開いた状態の断面図である。
図19】別形態の電子線照射装置において照射室が閉じた状態の断面図である。
図20図19の電子線照射装置において照射室が開いた状態の断面図である。
図21】従来例の電子線照射装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る電子線照射装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図7図8図13図14及び図17図20では、説明の便宜上、構成の一部を簡略化又は省略している。
【0011】
図1図14に示すように、本実施形態の電子線照射装置1は、電子線を発生させる電子線発生手段2、電子線が照射される被照射物を搬送する搬送手段3、並びに、電子線発生手段2及び搬送手段3を収納する開閉可能な照射室4を備える。なお、図1図8では、照射室4が閉じた状態であり、図9図14では、照射室4が開いた状態である。
【0012】
電子線が照射される被照射物は、特に限定されるものではなく、例えば電線、光ケーブル、ワイヤー、ゴムホース、チューブ、フィルム、シート等の長尺の線材や帯状材を挙げることができる。本実施形態では、被照射物として電線を例にして説明する。
【0013】
電子線発生手段2は、電子線の生成及び被照射物に対する電子線の照射を行う。電子線発生手段2は、特に限定されるものではなく、例えば、電源タンク20、加速タンク21、走査室22及びポンプ室23を備えた従来から公知の構造であってよい。この構造の電子線発生手段2は、電源タンク20内でフィラメントの加熱により発生した電子を加速タンク21内の加速管で加速することでビーム状の電子線とした後、走査室22内の走査管220で電子線を走査し、走査管220の開口窓221から電子線を出射して、被照射物に電子線を照射する。走査管220の開口窓221は、電子線が透過可能な金属箔(窓箔)により覆われている。加速管及び走査管の内部区間は、ポンプ室23内の真空ポンプにより少なくとも電子線が生じている期間は真空状態とされる。スライドレール24は、電源タンク20を水平方向に往復移動可能に支持するものである。
【0014】
本実施形態では、電子線発生手段2は、水平方向に電子線を出射し、走査管220の開口窓221の側方が電子線照射エリアである。
【0015】
搬送手段3は、照射室4の外部から照射室4内の電子線照射エリアに被照射物を移動させ、電子線照射エリアを通過した被照射物が照射室4の外部に移動するように被照射物を搬送する。搬送手段3は、本実施形態では、上下一対のローラ30,31を備え、上下一対のローラ30,31間に設定された電子線照射エリアを長尺の被照射物が複数回往復通過するように搬送する装置である。上側のローラ30は、一対の軸受35等によって照射室4に取り付けられ、下側のローラ31は、一対の軸受36等によって照射室4に取り付けられている。
【0016】
長尺の被照射物は、照射室4に形成された被照射物入口40から複数のフリーローラ32-34を経て上下一対のローラ30,31に複数回巻き掛けられて電子線照射エリアに搬送される。そして、フリーローラ32-34と同一軸線上の異なる位置にある別のフリーローラを経て照射室4に形成された被照射物出口41から照射室4の外部に搬送される。
【0017】
照射室4は、外部へ電子線の流出を遮るために鉛系の金属で形成されている。照射室4は、本実施形態では直方体型の箱体であり、内部の空間40を囲むように、天井壁41、天井壁41と対向する底壁42、前壁43、前壁43に対向する後壁44、及び、互いに対向する一対の側壁を備えている。天井壁41、底壁42、前壁43、後壁44及び一対の側壁のそれぞれは、本実施形態では二つの壁が重ね合わされて一体化されているが、三つ以上の複数の壁が重ね合わされて一体化されていてもよいし、一つの厚い壁で構成されていてもよい。
【0018】
照射室4は、開閉可能であり、閉じた閉鎖状態では内部の空間40を密閉し、各壁により電子線が外部に流出するのを遮る。照射室4は、開いた開放状態では、照射室4内の例えば搬送手段3などを露出させる。
【0019】
照射室4は、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6を備える。第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6は、互いに接近及び離隔するように、少なくとも一方が水平移動可能である。水平移動の方向は、照射室4の前壁41と後壁42を結ぶ方向である。本実施形態では、第一遮蔽部5は枠組みに動かないように固定されており、第二遮蔽部6は一対のスライドレール10に水平移動可能に支持されている。
【0020】
第一遮蔽部5は、天井壁41の一部をなす第一天井壁41Aと、底壁42の一部をなす第一底壁42Aと、前壁43と、一対の側壁の一部をなす互いに対向する一対の第一側壁とを備え、前壁43と対向する位置に開口50を有する。第一遮蔽部5は、電子線発生手段2の走査管220を備えており、走査管220は前壁43を貫通して開口窓221が第一遮蔽部5内で後壁44の方を向くように水平に延びている。
【0021】
第二遮蔽部6は、天井壁41の一部をなす第二天井壁41Bと、底壁42の一部をなす第二底壁42Bと、後壁44と、一対の側壁の一部をなす互いに対向する一対の第二側壁とを備え、後壁44と対向する位置に開口60を有する。第二遮蔽部6は、搬送手段3を備えており、第二遮蔽部6内に固定された軸受35,36によりローラ30,31が回転可能に支持されている。ローラ30,31は、第二遮蔽部6内の後壁44から前壁43の方に寄った位置で一対の第二側壁の間を互いに平行をなして水平に延びている。
【0022】
第一天井壁41A及び第二天井壁41Bは同じ厚みを有しており、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6が接近して一体化することで照射室が閉状態にあるとき、上面同士、下面同士が面一となるように連なることで全体として天井壁41を形成する。第一底壁42A及び第二底壁42Bは同じ厚みを有しており、照射室4が閉状態にあるとき、上面同士、下面同士が面一となるように連なることで全体として底壁42を形成する。一対の第一側壁及び一対の第二側壁は同じ厚みを有しており、照射室4が閉状態にあるとき、外面同士、内面同士が面一となるように連なることで全体として一対の側壁を形成する。
【0023】
図1図3図5図9及び図11図14に示すように、本実施形態の電子線照射装置1は、吊り具11を支持するための吊り具支持材7を少なくとも一つ備える。吊り具11は、例えばチェーンブロックなどの重量物を吊り下げて保持しながら上下に移動させることが可能な器具であり、特定の器具には限定されない。吊り具支持材7は吊り具11が取り外し可能に取り付けられる。
【0024】
吊り具支持材7は、照射室4に常設されており、第一遮蔽部5から第二遮蔽部6に及ぶように設けられている。照射室4が開いた状態で第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の間に第二遮蔽部6の水平移動の方向に沿って架け渡されている。吊り具支持材7は、幅及び厚みよりも長さが十分に大きく、例えば棒状、板状などの好ましくは直線的に真っ直ぐ延びる形状を呈している。吊り具支持材7の長さは、照射室4が開いた状態で第一遮蔽部5の第一天井壁41Aから第二遮蔽部6の第二天井壁41Bまで到達することが可能であれば、特に限定されない。吊り具支持材7の材質は、特に限定されず、遮蔽室4に収納された機具、例えば搬送手段3のローラ30,31等の重量物が吊り具11を介して吊り下げられても、曲がったり折れたりしない強度を有していれば、金属製、木製、樹脂製等、いかなる材質にすることができる。本実施形態では、吊り具支持材7に、断面形状がローマ字の「H」に似た形状のH形鋼が用いられている。
【0025】
照射室4に常設される吊り具支持材7の数及び配置は、特に限定されない。本実施形態では、一対の吊り具支持材7が照射室4の天井壁41上に間隔をあけて互いに平行となるよう設けられている。一対の吊り具支持材7は、平面視で、上側のローラ30の左右に位置する一対の軸受35及び下側のローラ31の左右に位置する一対の軸受36の近傍においてその上方に配置されるように天井壁41上に設けられる。
【0026】
一対の吊り具支持材7は、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の一方、本実施形態では第二遮蔽部6の第二天井壁41B上においては固定部8を介して固定され、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の他方、本実施形態では第一遮蔽部5の第一天井壁41A上においては支持部9を介して第二遮蔽部6の水平移動の方向にスライド可能に支持されている。
【0027】
固定部8は、吊り具支持材7の一部分を第二遮蔽部6の第二天井壁41Bに動かないように固定する。本実施形態では、固定部8は、吊り具支持材7の長手方向の一方側の端部を第二天井壁41Bに動かないように固定する。本実施形態では、固定部8は、図15(B)に示すように、断面形状がローマ字の「H」に似た形状の基台80を備える。基台80は、上下一対の互いに平行な水平板部800と、上下一対の水平板部800を連結する垂直板部801とを備える。下側の水平板部800は第二遮蔽部6の第二天井壁41Bにボルト又はネジ82などを用いて固定される。上側の水平板部800は第二遮蔽部6の第二天井壁41Bの上方において吊り具支持材7の一部分を受け、吊り具支持材7の一部分がボルト又はネジ81などを用いて固定される。これにより、吊り具支持材7は第二遮蔽部6とともに水平移動する。なお、基台80の高さ(垂直板部801の上下方向の大きさ)及び横幅(水平板部800の左右方向の大きさ)は、吊り具支持材7の高さ及び横幅よりも大きいが、吊り具支持材7の高さ及び横幅と同じ大きさであってもよい。
【0028】
支持部9は、吊り具支持材7を第二遮蔽部6の水平移動の方向にスライド可能に支持する。支持部9は、例えば、水平移動する吊り具支持材7を摺動させることで、吊り具支持材7をスライド可能に支持する。本実施形態では、摺動部材は、図15(A)に示すように、上側において吊り具支持材7を摺動させる車輪92である。車輪92は、吊り具支持材7をなめらかに滑らせてスライドさせることができる。車輪92は、軸受93により回転可能に支持されている。
【0029】
支持部9は、車輪92を第一遮蔽部5の第一天井壁41Aに設置するための基台90を備える。基台90は、水平板部900と、水平板部900に間隔をあけて設けられた左右一対の互いに平行な垂直板部901とを備える。水平板部900は第一遮蔽部5の第一天井壁41Aにボルト又はネジ91などを用いて固定される。また、水平板部900には軸受93がボルト又はネジ94などを用いて固定される。左右一対の垂直板部901は、車輪94上を摺動する吊り具支持材7を間に挟んでおり、吊り具支持材7が真っ直ぐに水平移動するようガイドする。
【0030】
固定部8は、吊り具支持材7の一部分を第二遮蔽部6の第二天井壁41Bに固定できれば、その構造は特に限定されない。また、支持部9は、第二遮蔽部6の水平移動の方向にスライド可能に支持できれば、その構造は特に限定されない。
【0031】
例えば、吊り具支持材7に断面形状が円形の丸鋼が用いられる場合、図16(B)に示すように、固定部8は、第二遮蔽部6の第二天井壁41Bにボルト又はネジ86などを用いて固定される下側の挟持部材84と、下側の挟持部材84にボルト又はネジ85などを用いて固定される上側の挟持部材83とを備え、上下一対の挟持部材83,84で吊り具支持材7の一部分を挟持することで、吊り具支持材7の一部分を第二遮蔽部6の第二天井壁41Bに動かないように固定してもよい。
【0032】
また、図16(A)に示すように、支持部9は、第一遮蔽部5の第一天井壁41Aにボルト又はネジ96などを用いて固定される軸受95を備えている。軸受95は、リニアブッシュ(あるいはスライドブッシュ)97を内蔵している。リニアブッシュ97は、鋼球の転がりを利用した直線運動機構であり、その内側に吊り具支持材7を通すことで、吊り具支持材7をなめらかに摺動させてスライドさせることができる。支持部9は、リニアブッシュ97を備えることで、吊り具支持材7を第二遮蔽部6の水平移動の方向にスライド可能に支持するとともに、吊り具支持材7が真っ直ぐに水平移動するようガイドする。
【0033】
以上に説明した本実施形態の電子線照射装置1は、電子線発生手段2及び搬送手段3を収納する照射室4が第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6を備え、互いに接近及び離隔するよう第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の少なくとも一方(本実施形態では第二遮蔽部6)が水平移動可能である電子線照射装置1である。電子線照射装置1は、吊り具11を支持するための吊り具支持材7をさらに備え、吊り具支持材7は、照射室4が開いた状態において第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の間に前記水平移動の方向に沿って架け渡されており、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の一方(本実施形態では第二遮蔽部6)は、吊り具支持材7を固定する固定部8を備え、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の他方(本実施形態では第一遮蔽部5)は、吊り具支持材7を前記水平移動の方向にスライド可能に支持する支持部9を備える。
【0034】
上記構造により、本実施形態の電子線照射装置1は、図13に示すように、照射室4を開放するために、第二遮蔽部6を第一遮蔽部5から離隔させると、第二遮蔽部6の水平移動とともに吊り具支持材7も水平移動し、吊り具支持材7が架け渡された第一遮蔽部5側においては、吊り具支持材7は支持部9により支持されながら水平移動の方向にスライドする。照射室4を閉鎖するために、第二遮蔽部6を第一遮蔽部5に接近させる場合も同様である。そのため、吊り具支持材7を照射室4に常設しても、吊り具支持材7が照射室4の開閉を阻害しない。
【0035】
そして、照射室4のメンテナンスのために、照射室4に収納された機器、例えば搬送手段3のローラ30,31を照射室4から搬出する場合は、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の間に架け渡された吊り具支持材7に吊り具11を取り付け、吊り具11でローラ30,31を一つずつ吊り下げて保持しながら第二遮蔽部6内から第一遮蔽部5との間の空いたスペースに取り出す。そして、吊り具11からクレーン等にローラ30,31を移すことでローラ30,31を搬出することができる。
【0036】
このように、本実施形態の電子線照射装置1によれば、吊り具11を支持するための吊り具支持材7を照射室4に常設しているので、メンテナンス時に照射室4を開放して例えば搬送手段3のローラ30,31等の機器を照射室4から搬出する際に、吊り具支持材7を照射室の天井に設置する必要がなく、その分、作業に要する労力の軽減や時間の短縮を図れるうえ、作業者の安全確保も必要でなくなる。
【0037】
さらに、本実施形態の電子線照射装置1によれば、吊り具支持材7を照射室4に常設しているので、吊り具支持材7の管理が不要であり、吊り具支持材7を紛失する可能性もない。
【0038】
以上、本発明の電子線照射装置の実施形態について説明したが、本発明の電子線照射装置は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0039】
例えば、上述した実施形態の電子線照射装置1において、第一遮蔽部5が水平移動可能でありかつ第二遮蔽部6が動かないことで、照射室4が開閉してもよいし、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6がともに水平移動可能であることで、照射室4が開閉してもよい。
【0040】
また、上述した実施形態の電子線照射装置1及び変形例の電子線照射装置において、第一遮蔽部5が吊り具支持材7を固定する固定部8を備え、第二遮蔽部6が吊り具支持材7をスライド可能に支持する支持部9を備えていてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態の電子線照射装置1及び変形例の電子線照射装置において、電子線発生手段2は、鉛直方向に電子線を出射し、走査管220の開口窓221の下方の電子線照射エリアに搬送手段3の一対のローラ30,31が左右に配置されていてもよい。この変形例の電子線照射装置では、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の一方が電子線発生手段2を備え、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の他方が搬送手段3を備えていてもよいし、第一遮蔽部5及び第二遮蔽部6の一方が電子線発生手段2及び搬送手段3を備えていてもよい。
【0042】
また、上述した実施形態の電子線照射装置1及び変形例の電子線照射装置において、支持部9の別形態を図17及び図18に示す。この変形例の電子線照射装置1において、支持部9は、第一遮蔽部5の第一天井壁41A上に設けられるガイドレール97と、ガイドレール97を走行する走行部材98とを備える。ガイドレール97は、第二遮蔽部6の水平移動の方向に沿って真っ直ぐに延びる。ガイドレール97の数及び配置は、吊り具支持材7の数及び配置に応じた数及び配置とされる。本実施形態では、一対のガイドレール97が第一遮蔽部5の第一天井壁41A上に間隔をあけて互いに平行となるよう設けられている。走行部材98は、ガイドレール97を走行可能であれば特に限定されるものではないが、好ましくはガイドレール97を転動する車輪である。走行部材98は、吊り具支持材7に固定されており、第二遮蔽部6の水平移動とともに吊り具支持材7が水平移動することに伴ってガイドレール97を走行する。走行部材98がガイドレール97を走行することにより、吊り具支持材7は第二遮蔽部6の水平移動の方向にスライド可能に支持されるとともに、真っ直ぐに水平移動するようガイドされる。
【0043】
また、上述した実施形態の電子線照射装置1及び変形例の電子線照射装置において、支持部9の別形態を図19及び図20に示す。この変形例の電子線照射装置1において、支持部9は、第一遮蔽部5の第一天井壁41Aに形成された空洞を内側に有する孔壁99である。孔壁99は、一端が開口しかつ他端が閉鎖されている。前記空洞は、一端から他端に向かって第二遮蔽部6の水平移動の方向に沿って真っ直ぐに延び、孔壁99の一端の開口から水平移動する吊り具支持材7が挿入可能である。孔壁99の数及び配置は、吊り具支持材7の数及び配置に応じた数及び配置とされる。本実施形態では、一対の孔壁99が第一遮蔽部5の第一天井壁41Aに間隔をあけて互いに平行となるよう形成されている。孔壁99の断面の形状及び大きさは、吊り具支持材7の断面の形状及び大きさとほぼ一致する。これにより、孔壁99は、内側の空洞に挿入される吊り具支持材7と密接し、孔壁99と孔壁99内の吊り具支持材7との間に隙間が生じるのを防止されている。吊り具支持材7は、第二遮蔽部6の水平移動に伴って水平移動する際に、孔壁99内を摺動することにより、吊り具支持材7は第二遮蔽部6の水平移動の方向にスライド可能に支持されるとともに、真っ直ぐに水平移動するようガイドされる。
【0044】
照射室4が閉鎖状態のときは、吊り具支持材7は孔壁99の他端に突き当たり、孔壁99の内側の空洞は吊り具支持材7により埋められている。この変形例の電子線照射装置1では、吊り具支持材7は、照射室4の一部分を構成しており、電子線が外部に流出するのを遮る役割も果たす。そのため、吊り具支持材7は中実の構造であり、好ましくは照射室4と同じ材質である。
【0045】
なお、この変形例の電子線照射装置1では、固定部8は、第二遮蔽部6の第二天井壁41Bに形成された空洞を内側に有する孔壁87である。孔壁87は、一端が開口しかつ他端が閉鎖されており、孔壁87内に吊り具支持材7の端部が固定されている。ただし、固定部8は、上述した実施形態と同様の構造のものを第二遮蔽部6の第二天井壁41B上に設けてもよい。
【0046】
以上に説明した通り、本発明の電子線照射装置は、本開示の課題を解決するため、以下の項1に記載の電子線照射装置を包含する。
【0047】
項1.電子線を発生させる電子線発生手段と、
前記電子線が照射される被照射物を搬送する搬送手段と、
前記電子線発生手段及び前記搬送手段を収納する開閉可能な照射室であって、第一遮蔽部及び第二遮蔽部を備え、互いに接近及び離隔するよう前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の少なくとも一方が水平移動可能な照射室と、を備えた電子線照射装置であって、
吊り具を支持するための吊り具支持材であって、前記照射室が開いた状態で前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の間に前記水平移動の方向に沿って架け渡された吊り具支持材をさらに備え、
前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の一方は、前記吊り具支持材を固定する固定部を備え、
前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の他方は、前記吊り具支持材を前記水平移動の方向にスライド可能に支持する支持部を備える、電子線照射装置。
【0048】
また本発明の電子線照射装置は、上記項1に記載の電子線照射装置の好ましい態様として、以下の項2に記載の電子線照射装置を包含する。
【0049】
項2.前記支持部は、前記吊り具支持材を摺動させる摺動部材を備える、項1に記載の電子線照射装置。
【0050】
また本発明は、上記項2に記載の電子線照射装置の好ましい態様として、以下の項3及び項4に記載の電子線照射装置を包含する。
【0051】
項3.前記摺動部材は、上側において前記吊り具支持材を摺動させる車輪である、項2に記載の電子線照射装置。
【0052】
項4.前記摺動部材は、内側において前記吊り具支持材を摺動させるリニアブッシュである、項2に記載の電子線照射装置。
【0053】
また本発明は、上記項1に記載の電子線照射装置の好ましい態様として、以下の項5に記載の電子線照射装置を包含する。
【0054】
項5.前記支持部は、前記水平移動の方向に沿って延びるガイドレールと、前記ガイドレールを走行しかつ前記吊り具支持材に固定される走行部材と、を備える、項1に記載の電子線照射装置。
【0055】
また本発明は、上記項5に記載の電子線照射装置の好ましい態様として、以下の項6に記載の電子線照射装置を包含する。
【0056】
項6.前記走行部材は、前記ガイドレールを転動する車輪である、項5に記載の電子線照射装置。
【0057】
また本発明は、上記項1から6に記載の電子線照射装置の好ましい態様として、以下の項7に記載の電子線照射装置を包含する。
【0058】
項7.前記固定部は、前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の一方の天井壁上に設けられ、
前記支持部は、前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の他方の天井壁上に設けられる、項1から項6のいずれか一項に記載の電子線照射装置。
【0059】
また本発明は、上記項1に記載の電子線照射装置の好ましい態様として、以下の項8に記載の電子線照射装置を包含する。
【0060】
項8.前記支持部は、前記第一遮蔽部及び前記第二遮蔽部の他方の天井壁に前記水平移動の方向に沿って延びるように形成され、前記吊り具支持材が挿入される空洞を内側に有する孔壁であり、
前記孔壁は、前記吊り具支持材と密接する、項1に記載の電子線照射装置。
【0061】
また本発明は、上記項1から8に記載の電子線照射装置の好ましい態様として、以下の項9に記載の電子線照射装置を包含する。
【0062】
項9.前記第二遮蔽部が前記第一遮蔽部に対して接近及び離隔するよう水平移動可能であり、
前記第二遮蔽部が前記搬送手段を備える、項1から項8のいずれか一項に記載の電子線照射装置。
【符号の説明】
【0063】
1 電子線照射装置
2 電子線発生手段
3 搬送手段
4 照射室
5 第一遮蔽部
6 第二遮蔽部
7 吊り具支持材
8 固定部
9 支持部
11 吊り具
92 車輪(摺動部材)
97 ガイドレール
98 車輪(走行部材)
99 孔壁
950 リニアブッシュ(摺動部材)
図1
図2
図3
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図5
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