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特開2023-182921超音波シール装置及び超音波シール装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182921
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】超音波シール装置及び超音波シール装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 51/22 20060101AFI20231220BHJP
   B65B 51/10 20060101ALI20231220BHJP
   B29C 65/08 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B65B51/22 100
B65B51/10 210
B65B51/10 220
B29C65/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096175
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000108281
【氏名又は名称】ゼネラルパッカー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】安田 雅克
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一輝
【テーマコード(参考)】
3E094
4F211
【Fターム(参考)】
3E094AA12
3E094CA06
3E094CA22
3E094DA06
3E094GA01
3E094GA15
3E094GA30
3E094HA20
4F211AA04
4F211AC03
4F211AH54
4F211AH57
4F211AK03
4F211AP11
4F211TA01
4F211TC08
4F211TD11
4F211TJ11
4F211TN22
4F211TQ01
(57)【要約】
【課題】省エネルギーを実現することができ、シール不良を防止することができるようにした超音波シール装置と、当該超音波シール装置の制御方法を提供する。
【解決手段】超音波シール装置10が備える制御部13は、超音波発振子18の主振動周波数を検出する振動センサ50が出力した主周波数信号に基づいて、超音波発振子がホーン15へ印加した印加熱と、包装袋Bの溶着で消費した溶着熱以外の余剰熱を求め、印加熱と余剰熱の差から次の溶着工程で不足する不足エネルギーを求める。さらに、余剰熱から放熱分を除いてホーン又はアンビル16の蓄熱に係る蓄積エネルギーを求め、前後するシール工程で繰り越される蓄積エネルギー分を不足エネルギーから引いた従振動エネルギーに係る振動制御信号を振動部ユニット14出力すると共に、蓄熱に基づくホーン又はアンビルに係る環境温度に基づいてアクチュエータへ位置制御信号を出力するようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の超音波振動を伝達する押圧面を有するホーンと、
当該ホーンの前記押圧面と対向配置された受け面を有するアンビルと、
所定の振動周波数で前記超音波振動を発振する超音波発振子、及び当該超音波発振子から前記超音波振動を出力する出力軸を有し、当該出力軸の先端に前記ホーンが連結された振動部ユニットと、
当該振動部ユニットを接離自在に保持し、前記振動部ユニットに連結された前記ホーンを前記アンビルに向かって近接させたときに所定の圧力で前記押圧面を前記受け面に向かって押圧するアクチュエータと、
前記超音波発振子の前記振動周波数を検出する振動センサと、
当該振動センサで検出した前記振動周波数に基づいて前記振動部ユニットと前記アクチュエータの双方又はいずれか一方の動作を制御する制御部とから構成され、
前記押圧面と前記受け面のいずれか一方の所定位置に被シール体の被圧接部位を頂部で圧接するシール突条を形成すると共に、
前記押圧面と前記受け面のいずれか一方の所定位置に前記被シール体の被挟持部位が押し込まれるスロットを形成し、他方に当該スロットへ前記被挟持部位を押し込んで被シール体を挟持する挟持突条を形成して、
前記アクチュエータが前記振動部ユニットに連結された前記ホーンを前記アンビルに向かって近接させて、前記被挟持部位を前記スロットと前記挟持突条で挟持して前記被シール体を前記押圧面と受け面の間に固定し、前記押圧面を前記受け面に向かって押圧すると共に、前記超音波発振子が所定の主超音波振動で発振して、当該主超音波振動に係る主振動エネルギーが前記ホーンへ印加されたとき、
前記シール突条で圧接されている前記被圧接部位が前記主振動エネルギーに係る摩擦熱による所定のシール温度で溶着すると共に、当該摩擦熱で溶解した前記被圧接部位へ前記シール突条が所定の沈み込み量で沈み込んで、当該シール突条に沿って前記被圧接部位を線状にシールするようにした超音波シール装置であって、
前記振動センサが、前記主超音波振動に係る主振動周波数を検出して、当該主振動周波数に基づく主周波数信号を前記制御部へ出力したとき、
当該制御部が、前記主振動エネルギーに基づく印加熱に関して、前記主周波数信号の入力開始時刻から所定の検出時刻までの印加熱総量を求めると共に、前記摩擦熱から前記シール突条と前記押圧面が先の溶着に係る仕事で消費した溶着熱を除いた余剰熱に関して、前記入力開始時刻から前記検出時刻までの余剰熱総量を求めて、前記印加熱総量から前記余剰熱総量を除いた前記検出時刻における後の溶着に係る仕事で不足する不足エネルギーを算出し、
前記余剰熱から所定の放熱分を除いて、前記検出時刻における前記ホーンと前記アンビルに蓄積されている蓄熱に基づいて、前記ホーン及び前記アンビルを含めた近傍の環境温度を算出し、
前記不足エネルギーから前記蓄熱に係る蓄積エネルギーを差し引いたエネルギーを、前記超音波発振子が出力する従超音波振動で補填するため、当該従超音波振動に係る振動制御信号を前記振動部ユニットへ出力し、
前記従超音波振動に係る従振動エネルギーと前記環境温度によって溶かされる前記被圧接部位に対して、前記押圧面を備えた前記ホーンを所定の位置へ進退させる位置制御信号を前記アクチュエータへ出力して、
当該アクチュエータが、前記位置制御信号に基づいて前記振動部ユニットの位置を制御して、前記シール突条の前記被圧接部位に対する前記沈み込み量を調整し、
前記振動部ユニットが、前記振動制御信号に基づいて前記超音波振動発振子を発振させて、前記従超音波振動を出力して、
前記環境温度の昇降に対して、前記超音波発振子が前記従超音波振動によって前記被圧接部位へ印加する前記従振動エネルギーを調整すると共に、当該従振動エネルギーと前記環境温度によって溶融する前記被圧接部位に、前記シール突条が沈み込む前記沈み込み量が所定の範囲内で一定に保持されるように、前記アクチュエータが前記振動部ユニットの位置を調整して、前記被圧接部位をシールするようにしたことを特徴とする超音波シール装置。
【請求項2】
前記沈み込み量が10μm~200μmであることを特徴とする請求項1に記載の超音波シール装置。
【請求項3】
前記被圧接部位がレトルトパウチ用合成樹脂材からなる場合に、前記沈み込み量が60μm~75μmであることを特徴とする請求項2に記載の超音波シール装置。
【請求項4】
所定の前記検出時刻における前記不足エネルギーが、前記入力開始時刻から略一定であることを特徴とする請求項1に記載の超音波シール装置。
【請求項5】
前記被シール体が、少なくとも袋口に所定の熱溶着性フィルムを備えた包装袋であることを特徴とする請求項1に記載の超音波シール装置。
【請求項6】
前記被シール体が、容器の周縁部に所定の熱溶着性フィルムを溶着して覆蓋可能な包装容器であることを特徴とする請求項1に記載の超音波シール装置。
【請求項7】
所定の超音波振動を伝達する押圧面を有するホーンと、
当該ホーンの前記押圧面と対向配置された受け面を有するアンビルと、
所定の振動周波数で前記超音波振動を発振する超音波発振子、及び当該超音波発振子から前記超音波振動を出力する出力軸を有し、当該出力軸の先端に前記ホーンが連結された振動部ユニットと、
当該振動部ユニットを接離自在に保持し、前記振動部ユニットに連結された前記ホーンを前記アンビルに向かって近接させたときに所定の圧力で前記押圧面を前記受け面に向かって押圧するアクチュエータと、
前記超音波発振子の前記振動周波数を検出する振動センサと、
当該振動センサで検出した前記振動周波数に基づいて前記振動部ユニットと前記アクチュエータの双方又はいずれか一方の動作を制御する制御部とから構成され、
前記押圧面と前記受け面のいずれか一方の所定位置に被シール体の被圧接部位を頂部で圧接するシール突条を形成すると共に、
前記押圧面と前記受け面のいずれか一方の所定位置に前記被シール体の被挟持部位が押し込まれるスロットを形成し、他方に当該スロットへ前記被挟持部位を押し込んで被シール体を挟持する挟持突条を形成した超音波シール装置において、
前記アクチュエータが前記振動部ユニットに連結された前記ホーンを前記アンビルに向かって近接させて、前記被挟持部位を前記スロットと前記挟持突条で挟持して前記被シール体を前記押圧面と受け面の間に固定し、前記押圧面を前記受け面に向かって押圧して、前記シール突条と前記押圧面間で前記被圧接部位を圧接する処理を行う圧接工程と、
前記超音波発振子が所定の主超音波振動で発振して、当該主超音波振動に係る主振動エネルギーが前記ホーンへ印加されたとき、
当該ホーンが、前記主振動エネルギーに係る摩擦熱によって、前記シール突条で圧接されている前記被圧接部位を所定のシール温度で溶着する処理を行う溶着工程を備えた超音波シール装置の制御方法であって、
前記振動センサが、前記主超音波振動に係る主振動周波数を検出して、当該主振動周波数に基づく主周波数信号を前記制御部へ出力する処理を行う振動周波数出力工程と、
前記制御部が、前記主振動エネルギーに基づく印加熱に関して、前記主周波数信号の入力開始時刻から所定の検出時刻までの印加熱総量を求める処理を行う印加熱総量算出工程と、
前記制御部が、前記ホーンと前記アンビルが前記溶着工程において、前記摩擦熱から前記シール突条と前記押圧面が先の溶着に係る仕事で消費した溶着熱を除いた余剰熱に関して、前記入力開始時刻から前記検出時刻までの余剰熱総量を求める処理を行う余剰熱総量算出工程と、
前記制御部が、前記印加熱総量から前記余剰熱総量を除いた前記検出時刻における後の溶着に係る仕事で不足する不足エネルギーを算出する処理を行う不足エネルギー算出工程とを設け、
前記圧接工程と前記溶着工程の双方又はいずれか一方の工程と並行して、
前記制御部が、前記余剰熱から所定の放熱分を除いて、前記検出時刻における前記ホーンと前記アンビルに蓄積されている蓄熱に基づいて、前記ホーン及び前記アンビルを含めた近傍の環境温度を算出する処理を行う環境温度算出工程と、
前記制御部が、前記不足エネルギーから前記蓄熱に係る蓄積エネルギーを差し引いたエネルギーを、前記超音波発振子が出力する従超音波振動で補填するため、当該従超音波振動に係る振動制御信号を前記振動部ユニットへ出力する処理を行う振動制御工程と、
前記制御部が、前記従超音波振動に係る従振動エネルギーと前記環境温度によって溶かされる前記被圧接部位に対して、前記押圧面を備えた前記ホーンを所定の位置へ進退させる位置制御信号を前記アクチュエータへ出力する処理を行う位置制御工程とを設け、
前記圧接工程に対して、前記アクチュエータが、前記位置制御信号に基づいて前記振動部ユニットの位置を制御して、前記シール突条の前記被圧接部位に対する沈み込み量を調整する処理を行う押圧制御工程を設け、
前記溶着工程に対して、前記振動部ユニットが、前記振動制御信号に基づいて前記超音波振動発振子を発振させて、前記従超音波振動を出力する処理を行う溶着制御工程を設けて、
前記環境温度の昇降に対して、前記超音波発振子が前記従超音波振動によって前記被圧接部位へ印加する前記従振動エネルギーを調整すると共に、当該従振動エネルギーと前記環境温度によって溶融する前記被圧接部位に、前記シール突条が沈み込む前記沈み込み量が所定の範囲内で一定に保持されるように、前記アクチュエータが前記振動部ユニットの位置を調整して、前記被圧接部位をシールするようにしたことを特徴とする超音波シール装置の制御方法。
【請求項8】
前記沈み込み量が10μm~200μmであることを特徴とする請求項7に記載の超音波シール装置の制御方法。
【請求項9】
前記被圧接部位がレトルトパウチ用合成樹脂材からなる場合に、前記沈み込み量が60μm~75μmであることを特徴とする請求項7に記載の超音波シール装置の制御方法。
【請求項10】
所定の前記検出時刻における前記不足エネルギーが、前記入力開始時刻から略一定であることを特徴とする請求項7に記載の超音波シール装置の制御方法。
【請求項11】
前記被シール体が、少なくとも袋口に所定の熱溶着性フィルムを備えた包装袋であることを特徴とする請求項7に記載の超音波シール装置の制御方法。
【請求項12】
前記被シール体が、容器の周縁部に所定の熱溶着性フィルムを溶着して覆蓋可能な包装容器であることを特徴とする請求項7に記載の超音波シール装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波シール装置と、当該超音波シール装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波シール装置は、超音波振動で発振するホーンと、当該超音波振動を受けるアンビルとの間に熱溶着性のフィルムを挟み、超音波振動による摩擦熱で溶着している。
ホーン又はアンビルは、従来、超音波シール装置のシール条件、たとえば、ホーンに印加される超音波振動に係るエネルギー、超音波振動の振幅、周波数、ホーンをアンビルに対して押圧する圧力等を一定に維持して、上記の摩擦熱によってホーン又はアンビルが過熱された場合に起こり得るフィルムの過剰な溶融、或いはホーン又はアンビルの熱膨張を原因とするシール不良を防止している。
しかしながら、ホーンとアンビルを含めた超音波シール装置全体の温度は、当該超音波シール装置がホーンへ印加される超音波振動に係る振動エネルギーに基づく摩擦熱によって徐々に上昇する。このとき、上記のシール条件を超音波シール装置が熱平衡状態に至った定常状態下、すなわち、ホーンへ印加されるエネルギーに係る摩擦熱と、自然放熱又は冷却装置等で冷却放散される熱量が等しくなった時を基準に設定した場合、超音波シール装置の始動開始から定常状態へ至る過渡状態下で、溶融不足又は圧力不足等を原因とするシール不良が発生するおそれがある。一方、始動開始直後を基準に設定した場合、シールを複数回行って超音波シール装置、ホーン、及びアンビルそれぞれの温度が上昇したときに当該基準を外れて過剰に溶融されるシール不良が発生するおそれがある。
【0003】
上記の問題に対して、特開2017-47917号公報に開示されているフィルム用超音波シール装置は、従来の技術と同様に、搬送中のフィルムに対してホーンを冷却しながらフィルムの送り方向に沿って超音波シールを行うように構成されている。さらに、操作部からの操作信号に基づいて制御部が、ホーンを振動させる為の動作指令、冷却手段に対する動作指令を行うと共に、各動作指令が設定された期間を経過してから、ホーンの熱膨張変化の安定に関する情報を得て、包装運転に移行することを許可する情報を出力する暖機運転モードを備えるように構成されている。
これによって、フィルム用超音波シール装置は、超音波振動によって発熱するホーンの熱膨張変化を安定させながら、フィルム送り方向に沿って安定した適正なシール圧でフィルムに超音波シールすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-47917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の超音波シール装置及びフィルム用超音波シール装置は、所定のシール条件に合致するようにホーンへ印加する超音波振動に係る振動エネルギーを一定に制御している。そして、フィルム用超音波シール装置は、ホーンを所定時間一定に暖機させて、熱膨張変化が安定したときから、超音波シールを開始するように構成されている。
このように、暖機運転と冷却手段を組み合わせた場合、暖める一方で冷却していることから、ホーンへ印加された振動エネルギーは、摩擦熱以外に熱として無駄に消費されているため、エネルギー効率が悪く、超音波シール装置の電力消費が多くなるおそれがある。
また、暖機運転中、または暖機運転直後に包装機が動作している場合には、印加される振動エネルギーとそれに伴う摩擦熱が安定しないために、シール不良の袋製品が発生するおそれがある。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、省エネルギーを実現することができ、シール不良を防止することができるようにした超音波シール装置と、当該超音波シール装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の超音波シール装置は、所定の超音波振動を伝達する押圧面を有するホーンと、
当該ホーンの前記押圧面と対向配置された受け面を有するアンビルと、
所定の振動周波数で前記超音波振動を発振する超音波発振子、及び当該超音波発振子から前記超音波振動を出力する出力軸を有し、当該出力軸の先端に前記ホーンが連結された振動部ユニットと、
当該振動部ユニットを接離自在に保持し、前記振動部ユニットに連結された前記ホーンを前記アンビルに向かって近接させたときに所定の圧力で前記押圧面を前記受け面に向かって押圧するアクチュエータと、
前記超音波発振子の前記振動周波数を検出する振動センサと、
当該振動センサで検出した前記振動周波数に基づいて前記振動部ユニットと前記アクチュエータの双方又はいずれか一方の動作を制御する制御部とから構成され、
前記押圧面と前記受け面のいずれか一方の所定位置に被シール体の被圧接部位を頂部で圧接するシール突条を形成すると共に、
前記押圧面と前記受け面のいずれか一方の所定位置に前記被シール体の被挟持部位が押し込まれるスロットを形成し、他方に当該スロットへ前記被挟持部位を押し込んで被シール体を挟持する挟持突条を形成して、
前記アクチュエータが前記振動部ユニットに連結された前記ホーンを前記アンビルに向かって近接させて、前記被挟持部位を前記スロットと前記挟持突条で挟持して前記被シール体を前記押圧面と受け面の間に固定し、前記押圧面を前記受け面に向かって押圧すると共に、前記超音波発振子が所定の主超音波振動で発振して、当該主超音波振動に係る主振動エネルギーが前記ホーンへ印加されたとき、
前記シール突条で圧接されている前記被圧接部位が前記主振動エネルギーに係る摩擦熱による所定のシール温度で溶着すると共に、当該摩擦熱で溶解した前記被圧接部位へ前記シール突条が所定の沈み込み量で沈み込んで、当該シール突条に沿って前記被圧接部位を線状にシールするようにした超音波シール装置であって、
前記振動センサが、前記主超音波振動に係る主振動周波数を検出して、当該主振動周波数に基づく主周波数信号を前記制御部へ出力したとき、
当該制御部が、前記主振動エネルギーに基づく印加熱に関して、前記主周波数信号の入力開始時刻から所定の検出時刻までの印加熱総量を求めると共に、前記摩擦熱から前記シール突条と前記押圧面が先の溶着に係る仕事で消費した溶着熱を除いた余剰熱に関して、前記入力開始時刻から前記検出時刻までの余剰熱総量を求めて、前記印加熱総量から前記余剰熱総量を除いた前記検出時刻における後の溶着に係る仕事で不足する不足エネルギーを算出し、
前記余剰熱から所定の放熱分を除いて、前記検出時刻における前記ホーンと前記アンビルに蓄積されている蓄熱に基づいて、前記ホーン及び前記アンビルを含めた近傍の環境温度を算出し、
前記不足エネルギーから前記蓄熱に係る蓄積エネルギーを差し引いたエネルギーを、前記超音波発振子が出力する従超音波振動で補填するため、当該従超音波振動に係る振動制御信号を前記振動部ユニットへ出力し、
前記従超音波振動に係る従振動エネルギーと前記環境温度によって溶かされる前記被圧接部位に対して、前記押圧面を備えた前記ホーンを所定の位置へ進退させる位置制御信号を前記アクチュエータへ出力して、
当該アクチュエータが、前記位置制御信号に基づいて前記振動部ユニットの位置を制御して、前記シール突条の前記被圧接部位に対する前記沈み込み量を調整し、
前記振動部ユニットが、前記振動制御信号に基づいて前記超音波振動発振子を発振させて、前記従超音波振動を出力して、
前記環境温度の昇降に対して、前記超音波発振子が前記従超音波振動によって前記被圧接部位へ印加する前記従振動エネルギーを調整すると共に、当該従振動エネルギーと前記環境温度によって溶融する前記被圧接部位に、前記シール突条が沈み込む前記沈み込み量が所定の範囲内で一定に保持されるように、前記アクチュエータが前記振動部ユニットの位置を調整して、前記被圧接部位をシールするようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の超音波シール装置は、請求項1に記載の発明において、前記沈み込み量が10μm~200μmであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の超音波シール装置は、請求項2に記載の発明において、前記被圧接部位がレトルトパウチ用合成樹脂材からなる場合に、前記沈み込み量が60μm~75μmであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の超音波シール装置は、請求項1に記載の発明において、所定の前記検出時刻における前記不足エネルギーが、前記入力開始時刻から略一定であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の超音波シール装置は、請求項1に記載の発明において、前記被シール体が、少なくとも袋口に所定の熱溶着性フィルムを備えた包装袋であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の超音波シール装置は、請求項1に記載の発明において、前記被シール体が、容器の周縁部に所定の熱溶着性フィルムを溶着して覆蓋可能な包装容器であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の超音波シール装置の制御方法は、所定の超音波振動を伝達する押圧面を有するホーンと、
当該ホーンの前記押圧面と対向配置された受け面を有するアンビルと、
所定の振動周波数で前記超音波振動を発振する超音波発振子、及び当該超音波発振子から前記超音波振動を出力する出力軸を有し、当該出力軸の先端に前記ホーンが連結された振動部ユニットと、
当該振動部ユニットを接離自在に保持し、前記振動部ユニットに連結された前記ホーンを前記アンビルに向かって近接させたときに所定の圧力で前記押圧面を前記受け面に向かって押圧するアクチュエータと、
前記超音波発振子の前記振動周波数を検出する振動センサと、
当該振動センサで検出した前記振動周波数に基づいて前記振動部ユニットと前記アクチュエータの双方又はいずれか一方の動作を制御する制御部とから構成され、
前記押圧面と前記受け面のいずれか一方の所定位置に被シール体の被圧接部位を頂部で圧接するシール突条を形成すると共に、
前記押圧面と前記受け面のいずれか一方の所定位置に前記被シール体の被挟持部位が押し込まれるスロットを形成し、他方に当該スロットへ前記被挟持部位を押し込んで被シール体を挟持する挟持突条を形成した超音波シール装置において、
前記アクチュエータが前記振動部ユニットに連結された前記ホーンを前記アンビルに向かって近接させて、前記被挟持部位を前記スロットと前記挟持突条で挟持して前記被シール体を前記押圧面と受け面の間に固定し、前記押圧面を前記受け面に向かって押圧して、前記シール突条と前記押圧面間で前記被圧接部位を圧接する処理を行う圧接工程と、
前記超音波発振子が所定の主超音波振動で発振して、当該主超音波振動に係る主振動エネルギーが前記ホーンへ印加されたとき、
当該ホーンが、前記主振動エネルギーに係る摩擦熱によって、前記シール突条で圧接されている前記被圧接部位を所定のシール温度で溶着する処理を行う溶着工程を備えた超音波シール装置の制御方法であって、
前記振動センサが、前記主超音波振動に係る主振動周波数を検出して、当該主振動周波数に基づく主周波数信号を前記制御部へ出力する処理を行う振動周波数出力工程と、
前記制御部が、前記主振動エネルギーに基づく印加熱に関して、前記主周波数信号の入力開始時刻から所定の検出時刻までの印加熱総量を求める処理を行う印加熱総量算出工程と、
前記制御部が、前記ホーンと前記アンビルが前記溶着工程において、前記摩擦熱から前記シール突条と前記押圧面が先の溶着に係る仕事で消費した溶着熱を除いた余剰熱に関して、前記入力開始時刻から前記検出時刻までの余剰熱総量を求める処理を行う余剰熱総量算出工程と、
前記制御部が、前記印加熱総量から前記余剰熱総量を除いた前記検出時刻における後の溶着に係る仕事で不足する不足エネルギーを算出する処理を行う不足エネルギー算出工程とを設け、
前記圧接工程と前記溶着工程の双方又はいずれか一方の工程と並行して、
前記制御部が、前記余剰熱から所定の放熱分を除いて、前記検出時刻における前記ホーンと前記アンビルに蓄積されている蓄熱に基づいて、前記ホーン及び前記アンビルを含めた近傍の環境温度を算出する処理を行う環境温度算出工程と、
前記制御部が、前記不足エネルギーから前記蓄熱に係る蓄積エネルギーを差し引いたエネルギーを、前記超音波発振子が出力する従超音波振動で補填するため、当該従超音波振動に係る振動制御信号を前記振動部ユニットへ出力する処理を行う振動制御工程と、
前記制御部が、前記従超音波振動に係る従振動エネルギーと前記環境温度によって溶かされる前記被圧接部位に対して、前記押圧面を備えた前記ホーンを所定の位置へ進退させる位置制御信号を前記アクチュエータへ出力する処理を行う位置制御工程とを設け、
前記圧接工程に対して、前記アクチュエータが、前記位置制御信号に基づいて前記振動部ユニットの位置を制御して、前記シール突条の前記被圧接部位に対する沈み込み量を調整する処理を行う押圧制御工程を設け、
前記溶着工程に対して、前記振動部ユニットが、前記振動制御信号に基づいて前記超音波振動発振子を発振させて、前記従超音波振動を出力する処理を行う溶着制御工程を設けて、
前記環境温度の昇降に対して、前記超音波発振子が前記従超音波振動によって前記被圧接部位へ印加する前記従振動エネルギーを調整すると共に、当該従振動エネルギーと前記環境温度によって溶融する前記被圧接部位に、前記シール突条が沈み込む前記沈み込み量が所定の範囲内で一定に保持されるように、前記アクチュエータが前記振動部ユニットの位置を調整して、前記被圧接部位をシールするようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の超音波シール装置の制御方法は、請求項7に記載の発明において、前記沈み込み量が10μm~200μmであることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の超音波シール装置の制御方法は、請求項8に記載の発明において、前記被圧接部位がレトルトパウチ用合成樹脂材からなる場合に、前記沈み込み量が60μm~75μmであることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の超音波シール装置の制御方法は、請求項7に記載の発明において、所定の前記検出時刻における前記不足エネルギーが、前記入力開始時刻から略一定であることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の超音波シール装置の制御方法は、請求項7に記載の発明において、前記被シール体が、少なくとも袋口に所定の熱溶着性フィルムを備えた包装袋であることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の超音波シール装置の制御方法は、請求項7に記載の発明において、前記被シール体が、容器の周縁部に所定の熱溶着性フィルムを溶着して覆蓋可能な包装容器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る超音波シール装置によれば、振動部ユニットの超音波発振子が発振する主超音波振動に係る主振動周波数を検出した振動センサが、当該主振動周波数に基づく主周波数信号を制御部へ出力するようにした。そして、制御部は、主周波数信号に基づいて超音波発振子が出力軸を介してホーンへ印加する超音波振動に係る振動エネルギーを制御するように構成した。具体的には、主周波数信号の入力開始時刻から所定の検出時刻までに超音波振動によって印加された印加エネルギーに係る印加熱総量を求める一方、ホーンが印加した摩擦熱から先の溶着に係る仕事として消費された溶着熱を除いた余剰熱について、同入力開始時刻から同検出時刻までの余剰熱総量を求めて、印加熱総量から余剰熱総量を除いた熱量が、検出時刻において後の溶着に係る仕事で不足するエネルギーとなる。
すなわち、超音波発振子が、多くとも当該不足エネルギーを補う分の超音波振動を印加することによって、後の溶着に係る仕事を十分に果たすことができる。そのため、超音波発振子は、超音波振動の入力開始から常に一定の振動エネルギーを印加するのではなく、フィードバックされた主超音波振動に係る主振動エネルギーに基づいて、先の溶着に係る仕事で消費されなかった余剰熱を繰り越して不足エネルギーを求め、当該不足エネルギーを補うように新たに従超音波振動に係る従振動エネルギーを印加することによって後の溶着に係る仕事で消費する溶着熱を満たすことができ、超音波シール装置の省エネルギー化を実現することができる。
さらに、上記の余剰熱は、冷却装置、自然冷却等によってホーン又はアンビルから放散された放熱と、ホーン及びアンビルに蓄積された蓄熱とからなる。本発明に係る超音波シール装置によれば、当該蓄熱に着目し、検出時刻におけるホーン又はアンビルの蓄熱に基づいて、ホーン又はアンビルを含む近傍の環境温度を算出するようにした。そして、不足エネルギーから蓄熱に係る蓄積エネルギーを除くと、これはすなわち余剰熱全体から放熱分を除いた蓄熱に係る蓄積エネルギーを次のシール工程に係る溶着へ繰り越すこととなる。これによって、不足エネルギー分に相当する上記の従振動エネルギー分から、繰り越した蓄積エネルギー分を減らすことができるので、さらなる超音波シール装置の省エネルギー化を実現することができる。
このようにして、本発明に係る超音波シール装置によれば、制御部から出力される振動制御信号によって、超音波発振子が先に出力した主超音波振動をフィードバックして、被圧接部位を溶着する仕事で消費される溶着熱について、先の溶着に係る仕事で消費した溶着熱を除いた余剰熱のうち、ホーン及びアンビルに蓄積された蓄熱を次の溶着に係る仕事へ繰り越して、当該次の溶着に係る仕事で不足する溶着熱を補填すると共に、補填してもなお不足するエネルギーを超音波発振子が後に出力する従超音波振動に係る従振動エネルギーで補うように構成した。これによって、必要最小限の不足エネルギー分を補填することで十分に溶着させることができるので、超音波シール装置の省エネルギー化を実現することができる。
また、制御部は、補填した従振動エネルギーと繰り越された蓄熱に係る環境温度に基づいて、振動部ユニットに連結されたホーンを所定の位置へ進退させる位置制御信号をアクチュエータへ出力するようにした。これによって、当該アクチュエータは、被圧接部位が印加され又は繰り越されたエネルギーに基づく温度によって溶融し或いは固さが変化した場合であっても、溶着する際に押圧されるシール突条の沈み込み量を所定の範囲内で略一定に保持することができる。その結果、環境温度に応じて硬軟が変化する被圧接部位に対して、シール突条の沈み込み量を最適化することができる。
したがって、本発明に係る超音波シール装置によれば、先の溶着に係る仕事で消費した溶着熱に対して、次の溶着に係る仕事で消費する溶着熱の不足分を、ホーン又はアンビルの蓄熱に係る蓄積エネルギーと、超音波発振子が印加する従振動エネルギーで補填すると共に、それら補填するエネルギーに係る温度で硬軟が変化する被圧接部位に対して、シール突条の沈み込み量が所定の範囲内で略一定に保持される振動部ユニットの位置を制御するようにして、シール開始時から適切なエネルギー量を被圧接部位へ印加して、シール不足又はシール切れ等のシール不良の発生を防止することができる。
【0020】
また、本発明に係る超音波シール装置の制御方法によれば、押圧面とシール突条間で被圧接部位を押圧し、圧接する処理を行う圧接工程と、圧接した被圧接部位を押圧面の摩擦による所定のシール温度で溶着する処理を行う溶着工程を備えた超音波シール装置において、超音波発振子の主超音波振動に係る主振動周波数を検出して、当該主振動周波数に基づく主周波数信号を制御部へ出力する処理を行う振動周波数出力工程を振動センサに設け、主周波数信号が入力される制御部には、主周波数信号の入力開始時刻から所定の検出時刻までの超音波発振子がホーンへ印加した主振動エネルギーに係る印加熱総量を求める処理を行う印加熱総量算出工程と、ホーンへ印加された主振動エネルギーに係る印加熱が摩擦熱へ変換され、当該摩擦熱からホーンとアンビルが被圧接部位を溶着する先の仕事で消費した溶着熱を除いた余剰熱を求め、同入力開始時刻から同検出時刻までの余剰熱総量を求める処理を行う余剰熱総量算出工程と、所定の検出時刻において、被圧接部位を溶着する後の仕事に係る溶着熱に不足するエネルギーを印加熱総量から余剰熱総量を除いて求める処理を行う不足エネルギー算出工程とを設けた。これによって、ホーンへ印加しなければならない最大限の不足エネルギーを求めることができ、当該不足エネルギーに相当するエネルギーを超音波発振子で印加することによって後の溶着に係る仕事で消費する十分な溶着熱を得ることができるので、超音波シール装置の省エネルギー化を実現することができる。
さらに、余剰熱から冷却装置又は自然冷却等によって放散された放熱分を除いて、検出時刻におけるホーンとアンビルに蓄積された蓄熱分を求め、加えて当該蓄熱に係るホーン及びアンビルを含めた近傍の環境温度を求める処理を行う環境温度算出工程を制御部に設けた。これによって、上記の不足エネルギーから蓄熱に係る蓄積エネルギー分を除いたエネルギーを超音波発振子は従振動エネルギーとして印加すればよいので、さらなる超音波シール装置の省エネルギー化を実現することができる。
このようにして、本発明に係る超音波シール装置の制御方法によれば、制御部から出力される振動制御信号によって、超音波発振子が先に出力した主超音波振動をフィードバックして、被圧接部位を溶着する仕事で消費される溶着熱について、先の溶着に係る仕事で消費した溶着熱を除いた余剰熱のうち、ホーン及びアンビルに蓄積された蓄熱を次の溶着に係る仕事へ繰り越して、当該次の溶着に係る仕事で不足する溶着熱を補填すると共に、補填してもなお不足するエネルギーを超音波発振子が後に出力する従超音波振動に係る従振動エネルギーで補うように構成した。これによって、必要最小限の不足エネルギー分を補填することで十分に溶着させることができるので、超音波シール装置の省エネルギー化を実現することができる。
また、制御部は、補填した従振動エネルギーと繰り越された蓄熱に係る環境温度に基づいて、振動部ユニットに連結されたホーンを所定の位置へ進退させる位置制御信号をアクチュエータへ出力するようにした。これによって、当該アクチュエータは、被圧接部位が印加され又は繰り越されたエネルギーに基づく温度によって溶融し或いは固さが変化した場合であっても、溶着する際に押圧されるシール突条の沈み込み量を所定の範囲内で略一定に保持することができる。その結果、環境温度に応じて硬軟が変化する被圧接部位に対して、シール突条の沈み込み量を最適化することができる。
したがって、本発明に係る超音波シール装置の制御方法によれば、先の溶着に係る仕事で消費した溶着熱に対して、次の溶着に係る仕事で消費する溶着熱の不足分を、ホーン又はアンビルの蓄熱に係る蓄積エネルギーと、超音波発振子が印加する従振動エネルギーで補填すると共に、それら補填するエネルギーに係る温度で硬軟が変化する被圧接部位に対して、シール突条の沈み込み量が所定の範囲内で略一定に保持される振動部ユニットの位置を制御するようにして、シール開始時から適切なエネルギー量を被圧接部位へ印加して、シール不足又はシール切れ等のシール不良の発生を防止することができる。
【0021】
さらに、本発明に係る超音波シール装置又は超音波シール装置の制御方法法によれば、最適化される沈み込み量の範囲を10μm~200μmとすることが好ましく、特にレトルトパウチ用の合成樹脂を溶着する場合はその沈み込み量の範囲を60μm~75μmとすることが好ましい。当該範囲内で圧接時の沈み込み量を最適化することによって、シール不良を防止することができる。
また好ましくは、所定の検出時刻における不足エネルギーが、入力開始時刻から略一定となるようにした。これによって、超音波シール装置が、圧接と溶着を繰り返して暖まり、また緊急停止等で冷えた場合に超音波発振子の発振周波数を追従させて、不足エネルギーのうち、蓄積エネルギーを除いた従振動エネルギーをホーンへ印加することができ、超音波シール装置の省エネルギー化を実現することができる。
そして、超音波シール装置がシールする被シール体を包装袋又は包装容器とした。これによって、省エネルギーを実現し、シール不良を無くすことができる超音波シール装置を包装機に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施例に係る超音波シール装置の構成の概略を示す説明図である。
図2】本実施例に係る超音波シール装置のホーンとアンビルの構成の概略を示す部分拡大図である。
図3】本実施例に係る超音波シール装置の制御に関する構成の概略を示すブロック図である。
図4】本実施例に係る超音波シール装置の制御方法に関する工程の概略を示すチャート図である。
図5】本実施例に係る超音波シール装置の周波数とエネルギーの関係を示すグラフ図である。
図6】本実施例に係る超音波シール装置のエネルギーと沈み込み量の関係を示すグラフ図である。
【実施例0023】
本発明に係る超音波シール装置の実施例を添付した図面にしたがって説明する。図1は、本実施例に係る超音波シール装置の構成の概略を示した説明図である。
【0024】
超音波シール装置10は、装置本体11と、当該装置本体11を吊り下げ支持し、包装機(図示略)へ取り付けるホルダ12と、超音波シール装置の動作を制御する制御部13とから構成されている。
ここで、超音波シール装置10は、ホルダ12を介して包装機へ組み込まれて使用される。そのため、本実施例に係る超音波シール装置10がシールする被シール体は、包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類であることが好ましい。そして、超音波シール装置10は、被シール体のシールすべき所定箇所を所定の圧力で押圧して固定してから、当該箇所へ超音波振動を印加し、当該超音波振動による摩擦熱で押圧部位を溶着させる装置である。したがって、包装機に組み込まれる超音波シール装置10がシールする包装体類は、たとえば、包装袋の場合、少なくとも袋口にポリエチレン、ポリプロピレン等、所定の温度で溶け、冷えたときに固まる熱溶着性を備えた合成樹脂製フィルムを備えているものが好ましく、また包装容器の場合、当該包装容器の周縁部に熱溶着性フィルムを溶着して覆蓋することができるものが好ましい。なお、被シール体は上記の包装体類に限定されるものではなく、本実施例に係る超音波シール装置10は、包装機以外にも一の熱溶着性部材と他の熱溶着性部材とを溶着させる工程を備えた機器へ適用することができる。
本実施例では、以下、包装袋Bを例に説明する。包装袋Bは、少なくとも袋口に熱溶着性フィルムからなる被圧接部位と、当該被圧接部の近傍に超音波シール装置10がシールする際に包装袋Bを挟持して固定するための被挟持部位が形成されているものであって、たとえば、袋口内側面にポリエチレンフィルムを備えたレトルトパウチ袋である。
【0025】
装置本体11は、図1に示すように、振動部ユニット14と、ホーン15と、アンビル16とを有している。
振動部ユニット14は、出力軸17を有し、当該出力軸17は、振動部ユニット14内の超音波発振子18に接続されている。
出力軸17は、振動部ユニット14から所定の超音波振動を出力するように構成されている。
超音波発振子18は、所定の振動周波数で発振し、特に20kHz以上の超音波帯域の振動周波数で発振するように構成されている。なお、本実施例に係る超音波発振子18は、39.0kHz~40.0kHzの帯域で振動周波数を可変自在に構成されている。超音波発振子18と出力軸17によって、振動部ユニット14は、出力する超音波振動に係る振動周波数を調整して、当該振動周波数に係る振動エネルギーを包装袋Bの被圧接部位へ印加することができる。
【0026】
ホーン15は、図1に示すように、出力軸17の先端に連結固定されている。これによって、振動部ユニット14が出力した超音波振動が、ホーン15へ伝達される。ホーン15は、先端に押圧面20を有している。
アンビル16は、図1及び図2に示すように、ホーン15に対向配置されている。これによって、振動部ユニット14が出力し、ホーン15へ伝達された超音波振動を受けるように構成されている。アンビル16は、押圧面20と対向する受け面21を有している。
受け面21は、図2に示すように縦断面視したとき、当該受け面21の略中央に円弧状の頂部を備えたシール突条22を有している。シール突条22は、押圧面20へ当接されたとき、頂部が押圧面20に対して直線状に接するように構成されている。これによって、押圧面20とシール突条22の間に被圧接部位を挟持し、圧接してから、超音波振動を印加したとき、振動するホーン15の押圧面20と被圧接部位との間で摩擦熱が発生して、被圧接部位は直線状に溶着される。
そして、アンビル16には、図2に示すように、シール突条22に連接してテーパ面23が形成されている。これによって、被圧接部位をシールしたとき、包装袋Bをテーパ面23側へ逃がすことができるので、シールされる被圧接部位以外がホーン15又はアンビル16に接触することを防止することができる。
さらに、アンビル16には、図2に示すように、シール突条22の反テーパ面側に挟持突条24が受け面21上に連接形成されている。一方、ホーン15には、図2に示すように、スロット25が押圧面20の略中央に形成されている。スロット25の幅は、挟持突条24が遊嵌される幅である。これによって、挟持突条24は、図2に示すように、包装袋Bの被挟持部位をスロット内へ押し込むことができるので、ホーン15とアンビル16の間に包装袋Bの袋口近傍をセットして、アンビル16に向かってホーン15を押圧したとき、包装袋Bは押圧面20と受け面21の間に挟持され、包装袋Bの被挟持部位を挟持突条24がスロット25内へ押し込んで、包装袋Bをホーン15とアンビル16間に固定することができる。
このとき、挟持突条24の縦断面視形状は、図2に示すように、頂部が略半円状に形成されていることが好ましい。これによって、挟持突条24が被挟持部位をスロット25へ押し込んだとき、被挟持部位を傷めないようにすることができる。
【0027】
ホルダ12は、図1に示すように、メインフレーム30を有している。当該メインフレーム30には左右ボールねじ31、軸受32、サーボモータ33、第1リニアガイドレール34、第1スライドフレーム35a,35bが所定の位置に組み付けられている。これらが協働して、振動部ユニット14の出力軸17先端に接続したホーン15と、当該ホーン15に対向するアンビル16とを自在に接近又は離間させることができる。
左右ボールねじ31は、メインフレーム30に固定した軸受に組み付けられている。左右ボールねじ31の一端には、サーボモータ33が連結され、当該サーボモータ33は、メインフレーム30に固定されている。以下、サーボモータ33は、左右ボールねじ31をメインフレーム30に対して回動させる第1アクチュエータとする。
左右ボールねじ31には、図1に示すように、左右一対の第1スライドフレーム35a,35bが組み付けられている。第1スライドフレーム35a,35bは、下端に固定された複数個の第1ガイド凸片36が固定されている。第1ガイド凸片36は第1リニアガイドレール34へ摺動可能に嵌合されている。
第1アクチュエータ(サーボモータ33)が左右ボールねじ31を回転させたとき、当該左右ボールねじ31の左右に振り分けて配置された第1スライドフレーム35a,35bが、当該第1スライドフレーム35a,35bへそれぞれ固定された第1ガイド凸片36を互いに相反する方向へ移動させる。このとき、第1ガイド凸片36が嵌合している第1リニアガイドレール34は、第1スライドフレーム35a,35bを互いに相反する方向へ接近又は離間するようにガイドすることができる。
ホルダ12を介して超音波シール装置10を包装機(図示略)へ組み込んだとき、第1アクチュエータ(サーボモータ33)は、ホーン15の押圧面20とアンビル16の受け面21間が開放されているときに、搬送される包装袋Bがホーン15とアンビル16の間に配置される際の押圧面20と受け面21間の距離の初期値の設定、或いは包装袋Bの種類、形状、厚さによって、ホーン15又はアンビル16を交換する場合に左右ボールねじ31を動作させるように構成されている。これによって、超音波シール装置10を包装袋Bの種類、形状等に合わせて包装機上の所定の位置へ配置し、当該包装機上を搬送される包装袋Bのシール位置を最適に調節することができる。
なお、超音波シール装置10を包装機上の所定の位置へ配置する構成、また当該包装機上を搬送される包装袋Bのシール位置を調節する構成は、これに限定されるものではなく、たとえば、包装袋Bが所定の環状又はトラック状の搬送路に沿って搬送される包装機において、包装袋Bを搬送するメイン駆動軸が、当該メイン駆動軸とリンクしたカム、或いはメイン駆動軸に連結されたチェーン、ベルト等を介して、搬送路に沿って配置された超音波シール装置等の各装置を駆動させるように構成されている場合は、本実施例に係るサーボモータ33と左右ボールねじ31に替えて、メイン駆動軸とカムリンク、チェーン、ベルト等を第1アクチュエータとして用いて、ホーン15とアンビル16間の距離を接離自在に制御するようにしても良い。
【0028】
一方の第1スライドフレーム35aの下端部には、図1に示すように、アンビル16が固定されている。
他方の第1スライドフレーム35bには、図1に示すように、第1リニアガイドレール34と平行に延びる第2リニアガイドレール37が固定されている。第2リニアガイドレール37には、複数個の第2ガイド凸片38が摺動可能に嵌合されている。第2ガイド凸片38には、第2スライドフレーム39が固定されている。第2スライドフレーム39には、装置本体11の振動部ユニット14と、リニアエンコーダ40が固定されている。このとき、第2スライドフレーム39が振動部ユニット14を固定する位置は、振動部ユニット14内の超音波発振子18を超音波振動させたとき、当該超音波振動に対して共振する振動部ユニット14の振動の節となる位置が好ましい。これによって、振動部ユニット14の振動が第2スライドフレーム39を介してメインフレーム12へ伝播することを防止することができる。
また、第1スライドフレーム35bには、図1に示すように、エアシリンダ41が固定されている。すなわち、第1スライドフレーム35bが左右ボールねじ31の回転にしたがって第1リニアガイドレール34に沿って摺動するとき、エアシリンダ41が移動し、振動部ユニット14とリニアエンコーダ40は、第2リニアガイドレール37に沿って第2スライドフレーム39と共に移動するように構成されている。
第2リニアガイドレール37は、所定の間隔で光学的又は機械的な目盛(図示略)を備えている。リニアエンコーダ40は、当該目盛を光学的又は機械的に検出可能なセンサを有し、当該センサによって第2リニアガイドレール37上を第2スライドフレーム39と共に移動するリニアエンコーダ40の移動距離を検出して、当該移動距離を電気的に変換した位置信号として制御部13へ出力するように構成されている。これによって、制御部13は、リニアエンコーダ40と共に第2スライドフレーム39に固定されている振動部ユニット40の移動距離を取得することができ、制御部13には、第1アクチュエータと第2アクチュエータが協働してアンビル16に対してホーン15が接近又は離間した一連の動作の結果がフィードバックされることとなる。
エアシリンダ41は、振動部ユニット14の反ホーン側に連結されたロッド42を有している。以下、エアシリンダ41は、ロッド42を介して振動部ユニット14を押圧する第2アクチュエータとする。
ここで、図1に示すように、第1スライドフレーム35a側にはアンビル16が固定され、第1スライドフレーム35b側にはホーン15が固定されているので、第1アクチュエータ(サーボモータ33)が第1スライドフレーム35a,35bを互いに接近させたとき、ホーン15の押圧面20とアンビル16の受け面21は、所定の距離まで接近する。これを開放基準距離とし、このとき、包装袋Bの袋口近傍が押圧面20と受け面21の間に差し込まれ又は引き抜かれるように構成されている。
そして、押圧面20と受け面21の間に包装袋Bの袋口近傍が差し込まれたとき、第1アクチュエータ(サーボモータ33)が動作して、第1スライドフレーム35a,35bを互いに近接する方向へ左右ボールねじ31を回動する。これによって、図2に示すように、ホーン15の押圧面20を包装袋Bの被圧接部位に対して当接させると共に、アンビル16の挟持突条24をホーン15のスロット25へ押し込んで、包装袋Bの被挟持部位を挟持して、包装袋Bをホーン15とアンビル16間で固定することができる。ここで、ホーン15の押圧面20を包装袋Bの被圧接部位に対して当接させるときに、第1アクチュエータ(サーボモータ33)の補助として、第2アクチュエータ(エアシリンダ41)が所定の空気圧で加圧するようにしても良い。
包装袋Bがホーン15とアンビル16間に固定された後、第1アクチュエータ(サーボモータ33)がさらに第1スライドフレーム35a,35bを互いに近接する方向へ左右ボールねじ31を回動して、押圧面20をシール突条22へ押圧して被圧接部位を圧接する。また、第1アクチュエータ(サーボモータ33)に替えて第2アクチュエータ(エアシリンダ41)が吸気するエア量を制御して、押圧面20をシール突条22へ押圧して被圧接部位を圧接するようにしたり、第1アクチュエータと第2アクチュエータを適宜組み合わせて、被圧接部位を圧接したりするようにしても良い。そして、ホーン15の押圧面20を所定の超音波振動で振動させて発生した摩擦熱によって包装袋Bの被圧接部位が溶着される。
ここで、上記のように第1アクチュエータ又は第2アクチュエータのいずれか一方または双方を用いて被圧接部位を加圧しながら溶着したとき、溶着前の被圧接部位の厚みを基準にすると、摩擦熱によって当該被圧接部位が溶け、又は柔らかくなった部分がシール突条22で押圧されて、当該シール突条22が所定の量で沈み込む。このとき、溶着前にシール突条22が当接している位置を基準として、当該基準位置からシール突条22が被圧接部位に対して沈み込んだ量を沈み込み量とする。当該沈み込み量は、第1アクチュエータ(サーボモータ33)の回転軸の回転角度、或いは第2リニアガイドレール37とリニアエンコーダ40のいずれか一方又は双方で検出され、制御部13へ出力されるように構成されている。
【0029】
上記の様に、超音波シール装置10は、ホルダ12が有するメインフレーム30に組み付けた各スライドフレームを、各アクチュエータが各リニアガイドレールに沿ってスライド移動させることによって、ホーン15とアンビル16で包装袋Bを挟持し、押圧面20を受け面21に向かって押圧して包装袋Bを固定するように構成されている。固定された包装袋Bにはホーン15から超音波振動が印加され、シール突条22で押圧面20側へ押圧された被圧接部位が摩擦熱で溶着してシールされる。
なお、図1及び図3に示すように、超音波シール装置10は、ロッド42の軸心、振動部ユニット14の中心軸、出力軸17の軸心、及びホーン15のスリット25を通る中心軸、アンビル16の挟持突条24の中心軸が、略一直線上に配置されるように構成することが好ましい。これによって、第2アクチュエータ(エアシリンダ41)が、ロッド42を押し込んだとき、エアシリンダ41がロッドを押す押圧力をホーン15の押圧面20まで逸れることなく伝達させることができ、ホーン15が超音波振動で振動しているときに、被圧接部位に対してホーン15又はアンビル16が滑ってシール不良を起こすことを防止することができる。
【0030】
制御部13は、図3に示すように、振動センサ50を有している。
振動センサ50は、ホーン15が被圧接部位に対して印加する超音波振動について、振動部ユニット14の超音波発振子18から振動周波数を検出して、当該振動周波数を周波数信号に変換して制御部13へ出力するように構成されている。
制御部13は、振動センサ50から入力された周波数信号を解析し、フィードバックされた振動周波数に基づいて振動部ユニット11、第1アクチュエータ(サーボモータ33)、第2アクチュエータ(エアシリンダ41)を相互に又はそれぞれ別個独立して制御するように構成されている。
加えて、制御部13へは、リニアエンコーダ40から出力された振動部ユニット14の移動距離情報に係る位置信号が制御部13へ入力されるように構成されている。また、位置信号はリニアエンコーダ40が出力する信号に限定されず、第1アクチュエータ(サーボモータ33)の回転軸の回転角度に係る信号を用いても良い。これによって、制御部13には上記のシール突条22の沈み込み量に係る位置情報がフィードバックされる。
フィードバックされた当該位置信号に係る沈み込み量に基づいて、第1アクチュエータ(サーボモータ33)、第2アクチュエータ(エアシリンダ41)を相互に又はそれぞれ別個独立して制御するように構成されている。
【0031】
ここで、周波数信号に係る振動周波数λと、超音波発振子が発振する超音波振動に係る超音波エネルギーEとの間には、プランク定数をνと置くと下記の数式1の関係が成り立つ。
【0032】
【数1】
【0033】
超音波発振子18が発振したとき、出力軸17、ホーン15を介して、振動周波数λに比例する超音波エネルギーEが、ホーン15の押圧面20へ印加される。このとき、超音波エネルギーEは、押圧面20とシール突条22で挟まれた被圧接部位において摩擦熱へ変換されて仕事を行う。このとき、超音波エネルギーEが損失を出さずに全て摩擦熱へ変換されてホーン15へ印加されたと仮定し、これを印加熱とする。当該印加熱のうち、被圧接部位を溶着する仕事で消費された熱を溶着熱とすると、当該溶着熱以外の熱は、ホーン15又はアンビル16へ熱として蓄積される蓄熱と、冷却によってホーン15又はアンビル16から放散して失われる放熱からなり、溶着に係る仕事で消費されず余ってしまった余剰熱である。当該余剰熱のうち、放熱に係る熱量が蓄熱に係る熱量よりも大きい間は、ホーン15又はアンビル16が冷えていると言える。一方、放熱に係る熱量が蓄熱に係る熱量よりも小さくなる、すなわち、放熱が蓄熱に追いつかなくなると、ホーン15又はアンビル16の温度は次第に上昇する。この次第に上昇する温度に係る熱量が、被圧接部位を溶着するときの余分な熱量となる。
そのため、超音波発振子18を常に一定の状態で振動させている場合は、時間が経つにつれて上昇するホーン15又はアンビル16の温度に係る熱量に加えて、超音波発振子18から常に一定量の超音波エネルギーEが印加されることとなる。これによって、ホーン15に対して超音波エネルギーEが過剰に供給されるので、ホーン15又はアンビル16に残留している熱量と過剰な超音波エネルギーEが、包装袋Bの被圧接部位のみならずその周囲を過剰に溶着してシールしてしまうシール不良が発生するおそれがある。
一方、過剰溶着を防ぐために、ホーン15又はアンビル16の温度が安定する定常状態を想定して印加する超音波エネルギーEを設定すると、超音波シール装置10の稼働直後の過渡状態時には、上記したように放熱に係る熱量が蓄熱に係る熱量よりも大きく、ホーン15又はアンビル16が冷えていることとなる。このとき、超音波エネルギーEの供給が不足することによって包装袋Bの被圧接部位の熱溶着性樹脂が十分に溶けないので、溶着不足によるシール不良が発生するおそれがある。また同様に、定常状態時に合わせてシール突条22の沈み込み量を設定していた場合、過渡状態時には、当該沈み込み量が不足するので、さらにシール不良を誘発するおそれがある。
ここで、本実施例においてポリエチレンフィルムを備えたレトルトパウチ袋からなる包装袋Bの場合は、シール突条22の沈み込み量が60μm~75μmであることが好ましい。60μmに満たない場合、すなわち、沈み込み量が小さい場合は、圧接不足によるシール不良が発生するおそれがある。一方、75μmを超える場合、すなわち、沈み込み量が大きい場合は、過剰溶着によりシール不良が発生するおそれがある。
なお、本実施例におけるレトルトパウチ袋からなる包装袋Bに限定されず、熱溶着性を備えた合成樹脂製フィルムを備えているその他の包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類に、本実施例に係る超音波シール装置10を適用する場合は、シール突条22の沈み込み量を10μm~200μmの範囲内で最も好ましい沈み込み量を任意に選択することができる。この場合においても、10μmに満たない場合、すなわち、沈み込み量が小さい場合は、圧接不足によるシール不良が発生するおそれがある。一方、200μmを超える場合、すなわち、沈み込み量が大きい場合は、過剰溶着によりシール不良が発生するおそれがある。
【0034】
したがって、制御部13は、時間と共に漸増するホーン15又はアンビル16の熱量を考慮し、振動部ユニット14が超音波発振子18に発振させる超音波振動を適切に制御して、ホーン15へ印加する超音波エネルギーEを最適化することが重要であり、さらに最適化した超音波エネルギーEが被圧接部位をシールする際に、溶け或いは柔らかくなった当該被圧接部位へシール突条22が沈み込む沈み込み量を最適化することが重要である。そのため、制御部13は、振動センサ50で検出した先の振動周波数に基づいて、ホーン15又はアンビル16の熱量等に係るエネルギー量をフィードバックして後の振動周波数を制御すると共に、リニアエンコーダ40また好ましくは第1アクチュエータ(サーボモータ33)からフィードバックされた先の沈み込み量に基づいて後の沈み込み量を制御するように構成されている。
ここで、先の超音波振動を主超音波振動とし、そのときの振動周波数を主振動周波数とする。一方、フィードバック制御され、最適化された後の超音波振動を従超音波振動とし、そのときの振動周波数を従振動周波数とする。
制御部13は、ホーン15を所定の超音波振動で振動させる第1制御系統と、ホーン15をアンビル16に向かって所定の圧力を加え確実にシールさせる第2制御系統を有している。
第1制御系統は、振動センサ50で検出した主振動周波数に係る主周波数信号に基づいて、超音波発振子18を制御して最適化した従超音波振動を発振させる処理を行う。第2制御系統は、第1アクチュエータ(サーボモータ33)又はリニアエンコーダ40からフィードバックされた位置信号に基づいて、第1アクチュエータ(サーボモータ33)、第2アクチュエータ(エアシリンダ41)を制御してアンビル16に対しホーン15を最適な力で押圧し、最適化した沈み込み量で被圧接部位を圧接する処理を行う。第1制御系統と第2制御系統について以下説明する。
【0035】
第1制御系統について、制御部13は、まず、入力開始時刻t、すなわち超音波シール装置の稼働開始時刻から所定の検出時刻tまでに超音波発振子18がホーン15へ印加した超音波エネルギーの総量を求める。ここで損失が無視するほど小さく、超音波エネルギーが全て摩擦熱に変換されたと仮定したとき、ホーン15へ印加された超音波エネルギー基づく熱を印加熱とし、その総量を印加熱総量とする。
当該印加熱総量からホーン15とアンビル16が被圧接部位を溶着する仕事で消費される溶着熱に係る熱量を引くと、検出時刻tにおいてホーン15とアンビル16が溶着に係る仕事で消費しなかった余剰分の熱量を求めることができる。
被圧接部位を溶着するとき、熱溶着性樹脂を溶かす溶着温度は既知であるから、溶着に係る仕事で消費される溶着熱もまた既知数である。これを入力開始時刻t0から所定の検出時刻tまで積分すると、ホーン15又はアンビル16が溶着に係る仕事で消費した溶着熱の総量を求めることができる。
したがって、入力開始時刻tから所定の検出時刻までにホーン又はアンビルが溶着に係る仕事で消費した溶着熱以外の余剰熱、すなわち余剰エネルギーについてその総量となる余剰熱総量を求め、上記の印加熱総量から余剰熱総量を除いた熱量が、所定の検出時刻tにおいてホーン15とアンビル16が次に溶着に係る仕事で不足する不足熱量である。
【0036】
ここで、所定の検出時刻tにおける余剰熱は、ホーン15又はアンビル16に蓄積されている蓄熱、及びホーン15又はアンビル16から自然に又は冷却装置等で冷却されて放散された放熱からなる。そのため、余剰熱から、放熱分を除くとホーン15又はアンビル16に蓄積されている蓄熱を得ることができる。ここで蓄熱に係る蓄積エネルギーをQとし、ホーン15又はアンビル16の質量をm、比熱をcとし、温度をTとすると、数式2から、ホーン15又はアンビル16の蓄熱に基づくホーン15又はアンビル16の温度を求めることができる。当該温度を以下押圧面20とシール突条22を取り巻くホーン15とアンビル16の環境温度とする。
【0037】
【数2】
【0038】
そして、上記の不足熱量から、蓄熱に係る蓄積エネルギーを除くと、溶着に係る仕事で必要となる熱量、すなわち超音波発振子18が次にホーン15へ印加すべき振動エネルギーを求めることができる。制御部13は、数式1の関係に基づいて、印加すべき振動エネルギーを満たすために超音波発振子18が発振すべき必要な振動周波数を求める。このときの振動周波数を以下、従振動周波数とし、当該従振動周波数に係る振動エネルギーを従振動エネルギーとする。求めた従振動周波数に係る振動制御信号は、振動部ユニット14へ出力され、当該振動部ユニット14は、振動制御信号に基づいて超音波発振子18が発振する従超音波振動を調整するように構成されている。
【0039】
次に、第2制御系統について、制御部13は、第1制御系統で求めたホーン15とアンビル16の環境温度に基づいて、ホーン15が連結された振動部ユニット14を所定の位置へ進退させる位置制御信号を第1アクチュエータ(サーボモータ33)又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)へ出力し、第1アクチュエータ(サーボモータ33)がアンビル16に対してホーン15を押圧し、又は、第2アクチュエータ(エアシリンダ41)がロッド42を介してアンビル16に対してホーン15を押圧する押圧力を制御するように構成されている。
ここで、検出時刻tにおいて、従振動エネルギーと蓄積エネルギーを合算した不足エネルギーに係る不足熱量は、入力開始時刻tにおいて超音波発振子18がホーン15へ印加した超音波エネルギーEに係る初期熱量と略同じ大きさである。そして、入力開始時刻tから検出時刻tまで不足熱量、すなわち、従振動エネルギーと蓄積エネルギーの和は一定であることが好ましい。
すなわち、環境温度が低い場合、すなわち蓄積エネルギーが小さく、大きな従振動エネルギーを印加する必要がある場合は、従振動エネルギーに係る従振動周波数は大きくなる。加えて、環境温度が低い場合は、シール突条22の比熱が小さいことから、当該シール突条22も冷めており、また包装袋Bの被圧接部位の温度も低いことから、当該被圧接部位は溶けにくく、当該被圧接部位に対してシール突条22が沈み込み難くなっている。
一方、環境温度が高い場合、すなわち蓄積エネルギーが大きく、印加する従振動エネルギーを小さくすることができる場合は、従振動エネルギーに係る従振動周波数を小さくすることができる。加えて、環境温度が高い場合は、比熱が小さいシール突条22は熱しやすく、また包装袋Bの被圧接部位の温度も高いことから、当該被圧接部位は溶けやすく、当該被圧接部位に対してシール突条22が沈み込み易くなっている。
このように環境温度を反映し、不足熱量を加えて被圧接部位を溶着するに十分な一定のエネルギーを印加することによって、ホーン15の押圧面20は、被圧接部位を略同一の条件で溶かして溶着し、シールすることができ、また、第1アクチュエータ(サーボモータ33)又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)へ入力された位置制御信号に基づいて、ホーン15に連結されている振動部ユニット14が第2リニアガイドレール37に沿って移動した沈み込み量は、リニアエンコーダ40から出力される位置信号、或いは第1アクチュエータ(サーボモータ33)の回転軸の回転角度に係る位置信号として制御部13へフィードバックされる。
これによって、環境温度の変化に応じて、シール突条22の沈み込み量を、本実施例において好ましい60μm~75μmの範囲内に最適化して保ちつつ、不足エネルギーを充足する適切な従振動エネルギーに係る従超音波振動をホーン15へ印加して包装袋Bの被圧接部位を溶着させることができる。
【0040】
本発明に係る超音波シール装置10によれば、当該超音波シール装置10へ給袋された包装袋Bをシールした回数によって次第に変化するホーン15又はアンビル16の温度に応じて、超音波発振子18が発振する超音波振動を変化させるようにした。このとき、ホーン15又はアンビル16の温度を温度センサで検出するため、新たに温度センサを設けるのではなく、従来、振動部ユニット14の超音波発振子18が正常に発信しているか動作確認用の振動センサ50を流用するようにした。そして、ホーン15が印加した先の超音波振動に係る主振動エネルギーに基づいて、制御部13がホーン15又はアンビル16の温度を推定し、次の溶着に係る仕事で必要な後の超音波振動に係る従振動エネルギーを算出するように構成した。
このように、当該振動センサ50が検出した振動周波数に基づいてエネルギー量を制御することができるので、超音波シール装置10の構成を簡略化すると共に振動部ユニット14、超音波発振子18を制御して、安定したシール強度で包装袋Bの被圧接部位をシールすることができる。
【0041】
上記の構成を備えた超音波シール装置10の制御方法について、添付した図面にしたがって以下説明する。
【0042】
超音波シール装置10は、図4に示すように、ホーン15とアンビル16で包装袋Bの被圧接部位を挟み込んで圧接固定する圧接工程と、当該被圧接部位を溶着させる溶着工程を備えている。さらに圧接工程は、包装袋Bをホーン15とアンビル16で挟持する挟持工程と、包装袋Bを挟んでホーン15をアンビル16へ押圧する押圧工程から構成されている。
【0043】
挟持工程は、第1アクチュエータ(サーボモータ33)が左右ボールねじ31を回動して、ホーン15とアンビル16を近接させて、図2に示すようにアンビル16側に設けた挟持突条24をホーン15側に設けたスロット25へ包装袋Bごと押し込んで、包装袋Bの被圧接部位近傍の被挟持部位を挟持する処理を行う工程である。これによって、ホーン15の押圧面20とアンビル16の受け面21間で包装袋Bを挟持し、挟持突条24とスロット25によって包装袋Bを固定することができる。
押圧工程は、挟持工程の後、第1アクチュエータ(サーボモータ33)又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)の双方又はいずれか一方を用いて、振動部ユニット14をアンビル16へ向かって強く押し出し、押圧面20をシール突条22へ押圧する処理を行う工程である。これによって、被圧接部位をシールしたとき、押圧面20の振動によって溶融し、又は柔らかくなった被圧接部位へシール突条22が沈み込み、当該シール突条22が押圧面20に対して押し当てられた被圧接部位の所定位置を線状にシールすることができる。
本押圧工程においてシール突条22が押圧面20に対して被圧接部位へ沈み込む大きさを沈み込み量とする。
ここで、本実施例においてはポリエチレンフィルムを備えたレトルトパウチ袋からなる包装袋Bをしている。この場合は、シール突条22の沈み込み量が60μm~75μmであることが好ましい。60μmに満たない場合、すなわち、沈み込み量が小さい場合は、圧接不足、或いは被圧接部位の溶融不足によってシール不良が発生するおそれがある。一方、75μmを超える場合、すなわち、沈み込み量が大きい場合は、過剰溶着によりシール不良が発生するおそれがある。
【0044】
溶着工程は、上記の押圧工程と並行し、被圧接部位を挟んでシール突条22に押し当てられた押圧面20を、ホーン15に伝達された超音波振動で振動させて摩擦熱を発生させ、当該摩擦熱で包装袋Bの被圧接部位に配した熱溶着性フィルムを溶着させる処理を行う工程である。これによって、押圧面20が被圧接部位を溶かしながら、当該被圧接部位を押圧し、シール突条22を被圧接部位へ沈み込ませて、包装袋Bの被圧接部位を線状にシールすることができる。
ホーン15に伝達される超音波振動は、振動ユニット14の出力軸17の基端に連結させた超音波発振子18が発振して出力している。超音波発振子18が可変自在に出力する振動周波数は、少なくとも20kHz以上の帯域、好ましくは39.0kHz~40.0kHzの帯域である。
【0045】
制御部13は、図4に示すように、振動周波数検出工程と、印加熱総量算出工程と、余剰熱総量算出工程と、不足エネルギー算出工程と、環境温度算出工程と、振動制御工程と、位置制御工程とを備えている。
振動周波数検出工程は、振動センサ50が超音波振動に係る振動周波数を検出する処理を行う工程である。当該工程では、所定の検出時刻tにおいて超音波発振子18が発振している超音波振動を検出するように構成されている。このとき検出される超音波振動を主超音波振動とし、当該主超音波振動に基づく振動周波数を主振動周波数とする。振動センサ50は、細かく連続的に変化して検出されるアナログ的な主振動周波数を所定の帯域幅で離散的にデジタル変調して主周波数信号へ変換し、制御部13へ出力する処理を行うように構成されている。
【0046】
印加熱総量算出工程は、主周波数信号が入力された制御部13が、当該主周波数信号に基づいて主超音波振動がホーンへ印加した主振動エネルギーに係る印加熱を、主周波数信号の入力開始時刻tから所定の検出時刻tまで合算した総量を算出する処理を行う工程である。印加熱は、ホーンへ印加された主振動エネルギーが、超音波発振子18、出力軸17、ホーン15と伝達される際のエネルギー損失が無視できるほど小さかったとして、全て摩擦熱へ変換されて、ホーン15へ印加されたときの熱を言う。当該印加熱総量算出工程によって、超音波発振子18がホーン15へ印加した主振動エネルギーに係る熱の総量を求めることができる。
【0047】
余剰熱総量算出工程は、ホーン15へ印加された印加熱のうち、ホーン15とアンビル16が溶着に係る仕事で消費した溶着熱の余りである余剰熱について、主周波数信号の入力開始時刻tから所定の検出時刻tまで合算した総量を算出する処理を行う工程である。余剰熱は、自然冷却又は冷却装置によって冷却されてホーン15とアンビル16から放出拡散される放熱、及びホーンとアンビルに蓄積している蓄熱とからなる。ここで、被圧接部位の熱溶着性フィルムの溶着温度は既知であることから、印加熱から溶着熱を除外することによって、余剰熱、すなわち余剰エネルギーを算出することができる。算出された余剰熱は、主周波数信号の入力開始時刻tから所定の検出時刻tまで合算され、余剰熱総量が算出される。余剰熱の一部、特に蓄熱を次の溶着工程へ繰り越すことによって、ホーン15へ新たに印加する振動エネルギーを抑制して省エネ効果を向上させることができる。
【0048】
不足エネルギー算出工程は、印加熱総量から余剰熱総量を除外する処理を行う工程である。これによって、ホーン15とアンビル16が次の溶着工程で消費する溶着熱に対し、検出時刻tにおいて不足している不足熱量、すなわち不足エネルギー量を求めることができる。余剰熱のうち、蓄熱が少ないときは溶着熱で消費される割合が大きいことから、余剰熱量は小さく、不足エネルギーが多くなる。一方、蓄熱が増大すると溶着熱で消費される割合が小さくなることから、余剰熱量は大きくなり、不足エネルギー量は少なくなる。そのため、ホーン15又はアンビル16へ蓄積される蓄熱が増大して、ホーン15又はアンビルの温度上昇に伴って、不足エネルギーは少なくなることから、ホーン15へ新たに印加する振動エネルギーを抑えることができ、超音波発振子18が発振する超音波振動に係る振動周波数を低くすることができる。
【0049】
環境温度算出工程は、余剰熱総量算出工程において算出した余剰熱から、ホーン15又はアンビル16で自然冷却又は冷却装置等によって冷却された放熱を除外して、ホーン15又はアンビル16へ蓄積されている蓄熱を算出し、当該蓄熱に基づいて、ホーン15又はアンビル16の重量mと比熱cを考慮して、押圧面20とシール突条22を取り巻くホーン15とアンビル16の環境温度を算出する処理を行う工程である。
算出された環境温度について、当該環境温度が低い場合、すなわち蓄積エネルギーが小さく、大きな従振動エネルギーを印加する必要がある場合は、超音波発振子18に対して、大きな従振動周波数で超音波を発振するように制御する処理が行われる。さらに、アンビル16から突出しているシール突条22の比熱は、アンビル16自体に対して小さくなるので、環境温度が低い場合は、シール突条22も冷めやすくなっており、当該シール突条22に当接する包装袋Bの被圧接部位も暖まり難く、溶けにくいことから、シール突条22が被圧接部位に対して沈み込み難くなる。そのため、第1アクチュエータ(サーボモータ33)又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)のいずれか一方又は双方に対して、強く押圧するように制御する処理が行われる。
一方、環境温度が高い場合、すなわち蓄積エネルギーが大きく、印加する従振動エネルギーを小さくすることができる場合は、超音波発振子18に対して、小さな従振動周波数で超音波を発振するように制御する処理が行われる。さらに、環境温度が高い場合は、既にアンビル16が暖まっており、シール突条22は熱しやすく、また包装袋Bの被圧接部位も暖まりやすく、溶けやすくなっていることから、シール突条22が被圧接部位に対して沈み込み易くなる。そのため、第1アクチュエータ(サーボモータ33)又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)のいずれか一方又は双方に対して、押圧を抑制するように制御する処理が行われる。
したがって、算出されたホーン15とアンビル16の環境温度に基づいて、制御部13は、ホーン15が連結された振動部ユニット14を所定の位置へ進退させる位置制御信号を第1アクチュエータ(サーボモータ33)又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)のいずれか一方又は双方へ出力する処理を行うと共に、従振動周波数に係る振動制御信号を振動部ユニット14へ出力する処理を行う。
このように、超音波シール装置10の始動直後にホーン15又はアンビル15が冷えている間は、ホーン15へ印加する振動エネルギーを大きくし、溶着工程において次々にシール回数を重ねるにつれて、徐々にホーン15又はアンビル16が温まり、溶着熱として消費されなかった余剰熱が大きくなってきた場合は、先の包装袋に係る余剰熱を後の包装袋に対する溶着熱の一部として消費するようにして、ホーン15へ印加する振動エネルギーを小さくすることができる。
すなわち、余剰熱を溶着熱の一部として消費することによって、余剰熱を構成する蓄熱又は放熱の上昇が抑えられ、過度な冷却装置を用いなくともホーン15又はアンビル16の温度上昇を抑制して、長時間安定したシール強度でシールすることができる。そのため、従来は必要とされていた水冷方式、油冷方式或いは強制空冷方式等の冷却装置に係るコストを抑えることができる。
【0050】
ここで、押圧工程において、ホーン15とアンビル16が冷えているときは、挟持されている包装袋Bの被圧接部位は冷めて、溶けにくくなっており、当該被圧接部位に対してシール突条22は沈み込み難い。一方で、ホーン15とアンビル16が暖まっているときは、挟持されている包装袋Bの被圧接部位は暖まって、溶けやすくなっており、当該被圧接部位に対してシール突条22は沈み込み易くなっている。
また、溶着工程において、先の包装袋Bをシールした後、後の包装袋Bをシールする間に、アンビル16から突出しているシール突条22は当該アンビル16自体に比べて比熱が小さく温度変化が大きくなる。そのため、アンビル16が冷えているときは冷めやすく、暖まっているときは冷めにくい。
このように、押圧工程と溶着工程において、ホーン15へ印加する振動エネルギー、及び押圧面20並びにシール突条22の蓄熱によって溶かしやすさが変化する被圧接部位へのシール突条22の沈み込み量もまた変化することから、環境温度と従振動周波数は被圧接部位を安定してシールする際の大きな要素となる。
したがって、上記の環境温度算出工程、振動制御工程、及び位置制御工程は、押圧工程を含む圧接工程と溶着工程の双方又はいずれか一方の工程と並行して処理を行うように構成されている。これによって、圧接工程又は溶着工程中に随時変化する環境温度に応じて、第1アクチュエータ(サーボモータ33)又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)を制御して、沈み込み量を所定の範囲内に収まるように一定にすると共に、同様に随時変化する印加すべき必要な従振動周波数に応じて、超音波発振子18を制御して、最適な従超音波振動を出力することができる。
【0051】
振動制御工程は、不足エネルギー算出工程で求めた溶着に不足している不足エネルギーから、環境温度算出工程で求めた環境温度を考慮して、ホーン15へ印加すべき従振動エネルギーに係る従振動周波数を求めて、制御部13から振動部ユニット14へ求めた従振動周波数に係る振動制御信号を出力する処理を行う工程である。
【0052】
振動制御信号が入力された振動部ユニット14は、当該振動制御信号に基づいて超音波発振子18を従超音波振動で発振させる処理を行う溶着制御工程を有している。これによって、従超音波振動に係る従振動エネルギーが出力軸17を介してホーン15へ印加されて、押圧面20とシール突条22の間で摩擦熱が発生して、被圧接部位が溶着される。
ここで、図5は、溶着制御工程における超音波発振子18の従振動周波数とホーン15へ印加される従振動エネルギーとの関係を表したグラフである。当該グラフは、横軸がホーン15とアンビル16間に包装袋Bが給袋される回数であって、縦軸が超音波発振子18の振動周波数(kHz)と、ホーン15へ印加される従振動エネルギー(J)の値である。当該グラフによれば、溶着工程でシールが繰り返されるにつれ、振動センサ50が検出する振動周波数が小さくなっている。ここからは、先の溶着工程で溶着に係る仕事で消費された溶着熱以外の余剰熱のうち、ホーン15又はアンビル16へ蓄積された蓄積エネルギーが後の溶着工程へ繰り越され、ホーン15又はアンビル16に係る環境温度が上昇するにつれて、印加すべき不足エネルギーのうち、従振動エネルギーが少なくなって、超音波発振子18が発振する従超音波振動に係る振動周波数が小さくなっていることを読み取ることができる。
また、振動周波数検出工程で、検出された主振動周波数をデジタル変調した主周波数信号に基づいて不足エネルギーを算出していることから、ホーン15へ印加すべき従振動エネルギーは離散的な値を取って階段状に減少し、周波数が約39.52kHz以下になった場合は、ホーン15又はアンビル16から冷却によって放散される放散エネルギーと、繰り越される蓄積エネルギーが平衡して、不足エネルギーのうち、ホーン15へ印加される従振動エネルギーが一定の値になることを読み取ることができる。
【0053】
位置制御工程は、環境温度算出工程で算出した環境温度に基づいて、振動部ユニット14の位置を調整するために、制御部13が、第1アクチュエータ(サーボモータ33)の出力軸の所定の位置を初期位置とし、そこから、第1アクチュエータ(サーボモータ33)の回転軸の正逆いずれかの方向への回転角度又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)の加減圧されたエア圧によって進退するロッド42を制御する位置制御信号を、第1アクチュエータ(サーボモータ33)又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)のいずれか一方又は双方へ出力する処理を行う工程である。調整された結果、振動部ユニット14が移動した量は、当該振動部ユニット14と共に第2リニアガイドレール37に固定されているリニアエンコーダ40で検出する位置信号によって、制御部13へフィードバックされるように構成されている。
【0054】
位置制御信号が入力された第1アクチュエータ(サーボモータ33)又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)のいずれか一方又は双方は、振動部ユニット14の位置を調整して、アンビル16に対しホーン15を接離自在に調整し、シール突条22が押圧面20へ押圧されるときの最適な位置を調整する押圧制御工程を有している。
当該押圧制御工程は、制御部13から入力された位置制御信号に基づいて、第1アクチュエータ(サーボモータ33)の回転軸の所定の位置を初期位置とし、当該初期位置に相対する振動部ユニット14の位置を、第2リニアガイドレール37上のリニアエンコーダ40を介して制御部13へフィードバックする。これによって、振動部ユニット14、ひいては当該振動ユニット14に出力軸17を介して連結されたホーン15の初期位置を設定することができる。ホーン15の初期位置とは、当該ホーン15の押圧面20とアンビル16の受け面21が当接する直前、挟持突条24が包装袋Bの被挟持部位に接する位置を言う。
ここから、第1アクチュエータ(サーボモータ33)を位置制御信号に基づいて動作させて、回転軸を所定の角度で回転させると、左右ボールねじ31に係合している第1スライドフレーム35a,35bが互いに接近して、挟持突条24が、包装袋Bの被挟持部位を挟み込んでスロット25へ押し込まれる。これによって、包装袋Bをホーン15とアンビル16間に挟持し、固定することができる。
そして、このとき同時に、シール突条22が被圧接部位を挟んで押圧面20に当接し、当該被圧接部位が印加された超音波振動に係る摩擦熱で溶融し始め、シールが開始される。被圧接部位が溶着熱によって溶けて柔らかくなると、シール突条22を押圧面20に対して加圧する方向へ押圧している第1アクチュエータ(サーボモータ33)又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)のいずれか一方又は双方は、位置制御信号に基づいて、被圧接部位に対してシール突条22をさらに押し込む。このとき、アンビル16に設けられたシール突条22に対してホーン15に備えられた押圧面20が相対的に移動し、ホーン15を連結している振動部ユニット14がアンビル16方向へ移動し、当該移動量、すなわち、沈み込み量が、振動部ユニット14と共に固定されているリニアエンコーダ40で検出され、位置信号として、制御部13へフィードバックされる。
これによって、押圧制御工程では、位置制御信号に基づいて、第1アクチュエータ(サーボモータ33)を制御して振動部ユニット14、ホーン15の初期位置を設定し、第1アクチュエータ(サーボモータ33)又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)のいずれか一方又は双方を制御して、溶融した被圧接部位に対して沈み込むシール突条22の沈み込み量を最適に調整することができる。
ここで、図6は、押圧制御工程におけるホーン15へ印加される従振動エネルギーとシール突条22の沈み込み量との関係を表したグラフである。当該グラフは、横軸がホーン15とアンビル16間に包装袋Bが給袋される回数であって、縦軸がホーン15へ印加される従振動エネルギー(J)と、シール突条22が被圧接部位へ沈み込む沈み込み量(μm)の値である。当該グラフによれば、ホーン15へ印加される従振動エネルギーの変化に応じて第1アクチュエータ(サーボモータ33)又は第2アクチュエータ(エアシリンダ41)のいずれか一方又は双方がホーン15を押圧する押圧力を調整し、シール突条22の沈み込み量を所定の範囲内に収めるように制御していることを読み取ることができる。
本実施例においては、ポリエチレンフィルムを備えたレトルトパウチ袋からなる包装袋Bを使用している。この場合は、図6に示すように、シール突条22の沈み込み量が60μm~75μmであることが好ましい。60μmに満たない場合、すなわち、沈み込み量が小さい場合は、圧接不足によるシール不良が発生するおそれがある。一方、75μmを超える場合、すなわち、沈み込み量が大きい場合は、過剰溶着によりシール不良が発生するおそれがある。
【0055】
本実施例に係る超音波シール装置10の制御方法によれば、振動センサ50が先の溶着工程でホーン15へ印加された主超音波振動を検出して、当該主超音波振動に係る主周波数信号を制御部13へ出力し、制御部13は、フィードバックされた主周波数信号に基づいて、後の溶着工程でシール突条22が被圧接部位を溶着するときにホーン15へ印加される最適な従振動周波数を求めるようにした。また、押圧面20がシール突条22に対して加圧する押圧力を最適化する制御を行い、押圧面20とシール突条22の間で溶融する包装袋Bの被圧接部位へシール突条22が沈み込む沈み込み量を所定の範囲内で保持するようにした。これによって、超音波シール装置10は、ホーン15又はアンビル16の温度変化に応じた最適な超音波振動をホーン15へ印加して、包装袋Bのシール開始から安定したシール強度で被圧接部位を溶着することができる。
なお、本実施例に係る超音波シール装置10は、アンビル16の挟持突条24とホーン15のスロット25で被挟持部位を挟持して包装袋Bを吊り下げ固定しているが、これに限定されず、たとえば、コンベア上を移動する包装容器に対して、当該包装容器の縁部を溶着するように超音波シール装置10のレイアウト、ホーン15、アンビル16の形状を任意に変更しても良い。
【符号の説明】
【0056】
10…超音波シール装置、
11…装置本体、12…ホルダ、13…制御部、14…振動部ユニット、15…ホーン、16…アンビル、17…出力軸、18…超音波発振子、
20…押圧面、21…受け面、22…シール突条、23…テーパ面、24…挟持突条、25…スロット、
30…メインフレーム、31…左右ボールねじ、32…軸受、33…サーボモータ(第1アクチュエータ)、34…第1リニアガイドレール、35a,35b…第1スライドフレーム、36…第1ガイド凸片、37…第2リニアガイドフレーム、38…第2ガイド凸片、39…第2スライドフレーム、40…リニアエンコーダ、41…エアシリンダ(第2アクチュエータ)、42…ロッド。
図1
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図6