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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182924
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ビーム電流測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/29 20060101AFI20231220BHJP
   H05H 7/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G01T1/29 B
G01T1/29 C
H05H7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096180
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100195718
【弁理士】
【氏名又は名称】市橋 俊規
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】大崎 一哉
(72)【発明者】
【氏名】佐古 貴行
(72)【発明者】
【氏名】川崎 泰介
【テーマコード(参考)】
2G085
2G188
【Fターム(参考)】
2G085BA16
2G085CA19
2G085CA22
2G085CA27
2G188BB13
2G188BB14
2G188CC40
2G188DD10
2G188DD24
(57)【要約】
【課題】ビーム電流測定装置の簡素化及び小型化、並びに製造コスト及び作業負担の軽減化を図る。
【解決手段】真空容器10の内部に配置され、導体筒1と、前記導体筒の底面に設けられたスリット2と、前記導体筒の外周に設けられた二次電子抑制機構4と、から構成されるビーム電流測定部20と、前記ビーム電流測定部を支持するとともに位置調整を行う支持部材6と、前記スリットの位置調整を行うスリット開閉機構8と、前記ビーム電流測定部で検出されたビーム電流値を前記真空容器の外部に設けられたビーム信号受信部12へ出力するビーム電流読取り機構7と、を備えたビーム電流測定装置100において、前記支持部材、スリット開閉機構及びビーム電流測定部は、前記真空容器に設けられた同一のポート9に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器の内部に配置され、導体筒と、前記導体筒の底面に設けられたスリットと、前記導体筒の外周に設けられた二次電子抑制機構と、から構成されるビーム電流測定部と、
前記ビーム電流測定部を支持するとともに位置調整を行う支持部材と、
前記スリットの位置調整を行うスリット開閉機構と、
前記ビーム電流測定部で検出されたビーム電流値を前記真空容器の外部に設けられたビーム信号受信部へ出力するビーム電流読取り機構と、を備えたビーム電流測定装置において、
前記支持部材、スリット開閉機構及びビーム電流測定部は、前記真空容器に設けられた同一のポートに接続されていることを特徴とするビーム電流測定装置。
【請求項2】
前記スリットは2以上に分割されていることを特徴とする請求項1記載のビーム電流測定装置。
【請求項3】
前記導体筒及びスリットを絶縁体により分割し、分割された導体筒及びスリットにそれぞれ前記ビーム電流読取り機構を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のビーム電流測定装置。
【請求項4】
前記分割された導体筒及びスリットからのビーム電流を、前記ビーム電流読取り機構を介して同一のビーム信号受信部へ出力することを特徴とする請求項3に記載のビーム電流測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、粒子線加速器等で用いられるビーム電流測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子線加速器中を輸送される荷電粒子線等からなるビームは、下流側でのビーム輸送効率とビーム形状を調整するため、ビーム電流、ビームの実空間分布及び位相空間分布等のビーム空間分布を測定する必要がある。
【0003】
ビーム電流測定は、一般的に粒子線加速器を構成する真空容器中に導電体のカップを配置し、ビームをカップに入射させるとともに、導電体のカップから反跳する電子を閉じ込めることで行われる。
【0004】
また、ビームの実空間分布及び位相空間分布等のビーム空間分布測定はスリットをビームの輸送経路に挿入し、スリット開口部から下流に輸送されるビームを導電体のカップで測定することで行われる。
【0005】
このビーム電流測定とビーム空間分布測定は、それぞれ別々の測定装置を真空容器に設けられた異なるポートから挿入して測定することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4-101399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、粒子線加速器中を輸送されるビームのビーム電流測定、実空間分布測定及び位相空間分布測定等のビーム空間分布測定は、ビームの輸送効率の向上と、ビーム形状の調整に必要である。
【0008】
しかしながら、従来の粒子線加速器では、真空容器の異なるポートからビーム電流測定装置とビーム空間分布測定装置を挿入し、ビーム電流測定とビーム空間分布測定を行っていた。そのため、必要なポート数は、ビーム電流測定では1つ、ビーム空間分布測定では水平、垂直のスリット調整機構でそれぞれ2つずつの最大4つ、合計で最大5つのポートが必要となり、真空容器のポート数が増え真空容器の形状が複雑化するとともに大型化し、さらに製造コスト及び組立てに要する作業負担も増加するという課題があった。
【0009】
本発明に係る実施形態は、このような課題を解決するためになされたもので、ポートの数を少なくすることにより、測定精度の向上と、真空容器の簡素化及び小型化、並びに製造コスト及び機器組立てのための作業負担の軽減化を図ることができるビーム電流測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本実施形態に係るビーム電流測定装置は、真空容器の内部に配置され、導体筒と、前記導体筒の底面に設けられたスリットと、前記導体筒の外周に設けられた二次電子抑制機構と、から構成されるビーム電流測定部と、前記ビーム電流測定部を支持するとともに位置調整を行う支持部材と、前記スリットの位置調整を行うスリット開閉機構と、前記ビーム電流測定部で検出されたビーム電流値を前記真空容器の外部に設けられたビーム信号受信部へ出力するビーム電流読取り機構と、を備えたビーム電流測定装置において、前記支持部材、スリット開閉機構及びビーム電流測定部は、前記真空容器に設けられた同一のポートに接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、ビーム電流測定装置の簡素化及び小型化、並びに製造コスト及び作業負担の軽減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係るビーム電流測定装置の構成図。
図2】第1の実施形態の変形例1に係るビーム電流測定装置の構成図。
図3】第2の実施形態に係るビーム電流測定装置の構成図。
図4】第2の実施形態の変形例2に係るビーム電流測定装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るビーム電流測定装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係るビーム電流測定装置について、図1を用いて説明する。
【0015】
(全体構成)
第1の実施形態に係るビーム電流測定装置100は、真空容器10、真空容器10の側面に設けられたポート9、ポート9に取付けられた支持部材6を介して真空容器10の内部に配置されたビーム電流測定部20から構成される。
【0016】
<ビーム電流測定部>
ビーム電流測定部20は、カップ状の導体筒1、導体筒1の底面に設けられ、スリット開口部3の幅を調整する開閉可能なスリット2、導体筒1に形成された二次電子抑制機構4、とから構成される。
【0017】
導体筒1は、断面が円形、楕円形又は矩形状で、導体筒1の断面積とビーム5の断面積に大きな乖離を生じさせずに、ビーム5を効率よく捕獲できる大きさとし、スリット2は導体筒1の底面を完全に覆うことのできる形状とすることが望ましい。
【0018】
スリット2は導電性の板からなり、荷電粒子線等からなるビーム5の一部をスリット開口部3から選択的に通過させる。スリット2に衝突したビーム5はビーム電流としてビーム電流読取り機構7及びポート9を介して外部のビーム信号受信部12に出力される。
【0019】
この導体筒1及びスリット2は電気的に同電位で、導体筒1及びスリット2と二次電子抑制機構4は電気的に絶縁されている。絶縁方法は導体筒1及びスリット2と二次電子抑制機構4の間に絶縁材を挿入するか、又は導体筒1及びスリット2と二次電子抑制機構4を異なる支持機構で支持し非接触にする等の手段が考えられる。
【0020】
二次電子抑制機構4は、導体筒1の外周に沿って設けられたリング型の部材が用いられるか、又は導体筒1の断面を覆うメッシュ部材が用いられる(図示せず)。この二次電子抑制機構4には、スリット2に衝突したビーム5により導体筒1及びスリット2の表面から放出される二次電子を抑制するため負の電圧が印加される。
【0021】
導体筒1、スリット2及び二次電子抑制機構4の材質としてはSUS、鉄、アルミニウム等の導電性の板で構成されるか、又は表面の少なくとも一部を金属鍍金等の導電性素材で覆ったプラスチック等の絶縁体で構成される。
【0022】
<真空容器及びポート>
真空容器10の内部は、ターボ分子ポンプ、イオンポンプ、ロータリーポンプ、ドライポンプ、スクロールポンプ等の真空ポンプにより、真空状態に保持されている。
【0023】
真空容器10の内部を輸送されるビーム5は、電子線、陽子線、炭素イオン等の正又は負の電荷を持つ荷電粒子線が用いられる。これらの荷電粒子線は、イオン源や電子銃で生成され、必要に応じて加速器で加速された後にビーム輸送系を経由して真空容器10中のビーム電流測定部20まで輸送される(図示せず)。
【0024】
ビーム電流測定部20を支持し位置調整を行う支持部材6は、真空容器10の外部に設けた駆動機構により、ポート9を介してビーム電流測定部20の位置調整を行う(図示せず)。また、スリット開口部3の大きさを変化させるスリット開閉機構8は、真空容器10の外部に設けた駆動機構13により、ポート9を介してスリット2の位置調整を行う。
【0025】
これらの位置調整機構は、例えば、真空容器10に接続されたベローズ等を用いた直線導入器、回転導入器等の導入器のほか、直線状の棒をウィルソンシール等で軸シールすることで真空状態を保持しつつ、支持部材6やスリット2の位置調整を行う。
【0026】
なお、外部から位置調整を行う代わりに、真空容器10の内部に設けたモーター等の駆動部材により位置調整を行ってもよく、その際は、モーターの信号線がフィードスルー等を用いて真空容器10の外部に取り出され、外部電源により位置調整が行われる(図示せず)。
【0027】
本実施形態では、支持部材6、スリット開閉機構8及び後述するビーム電流読取り機構7は、真空容器10の側面に設けられた同一のポート9に接続される。
【0028】
<ビーム電流読取り機構>
ビーム電流読取り機構7において、ビーム電流を検出する信号検出線は、一端を導体筒1の側面及びスリット2の外周部に沿って配置し、測定されたビーム電流信号は信号検出線及びポート9を介して外部に設けられたビーム信号受信部12に出力される。
【0029】
具体的には、導電性素材によるワイヤー又は板形状の信号検出線を絶縁カラー、ワッシャー及びボルト等で導体筒1及びスリット2との間に設けられた間隙に固定するようにしてもよいが、信号検出線を絶縁材で構成された接着剤により導体筒1及びスリット2表面に固定するようにしてもよい。
【0030】
ビーム電流読取り機構7の電圧読み取り端子として、例えば、Nコネクタ、Mコネクタ、BNCコネクタ、SHVコネクタ等が用いられる。
【0031】
(作用)
上記のように構成されたビーム電流測定装置において、ビーム電流測定部20にビーム5が入射されると、導体筒1及びスリット2に衝突したイオンがビーム電流信号として測定される。
【0032】
ビーム電流測定部20の支持及び位置調整を行う支持部材6と、ビーム電流を測定し外部へ出力するビーム電流読取り機構7と、スリット開口部の大きさを調整するスリット開閉機構8は、全て同一のポート9に接続されており、効率的なビーム電流測定と機器の小型化、組立作業負担の軽減化を図ることができる。
【0033】
(効果)
本実施形態によれば、ビーム電流測定部20の支持部材6、ビーム電流読取り機構7及びスリット開閉機構8を、全て同一のポート9に接続し、ポート数を最小限にしたことにより、測定精度の向上と、真空容器の簡素化及び小型化、並びに製造コスト及び機器組立てのための作業負担の軽減化を図ることが可能となる。
【0034】
(変形例1)
変形例1は、図2に示すように、スリット2が水平方向及び垂直方向の2方向で開口幅を調整可能な構成となっている。これにより、高精度のビーム電流測定、実空間分布測定及び位相空間分布測定を行うことができる。
【0035】
この水平方向及び垂直方向に調整可能なスリット開閉機構8は、従来ではそれぞれ複数の異なるポート9に接続していたが、本実施形態では同一のポート9に接続したことにより、上記第1の実施形態と同様に、真空容器の簡素化及び小型化、並びに製造コスト及び機器組立てのための作業負担の軽減化を図ることが可能となる。
【0036】
なお、本変形例では、スリット2は4分割されているが、3分割又は5以上に分割するようにしてもよい。
【0037】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係るビーム電流測定装置について、図3を用いて説明する。なお、上記実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0038】
(構成)
本第2の実施形態では、導体筒1及びスリット2が絶縁体11により2分割されており、分割された導体筒1及びスリット2のビーム電流は、ビーム電流読取り機構7a、7bを介して外部のビーム信号受信部12a、12bへ出力される。
【0039】
絶縁体11の材質としてはセラミック、テフロン(登録商標)、ゴム等が用いられ、導体筒1及びスリット2にボルトによる接続、はめ合い又は粘着剤等により固定される。
なお、本実施形態では、導体筒1及びスリットを2分割しているが、3以上に分割してもよい。
【0040】
(作用、効果)
本第2の実施形態によれば、導体筒1及びスリット2が絶縁体11で分割されていることにより、分割された領域ごとのビーム電流を独立に測定することが可能となる。
【0041】
これにより、分割された領域ごとのビーム電流を独立に測定することで、ビーム5の実空間分布を高精度で測定することができる。また、従来のビーム分布測定機器を用いることなく、単に、導体筒1及びスリット2を分割することで、ビーム5の実空間分布を高精度で測定することが可能となる。さらに、ビーム電流測定装置100を構成する機器の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0042】
(変形例2)
図3に示す第2の実施形態では、ビーム電流読取り機構7a、7bをそれぞれ異なるビーム信号受信部12a、12bに出力しているが、本変形例2では、図4に示すように、同一のビーム信号受信部12に出力する。このビーム信号受信部12としては、例えば、オシロスコープ、ADコンバータ、及び必要に応じてそれらを制御するためのプログラマブルロジックコントローラ、VMEクレート、CAMACクレート、コンピュータ等が用いられる。
【0043】
このように、本変形例2は、絶縁体11で分割された導体筒1及びスリット2からのビーム電流を、ビーム電流読取り機構7a、7bを介して、同一のビーム信号受信部12に入力することで、絶縁体11で分割された導体筒1及びスリット2ごとのビーム電流を同時刻で測定、解析することができるため、ビームの時間構造を確認、解析することが可能となる。
【0044】
また、本変形例2によれば、絶縁体11で分割された導体筒1及びスリット2ごとのビーム5の進行方向分布を測定することが可能となる。これにより、絶縁体11で分割された導体筒1及びスリット2ごとのビーム5の進行方向分布を把握することができるため、例えば、下流側へのビーム輸送効率を上げるためにビーム5の進行方向分布が一様な領域を選択することが可能となる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
1…導体筒、2…スリット、3…スリット開口部、4…二次電子抑制機構、5…ビーム、6…支持部材、7、7a、7b…ビーム電流読取り機構、8…スリット開閉機構、9…ポート、10…真空容器、11…絶縁体、12、12a、12b…ビーム信号受信部、13…駆動機構、20…ビーム電流測定部、100…ビーム電流測定装置
図1
図2
図3
図4