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特開2023-182929自動工具交換装置の工具移し替え機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182929
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】自動工具交換装置の工具移し替え機構
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
B23Q3/157 C
B23Q3/157 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096189
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】浅川 和哉
【テーマコード(参考)】
3C002
【Fターム(参考)】
3C002AA00
3C002DD06
3C002FF01
3C002FF06
3C002FF09
3C002KK04
3C002LL05
3C002LL10
(57)【要約】
【課題】工具の正確な移し替えを実行する自動工具交換装置の工具移し替え機構を提供すること。
【解決手段】複数の工具を収納したツールマガジンとワーク加工を行う工具主軸との間で工具を移し替えながら搬送する自動工具交換装置に設けられた工具移し替え機構であって、固定部材に対して変位可能に組み付けられた可動部材の開閉動作によって工具を把持する工具把持手段と、前記工具把持手段を往復移動させる伸縮可能なアクチュエータと、前記工具把持手段に把持された工具を前記アクチュエータのストローク端で行う移し替えによって保持する保持部材と、前記アクチュエータのストローク端に設けられ、工具が前記保持部材によって保持された後に、前記アクチュエータによる動作を伝達して前記可動部材を開動作させる伝達手段と、を有する自動工具交換装置の工具移し替え機構。
【選択図】図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工具を収納したツールマガジンとワーク加工を行う工具主軸との間で工具を移し替えながら搬送する自動工具交換装置に設けられた工具移し替え機構であって、
固定部材に対して変位可能に組み付けられた可動部材の開閉動作によって工具を把持する工具把持手段と、
前記工具把持手段を往復移動させる伸縮可能なアクチュエータと、
前記工具把持手段に把持された工具を前記アクチュエータのストローク端で行う移し替えによって保持する保持部材と、
前記アクチュエータのストローク端に設けられ、工具が前記保持部材によって保持された後に、前記アクチュエータによる動作を伝達して前記可動部材を開動作させる伝達手段と、
を有する自動工具交換装置の工具移し替え機構。
【請求項2】
工具のヘッド部分に嵌め合わされ、前記工具把持手段による把持および、前記保持部材による保持の対象となる工具保持具を有する請求項1に記載する自動工具交換装置の工具移し替え機構。
【請求項3】
前記保持部材は、前記ツールマガジンを構成する無端のローラチェーンに設けられた板バネによるバネホルダであり、前記伝達手段は、揺動可能に軸支された解除レバーが、前記バネホルダに工具が保持された後の前記アクチュエータによる収縮動作によって揺動し、前記工具把持手段の可動部材を開動作させる請求項1または請求項2に記載する自動工具交換装置の工具移し替え機構。
【請求項4】
前記工具把持手段は、前記固定部材内を移動可能な支持ピンと一体に形成された前記可動部材が、前記支持ピンを付勢するクランプバネによって常に前記固定部材側に引き寄せられたものであり、前記伝達手段は、前記解除レバーの揺動が前記クランプバネの付勢力に抗して前記支持ピンを押して変位させるものである請求項1または請求項2に記載する自動工具交換装置の工具移し替え機構。
【請求項5】
前記アクチュエータは流体圧シリンダであり、前記流体圧シリンダのピストンロッドに操作部材が固定され、前記伝達手段は、前記操作部材が前記解除レバーに固定された作用ピンを介して前記解除レバーを揺動させるものである請求項3に記載する自動工具交換装置の工具移し替え機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具の正確な移し替えを実行する自動工具交換装置の工具移し替え機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の工具を使用した各種加工を行う工作機械には自動工具交換装置が備えられ、加工内容の切り替え時には主軸装置との間で所定の工具への自動交換が行われるようになっている。下記特許文献1にも自動工具交換用のツールマガジンを備えたマシニングセンタが開示されている。そのツールマガジンにはツールキャップ搬送手段が設けられ、外周に沿ってツールキャップを収容する複数の凹所を円周上に等間隔で形成したマガジンプレートが設けられている。そして、ツールマガジンのツールキャップ搬送位置と交換位置との間を、シリンダによってツールキャップを挟んだスライドブラケットが往復移動するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-248731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例の自動工具交換装置は、シリンダを使用してツールキャップをツールキャップ搬送位置と交換位置とに移動させるものであるが、それぞれの位置においてシリンダとマガジンプレートやXYテーブルとの間で行われる工具の移し替え機構が明確にはなっていない。実際には工具の確実な移し替えを行うため様々な工具移し替え機構が存在するが、自動で行われる工具の移し替えには正確さが要求される。また、工具の移し替えにおける正確さは、関係する部材同士の正確な組み付けも求められ、自動工具交換装置を駆動させる前の調整作業が負担にもなっていた。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、工具の正確な移し替えを実行する自動工具交換装置の工具移し替え機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動工具交換装置の工具移し替え機構は、複数の工具を収納したツールマガジンとワーク加工を行う工具主軸との間で工具を移し替えながら搬送する自動工具交換装置に設けられた工具移し替え機構であって、固定部材に対して変位可能に組み付けられた可動部材の開閉動作によって工具を把持する工具把持手段と、前記工具把持手段を往復移動させる伸縮可能なアクチュエータと、前記工具把持手段に把持された工具を前記アクチュエータのストローク端で行う移し替えによって保持する保持部材と、前記アクチュエータのストローク端に設けられ、工具が前記保持部材によって保持された後に、前記アクチュエータによる動作を伝達して前記可動部材を開動作させる伝達手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、自動工具交換装置は、複数の工具を収納したツールマガジンとワークの加工を実行する工具主軸との間を、工具を移し替えながら所定の位置に運ぶものであり、例えば工具をツールマガジンに戻す工程では、前記アクチュエータのストローク端で保持部材に移し替えるような場合に、固定部材と可動部材と備えた工具把持手段における開動作を、工具が保持部材に保持された後にアクチュエータによる動作を伝達手段によって伝達するようにしたので、工具の正確な移し替えを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】複合加工機の内部構造を示した正面図である。
図2】自動工具交換装置を加えて複合加工機を示した斜視図である。
図3】自動工具交換装置を示した斜視図である。
図4】工具搬送部を構成する前後シフタを示した斜視図である。
図5】工具搬送部を構成する上下シフタを示した斜視図である。
図6】工具をツールマガジンへ戻す第1工具移し替え機構を示した側面図である。
図7図6と同じ工具移し替え機構について異なる状態を段階的に示したものである。
図8図6と同じ工具移し替え機構について異なる状態を段階的に示したものである。
図9図8に対応する状態のプッシャと工具ホルダとの関係を示した斜視図である。
図10】工具ホルダとエアシリンダとの着脱における分離状態を示した図である。
図11】工具ホルダとエアシリンダとの着脱における装着状態を示した図である。
図12】工具ホルダとエアシリンダとの着脱におけるロック状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る自動工具交換装置の工具移し替え機構の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。先ず、本実施形態の工具移し替え機構は、図1に示す工作機械に設けられた自動工具交換装置に使用されたものである。図1は、複合加工機を示した内部構造の正面図である。この複合加工機1は、第1ワーク主軸装置3および第1タレット装置5と、第2ワーク主軸装置4および第2タレット装置6とが左右対称に配置された対向2軸旋盤である。そして、この複合加工機1には機体中央に工具主軸装置2が設けられている。工具主軸装置2は、旋盤では難しい加工を実行するため、第1ワーク主軸装置3および第2ワーク主軸装置4の主軸チャック11に把持されたワークWに対して加工を行うものである。
【0010】
工具主軸装置2は、各種工具におけるワーク加工が可能であり、複合加工機1は、そうした工具Tを取り替えるための自動工具交換装置が設けられている。図2は、その自動工具交換装置を加えて複合加工機1を示した斜視図である。この自動工具交換装置8は、複数の工具Tを収納したツールマガジン15が機体の前面上部に配置され、横方向に広がったツールマガジン15に対し、機体中央部に位置するように上下方向に工具搬送部16が構成されている。従って、ツールマガジン15で割出しされた工具Tは、工具主軸装置2の主軸ヘッド13に対して工具搬送部16によって運ばれるよう構成されている。
【0011】
次に、図3は、自動工具交換装置8を機体裏側(図2の反対側)から示した斜視図である。複数の工具Tを収納するツールマガジン15は、無端のローラチェーン21が長円形となるように回転可能に掛けられ、そこには一列に並ぶように複数の工具Tが吊下げられている。ローラチェーン21は割出し用サーボモータ22の回転制御によって、円周方向の送り量が調整され、中央に設けられた割出し位置P1に該当する工具Tが運ばれるようになっている。
【0012】
割出し位置P1の工具Tは、工具搬送部16によって工具主軸装置2まで運ばれることになるが、図4は、その工具搬送部16を構成する前後シフタを示した斜視図であり、図5は同じく工具搬送部16を構成する上下シフタを示した斜視図である。工具Tには着脱可能な工具保持具23が取り付けられ、それによってローラチェーン21での保持および、工具搬送部16における工具Tの移し替えが可能になっている。工具保持具23は、工具Tのヘッド部分に嵌め合わせる部材である。なお、各図面で示した工具Tは全て円柱形状で表現されているが、これは各種の工具Tが収まる領域を表現したにすぎない。
【0013】
ツールマガジン15のローラチェーン21は、コの字に形成された複数の工具ホルダ31が一定の間隔で設けられている。工具ホルダ31は、工具保持具23の側部両側に形成された溝形状の把持部231が引掛けられるようになっている(図7参照)。また、工具ホルダ31の下には、同じくコの字に折り曲げられた板バネからなるバネホルダ32が取り付けられている。バネホルダ32は、工具ホルダ31に収まった工具保持具23をバネ力で保持することでガタツキを防止するものである。前後シフタ25は、そうしたローラチェーン21側の割出し位置P1と、上下シフタ26による上下移し替え位置P2との間で、工具Tを水平なX軸方向に移動させるものである。
【0014】
前後シフタ25は、ツールマガジン15の天板33に組み付けられている。前後シフタ25は、アクチュエータとしてピストンロッド351を水平に突き出したエアシリンダ35であり、ピストンロッド351の先端に連結用ヘッド36が取り付けられている。エアシリンダ35と平行な2本のガイドロッド34が設けられ、その各々は支持ブロック37を貫通し、先端部分が連結用ヘッド36に取り付けられている。連結用ヘッド36は、エアシリンダ35の伸縮方向である前後方向(X軸方向)に移動し、後述するように工具ホルダ38との着脱が可能な構成を有している。工具ホルダ38は、工具Tを掴んで保持し、前後シフタ25と上下シフタ26との間を移動できるようにするためのものである。
【0015】
上下シフタ26は、工具ホルダ38の移し替えによって工具Tを上下方向に移動させるものである。その工具ホルダ38にはU字形状部551が形成された把持ブロック55が一体に形成され、上下シフタ26は、そのU字形状部551に入れたフランジ付きのクランプピン41を引き上げることにより、工具ホルダ38を保持できるようになっている。すなわち、上下シフタ26のクランプ部40は、筒部材を通して下方に突き出したクランプピン41がエアシリンダ42によって上下動するよう構成され、クランプピン41の引き込みによって筒部材との間で把持ブロック55が掴めるようになっている。
【0016】
クランプ部40は、昇降フレーム43の上梁に組付けられ、工具ホルダ38を介して保持した工具Tが枠内に収められる。昇降フレーム43は、鉛直なガイドレール44を摺動して上下に移動するものであり、上下シフタ26には昇降用サーボモータ45の出力を直進運動に変換するボールネジ機構が用いられている。従って、昇降用サーボモータ45の駆動制御により、昇降フレーム43の昇降位置すなわち工具Tの位置制御が行われるようになっている。そして、下降位置には、主軸ヘッド13と上下シフタ26との間で工具Tを移し替えるため、図3に示すツールチェンジャ27が設けられている。
【0017】
ツールチェンジャ27には工具交換アーム47が設けられ、そこには両端部に工具Tを把持するチャック爪が形成されている。工具交換アーム47は、旋回用サーボモータ48の回転がカム装置49を介して伝達される。そのカム装置49は、旋回用サーボモータ48から入力された回転を、工具交換アーム47に連結された出力軸に対し、回転運動と上下運動とに変換して伝達する溝カムやグロボイダルカムなどから構成されている。そしてツールチェンジャ27では、シャッタ46が下降することにより、工具交換アーム47によって主軸ヘッド13に対する工具Tの交換が可能になる。
【0018】
自動工具交換装置8は、ツールマガジン15、前後シフタ25、上下シフタ26およびツールチェンジャ27によって構成され、各段階の移し替えを経て工具Tが運ばれるようになっている。従って、適切な工具交換を行うには、各段階の工具Tの移し替えが確実に行われることが求められている。そこで先ず、ツールマガジン15と前後シフタ25との間の第1工具移し替え機構について説明する。特に、工具Tをツールマガジン15へと戻すための工具移し替え機構について説明する。
【0019】
前述したように、ツールマガジン15のローラチェーン21には工具ホルダ31とバネホルダ32とがあり、特に工具Tを戻す場合には工具保持具23がバネホルダ32に対して確実に嵌り込むようにしなければならない。図6は、ツールマガジン15へと工具Tを戻す場合の第1工具移し替え機構を示した側面図である。
【0020】
先ず、工具ホルダ38は、図示するようにL字形の固定ブロック51に対して、板状の可動ブロック52が一体に形成された支持ピン53によって前後方向(X軸方向)に変位することで、工具保持具23を把持および解放する開閉動作が可能なものである。固定ブロック51内を移動可能な支持ピン53は、クランプバネ54によって軸方向に付勢され、常に可動ブロック52が固定ブロック51側に引き寄せられている。工具Tは、工具保持具23のクランプ溝233に固定ブロック51および可動ブロック52のクランプ爪511,521(図9参照)が嵌り込み、工具ホルダ38によって掴まれるようになっている。
【0021】
工具Tを前後シフタ25からツールマガジン15へ移し替える場合には、工具保持具23がバネホルダ32によって確実に保持された後、その工具保持具23が工具ホルダ38から解放されることが好ましい。工具保持具23がバネホルダ32に嵌り込む前に工具ホルダ38が開動作に移ってしまうと、エアシリンダ35による引き込み力が工具保持具23に伝わらず、工具保持具23すなわち工具Tを正確な位置まで戻すことができないからである。そして、工具Tが正確な位置まで戻ることなくローラチェーン21が回転した場合には、その工具Tが正確な軌道を通らないことによって衝突が生じてしまう。第1工具移し替え機構は、そうした課題を解決すべく、ツールマガジン15に対して工具Tを正確な位置に戻すための構成がとられている。
【0022】
ピストンロッド351先端の連結用ヘッド36は、工具ホルダ38側のロック機構を介して着脱が行われるよう構成されている。従って、図6に示す上下移し替え位置P2の工具Tをツールマガジン15側の割出し位置P1に戻す場合には、エアシリンダ35が収縮動作することにより、工具保持具23がバネホルダ32に嵌め込まれることとなる。その際、バネホルダ32によって工具保持具23が確実に保持された後に、その工具保持具23を工具ホルダ38から解放させる必要がある。
【0023】
そこで、工具保持具23を解放するタイミングを調整するため、エアシリンダ35側にプッシャ60が設けられている。プッシャ60は、工具ホルダ38の支持ピン53を押すことにより、クランプバネ54の付勢力に抗して可動ブロック52を固定ブロック51から離間させるものである。ここで、図7及び図8は、図6と同じ第1工具移し替え機構について、特にエアシリンダ35の収縮側ストローク端の工程を段階的に示したものである。また、図9は、図8に対応する状態のプッシャ60と工具ホルダ38との関係を示した斜視図である。
【0024】
プッシャ60は、エアシリンダ35を天板33に取り付ける組付けブロック58にベースブロック61が固定され、そこに横ピンを通した解除レバー62が揺動可能に軸支されている。解除レバー62は、ベースブロック61から上方に突き出した部分に作用ピン63が横向き突き出し、二股に形成されたベースブロック61の内側に入った部分には押出しローラ64が軸支されている。ピストンロッド351の先端には操作ブロック39が固定され、作用ピン63がエアシリンダ35の収縮方向の移動によって引っ掛けられるように構成されている。特に、作用ピン63と操作ブロック39とは、エアシリンダ35のストローク端における微小距離(例えば4mm)だけ当たるように設計されている。
【0025】
二股形状のベースブロック61の下部両側には摺動ロッド65が貫通し、そうした2本の摺動ロッド65は、工具ホルダ38側の受けブロック66と一体になって形成されている。受けブロック66にはプッシュピン67が2本水平に突き立てられており、各プッシュピン67は、工具ホルダ38内の2本の支持ピン53とそれぞれ同軸になるように位置している。支持ピン53が組み込まれた固定ブロック51の挿入孔は開口部を有し、そこからプッシュピン67が進入することによって支持ピン53が押されるようになっている。その押圧力は、解除レバー61を揺動させるエアシリンダ35からの出力であり、押出しローラ64を介して受けブロック66に伝達される。
【0026】
従って、第1工具移し替え機構では、図6の上下移し替え位置P2からツールマガジン15の割出し位置P1へと工具Tを戻す場合、エアシリンダ35が収縮動作し、工具ホルダ38に吊り下げ保持された工具Tが移動する。そして、図7に示すエアシリンダ35のストローク端における工具保持具23は、その把持部231が工具ホルダ31に掛けられ、バネホルダ32に押し込まれるようにして保持される。第1工具移し替え機構では、この段階まで工具保持具23が工具ホルダ38によって強く掴まれているため、確実に工具保持具23がバネホルダ32内に嵌り込む。
【0027】
エアシリンダ35は、図7に示す状態から更に4mm程度収縮動作することにより、図8に示す工具ホルダ38における工具保持具23の解放が行われる。すなわち、図9に示すように、操作ブロック39が当てられた作用ピン63はエアシリンダ35の収縮方向に押され、それに伴って解除レバー61が揺動し、上側の作用ピン63とは反対方向に下側の押出しローラ64が変位する。なお、このときストッパピン68が組付けブロック58側に当てられ、それ以上のピストンロッド351の収縮は制限される。
【0028】
押出しローラ64の変位によって受けブロック66が押され、さらにプッシュピン67によって支持ピン53が押される。支持ピン53が押されることにより、クランプバネ54の付勢力に抗して可動ブロック52が固定ブロック51から離間する方向に移動し、クランプ爪511,521によって掴まれていた工具保持具23が解放される。こうして前後シフタ25からツールマガジン15のローラチェーン21側へと、工具Tの移し替えが完了する。
【0029】
従って、ツールマガジン15へと工具Tを戻す第1工具移し替え機構によれば、工具保持具23が確実にバネホルダ32内に保持されるまで、工具ホルダ38が工具保持具23を掴んだ状態を維持している。そのため、ツールマガジン15への移し替えによって工具Tは正しい位置に戻され、その後に別の工具Tを割出しするのに際してローラチェーン21が回転しても、戻った工具Tが障害になるようなことはない。また、第1工具移し替え機構は、プッシャ60が工具ホルダ38の支持ピン53を押すようにし、その簡易な構成によって前記効果を達成することができるようになっている。
【0030】
次に、前後シフタ25と上下シフタ26との間で工具を移し替えるための第2工具移し替え機構について説明する。特に、これは前後シフタ25におけるエアシリンダ35と工具ホルダ38との着脱機構である。図10乃至図12は、工具ホルダ38とエアシリンダ35との着脱における各状態を示した平面図であり、図10は分離状態で、図11は装着状態であり、さらに図12はロック状態である。先ず、エアシリンダ35と平行な2本のガイドロッド34が、ピストンロッド351の先端側で連結用ヘッド36によって連結されている。ガイドロッド34の先端部は連結用ヘッド36に対してピン71によって連結され、またガイドロッド34を摺動支持する支持ブロック37は、それぞれが旋回軸371によって天板33に対して旋回可能に取り付けられている。
【0031】
ガイドロッド34および連結用ヘッド36は、4点(ピン71および旋回軸371)における回転軸の連結によって平行リンク機構が構成されている。従って、エアシリンダ35の伸縮動作によってX軸方向に変位する連結用ヘッド36は、X軸に直交する姿勢を維持した移動が可能になっている。そのため、ピストンロッド351と連結用ヘッド36は自由度を持って連結されており、操作ブロック39の両側面に形成された縦溝391内に、連結用ヘッド36側に形成された突起361が遊嵌している。
【0032】
連結用ヘッド36は、その中央部において移動方向(X軸方向)にあけられた嵌合孔363が形成され、嵌合孔363の両側には嵌合凹部365が形成されている。連結用ヘッド36は、工具ホルダ38との間で嵌合凹部365による位置決めと、嵌合孔363における連結とが行われるようになっている。工具ホルダ38は、把持ブロック55の上にロック用ブロック72が固定され(図6参照)、そこには嵌合孔363内に入り込む嵌合部が形成されている。また、ロック用ブロック72には嵌合凹部365に嵌り込む位置決めピン73が水平方向(X軸方向)に突き出している。
【0033】
連結用ヘッド36の嵌合孔363は、先端面側の幅が狭くなるように凸状部367が形成され、ロック用ブロック72の嵌合部には、凸状部367に摺接するように摺動片74が両側に取り付けられている。また、ロック用ブロック72の嵌合部に形成された横孔には可動ピン75が設けられ、連結用ヘッド36の移動方向に対して直交する方向に球面の先端部が出入りするように構成されている。そして、ロック用ブロック72内には、2つの可動ピン75を対称的に変位させるロックピン76が挿入されている。ロックピン76は、径を細くした環状のくびれ部761が形成され、そこに可動ピン75が入ることでロック解除状態になる。
【0034】
ロックピン76は、ロック用ブロック72内においてエアシリンダ35の伸長方向にスプリング77によって付勢され、支持プレート81に固定されたストッパ82に突き当てられている。また、支持プレート81にはロック用シリンダ83が設けられ、ロック用ブロック72に対してスプリングに付勢されたピストンロッドがエアシリンダ35の収縮方向に押し当てられている。
【0035】
第2工具移し替え機構では、図10に示すエアシリンダ35が収縮した状態から伸長動作によってピストンロッド351が伸び、一点鎖線で示すように連結用ヘッド36が移動する。その連結用ヘッド36は、平行リンクを構成するガイドロッド34によって両端が支持されながら姿勢を傾かせないようにして前進し、図11に示すように摺動片74が凸状部367に接しながら相対的に嵌合孔363へと入り込む。また、連結用ヘッド36の先端面では、嵌合凹部365にロック用ブロック72の位置決めピン73が相対的に嵌り込んでいる。
【0036】
ところで、こうした結合時の連結用ヘッド36は、横方向(Y軸方向)にズレが生じてしまうことがある。しかし、第2工具移し替え機構では、連結用ヘッド36が平行リンクによってエアシリンダ35の伸縮方向に対して直交する姿勢を維持したまま横方向に変位することが可能であり、嵌合孔363とロック用ブロック72の嵌合部との位置合わせが行われる。そのため、連結用ヘッド36に横ズレが生じていたとしても、嵌り合う際に連結用ヘッド36の位置の修正によってスムーズな結合が行われる。同じようにして位置決めピン73が嵌合凹部365に嵌り込むことになる。
【0037】
エアシリンダ35の伸長動作は、連結用ヘッド36がロック用ブロック72に押し当てられて停止し、そこで前後シフタ25と上下シフタ26との間で工具Tを移し替えが可能になる。上下シフタ26によって工具Tを移動させる場合には、U字形状部551に入れたクランプピン41(図5参照)で把持ブロック55が保持される。従って、把持ブロック55が図11に示す状態に維持され、エアシリンダ35が収縮動作すれば連結用ヘッド36がロック用ブロック72から抜けて図10に示す位置まで戻される。こうして工具Tが上下シフタ26に移し換えられ、直ちにツールチェンジャ27へ搬送する次の動作に移すことができる。
【0038】
逆に上下シフタ26から工具Tを受け取り、ツールマガジン15へと戻す場合には、把持ブロック55が拘束されていないため、連結用ヘッド36と工具ホルダ38との間でロックがかけられる。すなわち図12に示すように、エアシリンダ35の収縮に従って連結用ヘッド36がツールマガジン15側へ移動すると、ロック用ブロック72がロック用シリンダ83に押されて同方向に移動する。このときロックピン76は支持プレート81に固定されているため、可動ピン75は、相対的に移動したロックピン76によってくびれ部761から外れて外側へと押し出される。そして、連結用ヘッド36は、その凸状部367が可動ピン75に引っ掛かり、ロック用ブロック72から抜けないロック状態となる。工具ホルダ38に保持された工具Tは、こうして上下シフタ26から前後シフタ25へと移し替えられてツールマガジン15へと運ばれる。
【0039】
よって、第2工具移し替え機構では、連結用ヘッド36が平行リンクの一部として構成されていることにより、ロック用ブロック72および位置決めピン73の嵌り込み位置に関して手間のかかる調整作業を軽減させることが可能になった。また、第2工具移し替え機構では、摺動片74を設けたロック用ブロック72の嵌合部や位置決めピン73がエアシリンダ35の伸縮方向(X軸方向)に突き出し、連結用ヘッド36は自らの移動によって着脱できるため、上下シフタ26側における分離動作を行う必要がない。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、複合加工機1における自動工具交換装置8に組み込まれた工具移し替え機構を説明したが、異なる自動工具交換装置であってもよい。
また、前記実施形態ではアクチュエータの一例としてエアシリンダを示したが、同じ流体圧シリンダとして油圧シリンダを使用するものであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…複合加工機 2…工具主軸装置 8…自動工具交換装置 15…ツールマガジン 16…工具搬送部 23…工具保持具 25…前後シフタ 26…上下シフタ 27…ツールチェンジャ 31…工具ホルダ 32…バネホルダ 35…エアシリンダ 34…ガイドロッド 38…工具ホルダ 51…固定ブロック 52…可動ブロック 60…プッシャ 62…解除レバー T…工具

図1
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図12