(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182962
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】グロメット組立体及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20231220BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20231220BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B7/00 301
B60R16/02 622
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096269
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山尾 宜道
(72)【発明者】
【氏名】横山 悟史
(72)【発明者】
【氏名】鵜生 晃寿
【テーマコード(参考)】
5G309
5G363
【Fターム(参考)】
5G309AA09
5G363AA16
5G363BA02
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】コストの低減が図れるグロメット組立体を提供することを目的とする。
【解決手段】 配索材Wが挿通されパネル10に形成される貫通孔11に取り付けられるグロメット2と、グロメット2に対しパネル10の反対側に当接して配置される樹脂インナ3と、樹脂インナ3に係止され配索材Wが挿通されると共にパネル10との間でグロメット2及び樹脂インナ3を挟持するようにパネル10に取り付けられるプロテクタ4とを備えて構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配索材が挿通され、車両用パネルに形成される貫通孔に取り付けられるグロメットと、
前記グロメットに対し前記車両用パネルの反対側に当接して配置される樹脂インナと、
前記樹脂インナに係止され、前記配索材が挿通されると共に、前記車両用パネルとの間で前記グロメット及び前記樹脂インナを挟持するように前記車両用パネルに取り付けられるプロテクタと、
を備えるグロメット組立体。
【請求項2】
前記グロメットは、前記車両用パネルに当接するリップ部を有し、前記リップ部に対し前記樹脂インナ側の領域に中空部を形成している、
請求項1に記載のグロメット組立体。
【請求項3】
前記樹脂インナは、円筒状を呈する本体部と、前記本体部から径方向の外側に延びるフランジ部とを有し、
前記フランジ部は、径方向に向けて前記リップ部の位置まで延びており、前記プロテクタが前記車両用パネルに取り付けられた状態において前記リップ部を前記車両用パネル側へ押圧する、
請求項2に記載のグロメット組立体。
【請求項4】
前記樹脂インナは、円筒状を呈する本体部と、前記本体部の外周面から径方向の外側に突設され前記プロテクタに係止するための係止部とを有し、
前記グロメットは、径方向の外側へ向けて窪み前記係止部を挿入可能な凹部が形成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のグロメット組立体。
【請求項5】
前記係止部は、前記樹脂インナの軸方向に延びる係止爪を有し、
前記プロテクタは、前記係止爪が挿入される孔部と、前記孔部に挿入された前記係止爪を係止する被係止部と、前記係止爪を前記孔部へ案内するための傾斜面と、有する、
請求項4に記載のグロメット組立体。
【請求項6】
導電性を有する配索材と、
前記配索材に設けられるグロメット組立体と、を備え、
前記グロメット組立体は、
前記配索材が挿通され、車両用パネルに形成される貫通孔に取り付けられるグロメットと、
前記グロメットに対し前記車両用パネルの反対側に当接して配置される樹脂インナと、
前記樹脂インナに係止され、前記配索材が挿通されると共に、前記車両用パネルとの間で前記グロメット及び前記樹脂インナを挟持するように前記車両用パネルに取り付けられるプロテクタと、を備える、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメット組立体及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グロメット組立体及びワイヤハーネスとしては、例えば、特許文献1に記載されるように、ワイヤハーネスを挿通する貫通孔にグロメットが装着され、グロメットとしてインサート成形により金属板と一体化させたものを用いるものが知られている。すなわち、このグロメット組立体及びワイヤハーネスは、車体パネルに形成される貫通孔にグロメットを装着し、金属板をプロテクタと共に車体パネルに締結して固定し、金属板によりグロメットを車体パネルに圧接して取り付けを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したグロメット組立体及びワイヤハーネスでは、部品コストを低く抑えることが難しい。すなわち、グロメット組立体及びワイヤハーネスにおいて、グロメットを車体パネルに圧接させるために金属板が用いられており、金属板の部品コストが高いものとなる。また、グロメットと金属板をインサート成形を行って一体化させようとすると、部品コストがさらに高いものとなる等、取付対象に対して適正に取り付けるための構成について更なる改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、取付対象に対し適正に取り付けることができるグロメット組立体及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係るグロメット組立体は、配索材が挿通され車両用パネルに形成される貫通孔に取り付けられるグロメットと、グロメットに対し車両用パネルの反対側に当接して配置される樹脂インナと、樹脂インナに係止され配索材が挿通されると共に、車両用パネルとの間でグロメット及び樹脂インナを挟持するように車両用パネルに取り付けられるプロテクタとを備えて構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るグロメット組立体及びワイヤハーネスによれば、取付対象に対し適正に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るグロメット組立体の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-IIにおけるグロメット組立体及びワイヤハーネスの断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のII-IIにおけるグロメット組立体の拡大断面図である。
【
図4】
図4は、グロメット組立体におけるグロメット及び樹脂インナの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のV-Vにおけるグロメット組立体の拡大断面図である。
【
図7】
図7は、リップ部の圧接状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るグロメット組立体の分解斜視図であり、
図2は、グロメット組立体及びワイヤハーネスの垂直断面図である。
図3は、グロメットの拡大断面図であり、
図4は、グロメット及び樹脂インナの斜視図である。
図5は、樹脂インナとプロテクタの拡大断面図であり、
図6は、プロテクタの斜視図であり、
図7は、リップ部の圧接状態を示す拡大断面図である。
【0011】
図1、2に示すように、グロメット組立体1は、グロメット2をパネル10に取り付けるための組立体であり、グロメット2、樹脂インナ3及びプロテクタ4を備えている。ワイヤハーネスWHは、グロメット組立体1及び配索材Wを備えて構成される。例えば、ワイヤハーネスWHは、車両に配索される配索材Wにグロメット組立体1を組み込んで構成される。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、複数の配索材Wを束にして集合部品とし、車両に搭載される機器間を電気的に接続する。なお、ワイヤハーネスWHは、コルゲートチューブ、樹脂テープ等の他の部品を含んで構成されてもよい。配索材Wは、導電性を有し、車両に搭載される機器間を接続し、電源供給や信号通信に用いられる。配索材Wは、例えば、金属棒、電線、電線束等によって構成される。金属棒は、導電性を有する棒状部材の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線は、複数の導電性を有する金属素線からなる導体部(芯線)の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線束は、当該電線を束ねたものである。
【0012】
パネル10は、車両用パネルであって、例えば車体のフロア部分に設けられるフロアパネルである。パネル10は、グロメット2が取り付けられる取付対象であり、水平方向に設けられる板状部材により構成される。
図1では、説明の便宜上、パネル10の一部を円形に示している。パネル10の全体形状は、例えば車両の構造に応じた形状とされる。
【0013】
パネル10には、貫通孔11が形成されている。貫通孔11は、ワイヤハーネスWHを挿通するための孔であり、パネル10の表裏を貫通し、パネル10の車外側と車内側を連通している。
図1では、パネル10の下側が車外側、上側が車内側となっている。この
図1では、貫通孔11を円形に開口させた場合を示しているが、貫通孔11を円形以外の形状に開口させる場合もある。パネル10の下面には、ボルト12が設けられている。ボルト12は、パネル10の下面から下方へ向けて突設され、例えば貫通孔11を挟んだ位置に二つ設けられる。ボルト12は、プロテクタ4をパネル10に取り付けるための締結部材として機能する。
【0014】
グロメット2は、貫通孔11に取り付けられ、配索材Wを挿通させて覆い配索材Wを保護する部材である。グロメット2は、例えば、弾性変形可能な弾性体により構成され、ゴム又は弾性樹脂材などによって構成される。グロメット2は、配索材Wと貫通孔11の内縁との隙間を埋めて配索材Wを保護し、車両の内外の止水を行う。また、グロメット2は、車両の防塵、防音を行う部材として機能させてもよい。
【0015】
グロメット2は、本体部21、挿通部22及び筒部23を有している。本体部21は、パネル10の車外側に配置される部位であり、貫通孔11より大きく形成され、例えば円板状の形状とされる。挿通部22は、貫通孔11に挿通される部位であり、貫通孔11に挿通可能な大きさに形成され、例えば円柱状又は円筒状の形状される。筒部23は、配索材Wを挿通させて覆う部位であり、本体部21又は挿通部22から貫通孔11の貫通方向に沿って突設されている。
図1では、筒部23が二つ形成される場合を示している。なお、筒部23は、挿通される配索材Wの本数に応じ、一つ又は三つ以上形成されてもよい。
【0016】
グロメット2には、リップ部24、中空部25及び支持部26が形成されている。リップ部24は、パネル10に当接する部位であり、本体部21からパネル10に向けて突設されている。このリップ部24は、例えば、挿通部22を周囲を覆うように連なる突条として形成される。リップ部24がパネル10に圧接されることにより、グロメット2によって貫通孔11の車内側と車外側が封鎖され、グロメット2の止水機能が発揮される。
【0017】
図3に示すように、中空部25は、グロメット2における中空な空間部分であり、リップ部24に対し樹脂インナ3側の領域に形成されている。すなわち、中空部25は、リップ部24に対しパネル10の反対側の領域に形成され、パネル10に圧接されるリップ部24を撓みやすくしている。例えば、中空部25は、本体部21の外周部分を径方向に凹ませ、周方向に延びる溝として形成される。グロメット2がパネル10に取り付けられる際、リップ部24がパネル10に押し付けられるが、中空部25が形成されることにより、リップ部24が潰れるように変形する前に撓んで中空部25側へ移動可能となる。
【0018】
支持部26は、樹脂インナ3を支持する部位であり、本体部21の樹脂インナ3側に形成されている。支持部26は、樹脂インナ3と係合し、グロメット2と樹脂インナ3を装着可能とさせる。例えば、支持部26は、樹脂インナ3のフランジ部32を覆うことにより支持し、グロメット2と樹脂インナ3を一体化させる。具体的には、支持部26は、フランジ部32の外周部分を覆う外筒部26aと、フランジ部32の下面部分を覆う環状部26bとを有する構造とされる。外筒部26aは筒状に形成され、環状部26bは外筒部26aの下端と連なって径方向の内側へ延びている。
【0019】
図1において、樹脂インナ3は、グロメット2に取り付けられる部材であって、樹脂部材により構成され、グロメット2より剛性の高い部材となっている。この樹脂インナ3は、グロメット2に対しパネル10の反対側に当接して配置されている。このため、プロテクタ4がパネル10に取り付けられる場合に、プロテクタ4からの押圧力を樹脂インナ3で受けてグロメット2へ伝達させることができる。なお、樹脂インナ3は、少なくともその一部がグロメット2に対しパネル10の反対側に当接して配置されていればよく、他の部分がグロメット2に対しパネル10の反対側に配置されていなくてもよい。
【0020】
樹脂インナ3は、本体部31、フランジ部32及び係止部33を有している。本体部31は、円筒状に形成され、軸方向が貫通孔11の貫通方向となるように配置される。軸方向は、本体部31の中心軸線の方向であり、図中に示すZの方向である。本体部31の内側には、配索材Wを挿通可能となっている。フランジ部32は、本体部31から径方向の外側へ延びるように形成されている。例えば、
図3に示すように、フランジ部32は、本体部31のパネル10側の位置から径方向の外側へ延び、グロメット2のリップ部24の位置まで延びている。このため、プロテクタ4がパネル10に取り付けられる際に、剛性の高い樹脂インナ3のフランジ部32によりリップ部24を押圧することができ、グロメット2をパネル10へ確実に押圧することができる。
【0021】
なお、
図1において、本体部31及びフランジ部32は環状に設けられているが、例えば、二つの半環状部材を組み合わせた構造とされてもよい。この場合、本体部31及びフランジ部32を二つの半環状部材に分割又は開閉させることが可能となる。つまり、二つの半環状部材に分割又は開いた状態で配索材Wが挿通された後、組み合わせて環状の本体部31及びフランジ部32とされることで、配索材Wの挿通が容易となる。
【0022】
図4に示すように、係止部33は、本体部31の外周に設けられ、プロテクタ4を係止するための部位である。係止部33は、例えば複数設けられ、
図4では、樹脂インナ3の周方向に沿って間隔を置いて三つ設けられている。なお、係止部33は、二つ又は四つ以上設けられていてもよい。係止部33は、アーム33a及び係止爪33bを有している。アーム33aは、本体部31の外周面から径方向の外側に突出している。係止爪33bは、アーム33aの先端から軸方向へ延びるように形成されている。つまり、係止爪33bは、アーム33aから屈曲して軸方向のプロテクタ4側へ延びており、プロテクタ4に係止可能となっている。係止爪33bの先端部分には、径方向へ突出する鉤部33cが形成されている。
【0023】
樹脂インナ3は、係止部33をグロメット2の凹部27に挿入させて設けられている。これにより、樹脂インナ3とグロメット2の相対的な回転移動が抑制される。凹部27は、グロメット2の支持部26に形成される窪みである。例えば、支持部26の環状部26bには、径方向の外側へ向けて窪み、係止部33を挿入可能な凹部27が形成されている。凹部27は、周方向において係止部33の形成位置及び形成数に応じて設けられている。つまり、係止部33及び凹部27は、樹脂インナ3がグロメット2に装着された場合、係止部33が凹部27に挿入されるように設けられている。
【0024】
図1、2に示すように、プロテクタ4は、グロメット2、樹脂インナ3及び配索材Wを保護し、配索材Wの配索経路を規制する部材である。このプロテクタ4は、グロメット2、樹脂インナ3及び配索材Wを収容し、パネル10との間でグロメット2及び樹脂インナ3を挟持するようにパネル10に取り付けられる。
【0025】
プロテクタ4は、グロメット2、樹脂インナ3及び配索材Wを覆うベース部材40を備えている。ベース部材40は、第一ベース部41及び第二ベース部42を有している。第一ベース部41は、貫通孔11の形成位置に配置され、グロメット2及び樹脂インナ3を覆い保護する部位である。第一ベース部41は、パネル10側の端面を開放した円筒状に形成されている。プロテクタ4がパネル10に取り付けられた場合、第一ベース部41は、グロメット2及び樹脂インナ3を覆い、グロメット2及び樹脂インナ3を保護する。
【0026】
第二ベース部42は、第一ベース部41に連なって形成され、第一ベース部41の側部から径方向へ突出するように設けられている。第二ベース部42の内部には、第一ベース部41から延びる配索材Wが挿通される。すなわち、第一ベース部41において軸方向から径方向へ屈曲して配索材Wが挿通され、第一ベース部41から延びて第二ベース部42内に挿通されている。プロテクタ4がパネル10に取り付けられた場合、第二ベース部42が内部に挿通される配索材Wを保護する。なお、
図1は、プロテクタ4において、第一ベース部41の側面部分及び第二ベース部42のパネル10側を覆うカバー42aが外された状態を示している。
【0027】
図2、3において、第一ベース部41の内部空間41aは、例えば円柱形とされ、パネル10から離間するに従い内径が狭まる段付きの空間となっている。すなわち、内部空間41aは、第一内周面41b、第一平行面41c、第二内周面41d、第二平行面41e、第三内周面41f及び底面41gにより画成されている。つまり、内部空間41aにおいて、パネル10側から第一内周面41b、第二内周面41d、第三内周面41fの順で内周面が形成されており、第二内周面41dの内径が第一内周面41bの内径より小さく、第三内周面41fの内径が第二内周面41dの内径より小さい。そして、第一内周面41bと第二内周面41dの間にパネル10と平行に形成される第一平行面41cが形成され、第二内周面41dと第三内周面41fの間にパネル10と平行に形成される第二平行面41eが形成されている。これにより、内部空間41aが二つの段付きの形状とされる。
【0028】
内部空間41aにおいて、第一内周面41bの内側には、グロメット2及び樹脂インナ3のフランジ部32が配置されている。第一平行面41cには、フランジ部32を覆うグロメット2の支持部26が当接している。第二平行面41eには、樹脂インナ3の本体部31が当接している。これにより、プロテクタ4がパネル10に取り付けられる際、樹脂インナ3を介してグロメット2をパネル10に圧接することができる。
【0029】
図1において、プロテクタ4には、ボルト12を挿通するための挿通孔43が穿設されている。挿通孔43は、軸方向に向けて形成される孔であり、例えば、第一ベース部41の外周面から径方向へ突出させた突出部44に形成される。挿通孔43及び突出部44は、ボルト12の設置位置に合わせて形成され、
図1では二つのボルト12に対し二つの挿通孔43及び突出部44が形成されている。
【0030】
図5、6に示すように、プロテクタ4には、孔部45、被係止部46及び傾斜面47が形成されている。孔部45は、係止爪33bを挿入するための孔であり、例えば、第一平行面41cを開口させ、係止爪33bを挿入可能な大きさに形成されている。孔部45は、係止爪33bの形成位置及び設置数に応じて形成されている。被係止部46は、係止爪33bを係止するための部位であり、例えば、係止爪33bの先端の鉤部33cを掛止可能に構成される。具体的には、被係止部46は、孔部45の第一ベース部41の周方向に延びる係止片であり、孔部45の側壁を画成し、孔部45の奥側の端部に係止爪33bの鉤部33cが掛け止められる。これにより、係止爪33bが孔部45から抜けないように係止される。
【0031】
傾斜面47は、係止爪33bを孔部45へ案内するための壁面であり、例えば孔部45の入口近傍に形成され、軸方向に対し傾斜して形成される。この傾斜面47は、例えば、第一平行面41cに形成される開口48において、径方向の外側の内縁から内側へ突出する突出部49に形成される。この傾斜面47は、孔部45の入口に向けて傾斜しており、樹脂インナ3がプロテクタ4に取り付けられる際、係止爪33bが孔部45へ挿入されるように係止爪33bを案内する。
【0032】
次に、本実施形態に係るグロメット組立体及びワイヤハーネスの組み立て方法について説明する。
【0033】
まず、
図1に示すように、グロメット2に配索材Wが挿通される。例えば、弾性体であるグロメット2は、拡径されて配索材Wが挿通される。そして、配索材Wに樹脂インナ3が組み付けられる。例えば、樹脂インナ3の本体部31及びフランジ部32が分割又は開いた状態とされ、樹脂インナ3の内側に配索材Wが配置される。そして、本体部31及びフランジ部32が組み付けられ又は閉じられて環状とされることで、樹脂インナ3が配索材Wに組み付けられる。そして、プロテクタ4に配索材Wが挿通される。例えば、プロテクタ4のカバー42aが開かれ、プロテクタ4の第一ベース部41及び第二ベース部42の内部に配索材Wが挿通される。そして、カバー42aが閉じられ、配索材Wにプロテクタ4が組み付けられる。
【0034】
その後、
図3、4に示すように、グロメット2と樹脂インナ3の装着が行われる。すなわち、樹脂インナ3のフランジ部32がグロメット2の支持部26で覆われて、グロメット2が樹脂インナ3に装着される。このとき、樹脂インナ3の係止部33がグロメット2の凹部27に挿入されるように、樹脂インナ3とグロメット2が接合される。支持部26は、側面から下面に亘ってフランジ部32を覆うため、フランジ部32を確実に支持することができる。また、係止部33が凹部27に挿入されることにより、グロメット2と樹脂インナ3との相対的な回転移動が抑制される。
【0035】
次に、グロメット2及び樹脂インナ3がプロテクタ4に取り付けられる。
図2に示すように、グロメット2及び樹脂インナ3が第一ベース部41の内部空間41aへ収容される。このとき、
図5に示すように、樹脂インナ3の係止爪33bがプロテクタ4の孔部45へ挿入されるように、グロメット2及び樹脂インナ3が内部空間41aへ収容されていく。係止爪33bの挿入位置が逸れた場合であっても、係止爪33bが傾斜面47によって孔部45へ円滑に案内される。そして、係止爪33bの鉤部33cが被係止部46に掛け止められることにより、樹脂インナ3がプロテクタ4に係止され、グロメット2、樹脂インナ3及びプロテクタ4が一体となる。
【0036】
そして、プロテクタ4がパネル10に取り付けられる。
図2に示すように、プロテクタ4の第一ベース部41が貫通孔11の位置に合わされ、グロメット2のリップ部24がパネル10に当接される。そして、
図1に示すように、ボルト12がプロテクタ4の挿通孔43に挿通されることにより、パネル10に対しプロテクタ4が正確な位置に配置される。また、プロテクタ4に対しグロメット2及び樹脂インナ3が正確な位置配置されているため、パネル10に対するグロメット2及び樹脂インナ3の配置位置も正確な位置となる。このため、金属板が用いられることなく、グロメット2が貫通孔11に対し適正に配置されて取り付けられる。
【0037】
そして、ボルト12に図示しないナットが螺合され締結が行われる。これにより、プロテクタ4がパネル10に接近し固定される。このとき、
図3に示すように、プロテクタ4が樹脂インナ3を介してグロメット2を押圧し、グロメット2のリップ部24がパネル10に圧接される。このため、例えば、樹脂インナ3の部分が弾性体とされグロメット2の一部として構成される場合と比べて、グロメット2の過剰な変形を抑制することができ、グロメット2の止水機能を適切に発揮させることができる。つまり、仮に、樹脂インナ3の部分がグロメット2と同じ剛性の部材で構成されてしまうと、プロテクタ4がグロメット2の全体を押圧することとなる。この場合、グロメット2の全体に応力が加わり、リップ部24以外の箇所が不要な変形を生ずる。このため、グロメット2が所望の止水機能を発揮できないおそれがある。これに対し、本実施形態のグロメット2は、そのような不具合が抑制され、適切な止水機能を発揮できるのである。
【0038】
また、グロメット2のリップ部24がパネル10に圧接されると、リップ部24がパネル10へ過剰に押圧されることが抑制され、リップ部24を適切にパネル10へ圧接することができる。すなわち、
図7に示すように、リップ部24に対し樹脂インナ3側の領域に中空部25が形成されているため、リップ部24に強い押圧力が加わりそうになると、リップ部24が中空部25側へ撓む。これにより、リップ部24がパネル10へ過剰に押圧されることが抑制される。従って、グロメット組立体1の構成部品に製造誤差などがある場合でも、グロメット組立体1は、リップ部24をパネル10へ適切に圧接してグロメット2を取り付けることができ、グロメット2による適切な止水性能を発揮することができる。
【0039】
そして、プロテクタ4をパネル10に取り付けたら、グロメット2、樹脂インナ3及びワイヤハーネスWHの取付も完了し、パネル10の貫通孔11に対し配索材Wを挿通させて設置することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係るグロメット組立体1及びワイヤハーネスWHによれば、プロテクタ4がグロメット2及び樹脂インナ3を挟持してパネル10に取り付けられる。このため、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、グロメット2をパネル10に押圧して取り付けることができる。グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、樹脂インナ3を用いることにより、金属板の設置を省略でき、部品コストの低減を図ることができる。そして、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、金属板の設置を省略して、コスト低減を図りつつ、グロメット2をパネル10に適正に取り付けることができる。
【0041】
また、本実施形態に係るグロメット組立体1及びワイヤハーネスWHによれば、グロメット2に対しパネル10の反対側に当接して樹脂インナ3が配置されている。この配置により、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、樹脂インナ3を介してグロメット2をパネル10側へ押圧することができる。これにより、グロメット2の過剰な変形を抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態に係るグロメット組立体1及びワイヤハーネスWHによれば、グロメット2に中空部25が形成されることにより、グロメット2がパネル10側へ押圧された際、リップ部24が中空部25側へ撓むことができる。このため、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、リップ部24がパネル10へ過剰に押圧されることを抑制することができる。従って、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、リップ部24のパネル10に対する押圧力の安定化を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態に係るグロメット組立体1及びワイヤハーネスWHによれば、樹脂インナ3のフランジ部32が径方向の外側へ延び、リップ部24の位置まで延びている。このため、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、樹脂インナ3のフランジ部32によってグロメット2のリップ部24をパネル10に押圧することができる。従って、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、リップ部24を押圧する部分の剛性を確保でき、グロメット2をパネル10へ確実に押圧することができる。
【0044】
また、本実施形態に係るグロメット組立体1及びワイヤハーネスWHによれば、樹脂インナ3に係止部33が形成され、この係止部33がグロメット2の凹部27に挿入される。これにより、グロメット2と樹脂インナ3が相対的な回転移動が抑制される。従って、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、グロメット2が押圧されて応力が生じた時などにグロメット2の回転移動することを抑制することができ、グロメット2による止水機能を確保することができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係るグロメット組立体1及びワイヤハーネスWHによれば、樹脂インナ3が軸方向に延びる係止爪33bを有し、プロテクタ4が係止爪33bが挿入される孔部45、孔部45に挿入された係止爪33bを係止する被係止部46及び係止爪33bを孔部45へ案内する傾斜面47を有している。このため、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、樹脂インナ3がプロテクタ4に取り付けられる際、傾斜面47によって係止爪33bを孔部45へ案内することができる。従って、樹脂インナ3をプロテクタ4に容易に組み付けることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0047】
例えば、上述した実施形態では、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHを車両のフロアパネルであるパネル10に取り付ける場合について説明したが、フロアパネル以外の車両用のパネル又はその他のパネルに取り付ける場合に適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 グロメット組立体
2 グロメット
3 樹脂インナ
4 プロテクタ
10 パネル(車両用パネル)
11 貫通孔
24 リップ部
25 中空部
27 凹部
31 本体部
32 フランジ部
33 係止部
33b 係止爪
45 孔部
46 被係止部
47 傾斜面
W 配索材
WH ワイヤハーネス