(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182964
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】グロメット組立体及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20231220BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20231220BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B7/00 301
B60R16/02 622
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096271
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山尾 宜道
(72)【発明者】
【氏名】横山 悟史
(72)【発明者】
【氏名】鵜生 晃寿
【テーマコード(参考)】
5G309
5G363
【Fターム(参考)】
5G309AA09
5G363AA01
5G363BA02
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】グロメットの止水性を確保することができるグロメット組立体及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】グロメット組立体1は、配索材Wが挿通されパネル10に形成される貫通孔11に取り付けられるグロメット2と、配索材Wが挿通されると共にグロメット2を収容するようにパネル10に取り付けられるプロテクタ4とを備え、グロメット2は、パネル10に向けて形成され、パネル10と接するリップ部24を有し、プロテクタ4は、パネル10に向かって延設され、リップ部24の外側を覆う壁部48を有して構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配索材が挿通され、車両用パネルに形成される貫通孔に取り付けられるグロメットと、
前記配索材が挿通されると共に、前記グロメットを収容するように前記車両用パネルに取り付けられるプロテクタと、を備え、
前記グロメットは、前記車両用パネルに向けて形成され、前記車両用パネルと接するリップ部を有し、
前記プロテクタは、前記車両用パネルに向かって延設され、前記リップ部の外側を覆う壁部を有している、
グロメット組立体。
【請求項2】
前記壁部と前記車両用パネルとの間に隙間が形成されている、
請求項1に記載のグロメット組立体。
【請求項3】
前記プロテクタは、ベース部材と、前記ベース部材に形成される開口部を覆うカバーとを有し、
前記壁部は、前記ベース部材に形成されている第一壁部と、前記カバーに形成されている第二壁部と含み、前記第一壁部及び前記第二壁部によって前記リップ部の外周を覆うように設けられている、
請求項1又は2に記載のグロメット組立体。
【請求項4】
導電性を有する配索材と、
前記配索材に設けられるグロメット組立体と、を備え、
前記グロメット組立体は、
配索材が挿通され、車両用パネルに形成される貫通孔に取り付けられるグロメットと、
前記配索材が挿通されると共に、前記グロメットを収容するように前記車両用パネルに取り付けられるプロテクタと、を備え、
前記グロメットは、前記車両用パネルに向けて形成され、前記車両用パネルと接するリップ部を有し、
前記プロテクタは、前記車両用パネルに向かって延設され、前記リップ部の外側を覆う壁部を有している、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメット組立体及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グロメット組立体及びワイヤハーネスとして、例えば、特許文献1に記載されるように、車体パネルに形成される貫通孔に対しグロメットが取り付けられるものが知られている。このグロメット組立体及びワイヤハーネスは、グロメットの外周にくびれ部を設け、このくびれ部を貫通孔の内縁に嵌合させることにより、グロメットを車体パネルに取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したグロメット組立体及びワイヤハーネスにあっては、例えば、高圧洗浄などにより、高い水圧でグロメットに水がかけられた場合、グロメットとパネルとの間の止水性を確保することが困難になる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、グロメットの止水性を確保することができるグロメット組立体及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係るグロメット組立体は、配索材が挿通され車両用パネルに形成される貫通孔に取り付けられるグロメットと、配索材が挿通されると共にグロメットを収容するように車両用パネルに取り付けられるプロテクタとを備え、グロメットはプロテクタに向けて形成されプロテクタと接するリップ部を有し、プロテクタは車両用パネルに向かって延設されリップ部の外側を覆う壁部を有して構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るグロメット組立体及びワイヤハーネスによれば、グロメットの止水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るグロメット組立体の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-IIにおけるグロメット組立体及びワイヤハーネスの断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のII-IIにおけるグロメット組立体の拡大断面図である。
【
図4】
図4は、グロメット組立体におけるグロメット及びインナ部材の斜視図である。
【
図5】
図5は、グロメット組立体及びワイヤハーネスにおける止水機能の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るグロメット組立体の分解斜視図であり、
図2は、グロメット組立体及びワイヤハーネスの垂直断面図である。
図3は、グロメットの拡大断面図であり、
図4は、グロメット及びインナ部材の斜視図である。
図5は、グロメット組立体及びワイヤハーネスにおける止水機能の説明図である。
【0011】
図1、2に示すように、グロメット組立体1は、グロメット2をパネル10に取り付けるための組立体であり、グロメット2、インナ部材3及びプロテクタ4を備えている。ワイヤハーネスWHは、グロメット組立体1及び配索材Wを備えて構成される。例えば、ワイヤハーネスWHは、車両に配索される配索材Wにグロメット組立体1を組み込んで構成される。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、複数の配索材Wを束にして集合部品とし、車両に搭載される機器間を電気的に接続する。なお、ワイヤハーネスWHは、コルゲートチューブ、樹脂テープ等の他の部品を含んで構成されてもよい。配索材Wは、導電性を有し、車両に搭載される機器間を接続し、電源供給や信号通信に用いられる。配索材Wは、例えば、金属棒、電線、電線束等によって構成される。金属棒は、導電性を有する棒状部材の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線は、複数の導電性を有する金属素線からなる導体部(芯線)の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線束は、当該電線を束ねたものである。
【0012】
パネル10は、車両用パネルであって、例えば車体のフロア部分に設けられるフロアパネルである。パネル10は、グロメット2が取り付けられる取付対象であり、水平方向に設けられる板状部材により構成される。
図1では、説明の便宜上、パネル10の一部を円形に示している。パネル10の全体形状は、例えば、車両の構造に応じた形状とされる。
【0013】
パネル10には、貫通孔11が形成されている。貫通孔11は、ワイヤハーネスWHを挿通するための孔であり、パネル10の表裏を貫通し、パネル10の車外側と車内側を連通している。
図1では、パネル10の下側が車外側、上側が車内側となっている。この
図1では、貫通孔11を円形に開口させた場合を示しているが、貫通孔11を円形以外の形状に開口させる場合もある。パネル10の下面には、ボルト12が設けられている。ボルト12は、パネル10の下面から下方へ向けて突設され、例えば貫通孔11を挟んだ位置に二つ設けられる。ボルト12は、プロテクタ4をパネル10に取り付けるための締結部材として機能する。
【0014】
グロメット2は、貫通孔11に取り付けられ、配索材Wを挿通させて覆い配索材Wを保護する部材である。グロメット2は、例えば、弾性変形可能な弾性体により構成され、ゴム又は弾性樹脂材などによって構成される。グロメット2は、配索材Wと貫通孔11の内縁との隙間を埋めて配索材Wを保護し、車両の内外の止水を行う。また、グロメット2は、車両の防塵、防音を行う部材として機能させてもよい。
【0015】
グロメット2は、本体部21、挿通部22及び筒部23を有している。本体部21は、パネル10の車外側に配置される部位であり、貫通孔11より大きく形成され、例えば円板状の形状とされる。挿通部22は、貫通孔11に挿通される部位であり、貫通孔11に挿通可能な大きさに形成され、例えば円柱状又は円筒状の形状される。筒部23は、配索材Wを挿通させて覆う部位であり、本体部21又は挿通部22から貫通孔11の貫通方向に沿って突設されている。
図1では、筒部23が二つ形成される場合を示している。なお、筒部23は、挿通される配索材Wの本数に応じ、一つ又は三つ以上形成されてもよい。
【0016】
グロメット2には、リップ部24、中空部25及び支持部26が形成されている。リップ部24は、パネル10に当接する部位であり、本体部21からパネル10に向けて突設されている。このリップ部24は、例えば、挿通部22を周囲を覆うように連なる突条として形成される。リップ部24がパネル10に圧接されることにより、グロメット2によって貫通孔11の車内側と車外側が封鎖され、グロメット2の止水機能が発揮される。
【0017】
図3に示すように、中空部25は、グロメット2における中空な空間部分であり、リップ部24に対しインナ部材3側の領域に形成されている。すなわち、中空部25は、リップ部24に対しパネル10の反対側の領域に形成され、パネル10に圧接されるリップ部24を撓みやすくしている。例えば、中空部25は、本体部21の外周部分を径方向に凹ませ、周方向に延びる溝として形成される。グロメット2がパネル10に取り付けられる際、リップ部24がパネル10に押し付けられるが、中空部25が形成されることにより、リップ部24が潰れるように変形する前に撓んで中空部25側へ移動可能となる。なお、本実施形態のグロメット組立体1及びワイヤハーネスWHにおいて、中空部25の形成を省略する場合もある。
【0018】
支持部26は、インナ部材3を支持する部位であり、本体部21のインナ部材3側に形成されている。つまり、支持部26は、本体部21に対しパネル10と反対側の位置に形成されている。支持部26は、インナ部材3と係合し、グロメット2とインナ部材3を装着可能とさせる。例えば、支持部26は、フランジ部32の外縁を覆うことによりインナ部材3を支持し、グロメット2とインナ部材3を一体化させる。フランジ部32の詳細については、後述する。
【0019】
具体的には、支持部26は、外筒部26a、第一延出部26b及び第二延出部26cを有して構成される。外筒部26aは、筒状に形成され、フランジ部32の外周部分を覆っている。第一延出部26bは、外筒部26aに連なって形成され、径方向の外側から内側に延びてフランジ部32の下面を覆っている。フランジ部32の下面は、フランジ部32においてパネル10と反対側の面である。つまり、第一延出部26bは、フランジ部32におけるパネル10と反対側の面に沿って形成されている。第二延出部26cは、第一延出部26bに連なって形成され、第一延出部26bから屈曲して軸方向へ延びている。
【0020】
第一延出部26b及び第二延出部26cは、インナ部材3とプロテクタ4の間に挟み込まれて設けられている。すなわち、第一延出部26bは、インナ部材3のフランジ部32とプロテクタ4の第一平行面41cの間に挟み込まれている。第二延出部26cは、インナ部材3の本体部31のプロテクタ4の第二内周面41dの間に挟み込まれている。第一平行面41c及び第二内周面41dの詳細については、後述する。このように第一延出部26b及び第二延出部26cが屈曲した状態でインナ部材3及びプロテクタ4の間に挟み込まれて設けられることにより、第一延出部26b及び第二延出部26cがインナ部材3とプロテクタ4の間から抜け出しにくい構造となっている。
【0021】
図1において、インナ部材3は、グロメット2に取り付けられる部材である。このインナ部材3は、例えば、樹脂部材により構成され、グロメット2より剛性の高い部材となっている。インナ部材3は、グロメット2に対しパネル10の反対側に当接して配置されている。このため、プロテクタ4がパネル10に取り付けられる場合に、プロテクタ4からの押圧力をインナ部材3で受けてグロメット2へ伝達させることができる。なお、インナ部材3は、少なくともその一部がグロメット2に対しパネル10の反対側に当接して配置されていればよく、他の部分がグロメット2に対しパネル10の反対側に配置されていなくてもよい。
【0022】
インナ部材3は、本体部31、フランジ部32及び係止部33を有している。本体部31は、円筒状に形成され、軸方向が貫通孔11の貫通方向となるように配置される。軸方向は、本体部31の中心軸線の方向であり、図中に示すZの方向である。本体部31の内側には、配索材Wを挿通可能となっている。フランジ部32は、本体部31から径方向の外側へ延び、パネル10と平行となるように形成されている。径方向は、本体部31の径方向であり、軸方向と直交する方向である。例えば、
図3に示すように、フランジ部32は、本体部31のパネル10側の位置から径方向の外側へ延び、グロメット2のリップ部24の位置まで延びている。このため、プロテクタ4がパネル10に取り付けられる際に、剛性の高いインナ部材3のフランジ部32によりリップ部24を押圧することができ、グロメット2をパネル10へ確実に押圧することができる。
【0023】
なお、
図1において、本体部31及びフランジ部32は環状に設けられているが、例えば、二つの半環状部材を組み合わせた構造とされてもよい。この場合、本体部31及びフランジ部32を二つの半環状部材に分割又は開閉させることが可能となる。つまり、二つの半環状部材に分割又は開いた状態で配索材Wが挿通された後、組み合わせて環状の本体部31及びフランジ部32とされることで、配索材Wの挿通が容易となる。
【0024】
図4に示すように、係止部33は、本体部31の外周に設けられ、プロテクタ4を係止するための部位である。係止部33は、例えば複数設けられ、
図4では、インナ部材3の周方向に沿って間隔を置いて三つ設けられている。なお、係止部33は、二つ又は四つ以上設けられていてもよい。係止部33は、アーム33a及び係止爪33bを有している。アーム33aは、本体部31の外周面から径方向の外側に突出している。係止爪33bは、アーム33aの先端から軸方向へ延びるように形成されている。つまり、係止爪33bは、アーム33aから屈曲して軸方向のプロテクタ4側へ延びており、プロテクタ4に係止可能となっている。係止爪33bの先端部分には、径方向へ突出する鉤部33cが形成されている。なお、本実施形態のグロメット組立体1及びワイヤハーネスWHにおいて、係止部33以外の部材を用いてインナ部材3とプロテクタ4を係止させてもよい。
【0025】
インナ部材3の係止部33は、第一延出部26b及び第二延出部26cと隣接して設けられている。すなわち、第一延出部26b及び第二延出部26cは、係止部33の周方向の端面と隣接して配置され、グロメット2とインナ部材3の相対的な回転移動を規制している。具体的には、第一延出部26b及び第二延出部26cに凹部27が形成され、その凹部27に係止部33が挿入されている。凹部27は、第一延出部26b及び第二延出部26cにおいて、径方向の外側へ向けて窪ませ、係止部33を挿入可能に形成されている。凹部27は、周方向において係止部33の形成位置及び形成数に応じて設けられている。つまり、係止部33及び凹部27は、インナ部材3がグロメット2に装着された場合、係止部33が凹部27に挿入されるように設けられている。
【0026】
図1、2に示すように、プロテクタ4は、グロメット2、インナ部材3及び配索材Wを保護し、配索材Wの配索経路を規制する部材である。このプロテクタ4は、グロメット2、インナ部材3及び配索材Wを収容して覆い、パネル10との間でグロメット2及びインナ部材3を挟持するようにパネル10に取り付けられる。
【0027】
プロテクタ4は、グロメット2、インナ部材3及び配索材Wを覆うベース部材40を備えている。ベース部材40は、第一ベース部41及び第二ベース部42を有している。第一ベース部41は、貫通孔11の形成位置に配置され、グロメット2及びインナ部材3を覆い保護する部位である。第一ベース部41は、パネル10側の端面を開放した円筒状に形成されている。プロテクタ4がパネル10に取り付けられた場合、第一ベース部41は、グロメット2及びインナ部材3を覆い、グロメット2及びインナ部材3を保護する。
【0028】
第二ベース部42は、第一ベース部41に連なって形成され、第一ベース部41の側部から径方向へ突出するように設けられている。第二ベース部42の内部には、第一ベース部41から延びる配索材Wが挿通される。すなわち、第一ベース部41において軸方向から径方向へ屈曲して配索材Wが挿通され、第一ベース部41から延びて第二ベース部42内に挿通されている。プロテクタ4がパネル10に取り付けられた場合、第二ベース部42が内部に挿通される配索材Wを保護する。
【0029】
プロテクタ4には、カバー421が設けられている。カバー421は、ベース部材40に形成される開口部422を覆う部材である。開口部422は、プロテクタ4内に配索材Wを挿通させるための開口部分であり、例えば、第一ベース部41の側面部分及び第二ベース部のパネル10側の面に連なって形成されている。カバー421は、ベース部材40に取り付けられ、開口部422に対し開閉可能又は脱着可能に設けられている。カバー421は、例えば、屈曲した板状体であり、断面L型に形成される。ここで、L型は、ほぼL型を含む。
【0030】
図2、3において、プロテクタ4には、壁部48が設けられている。壁部48は、パネル10に向けて延設され、リップ部24の外側を覆うように形成されている。壁部48は、ベース部材40に形成されている第一壁部481と、カバー421に形成されている第二壁部482と含む。第一壁部481は、第一ベース部41の外周部分に形成され、第一ベース部41のパネル10側の端部をパネル10に向け延出させて設けられている。この第一壁部481は、例えば、リップ部24の外周を覆うように一部を欠いた筒型に形成される。第二壁部482は、カバー421におけるパネル10側の端部をパネル10に向け延出させて設けられている。第一壁部481及び第二壁部482は、第一ベース部41の周方向に連なり、リップ部24の外周を覆うように設けられている。第二壁部482がリップ部24の外側を覆うことにより、カバー421の位置においても、リップ部24へ水が噴き掛けられることを抑制することができる。
【0031】
図2、3では、壁部48はパネル10に対し直交するように設けられているが、この壁部48はパネル10に対し斜めに設けられていてもよい。例えば、壁部48は、パネル10に近づくほどリップ部24から遠ざかるようにパネル10に対し傾斜させて設けられていてもよい。この場合、壁部48は、リップ部24の外周を覆うように形成されることにより、逆傘形に形成される。このように壁部48が斜めに形成されることによって、壁部48は、横から噴き付ける水を斜め下方へ跳ね返すことができ、水のリップ部24への浸入を抑制することができる。
【0032】
図3に示すように、壁部48とパネル10との間には、隙間48aが形成されている。これにより、リップ部24がパネル10に対し十分に押し付けられて設置され、グロメット2による止水性が確実に発揮される。壁部48とパネル10との間の隙間48aは小さいほど良いが、この隙間48aをゼロとなるように設定又は設計が行われていると、リップ部24が十分に押し付けられる前に壁部48がパネル10に当接する可能性がある。このため、グロメット2による止水機能が低下するおそれがある。これに対し、本実施形態に係るグロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、壁部48とパネル10との間の隙間48aを設けることにより、グロメット2による止水機能の低下を防止し、止水性を確実に確保することができる。
【0033】
図2、3において、第一ベース部41の内部空間41aは、例えば円柱形とされ、パネル10から離間するに従い内径が狭まる段付きの空間となっている。すなわち、内部空間41aは、第一内周面41b、第一平行面41c、第二内周面41d、第二平行面41e、第三内周面41f及び底面41gにより画成されている。つまり、内部空間41aにおいて、パネル10側から第一内周面41b、第二内周面41d、第三内周面41fの順で内周面が形成されており、第二内周面41dの内径が第一内周面41bの内径より小さく、第三内周面41fの内径が第二内周面41dの内径より小さい。そして、第一内周面41bと第二内周面41dの間にパネル10と平行に形成される第一平行面41cが形成され、第二内周面41dと第三内周面41fの間にパネル10と平行に形成される第二平行面41eが形成されている。これにより、内部空間41aが二つの段付きの形状とされる。
【0034】
内部空間41aにおいて、第一内周面41bの内側には、グロメット2及びインナ部材3のフランジ部32が配置されている。第一平行面41cには、フランジ部32を覆うグロメット2の支持部26が当接している。第二平行面41eには、インナ部材3の本体部31が当接している。これにより、プロテクタ4がパネル10に取り付けられる際、インナ部材3を介してグロメット2をパネル10に圧接することができる。
【0035】
図1において、プロテクタ4には、ボルト12を挿通するための挿通孔43が穿設されている。挿通孔43は、軸方向に向けて形成される孔であり、例えば、第一ベース部41の外周面から径方向へ突出させた突出部44に形成される。挿通孔43及び突出部44は、ボルト12の設置位置に合わせて形成され、
図1では二つのボルト12に対し二つの挿通孔43及び突出部44が形成されている。
【0036】
次に、本実施形態に係るグロメット組立体及びワイヤハーネスの組み立て方法について説明する。
【0037】
まず、
図1に示すように、グロメット2に配索材Wが挿通される。例えば、弾性体であるグロメット2は、拡径されて配索材Wが挿通される。そして、配索材Wにインナ部材3が組み付けられる。例えば、インナ部材3の本体部31及びフランジ部32が分割又は開いた状態とされ、インナ部材3の内側に配索材Wが配置される。そして、本体部31及びフランジ部32が組み付けられ又は閉じられて環状とされることで、インナ部材3が配索材Wに組み付けられる。そして、プロテクタ4に配索材Wが挿通される。例えば、プロテクタ4のカバー42aが開かれ、プロテクタ4の第一ベース部41及び第二ベース部42の内部に配索材Wが挿通される。そして、カバー42aが閉じられ、配索材Wにプロテクタ4が組み付けられる。
【0038】
その後、
図3、4に示すように、グロメット2とインナ部材3の装着が行われる。すなわち、インナ部材3のフランジ部32がグロメット2の支持部26で覆われて、グロメット2がインナ部材3に装着される。このとき、インナ部材3の係止部33がグロメット2の凹部27に挿入されるように、インナ部材3とグロメット2が接合される。支持部26は、側面から下面に亘ってフランジ部32を覆うため、フランジ部32を確実に支持することができる。また、係止部33が凹部27に挿入されることにより、グロメット2とインナ部材3との相対的な回転移動が抑制される。
【0039】
次に、グロメット2及びインナ部材3がプロテクタ4に取り付けられる。
図2に示すように、グロメット2及びインナ部材3が第一ベース部41の内部空間41aへ収容される。このとき、プロテクタ4のカバー421は開いた状態とされる。そして、インナ部材3の係止爪33bがプロテクタ4の孔部45へ挿入されるように、グロメット2及びインナ部材3が内部空間41aへ収容されていく。そして、係止爪33bがプロテクタ4の被係止部に掛け止められることにより、インナ部材3がプロテクタ4に係止され、グロメット2、インナ部材3及びプロテクタ4が一体となる。そして、プロテクタ4にカバー421が閉じられる。
【0040】
そして、プロテクタ4がパネル10に取り付けられる。
図2に示すように、プロテクタ4の第一ベース部41が貫通孔11の位置に合わされ、グロメット2のリップ部24がパネル10に当接される。そして、
図1に示すように、ボルト12がプロテクタ4の挿通孔43に挿通されることにより、パネル10に対しプロテクタ4が正確な位置に配置される。また、プロテクタ4に対しグロメット2及びインナ部材3が正確な位置配置されているため、パネル10に対するグロメット2及びインナ部材3の配置位置も正確な位置となる。このため、金属板が用いられることなく、グロメット2が貫通孔11に対し適正に配置されて取り付けられる。
【0041】
そして、ボルト12に図示しないナットが螺合され締結が行われる。これにより、プロテクタ4がパネル10に接近し固定される。このとき、
図3に示すように、プロテクタ4がインナ部材3を介してグロメット2を押圧し、グロメット2のリップ部24がパネル10に圧接される。このため、例えば、インナ部材3の部分が弾性体とされグロメット2の一部として構成される場合と比べて、グロメット2の過剰な変形を抑制することができ、グロメット2の止水機能を適切に発揮させることができる。つまり、仮に、インナ部材3の部分がグロメット2と同じ剛性の部材で構成されてしまうと、プロテクタ4がグロメット2の全体を押圧することとなる。この場合、グロメット2の全体に応力が加わり、リップ部24以外の箇所が不要な変形を生ずる。このため、グロメット2が所望の止水機能を発揮できないおそれがある。これに対し、本実施形態のグロメット2は、そのような不具合が抑制され、適切な止水機能を発揮することができる。
【0042】
そして、プロテクタ4をパネル10に取り付けたら、グロメット2、インナ部材3及びワイヤハーネスWHの取付も完了し、パネル10の貫通孔11に対し配索材Wを挿通させて設置することができる。
【0043】
次に、本実施形態に係るグロメット組立体及びワイヤハーネスの止水機能について説明する。
【0044】
図2に示すように、グロメット2が貫通孔11に取り付けられ、グロメット2のリップ部24がパネル10に押し付けられている。これにより、パネル10の車内側と車外側がグロメット2により封鎖され、貫通孔11を通じ車外側から車内側へ水が浸入することが防がれている。
【0045】
ここで、
図5に示すように、リップ部24へ向けて水Aが噴き付ける場合がある。このとき、リップ部24の外側に壁部48が設けられることにより、リップ部24に水Aが直接噴き付けられることが抑制される。このため、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、グロメット2による止水性を確保することができる。
【0046】
ここで、パネル10が車両のフロアパネルである場合、高圧洗浄によりパネル10の車外側に強い勢いで水Aが噴射される場合がある。この場合、リップ部24へ向けて強い勢いで水Aが噴射されることとなる。しかしながら、リップ部24の外側に壁部48が設けられることにより、リップ部24に水Aが直接噴き付けられることが抑制される。
【0047】
壁部421aとパネル10との間に隙間48aが形成される場合、この隙間48aを通って水Aがリップ部24の位置まで浸入することもある。しかしながら、水Aは壁部48に当たって勢いが弱まるため、リップ部24とパネル10の間を通って車内側へ浸入することは避けられる。従って、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、グロメット2による止水性を確保することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係るグロメット組立体1及びワイヤハーネスWHによれば、プロテクタ4が、パネル10に向かって延設されグロメット2のリップ部24の外側を覆う壁部48を有している。このため、リップ部24に向けて強い勢いで水Aが噴射された場合であっても、水Aがリップ部24へ直接噴き付けられることが抑制される。従って、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、グロメット2による止水性を確保することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るグロメット組立体1及びワイヤハーネスWHによれば、壁部48とパネル10との間に隙間48aが形成されている。このため、リップ部24は、パネル10に対しへ確実に押し付けられて設置される。従って、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、グロメット2によって止水性を確実に発揮することができる。
【0050】
さらに、本実施形態に係るグロメット組立体1及びワイヤハーネスWHによれば、プロテクタ4が、ベース部材40と、ベース部材40に形成される開口部422を覆うカバー421とを有している。そして、壁部48が、ベース部材40に形成されている第一壁部481と、カバー421に形成されている第二壁部482と含み、第一壁部481及び第二壁部482によってリップ部24の外周を覆うように設けられている。このため、このため、リップ部24に対し強く水Aが噴射された場合であっても、水Aがリップ部24へ直接噴き付けられることが抑制される。従って、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、プロテクタ4に開口部422が形成されている場合であっても、グロメット2による止水性を確保することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0052】
例えば、上述した実施形態では、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHを車両のフロアパネルであるパネル10に取り付ける場合について説明したが、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、フロアパネル以外の車両用のパネル又はその他のパネルに取り付ける場合に適用してもよい。
【0053】
例えば、上述した実施形態では、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHにおいてインナ部材3が設けられているが、インナ部材3の設置が省略されてもよい。例えば、グロメット組立体1及びワイヤハーネスWHは、グロメット2又は他の部材をインナ部材3の形成領域に設けて構成されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 グロメット組立体
2 グロメット
3 インナ部材
4 プロテクタ
10 パネル(車両用パネル)
11 貫通孔
24 リップ部
26 支持部
31 本体部
32 フランジ部
48 壁部
48a 隙間
421 カバー
422 開口部
481 第一壁部
482 第二壁部
A 水
W 配索材
WH ワイヤハーネス