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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182970
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 41/06 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
F16K41/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096282
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
【テーマコード(参考)】
3H066
【Fターム(参考)】
3H066AA01
3H066BA32
3H066DA03
(57)【要約】
【課題】弁体の着座音を低減できる弁装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、電磁弁1において、ハウジング12とシャフト15との間に設けられるシール構造部18を有し、シール構造部18は、流路11側に設けられるメインリップシール181と、駆動部16側に設けられるサブリップシール182と、を備え、メインリップシール181とサブリップシール182との間には中間室51が設けられ、中間室51の容積が弁体14の駆動に伴い変化する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路を備えるハウジングと、
前記流路に設けられる弁座と、
前記流路に設けられ、前記弁座に対して当接および離間する弁体と、
前記ハウジング内に設けられ、前記弁体が固定されるシャフトと、
前記シャフトを当該シャフトの軸方向に駆動させることにより、前記弁体を前記弁座に対して当接および離間するように駆動させる駆動部と、を有する
弁装置において、
前記ハウジングと前記シャフトとの間に設けられるシール構造部を有し、
前記シール構造部は、前記流路側に設けられる流路側シール部と、前記駆動部側に設けられる駆動部側シール部と、を備え、
前記流路側シール部と前記駆動部側シール部との間には中間室が設けられ、
前記中間室の容積が前記弁体の駆動に伴い変化すること、
を特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1の弁装置において、
前記駆動部側シール部はシールリップを備え、
前記駆動部側シール部のシールリップは、前記中間室側に向って延び、前記ハウジングまたは前記シャフトと接していること、
を特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項1の弁装置において、
前記駆動部側シール部はシールリップを備え、
前記駆動部側シール部のシールリップは、前記駆動部側に向って延び、前記ハウジングまたは前記シャフトと接していること、
を特徴とする弁装置。
【請求項4】
請求項1の弁装置において、
前記駆動部側シール部はシールリップを備え、
前記駆動部側シール部のシールリップは、前記中間室側および前記駆動部側に向って延び、前記ハウジングまたは前記シャフトと接していること、
を特徴とする弁装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つの弁装置において、
前記弁体が当該弁体の駆動範囲の両端に位置するときに前記中間室の圧抜きが行われる圧抜き形状部が、前記ハウジングまたは前記シャフトに形成されていること、
を特徴とする弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流入通路と流出通路とを備えるハウジングと、弁座に対して当接および離間して流入通路と流出通路とを遮断および連通させる弁体とを有する電磁弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001-523194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される電磁弁において、電磁力およびスプリングの付勢力により弁体が弁座に当接するときに弁体の着座音が発生しうる。特に、電磁弁が電気自動車などの車両に搭載されている場合には、車両側の暗騒音が小さいため、弁体の着座音が騒音となって問題になるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、弁体の着座音を低減できる弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、内部に流路を備えるハウジングと、前記流路に設けられる弁座と、前記流路に設けられ、前記弁座に対して当接および離間する弁体と、前記ハウジング内に設けられ、前記弁体が固定されるシャフトと、前記シャフトを当該シャフトの軸方向に駆動させることにより、前記弁体を前記弁座に対して当接および離間するように駆動させる駆動部と、を有する弁装置において、前記ハウジングと前記シャフトとの間に設けられるシール構造部を有し、前記シール構造部は、前記流路側に設けられる流路側シール部と、前記駆動部側に設けられる駆動部側シール部と、を備え、前記流路側シール部と前記駆動部側シール部との間には中間室が設けられ、前記中間室の容積が前記弁体の駆動に伴い変化すること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、弁体の駆動に伴って中間室の容積が大きくなるときは中間室の内圧が負圧になり、また、弁体の駆動に伴って中間室の容積が小さくなるときは中間室の内圧が正圧になる。このようにして、中間室にダンパー機能を持たせて、弁体の駆動にブレーキを作用させる。そのため、弁体が弁座に当接するときの速度を小さくすることができる。したがって、弁体の着座音を低減できる。
【0008】
上記の態様においては、前記駆動部側シール部はシールリップを備え、前記駆動部側シール部のシールリップは、前記中間室側に向って延び、前記ハウジングまたは前記シャフトと接していること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、負圧漏れが起こり易いので、弁体の駆動に伴って中間室の容積が大きくなって中間室の内圧が負圧になった後、中間室の内圧は負圧から大気圧に戻り易くなる。また、負圧漏れが起こり易いので、弁体の駆動に伴って中間室の容積が大きくなって中間室の内圧が負圧になるときに、過度に弁体の駆動にブレーキを作用させないようにしながら、弁体の着座音を低減できる。また、正圧漏れが起こり難いので、弁体の駆動に伴って中間室の容積が小さくなって中間室の内圧が正圧になるときに、確実に、中間室にダンパー機能を持たせて弁体の駆動にブレーキを作用させて、弁体の着座音を低減できる。
【0010】
上記の態様においては、前記駆動部側シール部はシールリップを備え、前記駆動部側シール部のシールリップは、前記駆動部側に向って延び、前記ハウジングまたは前記シャフトと接していること、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、正圧漏れが起こり易いので、弁体の駆動に伴って中間室の容積が小さくなって中間室の内圧が正圧になった後、中間室の内圧は正圧から大気圧に戻り易くなる。また、正圧漏れが起こり易いので、弁体の駆動に伴って中間室の容積が小さくなって中間室の内圧が正圧になるときに、過度に弁体の駆動にブレーキを作用させないようにしながら、弁体の着座音を低減させることができる。また、負圧漏れが起こり難いので、弁体の駆動に伴って中間室の容積が大きくなって中間室の内圧が負圧になるときに、確実に、中間室にダンパー機能を持たせて弁体の駆動にブレーキを作用させて、弁体の着座音を低減できる。
【0012】
上記の態様においては、前記駆動部側シール部はシールリップを備え、前記駆動部側シール部のシールリップは、前記中間室側および前記駆動部側に向って延び、前記ハウジングまたは前記シャフトと接していること、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、負圧漏れや正圧漏れが均等に起きる。これにより、弁体の駆動に伴って中間室の容積が大きくなって中間室の内圧が負圧になるときも、弁体の駆動に伴って中間室の容積が小さくなって中間室の内圧が正圧になるときも、確実に、中間室にダンパー機能を持たせて弁体の駆動にブレーキを作用させて、弁体の着座音を低減できる。
【0014】
上記の態様においては、前記弁体が当該弁体の駆動範囲の両端に位置するときに前記中間室の圧抜きが行われる圧抜き形状部が、前記ハウジングまたは前記シャフトに形成されていること、が好ましい。
【0015】
この態様によれば、弁体が当該弁体の駆動範囲の両端に位置するときに、中間室とシール構造部の外部との間の差圧をなくすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の弁装置によれば、弁体の着座音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の弁装置の図(OFF状態)である。
図2】本実施形態の弁装置の図(ON状態)である。
図3】第1実施例において、シール構造部とその周辺を示す図であって、弁装置がOFF状態であるときを示す図である。
図4】第1実施例において、シール構造部とその周辺を示す図であって、弁装置がOFF状態からON状態に移行するときを示す図である。
図5】第1実施例において、シール構造部とその周辺を示す図であって、弁装置がON状態であるときを示す図である。
図6】第1実施例において、シール構造部とその周辺を示す図であって、弁装置がON状態からOFF状態に移行するときを示す図である。
図7】第1実施例における中間室の内圧と弁体の速度の時間変化を示す図である。
図8】第2実施例において、シール構造部とその周辺を示す図であって、弁装置がOFF状態であるときを示す図である。
図9】第2実施例において、シール構造部とその周辺を示す図であって、弁装置がOFF状態からON状態に移行するときを示す図である。
図10】第2実施例において、シール構造部とその周辺を示す図であって、弁装置がON状態であるときを示す図である。
図11】第2実施例において、シール構造部とその周辺を示す図であって、弁装置がON状態からOFF状態に移行するときを示す図である。
図12】第2実施例における中間室の内圧と弁体の速度の時間変化を示す図である。
図13】第1実施例と第2実施例における中間室の内圧の時間変化を示す図である。
図14】第1実施例と第2実施例における弁体の速度の時間変化を示す図である。
図15】第3実施例において、シール構造部とその周辺を示す図であって、弁装置がOFF状態であるときを示す図である。
図16】第3実施例において、シール構造部とその周辺を示す図であって、弁装置がOFF状態からON状態に移行するときを示す図である。
図17】第3実施例において、シール構造部とその周辺を示す図であって、弁装置がON状態であるときを示す図である。
図18】第3実施例において、シール構造部とその周辺を示す図であって、弁装置がON状態からOFF状態に移行するときを示す図である。
図19】第3実施例における中間室の内圧と弁体の速度の時間変化を示す図である。
図20】第4実施例において、ハウジングに設けられる圧抜き形状部を示す図である。
図21】圧抜き形状部とその周辺の拡大図である。
図22】ハウジングに設けられる圧抜き形状部の変形例を示す図である。
図23】第4実施例における中間室の内圧と弁体の速度の時間変化を示す図である。
図24】第5実施例の弁装置の図(OFF状態)である。
図25】第6実施例の弁装置の図(ON状態)である。
図26】第7実施例において、シール構造部とその周辺を示す図である。
図27】第8実施例において、シール構造部とその周辺を示す図である。
図28】第9実施例において、シャフトに設けられる圧抜き形状部を示す図である。
図29】圧抜き形状部とその周辺の拡大図である。
図30】第10実施例において、シール構造部とその周辺を示す図である。
図31】第11実施例において、シール構造部とその周辺を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の弁装置の実施形態について説明する。以下の説明では、本開示の弁装置の実施形態の一例である電磁弁1について説明する。この電磁弁1は、流体(以下、一例として「冷却水」を例に挙げる)を流す流路11を開閉する弁である。
【0019】
(電磁弁の概要説明)
図1図2に示すように、電磁弁1は、流路11を備えるハウジング12と、弁座13と、弁体14と、シャフト15と、駆動部16と、軸受17と、シール構造部18と、を有する。
【0020】
流路11の端部には、冷却水が導入される入口21と、冷却水が導出される第1出口22および第2出口23とが設けられている。
【0021】
ハウジング12は、金属または樹脂により形成され、内部に流路11を備えている。
【0022】
弁座13は、流路11に設けられており、本実施形態では、弁座13として、第1弁座131と第2弁座132が設けられている。
【0023】
弁体14は、流路11に設けられ、シャフト15に固定され、弁座13に対して当接および離間する。本実施形態では、弁体14として、第1弁体141と第2弁体142が設けられている。第1弁体141は、第1弁座131に対して当接および離間する。また、第2弁体142は、第2弁座132に対して当接および離間する。
【0024】
シャフト15は、ハウジング12内に設けられ、弁体14が固定されている。シャフト15は、金属または樹脂により形成され、第1弁体141と第2弁体142が固定されており、第1弁体141と第2弁体142を駆動させるものである。
【0025】
シャフト15は、駆動部16と第2弁体142との間に設けられ、図1図2において、ハウジング12を垂直に貫通して形成された組付孔31の内部を通るようにして配置されている。組付孔31には、シャフト15を中心にして軸受17とシール構造部18が配置されている。シャフト15は、当該シャフト15の中心軸方向であるスラスト方向に駆動(すなわち、移動)可能である。
【0026】
駆動部16は、樹脂製のケーシング19の内部に収容されており、固定コア41と、Oリング42と、スプリング43と、ソレノイドコイル44と、可動コア45と、を備えている。固定コア41は、ケーシング19に固定されている。可動コア45は、シャフト15の上端に固定されており、ソレノイドコイル44で発生する磁力が調整されることによってスプリング43の付勢力に対抗して上下に駆動する。
【0027】
そして、可動コア45が上下に駆動することにより、可動コア45に固定されるシャフト15が上下に駆動する。このようにして、駆動部16は、シャフト15を当該シャフト15の軸方向に駆動させることにより、弁体14を弁座13に対して当接および離間するように駆動させる。
【0028】
軸受17は、駆動部16とシール構造部18との間の位置にて、ハウジング12とシャフト15との間に設けられており、シャフト15を往復運動(ストローク運動)可能、すなわち、摺動可能に支持している。
【0029】
シール構造部18は、流路11(弁体14)と軸受17との間の位置にて、ハウジング12とシャフト15との間に設けられており、流路11と軸受17(駆動部16)との間を封止している。なお、シール構造部18の詳細については後述する。
【0030】
このような構成の電磁弁1は、駆動部16によってシャフト15を上下に駆動させることにより、図1に示すOFF状態(第1出口22の全開状態、第2出口23の全閉状態)と、図2に示すON状態(第1出口22の全閉状態、第2出口23の全開状態)とに切り換えることができる。
【0031】
そして、図1に示すOFF状態では、第1弁体141が第1弁座131に対して離間し、かつ、第2弁体142が第2弁座132に対して当接しており、入口21から導入される冷却水は、第1出口22から導出される。また、図2に示すON状態では、第1弁体141が第1弁座131に対して当接し、かつ、第2弁体142が第2弁座132に対して離間しており、入口21から導入される冷却水は、第2出口23から導出される。
【0032】
(シール構造部とその周辺について)
次に、シール構造部18とその周辺について説明する。
【0033】
電磁弁1の駆動時に、弁体14が弁座13に当接する音(以下、「弁体14の着座音」という。)が発生しうる。例えば、電磁弁1がOFF状態(図1参照)からON状態(図2参照)に移行するときに、駆動部16のソレノイドコイル44で発生する電磁力によりシャフト15と共に駆動する弁体14の速度が大きいと、第1弁体141が第1弁座131に強く当たって、弁体14の着座音が発生する。
【0034】
また、電磁弁1がON状態からOFF状態に移行するときに、駆動部16のスプリング43の付勢力によりシャフト15と共に駆動する弁体14の速度が大きいと、第2弁体142が第2弁座132に強く当たって、弁体14の着座音が発生する。そして、このように発生する弁体14の着座音は、特に、電磁弁1が電気自動車などの暗騒音が小さい車両に搭載されている場合には騒音となるため問題になる。
【0035】
本実施形態では、シール構造部18は、流路11側に設けられるメインリップシール181と、駆動部16側に設けられるサブリップシール182とを備えている。なお、メインリップシール181は本開示の「流路側シール部」の一例であり、サブリップシール182は本開示の「駆動部側シール部」の一例である。
【0036】
そして、弁体14の着座音を低減させるため、メインリップシール181とサブリップシール182との間に設けられる中間室51(図3など参照)の容積を、弁体14の駆動に伴い変化させる。これにより、中間室51にダンパー機能を持たせて弁体14の駆動にブレーキを作用させることにより、弁体14の着座音を低減させる。そこで、具体的な実施例について説明する。
【0037】
(第1実施例)
本実施例では、図3に示すように、メインリップシール181の金環46がハウジング12に圧入されるようにして、メインリップシール181がハウジング12に固定されている。そして、メインリップシール181のシールリップ181aは、弁体14側(すなわち、流路11側)に向って延び、シャフト15と接している。
【0038】
また、サブリップシール182の金環46がシャフト15に圧入されるようにして、サブリップシール182がシャフト15に固定されている。そのため、サブリップシール182は、シャフト15と一体に駆動する。そして、サブリップシール182はシールリップ182aを備え、サブリップシール182のシールリップ182aは、中間室51側に向って延び、ハウジング12と接している。
【0039】
このようにして、メインリップシール181のシールリップ181aはシャフト15と摺動する一方で、サブリップシール182のシールリップ182aはハウジング12と摺動する。
【0040】
そして、電磁弁1がOFF状態(図1参照)からON状態(図2参照)へ移行するときには、上側着座音(すなわち、第1弁体141が第1弁座131に当接するときの弁体14の着座音)を、中間室51の負圧ブレーキで低減する。
【0041】
すなわち、電磁弁1がOFF状態からON状態へ移行するときには、図3に示す状態から図4に示す状態に変化して、サブリップシール182がシャフト15と共に駆動してメインリップシール181から離れる。そのため、中間室51の容積が大きくなるので、中間室51の内圧は大気圧から負圧(すなわち、大気圧よりも低い圧力)になる(図7のOFF→ON間を参照)。
【0042】
これにより、中間室51にダンパー機能を持たせて、シャフト15と一体の弁体14の駆動にブレーキを作用させることにより、弁体14の速度(図7に示す「上昇速度」)を小さくする。そのため、第1弁体141が第1弁座131に当接するときの弁体14の速度が小さくなるので、弁体14の着座音を低減できる。
【0043】
なお、図7においてサブリップシール182がない場合の比較例を一点鎖線で示すが、この比較例にて第1弁体141が第1弁座131に当接するときの弁体14の速度δ0に対して、本実施例にて第1弁体141が第1弁座131に当接するときの弁体14の速度δ1は非常に小さくなっている。
【0044】
そして、その後、図5に示すように、電磁弁1がON状態であるときに、負圧漏れにより、中間室51の内圧は負圧から徐々に大気圧に戻る(図7のON→ON間を参照)。なお、「負圧漏れ」とは、駆動部16側から空気がサブリップシール182のシールリップ182aとハウジング12との間を通って中間室51側に入ること、である。
【0045】
本実施例では、サブリップシール182のシールリップ182aは、中間室51側に向って延びているので、図5にて白い矢印で示すように、負圧漏れが起こり易くなっている。また、冷却水の漏れを防止するために面圧を高くしているメインリップシール181のシールリップ181aと比べて、サブリップシール182のシールリップ182aの面圧を低くすることで、さらに負圧漏れが起こり易くすることができる。そのため、電磁弁1がON状態であるときに、中間室51の内圧は負圧から大気圧に戻り易くなっている。なお、「シールリップ182aの面圧」とは、ハウジング12に作用するシールリップ182aの圧力である。
【0046】
そして、その後、電磁弁1がON状態からOFF状態へ移行するときには、下側着座音(すなわち、第2弁体142が第2弁座132に当接するときの弁体14の着座音)を、中間室51の正圧ブレーキで低減する。
【0047】
すなわち、電磁弁1がON状態からOFF状態へ移行するときには、図5に示す状態から図6に示す状態に変化して、サブリップシール182がシャフト15と共に駆動してメインリップシール181に近づく。そのため、中間室51の容積が小さくなるので、中間室51の内圧は大気圧から正圧(大気圧よりも高い圧力)になる(図7のON→OFF間を参照)。
【0048】
これにより、中間室51にダンパー機能を持たせて、シャフト15と一体の弁体14の駆動にブレーキを作用させることにより、弁体14の速度(図7に示す「降下速度」)を小さくする。そのため、第2弁体142が第2弁座132に当接するときの弁体14の速度が小さくなるので、弁体14の着座音を低減できる。
【0049】
そして、その後、電磁弁1がOFF状態であるときに、正圧漏れにより、中間室51の内圧は正圧から徐々に大気圧に戻る(図7のOFF→OFF間を参照)。なお、「正圧漏れ」とは、中間室51側から空気がサブリップシール182のシールリップ182aとハウジング12との間を通って駆動部16側に出ること、である。
【0050】
本実施例によれば、中間室51の容積が弁体14の駆動に伴い変化する。
【0051】
このようにして、弁体14の駆動に伴って中間室51の容積が大きくなるときは中間室51の内圧が負圧になり、また、弁体14の駆動に伴って中間室51の容積が小さくなるときは中間室51の内圧が正圧になる。このようにして、中間室51にダンパー機能を持たせて、弁体14の駆動にブレーキを作用させる。そのため、弁体14が弁座13に当接するときの速度を小さくすることができる。したがって、弁体14の着座音を低減できる。
【0052】
また、サブリップシール182のシールリップ182aは、中間室51側に向って延び、ハウジング12と接している。
【0053】
これにより、負圧漏れが起こり易いので、弁体14の駆動に伴って中間室51の容積が大きくなって中間室51の内圧が負圧になった後、中間室51の内圧は負圧から大気圧に戻り易くなる。
【0054】
また、負圧漏れが起こり易いので、弁体14の駆動に伴って中間室51の容積が大きくなって中間室51の内圧が負圧になるときに、過度に弁体14の駆動にブレーキを作用させないようにしながら、弁体14の着座音を低減できる。
【0055】
また、正圧漏れが起こり難いので、弁体14の駆動に伴って中間室51の容積が小さくなって中間室51の内圧が正圧になるときに、確実に、中間室51にダンパー機能を持たせて弁体14の駆動にブレーキを作用させて、弁体14の着座音を低減できる。
【0056】
(第2実施例)
本実施例では、第1実施例と異なる点として、図8に示すように、サブリップシール182のシールリップ182aは、駆動部16側に向って延び、ハウジング12と接している。
【0057】
そして、電磁弁1がOFF状態(図1参照)からON状態(図2参照)へ移行するときには、上側着座音を、中間室51の負圧ブレーキで低減する。
【0058】
すなわち、電磁弁1がOFF状態からON状態へ移行するときには、図8に示す状態から図9に示す状態に変化して、サブリップシール182がシャフト15と共に駆動してメインリップシール181から離れる。そのため、第1実施例と同様に、中間室51の容積が大きくなるので、中間室51の内圧は大気圧から負圧になる(図12のOFF→ON間を参照)。これにより、弁体14の速度(図12に示す「上昇速度」)を小さくして、弁体14の着座音を低減できる。
【0059】
そして、その後、図10に示すように、電磁弁1がON状態であるときに、負圧漏れにより、中間室51の内圧は負圧から徐々に大気圧に戻る(図12のON→ON間を参照)。
【0060】
そして、その後、電磁弁1がON状態からOFF状態へ移行するときには、下側着座音を、中間室51の正圧ブレーキで低減する。
【0061】
すなわち、電磁弁1がON状態からOFF状態へ移行するときには、図10に示す状態から図11に示す状態に変化して、サブリップシール182がシャフト15と共に駆動してメインリップシール181に近づく。そのため、第1実施例と同様に、中間室51の容積が小さくなるので、中間室51の内圧は大気圧から正圧になる(図12のON→OFF間を参照)。これにより、弁体14の速度(図12に示す「降下速度」)を小さくして、弁体14の着座音を低減できる。
【0062】
そして、その後、電磁弁1がOFF状態であるときに、正圧漏れにより、中間室51の内圧は正圧から徐々に大気圧に戻る(図12のOFF→OFF間を参照)。
【0063】
本実施例では、サブリップシール182のシールリップ182aは、駆動部16側に向って延びているので、図11にて白い矢印で示すように、第2弁体142が第2弁座132に着座後、正圧漏れが起こり易くなっている。また、サブリップシール182のシールリップ182aの面圧を低くすることで、さらに正圧漏れが起こり易くすることができる。そのため、電磁弁1がOFF状態であるときに、中間室51の内圧は正圧から大気圧に戻り易くなっている。
【0064】
また、本実施例では、シールリップ182aの向きが第1実施例とは逆になっている。そして、これにより、本実施例では、弁体14の駆動に伴って中間室51の容積が変化する割合が、第1実施例よりも大きくなっている。そのため、図13図14に示すように、本実施例(図中、実線で示す。)では、第1実施例(図中、破線で示す。)よりも、中間室51の内圧は大気圧から変化し易く、弁体14の速度が低下し易い。そのため、本実施例では、第1実施例よりも、より効果的に弁体14の着座音を低減できる。
【0065】
本実施例によれば、サブリップシール182のシールリップ182aは、駆動部16側に向って延び、ハウジング12と接している。
【0066】
これにより、正圧漏れが起こり易いので、弁体14の駆動に伴って中間室51の容積が小さくなって中間室51の内圧が正圧になった後、中間室51の内圧は正圧から大気圧に戻り易くなる。
【0067】
また、正圧漏れが起こり易いので、弁体14の駆動に伴って中間室51の容積が小さくなって中間室51の内圧が正圧になるときに、過度に弁体14の駆動にブレーキを作用させないようにしながら、弁体14の着座音を低減できる。
【0068】
また、負圧漏れが起こり難いので、弁体14の駆動に伴って中間室51の容積が大きくなって中間室51の内圧が負圧になるときに、確実に、中間室51にダンパー機能を持たせて弁体14の駆動にブレーキを作用させて、弁体14の着座音を低減できる。
【0069】
(第3実施例)
本実施例では、第1,2実施例と異なる点として、図15に示すように、サブリップシール182のシールリップ182aは、中間室51側および駆動部16側に向って延び、ハウジング12と接している。
【0070】
そして、電磁弁1がOFF状態(図1参照)からON状態(図2参照)へ移行するときには、上側着座音を、中間室51の負圧ブレーキで低減する。
【0071】
すなわち、電磁弁1がOFF状態からON状態へ移行するときには、図15に示す状態から図16に示す状態に変化して、サブリップシール182がシャフト15と共に駆動してメインリップシール181から離れる。そのため、第1,2実施例と同様に、中間室51の容積が大きくなるので、中間室51の内圧は大気圧から負圧になる(図19のOFF→ON間を参照)。これにより、弁体14の速度(図19に示す「上昇速度」)を小さくして、弁体14の着座音を低減できる。
【0072】
そして、その後、図17に示すように、電磁弁1がON状態であるときに、負圧漏れにより、中間室51の内圧は負圧から徐々に大気圧に戻る(図19のON→ON間を参照)。
【0073】
そして、その後、電磁弁1がON状態からOFF状態へ移行するときには、下側着座音を、中間室51の正圧ブレーキで低減する。
【0074】
すなわち、電磁弁1がON状態からOFF状態へ移行するときには、図17に示す状態から図18に示す状態に変化して、サブリップシール182がシャフト15と共に駆動してメインリップシール181に近づく。そのため、第1,2実施例と同様に、中間室51の容積が小さくなるので、中間室51の内圧は大気圧から正圧になる(図19のON→OFF間を参照)。これにより、弁体14の速度(図19に示す「降下速度」)を小さくして、弁体14の着座音を低減できる。
【0075】
そして、その後、電磁弁1がOFF状態であるときに、正圧漏れにより、中間室51の内圧は正圧から徐々に大気圧に戻る(図19のOFF→OFF間を参照)。
【0076】
本実施例によれば、サブリップシール182のシールリップ182aは、中間室51側および駆動部16側に向って延び、ハウジング12と接している。
【0077】
このようにして、負圧漏れや正圧漏れが均等に起きる。これにより、弁体14の駆動に伴って中間室51の容積が大きくなって中間室51の内圧が負圧になるときも、弁体14の駆動に伴って中間室51の容積が小さくなって中間室51の内圧が正圧になるときも、確実に、中間室51にダンパー機能を持たせて弁体14の駆動にブレーキを作用させて、弁体14の着座音を低減できる。
【0078】
(第4実施例)
本実施例では、図20図21に示すように、弁体14が当該弁体14の駆動範囲の両端に位置するときに中間室51の圧抜きが行われる圧抜き形状部61が、ハウジング12に形成されている。この圧抜き形状部61は、電磁弁1がOFF状態(図1参照)およびON状態(図2参照)におけるサブリップシール182のシールリップ182aの位置にて、ハウジング12の内径を滑らかに僅かに拡大する、すなわち、ハウジング12の内面を凹状にするように形成されている。
【0079】
これにより、電磁弁1がON状態のときに負圧漏れを起こり易くするとともに、電磁弁1がOFF状態のときに正圧漏れを起こり易くしている。そのため、電磁弁1がOFF状態からON状態に移行した後、中間室51の内圧を負圧から大気圧に戻り易くすることができる(図23のOFF→ON後を参照)。また、電磁弁1がON状態からOFF状態に移行した後、中間室51の内圧を正圧から大気圧に戻り易くすることができる(図23のON→OFF後を参照)。したがって、電磁弁1がON状態およびOFF状態であるときに、すなわち、弁体14が当該弁体14の駆動範囲の両端に位置するときに、中間室51を大気圧にして(図23のON→ON間およびOFF→OFF間を参照)、中間室51とシール構造部18の外部との間の差圧をなくすことができる。
【0080】
なお、変形例として、圧抜き形状部61は、図22に示すように、ハウジング12の内面にて凹凸状に形成されるものであってもよい。
【0081】
(第5実施例)
本実施例では、下側着座音は、ゴムシートで低減する。すなわち、図24に示すように第2弁座132をゴムシートにして、下側着座音を低減する。なお、上側着座音は、中間室51の負圧ブレーキで低減する。
【0082】
(第6実施例)
本実施例では、上側着座音は、ゴムシートで低減する。すなわち、図25に示すように第1弁座131をゴムシートにして、上側着座音を低減する。なお、下側着座音は、中間室51の正圧ブレーキで低減する。
【0083】
(第7実施例)
本実施例では、電磁弁1は、図26に示すように、メインリップシール181の代わりに、ダイヤフラム183を有する。このダイヤフラム183は、ハウジング12とシャフト15に固定されており、シャフト15と一体に駆動する。
【0084】
また、サブリップシール182の金環46がハウジング12に圧入されるようにして、サブリップシール182がハウジング12に固定されている。そして、サブリップシール182のシールリップ182aは、中間室51側に向って延び、シャフト15と接している。これにより、負圧漏れが起こり易くなっている。
【0085】
そして、電磁弁1がOFF状態(図1参照)からON状態(図2参照)へ移行するときには、上側着座音を、中間室51の正圧ブレーキで低減する。
【0086】
すなわち、電磁弁1がOFF状態からON状態へ移行するときには、ダイヤフラム183がシャフト15と共に駆動してサブリップシール182に近づく。そのため、中間室51の容積が小さくなるので、中間室51の内圧は大気圧から正圧になる。
【0087】
これにより、中間室51にダンパー機能を持たせて、シャフト15と一体の弁体14の駆動にブレーキを作用させることにより、弁体14の速度を小さくする。そのため、第1弁体141が第1弁座131に当接するときの弁体14の速度が小さくなるので、弁体14の着座音を低減できる。
【0088】
そして、その後、電磁弁1がON状態であるときに、正圧漏れにより、中間室51の内圧は正圧から徐々に大気圧に戻る。
【0089】
本実施例では、サブリップシール182のシールリップ182aは、中間室51側に向って延びているので、負圧漏れが起こり易くなっている。また、サブリップシール182のシールリップ182aの面圧を低くすることで、さらに負圧漏れが起こり易くすることができる。そのため、電磁弁1がOFF状態であるときに、中間室51の内圧は負圧から大気圧に戻り易くなっている。
【0090】
なお、下側着座音は、ゴムシートで低減する。
【0091】
(第8実施例)
本実施例では、第7実施例と異なる点として、図27に示すように、サブリップシール182のシールリップ182aは、駆動部16側に向って延び、シャフト15と接している。これにより、正圧漏れが起こり易くなっている。
【0092】
そして、電磁弁1がON状態(図2参照)からOFF状態(図1参照)へ移行するときには、下側着座音を、中間室51の負圧ブレーキで低減する。
【0093】
すなわち、電磁弁1がON状態からOFF状態へ移行するときには、ダイヤフラム183がシャフト15と共に駆動してサブリップシール182から離れる。そのため、中間室51の容積が大きくなるので、中間室51の内圧は大気圧から負圧になる。
【0094】
これにより、中間室51にダンパー機能を持たせて、弁体14の駆動にブレーキを作用させることにより、弁体14の速度を小さくする。そのため、第2弁体142が第2弁座132に当接するときの弁体14の速度が小さくなるので、弁体14の着座音を低減できる。
【0095】
そして、その後、電磁弁1がOFF状態であるときに、負圧漏れにより、中間室51の内圧は負圧から徐々に大気圧に戻る。
【0096】
本実施例では、サブリップシール182のシールリップ182aは、駆動部16側に向って延びているので、正圧漏れが起こり易くなっている。また、サブリップシール182のシールリップ182aの面圧を低くすることで、さらに正圧漏れが起こり易くすることができる。そのため、電磁弁1がON状態であるときに、中間室51の内圧は正圧から大気圧に戻り易くなっている。
【0097】
なお、上側着座音は、ゴムシートで低減する。
【0098】
(第9実施例)
本実施例では、第7実施例において、図28図29に示すように、シャフト15に圧力抜き形状部61が形成されている。なお、第8実施例において、同様に、シャフト15に圧力抜き形状部61が形成されていてもよい。
【0099】
(第10実施例)
本実施例では、電磁弁1は、図30に示すように、第7実施例において、中間室51の内部を外部の空気と連通させる微小大気孔62を有する。これにより、電磁弁1がOFF状態やON状態のとき、すなわち、弁体14およびシャフト15が停止しているときに、微小大気孔62により中間室51の内部を外部の空気と連通させることにより、中間室51を負圧または正圧から大気圧に戻すことができる。なお、電磁弁1は、第8実施例において、微小大気孔62を有していてもよい。また、本実施例では、上側着座音を中間室51の正圧ブレーキで低減し、下側着座音を中間室51の負圧ブレーキで低減する。
【0100】
(第11実施例)
本実施例では、電磁弁1は、図31に示すように、第10実施例において、微小大気孔62の外部側の出口の位置に設けられる逆止弁63を有する。この逆止弁63は、中間室51が負圧になったときに開弁する。なお、本実施例では、上側着座音を中間室51の正圧ブレーキで低減し、下側着座音をゴムシートで低減する。
【0101】
(第12実施例)
本実施例では、第11実施例と異なる点として、逆止弁63は、中間室51が正圧になったときに開弁する。なお、上側着座音をゴムシートで低減し、下側着座音を中間室51の負圧ブレーキで低減する。
【0102】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0103】
例えば、サブリップシール182の金環46がハウジング12に圧入されるようにして、サブリップシール182がハウジング12に固定されており、サブリップシール182のシールリップ182aは、中間室51側および駆動部16側に向って延び、シャフト15と接していてもよい。
【0104】
また、上記した実施の形態は、電磁弁1以外の他の弁装置(例えば、DCモータで弁体を駆動させる弁装置など)にも適用できる。
【符号の説明】
【0105】
1 電磁弁
11 流路
12 ハウジング
13 弁座
131 第1弁座
132 第2弁座
14 弁体
141 第1弁体
142 第2弁体
15 シャフト
16 駆動部
18 シール構造部
181 メインリップシール
181a シールリップ
182 サブリップシール
182a シールリップ
51 中間室
61 圧抜き形状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図19
図20
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図31