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特開2023-182972寿命予測装置、寿命予測方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182972
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】寿命予測装置、寿命予測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20231220BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096289
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】楠本 学
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA20
(57)【要約】
【課題】インフラ設備の寿命を予測する。
【解決手段】寿命予測装置10は、地域毎の地域データと当該地域にあるインフラ設備の故障率を示すデータとを訓練データとして機械学習することによって得られた、機械学習モデルに、予測対象となる地域の地域データを入力して、予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を予測する、故障率予測部11と、予測の結果に基づいて、予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する、地域分類部12と、グループ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の故障についてのデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、寿命予測部13と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域毎の地域データと当該地域にあるインフラ設備の故障率を示すデータとを訓練データとして機械学習することによって得られた、機械学習モデルに、予測対象となる地域の地域データを入力して、前記予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を予測する、故障率予測部と、
予測の結果に基づいて、前記予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する、地域分類部と、
前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の故障についてのデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、寿命予測部と、
を備えている、ことを特徴とする寿命予測装置。
【請求項2】
前記寿命予測部が、前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備それぞれの稼働時間及び故障の有無を特定するデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、
請求項1に記載の寿命予測装置。
【請求項3】
前記寿命予測部が、前記複数のグループそれぞれ毎に、前記データに対して、ワイブル型累積ハザード法を適用して、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備についての故障率関数を求め、求めた前記故障率関数を用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、
請求項2に記載の寿命予測装置。
【請求項4】
予測された寿命を画面に表示する、表示部を更に備え、
前記表示部は、前記画面において、地図上に、前記予測対象となる地域を、予測された寿命に応じた態様で表示する、
請求項1~3のいずれかに記載の寿命予測装置。
【請求項5】
予測された寿命を画面に表示する、表示部を更に備え、
前記表示部は、前記画面において、前記予測対象となる地域にあるインフラ設備を、予測された寿命に応じた態様で表示する、
請求項1~3のいずれかに記載の寿命予測装置。
【請求項6】
地域毎の地域データと当該地域にあるインフラ設備の故障率を示すデータとを訓練データとして機械学習することによって得られた、機械学習モデルに、予測対象となる地域の地域データを入力して、前記予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を予測する、故障率予測ステップと、
予測の結果に基づいて、前記予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する、地域分類ステップと、
前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の故障についてのデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、寿命予測ステップと、
を有する、ことを特徴とする寿命予測方法。
【請求項7】
前記寿命予測ステップにおいて、前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備それぞれの稼働時間及び故障の有無を特定するデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、
請求項6に記載の寿命予測方法。
【請求項8】
前記寿命予測ステップにおいて、前記複数のグループそれぞれ毎に、前記データに対して、ワイブル型累積ハザード法を適用して、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備についての故障率関数を求め、求めた前記故障率関数を用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、
請求項7に記載の寿命予測方法。
【請求項9】
予測された寿命を画面に表示する、表示ステップを更に有し、
前記表示ステップにおいて、前記画面において、地図上に、前記予測対象となる地域を、予測された寿命に応じた態様で表示する、
請求項6~8のいずれかに記載の寿命予測方法。
【請求項10】
予測された寿命を画面に表示する、表示ステップを更に有し、
前記表示ステップにおいて、前記画面において、前記予測対象となる地域にあるインフラ設備を、予測された寿命に応じた態様で表示する、
請求項6~8のいずれかに記載の寿命予測方法。
【請求項11】
コンピュータに、
地域毎の地域データと当該地域にあるインフラ設備の故障率を示すデータとを訓練データとして機械学習することによって得られた、機械学習モデルに、予測対象となる地域の地域データを入力して、前記予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を予測する、故障率予測ステップと、
予測の結果に基づいて、前記予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する、地域分類ステップと、
前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の故障についてのデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、寿命予測ステップと、
を実行させる、プログラム。
【請求項12】
前記寿命予測ステップにおいて、前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備それぞれの稼働時間及び故障の有無を特定するデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、
請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記寿命予測ステップにおいて、前記複数のグループそれぞれ毎に、前記データに対して、ワイブル型累積ハザード法を適用して、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備についての故障率関数を求め、求めた前記故障率関数を用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、
請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
前記コンピュータに、
予測された寿命を画面に表示する、表示ステップを更に実行させ、
前記表示ステップにおいて、前記画面において、地図上に、前記予測対象となる地域を、予測された寿命に応じた態様で表示する、
請求項11~13のいずれかに記載のプログラム。
【請求項15】
前記コンピュータに、
予測された寿命を画面に表示する、表示ステップを更に実行させ、
前記表示ステップにおいて、前記画面において、前記予測対象となる地域にあるインフラ設備を、予測された寿命に応じた態様で表示する、
請求項11~13のいずれかに記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インフラ設備の寿命を予測するための、寿命予測装置及び寿命予測方法に関し、更には、これらを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気設備、ガス設備、水道設備、道路、鉄道といった、インフラ設備は、人々の生活に必要不可欠であることから、インフラ設備の保守点検を適切に行うことは、社会において極めて重要である。
【0003】
一方、従来から、インフラ設備の保守点検は人手にたよっていたため、今後少子高齢化が進行すると、インフラ設備の保守点検を適切に行うことは困難となる。このため、近年においては、インフラ設備の保守点検に、IT(Information Technology)技術を利用することが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、インフラ設備の点検を支援するシステムを開示している。特許文献1に開示されたシステムは、インフラ設備の不良予測を行う予測モデルに、予測対象となるエリアにおける、インフラ設備の接続属性情報と気象データとを入力することによって、そのエリアに存在するインフラ設備に発生する不良を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-60810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インフラ設備の保守点検の観点からは、特許文献1に開示されたシステムのように不良の発生を予測するだけでは不十分であり、インフラ設備の寿命があとどれくらいであるかを予測することまで求められている。
【0007】
本開示の目的の一例は、インフラ設備の寿命を予測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の一側面における寿命予測装置は、
地域毎の地域データと当該地域にあるインフラ設備の故障率を示すデータとを訓練データとして機械学習することによって得られた、機械学習モデルに、予測対象となる地域の地域データを入力して、前記予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を予測する、故障率予測部と、
予測の結果に基づいて、前記予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する、地域分類部と、
前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の故障についてのデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、寿命予測部と、
を備えている、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本開示の一側面における寿命予測方法は、
地域毎の地域データと当該地域にあるインフラ設備の故障率を示すデータとを訓練データとして機械学習することによって得られた、機械学習モデルに、予測対象となる地域の地域データを入力して、前記予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を予測する、故障率予測ステップと、
予測の結果に基づいて、前記予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する、地域分類ステップと、
前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の故障についてのデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、寿命予測ステップと、
を有する、ことを特徴とする。
【0010】
更に、上記目的を達成するため、本開示の一側面におけるプログラムは、
コンピュータに、
地域毎の地域データと当該地域にあるインフラ設備の故障率を示すデータとを訓練データとして機械学習することによって得られた、機械学習モデルに、予測対象となる地域の地域データを入力して、前記予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を予測する、故障率予測ステップと、
予測の結果に基づいて、前記予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する、地域分類ステップと、
前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の故障についてのデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、寿命予測ステップと、
を実行させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本開示によれば、インフラ設備の寿命を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施の形態における寿命予測装置の概略構成を示す構成図である。
図2図2は、実施の形態における寿命予測装置の構成を具体的に示す構成図である。
図3図3は、インフラ設備の点検結果の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態で用いられる、各インフラ設備の稼働時間及び故障の有無を特定するデータの一例を示す図である。
図5図5は、実施の形態でもちいるワイブル型累積ハザード法を説明するための図である。
図6図6は、実施の形態において表示部によって表示される画面の一例を示す図である。
図7図7は、実施の形態において表示部によって表示される画面の他の例を示す図である。
図8図8は、実施の形態における寿命予測装置の動作を示すフロー図である。
図9図9は、実施の形態の変形例において表示部によって表示される画面の一例を示す図である。
図10図10は、実施の形態の変形例において表示部によって表示される画面の他の例を示す図である。
図11図11は、実施の形態における寿命予測装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、実施の形態における、寿命予測装置、寿命予測方法、及びプログラムについて、図1図11を参照しながら説明する。
【0014】
[装置構成]
最初に、実施の形態における寿命予測装置の概略構成について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態における寿命予測装置の概略構成を示す構成図である。
【0015】
図1に示す、実施の形態における寿命予測装置10は、インフラ設備の寿命を予測するための装置である。図1に示すように、寿命予測装置10は、故障率予測部11と、地域分類部12と、寿命予測部13と、を備えている。
【0016】
故障率予測部11は、機械学習モデルに、予測対象となる地域の地域データを入力して、予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を示すデータを予測する。この機械学習モデルは、地域毎の地域データとその地域にあるインフラ設備の故障率とを訓練データとして機械学習することによって得られている。
【0017】
地域分類部12は、予測の結果に基づいて、予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する。寿命予測部13は、複数のグループそれぞれ毎に、グループに分類された地域にあるインフラ設備の故障についてのデータを用いて、そのグループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する。
【0018】
このように、寿命予測装置10は、まず、予測対象となる地域を、その地域での故障率に応じてグループに分類する。そして、グループは、例えば、インフラ設備の故障の発生の程度に応じて設定される。このため、寿命予測装置10は、グループに応じたデータを用いることで、その地域でのインフラ設備の寿命を予測することができる。
【0019】
続いて、図2図7を用いて、実施の形態における寿命予測装置の構成及び機能について具体的に説明する。図2は、実施の形態における寿命予測装置の構成を具体的に示す構成図である。
【0020】
図2に示すように、実施の形態では、寿命予測装置10は、上述した、故障率予測部11、地域分類部12、及び寿命予測部13に加えて、機械学習モデル14と、表示部15とを備えている。
【0021】
機械学習モデル14は、例えば、ニューラルネットワーク、決定木等で構築されている。機械学習モデル14は、実際には、コンピュータ上で実行される機械学習プログラムによって実装される。コンピュータとしては、寿命予測装置10を構築するコンピュータ(後述)が挙げられる。なお、機械学習モデル14は、寿命予測装置10とは別の装置(コンピュータ)に実装されていても良い。
【0022】
また、実施の形態では、機械学習モデル14は、図2に示す学習モデル生成装置20によって生成される。学習モデル生成装置20は、訓練データとして、地域毎の地域データとその地域にあるインフラ設備の故障率を示すデータとを用いて、機械学習を実行し、それによって機械学習モデル14を生成する。例えば、機械学習モデル14が決定木の場合は、学習モデル生成装置20は、機械学習によって、決定木を構成する各ノードの重要度を決定する。
【0023】
地域データは、地域の状況を示すデータである。地域データとしては、対象地域の過去の気象(降水量、日照時間、気温、湿度等)を示すデータ、対象地域の地形(高度、傾斜、海までの距離等)を示すデータ、土地の用途(鉄道、高速道路、市街地、森林等)を示すデータが挙げられる。図3を用いて訓練データの一例を説明する。
【0024】
インフラ設備の故障率を示すデータは、例えば、下記の図3に示すインフラ設備の点検結果から得られる。図3は、インフラ設備の点検結果の一例を示す図である。図3の例ではインフラ設備毎に、データとして、設置年月、点検年月、点検結果、及び設置地域が用いられる。また、複数回点検が行われたインフラ設備については、点検毎のデータが用いられる。
【0025】
また、図3の例では、インフラ設備は、例えば鉄塔である。鉄塔に発生した錆の状態が、補修が必要な状態になったときに、点検結果は「×」となる。図3に示す点検結果からは、例えば、Aエリアにおける鉄塔故障率は0.33、Bエリアの故障率は0となる。なお、実施の形態において、インフラ設備は、鉄塔に限定されるものではない、その他に、送電線、電話線、道路、水道管、ガス配管、信号機、等も挙げられる。
【0026】
学習モデル生成装置20は、機械学習モデル14を生成すると、機械学習モデル14を構築するための情報、例えば、ニューラルネットワークを構成する各ノードの重み係数等を、寿命予測装置10に送る。これにより、寿命予測装置10は、機械学習モデル14を構築する。
【0027】
故障率予測部11は、まず、寿命の予測対象となる地域の地域データを取得する。取得される地域データは、上述した訓練データの場合と同様に、地域の状況を示すデータである。続いて、故障率予測部13は、機械学習モデル14に、取得した地域データを入力する。これにより、機械学習モデル14は、予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を示すデータを出力する。故障率予測部11は、機械学習モデル14が出力したデータを、地域分類部12に入力する。
【0028】
地域分類部12は、上述したように、予測の結果に基づいて、予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する。グループは、故障率に応じて、予め設定されている。実施の形態において、グループの数は特に限定されない。
【0029】
また、地域分類部12は、地域データの内容に応じて、複数のグループを設定することができる。例えば、地域データが、設定期間における降水量である場合は、地域分類部12は、降水量に応じて複数のグループを設定する。また、地域データが、設定期間における平均気温である場合は、地域分類部12は、平均記憶に応じて複数のグループを設定する。
【0030】
寿命予測部13は、実施の形態では、グループ毎に、グループに分類された地域にあるインフラ設備それぞれの稼働時間及び故障の有無を特定するデータを用いて、グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する。
【0031】
グループに分類された地域にあるインフラ設備それぞれの稼働時間及び故障の有無を特定するデータの一例として、図4に示すデータが挙げられる。図4は、実施の形態で用いられる、各インフラ設備の稼働時間及び故障の有無を特定するデータの一例を示す図である。図4の例では、データとして、Aエリアでの各インフラ設備における、2000年1月を基準とした現時点での「経過月数」及び「故障の有無」が用いられる。図4における「順位」、「ハザード値」、及び「累積」は、寿命予測部13によって算出される値である。
【0032】
具体的には、寿命予測部13はグループ毎に、上述のデータに対して、ワイブル型累積ハザード法を適用して、グループに分類された地域にあるインフラ設備についての故障率関数を求める。
【0033】
より詳細には、寿命予測部13は、上述のデータを用いて、まず、経過月数の大きい順に、各インフラ設備に「順位」(図4参照)を設定する。次に、寿命予測部13は、故障のあったインフラ設備について、順位の逆数を算出し、これを「ハザード値」(図4参照)とする。)。更に、寿命予測部13は、各インフラ設備について、それ自体のハザード値と、それよりも経過月数の少ないインフラ設備のハザード値と、を加算して「累積ハザード値」(図4参照)を算出する。
【0034】
続いて、寿命予測部13は、図5に示すように、経過月数の対数を横軸、累積ハザード値の対数を縦軸として、最小二乗法による直線近似(y=ax+b)を実行して、傾きaと切片bとを算出する。図5は、実施の形態でもちいるワイブル型累積ハザード法を説明するための図である。また、図5は、図4で算出されたAエリアの累積ハザード値に基づいて作成されている。
【0035】
そして、寿命予測部13は、形状パラメータmをa、尺度パラメータηをexp(-b/m)として、ワイブル分布の係数を算出し、以下の数1に示す故障率関数F(t)を導出する。数1においてtは、経過月数を示している。
【0036】
(数1)
F(t)=1-exp{-(t/η)
【0037】
そして、寿命予測部13は、求めた故障率関数F(t)を用いて、グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する。例えば、故障率関数F(t)の値について、目標値(10%、50%等)が設定されているとすると、寿命予測部13は、故障率関数F(t)が目標値に到達するときの経過月数tを求め、求めた経過月数tを「寿命」とする。
【0038】
また、寿命予測部13は、インフラ設備毎に、求めた「寿命」から、基準月から現在までの経過月数を減算し、得られた値を「余寿命」として算出することもできる。更に、寿命予測部13は、インフラ設備毎に、余寿命に基づいて、「補修コスト」を算出することもできる。なお、補修コストの算出は、予め「余寿命」と「補修コスト」との関係を設定しておくことで行われる。
【0039】
上述した説明では、寿命予測部13は、分類された複数のグループ全てについて、インフラ設備の予測を行っているが、実施の形態は、この態様に限定されない。寿命予測部13は、予測対象となる地域が分類されたグループについてのみ、インフラ設備の寿命を予測しても良い。
【0040】
表示部15は、寿命予測部13によって予測された寿命を、表示装置30の画面に表示する。なお、表示装置30は、寿命予測装置10に接続された液晶表示等の表示装置であっても良いし、ネットワークで接続された外部の端末装置の表示装置であっても良い。
【0041】
図6及び図7を用いて表示部15による画面表示の具体例について説明する。図6は、実施の形態において表示部によって表示される画面の一例を示す図である。図7は、実施の形態において表示部によって表示される画面の他の例を示す図である。
【0042】
図6の例では、表示部15は、表示装置30の画面において、地図上に、予測対象となる地域を、予測された寿命に応じた態様で表示している。具体的には、表示部15は、地図上の各エリアを、寿命又は余寿命に応じて色を変えて表示している。図6の例では、表示部15は、故障率関数F(t)の値を「信頼度」として表示している。
【0043】
図7の例では、表示部15は、表示装置の画面において、予測対象となる地域にあるインフラ設備を、予測された寿命に応じた態様で表示する。具体的には、表示部15は、インフラ設備毎に、「寿命」、「余寿命」、及び「補修コスト」を表示している。
【0044】
[装置動作]
次に、実施の形態における寿命予測装置10の動作について図8を用いて説明する。図8は、実施の形態における寿命予測装置の動作を示すフロー図である。以下の説明においては、適宜図1図7を参照する。また、実施の形態では、寿命予測装置を動作させることによって、寿命予測方法が実施される。よって、実施の形態における寿命予測方法の説明は、以下の寿命予測装置10の動作説明に代える。
【0045】
図8に示すように、最初に、故障率予測部11が、寿命の予測対象となる地域の地域データを取得する(ステップA1)。地域データの取得先は、特に限定されるものではない。地域データが、予測対象となる地域の気象を示すデータである場合は、地域データの取得先としては、例えば、気象庁のWebサイトが挙げられる。
【0046】
次に、故障率予測部13は、ステップA1で取得した地域データを、機械学習モデル14に入力して、予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を予測する(ステップA2)。ステップA2では、故障率予測部13は、機械学習モデル14が出力したデータを受け取り、受け取ったデータを地域分類部12に入力する。
【0047】
次に、地域分類部12は、ステップA2での予測の結果に基づいて、予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する(ステップA3)。
【0048】
次に、寿命予測部13は、グループ毎に、グループに分類された地域にあるインフラ設備それぞれの稼働時間及び故障の有無を特定するデータを用いて、グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する(ステップA4)。また、ステップA4では、寿命予測部13は、インフラ設備毎に、予測した「寿命」から、基準月から現在までの経過月数を減算し、得られた値を「余寿命」として算出する。
【0049】
その後、表示部15は、ステップA4によって予測された寿命を、図6又は図7に示したように、表示装置30の画面に表示する(ステップA5)。
【0050】
ステップA1~A5が実行されると、ユーザは、寿命の予測対象となる地域におけるインフラ設備の寿命を把握することができる。以上のように、実施の形態によれば、各地域におけるインフラ設備の寿命があとどれくらいであるかが予測される。
【0051】
[変形例]
以下に、図9及び図10を用いて、実施の形態における変形例について説明する。図9は、実施の形態の変形例において表示部によって表示される画面の一例を示す図である。図10は、実施の形態の変形例において表示部によって表示される画面の他の例を示す図である。
【0052】
図9及び図10に示すように、本変形例では、表示部15は、画面上に設定スライダを表示することができる。図9の例では、ユーザが、画面上で設定スライダを操作して、余寿命を設定する。これにより、寿命予測部13は、設定された余寿命以下となるインフラ設備を特定し、特定したインフラ設備を表示部15に通知する。これにより、図9の例では、表示部15は、通知されたインフラ設備についての「寿命」、「余寿命」及び「補修コスト」のみを、表示装置30の画面に表示する。
【0053】
また、図10の例では、ユーザが、画面上で設定スライダを操作して、補修コストを設定する。これにより、寿命予測部13は、設定された補修コスト以下となるインフラ設備を特定し、特定したインフラ設備を表示部15に通知する。これにより、図10の例では、表示部15は、通知されたインフラ設備についての「寿命」、「余寿命」及び「補修コスト」のみを、表示装置30の画面に表示する。
【0054】
また、変形例においては、寿命予測部13は、インフラ設備毎に余寿命を算出した後に、エリア毎に、インフラ設備の余寿命の平均値を算出することもできる。この場合、表示部15は、画面上に、エリア毎の「平均余寿命」を表示することもできる。更に、この場合、表示部15は、平均余寿命が一定以下であるエリア、平均余寿命が短い上位n番目までのエリアを、明示する表示を行うこともできる。この場合、ユーザは、平均余寿命が短いエリアを優先的に確認できる。
【0055】
変形例においては、上述した故障率関数F(t)の目標値がユーザによって指定できる態様になっていても良い。この態様では、寿命予測部13は、目標値が指定されると、指定された目標値に合わせて、「寿命」、「余寿命」及び「補修コスト」を計算する。そして、表示部15は、計算された「寿命」、「余寿命」及び「補修コスト」を表示装置30の画面に表示する。この場合、ユーザは、目標値の変化によって、「寿命」、「余寿命」及び「補修コスト」がどの程度変化するかを確認できる。
【0056】
変形例では、寿命予測部13は、余寿命が一定以下となるインフラ設備をリストアップすることができる。この場合、表示部15は、リストアップしたインフラ設備を表示装置30の画面に表示して、ユーザに、これらを優先的に補修するように注意喚起を促すことができる。また、故障率関数F(t)の目標値がユーザによって指定できる場合は、寿命予測部13は、リストを変化させるので、表示部15は、変化したリストを表示装置30の画面に表示する。この場合、ユーザは、補修時期を延長可能なインフラ設備を特定できるので、災害などの緊急時に対応が必要なところを優先的に補修することができる。
【0057】
[プログラム]
実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、図8に示すステップA1~A5を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、実施の形態における寿命予測装置10と寿命予測方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、故障率予測部11、地域分類部12、寿命予測部13、機械学習モデル14、及び表示部15として機能し、処理を行なう。コンピュータとしては、汎用のPCの他に、スマートフォン、タブレット型端末装置が挙げられる。
【0058】
また、実施の形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、故障率予測部11、地域分類部12、寿命予測部13、機械学習モデル14、及び表示部15のいずれかとして機能しても良い。
【0059】
[物理構成]
ここで、実施の形態におけるプログラムを実行することによって、寿命予測装置10を実現するコンピュータについて図11を用いて説明する。図11は、実施の形態における寿命予測装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0060】
図11に示すように、コンピュータ110は、CPU(Central Processing Unit)111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0061】
また、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていても良い。この態様では、GPU又はFPGAが、実施の形態におけるプログラムを実行することができる。
【0062】
CPU111は、記憶装置113に格納された、コード群で構成された実施の形態におけるプログラムをメインメモリ112に展開し、各コードを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。
【0063】
また、実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0064】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0065】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0066】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0067】
なお、実施の形態における寿命予測装置10は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェア、例えば、電子回路を用いることによっても実現可能である。更に、寿命予測装置10は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。実施の形態において、コンピュータは、図11に示すコンピュータに限定されることはない。
【0068】
上述した実施の形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)~(付記15)によって表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0069】
(付記1)
地域毎の地域データと当該地域にあるインフラ設備の故障率を示すデータとを訓練データとして機械学習することによって得られた、機械学習モデルに、予測対象となる地域の地域データを入力して、前記予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を予測する、故障率予測部と、
予測の結果に基づいて、前記予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する、地域分類部と、
前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の故障についてのデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、寿命予測部と、
を備えている、ことを特徴とする寿命予測装置。
【0070】
(付記2)
前記寿命予測部が、前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備それぞれの稼働時間及び故障の有無を特定するデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、
付記1に記載の寿命予測装置。
【0071】
(付記3)
前記寿命予測部が、前記複数のグループそれぞれ毎に、前記データに対して、ワイブル型累積ハザード法を適用して、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備についての故障率関数を求め、求めた前記故障率関数を用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、
付記2に記載の寿命予測装置。
【0072】
(付記4)
予測された寿命を画面に表示する、表示部を更に備え、
前記表示部は、前記画面において、地図上に、前記予測対象となる地域を、予測された寿命に応じた態様で表示する、
付記1~3のいずれかに記載の寿命予測装置。
【0073】
(付記5)
予測された寿命を画面に表示する、表示部を更に備え、
前記表示部は、前記画面において、前記予測対象となる地域にあるインフラ設備を、予測された寿命に応じた態様で表示する、
付記1~3のいずれかに記載の寿命予測装置。
【0074】
(付記6)
地域毎の地域データと当該地域にあるインフラ設備の故障率を示すデータとを訓練データとして機械学習することによって得られた、機械学習モデルに、予測対象となる地域の地域データを入力して、前記予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を予測する、故障率予測ステップと、
予測の結果に基づいて、前記予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する、地域分類ステップと、
前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の故障についてのデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、寿命予測ステップと、
を有する、ことを特徴とする寿命予測方法。
【0075】
(付記7)
前記寿命予測ステップにおいて、前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備それぞれの稼働時間及び故障の有無を特定するデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、
付記6に記載の寿命予測方法。
【0076】
(付記8)
前記寿命予測ステップにおいて、前記複数のグループそれぞれ毎に、前記データに対して、ワイブル型累積ハザード法を適用して、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備についての故障率関数を求め、求めた前記故障率関数を用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、
付記7に記載の寿命予測方法。
【0077】
(付記9)
予測された寿命を画面に表示する、表示ステップを更に有し、
前記表示ステップにおいて、前記画面において、地図上に、前記予測対象となる地域を、予測された寿命に応じた態様で表示する、
付記6~8のいずれかに記載の寿命予測方法。
【0078】
(付記10)
予測された寿命を画面に表示する、表示ステップを更に有し、
前記表示ステップにおいて、前記画面において、前記予測対象となる地域にあるインフラ設備を、予測された寿命に応じた態様で表示する、
付記6~8のいずれかに記載の寿命予測方法。
【0079】
(付記11)
コンピュータに、
地域毎の地域データと当該地域にあるインフラ設備の故障率を示すデータとを訓練データとして機械学習することによって得られた、機械学習モデルに、予測対象となる地域の地域データを入力して、前記予測対象となる地域におけるインフラ設備の故障率を予測する、故障率予測ステップと、
予測の結果に基づいて、前記予測対象となる地域を、予め設定された複数のグループのいずれかに分類する、地域分類ステップと、
前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の故障についてのデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、寿命予測ステップと、
を実行させる、プログラム。
【0080】
(付記12)
前記寿命予測ステップにおいて、前記複数のグループそれぞれ毎に、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備それぞれの稼働時間及び故障の有無を特定するデータを用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、
付記11に記載のプログラム。
【0081】
(付記13)
前記寿命予測ステップにおいて、前記複数のグループそれぞれ毎に、前記データに対して、ワイブル型累積ハザード法を適用して、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備についての故障率関数を求め、求めた前記故障率関数を用いて、当該グループに分類された地域にあるインフラ設備の寿命を予測する、
付記12に記載のプログラム。
【0082】
(付記14)
前記コンピュータに、
予測された寿命を画面に表示する、表示ステップを更に実行させ、
前記表示ステップにおいて、前記画面において、地図上に、前記予測対象となる地域を、予測された寿命に応じた態様で表示する、
付記11~13のいずれかに記載のプログラム。
【0083】
(付記15)
前記コンピュータに、
予測された寿命を画面に表示する、表示ステップを更に実行させ、
前記表示ステップにおいて、前記画面において、前記予測対象となる地域にあるインフラ設備を、予測された寿命に応じた態様で表示する、
付記11~13のいずれかに記載のプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように本開示によれば、インフラ設備の寿命を予測することができる。本発明はインフラ設備の管理が必要な分野に有用である。
【符号の説明】
【0085】
10 寿命予測装置
11 故障率予測部
12 地域分類部
13 寿命予測部
14 機械学習モデル
15 表示部
20 学習モデル生成装置
30 表示装置
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11