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  • 特開-ワーク支持装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182973
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ワーク支持装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/02 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
B23Q3/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096292
(22)【出願日】2022-06-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌春
(72)【発明者】
【氏名】内山 大輔
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016BA05
(57)【要約】
【課題】ワーク支持部の位置又は変位を精度良く検出可能なワーク支持装置を提供する。
【解決手段】ワーク支持装置は、ワークに当接可能な支持面を有するワーク支持部と、ワーク支持部が一体に設けられたプランジャと、一端側に支持面を露出させつつプランジャを相対変位可能に支持し、他端側が取付対象の取付孔に挿入されて取り付けられるボディと、プランジャを軸線方向に駆動する駆動機構と、ワーク支持部の変位に対応して変位可能に設けられたスケールと、ボディに対して固定され、スケールの変位を検出するセンサと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに当接可能な支持面を有するワーク支持部と、
前記ワーク支持部が一体に設けられたプランジャと、
一端側に前記支持面を露出させつつ前記プランジャを相対変位可能に支持し、他端側が取付対象の取付孔に挿入されて取り付けられるボディと、
前記プランジャを軸線方向に駆動する駆動機構と、
前記ワーク支持部の変位に対応して変位可能に設けられたスケールと、
前記ボディに対して固定され、前記スケールの変位を検出するセンサと、
を備える、ワーク支持装置。
【請求項2】
前記ボディ内で前記プランジャの軸線に沿って延び、前記プランジャと一体に作動するとともに、一端部に前記ワーク支持部が固定され、他端部に前記スケールが設けられる作動ロッドをさらに備える、請求項1に記載のワーク支持装置。
【請求項3】
前記センサは、前記ボディにおける前記ワーク支持部とは反対側に露出する、請求項2に記載のワーク支持装置。
【請求項4】
前記センサは、前記ボディが前記取付対象に取り付けられた際に前記取付孔の内方に位置する、請求項1~3のいずれかに記載のワーク支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを支持するワーク支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタによりワークを加工する場合、加工室内に設置されたテーブル上にワークを固定し、回転する工具を移動させて切削加工を行う。その際、ワークの弾性変形やびびり振動による加工精度の低下を防止するためにワークをしっかりと固定する必要がある。しかし、ワークが複雑な形状を有する場合には専用の治具を用いて固定しなければならず、作業が煩雑となることがあった。
【0003】
そこで、テーブル側に可動のワークサポートを複数設置し、機械加工側と反対側からワークを散点的に受け止めるシステムも実用化されている(特許文献1参照)。ワークサポートは、軸線方向に移動可能なロッドを備え、そのロッドの先端にはワークの下面に当接可能な支持面が設けられる。各ワークサポートのロッドを油圧又はエア圧により駆動することによりそれぞれの支持面の高さを調整しつつワークを下方から支持する。それにより、ワークの下面形状にかかわらず、ワークを適切な姿勢に保持しつつ加工できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-283161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなシステムでは、いずれかの支持面の位置精度が低いと、ワークの支持が不安定となる。また、特定のワークサポートについて加圧力が大きくなり、ワークの変形につながる可能性もある。そのため、ワークサポートの支持面の位置又は変位を精度良く検出しつつ、その位置を制御することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様はワーク支持装置である。このワーク支持装置は、ワークに当接可能な支持面を有するワーク支持部と、ワーク支持部が一体に設けられたプランジャと、一端側に支持面を露出させつつプランジャを相対変位可能に支持し、他端側が取付対象の取付孔に挿入されて取り付けられるボディと、プランジャを軸線方向に駆動する駆動機構と、ワーク支持部の変位に対応して変位可能に設けられたスケールと、ボディに対して固定され、スケールの変位を検出するセンサと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワーク支持部の位置又は変位を精度良く検出可能なワーク支持装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るワーク支持システムの構成を模式的に表す図である。
図2】ワーク支持装置の構成を表す断面図である。
図3】異物排出構造およびその動作を表す図である。
図4】ワーク支持装置の動作の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係るワーク支持システムの構成を模式的に表す図である。
ワーク支持システム1は、工作機械(マシニングセンタ)のテーブル2に設置されるワークWが切削加工に際して適切な姿勢に保持されるよう調整する。ワーク支持システム1は、テーブル2に設置された複数のワーク支持装置4と、これらのワーク支持装置4を駆動制御する制御装置6を備える。本実施形態では、テーブル2が「取付対象」として機能する。
【0011】
テーブル2には、複数の取付孔8が設けられている。各ワーク支持装置4は、その下半部が取付孔8に挿通されるようにしてテーブル2に取り付けられ、固定されている。ワーク支持装置4は、上下方向に昇降可能なワーク支持部10を有する。ワーク支持部10の上端面が、ワークWに当接可能な支持面12となっている。本実施形態では、ワーク支持装置4の下部外周面に設けた雄ねじと、取付孔8の内周面に設けた雌ねじとを螺合させることによりワーク支持装置4をテーブル2に対して締結する(図示略)。変形例においては、ワーク支持装置4にフランジを設け、そのフランジをテーブル2にねじ止め等することにより固定してもよい。
【0012】
制御装置6は、各ワーク支持装置4のワーク支持部10を駆動することにより、複数の支持面12によりワークWを下方から支持する。このとき、各ワーク支持装置4の支持面12の高さが個別に調整されるため、図1に例示するようにワークWの下面が平坦でない場合にもワークWの姿勢を適正に保つことができる。
【0013】
制御装置6の機能は、プロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され演算器に処理命令を供給するソフトウェアにより実現される。
【0014】
ワーク支持装置4は、ワーク支持部10の変位に対応して変位可能に設けられたスケール14と、スケール14の変位を検出するセンサ16を備える。スケール14およびセンサ16は、いわゆるリニアスケール(リニアエンコーダ)を構成する。センサ16は磁気センサであり、所定の信号線Lを介して制御装置6と接続されている。制御装置6は、センサ16が検出した変位情報に基づいて各支持面12の位置を特定でき、特定された位置に基づいて各ワーク支持装置4を制御することができる。
【0015】
図2は、ワーク支持装置4の構成を表す断面図である。
ワーク支持装置4は、段付円筒状のボディ20と、ボディ20の軸線に沿って上下に変位可能なワーク支持部10と、ワーク支持部10と一体に設けられた作動ロッド21と、ワーク支持部10を駆動する駆動機構22と、ワーク支持部10の変位を停止させるストッパ機構24を備える。スケール14は、作動ロッド21の下端部に一体に設けられ、ワーク支持部10と一体に変位する。なお、本実施形態では作動ロッド21の一部をスケール14として機能させるが、作動ロッド21の全体をスケールとして機能させてもよい。
【0016】
ボディ20は、ワーク支持装置4の内部機構を収容する第1ボディ26と、第1ボディ26の下部に組み付けられる第2ボディ28と、第2ボディ28の下部中央に組み付けられる第3ボディ29を含む。これら第1ボディ26、第2ボディ28および第3ボディ29は、同軸状に組み付けられている。ワーク支持装置4がテーブル2に設置される際には、ボディ20の下半部が取付孔8に挿入される(図1参照)。
【0017】
第1ボディ26は、上方に向けて小径化された段付円筒状をなし、その上部内周面によりガイド孔30が形成されている。また、第1ボディ26の上底部に環状の凹状嵌合部32が設けられている。凹状嵌合部32の内側周面によりガイド部34が形成されている。
【0018】
第1ボディ26の上端部内周面には環状のシール収容部36が設けられ、シールリング38が嵌着されている。シールリング38は、いわゆるリップシール構造を有する可撓性部材である。第1ボディ26の上半部内周面における凹状嵌合部32の下方には、下方に向けて大径化するテーパ面40が設けられている。
【0019】
第2ボディ28は、上方に向けて小径化される段付円筒状をなし、第1ボディ26に同軸状に組み付けられている。第2ボディ28の大部分が第1ボディ26に挿通されている。第2ボディ28の下部には、半径方向外向きに突出するフランジ部42が設けられている。そのフランジ部42が第1ボディ26の開口端を閉じている。
【0020】
第2ボディ28の下部外周面と第1ボディ26の下部内周面との間には、シールリング44が介装され、外部からボディ20内への流体の侵入と、ボディ20内から外部への流体(後述するエア)の漏洩を防止している。また、第2ボディ28の下端部外周面にはシールリング46が嵌着され、ワーク支持装置4が取付孔8に組み付けられた際のシール性を担保できるようにされている(図1参照)。
【0021】
第2ボディ28の周縁部近傍を上下方向に貫通するように連通路48が設けられている。連通路48の下端は外部に開口し、エアを導入する入口ポート49を構成する。連通路48の上端はボディ20の内部に開口する。また、第2ボディ28の内外を斜め上下に貫通するように連通路50が設けられている。連通路50は、ボディ20の軸線に対して連通路48とは反対側に設けられる。連通路50の上端はボディ20の内部に開口する。
【0022】
第2ボディ28の上部外周面には、シールリング52が嵌着されている。一方、第2ボディ28の上部内周面によりガイド孔53が形成されている。第2ボディ28の上面中央部から上方に向けて円ボス状のガイド部54が突設されている。ガイド部54の上端部が縮径され、ばね受け部56を構成している。第2ボディ28の内周面は、上方に向けて小径化する段付円孔状をなしている。
【0023】
第3ボディ29は段付円筒状をなし、その上半部が第2ボディ28の下部に嵌合する態様で組み付けられている。第2ボディ28の下面と第3ボディ29の上面との間にはシールリング58が介装されている。このシールリング58の内方における第2ボディ28と第3ボディ29との間の空間に圧力室60が形成されている。連通路50の下端は、その圧力室60に開口している。
【0024】
第3ボディ29の周縁部近傍を上下方向に貫通するように連通路62が設けられている。連通路62の下端は外部に開口し、エアを導入する入口ポート64を構成する。連通路62の上端は圧力室60に開口する。第3ボディ29の上部内周面に環状溝が設けられ、シールリング66が嵌着されている。また、第3ボディ29の外周面にはシールリング68,70が嵌着され、ワーク支持装置4が取付孔8に組み付けられた際のシール性を担保できるようにされている(図1参照)。
【0025】
第3ボディ29の下端部にセンサハウジング72が固定され、そのセンサハウジング72内にセンサ16が取り付けられている。センサハウジング72は、ねじを介して第3ボディ29に固定されており、ボディ20に対して着脱可能とされている。センサ16は、ボディ20におけるワーク支持部10とは反対側に露出し、ボディ20がテーブル2に取り付けられた際には取付孔8の内方に位置する(図1参照)。
【0026】
スケール14は、センサハウジング72を貫通する。スケール14は、ワーク支持部10と連動して軸線方向に変位する。スケール14には、位置検出用のパターン(着磁パターン)が形成されている。センサハウジング72の内部には、スケール14のパターンと対向するようにセンサ16(磁気センサ)が設けられている。このような構成により、ワーク支持部10が変位したときに、センサ16がスケール14のパターンを位置情報として読み取る。センサ16の検出信号は、信号線Lを介して制御装置6へ出力される(図1参照)。制御装置6は、この位置情報に基づいてワーク支持装置4の支持面12の位置を特定する。
【0027】
ボディ20には円筒状のプランジャ80が同軸状に挿通されている。プランジャ80の上端開口部にワーク支持部10が同軸状に組み付けられている。ワーク支持部10は段付円柱状をなし、プランジャ80の上部に挿通されつつ組み付けられている。プランジャ80の上部に雌ねじ82が設けられ、ワーク支持部10の下半部に雄ねじ84が設けられている。これらのねじを螺合させることでワーク支持部10がプランジャ80に締結されている。プランジャ80の上端部内周面とワーク支持部10の外周面との間にはシールリング86が介装され、外部からプランジャ80内への流体の侵入を防止又は抑制している。
【0028】
ワーク支持部10の上部がプランジャ80から露出しており、その上端面が曲面状の支持面12を構成している。ワーク支持部10の下面中央には、所定深さの嵌合穴88が設けられ、作動ロッド21の上端部が嵌合し固定されている。プランジャ80は、その上部が第1ボディ26のガイド孔30に挿通され、下部が第2ボディ28のガイド部54に外挿されている。すなわち、プランジャ80は、ガイド孔30およびガイド部54に沿って軸線方向に摺動し、ボディ20により相対変位可能に支持されている。
【0029】
プランジャ80の軸線方向中央部の内周面によりガイド孔55が形成されている。作動ロッド21は、ボディ20内でプランジャ80の軸線に沿って延び、第2ボディ28および第3ボディ29を軸線方向に貫通する。
【0030】
駆動機構22は、ボディ20の中央に配置されたピストン90(第1ピストン)を含み、プランジャ80を軸線方向に駆動する。ピストン90は、上方に向けて小径化される段付円筒状をなし、第2ボディ28を同軸状に貫通する。ピストン90の上端部には、円筒状のばね受け部材92が同軸状に固定されている。ピストン90の下部がガイド孔53に摺動可能に支持され、ばね受け部材92がガイド孔55に摺動可能に支持されることにより、ピストン90はボディ20に対して軸線方向に相対変位可能である。ピストン90の下端部が小径化され、第3ボディ29に挿通されている。
【0031】
ピストン90の下部外周面にシールリング94が嵌着され、ピストン90と第2ボディ28との間隙を介した流体の流れが規制されている。また、ピストン90の下端部と第3ボディ29の上端部との間にシールリング66が介装され、ピストン90と第3ボディ29との間隙を介した流体の流れが規制されている。
【0032】
ピストン90とばね受け部56との間には、ピストン90を下方に付勢するスプリング96が介装されている。ばね受け部材92とワーク支持部10との間にはスプリング98が介装されている。ピストン90は、後述のエア圧を調整することにより軸線方向に変位可能であるが、その下部が第2ボディ28の上底部に係止されることによりその上方への変位が規制される。また、ピストン90の下部が第3ボディ29の上端面に係止されることにより、その下方への変位が規制される。ピストン90の下端開口部には、軸受部材93が圧入されている。軸受部材93は、作動ロッド21を摺動可能に挿通する。作動ロッド21は、ピストン90を軸線方向に貫通する。
【0033】
ストッパ機構24は、プランジャ80に外挿されるスリーブ100と、スリーブ100の周囲に配設されるピストン102(第2ピストン)と、スリーブ100の外周面とピストン102の内周面との間に配置される複数のボール104を含む。スリーブ100は、縮径側に弾性変形可能な円筒状の弾性体であり、外力が作用しない状態ではプランジャ80との間に所定のクリアランスが形成される。スリーブ100の外周面は、下方に向けて外径が少しずつ大きくなるテーパ面とされている。
【0034】
ピストン102は、段付円筒形状をなし、第1ボディ26の内周面に沿って軸線方向に変位可能である。ピストン102の外周面は、テーパ面40と対向するテーパ面106を含み、第1ボディ26の内周面と概ね相補形状を有する。ピストン102の内周面は、軸線と平行となるように形成され、スリーブ100の外周面との間に多数のボール104を介在させる。これらのボール104は同一形状を有するステンレス鋼球であり、軸線方向に配列されている。
【0035】
上述のようにスリーブ100の外周面がテーパ面であるため、スリーブ100とピストン102との径方向の間隔は下方に向かうほど小さくなっている。スリーブ100の上端部には、ボール104の上方への抜け落ちを防止するためのフランジ部108が設けられている。一方、ピストン102の下端開口部には、ボール104の下方への抜け落ちを防止するための係止部材110が設けられている。
【0036】
ピストン102は、その上端部が第1ボディ26のガイド部34に摺動可能に支持され、下端部が第2ボディ28の上部外周面に摺動可能に支持されている。それにより、ピストン102は軸線方向に安定に変位できる。ピストン102の上端部内周面とガイド部34との間にはシールリング112が介装され、ピストン102の下端部内周面と第2ボディ28の上部外周面との間にはシールリング52が介装される。それにより、ピストン102の外部から内方への流体の侵入が防止されている。
【0037】
第2ボディ28の上面とピストン102の下面との間には、ピストン102を上方に付勢するスプリング114が介装されている。詳細については後述するが、入口ポート64からエアが導入されると、そのエアが連通路62、圧力室60および連通路50を介してピストン102と第1ボディ26との間隙に導かれ、ピストン102の上面にエア圧を作用させる。それによりピストン102が下方に押し下げられると、ボール104もこれに追従して下方に移動する。
【0038】
その結果、ボール104がスリーブ100を径方向内向きに押圧する作用が発生し、スリーブ100が縮径してプランジャ80の外周面に密着する。この密着力が摩擦抵抗となってプランジャ80を拘束し、ワーク支持部10の変位を停止させる。
【0039】
次に、ワーク支持装置4における異物排出構造について説明する。
既に述べたように、ワーク支持装置4は工作機械の加工室に配置される。その加工室内では、加工中における工具およびワークの除熱のためにクーラント(切削油)が噴射されるため、ワーク支持装置4の内部、特にセンサ16による検出部分がそのクーラントによって汚染されないようにしなければならない。そこで、ワーク支持装置4は、エアブローによりボディ20の内部に侵入した異物を外部に排出するための構造を有する。
【0040】
図3は、異物排出構造およびその動作を表す図である。図中の白抜矢印は、エアの流れを示す。
本実施形態では、図示しないエア供給源からのエアが入口ポート49を介してボディ20内に導入される。このエアは、連通路48を介してボディ20の内部空間(ピストン102と第2ボディ28とに囲まれる空間S1)に導かれる。このエアの一部は、ボール104が配列された空間、又はプランジャ80とスリーブ100との間隙を通って上方に導かれ、ガイド孔30を通って外部に排出される。このとき、ボディ20の上端部に位置するシールリング38は、そのリップ部が押し上げられるようにして流路を開放する。
【0041】
また、空間S1に導入されたエアの一部は、ガイド部54とプランジャ80との間を通ってプランジャ80の内部空間に導かれる。このエアは、ワーク支持部10の直下の空間S2に導かれた後、再び空間S1に向けて下方に折り返し、ボール104が配列された空間、又はプランジャ80とスリーブ100との間隙を通って上方に導かれ、ガイド孔30を通って外部に排出される。
【0042】
このような構成により、仮にワーク支持部10とプランジャ80との間隙を介してクーラントが侵入したとしても、プランジャ80の内部空間に留めることなく、外部への排出を促すことができる。すなわち、プランジャ80の内部空間に溜まったクーラントが作動ロッド21を伝ってスケール14に到ることを防止できる。その結果、センサ16による検出部分がそのクーラントによって汚染されることを防止できる。
【0043】
次に、ワーク支持装置4の動作について説明する。
図4は、ワーク支持装置4の動作の例を表す図である。図4(A)はワーク支持部10の動作過程を示し、図4(B)はワーク支持部10の動作停止状態(ロック状態)を示す。各図において、白抜矢印は作動流体であるエアの流れを示し、黒矢印はエア圧の作用を示す。
【0044】
図4(A)に示すように、ワーク支持装置4の作動に際し、図示しないエア供給源からのエアが入口ポート64を介してボディ20内に導入される。このエア供給源は、上記異物排出構造のエア供給源と共用であってもよい。このエアは、連通路62を介して圧力室60に導入され、エア圧がピストン90の下面に作用する。それによりピストン90がスプリング96の付勢力に抗して上方に押し上げられ、その駆動力がばね受け部材92およびスプリング98を介してワーク支持部10に伝達される。その結果、ワーク支持部10およびプランジャ80が上方のワークW(図示せず)に向けて一体的に変位する。
【0045】
一方、図4(B)にも示すように、圧力室60に導入されたエアは、さらにピストン102の外側を回り込みながら第2ボディ28の上底部(凹状嵌合部32)に導かれる。このとき、上述のようにシールリング112によるシールが実現されているため、エアの行き場がなくなるため、凹状嵌合部32が昇圧され、そのエア圧がピストン102の上面に下方に向けて作用する。
【0046】
その結果、ピストン102がスプリング114の付勢力に抗して下方に押し下げられ、ボール104もこれに追従して下方に移動する。その結果、スリーブ100が半径方向内向きに押圧されて縮径し、プランジャ80の作動をロックする。すなわち、ワーク支持装置4が安定した状態で停止される。なお、本実施形態では、この作動用のエアについて流路の切替機構はなく、エア流路の長さの差によりエア圧が到達する時間差により、ピストン90の上昇とピストン102の下降とが順次行われることとなる。
【0047】
このようなワーク支持部10の動作過程において、ワーク支持部10とともに作動ロッド21ひいてはスケール14が変位する。センサ16は、この変位を検出する。なお、図4(B)には図示を省略するが、このワーク支持部10の動作過程においても異物排出構造は機能する。つまり、入口ポート64と入口ポート49の双方にエアが供給される。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態のワーク支持装置4は、ワーク支持部10とは反対側がテーブル2の取付孔8に埋め込まれる構成を前提とし、センサ部(スケール14およびセンサ16)が取付孔8の内方に収容される。つまり、ボディ20がテーブル2に取り付けられた際にセンサ16が取付孔8の内方に位置する。このため、センサ部が加工室の雰囲気(クーラントなど)に汚染され難く、結果的にワーク支持部10の位置又は変位を精度良く検出できる。
【0049】
一方、センサハウジング72をボディ20の外側に組み付ける、つまりセンサ16がボディ20におけるワーク支持部10とは反対側に露出する構成としたため、センサ16からの信号線Lの引き回しが容易となる。また、センサハウジング72をボディ20に対して着脱可能(つまりセンサ16を取り外し可能)に構成したため、センサ部のみ取り出してメンテナンスあるいは交換することも容易となる。
【0050】
さらに、エアブローによりプランジャ80の内部空間を清掃できるようにしたため、仮にクーラント等が侵入したとしてもこれを排出できる。このため、プランジャ80の内部構造を伝ってクーラント等がセンサ部に及ぶことを防止又は抑制できる。このこともワーク支持部10の高精度な位置検出の維持につながる。
【0051】
[変形例]
上記実施形態では、センサ16がボディ20から露出する構成を例示した。変形例においては、スケール14をボディ20の内部に設け、そのスケール14と対向する位置にセンサ16を設けてもよい。
【0052】
上記実施形態では、ワーク支持装置4の駆動機構としてエア圧を用いて作動する構成を例示した。変形例においては、これに代えて油圧を用いて作動する駆動機構を採用してもよい。油圧駆動源を別途設けてもよい。
【0053】
上記実施形態では、「取付対象」として工作機械のテーブルを例示した。変形例においては、取付孔を有するワーク保持装置その他の構造物を「取付対象」としてもよい。
【0054】
上記実施形態では、工作機械としてマシニングセンタを例示したが、上記ワーク支持装置を、マシニングセンタとターニングセンタの機能を併せ持つ複合加工機、材料をレーザで溶かしながら積層加工する付加加工機その他の工作機械にも適用できる。また、上記ワーク支持装置を、圧入機、組み付け機その他の産業機械に適用してもよい。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 ワーク支持システム、2 テーブル、4 ワーク支持装置、8 取付孔、10 ワーク支持部、12 支持面、14 スケール、16 センサ、20 ボディ、21 作動ロッド、22 駆動機構、24 ストッパ機構、30 ガイド孔、34 ガイド部、38 シールリング、48 連通路、49 入口ポート、50 連通路、54 ガイド部、55 ガイド孔、60 圧力室、62 連通路、64 入口ポート、80 プランジャ、90 ピストン、96 スプリング、98 スプリング、100 スリーブ、102 ピストン、104 ボール、114 スプリング、L 信号線、S1 空間、S2 空間、W ワーク。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに当接可能な支持面を有するワーク支持部と、
前記ワーク支持部が一体に設けられたプランジャと、
一端側に前記支持面を露出させつつ前記プランジャを相対変位可能に支持し、他端側が取付対象の取付孔に挿入されて取り付けられるボディと、
前記プランジャを軸線方向に駆動する駆動機構と、
前記ワーク支持部の変位に対応して変位可能に設けられたスケールと、
前記ボディに対して固定され、前記スケールの変位を検出するセンサと、
前記ボディ内で前記プランジャの軸線に沿って延び、一端部に前記ワーク支持部が固定され、他端部に前記スケールが設けられ、前記プランジャと一体に作動する作動ロッドと、
を備える、ワーク支持装置。
【請求項2】
前記センサは、前記ボディにおける前記ワーク支持部とは反対側に露出する、請求項1に記載のワーク支持装置。
【請求項3】
前記センサは、前記ボディが前記取付対象に取り付けられた際に前記取付孔の内方に位置する、請求項1又は2に記載のワーク支持装置。