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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183001
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/34 20060101AFI20231220BHJP
   F16F 9/24 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096343
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】品田 亮
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069CC13
3J069EE02
3J069EE24
3J069EE36
(57)【要約】
【課題】車両の挙動が不安定になることを抑制することができる緩衝器を提供する。
【解決手段】ピストン18の移動によりシリンダ内の一方の室から作動流体が流れ出す第1通路43および第2通路175と、第1通路43に設けられて減衰力を発生させ、動作するときにゴムの圧縮力が作用する第1減衰力発生機構161と、第2通路175の途中に設けられた圧力室170,280と、圧力室170,280をシリンダ内の他方の室20に連通させる通路口177に設けられた第2減衰力発生機構176と、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176の上流側に、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176よりもピストン速度が低い領域で開弁する第3減衰力発生機構181を設ける。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されたシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、
前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、
前記ピストンの移動により前記シリンダ内の一方の室から作動流体が流れ出す第1通路および第2通路と、
前記第1通路に設けられて減衰力を発生させ、動作するときにゴムの圧縮力が作用する第1減衰力発生機構と、
前記第2通路の途中に設けられた圧力室と、
前記圧力室を前記シリンダ内の他方の室に連通させる通路口に設けられた第2減衰力発生機構と、
前記第1減衰力発生機構および第2減衰力発生機構の上流側に、前記第1減衰力発生機構および第2減衰力発生機構よりもピストン速度が低い領域で開弁する第3減衰力発生機構を設ける緩衝器。
【請求項2】
前記圧力室内に移動可能に設けられて前記第2通路を2つの領域に画成し、動作するときにゴムの圧縮力が作用する画成部材を設ける請求項1に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器には、ピストンの移動により一方の室から他方の室に向けて作動流体が流れる並列の流路のそれぞれに減衰力発生機構を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-137167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の挙動が不安定になることを緩衝器によって抑制することが望まれている。
【0005】
したがって、本発明は、車両の挙動が不安定になることを抑制することができる緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る一態様は、作動流体が封入されたシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記シリンダ内の一方の室から作動流体が流れ出す第1通路および第2通路と、前記第1通路に設けられて減衰力を発生させ、動作するときにゴムの圧縮力が作用する第1減衰力発生機構と、前記第2通路の途中に設けられた圧力室と、前記圧力室を前記シリンダ内の他方の室に連通させる通路口に設けられた第2減衰力発生機構と、前記第1減衰力発生機構および第2減衰力発生機構の上流側に、前記第1減衰力発生機構および第2減衰力発生機構よりもピストン速度が低い領域で開弁する第3減衰力発生機構を設ける、構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の挙動が不安定になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示す断面図である。
図2】本発明に係る第1実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
図3】本発明に係る第1実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
図4】本発明に係る第1実施形態の緩衝器の弁座部材を示す斜視図である。
図5】本発明に係る第2実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
図6】緩衝器の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
第1実施形態の緩衝器(Shock absorber)について、図1図4を参照しつつ以下に説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、図1図2図5図6における上側を「上」とし、図1図2図5図6における下側を「下」として説明する。
【0010】
図1に示すように、第1実施形態の緩衝器1は複筒型の油圧緩衝器である。緩衝器1は、車両、具体的には自動車のサスペンション装置に用いられるものである。緩衝器1は、シリンダ2を備えている。シリンダ2は内筒3と外筒4とを有している。内筒3は円筒状である。外筒4は有底の円筒状である。外筒4の内径は内筒3の外径よりも大径である。内筒3は外筒4の径方向内側に配置されている。内筒3の中心軸線と外筒4の中心軸線とは一致する。内筒3と外筒4との間はリザーバ室6となっている。
【0011】
外筒4は胴部11と底部12とを有している。胴部11と底部12とは継ぎ目なく一体に形成されている。胴部11は円筒状である。底部12は胴部11の下部を閉塞している。
【0012】
緩衝器1はピストン18を備えている。ピストン18は、シリンダ2の内筒3内に挿入されている。ピストン18は、シリンダ2の内筒3内に摺動可能に嵌装されている。ピストン18は、内筒3内を一側のシリンダ室19と他側のシリンダ室20との2つの室に区画する。シリンダ2の軸方向においてシリンダ室19はピストン18よりも底部12とは反対側にある。シリンダ2の軸方向においてシリンダ室20はピストン18よりも底部12側にある。シリンダ2には、内筒3内のシリンダ室19およびシリンダ室20内に作動流体としての油液Lが封入されている。シリンダ2には、内筒3と外筒4との間のリザーバ室6内に作動流体としての油液LとガスGとが封入されている。
【0013】
緩衝器1はピストンロッド21を備えている。ピストンロッド21は、その軸方向における一端側が、シリンダ2の内筒3内に配置されてピストン18に連結されている。ピストンロッド21は、その軸方向における他端側がシリンダ2からシリンダ2の外部に延出されている。
【0014】
ピストン18はピストンロッド21に固定されている。このため、ピストン18およびピストンロッド21は一体に移動する。緩衝器1は、ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を増やす方向に移動する行程が、全長が伸びる伸び行程である。緩衝器1は、ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を減らす方向に移動する行程が、全長が縮む縮み行程である。緩衝器1は、伸び行程においてピストン18がシリンダ室19側へ移動する。緩衝器1は、縮み行程においてピストン18がシリンダ室20側へ移動する。
【0015】
内筒3の上端開口側および外筒4の上端開口側には、ロッドガイド22が嵌合されている。外筒4にはロッドガイド22よりも上側にシール部材23が嵌合されている。ロッドガイド22およびシール部材23は、いずれも円環状である。ピストンロッド21は、ロッドガイド22およびシール部材23のそれぞれの径方向内側に挿通されている。ピストンロッド21は、ロッドガイド22およびシール部材23のそれぞれに対して、これらの軸方向に沿って摺動する。ピストンロッド21は、シリンダ2の内部から、シール部材23よりもシリンダ2の外部側に延出している。
【0016】
ロッドガイド22は、ピストンロッド21がシリンダ2の内筒3および外筒4に対して径方向に移動することを規制する。ロッドガイド22にピストンロッド21が嵌合すると共にピストン18が内筒3内に嵌合する。これにより、ピストンロッド21の中心軸線とシリンダ2の中心軸線とが一致する。ロッドガイド22はピストンロッド21をピストンロッド21の軸方向に移動可能に支持する。シール部材23は、その外周部が外筒4に密着する。シール部材23は、その内周部がピストンロッド21の外周部に密着する。ピストンロッド21は、シール部材23に対してシール部材23の軸方向に移動する。シール部材23は、内筒3内の油液Lと、リザーバ室6内の高圧のガスGおよび油液Lとが外部に漏れ出すのを抑制する。
【0017】
ロッドガイド22は、その外周部が、下部よりも上部の方が大径となっている。ロッドガイド22は、小径の下部において内筒3の上端の内周部に嵌合する。ロッドガイド22は、大径の上部において外筒4の上部の内周部に嵌合する。外筒4の底部12上には、ベースバルブ25のベース部材26が設置されている。ベース部材26は外筒4に対して径方向に位置決めされている。ベース部材26は、その外周部が、下部よりも上部の方が小径となっている。ベース部材26は、小径の上部において内筒3の下端の内周部に嵌合する。ベース部材26は、シリンダ室20とリザーバ室6とを仕切っている。
外筒4の上端部は、外筒4の径方向における内側に加締められている。シール部材23は、この加締め部分とロッドガイド22とに挟まれることでシリンダ2に固定されている。
【0018】
ピストンロッド21は主軸部27と取付軸部28とを有している。主軸部27および取付軸部28は、いずれも棒状である。
取付軸部28は、その外径が主軸部27の外径よりも小径である。取付軸部28はシリンダ2内に配置されている。取付軸部28にピストン18が取り付けられている。主軸部27は、軸段部29を有している。軸段部29は、主軸部27の軸方向における取付軸部28側の端部に設けられている。軸段部29は、ピストンロッド21の中心軸線に対して直交する方向に広がっている。
【0019】
ピストンロッド21には、取付軸部28の外周部に溝部30が形成されている。溝部30は、取付軸部28の軸方向に延びている。溝部30は、取付軸部28の外周部を取付軸部28の中心軸線に平行な平面状に切り欠いて形成されている。溝部30は、取付軸部28の周方向に等間隔をあけて二カ所形成されている。取付軸部28には、取付軸部28の軸方向における溝部30よりも主軸部27とは反対側の端部の外周部にネジ部31が形成されている。
【0020】
緩衝器1は、ピストンロッド21のシリンダ2から突出する部分が上部に配置されて車両の車体に連結される。それと共に、緩衝器1は、外筒4の胴部11に固定された取付ブラケット32が下部に配置されて車両の車輪側に連結される。緩衝器1は、単筒式とした場合、これとは逆に、シリンダ2側が車体に連結され、ピストンロッド21が車輪側に連結されるようにすることも可能である。
【0021】
図2に示すように、ピストン18は、ピストン本体35と摺動部材36とを有している。ピストン本体35は、金属製であり、円環状である。摺動部材36は合成樹脂製であり、円環の帯状である。摺動部材36は、ピストン本体35の外周面に一体的に装着されている。ピストン18は、ピストン本体35が、ピストンロッド21の取付軸部28に嵌合される。ピストン18は、摺動部材36が内筒3に接触した状態で内筒3に対して摺動する。
【0022】
ピストン本体35には、通路穴37と通路溝38と通路穴39と通路溝40とが設けられている。通路穴37はピストン本体35の軸方向に延びている。通路穴37は、ピストン本体35に、ピストン本体35の円周方向に間隔をあけて複数形成されている。通路穴39はピストン本体35の軸方向に延びている。通路穴39は、ピストン本体35に、ピストン本体35の円周方向に間隔をあけて複数形成されている。ピストン本体35には、ピストン本体35の周方向において通路穴37と通路穴39とが一箇所ずつ交互に等ピッチで形成されている。
【0023】
通路溝38は、ピストン本体35に、ピストン本体35の円周方向に円環状をなして形成されている。通路溝38は、ピストン本体35の軸方向におけるシリンダ室20側の端部に形成されている。全ての通路穴37は、ピストン本体35の軸方向における、この端部側が通路溝38に開口している。通路溝40は、ピストン本体35に、ピストン本体35の円周方向に円環状をなして形成されている。通路溝40は、ピストン本体35の軸方向におけるシリンダ室19側の端部に形成されている。全ての通路穴39は、ピストン本体35の軸方向における通路溝38とは反対側の端部が通路溝40に開口している。
【0024】
ピストン18は、複数の通路穴37の内側と通路溝38の内側とが第1通路43となっている。第1通路43は、ピストン18をピストン18の軸方向に貫通している。ピストン18は、複数の通路穴39の内側と通路溝40の内側とが第1通路44となっている。第1通路44は、ピストン18をピストン18の軸方向に貫通している。第1通路43および第1通路44は、いずれもピストン18に設けられている。
【0025】
ピストン本体35の軸方向のシリンダ室20側の端部には、内側シート部46と外側シート部48とが形成されている。内側シート部46および外側シート部48は、いずれも円環状である。内側シート部46は、通路溝38のピストン本体35の径方向における内側に配置されている。外側シート部48は、通路溝38のピストン本体35の径方向における外側に配置されている。
【0026】
ピストン本体35の軸方向のシリンダ室19側の端部には、内側シート部47とバルブシート部49とが形成されている。内側シート部47およびバルブシート部49は、いずれも円環状である。内側シート部47は、通路溝40よりもピストン本体35の径方向における内側に配置されている。バルブシート部49は、通路溝40よりもピストン本体35の径方向における外側に配置されている。バルブシート部49は、第1通路44の外周側に設けられている。
【0027】
ピストン本体35には、ピストン本体35の径方向における外側シート部48の通路溝38とは反対側に、全ての通路穴39のシリンダ室20側の開口が配置されている。ピストン本体35には、ピストン本体35の径方向におけるバルブシート部49の通路溝40とは反対側に、全ての通路穴37のシリンダ室19側の開口が配置されている。
【0028】
図3に示すように、ピストン18の軸方向における内側シート部46側には、ピストン18の軸方向においてピストン18側から順に、複数枚(具体的には4枚)のディスク51と、一枚のディスクバルブ52と、一つの弁座部材53と、一枚のディスクバルブ54と、複数枚(具体的には4枚)のディスク55と、一枚のバルブディスク56と、一枚のバルブディスク57と、一枚のパイロットバルブ70と、一枚のディスク71と、一つのパイロットケース72と、一枚のディスク73と、複数枚(具体的には11枚)のディスク74と、一枚のディスク75と、一枚のディスク76とが設けられている。ここで示したディスク枚数は一実施形態であって、所望の減衰力特性に応じて適宜調整可能である。
【0029】
ディスク51,55,71,73~76、ディスクバルブ52,54、弁座部材53、バルブディスク56,57およびパイロットケース72は、いずれも金属製である。ディスク51,55,71,73~76、ディスクバルブ52,54およびバルブディスク56,57は、いずれも一定厚さの有孔の円形平板状である。弁座部材53、パイロットバルブ70およびパイロットケース72は、いずれも円環状である。ディスク51,55,71,73~76、ディスクバルブ52,54、弁座部材53、バルブディスク56,57、パイロットバルブ70およびパイロットケース72は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させている。
【0030】
ディスク51は、その外径がピストン18の内側シート部46の外径と同等の外径となっている。
ディスクバルブ52は、その外径がディスク51の外径よりも大径となっている。
【0031】
弁座部材53は、軸方向のピストン18とは反対側の端部に、内側シート部82とバルブシート部83と外側シート部84とを有している。図4に示すように、内側シート部82は、弁座部材53の内周縁部に円環状に形成されている。バルブシート部83は、この内側シート部82から径方向外方に放射状に広がっている。外側シート部84は、弁座部材53の外周縁部に円環状に形成されている。
【0032】
弁座部材53は、図3に示すように、軸方向のピストン18側の端部に、内側シート部86とバルブシート部87と外側シート部88とを有している。内側シート部86は、弁座部材53の内周縁部に円環状に形成されている。バルブシート部87は、この内側シート部86から径方向外方に放射状に広がっている。外側シート部88は、弁座部材53の外周縁部に円環状に形成されている。
【0033】
弁座部材53は、その軸方向の内側シート部82、バルブシート部83および外側シート部84と、内側シート部86、バルブシート部87および外側シート部88との間が、本体部90となっている。本体部90は有孔円板状である。
【0034】
内側シート部82は、本体部90の軸方向におけるピストン18とは反対側の端部の内周縁部から、本体部90の軸方向に沿ってピストン18とは反対側に突出している。バルブシート部83は、内側シート部82の径方向外側で本体部90の軸方向に沿って本体部90から内側シート部82と同側に突出している。内側シート部82は、突出側の先端面、すなわち本体部90とは反対側の先端面が平坦面である。バルブシート部83は、突出側の先端面、すなわち本体部90とは反対側の先端面が平坦面である。内側シート部82の突出側の先端面およびバルブシート部83の突出側の先端面は、弁座部材53の軸直交方向に広がって同一平面に配置されている。
【0035】
外側シート部84は、本体部90の軸方向におけるピストン18とは反対側の端部の外周縁部から、本体部90の軸方向に沿ってピストン18とは反対側に突出している。外側シート部84は、本体部90からの突出量が内側シート部82およびバルブシート部83よりも大きくなっている。
【0036】
内側シート部86は、本体部90の軸方向におけるピストン18側の端部の内周縁部から、本体部90の軸方向に沿ってピストン18側に突出している。バルブシート部87は、内側シート部86の径方向外側で本体部90の軸方向に沿って本体部90から内側シート部86と同側に突出している。内側シート部86は、突出側の先端面、すなわち本体部90とは反対側の先端面が平坦面である。バルブシート部87は、突出側の先端面、すなわち本体部90とは反対側の先端面が平坦面である。内側シート部86の突出側の先端面およびバルブシート部87の突出側の先端面は、弁座部材53の軸直交方向に広がって同一平面に配置されている。
【0037】
外側シート部88は、本体部90の軸方向におけるピストン18側の端部の外周縁部から、本体部90の軸方向に沿ってピストン18側に突出している。外側シート部88は、本体部90からの突出量が内側シート部86およびバルブシート部87よりも大きくなっている。
【0038】
バルブシート部83は、図4に示すように、円形ではない花びら型の異形シートである。バルブシート部83は、複数、具体的には5箇所のバルブシート構成部91を有している。これらのバルブシート構成部91は、同形状であり、弁座部材53の周方向に等間隔で配置されている。内側シート部82は、弁座部材53の中心軸線を中心とする円環状をなしている。複数のバルブシート構成部101は、内側シート部82から放射状に延出している。なお、本実施の形態では、バルブシート構成部91を5箇所として説明したが、5箇所よりも多い、または少ない数にしてもよい。また、バルブシート構成部91は同形状であったが、形状を異ならせてもよいし、また不等間隔に配置してもよい。
【0039】
各バルブシート構成部91の内側には、内側シート部82との間に通路凹部92が形成されている。通路凹部92は、内側シート部82の一部とバルブシート構成部91とで囲まれて形成されている。通路凹部92は、内側シート部82の突出側の先端面とバルブシート構成部91の突出側の先端面とから弁座部材53の軸方向に沿って凹んでいる。通路凹部92の底面は本体部90によって形成されている。すべてのバルブシート構成部91の内側に通路凹部92が形成されている。
【0040】
弁座部材53の周方向における通路凹部92の中央位置には通路孔93が形成されている。通路孔93は本体部90を軸方向に貫通することで弁座部材53を軸方向に貫通している。通路孔93は、弁座部材53の中心軸線に平行な直線状の孔である。すべての通路凹部92の底面に通路孔93が形成されている。
【0041】
弁座部材53は、内側シート部82に通路溝96を有している。通路溝96は、内側シート部82の軸方向における本体部90とは反対側の先端面から弁座部材53の軸方向に沿って凹んでいる。通路溝96は、内側シート部82を内側シート部82の径方向に横断している。通路溝96内の通路は、弁座部材53の径方向に延びており、弁座部材53の周方向において隣り合うバルブシート構成部91とバルブシート構成部91との間に開口している。
【0042】
図3に示すバルブシート部87も、円形ではない花びら型の異形シートである。バルブシート部87は、複数、具体的には5箇所のバルブシート構成部101を有している。これらのバルブシート構成部101は、同形状であり、弁座部材53の周方向に等間隔で配置されている。内側シート部86は、弁座部材53の中心軸線を中心とする円環状をなしている。複数のバルブシート構成部101は、内側シート部86から放射状に延出している。バルブシート構成部101は、バルブシート構成部91と同形状となっている。なお、本実施の形態では、バルブシート構成部91を5箇所として説明したが、5箇所よりも多い、または少ない数にしてもよい。また、バルブシート構成部91は同形状であったが、形状を異ならせてもよいし、また不等間隔に配置してもよい。
【0043】
各バルブシート構成部101の内側には、内側シート部86との間に通路凹部102が形成されている。通路凹部102は、内側シート部86の一部とバルブシート構成部101とで囲まれて形成されている。通路凹部102は、内側シート部86の突出側の先端面とバルブシート構成部101の突出側の先端面とから弁座部材53の軸方向に沿って凹んでいる。通路凹部102の底面は本体部90によって形成されている。すべてのバルブシート構成部101の内側に通路凹部102が形成されている。
【0044】
弁座部材53の周方向における通路凹部102の中央位置には通路孔103が形成されている。通路孔103は本体部90を軸方向に貫通することで弁座部材53を軸方向に貫通している。通路孔103は、弁座部材53の中心軸線に平行な直線状の孔である。すべての通路凹部102の底面に通路孔103が形成されている。
【0045】
ここで、複数のバルブシート構成部91の弁座部材53の周方向における配置ピッチと、複数のバルブシート構成部101の弁座部材53の周方向における配置ピッチとは同じである。そして、バルブシート構成部91およびバルブシート構成部101は、弁座部材53の周方向において、互いに配置ピッチの半分ずれている。そして、通路孔93は、弁座部材53の周方向に隣り合うバルブシート構成部101とバルブシート構成部101との間に配置されている。よって、通路孔93は、バルブシート部87の範囲の外側に配置されている。通路孔103は、図4に示すように、弁座部材53の周方向に隣り合うバルブシート構成部91とバルブシート構成部91との間に配置されている。よって、通路孔103は、バルブシート部83の範囲の外側に配置されている。
【0046】
図3に示すように、外側シート部88は全周にわたってピストン18の外側シート部48に当接する。
ディスク51は、その外径が、内側シート部86の外径と同等の外径となっている。
ディスクバルブ52は、その外径が、ディスク51の外径よりも大径であり、バルブシート部87の外径よりも大径であって、外側シート部88の内径よりも小径となっている。ディスクバルブ52は、複数の通路孔103内および通路凹部102内の通路を開閉する。
【0047】
ディスクバルブ54は、その外径が、バルブシート部83の外径よりも大径であって外側シート部84の内径よりも小径となっている。ディスクバルブ54は、複数の通路孔93内および通路凹部92内の通路を開閉する。
ディスク55は、その外径が、ディスクバルブ54の外径よりも小径となっており、内側シート部82の外径と同等の外径となっている。
【0048】
パイロットケース72は有底筒状である。パイロットケース72は、底部131と、内側円筒状部132と、外側円筒状部133と、内側シート部134と、バルブシート部135とを有している。
底部131には、底部131を底部131の軸方向に貫通する通路穴138が形成されている。通路穴138は、底部131の周方向に等間隔で複数設けられている。
【0049】
内側円筒状部132は、円筒状であり、底部131の内周縁部から底部131の軸方向に沿ってピストン18側に突出している。
外側円筒状部133は、円筒状であり、底部131の外周縁部から底部131の軸方向に沿って内側円筒状部132と同側に突出している。
通路穴138は、底部131の径方向における内側円筒状部132と外側円筒状部133との間に配置されている。
【0050】
内側シート部134は、円環状であり、底部131の内周縁部から軸方向の内側円筒状部132とは反対側に若干突出している。内側シート部134には、内側シート部134をその径方向に貫通する通路溝139が形成されている。
バルブシート部135は、内側シート部134よりも大径の円環状である。バルブシート部135は、内側シート部134よりも内側シート部134の径方向における外側で底部131の軸方向に沿って底部131から内側シート部134と同側に突出している。バルブシート部135は、パイロットケース72の軸方向における底部131とは反対側の端部の高さ位置が、内側シート部134の底部131とは反対側の端部の高さ位置よりも若干高くなっている。
【0051】
通路穴138は、底部131の径方向における内側シート部134とバルブシート部135との間に配置されている。内側シート部134の通路溝139内の通路は、ピストンロッド21の溝部30内の通路と通路穴138内の通路とに常時連通している。
【0052】
バルブディスク56の外径は、弁座部材53の外側シート部84の外径よりも大径である。バルブディスク56は、外周側が、弁座部材53の外側シート部84に当接している。バルブディスク56は、弁座部材53の外側シート部84から離間可能である。
バルブディスク57の外径は、バルブディスク56の外径と同等である。
【0053】
上記した第1通路43は、伸び行程において図2に示すシリンダ室19からシリンダ室20に向けて油液Lが流れる流路である。第1通路43は、ピストン18の複数の通路穴37内および通路溝38内の通路に加えて、図3に示すように、弁座部材53およびピストン18の間の室141と、弁座部材53の複数の通路孔93内および通路凹部92内の通路と、開弁時のディスクバルブ54およびバルブシート部83の間の通路と、バルブディスク56,57および弁座部材53の間の室142と、開弁時のバルブディスク56,57と外側シート部84との間の通路とを含んでいる。
【0054】
バルブディスク56は、外側シート部84に対し離間および当接することで第1通路43を開閉する。バルブディスク56には、外周側に切り欠き状の固定オリフィス143が形成されている。固定オリフィス143は、外側シート部84を、外側シート部84の径方向に横断するように形成されている。固定オリフィス143は、バルブディスク56が外側シート部84に当接した状態にあっても、外側シート部84の径方向の内外を連通させる。固定オリフィス143は第1通路43を構成している。
【0055】
固定オリフィス143と、室142と、複数の通路孔103内および通路凹部102内の通路と、開弁時のディスクバルブ52およびバルブシート部87の間の通路と、室141と、通路溝38内の通路と、複数の通路穴37内の通路とは、縮み行程においてシリンダ室20から図2に示すシリンダ室19に向けて油液Lが流れる縮側通路144を構成している。
【0056】
図3に示すように、パイロットバルブ70は、パイロットディスク145とシール部材146とからなっている。
パイロットディスク145は、金属製であり、有孔の円形平板状である。パイロットディスク145は、内側にピストンロッド21の取付軸部28が嵌合される。パイロットディスク145の外径は、バルブディスク57の外径よりも大径である。
【0057】
シール部材146は、ゴム製であり、パイロットディスク145の軸方向におけるバルブディスク57とは反対側に接着されている。シール部材146は、パイロットディスク145の外周側に固着されており、円環状をなしている。シール部材146は、パイロットケース72の外側円筒状部133の内周部に全周にわたり液密的に嵌合している。シール部材146は、外側円筒状部133の内周部に対し軸方向に摺動可能である。シール部材146は、パイロットバルブ70と外側円筒状部133との隙間を常時シールしつつ軸方向に移動可能である。
【0058】
バルブディスク56と、バルブディスク57と、パイロットバルブ70とが、減衰バルブ151を構成している。減衰バルブ151と弁座部材53との間は、第1通路43の室142となっている。減衰バルブ151が、弁座部材53の外側シート部84から離座して開くと、第1通路43を開き、第1通路43から油液Lをシリンダ室20に流す。その際に、減衰バルブ151は、弁座部材53の外側シート部84との間の油液Lの流れを抑制する。
【0059】
ディスク71は、その外径が、ディスク55の外径と同等であり、パイロットケース72の内側円筒状部132の外径よりも若干小径となっている。
【0060】
減衰バルブ151と弁座部材53の外側シート部84とが、第1減衰力発生機構161を構成している。減衰バルブ151には、バルブディスク56に、弁座部材53の外側シート部84に当接状態にあっても第1通路43をシリンダ室20に連通させる固定オリフィス143が形成されている。固定オリフィス143は、第1通路43を構成しており、第1減衰力発生機構161を構成している。
【0061】
第1減衰力発生機構161は、第1通路43に設けられている。第1減衰力発生機構161は、第1通路43を開閉して減衰力を発生させる。第1通路43は、図2に示すように、シリンダ室19,20のうち、伸び行程でのピストン18の移動によって上流側となるシリンダ室19から下流側となるシリンダ室20に向けて油液Lが流れ出す通路である。第1減衰力発生機構161は、伸び行程において生じる第1通路43からシリンダ室20への油液Lの流動を抑制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構となっている。
【0062】
図3に示すように、ディスク73は、その外径が、パイロットケース72の内側シート部134の外径よりも大径であって、バルブシート部135の内径よりも小径である。
【0063】
複数枚のディスク74は、軸方向におけるディスク73側のディスク74がバルブシート部135に着座可能となっている。複数枚のディスク74はディスクバルブ165を構成している。ディスクバルブ165は、バルブシート部135に離着座可能である。ディスクバルブ165は、その軸方向においてバルブシート部135から離れるほど外径が小径となる。
【0064】
ディスク75は、その外径が、ディスクバルブ165の最小外径よりも小径である。
ディスク76は、その外径が、ディスク75の外径よりも大径である。
【0065】
パイロットケース72の底部131、内側円筒状部132および外側円筒状部133と、パイロットバルブ70およびディスク71との間と、パイロットケース72の底部131、内側シート部134およびバルブシート部135と、ディスク73およびディスクバルブ165との間と、パイロットケース72の通路穴138内とが、圧力室170を構成している。圧力室170は、パイロットバルブ70を介してバルブディスク56,57にピストン18の方向に圧力を加える。言い換えれば、圧力室170は、第1減衰力発生機構161の減衰バルブ151に、外側シート部84に着座する閉弁方向に内圧を作用させる。圧力室170は、パイロットケース72の通路溝139内の通路を介して、ピストンロッド21の溝部30内の通路に常時連通している。
【0066】
ディスクバルブ165は、バルブシート部135から離座することで、圧力室170とシリンダ室20とを連通させる。その際に、ディスクバルブ165は、バルブシート部135との間の油液Lの流れを抑制する。
【0067】
ピストン18の複数の通路穴37内および通路溝38内の通路と、室141と、弁座部材53の複数の通路孔93内および通路凹部92内の通路と、開弁時のディスクバルブ54およびバルブシート部83の間の通路と、室142と、弁座部材53の通路溝96内の通路と、ピストンロッド21の溝部30内の通路と、パイロットケース72の通路溝139内の通路と、圧力室170と、開弁時のディスクバルブ165およびバルブシート部135の間の通路とが、第2通路175を構成している。圧力室170は、第2通路175の途中に設けられている。
【0068】
ディスクバルブ165とバルブシート部135とが第2減衰力発生機構176を構成している。第2減衰力発生機構176は、第2通路175に設けられている。第2減衰力発生機構176は、ディスクバルブ165がバルブシート部135から離座すると、第2通路175を介して図2に示すシリンダ室19とシリンダ室20とを連通させる。その際に、第2減衰力発生機構176は、第2通路175の油液Lの流れを抑制して減衰力を発生する。言い換えれば、第2減衰力発生機構176は、伸び行程において、シリンダ室19から第2通路175を介してシリンダ室20に油液Lを流す際に油液Lの流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の減衰力発生機構となっている。第2通路175は、シリンダ室19,20のうち、伸び行程でのピストン18の移動によって上流側となるシリンダ室19から下流側となるシリンダ室20に向けて油液Lが流れ出す通路である。第2減衰力発生機構176には、圧力室170とシリンダ室20とを常時連通させる固定オリフィスは設けられていない。
【0069】
図3に示すように、ディスクバルブ165とバルブシート部135との間が圧力室170をシリンダ2内のシリンダ室20に連通させる通路口177である。この通路口177に第2減衰力発生機構176が設けられている。
【0070】
第2通路175は、ピストン18の複数の通路穴37内および通路溝38内の通路と、室141と、弁座部材53の複数の通路孔93内および通路凹部92内の通路と、開弁時のディスクバルブ54およびバルブシート部83の間の通路と、室142とが、第1通路43と共通している。
【0071】
第2通路175は、弁座部材53の通路溝96内の通路と、ピストンロッド21の溝部30内の通路と、パイロットケース72の通路溝139内の通路と、圧力室170と、開弁時のディスクバルブ165およびバルブシート部135の間の通路とが、第1通路43のうちの減衰バルブ151と外側シート部84との間の通路と並列に設けられている。
【0072】
伸び側の第1減衰力発生機構161は、第2通路175の圧力室170に導入された油液Lの圧力によって減衰バルブ151の開弁が制御される。第2通路175は、その圧力室170が、第1減衰力発生機構161の減衰バルブ151を閉弁方向に加圧する。
【0073】
第1通路43の途中に設けられたディスクバルブ54とバルブシート部83とが、第3減衰力発生機構181を構成している。第3減衰力発生機構181は、ディスクバルブ54がバルブシート部83から離座すると、第1通路43の室141から複数の通路孔93内および通路凹部92内の通路を介して室142へ油液Lを流す。その際に、第3減衰力発生機構181は、油液Lの流れを抑制して減衰力を発生する。第3減衰力発生機構181は、室142から複数の通路孔93内および通路凹部92内の通路を介する室141への油液Lの流れを規制する。第3減衰力発生機構181は、チェック弁である。第3減衰力発生機構181は、伸び行程において生じる油液Lの流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の減衰力発生機構となっている。
【0074】
第3減衰力発生機構181は、伸び行程の油液Lの流れ方向において、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176の上流側に設けられている。第3減衰力発生機構181は、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176よりも剛性が低く開弁圧が低い。よって、第3減衰力発生機構181は、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176よりもピストン18の移動速度(以下、ピストン速度と称す)が低い領域で開弁する。
【0075】
ディスクバルブ52とバルブシート部87とが、第3減衰力発生機構182を構成している。第3減衰力発生機構182は、ディスクバルブ52がバルブシート部87から離座すると、室142から複数の通路孔103内および通路凹部102内の通路を介して室141へ油液Lを流す。その際に、第3減衰力発生機構182は、油液Lの流れを抑制して減衰力を発生する。第3減衰力発生機構182は、室141から複数の通路孔103内および通路凹部102内の通路を介する室142への油液Lの流れを規制する。第3減衰力発生機構182は、チェック弁である。第3減衰力発生機構182は、縮側通路144に設けられており、縮み行程において生じる油液Lの流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の減衰力発生機構となっている。
【0076】
伸び側の第3減衰力発生機構181と縮み側の第3減衰力発生機構182とは、開弁圧を個別に設定することができる。すなわち、第3減衰力発生機構181は、ディスクバルブ54を適宜選択設定することによって開弁圧を設定することができ、これとは別に、第3減衰力発生機構182は、ディスクバルブ52を適宜選択設定することによって開弁圧を設定することができる。
【0077】
図2に示すように、ピストン18の軸方向における内側シート部47側には、ピストン18の軸方向においてピストン18側から順に、一枚のディスク191と、複数枚(具体的には9枚)のディスク192と、一枚のディスク193と、一枚のディスク194と、一枚の円環部材195とが設けられている。ディスク191~194および円環部材195は、いずれも金属製である。ディスク191~194および円環部材195は、いずれも一定厚さの有孔の円形平板状である。ディスク191~194および円環部材195は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させている。
【0078】
ディスク191は、ピストン18の内側シート部47の外径と同等の外径となっている。
複数枚のディスク192は、軸方向における最もピストン18側のディスク192が、ピストン18のバルブシート部49に当接している。複数枚のディスク192は、バルブシート部49に対し離間および当接することで、ピストン18に形成された第1通路44の開口を開閉する。
【0079】
複数枚のディスク192は、ディスクバルブ201を構成している。ディスクバルブ201は、バルブシート部49に離着座可能である。ディスクバルブ201は、軸方向においてピストン18から離れるほど外径が小径となる。ディスクバルブ201とピストン18のバルブシート部49との間は、第1通路44を構成している。ディスクバルブ201が、バルブシート部49から離座すると、第1通路44を開き、第1通路44をシリンダ室19に開放する。ディスクバルブ201は、ピストン18のバルブシート部49から離座して開くと、第1通路44からの油液Lをシリンダ室19に流す。その際に、ディスクバルブ201は、バルブシート部49との間の油液Lの流れを抑制する。よって、ディスクバルブ201は、シリンダ室20から第1通路44を介するシリンダ室19への油液Lの流れを抑制する。
【0080】
ディスクバルブ201と、バルブシート部49とが、第1減衰力発生機構202を構成している。第1減衰力発生機構202は、第1通路44に設けられている。第1減衰力発生機構202は、第1通路44を開閉して減衰力を発生させる。第1減衰力発生機構202は、ピストン18のシリンダ室19側に配置されて、ピストンロッド21に取り付けられている。これにより、第1通路44は、ピストン18のシリンダ室20側への移動によってシリンダ室20からシリンダ室19に向けて油液Lが移動する通路となる。つまり、第1通路44は、シリンダ室19,20のうち、縮み行程でのピストン18の移動によって上流側となるシリンダ室20から下流側となるシリンダ室19に向けて油液Lが流れ出す通路である。第1減衰力発生機構202は、縮み行程において生じる第1通路44からシリンダ室19への油液Lの流動を抑制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構となっている。第1減衰力発生機構202には、第1通路44とシリンダ室19とを常時連通させる固定オリフィスは設けられていない。
【0081】
ディスク193は、ディスクバルブ201の最小外径よりも小径の外径となっている。
ディスク194の外径は、ディスク193の外径よりも大径である。
円環部材195の外径は、ディスク193の外径よりも大径であって、ディスク194の外径よりも小径である。
【0082】
ディスク194および円環部材195は、ディスクバルブ201の開方向への変形時にディスクバルブ201に当接してディスクバルブ201の開方向への規定以上の変形を抑制する。円環部材195は、ピストンロッド21の軸段部29に当接している。
【0083】
ディスク76の軸方向におけるピストン18とは反対側に、周波数感応機構230が設けられている。周波数感応機構230は、ピストン18の軸方向移動の周波数(以下、ピストン周波数と称す)に応じて減衰力を可変とする。
【0084】
図3に示すように、周波数感応機構230は、軸方向のディスク76側に一つのケース部材231を有している。周波数感応機構230は、ケース部材231の軸方向におけるディスク76とは反対側に、複数枚(具体的には2枚)のディスク232と、一枚の画成部材233とを有している。周波数感応機構230は、ディスク232および画成部材233の軸方向におけるディスク76とは反対側に、ディスク232および画成部材233側から順に、一枚の支持ディスク235と、一枚のディスク236と、一つのストッパ部材237と、を有している。
【0085】
ケース部材231、ディスク232,236、支持ディスク235およびストッパ部材237は、いずれも金属製である。ディスク232,236および支持ディスク235は、いずれも一定厚さの有孔の円形平板状である。画成部材233、ケース部材231およびストッパ部材237は、いずれも円環状である。ケース部材231、ディスク232,236、支持ディスク235およびストッパ部材237は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させている。画成部材233は、内周側にピストンロッド21の取付軸部28および複数枚のディスク232を、径方向の隙間をもって挿通させている。
【0086】
ケース部材231は有底の円筒状である。
ケース部材231は、底部250と、内側シート部251と、筒状部253と、外側シート部254とを有している。
底部250は、円環状である。底部250には、その内周側にピストンロッド21の取付軸部28が嵌合される。
【0087】
内側シート部251は円環状である。内側シート部251は、底部250の内周縁部から、底部250の軸方向に沿ってディスク76とは反対側に突出している。内側シート部251には、内側シート部251をその径方向に貫通する通路溝258が形成されている。通路溝258内の通路は、ピストンロッド21の溝部30内の通路に連通している。
【0088】
筒状部253は、内側シート部251の外径よりも内径が大径の円筒状である。筒状部253は、底部250の外周縁部から、底部250の軸方向に沿って内側シート部251と同側に延出している。筒状部253は、ケース部材231の軸方向における底部250とは反対側の端部の高さ位置が、内側シート部251の底部250とは反対側の端部の高さ位置よりも高い。
【0089】
外側シート部254は、円環状である。外側シート部254は、底部250の径方向における内側シート部251と筒状部253との間から、底部250の軸方向に沿って内側シート部251および筒状部253と同側に突出している。外側シート部254には、外側シート部254をその径方向に貫通する切欠部259が形成されている。外側シート部254には、切欠部259が、外側シート部254の周方向に間隔をあけて複数形成されている。外側シート部254は、ケース部材231の軸方向における底部250とは反対側の端部の高さ位置が、内側シート部251の底部250とは反対側の端部の高さ位置よりも若干高い。
【0090】
ディスク232は、その外径が、内側シート部251の外径よりも小径である。
支持ディスク235は、その外径が、内側シート部251の外径と同等になっている。
ディスク236は、その外径が、支持ディスク235の外径よりも大径である。
【0091】
ストッパ部材237は、基体部261と、フランジ部262とを有している。
基体部261は、円筒状であり、その径方向内側にピストンロッド21の取付軸部28が嵌合される。
【0092】
フランジ部262は、基体部261よりも軸方向の厚さが薄い円板状である。フランジ部262は、基体部261の軸方向の中間部から、基板部241の径方向における外側に広がっている。フランジ部262の外周部には、フランジ部262をフランジ部262の軸方向に貫通する通路溝263が形成されている。
【0093】
画成部材233は、バルブディスク271とシール部材272とからなっている。画成部材233は、ケース部材231の筒状部253と複数枚のディスク232との径方向の間位置に配置されている。
【0094】
バルブディスク271は金属製である。バルブディスク271は、一定厚さの有孔の円形平板状である。バルブディスク271は、内周側にピストンロッド21の取付軸部28および複数枚のディスク232が挿通されている。バルブディスク271は、内側に複数枚のディスク232を径方向に隙間をもって配置可能な内径となっている。バルブディスク271は、全部のディスク232の合計の厚さよりも厚さが薄くなっている。
【0095】
シール部材272は、ゴム製であり、円環状である。シール部材272は、バルブディスク271の外周側に焼き付けられて接着されている。シール部材272は、シール部273と当接部274とを有している。
シール部273は、円筒状であり、バルブディスク271の外周側に全周にわたって固着されている。シール部273は、画成部材233の軸方向において、バルブディスク271からケース部材231の底部250側に突出している。
【0096】
当接部274は、画成部材233の外周側に固着されている。当接部274は、画成部材233の軸方向において、バルブディスク271から底部250とは反対側に突出している。シール部材272は、当接部274を、バルブディスク271の周方向に等間隔で複数有している。当接部274は、バルブディスク271の外周側でシール部273と繋がっている。当接部274は、その軸方向においてバルブディスク271から離れるほど外径が小径となり、かつ内径が大径となる。これにより、当接部274は、その中心軸線を含む面での断面の形状が、軸方向においてバルブディスク271から離れるほど細くなる先細の一つの山型の形状となっている。
【0097】
画成部材233には、上記したように複数枚のディスク232との間に、径方向の隙間がある。そして、画成部材233は、そのシール部273において、ケース部材231の筒状部253に嵌合される。すると、シール部273は、筒状部253に全周にわたって密着する。この嵌合により、画成部材233は、ケース部材231、複数枚のディスク232、支持ディスク235およびピストンロッド21に対して同軸状に芯出しされる。その際に、画成部材233は、シール部273が全周にわたって筒状部253に径方向の締め代をもって当接する。シール部273は、筒状部253に全周にわたって密着する状態を維持しつつ筒状部253に対して筒状部253の軸方向に摺動可能となっている。画成部材233は、そのバルブディスク271が外側シート部254に着座する。
【0098】
支持ディスク235は、画成部材233の内径すなわちバルブディスク271の内径よりも大径の外径となっている。この支持ディスク235は、バルブディスク271の軸方向における底部250とは反対側に配置されてバルブディスク271の内周側に全周にわたって圧接する。これにより、支持ディスク235とバルブディスク271すなわち画成部材233との隙間が閉塞される。
【0099】
画成部材233は、そのバルブディスク271の径方向中間部が、その軸方向における底部250側において、外側シート部254に当接して外側シート部254に支持されている。よって、画成部材233は、そのバルブディスク271の内周側が支持ディスク235に支持され、バルブディスク271の支持ディスク235よりも外周側が外側シート部254に支持される単純支持構造となっている。言い換えれば、バルブディスク271は軸方向にクランプされてはいない。
【0100】
ケース部材231の外側シート部254は、画成部材233のバルブディスク271の径方向中間部を軸方向一側から支持する。支持ディスク235は、バルブディスク271の外側シート部254よりも内周側を軸方向他側から支持する。外側シート部254と支持ディスク235との間の軸方向の最短距離は、バルブディスク271の軸方向の厚さよりも若干小さくなっている。よって、バルブディスク271は、若干弾性変形した状態で外側シート部254と支持ディスク235との両方に自身の弾性力で圧接する。
【0101】
画成部材233は、複数の当接部274が、画成部材233の軸方向における底部250とは反対側に配置されている。複数の当接部274は、ストッパ部材237のフランジ部262に当接している。
【0102】
画成部材233は、全体として弾性変形可能つまり撓み可能である。画成部材233は、バルブディスク271の内周側が支持ディスク235と当接する状態を維持しつつ、バルブディスク271の外周側が外側シート部254から軸方向に離れるように撓んで移動する。
【0103】
ケース部材231と、ディスク232,236と、支持ディスク235と、ストッパ部材237とで囲まれた部分が、圧力室280となっている。画成部材233は、圧力室280内に設けられて、圧力室280を、第1室281と第2室282とに区画する。第1室281は、ケース部材231の軸方向における底部250と画成部材233との間にある。第2室282は、ケース部材231の軸方向における画成部材233とストッパ部材237との間にある。画成部材233は、圧力室280内に移動可能に設けられている。
【0104】
第1室281および第2室282は、いずれも画成部材233の変形により容量が変化する。第1室281は、ケース部材231の通路溝258内の通路を介してピストンロッド21の溝部30内の通路に常時連通している。第1室281は、通路溝258内の通路と、溝部30内の通路と、通路溝139内の通路とを介して圧力室170に常時連通している。第2室282は、ストッパ部材237の通路溝263内の通路を介してシリンダ室20に常時連通している。ディスクバルブ165とバルブシート部135との間の通路口177は、圧力室280の第1室281を第1室281の外であるシリンダ室20に連通させる。
【0105】
伸び行程においては、図2に示すシリンダ室19からの油液Lが、複数の通路穴37内および通路溝38内の通路と、室141と、複数の通路孔93内および通路凹部92内の通路と、開弁する第3減衰力発生機構181と、室142と、弁座部材53の通路溝96内の通路と、ピストンロッド21の溝部30内の通路と、ケース部材231の通路溝258内の通路とを介して第1室281に導入される。すると、画成部材233のバルブディスク271は、支持ディスク235との接点を支点として外周側ほどケース部材231の軸方向において底部250から離れるようにテーパ状に撓む。その際に、バルブディスク271は、ストッパ部材237に当接する当接部274を圧縮変形させる。このような変形によって、画成部材233は、第1室281の容積を増やすことになる。ここで、バルブディスク271のこの変形時に、第2室282の容積は減ることになる。その際に第2室282の油液Lは、ストッパ部材237の通路溝263内の通路を介してシリンダ室20に流れる。
【0106】
上記した第2通路175は、上記した複数の通路穴37内の通路内の通路から溝部30内の通路および圧力室170を介してシリンダ室20に流れる流路に加えて、溝部30内の通路に連通する通路溝258内の通路と、第1室281と、第2室282と、ストッパ部材237の通路溝263内の通路とを含んでいる。第2通路175は、ストッパ部材237の通路溝263内の通路と、第2室282とが、シリンダ室20に常時連通している。第1室281と第2室282とを含む圧力室280は、第2通路175の途中に設けられている。圧力室280内に設けられた画成部材233は、第2通路175をシリンダ室19側の領域と、シリンダ室20側の領域との2つの領域に画成する。画成部材233は、動作するときにゴムである当接部274の圧縮力が作用する。
【0107】
ストッパ部材237の通路溝263内の通路と、第2室282と、第1室281と、通路溝258内の通路と、溝部30内の通路と、通路溝96内の通路と、室142と、開弁時のディスクバルブ52とバルブシート部87との間の通路と、室141と、通路溝38内および複数の通路穴37内の通路とが、縮み行程において上流側となるシリンダ室20から下流側となるシリンダ室19に向けて油液Lが流れ出す縮側通路292である。
【0108】
画成部材233は、バルブディスク271の内周側が全周にわたって支持ディスク235に接触する状態では、第1室281および第2室282間の油液Lの流通を遮断する。また、画成部材233は、バルブディスク271の内周側が支持ディスク235から軸方向に離間する状態では、第2室282と第1室281との間の油液Lの流通を許容する。バルブディスク271の内周側と、支持ディスク235とは、チェック弁293を構成している。
【0109】
チェック弁293は、第2通路175を介する第1室281から第2室282への油液Lの流れを規制する一方で、縮側通路292を介する第2室282から第1室281への油液Lの流れを許容する。チェック弁293は、シリンダ室19の圧力がシリンダ室20の圧力より高くなる伸び行程においては、第2通路175を介するシリンダ室19とシリンダ室20との連通を遮断する。チェック弁293は、シリンダ室20の圧力がシリンダ室19の圧力より高くなる縮み行程においては、適宜開弁することによって、縮側通路292を介してシリンダ室20からシリンダ室19に向けて油液Lを流す。縮側通路292は第1通路44と並列してシリンダ室20とシリンダ室19とを連通させる。
【0110】
ここで、縮み行程において、この縮側通路292を介してシリンダ室20からシリンダ室19に向けて油液Lが流れる場合、および、上記した縮側通路144を介してシリンダ室20からシリンダ室19に向けて油液Lが流れる場合には、第3減衰力発生機構182が開弁して減衰力を発生させる。第3減衰力発生機構182は、第1減衰力発生機構202と並列に設けられている。第3減衰力発生機構182は、第1減衰力発生機構202よりも剛性が低く開弁圧が低い。よって、第3減衰力発生機構182は、第1減衰力発生機構202よりもピストン速度が低い領域で開弁する。
【0111】
ピストンロッド21には、図2に示すように、取付軸部28をそれぞれの内側に挿通させた状態で、円環部材195からストッパ部材237までの部品が、この順に、軸段部29に重ねられる。この状態で、ストッパ部材237よりも突出する取付軸部28のネジ部31にナット295が螺合される。これにより、円環部材195からストッパ部材237までの部品は、画成部材233を除いて、それぞれの内周側または全部が、ピストンロッド21の軸段部29とナット295とに挟持されて軸方向にクランプされる。その際に、画成部材233は、内周側も含めて軸方向にクランプされることはない。この状態で、画成部材233は、図4に示すように、バルブディスク271の内周側が支持ディスク235に当接し、これよりも外周側がケース部材231の外側シート部254に当接すると共に、シール部材272の当接部274がストッパ部材237のフランジ部262に当接する。
【0112】
図1に示すように、外筒4の底部12と内筒3との間には、上記したベースバルブ25のベース部材26が設けられている。ベースバルブ25は、ベース部材26に加えて、ディスクバルブ312とディスクバルブ313と取付ピン314とを有している。ディスクバルブ312は、ベース部材26の下側つまりリザーバ室6側に設けられている。ディスクバルブ313は、ベース部材26の上側つまりシリンダ室20側に設けられている。取付ピン314は、ベース部材26にディスクバルブ312およびディスクバルブ313を取り付けている。
【0113】
ベース部材26は、円環状をなしており、径方向の中央に取付ピン314が挿通される。ベース部材26には、複数の通路穴315と複数の通路穴316とが形成されている。複数の通路穴315は、シリンダ室20とリザーバ室6との間で油液Lを流通させる。複数の通路穴316は、ベース部材26の径方向における複数の通路穴315の外側に配置されている。複数の通路穴316は、シリンダ室20とリザーバ室6との間で油液Lを流通させる。リザーバ室6側のディスクバルブ312は、シリンダ室20から通路穴315を介するリザーバ室6への油液Lの流れを許容する。その一方で、ディスクバルブ312はリザーバ室6からシリンダ室20への通路穴315を介する油液Lの流れを抑制する。ディスクバルブ313は、リザーバ室6から通路穴316を介するシリンダ室20への油液Lの流れを許容する。その一方で、ディスクバルブ313は、シリンダ室20からリザーバ室6への通路穴316を介する油液Lの流れを抑制する。
【0114】
ディスクバルブ312は、ベース部材26とによって減衰バルブ機構317を構成している。減衰バルブ機構317は、緩衝器1の縮み行程において開弁してシリンダ室20からリザーバ室6に油液Lを流すとともに減衰力を発生する。ディスクバルブ313は、ベース部材26とによってサクションバルブ機構318を構成している。サクションバルブ機構318は、緩衝器1の伸び行程において開弁してリザーバ室6からシリンダ室20内に油液Lを流す。なお、サクションバルブ機構318は、主としてピストンロッド21のシリンダ2からの伸び出しにより生じる液の不足分を補うようにリザーバ室6からシリンダ室20に実質的に減衰力を発生することなく油液Lを流す機能を果たす。
【0115】
次に緩衝器1の主な作動について説明する。
「伸び行程において、周波数感応機構230が作用せず、伸び側の第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176のみが作用すると仮定した場合」
【0116】
この場合に、ピストン速度が第1所定値よりも遅い極微低速領域において、シリンダ室19からの油液Lは、複数の通路穴37内および通路溝38内の通路を介して室141に導入される。そして、室141に導入された油液Lは、複数の通路孔93内および通路凹部92内の通路を通って第3減衰力発生機構181を開弁させて、室142に導入される。このように室142に導入された油液Lは、第1減衰力発生機構161の固定オリフィス143を介してシリンダ室20に流れる。すなわち、極微低速領域において、シリンダ室19からの油液Lは、第1通路43を介してシリンダ室20に流れる。第1通路44に固定オリフィスが設けられていないことから、シリンダ室19からの油液Lは、全流量が第3減衰力発生機構181を開弁させて通過する。第3減衰力発生機構181を開弁させる際にシリンダ室19の圧力が上昇する。よって、極微低速領域でも、第3減衰力発生機構181が開弁して即座に減衰力が立ち上がり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
【0117】
ピストン速度が第1所定値以上かつ第2所定値未満の微低速領域では、第1通路43を介して油液Lが流れる際に、固定オリフィス143で規定されるオリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、微低速領域でのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が、極微低速領域よりも高くなる。
【0118】
ピストン速度が第2所定値以上かつ第3所定値未満の低速領域では、シリンダ室19からの油液Lは、第3減衰力発生機構181を開弁させた状態のまま、第2通路175を通り、第2減衰力発生機構176のディスクバルブ165を開きながら、ディスクバルブ165とバルブシート部135との間を通って、シリンダ室20に流れる。よって、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、低速領域でのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が、微低速領域よりも下がることになる。
【0119】
ピストン速度が第3所定値以上に速くなる中高速領域では、第1減衰力発生機構161の減衰バルブ151に作用する力(油圧)の関係は、室142から加わる開方向の力が圧力室170から加わる閉方向の力よりも大きくなる。よって、この中高速領域では、ピストン速度の増加に伴い第1減衰力発生機構161の減衰バルブ151が弁座部材53の外側シート部84から離れて開くことになる。よって、シリンダ室19からの油液Lは、上記したディスクバルブ165を開きながらの第2通路175でのシリンダ室20への流れに加えて、第1減衰力発生機構161の減衰バルブ151を開きながら、第1通路43を通ってシリンダ室20へ流れる。このため、中高速領域でのピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率は、低速領域よりも下がる。
【0120】
「縮み行程において、周波数感応機構230が作用せず、縮み側の第1減衰力発生機構202のみが作用すると仮定した場合」
【0121】
この場合に、ピストン速度が第4所定値よりも遅い極微低速領域では、シリンダ室20からの油液Lは、第1減衰力発生機構202に固定オリフィスがないため、全流量が、第1減衰力発生機構161の固定オリフィス143から室142に流れ、複数の通路孔103内および通路凹部102内の通路から第3減衰力発生機構182を開いて室141と通路溝38内および複数の通路穴37内の通路とを介してシリンダ室19に流れる。すなわち、縮側通路144を介してシリンダ室19に流れる。よって、ピストン速度が極微低速領域であっても第3減衰力発生機構182によって即座に減衰力が立ち上がり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
【0122】
ピストン速度が第4所定値以上かつ第5所定値未満の微低速領域では、縮側通路144を介して油液Lが流れる際に、固定オリフィス143で規定されるオリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。これにより、オリフィス特性の減衰力が発生することになる。このため、微低速領域でのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が、極微低速領域よりも高くなる。
【0123】
ピストン速度が第5所定値以上に速くなると、シリンダ室20から第1通路44に導入される油液Lが第1減衰力発生機構202のディスクバルブ201を開きながらディスクバルブ201とバルブシート部49との間を通ってシリンダ室19に流れることになる。これにより、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度が第5所定値以上のときのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が、微低速領域よりも下がることになる。
【0124】
「伸び行程において、周波数感応機構230が作用する場合」
第1実施形態では、周波数感応機構230が、ピストン速度が同じ場合でも、ピストン周波数に応じて減衰力を可変とする。
【0125】
伸び行程では、シリンダ室19から、第2通路175を介して周波数感応機構230の第1室281に油液Lが導入される。すると、支持ディスク235と外側シート部254とストッパ部材237とに当接していた画成部材233は、そのバルブディスク271が、支持ディスク235との接点を支点として外周側がケース部材231の軸方向において底部250から離れるようにテーパ状に撓む。それと共に、画成部材233は、当接部274が圧縮変形する。このようにして、画成部材233が、第1室281の容積を拡大させて、油液Lを第1室281へ導入する。その際に、画成部材233は、ストッパ部材237の通路溝263内の通路を介して第2室282からシリンダ室20に油液Lを排出させる。
【0126】
ここで、ピストン周波数が高いときの伸び行程では、ピストン18のストロークが小さい。このため、シリンダ室19から、第2通路175を介して第1室281に導入される油液Lの量が少ない。よって、画成部材233は、上記のように変形するものの限界近くまで変形することはない。
【0127】
よって、ピストン周波数が高いときの伸び行程では、伸び行程の都度、周波数感応機構230の画成部材233が上記のように撓んで移動することにより、第1室281にシリンダ室19から油液Lを導入することになる。すると、シリンダ室19から、第1通路43を通り第1減衰力発生機構161を介してシリンダ室20に流れる油液Lの流量、および、第2通路175を通り第2減衰力発生機構176を介してシリンダ室20に流れる油液Lの流量が減ることになる。また、第1室281にシリンダ室19から油液Lを導入することによって、第1室281がない場合と比べて圧力室170の圧力上昇が抑えられ、第1減衰力発生機構161の減衰バルブ151が開弁しやすくなる。これらによって伸び側の減衰力がソフトになる。
【0128】
他方で、ピストン周波数が低いときの伸び行程では、ピストン18のストロークが大きい。このため、シリンダ室19から、第2通路175を介して第1室281に導入される油液Lの量が多い。よって、ピストン18のストロークの初期に、シリンダ室19から第1室281に油液Lが流れるものの、その後は、画成部材233は限界近くまで変形して、それ以上の変形が抑制される。その結果、シリンダ室19から第1室281に油液Lが流れなくなる。これにより、シリンダ室19から、第1通路43を通り第1減衰力発生機構161を介してシリンダ室20に流れる油液Lの流量、および、第2通路175を通り第2減衰力発生機構176を介してシリンダ室20に流れる油液Lの流量が減らないことになる。また、第1室281にシリンダ室19から油液Lが導入されないことによって、圧力室170の圧力が上昇し、第1減衰力発生機構161の減衰バルブ151が開弁しにくくなる。これらによって、ピストン周波数が低いときの伸び行程では、ピストン周波数が高周波のときよりも減衰力がハードになる。
【0129】
ここで、伸び行程において、第1減衰力発生機構161が開弁動作するときには、第2通路175に導入された油液Lの圧力によって圧力室170に設けられたパイロットバルブ70のゴム製のシール部材146が径方向外方に圧縮変形する。また、伸び行程において、第1減衰力発生機構161が開弁動作するときには、圧力室280に設けられた画成部材233のゴム製のシール部材272のシール部273が径方向外側に、当接部274が軸方向に圧縮変形する。よって、第1通路43に設けられて減衰力を発生させる第1減衰力発生機構161が動作するときに、第1減衰力発生機構161には、シール部材146,272の圧縮力が油液Lを介して作用する。
【0130】
縮み行程では、シリンダ室20の圧力が高くなるが、周波数感応機構230の画成部材233のバルブディスク271がケース部材231の外側シート部254に当接していて第2室282の拡大を抑制する。このため、シリンダ室20からストッパ部材237の通路溝263内の通路を介して第2室282に導入される油液Lの量は抑制されることになる。その結果、シリンダ室20から縮側通路144を介してシリンダ室19に流れる油液Lの流量およびシリンダ室20から第1通路44を介してシリンダ室19に流れる油液Lの流量が減らない状態となる。よって、減衰力がハードになる。
【0131】
縮み行程において、ピストン速度が速くなって第2室282の圧力が第1室281の圧力よりも所定値以上高くなると、画成部材233の内周側が支持ディスク235から離れる。言い換えれば、チェック弁293が開く。これにより、シリンダ室20から、縮側通路292を介してシリンダ室19に油液Lが流れる。このように、チェック弁293が開くことで、画成部材233は、第2室282側と第1室281側との差圧が抑制される。よって、画成部材233が過度に撓むことが抑制される。
【0132】
上記した特許文献1には、ピストンの移動により一方の室から他方の室に向けて作動流体が流れる並列の流路のそれぞれに減衰力発生機構を設けた緩衝器が開示されている。車両に設けられる緩衝器において、減衰力発生機構が動作するときにゴムの圧縮力が作用すると、ピストン速度が極微低速の領域でシリンダ内圧の圧力上昇が遅れることにより車両挙動が不安定になる可能性がある。このため、車両の挙動が不安定になることを緩衝器によって抑制することが望まれている。
【0133】
第1実施形態の緩衝器1は、ピストン18の移動によりシリンダ2内の一方のシリンダ室19から作動流体である油液Lが流れ出す第1通路43および第2通路175を有している。また、緩衝器1は、第1通路43に設けられて減衰力を発生させ、動作するときにゴムであるシール部材146,272の圧縮力が作用する第1減衰力発生機構161を有している。また、緩衝器1は、第2通路175の途中に設けられた圧力室170,280を有している。また、緩衝器1は、圧力室170,280を、シリンダ室20に連通させる通路口177に設けられた第2減衰力発生機構176を有している。
【0134】
このような構成の緩衝器1において、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176の上流側に、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176よりもピストン速度が低い領域で開弁する第3減衰力発生機構181を設けている。このため、緩衝器1は、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176が開弁しないピストン速度(極微低速領域)であっても第3減衰力発生機構181が開弁して減衰力を発生させることができ、シリンダ室19の内圧上昇が遅れることを抑制することができる。
【0135】
すなわち、上記構造において第3減衰力発生機構181がないと仮定すると、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176が開弁しないピストン速度で、第2通路175に導入された油液Lが、圧力室170に設けられた減衰バルブ151のシール部材146と、圧力室280に設けられた画成部材233のシール部材272とを圧縮変形させてしまう。その結果、シリンダ室19の内圧上昇が遅れてしまう可能性がある。これに対して、緩衝器1は、第3減衰力発生機構181が減衰力を発生させるため、シリンダ室19の内圧上昇が遅れてしまうことを抑制することができる。したがって、緩衝器1は、車両の挙動が不安定になることを抑制することができる。
【0136】
緩衝器1は、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176の上流側に第3減衰力発生機構181を設けていることから、ゴム部品の圧縮による影響を受けにくい位置に第3減衰力発生機構181を設けることができる。したがって、緩衝器1は、車両の挙動が不安定になることを効果的に抑制することができる。
【0137】
緩衝器1は、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176の上流側に第3減衰力発生機構181を設けていることから、第3減衰力発生機構181を第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176と共にピストンロッド21に組み付けることが可能となる。よって、第3減衰力発生機構181を設けることによる組み立て工数の増大を抑制することができる。
【0138】
緩衝器1は、第2通路175の圧力室280内に移動可能に設けられて第2通路175を2つの領域に画成し、動作するときにゴムの圧縮力が作用する画成部材233を有している。よって、第3減衰力発生機構181がないと仮定すると、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176が開弁しないピストン速度で、第2通路175に導入された油液Lが、画成部材233のゴムであるシール部材272を圧縮変形させてしまうことになる。よって、緩衝器1は、第3減衰力発生機構181が減衰力を発生させることによる効果を確実に得ることができる。
【0139】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を主に図5に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態の緩衝器1Aには、第1実施形態の緩衝器1のパイロットケース72、ディスク73~76、ケース部材231、ディスク232、画成部材233、支持ディスク235、ディスク236およびストッパ部材237が設けられていない。
【0140】
緩衝器1Aには、ディスク71の軸方向におけるピストン18とは反対側に、ディスク71側から順に、一つのケース部材331と、一つのシート部材332とが重ねられている。ケース部材331とシート部材332との間には画成部材233Aが設けられている。ケース部材331とシート部材332とがパイロットケース72Aを構成する。画成部材233Aはパイロットケース72A内に設けられている。
【0141】
シート部材332には、シート部材332の軸方向におけるケース部材331とは反対側に、シート部材332側から順に、一枚のディスク341と、複数枚、具体的には7枚のディスク342と、一枚のディスク343と、一枚のディスク344と、一枚の環状部材345とが重ねられて、ナット295で締め付けられている。
【0142】
ディスク341~344、ケース部材331、シート部材332および環状部材345は、いずれも金属製である。ケース部材331は焼結により一体成形されている。シート部材332は焼結により一体成形されている。ケース部材331およびシート部材332は、少なくともいずれか一方を削り出しにより形成しても良い。ディスク341~344および環状部材345は、いずれも一定厚さの有孔の円形平板状である。ケース部材331およびシート部材332は、いずれも円環状である。ディスク341~344、ケース部材331、シート部材332および環状部材345は、いずれも内周側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させている。
【0143】
ケース部材331は、部材本体部351と、突出部352とを有している。部材本体部351は円環状である。突出部352も円環状である。突出部352は、部材本体部351の内周側に設けられている。突出部352は、部材本体部351の軸方向におけるピストン18側の端面から、ケース部材331の軸方向に沿ってピストン18側に突出している。
【0144】
ケース部材331には、シート部材側環状溝362と、ピストン側環状溝363と、シート部材側径方向溝364と、ピストン側径方向溝365とが形成されている。
【0145】
シート部材側環状溝362は、部材本体部351の軸方向におけるピストン18とは反対側の端面から部材本体部351の軸方向に沿ってピストン18側に凹んでいる。シート部材側環状溝362は円環状である。
【0146】
ピストン側環状溝363は、部材本体部351の軸方向におけるピストン18側の端面から部材本体部351の軸方向に沿ってピストン18とは反対側に凹んでいる。ピストン側環状溝363は、部材本体部351の径方向においてシート部材側環状溝362よりも外側に配置されている。ピストン側環状溝363は円環状である。
【0147】
シート部材側径方向溝364は、部材本体部351の軸方向におけるピストン18とは反対側の端面から部材本体部351の軸方向に沿ってピストン18側に凹んでいる。シート部材側径方向溝364は、部材本体部351の軸方向におけるピストン18とは反対側の端面からの深さが、シート部材側環状溝362よりも浅い。シート部材側径方向溝364は、シート部材側環状溝362を、ケース部材331の径方向に横断している。シート部材側径方向溝364は、内側溝部371と外側溝部372とを有している。内側溝部371は部材本体部351の内周面からシート部材側環状溝362まで延びている。外側溝部372はシート部材側環状溝362から部材本体部351の外周面まで延びている。内側溝部371内の通路は、ピストンロッド21の溝部30内の通路に連通している。外側溝部372内の通路は、シリンダ室20に連通している。
【0148】
ピストン側径方向溝365は、突出部352を突出部352の径方向に横断している。ピストン側径方向溝365内の通路は、ピストンロッド21の溝部30内の通路に連通している。
【0149】
シート部材332は、部材本体部381と、突出部382と、バルブシート部383とを有している。部材本体部381は円環状である。突出部382も円環状である。バルブシート部383も円環状である。突出部382は部材本体部381の内周側に設けられている。バルブシート部383は、部材本体部381のシート部材332の径方向における突出部382よりも外側に設けられている。
【0150】
突出部382は、シート部材332の軸方向における部材本体部381のピストン18とは反対側の端面から、シート部材332の軸方向に沿ってピストン18とは反対側に突出している。
バルブシート部383は、部材本体部381のピストン18とは反対側の端面から、シート部材332の軸方向に沿ってピストン18とは反対側に突出している。
【0151】
シート部材332には、径方向溝386が形成されている。径方向溝386は、突出部382を径方向に横断している。径方向溝386内の通路は、ピストンロッド21の溝部30内の通路に連通している。
【0152】
シート部材332は、その軸方向におけるピストン18側の端面が、ケース部材331の軸方向におけるピストン18とは反対側の端面に重なって面接触する。すると、ケース部材331とシート部材332とが、シート部材側環状溝362内に圧力室280Aを形成する。圧力室280Aは、円環状をなしている。
【0153】
内側溝部371内の通路は、圧力室280Aとピストンロッド21の溝部30内の通路とに連通している。
外側溝部372内の通路は、圧力室280Aとシリンダ室20とに連通している。
【0154】
画成部材233Aは円環状である。画成部材233Aは、その中心軸線を含む面での断面が円形のOリングである。画成部材233Aはゴム弾性をもった弾性部材である。画成部材233Aは圧力室280Aに収納されている。画成部材233Aはシート部材側環状溝362の底面とシート部材332の軸方向におけるピストン18側の端面とに同時に接触する。その際に、画成部材233Aは、画成部材233Aの軸方向に弾性変形する。画成部材233Aは圧力室280A内で画成部材233Aの径方向に移動する。画成部材233Aは圧力室280A内で画成部材233Aの径方向に弾性変形する。
【0155】
画成部材233Aは、圧力室280A内を、画成部材233Aよりも径方向内側の第1室281Aと、画成部材233Aよりも径方向外側の第2室282Aとに画成する。第1室281Aは、内側溝部371内の通路を介してピストンロッド21の溝部30内の通路に連通している。第2室282Aは、外側溝部372内の通路を介してシリンダ室20に連通している。
【0156】
圧力室280Aと内側溝部371内の通路と外側溝部372内の通路とを含むパイロットケース72Aと、画成部材233Aとが、ピストン18の往復動の周波数に感応して減衰力を可変とする周波数感応機構230Aを構成している。周波数感応機構230Aは、パイロットケース72Aに設けられている。周波数感応機構230Aは、圧力室280A、内側溝部371内の通路および外側溝部372内の通路が、ケース部材331とシート部材332との2部材で形成されている。
【0157】
減衰バルブ151は、パイロットバルブ70のシール部材146が、ケース部材331のピストン側環状溝363の径方向外側の壁面に全周にわたり摺動可能且つ液密的に嵌合する。シール部材146は、ピストン側環状溝363の径方向外側の壁面との間を常時シールする。減衰バルブ151とケース部材331とディスク71とが、圧力室170Aを形成する。圧力室170Aは、減衰バルブ151に弁座部材53の外側シート部84の方向に圧力を加える。圧力室170Aは、ケース部材331のピストン側径方向溝365内の通路を介してピストンロッド21の溝部30内の通路に連通している。
【0158】
ディスク341は、シート部材332のバルブシート部383の内径よりも小径且つ突出部382の外径よりも大径の外径となっている。
複数枚のディスク342は、軸方向におけるディスク341側のディスク342がバルブシート部383に着座可能となっている。
複数枚のディスク342は、ディスクバルブ165Aを構成している。ディスクバルブ165Aは、バルブシート部383に離着座可能である。ディスクバルブ165Aは、その軸方向においてバルブシート部383から離れるほど外径が小径となる。
【0159】
ディスク343は、ディスクバルブ165Aの最小外径よりも小径の外径となっている。
ディスク344は、ディスクバルブ165Aの最小外径よりも大径且つディスクバルブ165Aの最大外径よりも小径の外径となっている。
環状部材345は、ディスク343の外径よりも大径且つディスク344の外径よりも小径の外径となっている。環状部材345は、ディスク341~344よりも厚さが厚い。環状部材345は、ディスク341~344よりも剛性が高くなっている。
【0160】
複数枚のディスク342からなるディスクバルブ165Aは、バルブシート部383に離着座可能である。ディスクバルブ165Aとシート部材332との間は、バルブシート部383と突出部382との間が径方向通路401となっている。径方向通路401は、シート部材332の径方向溝386内の通路を介してピストンロッド21の溝部30内の通路に連通する。径方向通路401は、ディスクバルブ165Aがバルブシート部383から離座するとシリンダ室20に連通する。
【0161】
ピストン18の複数の通路穴37内および通路溝38内の通路と、室141と、弁座部材53の複数の通路孔93内および通路凹部92内の通路と、開弁時のディスクバルブ54およびバルブシート部83の間の通路と、室142と、弁座部材53の通路溝96内の通路と、ピストンロッド21の溝部30内の通路と、パイロットケース72Aのピストン側径方向溝365内の通路と、圧力室170Aと、パイロットケース72Aの内側溝部371内の通路と、圧力室280Aの第1室281Aと、パイロットケース72Aの径方向溝386内の通路と、径方向通路401と、開弁時のディスクバルブ165Aおよびバルブシート部383の間の通路とが、第2通路175Aを構成している。圧力室170A,280Aは、第2通路175Aの途中に設けられている。
【0162】
ディスクバルブ165Aとバルブシート部383とが、第2減衰力発生機構176Aを構成している。第2減衰力発生機構176Aは、第2通路175Aに設けられている。第2減衰力発生機構176Aは、ディスクバルブ165Aがバルブシート部383から離座すると、第2通路175Aを介してシリンダ室19とシリンダ室20とを連通させる。その際に、第2減衰力発生機構176Aは、第2通路175Aの油液Lの流れを抑制して減衰力を発生する。言い換えれば、第2減衰力発生機構176Aは、伸び行程において、シリンダ室19から第2通路175Aを介してシリンダ室20に油液Lを流す際に油液Lの流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の減衰力発生機構となっている。第2通路175Aは、シリンダ室19,20のうち、伸び行程でのピストン18の移動によって上流側となるシリンダ室19から下流側となるシリンダ室20に向けて油液Lが流れ出す通路である。第2減衰力発生機構176Aには、径方向通路401とシリンダ室20とを常時連通させる固定オリフィスは設けられていない。
【0163】
ディスク344および環状部材345は、ディスクバルブ165Aの開方向への変形時にディスクバルブ165Aに接触してディスクバルブ165Aの規定以上の変形を抑制する。
【0164】
ディスクバルブ165Aとバルブシート部383との間が、圧力室170Aを圧力室170Aの外であるシリンダ室20に連通させると共に、圧力室280Aの第1室281Aをシリンダ室20に連通させる通路口177Aである。この通路口177Aに第2減衰力発生機構176Aが設けられている。
【0165】
第2通路175Aは、弁座部材53の通路溝96内の通路と、ピストンロッド21の溝部30内の通路と、ケース部材331のピストン側径方向溝365内の通路と、圧力室170Aと、ケース部材331の内側溝部371内の通路と、圧力室280Aの第1室281Aと、シート部材332の径方向溝386内の通路と、径方向通路401と、開弁時のディスクバルブ165Aおよびバルブシート部383の間の通路とが、第1通路43のうちの減衰バルブ151と外側シート部84との間の通路と並列に設けられている。
【0166】
第3減衰力発生機構181は、伸び行程の油液Lの流れ方向において、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176Aの上流側に設けられている。第3減衰力発生機構181は、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176Aよりも剛性が低く開弁圧が低い。よって、第3減衰力発生機構181は、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176Aよりもピストン速度が低い領域で開弁する。
【0167】
次に緩衝器1Aの主な作動について説明する。
「伸び行程において、周波数感応機構230Aが作用せず、伸び側の第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176Aのみが作用すると仮定した場合」
【0168】
この場合に、緩衝器1Aは、ピストン速度が第1所定値よりも遅い極微低速領域と、ピストン速度が第1所定値以上かつ第2所定値未満の微低速領域とについては、緩衝器1と同様に作動する。
【0169】
緩衝器1Aは、ピストン速度が第2所定値以上かつ第3所定値未満の低速領域では、シリンダ室19からの油液Lは、第3減衰力発生機構181を開弁させた状態のまま、第2通路175Aを通り、第2減衰力発生機構176Aのディスクバルブ165Aを開きながら、ディスクバルブ165Aとバルブシート部383との間を通って、シリンダ室20に流れる。よって、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、低速領域でのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が、微低速領域よりも下がることになる。
【0170】
ピストン速度が第3所定値以上に速くなる中高速領域では、第1減衰力発生機構161の減衰バルブ151に作用する力(油圧)の関係は、室142から加わる開方向の力が圧力室170Aから加わる閉方向の力よりも大きくなる。よって、この中高速領域では、ピストン速度の増加に伴い第1減衰力発生機構161の減衰バルブ151が弁座部材53の外側シート部84から離れて開くことになる。よって、シリンダ室19からの油液Lは、上記したディスクバルブ165Aを開きながらの第2通路175Aでのシリンダ室20への流れに加えて、第1減衰力発生機構161の減衰バルブ151を開きながら、第1通路43を通ってシリンダ室20へ流れる。このため、中高速領域でのピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率は、低速領域よりも下がる。
【0171】
縮み行程において、周波数感応機構230Aが作用せず、縮み側の第1減衰力発生機構202のみが作用すると仮定した場合の緩衝器1Aの作動は、緩衝器1の作動と同様である。
【0172】
「伸び行程において、周波数感応機構230Aが作用する場合」
伸び行程では、シリンダ室19から、第2通路175Aを介して周波数感応機構230Aの第1室281Aに油液Lが導入される。すると、画成部材233Aは、径方向外側に弾性変形しつつ移動する。このようにして、画成部材233Aが、第1室281Aの容積を拡大させて、油液Lを第1室281Aへ導入する。その際に、画成部材233Aは、第2室282Aから外側溝部372内の通路を介してシリンダ室20に油液Lを排出させる。
【0173】
ここで、ピストン周波数が高いときの伸び行程では、ピストン18のストロークが小さい。このため、シリンダ室19から、第2通路175Aを介して第1室281Aに導入される油液Lの量が少ない。よって、画成部材233Aは、上記のように変形するものの限界近くまで変形することはない。
【0174】
よって、ピストン周波数が高いときの伸び行程では、伸び行程の都度、周波数感応機構230Aの画成部材233Aが上記のように変形して移動することにより、第1室281Aにシリンダ室19から油液Lを導入することになる。すると、シリンダ室19から、第1通路43を通り第1減衰力発生機構161を介してシリンダ室20に流れる油液Lの流量、および、第2通路175Aを通り第2減衰力発生機構176Aを介してシリンダ室20に流れる油液Lの流量が減ることになる。また、第1室281Aにシリンダ室19から油液Lを導入することによって、第1室281Aがない場合と比べて圧力室170Aの圧力上昇が抑えられ、第1減衰力発生機構161の減衰バルブ151が開弁しやすくなる。これらによって伸び側の減衰力がソフトになる。
【0175】
他方で、ピストン周波数が低いときの伸び行程では、ピストン18のストロークが大きい。このため、シリンダ室19から、第2通路175Aを介して第1室281Aに導入される油液Lの量が多い。よって、ピストン18のストロークの初期に、シリンダ室19から第1室281Aに油液Lが流れるものの、その後は、画成部材233Aは限界近くまで変形および移動して、それ以上の変形および移動が抑制される。その結果、シリンダ室19から第1室281Aに油液Lが流れなくなる。これにより、シリンダ室19から、第1通路43を通り第1減衰力発生機構161を介してシリンダ室20に流れる油液Lの流量、および、第2通路175Aを通り第2減衰力発生機構176Aを介してシリンダ室20に流れる油液Lの流量が減らないことになる。また、第1室281Aにシリンダ室19から油液Lが導入されないことによって、圧力室170Aの圧力が上昇し、第1減衰力発生機構161の減衰バルブ151が開弁しにくくなる。これらによって、ピストン周波数が低いときの伸び行程では、ピストン周波数が高周波のときよりも減衰力がハードになる。
【0176】
ここで、伸び行程において、第1減衰力発生機構161が開弁動作するときには、第2通路175Aに導入された油液Lの圧力によって圧力室170Aに設けられたパイロットバルブ70のゴム製のシール部材146が径方向外側に圧縮変形する。また、伸び行程において、第1減衰力発生機構161が開弁動作するときには、圧力室280Aに設けられたゴム製の画成部材233Aが径方向外側に圧縮変形する。よって、第1通路43に設けられて減衰力を発生させる第1減衰力発生機構161が動作するときに、第1減衰力発生機構161には、シール部材146および画成部材233Aの圧縮力が油液Lを介して作用する。
【0177】
「縮み行程において、周波数感応機構230Aが作用する場合」
縮み行程では、シリンダ室20から、外側溝部372内の通路を介して周波数感応機構230Aの第2室282Aに油液Lが導入される。すると、画成部材233Aは、径方向内側に弾性変形しつつ移動する。このようにして、画成部材233Aが、第2室282Aの容積を拡大させて、油液Lを第2室282Aへ導入する。その際に、画成部材233Aは、第1室281Aから第2通路175Aを介してシリンダ室19に油液Lを排出させる。
【0178】
ここで、ピストン周波数が高いときの縮み行程では、ピストン18のストロークが小さい。このため、シリンダ室20から、外側溝部372内の通路を介して第2室282Aに導入される油液Lの量が少ない。よって、画成部材233Aは、上記のように変形するものの限界近くまで変形することはない。
【0179】
よって、ピストン周波数が高いときの縮み行程では、縮み行程の都度、周波数感応機構230Aの画成部材233Aが上記のように変形して移動することにより、第2室282Aにシリンダ室20から油液Lを導入することになる。すると、シリンダ室20から、固定オリフィス143を含む縮側通路144を通ってシリンダ室19に流れる油液Lの流量、および、第1通路44を通り第1減衰力発生機構202を介してシリンダ室19に流れる油液Lの流量が減ることになる。よって、縮み側の減衰力がソフトになる。
【0180】
他方で、ピストン周波数が低いときの伸び行程では、ピストン18のストロークが大きい。このため、シリンダ室19から、外側溝部372内の通路を介して第2室282Aに導入される油液Lの量が多い。よって、ピストン18のストロークの初期に、シリンダ室20から第2室282Aに油液Lが流れるものの、その後は、画成部材233Aは限界近くまで変形および移動して、それ以上の変形および移動が抑制される。その結果、シリンダ室20から第2室282Aに油液Lが流れなくなる。これにより、シリンダ室20から、固定オリフィス143を含む縮側通路144を通ってシリンダ室19に流れる油液Lの流量、および、第1通路44を通り第1減衰力発生機構202を介してシリンダ室19に流れる油液Lの流量が減らないことになる。よって、ピストン周波数が低いときの縮み行程では、ピストン周波数が高周波のときよりも減衰力がハードになる。
【0181】
第2実施形態の緩衝器1Aは、ピストン18の移動によりシリンダ2(図2参照)内の一方のシリンダ室19から作動流体である油液Lが流れ出す第1通路43および第2通路175Aを有している。また、緩衝器1Aは、第1通路43に設けられて減衰力を発生させ、動作するときにいずれもゴムであるシール部材146および画成部材233Aの圧縮力が作用する第1減衰力発生機構161を有している。また、緩衝器1Aは、第2通路175Aの途中に設けられた圧力室170A,280Aを有している。また、緩衝器1Aは、圧力室170A,280Aをシリンダ室20に連通させる通路口177Aに設けられた第2減衰力発生機構176Aを有している。
【0182】
このような構成の緩衝器1Aにおいて、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176Aの上流側に、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176Aよりもピストン速度が低い領域で開弁する第3減衰力発生機構181を設けている。このため、緩衝器1Aは、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176Aが開弁しないピストン速度(極微低速領域)であっても第3減衰力発生機構181が開弁して減衰力を発生させることができ、シリンダ室19の内圧上昇が遅れることを抑制することができる。したがって、緩衝器1Aは、緩衝器1と同様、車両の挙動が不安定になることを抑制することができる。
【0183】
緩衝器1Aは、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176Aの上流側に第3減衰力発生機構181を設けていることから、ゴム部品の圧縮による影響を受けにくい位置に第3減衰力発生機構181を設けることができる。したがって、緩衝器1Aは、車両の挙動が不安定になることを効果的に抑制することができる。
【0184】
緩衝器1Aは、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176Aの上流側に第3減衰力発生機構181を設けていることから、第3減衰力発生機構181を第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176Aと共にピストンロッド21に組み付けることが可能となる。よって、第3減衰力発生機構181を設けることによる組み立て工数の増大を抑制することができる。
【0185】
緩衝器1Aは、第2通路175Aの圧力室280A内に移動可能に設けられて第2通路175Aを2つの領域に画成し、動作するときにゴムの圧縮力が作用する画成部材233Aを有している。よって、第3減衰力発生機構181がないと仮定すると、第1減衰力発生機構161および第2減衰力発生機構176が開弁しないピストン速度で、第2通路175Aに導入された油液Lが、ゴムである画成部材233Aを変形させてしまうことになる。よって、緩衝器1Aは、第3減衰力発生機構181が減衰力を発生させることによる効果を確実に得ることができる。
【0186】
なお、緩衝器1Aを図6に示す緩衝器1Bのように変更することも可能である。
緩衝器1Bでは、緩衝器1Aにおいて、バルブディスク57、パイロットバルブ70、ディスク71、周波数感応機構230Aおよびディスク341を設けずに、バルブディスク56に、ディスク342~344および環状部材345を重ねて、ナット295を締結した構成となっている。また、緩衝器1Bでは、ピストンロッド21に溝部30を設けず、弁座部材53に通路溝96を設けていない。
【0187】
緩衝器1Bでは、バルブディスク56と、ディスク342とがディスクバルブ165Bを構成しており、ディスクバルブ165Bと外側シート部84とが第1減衰力発生機構161Bを構成している。
【0188】
緩衝器1Bの主な作動について説明する。
「伸び行程」
伸び行程では、ピストン速度が第1所定値よりも遅い極微低速領域において、シリンダ室19からの油液Lは、複数の通路穴37内および通路溝38内の通路を介して室141に導入される。そして、室141に導入された油液Lは、複数の通路孔93内および通路凹部92内の通路を通って第3減衰力発生機構181を開弁させて、室142に導入される。このように室142に導入された油液Lは、第1減衰力発生機構161Bの固定オリフィス143を介してシリンダ室20に流れる。すなわち、極微低速領域において、シリンダ室19からの油液Lは、第1通路43を介してシリンダ室20に流れる。第1通路44に固定オリフィスが設けられていないことから、シリンダ室19からの油液Lは、全流量が第3減衰力発生機構181を開弁させて通過する。第3減衰力発生機構181を開弁させる際にシリンダ室19の圧力が上昇する。よって、極微低速領域でも、第3減衰力発生機構181が開弁して即座に減衰力が立ち上がり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
【0189】
ピストン速度が第1所定値以上かつ第2所定値未満の微低速領域では、第1通路43を介して油液Lが流れる際に、固定オリフィス143で規定されるオリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、微低速領域でのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が、極微低速領域よりも高くなる。
【0190】
ピストン速度が第2所定値以上の領域では、シリンダ室19からの油液Lは、第3減衰力発生機構181を開弁させた状態のまま、室142から第1減衰力発生機構161Bのディスクバルブ165Bを開きながら、ディスクバルブ165Bと外側シート部84との間を通って、シリンダ室20に流れる。よって、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度が第2所定値以上の領域でのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が、微低速領域よりも下がることになる。
【0191】
「縮み行程」
【0192】
縮み行程では、ピストン速度が第4所定値よりも遅い極微低速領域では、シリンダ室20からの油液Lは、第1減衰力発生機構202に固定オリフィスがないため、全流量が、第1減衰力発生機構161Bの固定オリフィス143から室142に流れ、複数の通路孔103内および通路凹部102内の通路から第3減衰力発生機構182を開いて室141と通路溝38内および複数の通路穴37内の通路とを介してシリンダ室19に流れる。すなわち、縮側通路144を介してシリンダ室19に流れる。よって、ピストン速度が極微低速領域であっても第3減衰力発生機構182によって即座に減衰力が立ち上がり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
【0193】
ピストン速度が第4所定値以上かつ第5所定値未満の微低速領域では、縮側通路144を介して油液Lが流れる際に、固定オリフィス143で規定されるオリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。これにより、オリフィス特性の減衰力が発生することになる。このため、微低速領域でのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が、極微低速領域よりも高くなる。
【0194】
ピストン速度が第5所定値以上に速くなると、シリンダ室20から第1通路44に導入される油液Lが第1減衰力発生機構202のディスクバルブ201を開きながらディスクバルブ201とバルブシート部49との間を通ってシリンダ室19に流れることになる。これにより、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度が第5所定値以上のときのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が、微低速領域よりも下がることになる。
【0195】
なお、緩衝器1,1A,1Bでは、油圧緩衝器を例に示したが、作動流体として水や空気を用いた緩衝器にも上記構造を採用することができる。
【符号の説明】
【0196】
1,1A…緩衝器、2…シリンダ、18…ピストン、19,20…シリンダ室、21…ピストンロッド、43…第1通路、161…第1減衰力発生機構、170,170A,280,280A…圧力室、175,175A…第2通路、176,176A…第2減衰力発生機構、177,177A…通路口、181…第3減衰力発生機構、233,233A…画成部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6