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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183005
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231220BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 451
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096349
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 忠
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB13
2C056EB27
2C056EB29
2C056EC13
2C056EC35
2C056EC69
2C056FA10
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】ユーザが想像しているような印刷結果が得られ易い。
【解決手段】プリンタ100は、媒体5を支持する支持台16と、インクを吐出するインクヘッド22と、媒体5に印刷されたテストパターンPT1を検出するセンサ32を有するセンサヘッド30と、インクヘッド22またはセンサヘッド30と、支持台16に支持された媒体5との相対的な位置を変更させる位置変更機構40と、制御装置60とを備えている。制御装置60は、支持台16に支持された媒体5に対して設定され、媒体5に印刷する予定の予定領域AR1を取得する取得部64と、印刷前において、センサ32に予定領域AR1上を走査させる走査部66と、走査部66によってセンサ32が走査した後、予定領域AR1に汚れがあるか否かをセンサ32の検出結果から判定する判定部68と、を備えている。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持する支持台と、
インクを吐出するインクヘッドと、
媒体に印刷されたテストパターンを検出するセンサを有するセンサヘッドと、
前記インクヘッドまたは前記センサヘッドと、前記支持台に支持された媒体との相対的な位置を変更させる位置変更機構と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記支持台に支持された媒体に対して設定され、媒体に印刷する予定の予定領域を取得する取得部と、
印刷前において、前記センサに前記予定領域上を走査させる走査部と、
前記走査部によって前記センサが走査した後、前記予定領域に汚れがあるか否かを前記センサの検出結果から判定する判定部と、
を備えた、プリンタ。
【請求項2】
前記制御装置は、前記支持台に支持された媒体に対する前記予定領域の位置、および、前記予定領域の大きさを含む印刷情報が記憶された記憶部を備え、
前記取得部は、前記記憶部から前記予定領域を取得する、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項3】
前記予定領域は、前記テストパターンを印刷する予定の領域である、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項4】
前記走査部は、前記テストパターンの印刷前において、前記センサに前記予定領域上を走査させる、請求項3に記載されたプリンタ。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記判定部によって前記予定領域に汚れがあると判定されたとき、前記支持台に支持された媒体に対する汚れ位置を取得する位置取得部と、
前記汚れ位置から外れるように、前記予定領域の位置を再設定する再設定部と、
を備え、
前記走査部は、前記再設定部によって再設定された前記予定領域上を前記センサに走査させる、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項6】
前記制御装置は、前記判定部によって前記予定領域に汚れがないと判定されたとき、前記予定領域を印刷領域に設定する印刷領域設定部を備えた、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記印刷領域設定部によって設定された前記印刷領域に前記テストパターンを印刷する印刷部を備えた、請求項6に記載されたプリンタ。
【請求項8】
前記制御装置は、前記印刷部によって印刷された前記テストパターンを前記センサで検出する検出部を備えた、請求項7に記載されたプリンタ。
【請求項9】
前記センサは、カラーセンサである、請求項1から8までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項10】
前記判定部は、前記支持台に支持された媒体の色と異なる色を前記予定領域から前記センサが検出したとき、前記予定領域に汚れがあると判定する、請求項9に記載されたプリンタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、媒体を支持するプラテンと、プラテンに向かってインクを吐出するインクヘッドとを備えたインクジェットプリンタが開示されている。インクヘッドは、キャリッジに搭載されており、キャリッジは、主走査方向に延びたガイドレールに係合している。
【0003】
上記インクジェットプリンタでは、キャリッジおよびインクヘッドを主走査方向へ移動させつつ、インクヘッドからインクを吐出させることで、主走査方向の1ラインにおける印刷が行われる。ここで、当該1ラインの印刷のことをスキャン印刷という。スキャン印刷が終了した後、プラテンに支持された媒体を副走査方向に所定の距離、移動させる。媒体の移動の後、次のスキャン印刷が行われる。以下、スキャン印刷と、媒体の移動とを繰り返し実行することで、対象の画像を媒体に印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-196537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、印刷前において、媒体には汚れが付いていることがあり得る。媒体に汚れが付いた状態で印刷を行うと、汚れと重なるように印刷が行われることがあった。その結果、ユーザが想像しているような印刷結果が得られないことがあった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザが想像しているような印刷結果が得られ易いプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプリンタは、媒体を支持する支持台と、インクを吐出するインクヘッドと、センサヘッドと、位置変更機構と、制御装置と、を備えている。前記センサヘッドは、媒体に印刷されたテストパターンを検出するセンサを有している。前記位置変更機構は、前記インクヘッドまたは前記センサヘッドと、前記支持台に支持された媒体との相対的な位置を変更させる。前記制御装置は、取得部と、走査部と、判定部とを備えている。前記取得部は、前記支持台に支持された媒体に対して設定され、媒体に印刷する予定の予定領域を取得する。前記走査部は、印刷前において、前記センサに前記予定領域上を走査させる。前記判定部は、前記走査部によって前記センサが走査した後、前記予定領域に汚れがあるか否かを前記センサの検出結果から判定する。
【0008】
前記プリンタによれば、媒体に印刷する予定の予定領域に汚れがある場合には、センサによって汚れていることが検出され、媒体に汚れがあると判定される。そのため、予定領域に汚れがある場合には、印刷前において予定領域に汚れがあることを把握することができる。このように、印刷前において、事前に予定領域の汚れを把握できるため、例えば汚れの位置から外れるように媒体に印刷を行うことができる。よって、汚れと重なるように印刷され難くすることができるため、ユーザが想像しているような印刷結果が得られ易い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザが想像しているような印刷結果が得られ易いプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るプリンタを示す正面図である。
図2図1のII-II断面におけるプリンタの断面図である。
図3】プリントヘッドの底面の構成を示す模式図である。
図4】実施形態に係るプリンタのブロック図である。
図5】テストパターンの一例を示す模式図である。
図6】媒体に対する予定領域と印刷領域を示す模式図である。
図7】媒体にテストパターンを印刷して検出するまでの制御手順について示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
【0012】
図1は、本実施形態に係るプリンタ100を示す正面図である。図2は、図1のII-II断面におけるプリンタ100の断面図である。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ100の前、後、左、右、上、下を示している。符号Yは主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは例えば左右方向である。符号Xは、副走査方向を示している。副走査方向Xは、主走査方向Yと異なる方向である。副走査方向Xは、平面視において主走査方向Yと交差(ここでは直交)している。副走査方向Xは、例えば前後方向である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものではない。
【0013】
プリンタ100は、インクジェット方式のプリンタである。図1に示すように、プリンタ100は、媒体5に対して印刷を行うものである。媒体5は例えばロール状の記録紙であり、いわゆるロール紙である。ただし、媒体5の種類は特に限定されない。媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙であってもよいし、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。媒体5の厚みも特に限定されず、比較的に厚いものであってもよいし、比較的に薄いものであってもよい。本実施形態では、媒体5の色は、白色である。ただし、媒体5の色も特に限定されるものではない。ここでは、媒体5は、白色の1色で構成されている。しかしながら、媒体5を構成する色の数も1色に限定されない。
【0014】
図1に示すように、プリンタ100は、プリンタ本体11を備えている。プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プリンタ本体11は、脚12に支持されている。脚12は、プリンタ本体11の底面から下方に延びている。本実施形態では、プリンタ本体11には、操作パネル13が設けられている。操作パネル13は、プリンタ100の状態や、媒体5の汚れの検出結果などに関する情報を表示する表示画面14と、操作キー15とを有している。ユーザは、例えば操作キー15を操作することで、表示画面14に各種の情報を表示させることができる。
【0015】
図2に示すように、プリンタ100は、プラテン16を備えている。プラテン16は、媒体5を支持する。ここでは、プラテン16の上面は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。媒体5は、プラテン16の上面に載置されている。プラテン16上において媒体5に対して印刷が行われる。本実施形態では、プラテン16は、支持台の一例である。
【0016】
図1に示すように、プリンタ100は、ガイドレール18と、プリントヘッド20と、センサヘッド30とを備えている。ガイドレール18は、プラテン16よりも上方に配置されている。ガイドレール18は、主走査方向Yに延びている。
【0017】
プリントヘッド20は、印刷に関するものである。プリントヘッド20は、プラテン16よりも上方に配置されている。プリントヘッド20は、ガイドレール18に沿って、主走査方向Yに移動可能に構成されている。図3は、プリントヘッド20の底面の構成を示す模式図である。図3に示すように、プリントヘッド20は、インクキャリッジ21と、インクヘッド22と、を備えている。
【0018】
図1に示すように、インクキャリッジ21は、ガイドレール18に摺動自在に係合しており、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。図2に示すように、インクヘッド22は、プラテン16よりも上方に配置されている。インクヘッド22は、プラテン16に支持された媒体5に向かってインクを吐出する。インクヘッド22は、インクキャリッジ21に搭載されている。ここでは、インクヘッド22は、底面が下方に向かって露出するようにインクキャリッジ21に設けられ、かつ、インクキャリッジ21に支持されている。なお、インクヘッド22の数は特に限定されない。本実施形態では、図3に示すように、インクヘッド22の数は4つである。4つのインクヘッド22は、主走査方向Yに並んで配置されている。
【0019】
ここでは、4つのインクヘッド22に対して、左から右に向かって符号22A、22B、22C、22Dを付すことにする。各インクヘッド22は、それぞれ異なる色のインクを貯留するインクカートリッジ(図示せず)と接続している。本実施形態では、インクヘッド22Aは、マゼンタインクを吐出する。インクヘッド22Bは、イエローインクを吐出する。インクヘッド22Cは、シアンインクを吐出する。インクヘッド22Dは、ブラックインクを吐出する。ただし、各インクヘッド22から吐出されるインクの色の種類は上記4種類に限定されない。また、インクの材料は何ら限定されず、従来からのインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよいし、水性染料インク、あるいは、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型の顔料インクなどであってもよい。
【0020】
本実施形態では、図3に示すように、各インクヘッド22は、複数のノズル23と、複数のノズル23が形成されたノズル面28とを有している。ノズル面28は、インクヘッド22の底面を構成している。1つのインクヘッド22において、複数のノズル23は、副走査方向Xに並んで配置されている。ここで、1つのインクヘッド22において、副走査方向Xに並んだ複数のノズル23の列のことをノズル列25という。本実施形態では、1つのインクヘッド22において、ノズル列25の数は1つであるが、複数であってもよい。なお、図3において、1つのノズル列25には、説明の便宜上、10個のノズル23が図示されているが、実際にはさらに多数(例えば180個程度)のノズル23で1つのノズル列25が構成されている。
【0021】
図1に示すように、センサヘッド30は、プラテン16よりも上方に配置されている。センサヘッド30は、プリントヘッド20と主走査方向Yに並んで配置されている。ここでは、センサヘッド30は、プリントヘッド20の左方に配置されているが、プリントヘッド20の右方に配置されていてもよい。センサヘッド30は、主走査方向Yに移動可能に構成されている。センサヘッド30は、センサキャリッジ31と、センサ32と、を有している。
【0022】
センサキャリッジ31は、ガイドレール18に摺動自在に係合しており、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0023】
センサ32は、プラテン16よりも上方に配置されている。センサ32は、センサキャリッジ31に設けられており、かつ、センサキャリッジ31に支持されている。センサ32は、媒体5に印刷された後述のテストパターンPT1(図5参照)を検出するためのセンサである。センサ32は、媒体5に対するテストパターンPT1の位置を検出するものであり、かつ、テストパターンPT1の形状を検出するものでもある。また、センサ32は、媒体5の汚れを検出することも可能である。センサ32の種類は、特に限定されないが、例えば光学式である。センサ32は例えばフォトセンサである。センサ32は、カラーを検出することが可能であり、例えばRGBでカラーを表現することが可能なカラーセンサであってもよい。
【0024】
本実施形態では、プリントヘッド20とセンサヘッド30とは連結可能なものである。センサヘッド30は、プリントヘッド20と離反して単独で主走査方向Yに移動可能である。プリントヘッド20は、センサヘッド30と連結し、センサヘッド30と共に主走査方向Yに移動可能である。ただし、プリントヘッド20は、センサヘッド30と離反して単独で主走査方向Yに移動可能であってもよい。
【0025】
本実施形態では、図1に示すように、プリンタ100は、位置変更機構40を備えている。位置変更機構40は、インクヘッド22またはセンサヘッド30と、プラテン16に支持された媒体5との相対的な位置を変更させる機構である。ここでは、位置変更機構40は、インクヘッド22と、プラテン16に支持された媒体5との相対的な主走査方向Yと副走査方向Xの位置を変更させ、かつ、センサヘッド30と、プラテン16に支持された媒体5との相対的な主走査方向Yと副走査方向Xの位置を変更させる。位置変更機構40は、インクヘッド22およびセンサヘッド30を、プラテン16に支持された媒体5に対して相対的に主走査方向Yに移動させ、かつ、プラテン16に支持された媒体5を、インクヘッド22およびセンサヘッド30に対して相対的に副走査方向Xに移動させる。
【0026】
本実施形態では、位置変更機構40は、第1移動機構41と、第2移動機構42とを備えている。第1移動機構41は、印刷時にインクヘッド22を主走査方向Yに移動させ、テストパターンPT1などをセンサ32が検出するときにセンサヘッド30を主走査方向Yに移動させる。第1移動機構41の構成は、特に限定されない。本実施形態では、第1移動機構41は、ガイドレール18の左右の両端部の周囲に設けられた左右のプーリ51a、51bと、左右のプーリ51a、51bに巻き掛けられたベルト52と、右のプーリ51bに接続されたキャリッジモータ53とを備えている。ベルト52には、センサヘッド30が固定されている。キャリッジモータ53が駆動することで、右のプーリ51bが回転し、ベルト52が走行する。このことで、センサヘッド30が主走査方向Yに移動する。センサヘッド30にプリントヘッド20が連結されているときには、センサヘッド30と共に、プリントヘッド20(ここでは、インクキャリッジ21、および、インクヘッド22A~22D(図3参照))が主走査方向Yに移動する。
【0027】
第2移動機構42は、プラテン16に支持された媒体5を、副走査方向Xに移動させる機構である。ここでは、第2移動機構42は、プラテン16に支持された媒体5を、副走査方向Xの上流側から下流側(本実施形態では後側から前側)に向かって移動させる。なお、第2移動機構42の構成は、特に限定されない。本実施形態では、第2移動機構42は、例えばプラテン16に設けられたグリットローラ55と、グリットローラ55と共に媒体5を挟むピンチローラ56と、グリットローラ55に接続されたフィードモータ57とを備えている。フィードモータ57が駆動してグリットローラ55が回転する。このことで、グリットローラ55とピンチローラ56とに挟まれた媒体5は、副走査方向Xに移動する。
【0028】
プリンタ100は、制御装置60を備えている。制御装置60は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。制御装置60は、例えばホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリと、を備えている。なお、制御装置60は必ずしもプリンタ100のプリンタ本体11の内部に設けられている必要はなく、例えばプリンタ100のプリンタ本体11の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ100と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。
【0029】
図4は、プリンタ100のブロック図である。本実施形態では、図4に示すように、制御装置60は、操作パネル13、インクヘッド22、センサ32、位置変更機構40(詳しくは、第1移動機構41のキャリッジモータ53、および、第2移動機構42のフィードモータ57)と通信可能に接続されている。制御装置60は、操作パネル13、インクヘッド22、センサ32、位置変更機構40を制御可能に構成されている。
【0030】
ところで、各インクヘッド22のノズル23は、例えば目詰まりなどの理由で吐出不良に陥ることがあり得る。図5は、テストパターンPT1の一例を示す模式図である。図5では、テストパターンPT1の左側には、平面視におけるインクヘッド22A~22Dが示されている。図5では、見易さを考慮して、インクヘッド22A~22Dのノズル23は実線で示されている。また、図5では、説明の簡略化のため、各インクヘッド22において、ノズル23の数は10個としている。本実施形態では、図5に示すようなテストパターンPT1を媒体5に印刷することで、ノズル23の吐出不良のチェックを行う。
【0031】
ここで、テストパターンPT1とは、インクヘッド22A~22Dの各ノズル23の1つ1つの吐出状態を確認するための検査用画像である。例えば、インクの吐出不良が生じているノズル23が存在する場合、当該ノズル23がインクを吐出すべきテストパターンPT1上の位置にパターンの欠落が生じる。ここで、パターンの欠落のことをノズル抜けとも称する。また、インクを吐出するが、正常にインクを吐出することができないノズル23が存在する場合、パターンの位置ずれなどの問題が生じる。このテストパターンPT1の印刷は、インクヘッド22を主走査方向Yに移動させることで行なわれる。
【0032】
なお、テストパターンPT1の構成は特に限定されない。図5に示すように、本実施形態では、テストパターンPT1は、4つのパターン列P1、P2、P3、P4を有している。パターン列P1、P2、P3、P4の数は、インクヘッド22の数に対応している。パターン列P1は、インクヘッド22Aから吐出されたマゼンタインクのインクドットによって形成されている。パターン列P2は、インクヘッド22Bから吐出されたイエローインクのインクドットによって形成されている。パターン列P3は、インクヘッド22Cから吐出されたシアンインクのインクドットによって形成されている。パターン列P4は、インクヘッド22Dのブラックインクのインクドットによって形成されている。本実施形態では、各パターン列P1~P4は、左側からP1、P2、P3、P4の順に主走査方向Yに並んでいる。パターン列P1~P4の主走査方向Yの並び順は、インクヘッド22A~22Dの主走査方向Yの並び順と同じである。
【0033】
本実施形態では、各パターン列P1~P4は、同じ構成をしている。そのため、ここでは、パターン列P1の構成について説明し、パターン列P2、P3、P4の構成に関する説明は省略する。本実施形態では、パターン列P1は、10本の印刷ラインL1~L10によって構成されている。印刷ラインL1~L10は、副走査方向Xに1列に並んでいる。パターン列P1の各印刷ラインL1~L10は、それぞれインクヘッド22Aのノズル23a~23jから吐出されるインクドットによって形成されたものである。例えば、印刷ラインL1は、ノズル23aから吐出されるマゼンタインクによって形成されたものである。印刷ラインL2は、ノズル23bから吐出されるマゼンタインクによって形成されたものである。また、印刷ラインL10は、ノズル23jから吐出されるマゼンタインクによって形成されたものである。なお、他のパターン列P2、P3、P4についても同様である。このように、本実施形態では、パターン列P1は、インクヘッド22Aのノズル23の数と同じ数の印刷ラインL1~L10によって構成されている。
【0034】
テストパターンPT1の印刷ラインL1~L10は、インクヘッド22A~22Dが主走査方向Yの一方向に移動する際に印刷される。すなわち、テストパターンPT1が媒体5に印刷される際、媒体5は不動である。したがって、パターン列P1において、印刷ラインL1~L10は、ノズル23の副走査方向Xのピッチと同じピッチで印刷されている。なお、図5では、ノズル23は10個しか図示されていないが、実際には、例えば180個程度である。ノズル23の副走査方向Xの実際のピッチは、例えば180dpi程度である。
【0035】
ところで、プラテン16に支持された媒体5には、汚れが付いていることがあり得る。この汚れとは、例えばインクや埃などのゴミである。仮に媒体5に汚れが付いた状態で印刷を行うと、汚れと重なるように印刷が行われることがあった。このように、汚れと重なるように印刷が行われると、汚れが印刷の一部のように見えるため、ユーザが想像しているような印刷結果とならないことや、印刷の品質が低下することがあった。
【0036】
特に、図5に示すようなテストパターンPT1を、汚れが付いた状態の媒体5に印刷すると、汚れと重なるようにテストパターンPT1の印刷が行われることがあった。汚れと重なるようにテストパターンPT1の印刷が行われると、テストパターンPT1のパターン(例えば印刷ラインL1~L10)と汚れが一体となって、例えばパターンの欠落が生じていないにも関わらず、パターンが欠落していると誤検出することがあった。その結果、インクの吐出不良が発生していないにも関わらず、インクの吐出不良が発生していると誤認識することがあった。
【0037】
そこで、本実施形態では、印刷前、ここではテストパターンPT1の印刷前において、媒体5に汚れがあるか否かの判定を行う。そして、媒体5に汚れがあると判定された場合には、媒体5に対するテストパターンPT1を印刷する領域の位置を調整する。
【0038】
図6は、媒体5に対する予定領域AR1と印刷領域AR2を示す模式図である。プラテン16に支持された媒体5には、図6に示すように、予定領域AR1と印刷領域AR2とが設定される。予定領域AR1とは、媒体5に対して設定され、媒体5に印刷する予定の領域のことである。本実施形態では、予定領域AR1とは、テストパターンPT1を印刷する予定の領域のことである。予定領域AR1は、テストパターンPT1が収まる大きさを有している。ここでは、予定領域AR1は、四角形状であるが、予定領域AR1の形状は特に限定されず、テストパターンPT1の全体の形状に応じて設定されるものである。本実施形態では、予定領域AR1は、媒体5に汚れがある場合には、汚れの位置から外れるようにして、媒体5に対する位置が調整される。
【0039】
例えば図6に示すように、予定領域AR1が再設定前領域AR1aに設定されている場合において、再設定前領域AR1a内に汚れA1があるとする。この場合、予定領域AR1は、汚れA1の位置から外れるように、再設定前領域AR1aから所定の方向(ここでは、主走査方向Yの左方)にズレた位置に設定された再設定後領域AR1bに変更される。ここで、再設定後領域AR1bは、再設定前領域AR1aから右方にズレた位置であってもよいし、再設定前領域AR1aから副走査方向X(例えば前方または後方)にズレた位置であってもよい。また、再設定後領域AR1bは、再設定前領域AR1aから、主走査方向Yと副走査方向Xとの間の斜めの方向にズレた位置であってもよい。また、再設定前領域AR1aと、再設定後領域AR1bとは、一部が重なっていてもよいし、全部が重なっていなくてもよい。
【0040】
印刷領域AR2は、媒体5に対して設定され、媒体5に実際に印刷する領域のことである。本実施形態では、印刷領域AR2は、テストパターンPT1を実際に印刷する媒体5の領域である。ここでは、汚れA1がない予定領域AR1が印刷領域AR2として設定される。そのため、印刷領域AR2は、予定領域AR1と同じ形状および大きさである。図6の一例では、再設定前領域AR1a内には汚れA1があるため、再設定前領域AR1aは、印刷領域AR2に設定されない。一方、再設定後領域AR1b内には汚れA1がないため、再設定後領域AR1bが印刷領域AR2に設定される。
【0041】
本実施形態では、図4に示すように、制御装置60は、記憶部62と、取得部64と、走査部66と、判定部68と、位置取得部70と、再設定部72と、印刷領域設定部74と、印刷部76と、検出部78とを備えている。なお、上述した制御装置60の各部62~78は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置60の各部62~78は、1つまたは複数のプロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。制御装置60の各部62~78の制御については、後述する。
【0042】
次に、本実施形態に係るプリンタ100において、テストパターンPT1を印刷して、テストパターンPT1を検出するまでの制御手順について、図7のフローチャートに沿って説明する。
【0043】
まず図7のステップS101では、図4の取得部64は、テストパターンPT1(図5参照)を印刷する予定の予定領域AR1を取得する。本実施形態では、記憶部62には、図4に示すように、印刷情報P11が予め記憶されている。印刷情報P11には、プラテン16に支持された媒体5に対する予定領域AR1の位置、および、予定領域AR1の大きさや形状などが含まれている。ここでは、取得部64は、記憶部62から印刷情報P11を取得する。そして、取得部64は、記憶部62から取得した印刷情報P11から、予定領域AR1を取得する。ここでは、「予定領域AR1を取得する」とは、媒体5に対する予定領域AR1の位置や、予定領域AR1の大きさや形状を取得することである。図6の一例では、取得部64は、再設定前領域AR1aを予定領域AR1として取得する。
【0044】
次に、図7のステップS103では、図4の走査部66は、印刷前において、センサ32に予定領域AR1上を走査させる。ここでは、走査部66は、テストパターンPT1の印刷前において、センサ32に予定領域AR1(図6では、再設定前領域AR1a)上を走査させる。走査部66は、位置変更機構40(図1参照)を制御することで、センサヘッド30と、プラテン16に支持された媒体5との相対的な位置を変更させる。このことで、センサヘッド30に設けられたセンサ32は、プラテン16に支持された媒体5に設定された予定領域AR1上を走査することができる。
【0045】
ここでは、例えば走査部66は、第1移動機構41を制御することで、センサ32が主走査方向Yに移動する。このことで、センサ32は、予定領域AR1上を主走査方向Yに走査する。その後、走査部66は、第2移動機構42を制御することで、プラテン16に支持された媒体5を副走査方向Xに所定の距離、移動させる。次に、センサ32を主走査方向Yに移動させて、センサ32に予定領域AR1上を走査させる。このように、センサ32の主走査方向Yへの移動と、媒体5の副走査方向Xへの移動とを繰り返し行うことで、予定領域AR1の全体をセンサ32が走査することができる。なお、仮にセンサ32が1回の主走査方向Yの移動によって、予定領域AR1の全体の走査ができる場合には、媒体5の副走査方向Xへの移動は、省略されてもよい。
【0046】
なお、センサ32は、予定領域AR1上を走査するときに、予定領域AR1内に汚れがある場合には、汚れを検出する。ここでは、センサ32は、媒体5上の色の変化を検出することで、汚れを検出する。センサ32は、予定領域AR1上を走査しているときにおいて、プラテン16に支持された媒体5の色と異なる色を、予定領域AR1から検出した場合に、汚れを検出する。例えば媒体5の色は白色である。この場合、センサ32は、白色以外の色を予定領域AR1から検出したときに、汚れを検出する。なお、センサ32が汚れを検出したときには、プラテン16に支持された媒体5に対するセンサ32の位置が、制御装置60の記憶部62に記憶される。汚れを検出したときの媒体5に対するセンサ32の位置が、汚れの位置となる。
【0047】
このように、予定領域AR1上をセンサ32に走査させた後、図7のステップS105では、図4の判定部68は、走査部66によってセンサ32が走査した後、予定領域AR1に汚れがあるか否かを判定する。ここでは、判定部68は、センサ32が予定領域AR1上を走査中に汚れを検出したときには、予定領域AR1に汚れがあると判定する。言い換えると、判定部68は、プラテン16に支持された媒体5の色(ここでは白色)と異なる色を予定領域AR1からセンサ32が検出したとき、予定領域AR1に汚れがあると判定する。一方、判定部68は、センサ32が予定領域AR1上を走査中に汚れを検出しなかったときには、予定領域AR1に汚れがないと判定する。言い換えると、判定部68は、プラテン16に支持された媒体5の色と異なる色を予定領域AR1からセンサ32が検出しなかったとき、すなわち媒体5の色のみをセンサ32が検出したときには、予定領域AR1に汚れがないと判定する。
【0048】
ここで、判定部68によって予定領域AR1に汚れがあると判定されたとき、ステップS105の判定結果をYESとして、次にステップS107に進む。図6の一例において、予定領域AR1が再設定前領域AR1aの場合、再設定前領域AR1aには、汚れA1があるため、判定部68は、予定領域AR1(ここでは再設定前領域AR1a)に汚れA1があると判定する。そのため、次にステップS107に進む。
【0049】
ステップS107では、図4の位置取得部70は、プラテン16に支持された媒体5に対する汚れ位置を取得する。ここでは、位置取得部70は、センサ32の検出結果から汚れ位置を取得することができる。上述のように、センサ32が予定領域AR1を走査しているときに、媒体5の汚れを検出したときには、媒体5に対するセンサ32の位置が記憶部62に記憶される。位置取得部70は、記憶部62に記憶された上記の媒体5に対するセンサ32の位置を、媒体5に対する汚れ位置として取得する。図6の一例では、媒体5に対する汚れA1の位置が位置取得部70によって取得されることになる。
【0050】
次に、図7のステップS109では、図4の再設定部72は、汚れ位置から外れるように、予定領域AR1の位置を再設定する。例えば図6の一例では、予定領域AR1が再設定前領域AR1aである場合、再設定部72は、汚れA1の位置から外れるように、予定領域AR1を、再設定前領域AR1aから再設定後領域AR1bに再設定する。上述のように、再設定前後の予定領域AR1である再設定前領域AR1aと再設定後領域AR1bとは、図6のように主走査方向Yにズレていてもよいが、副走査方向Xにズレていてもよいし、主走査方向Yと副走査方向Xとの間の斜めの方向にズレていてもよい。また、再設定前領域AR1aと再設定後領域AR1bとは、一部が重なっていてもよいし、全体が重なっていなくてもよい。
【0051】
このように、予定領域AR1が再設定された後、ステップS103に戻る。このときのステップS103では、図6において、予定領域AR1が再設定後領域AR1bであるため、センサ32は、再設定後領域AR1b上を走査することになる。
【0052】
図7のステップS105において、判定部68によって予定領域AR1に汚れがないと判定されたとき、ステップS105の判定結果をNOとして、次にステップS111に進む。図6の一例において、予定領域AR1が再設定後領域AR1bの場合、再設定後領域AR1bには、汚れA1がないため、判定部68は、予定領域AR1(ここでは再設定後領域AR1b)に汚れA1がないと判定する。この場合、次にステップS111に進む。
【0053】
ステップS111では、図4の印刷領域設定部74は、判定部68によって予定領域AR1に汚れがないと判定されたとき、予定領域AR1を印刷領域AR2に設定する。ここでは、印刷領域AR2には、汚れを有しない予定領域AR1が設定されることになる。図6の一例では、予定領域AR1が再設定後領域AR1bの場合、印刷領域設定部74は、汚れA1を有しない再設定後領域AR1bを印刷領域AR2に設定する。
【0054】
次に、図7のステップS113では、図4の印刷部76は、印刷領域設定部74によって設定された印刷領域AR2に、図5に示すようなテストパターンPT1を印刷する。ここでは、印刷領域AR2は、プラテン16に支持された媒体5に対して設定されているため、印刷部76は、プラテン16に支持された媒体5の印刷領域AR2にテストパターンPT1を印刷する。印刷部76は、媒体5を副走査方向Xに移動させずに、インクヘッド22を主走査方向Yに移動させるように第1移動機構41(図1参照)を制御する。そして、インクヘッド22が主走査方向Yに移動している間、印刷部76は、インクヘッド22A~22Dのそれぞれのノズル23a~23j(図5参照)からインクを吐出させて、印刷領域AR2に、パターン列P1~P4におけるそれぞれの印刷ラインL1~L10(図5参照)を印刷する。
【0055】
ここでは、図5に示すように、パターン列P1の印刷ラインL1~L10は、それぞれインクヘッド22Aのノズル23a~23jから吐出されたマゼンタインクによって印刷される。パターン列P2の印刷ラインL1~L10は、それぞれインクヘッド22Bのノズル23a~23jから吐出されたイエローインクによって印刷される。同様に、パターン列P3の印刷ラインL1~L10は、それぞれインクヘッド22Cのノズル23a~23jから吐出されたシアンインクによって印刷され、パターン列P4の印刷ラインL1~L10は、それぞれインクヘッド22Dのノズル23a~23jから吐出されたブラックインクによって印刷される。
【0056】
このようにして、テストパターンPT1が印刷された後、図7のステップS115では、図4の検出部78は、印刷部76によって印刷されたテストパターンPT1をセンサ32で検出する。ここでは、センサ32が、媒体5の印刷領域AR2に印刷されたテストパターンPT1上を走査するときに、テストパターンPT1の各パターン列P1~P4の印刷ラインL1~L10の位置や形状などを検出する。例えば検出部78は、第1移動機構41(図1参照)を制御することで、センサ32が主走査方向Yに移動する。このことで、センサ32が印刷領域AR2上を主走査方向Yに走査する。このとき、センサ32の直下のテストパターンPT1の部分が検出される。その後、検出部78は、第2移動機構42(図1参照)を制御することで、プラテン16に支持された媒体5を副走査方向Xに所定の距離、移動させる。次に、センサ32を主走査方向Yに移動させて、センサ32に印刷領域AR2上を走査させる。このように、センサ32の主走査方向Yへの移動と、媒体5の副走査方向Xへの移動とを繰り返し行うことで、印刷領域AR2に印刷されたテストパターンPT1の全体の走査および検出が行われる。なお、仮にセンサ32が1回の主走査方向Yの移動によって、印刷領域AR2の全体の走査、および、テストパターンPT1の全体の検出ができる場合には、媒体5の副走査方向Xへの移動は、省略されてもよい。
【0057】
このようにして、媒体5に印刷されたテストパターンPT1をセンサ32が検出することができる。なお、テストパターンPT1を検出した後は、制御装置60は、例えば全ての印刷ラインL1~L10に欠落や、形状の変化がないかをチェックする。ここでは、例えば画像処理の技術を用いて、印刷ラインL1~L10のチェックを行うとよい。そして、欠落や形状の変化があった印刷ラインL1~L10があった場合には、その印刷ラインL1~L10を形成しているインクを吐出したノズル23が吐出不良であると判断される。仮に吐出不良のノズル23が存在している場合には、いわゆるクリーニング動作をインクヘッド22に対して実行することで、ノズル23の吐出不良を解消させるとよい。このように、ノズル23の吐出不良が解消された後、媒体5に対する印刷(例えば印刷データに示された画像の印刷)を行うとよい。
【0058】
以上、本実施形態では、図1に示すように、プリンタ100は、媒体5を支持する支持台の一例であるプラテン16と、インクを吐出するインクヘッド22(図2参照)と、センサヘッド30と、位置変更機構40と、制御装置60と、を備えている。センサヘッド30は、媒体5に印刷されたテストパターンPT1(図5参照)を検出するセンサ32を有している。位置変更機構40は、インクヘッド22またはセンサヘッド30と、プラテン16に支持された媒体5との相対的な位置を変更させる。制御装置60は、図4に示すように、取得部64と、走査部66と、判定部68とを備えている。取得部64は、図7のステップS101に示すように、プラテン16に支持された媒体5に対して設定され、媒体5に印刷する予定の予定領域AR1を取得する。走査部66は、図7のステップS103に示すように、印刷前において、センサ32に予定領域AR1上を走査させる。判定部68は、図7のステップS105に示すように、走査部66によってセンサ32が走査した後、予定領域AR1に汚れがあるか否かをセンサ32の検出結果から判定する。このことによって、媒体5に印刷する予定の予定領域AR1に汚れがある場合には、センサ32によって汚れていることが検出され、媒体5に汚れがあると判定される。そのため、予定領域AR1に汚れがある場合には、印刷前において予定領域AR1に汚れがあることを把握することができる。このように、印刷前において、事前に予定領域AR1の汚れを把握できるため、例えば汚れの位置から外れるように媒体5に印刷を行うことができる。よって、汚れと重なるように印刷され難くすることができるため、ユーザが想像しているような印刷結果が得られ易い。
【0059】
本実施形態では、制御装置60は、プラテン16に支持された媒体5に対する予定領域AR1の位置、および、予定領域AR1の大きさを含む印刷情報P11が記憶された記憶部62(図4参照)を備えている。取得部64は、記憶部62から予定領域AR1を取得する。このように、本実施形態では、記憶部62に印刷情報P11が記憶されているため、予定領域AR1を容易に取得することができる。
【0060】
本実施形態では、予定領域AR1は、テストパターンPT1(図5参照)を印刷する予定の領域である。走査部66は、テストパターンPT1の印刷前において、センサ32に予定領域AR1上を走査させる。例えば汚れが付いた状態の媒体5にテストパターンPT1を印刷すると、汚れと重なるようにテストパターンPT1の印刷が行われることがある。汚れと重なるようにテストパターンPT1の印刷が行われると、テストパターンPT1の印刷ラインL1~L10(図5参照)と汚れが一体となって、ノズル23の吐出不良が発生していないにも関わらず、ノズル23の吐出不良が発生しているという誤検出が生じることがあった。しかしながら、本実施形態では、汚れていない媒体5の領域に対してテストパターンPT1を印刷することができる。よって、上記誤検出が生じることを抑制することができる。
【0061】
本実施形態では、制御装置60は、図4に示すように、位置取得部70と、再設定部72とを備えている。位置取得部70は、図7のステップS107に示すように、判定部68によって予定領域AR1に汚れがあると判定されたとき、プラテン16に支持された媒体5に対する汚れ位置を取得する。再設定部72は、図7のステップS109に示すように、汚れ位置から外れるように、予定領域AR1の位置を再設定する。走査部66は、図7のステップS103に示すように、再設定部72によって再設定された予定領域AR1上をセンサ32に走査させる。このことによって、再設定された予定領域AR1に対しても汚れの検出がセンサ32によって行われる。そのため、再設定された予定領域AR1に対して汚れがあるか否かの判定を行うことができる。よって、汚れがないと判定されるまで予定領域AR1が再設定されるため、汚れがない予定領域AR1を見付けることができる。
【0062】
本実施形態では、制御装置60は、判定部68によって予定領域AR1に汚れがないと判定されたとき、予定領域AR1を印刷領域AR2に設定する印刷領域設定部74(図4参照)を備えている。このことによって、汚れがない予定領域AR1が印刷領域AR2に設定されるため、印刷領域AR2を汚れのない領域にすることができる。
【0063】
本実施形態では、制御装置60は、印刷領域設定部74によって設定された印刷領域AR2にテストパターンPT1を印刷する印刷部76(図4参照)を備えている。このことによって、印刷部76によって、汚れていない媒体5の領域にテストパターンPT1を印刷することができる。
【0064】
本実施形態では、制御装置60は、印刷部76によって印刷されたテストパターンPT1をセンサ32で検出する検出部78(図4参照)を備えている。ここでは、汚れていない媒体5の領域にテストパターンPT1が印刷されているため、汚れとテストパターンPT1とが重なっていないと考えられる。よって、汚れを起因として、センサ32がテストパターンPT1を誤検出することを抑制することができる。
【0065】
本実施形態では、センサ32は、カラーセンサである。判定部68は、プラテン16に支持された媒体5の色と異なる色を予定領域AR1からセンサ32が検出したとき、予定領域AR1に汚れがあると判定する。このように、媒体5の色と異なる色を検出することで、汚れを検出し易くすることができる。
【0066】
上記実施形態では、テストパターンPT1の印刷前に、媒体5の予定領域AR1に汚れがあるか否かを判定していた。しかしながら、上記の「印刷前」は、テストパターンPT1の印刷前に限定されない。「印刷前」は、いわゆる通常の印刷、例えば印刷データによって示された画像に対する印刷の前であってもよい。すなわち、媒体5に汚れがあるか否かの判定は、いわゆる通常の印刷前に行われるものであってもよい。このことによって、汚れていない媒体5の領域に対して、印刷データによって示された画像を印刷することができるため、ユーザが想像しているような印刷結果が得られ易い。
【0067】
上記実施形態では、テストパターンPT1は、ノズル23の吐出不良をチェックするためのパターンであった。しかしながら、テストパターンPT1の用途は、ノズル23の吐出不良のチェックに限定されない。例えばテストパターンPT1は、いわゆる双方向印刷の際の往路と復路とのインクの着弾位置を調整するためのテストパターンであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
5 媒体
16 プラテン(支持台)
22 インクヘッド
30 センサヘッド
32 センサ
40 位置変更機構
60 制御装置
62 記憶部
64 取得部
66 走査部
68 判定部
70 位置取得部
72 再設定部
74 印刷領域設定部
76 印刷部
78 検出部
100 プリンタ
AR1 予定領域
AR2 印刷領域
PT1 テストパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7