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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183015
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】半導体装置および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20231220BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20231220BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20231220BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/06 301V
H01L29/06 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096367
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】菅原 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】福井 裕
(72)【発明者】
【氏名】足立 亘平
(72)【発明者】
【氏名】石橋 和也
(57)【要約】
【課題】狭メサ構造とスーパージャンクション構造とを組み合わせても、抵抗と耐圧との関係が悪化することを防止できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置101は、ソース領域4およびベース領域3を貫通する複数のトレンチ16と、複数のトレンチ16の間の領域であるメサ領域15とを備える。トレンチ16内には、ゲート絶縁膜5を介してベース領域3に面するゲート電極6が形成されている。トレンチ16の直下には、電界緩和層8が設けられる。ベース領域3とドリフト層2との間には、第1ピラー層13および第2ピラー層14が交互に配設されたスーパージャンクション構造が形成されている。第1ピラー層13の幅は、電界緩和層8の幅以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および前記第1主面の反対側の第2主面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記第1主面と前記第2主面との間に形成された第1導電型のドリフト層と、
前記半導体基板の前記第1主面側の表層部に形成された第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の表層部に形成された第1導電型のソース領域と、
前記ベース領域の表層部における前記ソース領域が形成されていない領域であるコンタクト領域と、
前記半導体基板の前記第1主面上に形成され、前記ソース領域および前記コンタクト領域に接続するソース電極と、
前記半導体基板の前記第1主面側に形成され、前記ソース領域および前記ベース領域を貫通する複数のトレンチと、
複数の前記トレンチの間の領域であり、前記ベース領域および前記ソース領域が設けられたメサ領域と、
前記トレンチ内に形成され、ゲート絶縁膜を介して前記ベース領域に面するゲート電極と、
前記トレンチの直下に設けられた第2導電型の電界緩和層と、
前記ベース領域と前記ドリフト層との間に設けられ、第2導電型の第1ピラー層および第1導電型の第2ピラー層が交互に配設されたスーパージャンクション構造と、
を備え、
前記第1ピラー層の幅は、前記電界緩和層の幅以下である、
半導体装置。
【請求項2】
前記第2ピラー層の幅は、前記メサ領域の幅よりも広い、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
第1主面および前記第1主面の反対側の第2主面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記第1主面と前記第2主面との間に形成された第1導電型のドリフト層と、
前記半導体基板の前記第1主面側の表層部に形成された第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の表層部に形成された第1導電型のソース領域と、
前記ベース領域の表層部における前記ソース領域が形成されていない領域であるコンタクト領域と、
前記半導体基板の前記第1主面上に形成され、前記ソース領域および前記コンタクト領域に接続するソース電極と、
前記半導体基板の前記第1主面側に形成され、前記ソース領域および前記ベース領域を貫通する複数のトレンチと、
複数の前記トレンチの間の領域であり、前記ベース領域および前記ソース領域が設けられたメサ領域と、
前記トレンチ内に形成され、ゲート絶縁膜を介して前記ベース領域に面するゲート電極と、
前記トレンチの直下に設けられた第2導電型の電界緩和層と、
前記ベース領域と前記ドリフト層との間に設けられ、第2導電型の第1ピラー層および第1導電型の第2ピラー層が交互に配設されたスーパージャンクション構造と、
を備え、
前記第1ピラー層の設置周期と前記トレンチの設置周期との比が、1対1を除く整数対整数の比で表される、
半導体装置。
【請求項4】
前記第1ピラー層および前記第2ピラー層の延在方向は、前記トレンチの延在方向と同じであり、
前記第1ピラー層は、前記電界緩和層の直下に配置されている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1ピラー層および前記第2ピラー層の延在方向は、前記トレンチの延在方向に直交する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板の深さ方向において、前記第1ピラー層および前記第2ピラー層の長さは、前記ドリフト層の底から前記電界緩和層の底までの長さの半分以上である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記メサ領域の幅は0.2μm以下である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記メサ領域における前記コンタクト領域の直下に形成され、前記電界緩和層と前記ベース領域を接続する第2導電型の接続層をさらに備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記メサ領域の表面において、前記コンタクト領域の面積は前記ソース領域の面積よりも小さい、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体基板は、炭化珪素により形成されている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記半導体装置を駆動する駆動信号を前記半導体装置に出力する駆動回路と、
前記駆動回路を制御する制御信号を前記駆動回路に出力する制御回路と、
を備えた電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置および電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーエレクトロニクス機器において、モータ等の負荷への電力供給を制御するスイッチング素子として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの絶縁ゲート型半導体装置が広く使用されている。
【0003】
一方、次世代のスイッチング素子として、炭化珪素(SiC)等のワイドバンドギャップ半導体を用いたMOSFETやIGBTなどが注目されており、1kV程度あるいはそれ以上の高電圧を扱う技術分野への適用が有望視されている。ワイドバンドギャップ半導体としては、SiCの他、例えば窒化ガリウム(GaN)系材料、ダイヤモンドなどがある。
【0004】
MOSFETの抵抗成分には、チャネルと呼ばれる反転層の抵抗成分であるチャネル抵抗、ドリフト層の抵抗成分であるドリフト抵抗、主電極としての金属電極と半導体層とのコンタクト抵抗などがある。また、MOSFETには大きく分けてプレーナ型とトレンチ型がある。プレーナ型では半導体層の表面上にゲート構造が配置され、トレンチ型では半導体層に形成されたトレンチ内にゲート構造が配置される。通常、プレーナ型よりもトレンチ型の方が、チャネル密度を高くできるため、チャネル抵抗を低減できる。
【0005】
しかし、トレンチ型では、ゲート構造が形成されたトレンチの底部に電界が集中するため、ゲート酸化膜の信頼性が劣化しやすいという問題がある。この問題を解決する技術として、トレンチの底部にp型の電界緩和層を設け、トレンチの底部にまで空乏層を延ばすことによって、トレンチの底部にかかる電界を緩和する技術が提案されている。さらに、電界緩和層を接地すれば、スイッチング時の空乏層の変位が高速化され、スイッチング損失を低減することもできる。
【0006】
ゲート構造にゲート電圧が印加されたときに反転層(チャネル)が形成されるのは、ゲート構造に面する半導体層の表層部のみである。よって、トレンチ型のMOSFETでは、ゲート構造のトレンチに挟まれたメサ状の半導体領域(以下「メサ領域」という)の両側面の表層部のみに反転層が形成される。しかし、両側面の反転層が繋がる程度にまでメサ領域の幅を狭くすれば、メサ領域の全域に反転層を形成することができ、チャネル抵抗をさらに低減できる。このように反転層がメサ領域の全域に形成されるようにメサ領域を狭くした構造は「狭メサ構造」と呼ばれる。
【0007】
一方、ドリフト層は、反転層が形成される部分と半導体基板との間に設けられる半導体領域であり、ドリフト層が空乏化することでMOSFET全体の耐圧が保持される。ドリフト抵抗を低減させる技術として、それぞれ縦方向に延びるp型の半導体領域であるp型ピラー層とn型の半導体領域であるn型ピラー層とを交互に配したスーパージャンクションと呼ばれる構造がある。スーパージャンクション構造では、p型ピラー層とn型ピラー層との間に延びる空乏層によって耐圧が保持され、n型ピラー層の不純物濃度を高く設計できるためドリフト抵抗を低くすることができる。
【0008】
トレンチ型構造とスーパージャンクション構造の双方を適用すれば、チャネル抵抗およびドリフト抵抗を低減できるため、MOSFETの抵抗を小さくすることができる。例えば下記の特許文献1には、トレンチ型構造とスーパージャンクション構造の双方を適用した半導体装置が開示されている。また、特許文献2には、ゲート構造のトレンチの直下に電界緩和層を設け、スーパージャンクション構造のp型ピラー層を電界緩和層の直下に配置した炭化珪素半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-66708号公報
【特許文献2】特開2021-27138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、トレンチ型構造とスーパージャンクション構造とを組み合わせれば、半導体装置の抵抗を削減できる。しかし、半導体装置の製造における加工技術を考慮すると、メサ領域は狭くできるとしてもトレンチを狭くすることには限界があるため、狭メサ構造を有する半導体装置では、トレンチの割合がメサ領域の割合よりも大きくなっていた。その場合、全てのトレンチの直下にp型ピラー層を配置すると、p型ピラー層とn型ピラー層との比率が理想的なものから外れてしまい、半導体装置の抵抗と耐圧との関係が悪化することが分かってきた。
【0011】
本開示は以上のような課題を解決するためになされたものであり、狭メサ構造とスーパージャンクション構造とを組み合わせても、抵抗と耐圧との関係が悪化することを防止できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る半導体装置は、第1主面および前記第1主面の反対側の第2主面を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記第1主面と前記第2主面との間に形成された第1導電型のドリフト層と、前記半導体基板の前記第1主面側の表層部に形成された第2導電型のベース領域と、前記ベース領域の表層部に形成された第1導電型のソース領域と、前記ベース領域の表層部における前記ソース領域が形成されていない領域であるコンタクト領域と、前記半導体基板の前記第1主面上に形成され、前記ソース領域および前記コンタクト領域に接続するソース電極と、前記半導体基板の前記第1主面側に形成され、前記ソース領域および前記ベース領域を貫通する複数のトレンチと、複数の前記トレンチの間の領域であり、前記ベース領域および前記ソース領域が設けられたメサ領域と、前記トレンチ内に形成され、ゲート絶縁膜を介して前記ベース領域に面するゲート電極と、前記トレンチの直下に設けられた第2導電型の電界緩和層と、前記ベース領域と前記ドリフト層との間に設けられ、第2導電型の第1ピラー層および第1導電型の第2ピラー層が交互に配設されたスーパージャンクション構造と、を備え、前記第1ピラー層の幅は、前記電界緩和層の幅以下である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、スーパージャンクション構造の第1ピラー層の幅を、ゲート構造のトレンチの下の電界緩和層の幅よりも狭くすることにより、半導体装置の抵抗と耐圧との関係を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係る半導体装置の模式図である。
図2】実施の形態2に係る半導体装置の模式図である。
図3】実施の形態3に係る半導体装置の模式図である。
図4】実施の形態4に係る電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置101の模式図である。ここでは半導体装置101をMOSFETとした例を示すが、半導体装置101はIGBTなど他のスイッチング素子でもよい。また、以下の説明では、第1導電型をn型、第2導電型をp型とするが、それとは逆に、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。
【0016】
半導体装置101は、炭化珪素(SiC)からなる半導体基板1を用いて形成されている。図1における半導体基板1の上側の面を「第1主面」、下側の面を「第2主面」と定義する。なお、半導体基板1の材料は炭化珪素に限られず、シリコン(Si)でもよいし、窒化ガリウム(GaN)系材料、ダイヤモンドなど、他のワイドバンドギャップ半導体で形成されたものでもよい。
【0017】
半導体基板1の第1主面と第2主面との間には、第1導電型(n型)のドリフト層2が形成されている。半導体基板1の第1主面側の表層部には、第2導電型(p型)のベース領域3が形成されている。ベース領域3の表層部には第1導電型のソース領域4が離散的に形成されており、ベース領域3の表層部におけるソース領域4が形成されていない領域はコンタクト領域31となる。
【0018】
半導体基板1の第1主面上には、ソース領域4およびコンタクト領域31に接続するソース電極10が形成されている。また、半導体基板1の第2主面上には、ドレイン電極11が形成されている。
【0019】
半導体基板1の第1主面側には、ソース領域4およびベース領域3を貫通する複数のトレンチ16が形成されている。複数のトレンチ16の間の領域はメサ領域15であり、上記のベース領域3およびソース領域4は、メサ領域15に形成されている。メサ領域15の表面において、コンタクト領域31の面積はソース領域4の面積よりも小さいことが好ましい。
【0020】
トレンチ16内には、ゲート絶縁膜5、ゲート電極6および層間絶縁膜7が埋め込まれている。ゲート絶縁膜5は、トレンチ16の側面および底面に形成されており、ゲート電極6は、ゲート絶縁膜5の上に形成されている。よって、ゲート電極6は、ゲート絶縁膜5を介してベース領域3に面することになる。層間絶縁膜7はゲート絶縁膜5の上を覆い、層間絶縁膜7によってゲート絶縁膜5とソース電極10との間が絶縁される。
【0021】
また、トレンチ16の直下には、第2導電型の電界緩和層8が形成されている。電界緩和層8はベース領域3を介してソース電極10と電気的に接続される。本実施の形態では、メサ領域15の一部に電界緩和層8とベース領域3を接続する第2導電型の接続層9を設けている。接続層9は、コンタクト領域31の直下に配置されることが好ましい。
【0022】
半導体基板1におけるドリフト層2の上部、すなわちベース領域3とドリフト層2との間には、第2導電型の第1ピラー層13と第1導電型の第2ピラー層14とが交互に配設されたスーパージャンクション構造が設けられている。なお、第1ピラー層13の不純物のピーク濃度は、電界緩和層8よりも低く、第2ピラー層14の不純物のピーク濃度は、ドリフト層2よりも高い。
【0023】
実施の形態1に係る半導体装置101では、第1ピラー層13および第2ピラー層14の延在方向は、トレンチ16および電界緩和層8の延在方向と同じであり、第1ピラー層13は、電界緩和層8の直下に配置されている。第1ピラー層13の幅は、電界緩和層8の幅以下である。また、第2ピラー層14の幅は、メサ領域15の幅よりも広い。
【0024】
また、実施の形態1に係る半導体装置101では、メサ領域15の幅を狭くした狭メサ構造が採用されている。狭メサ構造では、幅の狭いメサ領域15がゲート電極6で挟み込まれており、メサ領域15の全域に反転層を形成することができる。電流経路を最短化してチャネル抵抗を低減するために、メサ領域15の上下方向に電流が流れる構成をとるのが望ましい。また、メサ領域15の幅は0.01μm以上0.2μm以下の範囲であることが望ましい。
【0025】
ここで、トレンチ16の形成方法について説明する。トレンチ16は、半導体基板1の第1主面上にエッチングマスクを形成し、当該エッチングマスクを用いたドライエッチングにより形成することができる。半導体基板1がシリコンである場合には、レジストマスクをエッチングマスクとして用いることができる。しかし、半導体基板1が炭化珪素である場合は、炭化珪素は結合エネルギーが大きいことから、レジストマスクでは十分なエッチング選択比が得られない。よってその場合には、シリコン酸化膜などを半導体基板1の第1主面の全面に形成し、それをレジストマスクで加工することでハードマスクを形成し、当該ハードマスクをエッチングマスクとして用いるとよい。
【0026】
狭メサ構造となるようにメサ領域15を狭くするには、エッチングマスクの加工精度を上げる必要があるが、それには限界がある。そこで、上記の方法で形成したエッチングマスクをさらに加工してもよい。具体的には、形成したエッチングマスクを等方性エッチングによって細線化し、細線化したエッチングマスクを用いたドライエッチングにより、トレンチ16を形成してもよい。この手法では、半導体基板1が炭化珪素である場合でも、0.2μm以下の狭いメサ領域15を形成することができる。
【0027】
半導体装置101がオン状態のときは、第2ピラー層14が電流経路となり、半導体装置101がオフ状態に切り替わるときには、第1ピラー層13から第2ピラー層14へ空乏層が延び、それによって電流経路が遮断される。第2ピラー層14の不純物濃度を高くすることで抵抗を下げることができるため、ドリフト層2にスーパージャンクション構造を設けることで、耐圧とドリフト抵抗の関係を大きく改善することができる。
【0028】
第1ピラー層13および第2ピラー層14における半導体基板1の深さ方向の長さは、ドリフト層2の底から電界緩和層8の底までの長さの半分以上であるとよい。ドリフト層2の底から電界緩和層8の底までの領域で、スーパージャンクション構造が占める割合が大きいほど、半導体装置101の抵抗と耐圧との関係は改善される。
【0029】
第1ピラー層13は、ソース電極10と電気的に接続される。このため第1ピラー層13の設置周期(つまり設置間隔)は、トレンチ16の設置周期と同じであることが望ましい。その場合、トレンチ16の下の電界緩和層8を通して、第1ピラー層13とソース電極10との電気的接続を行うことができる。
【0030】
また、電界緩和層8の直下は電流経路になりにくいため、ここに第1ピラー層13を配置することで電流経路をより短くすることができる。すなわち、トレンチ16の直下に第1ピラー層13を、メサ領域15の直下に第2ピラー層14を、それぞれ配置することが好ましい。
【0031】
なお、第1ピラー層13および第2ピラー層14からなるスーパージャンクション構造は、高エネルギーイオン注入や、イオン注入とエピタキシャル成長とを繰り返すことによって形成することができる。
【0032】
メサ領域15の加工精度の制約によって、トレンチ16の割合がメサ領域15の割合よりも大きくなる場合、例えば、トレンチ16の下にそれと同じ幅の第1ピラー層13を設け、メサ領域15の下にそれと同じ幅の第2ピラー層14を設けると、スーパージャンクション構造における第1ピラー層13の割合が大きくなり、抵抗と耐圧との関係が悪化してしまう。本実施の形態では、第1ピラー層13を狭く、第2ピラー層14を広くすることで、この問題を解決しており、抵抗と耐圧との関係を良好に保つことができる。
【0033】
<実施の形態2>
実施の形態1では、第1ピラー層13の幅を狭くすることによって第1ピラー層13と第2ピラー層14との比率を適正化したが、実施の形態2では、その比率を適正化する別の方法を示す。
【0034】
図2は、実施の形態2に係る半導体装置102の模式図である。実施の形態2に係る半導体装置102と、実施の形態1の半導体装置101との違いは、第1ピラー層13および第2ピラー層14の設置周期である。実施の形態1では、第1ピラー層13の設置周期とトレンチ16の設置周期との比(以下「設置周期比」ともいう)は1:1であったが、図2の半導体装置102では、第1ピラー層13の設置周期をトレンチ16の設置周期よりも長くして、第1ピラー層13とトレンチ16との設置周期比を2:1としている。この場合でも、耐圧と抵抗の関係は適正化される。
【0035】
第1ピラー層13とトレンチ16との設置周期比は、整数対整数であればよく、例えば3:1や3:2であってもよい。設置周期比によっては、メサ領域15の直下に第1ピラー層13が配置されることもあるが、チャネル抵抗が十分に低減されているため、それによる抵抗の増加量は無視できる程度に小さい。
【0036】
実施の形態2においては、第1ピラー層13の幅は、トレンチ16の下の電界緩和層8の幅より狭くても広くてもよい。第1ピラー層13の幅が電界緩和層8の幅よりも広い場合には、抵抗が若干増加するかもしれないが、この場合も抵抗の増加量は無視できる程度に小さい。
【0037】
実施の形態2に係る半導体装置102では、トレンチ16を狭くすることでチャネル密度を上げ、よりチャネル抵抗を低減することができる。しかし、実施の形態1で説明したトレンチ16の形成方法では、メサ領域15を狭くすることはできるが、トレンチ16を狭くすることはできない。言い換えれば、メサ領域15とトレンチ16との比率を変化させることはできるが、メサ領域15およびトレンチ16の設置周期を変化させることはできない。
【0038】
そこで、実施の形態2では以下のような方法でトレンチ16を形成するとよい。まず、半導体基板1の第1主面上に第1のハードマスクを形成してパターニングする。次に、半導体基板1の第1主面の全面に第2のハードマスクを形成し、当該第2のハードマスクに対する異方性エッチングを行う。その結果、第1のハードマスクの側壁に第2のハードマスクが残った状態となる。その後、第1のハードマスクをエッチングにより除去して、第2のハードマスクのみを残す。そして、残った第2のハードマスクをエッチングマスクとして用いたドライエッチングにより、半導体基板1の第1主面にトレンチ16を形成する。この方法では、第1のハードマスクの2倍の密度で、第2のハードマスクを形成できるため、幅の狭いトレンチ16を形成することができる。
【0039】
なお、第1のハードマスクと第2のハードマスクは互いにエッチング選択比の大きい材料であることが望ましい。例えば、第1のハードマスクには多結晶シリコンを、第2のハードマスクにはシリコン酸化膜を用いるとよい。また、上記の第2のハードマスクの形成を繰り返し、ハードマスクの密度を4倍、8倍と上げれば、さらに幅の狭いトレンチ16を形成することができる。
【0040】
この方法を用いることで、メサ領域15およびトレンチ16の設置周期を小さくできるが、第1ピラー層13および第2ピラー層14の幅にも加工の限界がある。第1ピラー層13および第2ピラー層14の形成を高エネルギーイオン注入で行う場合には、厚いマスク材料が必要であるため細線加工はしにくいという制約があり、第1ピラー層13および第2ピラー層14の形成をイオン注入とエピタキシャル成長とを組み合わせて行う場合には、マスクずれの影響を受けることが制約となる。また、注入されたイオンは面内方向にある程度の広がりを持つため、第1ピラー層13および第2ピラー層14をメサ領域15のように微細加工することは困難である。
【0041】
本実施の形態では、メサ領域15の直下に必ずしも第2ピラー層14を配置する必要がないため、第1ピラー層13および第2ピラー層14の幅の制約を受けることを回避しつつ、抵抗と耐圧の関係を良好に保つことができる。
【0042】
<実施の形態3>
図3は、実施の形態3に係る半導体装置103の模式図である。実施の形態3に係る半導体装置103と、実施の形態1の半導体装置101または実施の形態2の半導体装置102との違いは、第1ピラー層13および第2ピラー層14の延在方向である。実施の形態1および2では、第1ピラー層13および第2ピラー層14の延在方向は、トレンチ16および電界緩和層8の延在方向と同じであったが、図3の半導体装置103では、第1ピラー層13および第2ピラー層14の延在方向は、トレンチ16および電界緩和層8の延在方向と90度異なる。つまり、第1ピラー層13および第2ピラー層14の延在方向は、トレンチ16および電界緩和層8の延在方向と直交している。
【0043】
実施の形態1および2で述べたように、第1ピラー層13および第2ピラー層14の幅はスーパージャンクション構造において重要なパラメータである。実施の形態1および2では、第1ピラー層13および第2ピラー層14の幅や設置周期を適正化することによって、抵抗と耐圧との関係を改善する方法を示したが、第1ピラー層13および第2ピラー層14の幅をメサ領域15の設置周期と独立して設計することはできない。その理由は、第1ピラー層13および第2ピラー層14の幅をメサ領域15の設置周期と独立して設計すると、メサ領域15と第2ピラー層14との位置関係が場所によって異なるようになり局所的な電流の偏りが生じてしまうためである。局所的な電流の偏りは、負荷短絡などの異常により大電流が流れたときに局所破壊を引き起こす原因となるため、避ける必要がある。
【0044】
そこで、実施の形態3では、電界緩和層8の底面を境界として、当該境界よりも下に設けられた第1ピラー層13および第2ピラー層14の延在方向を、当該境界よりも上に設けられたメサ領域15およびトレンチ16の延在方向から90度ずらすことで、第1ピラー層13および第2ピラー層14の幅をメサ領域15の設置周期から独立して設計できる。これにより、第1ピラー層13および第2ピラー層14の幅の設計の制約が減り、抵抗と耐圧の関係をより理想的なものに近付けることができる。なお、本実施の形態のように、第1ピラー層13および第2ピラー層14の延在方向と、メサ領域15およびトレンチ16の延在方向とを90度ずらした場合でも、第1ピラー層13は電界緩和層8を通してソース電極10と電気的に接続することができる。
【0045】
<実施の形態4>
本実施の形態は、上述した実施の形態1~3のいずれかに係る半導体装置を電力変換装置に適用したものである。本開示は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態4として、三相のインバータに本開示を適用した場合について説明する。
【0046】
図4は、本実施の形態に係る電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0047】
図4に示す電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源100を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0048】
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、図4に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201の各スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路202と、駆動回路202を制御する制御信号を駆動回路202に出力する制御回路203とを備えている。
【0049】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0050】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子を備えており(図示せず)、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態に係る主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子から構成することができる。主変換回路201の各スイッチング素子には、上述した実施の形態1~3のいずれかに係る半導体装置を適用する。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0051】
駆動回路202は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0052】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、駆動回路202に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路202は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0053】
本実施の形態に係る電力変換装置では、主変換回路201のスイッチング素子として実施の形態1~3のいずれかに係る半導体装置を適用するため、抵抗を大きく下げることできる。
【0054】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに本開示を適用する例を説明したが、本開示は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルやマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに本開示を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに本開示を適用することも可能である。
【0055】
また、本開示を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触器給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0056】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0057】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0058】
(付記1)
第1主面および前記第1主面の反対側の第2主面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記第1主面と前記第2主面との間に形成された第1導電型のドリフト層と、
前記半導体基板の前記第1主面側の表層部に形成された第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の表層部に形成された第1導電型のソース領域と、
前記ベース領域の表層部における前記ソース領域が形成されていない領域であるコンタクト領域と、
前記半導体基板の前記第1主面上に形成され、前記ソース領域および前記コンタクト領域に接続するソース電極と、
前記半導体基板の前記第1主面側に形成され、前記ソース領域および前記ベース領域を貫通する複数のトレンチと、
複数の前記トレンチの間の領域であり、前記ベース領域および前記ソース領域が設けられたメサ領域と、
前記トレンチ内に形成され、ゲート絶縁膜を介して前記ベース領域に面するゲート電極と、
前記トレンチの直下に設けられた第2導電型の電界緩和層と、
前記ベース領域と前記ドリフト層との間に設けられ、第2導電型の第1ピラー層および第1導電型の第2ピラー層が交互に配設されたスーパージャンクション構造と、
を備え、
前記第1ピラー層の幅は、前記電界緩和層の幅以下である、
半導体装置。
【0059】
(付記2)
前記第2ピラー層の幅は、前記メサ領域の幅よりも広い、
付記1に記載の半導体装置。
【0060】
(付記3)
第1主面および前記第1主面の反対側の第2主面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記第1主面と前記第2主面との間に形成された第1導電型のドリフト層と、
前記半導体基板の前記第1主面側の表層部に形成された第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の表層部に形成された第1導電型のソース領域と、
前記ベース領域の表層部における前記ソース領域が形成されていない領域であるコンタクト領域と、
前記半導体基板の前記第1主面上に形成され、前記ソース領域および前記コンタクト領域に接続するソース電極と、
前記半導体基板の前記第1主面側に形成され、前記ソース領域および前記ベース領域を貫通する複数のトレンチと、
複数の前記トレンチの間の領域であり、前記ベース領域および前記ソース領域が設けられたメサ領域と、
前記トレンチ内に形成され、ゲート絶縁膜を介して前記ベース領域に面するゲート電極と、
前記トレンチの直下に設けられた第2導電型の電界緩和層と、
前記ベース領域と前記ドリフト層との間に設けられ、第2導電型の第1ピラー層および第1導電型の第2ピラー層が交互に配設されたスーパージャンクション構造と、
を備え、
前記第1ピラー層の設置周期と前記トレンチの設置周期との比が、1対1を除く整数対整数の比で表される、
半導体装置。
【0061】
(付記4)
前記第1ピラー層および前記第2ピラー層の延在方向は、前記トレンチの延在方向と同じであり、
前記第1ピラー層は、前記電界緩和層の直下に配置されている、
付記1から付記3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0062】
(付記5)
前記第1ピラー層および前記第2ピラー層の延在方向は、前記トレンチの延在方向に直交する、
付記1から付記3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0063】
(付記6)
前記半導体基板の深さ方向において、前記第1ピラー層および前記第2ピラー層の長さは、前記ドリフト層の底から前記電界緩和層の底までの長さの半分以上である、
付記1から付記5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0064】
(付記7)
前記メサ領域の幅は0.2μm以下である、
付記1から付記6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0065】
(付記8)
前記メサ領域における前記コンタクト領域の直下に形成され、前記電界緩和層と前記ベース領域を接続する第2導電型の接続層をさらに備える、
付記1から付記7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0066】
(付記9)
前記メサ領域の表面において、前記コンタクト領域の面積は前記ソース領域の面積よりも小さい、
付記1から付記8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0067】
(付記10)
前記半導体基板は、炭化珪素により形成されている、
付記1から付記8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0068】
(付記11)
付記1から付記9のいずれか一項に記載の半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記半導体装置を駆動する駆動信号を前記半導体装置に出力する駆動回路と、
前記駆動回路を制御する制御信号を前記駆動回路に出力する制御回路と、
を備えた電力変換装置。
【符号の説明】
【0069】
101,102,103 半導体装置、1 半導体基板、2 ドリフト層、3 ベース領域、4 ソース領域、5 ゲート絶縁膜、6 ゲート電極、7 層間絶縁膜、8 電界緩和層、9 接続層、10 ソース電極、11 ドレイン電極、13 第1ピラー層、14 第2ピラー層、15 メサ領域、16 トレンチ、31 コンタクト領域、100 電源、200 電力変換装置、201 主変換回路、202 駆動回路、203 制御回路、300 負荷。
図1
図2
図3
図4