(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183016
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】固形パーソナルケア製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20231220BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20231220BHJP
A61Q 1/08 20060101ALI20231220BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20231220BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20231220BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20231220BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q1/10
A61Q1/08
A61Q1/04
A61Q19/10
A61Q1/02
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096369
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏井 翔平
(72)【発明者】
【氏名】平野 喬大
(72)【発明者】
【氏名】茂木 知之
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083CC19
4C083CC23
4C083CC25
4C083DD21
4C083FF04
4C083FF06
(57)【要約】
【課題】固形パーソナルケア製品のデザインのバリエーションの増加と固形パーソナルケア製品の製造に要する期間及びコストの低減との両立を図ることに関する。
【解決手段】固形パーソナルケア製品の製造方法は、発注者が選択した前記固形パーソナルケア製品のデザインの元データを取得し、前記元データに基づいて前記固形パーソナルケア製品の加飾に関する加飾条件に応じた基準デザインを生成し、前記発注者に前記基準デザインを前記加飾条件を満たす範囲で編集可能なように提示し、前記発注者による前記基準デザインの編集結果を製品デザインとして取得し、前記製品デザインに基づいて加飾機構を動作させる加飾動作プログラムを生成し、前記加飾動作プログラムに基づいて前記加飾機構を動作させて前記固形パーソナルケア製品の加飾を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形パーソナルケア製品の製造方法であって、
前記固形パーソナルケア製品の発注者が選択した前記固形パーソナルケア製品のデザインの元データを取得する元データ取得工程と、
前記元データに基づいて、前記固形パーソナルケア製品の加飾に関する加飾条件に応じた基準デザインを生成する基準デザイン生成工程と、
前記発注者に前記基準デザインを前記加飾条件を満たす範囲で編集可能なように提示し、前記発注者による前記基準デザインの編集結果を製品デザインとして取得する製品デザイン取得工程と、
前記製品デザインに基づいて、加飾機構を動作させる加飾動作プログラムを生成する加飾動作プログラミング工程と、
前記加飾動作プログラムに基づいて、前記加飾機構を動作させて前記固形パーソナルケア製品の加飾を行う加飾工程と
を有する固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項2】
前記加飾工程は、対象物上に堆積体を形成する堆積工程を有し、
前記加飾条件は、前記堆積体の色及び形状の一方又は両方に関する条件を含む
請求項1に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項3】
前記加飾工程は、前記対象物上に互いに色の異なる前記堆積体を形成する複数の堆積工程を有する
請求項2に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項4】
前記加飾条件は、前記堆積体に使用可能な複数の候補色を有し、
前記基準デザインは、1又は2以上の輪郭線と前記1又は2以上の輪郭線により囲まれた1又は2以上の閉領域を有し、
前記製品デザイン取得工程において、前記1又は2以上の閉領域ごとに前記複数の候補色から前記閉領域の色を選択可能なように前記基準デザインを前記発注者に提示する、及び又は、前記1又は2以上の輪郭線ごとに前記複数の候補色から前記輪郭線の色を選択可能なように前記基準デザインを前記発注者に提示する
請求項2又は3のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項5】
前記加飾条件は、前記堆積体に使用可能な複数の候補色を有し、
前記基準デザイン生成工程において、前記複数の候補色により配色された前記基準デザインを生成する
請求項2~4のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項6】
前記元データは、画像データであり、
前記基準デザイン生成工程において、前記画像データから複数の画素をつなげた第1の輪郭線を抽出し、前記第1の輪郭線を構成する複数の頂点のうち1又は2以上を制御点として前記第1の輪郭線を近似するスプライン曲線を含む第2の輪郭線を算出し、前記第2の輪郭線を含む前記基準デザインを生成する
請求項2~5のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項7】
前記加飾工程は、前記堆積体となる組成物を前記対象物上に充填する工程を有し、
前記製品デザインは、1又は2以上の輪郭線と前記1又は2以上の輪郭線により囲まれた1又は2以上の閉領域を有し、
前記加飾動作プログラミング工程において、前記閉領域の面積値に基づいて前記閉領域に対する前記組成物の充填量を設定する
請求項2~6のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項8】
前記加飾機構は、各々が対象物に対して互いに独立した加飾動作を実行可能な複数のステーションを有する
請求項1~7のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項9】
前記加飾機構は、前記対象物を搭載し複数のステーション間を移動する1又は2以上の搬送ユニットを有し、
前記加飾工程において、前記対象物は同一の前記搬送ユニットに搭載された状態で前記複数のステーション間を移動する
請求項1~8のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項10】
固形パーソナルケア製品の発注者が選択した前記固形パーソナルケア製品のデザインの元データを取得する元データ取得工程と、
前記元データに基づいて、前記固形パーソナルケア製品の加飾に関する加飾条件に応じた基準デザインを生成する基準デザイン生成工程と、
前記発注者に前記基準デザインを前記加飾条件を満たす範囲で編集可能なように提示し、前記発注者による前記基準デザインの編集結果を製品デザインとして取得する製品デザイン取得工程と、
前記製品デザインに基づいて、加飾機構を動作させる加飾動作プログラムを生成する加飾動作プログラミング工程と、
前記加飾動作プログラムに基づいて、前記加飾機構を動作させて前記固形パーソナルケア製品の加飾を行う加飾工程と
を実行することにより製造される固形パーソナルケア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形パーソナルケア製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アイシャドウやファンデーション等の固形化粧料や固形石鹸等の固形パーソナルケア製品に装飾を施す方法として、型を用いる方法が知られている。例えば、型を有するプレスヘッドを用いて打型する方法や、ラバーモールドの内部に原料を流し込む方法により固形パーソナルケア製品に形状を与えることで、立体的な装飾が可能である。
【0003】
食品分野では、製品のデザインを発注者が注文するシステムが開発されている。例えば特許文献1には、発注者が選らんだ画像を印刷した可食シートを用いてオリジナルの食品を製造する方法が記載されている。また特許文献2には、発注者が選んだ画像から熱可塑性食材の描画データを生成し、その描画データを用いて固形食材に発注者独自の描画を施す方法について記載されている。また近年では、3Dプリンタを用いて独自に装飾された食品を製造する方法も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-160098号公報
【特許文献1】特開2013-13402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固形パーソナルケア製品に対して上記したように型を用いて形状を付与する方法では、形状が異なる製品の製造には製品形状に応じた成形型を用意する必要がある。このため、発注者個々人の要望に応じたバリエーションに富む立体形状の固形パーソナルケア製品を製造することは、時間・コストの観点で実現が困難であった。また、3Dプリンタのような装置を用いて立体成形を行う方法では、原料の調色や、色の配置にあったヘッド軌跡の生成等に手間がかかり、固形パーソナルケア製品への適用が難しかった。
【0006】
本発明の課題は、固形パーソナルケア製品のデザインのバリエーションの増加と、固形パーソナルケア製品の製造に要する期間及びコストの低減との両立を図ることが可能な固形パーソナルケア製品の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る製造方法は、固形パーソナルケア製品の製造方法である。
前記製造方法は、前記固形パーソナルケア製品の発注者が選択した前記固形パーソナルケア製品のデザインの元データを取得する元データ取得工程を有することが好ましい。
前記製造方法は、前記元データに基づいて、前記固形パーソナルケア製品の加飾に関する加飾条件に応じた基準デザインを生成する基準デザイン生成工程を有することが好ましい。
前記製造方法は、前記発注者に前記基準デザインを前記加飾条件を満たす範囲で編集可能なように提示し、前記発注者による前記基準デザインの編集結果を製品デザインとして取得する製品デザイン取得工程を有することが好ましい。
前記製造方法は、前記製品デザインに基づいて、加飾機構を動作させる加飾動作プログラムを生成する加飾動作プログラミング工程を有することが好ましい。
前記製造方法は、前記加飾動作プログラムに基づいて前記加飾機構を動作させて前記固形パーソナルケア製品の加飾を行う加飾工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固形パーソナルケア製品のデザインのバリエーションの増加と、固形パーソナルケア製品の製造に要する期間及びコストの低減との両立を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】固形パーソナルケア製品の製造システムの構成例を示す模式図である。
【
図2】固形パーソナルケア製品の製造システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】製造システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】製造システムの動作の一例を示す模式図である。
【
図5】基準デザイン生成工程における色変換処理について説明する模式図である。
【
図6】基準デザイン生成工程における色変換処理の一例を示す模式図である。
【
図7】基準デザイン生成工程における輪郭線及び閉領域の抽出処理の一例を示す模式図である。
【
図8】基準デザイン生成工程におけるスプライン曲線を用いた輪郭線の抽出処理について説明する模式図である。
【
図9】基準デザイン生成工程におけるスプライン曲線を用いた輪郭線の抽出処理の一例を示す模式図である。
【
図10】製品デザイン生成工程において表示される編集画面の一例を示す模式図である。
【
図11】加飾動作プログラミング工程において設定されるノズルの軌跡の一例を示す模式図である。
【
図12】加飾動作プログラミング工程において設定される充填量の一例を示す模式図である。
【
図13】加飾動作プログラミング工程において設定される充填位置の一例を示す模式図である。
【
図14】加飾工程において用いられる制御装置の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
[固形パーソナルケア製品の製造システムの構成]
本発明の一実施形態に係る製造システム100は、人体に適用可能な固形パーソナルケア製品10の製造システムである。
この製造システム100では、固形パーソナルケア製品10の発注者1が、固形パーソナルケア製品10に施される装飾のデザインを、選択・編集することが可能となっている。
【0011】
製造システム100を用いて実行される本製造方法によって製造される固形パーソナルケア製品10は、これを皮膚上に直接塗布したり、あるいは水等の液媒に溶解又は分散させた液体を皮膚上に塗布、散布又は滴下等したりすることで、人体に適用可能なものである。固形パーソナルケア製品10は、1気圧、20℃において固体である。
このような固形パーソナルケア製品10としては、例えば、メークアップ化粧品などの固形化粧品、固形石鹸、固形入浴剤などが挙げられるが、これらに限られない。
メークアップ化粧品としては、化粧料粉末等を含むアイシャドウやファンデーション、油剤及び顔料を含む口紅等が挙げられる。
【0012】
本製造方法は、流動性を有する組成物Lを対象物11上に供給し、その後、必要に応じて該組成物Lを固化させて、対象物11上に組成物L由来である堆積体2を造形して、対象物11を加飾させる際に好適に適用可能である。組成物Lが例えば化粧料を含む場合、得られる堆積体2は、固形化粧料として使用可能である。
【0013】
流動性を有する組成物Lは、液体そのものであるか、液体を含むものであることが好ましい。すなわち、本発明において用いられる組成物Lは、固体のみの形態又は気体のみの形態
は除外される。
このような組成物Lとしては、例えば、以下のものが挙げられる:化粧料などの粉体と、液体である分散媒とを含む混合物である分散液(いわゆるスラリー);化粧料などの各種の化合物を液体の溶媒に溶解させた溶液;化粧料若しくは油剤の単体又は化粧料を含む材料を加熱溶融させた溶融液。組成物L及びその構成材料の詳細は後述する。
【0014】
組成物Lが供給される対象物11としては、特に制限はなく、例えば、紙、フィルム、不織布、金属、樹脂、あるいは、組成物Lの組成と同一又は異なる組成を有し、既に製造された固形パーソナルケア製品などが挙げられる。
例えば、プレストパウダーのような基材が入った容器等が対象物11として用いられてもよい。例えば皿状の容器内に化粧料粉末等の粉体を導入し、それらをプレスすることで平坦な基材が構成される。
【0015】
製造システム100は、端末装置20と、サーバ装置30と、製造装置40とを有することが好ましい。例えば端末装置20とサーバ装置30とが通信可能なように接続され、サーバ装置30と製造装置40とが通信可能なように接続される。なお、各装置を通信可能に接続する場合に限定されず、例えば外付けの記録媒体等介して、必要なデータの読み込みが行われてもよい。これらを備える一例を
図1及び
図2に示す。
【0016】
端末装置20は、固形パーソナルケア製品10の発注者1が使用するコンピュータ端末である。端末装置20としては、例えばスマートフォン等の携帯端末が用いられる。この他、タブレット端末、ノート型PC、デスクトップPC等が端末装置として用いられてよい。
端末装置20は、表示装置21、入力デバイス22、端末コントローラ23を有することが好ましい。図示例では、端末装置20として、スマートフォンが用いられているが、これに限定されずPC等が用いられてもよい。
【0017】
表示装置21は、画像や文字等の情報を表示する端末装置20のディスプレイである。例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等が表示装置21として用いられる。
入力デバイス22は、端末装置20の使用者(発注者1)の操作入力を受け付ける素子である。
図1に示す例では、表示装置21に搭載されたタッチパネルが入力デバイス22となる。この他、マウスやキーボード等が入力デバイス22として用いられてもよい。
【0018】
端末コントローラ23は、CPUやメモリ(RAM、ROM)等のコンピュータに必要なハードウェア構成を有し、端末装置20の動作を制御する。例えばCPUが図示しない記憶部に記憶されている端末装置20用の制御プログラムをRAMにロードして実行することにより、種々の処理が実行される。
ここで端末装置20用の制御プログラムとは、例えば固形パーソナルケア製品10の発注を受け付ける専用のアプリケーションプログラム等である。
本実施形態では、端末コントローラ23のCPUが端末装置20用の制御プログラムを実行することで、機能ブロックとして、元データ取得部24、基準デザイン生成部25、及び製品デザイン取得部26が実現される。
【0019】
元データ取得部24は、固形パーソナルケア製品10の発注者1が選択した固形パーソナルケア製品10のデザインの元データを取得することが好ましい。
元データ取得部24は、例えば発注者1が入力した元データを読み込む。あるいは、予め用意された元データの候補の中から発注者1が選択したデータが読み込まれる。
【0020】
ここで、発注者1とは、例えば固形パーソナルケア製品10を発注した人物である。発注者1は、例えば固形パーソナルケア製品10を購入する購入者であるが、これに限定されない。例えば固形パーソナルケア製品10の製造業務にたずさわる作業者(例えばデザイナー)等が発注者1となることもあり得る。
【0021】
元データとは、例えば固形パーソナルケア製品10の最終的なデザインの元となるデータである。例えば、デザインの図柄や配色を表すことが可能な任意の形式のデータを元データとして用いることが可能である。
元データは、画像データであることが好ましい。画像データの形式は限定されず、BMP、JPEG、PNG、GIF、TIFF等のラスタ形式の画像データが用いられてよい。また、PDF、SVG等のベクタ形式の画像データが用いられてもよい。
なお、画像データの他にもCADデータ等が元データとして用いられてもよい。
【0022】
本開示において、デザインとは、例えばひらがな及びカタカナ等の日本語文字、アルファベット、アラビア数字、ローマ数字、諸外国の文字等の各種文字、直線及び曲線並びにこれらの組み合わせからなる図形や幾何学形状、記号、色、模様又はこれらの組み合わせの形状を意味する。
【0023】
基準デザイン生成部25は、元データに基づいて、固形パーソナルケア製品10の加飾に関する加飾条件に応じた基準デザインを生成することが好ましい。
本開示において、加飾とは、対象物11に装飾を加えることである。対象物11は好ましくは固形パーソナルケア製品である。従って、対象物11を加飾することで、装飾が施された固形パーソナルケア製品10が構成される。
対象物11に装飾を加えるための一連の工程を加飾工程と記載する。制御装置41において対象物11に装飾を加える動作を加飾動作と記載する。
【0024】
加飾条件とは、固形パーソナルケア製品10として構成される対象物11を加飾する際の条件である。例えば固形パーソナルケア製品10の種類や、製造装置40で施される加飾の内容等に応じて様々な加飾条件があり得る。例えば、パターンを描画する加飾を行う場合、描画に用いることが可能な色や、描画に用いる線幅や、描画可能な領域等が加飾条件となる。
【0025】
基準デザイン生成部25により元データから生成される基準デザインは、このような加飾条件を満たすように配色や図柄が設定されたデザインであり、例えば製造装置40の加飾工程でそのまま実現可能なデザインとなっている。すなわち、基準デザインは、加飾に適した様態として構成されたデザインであるともいえる。
基準デザインは、最終的に製品に施されるデザイン(以下では製品デザインと記載する)の基準として用いられる。
【0026】
本発明では、加飾条件は、対象物11上に形成される組成物L由来の堆積体2の色及び形状の一方又は両方に関する条件を含むことが好ましい。
堆積体2の色に関する条件とは、堆積体2として用いることが可能な色を規定する条件である。具体的には、加飾条件として、堆積体2に使用可能な複数の候補色が設定されることが好ましい。
堆積体2の形状に関する条件とは、形成可能な堆積体2の形状を規定する条件である。例えば、線状の堆積体2を形成する場合の最小線幅や最大線幅、堆積体2の厚みの最小値や最大値等が加飾条件として設定される。また堆積体2を隣接させる場合の最小間隔等が設定されてもよい。
【0027】
加飾条件は、堆積体に関する条件に限定されない。例えば、対象物11にプレストパウダーのような基材が入っている場合には、その基材を加工して装飾を施すことが可能である。この場合、エンドミル等の工具による切削加工や、レーザ加工等が用いられる。
このような基材を削る加工についての加飾条件が設定されてもよい。例えば基材に形成される溝の幅の最小値や最大値、溝の深さの最小値や最大値等が設定される。
この他、加飾条件は、製品の種類や加飾の内容に応じて任意に設定される。
【0028】
製品デザイン取得部26は、発注者1に基準デザインを加飾条件を満たす範囲で編集可能なように提示し、発注者1による基準デザインの編集結果を製品デザインとして取得することが好ましい。
具体的には、製品デザイン取得部26は、基準デザインを編集するための編集画面を生成し、端末装置20の表示装置21に表示する(
図10等参照)。この編集画面は、加飾条件を満たす範囲で基準デザインの各要素(色、輪郭線、輪郭線で囲まれた領域等)が編集可能なように構成される。
これにより、発注者1は、編集画面を見ながら、基準デザインの各要素を適宜編集することが可能となり、自分の好きな配色や線幅等を適宜設定することが可能となる。
製品デザイン取得部26は、発注者1による編集が完了したデザインを、最終的な製品デザインとして読み込む。このように、端末装置20では、基準デザインに係る情報を発注者1が編集し、最終的な製品デザインが決定される。
【0029】
サーバ装置30は、典型的には複数の端末装置20と通信可能に構成され、各端末装置20において発注者1により作成された固形パーソナルケア製品10の製品デザインを読み込む。
サーバ装置30は、サーバコントローラ31を有することが好ましい。
サーバコントローラ31は、CPUやメモリ(RAM、ROM)等のコンピュータに必要なハードウェア構成を有し、サーバ装置30の動作を制御する。例えばCPUが図示しない記憶部に記憶されているサーバ装置30用の制御プログラムをRAMにロードして実行することにより、種々の処理が実行される。
本実施形態では、サーバコントローラ31のCPUがサーバ装置30用の制御プログラムを実行することで、機能ブロックとして、加飾動作プログラミング部32が実現される。
【0030】
加飾動作プログラミング部32は、製品デザインに基づいて、加飾機構を動作させる加飾動作プログラムを生成することが好ましい。
加飾機構は、加飾工程を実行可能なように構成された機構である。本実施形態では、後述する製造装置40が加飾機構として機能する。
加飾動作プログラムは、製品デザインが表す装飾が対象物11に施されるように、製造装置40(加飾機構)を動作させるプログラムである。加飾動作プログラムは、製品デザインごとにそれぞれ生成され、製造装置40に出力される。
加飾動作プログラミング部32の動作や、加飾動作プログラムの内容については、後に詳しく説明する。
【0031】
図1及び
図2では、サーバ装置30に加飾動作プログラミング部32だけが構成される場合について説明した。例えば、端末装置20において構成される元データ取得部24、基準デザイン生成部25、及び製品デザイン取得部26が、サーバ装置30により実現されてもよい。この場合、例えばインターネットブラウザ上で、画像データの入力画面や、基準デザインの編集画面等が表示されてもよい。逆に、加飾動作プログラミング部32が、端末装置20において構成されてもよい。
この他、元データ取得部24、基準デザイン生成部25、製品デザイン取得部26、及び飾動作プログラミング部32を実現するためのシステム構成は限定されない。
【0032】
製造装置40は、固形パーソナルケア製品10を製造するための装置である。製造装置40は、加飾動作プログラムに基づいて固形パーソナルケア製品10の加飾を行うことが好ましい。すなわち、製造装置40は、加飾動作プログラムに基づいて対象物11を加飾する。
製造装置40には複数の対象物11(ワーク)が供給され、各対象物11に対して製品デザインに応じた加飾工程がそれぞれ実行されることが好ましい。これにより、製造装置40では、様々な製品デザインが施された固形パーソナルケア製品10が製造される。この一例を
図1に示す。
製造装置40は、制御装置41、搬送システム42、加飾装置43を有することが好ましい。
【0033】
制御装置41は、CPUやメモリ(RAM、ROM)等のコンピュータに必要なハードウェア構成を有し、製造装置40の動作を制御する。例えばCPUが図示しない記憶部に記憶されている製造装置40用の制御プログラム(基本プログラム)をRAMにロードして実行することにより、制御装置41の各部(搬送システム42や加飾装置43)が動作する。
また制御装置41は、例えば基本プログラムのサブルーチンとして加飾動作プログラムを読み込む。これにより、搬送システム42や加飾装置43が加飾動作プログラムに従って動作し、製品デザインを加飾する加飾工程が実行される。
【0034】
搬送システム42は、ステージ44と、対象物11を搭載してステージ44上を移動する1又は2以上のシャトル45とを有することが好ましい。
ステージ44には、加飾装置43により対象物11に対する加飾動作が実行される加飾ステーションが配置されることが好ましい。
シャトル45には、1つの対象物11が搭載されることが好ましい。対象物11を搭載したシャトル45は、ステージ44上の加飾ステーションに移動する。すなわち、シャトル45は、加飾装置43が対象物11を加飾可能な位置に対象物11を移動する。
【0035】
加飾装置43は、対象物11がシャトル45に搭載された状態で、対象物11に対して所定の加飾動作を実行することが好ましい。
製造装置40に複数の加飾装置43が設けられることが好ましい。なお加飾装置43が1つの場合であっても本発明は適用可能である。
例えば各加飾装置43は、制御装置41が読み込んだ加飾動作プログラムに従って制御される。また、各加飾装置43による加飾動作は、対象物11上に製品デザインを施すための動作となる。
【0036】
加飾装置43は、対象物11上に組成物Lを導入するノズル34を備えたディスペンサであることが好ましい。ディスペンサは、組成物Lを描画する動作と、組成物Lを充填する動作とをそれぞれ実行可能である。
組成物Lを描画する動作では、ノズル34及びシャトル45に搭載された対象物11の一方又は両方を、他方に対して相対的に移動させて、組成物Lを堆積させることが好ましい。これは、所謂3Dプリンタと同様の動作である。
組成物Lを充填する動作では、ノズル34とシャトル45に搭載された対象物11との相対位置を固定した状態で、流動性のある組成物Lが充填されることが好ましい。これは、例えば1つの領域に同一の組成物Lを堆積させる場合等に用いられる。
【0037】
製造装置40には、このようなディスペンサが複数設けられることが好ましい。また各ディスペンサが供給する組成物Lは互いに異なることが好ましい。これにより、対象物11上に種類の異なる組成物Lを堆積させることが可能となる。
また、加飾工程において対象物11上に形成される堆積体2の厚みは、0.05mm以上である。堆積体2の厚みを0.05mm以上とすることで、対象物11の表面に起伏に富んだ立体的なデザインを形成することが可能となる。
なお、ディスペンサ以外の加飾装置43が用いられてもよい。例えばエンドミル等を用いて切削加工を行う加飾装置43や、レーザ光を照射して切削加工を行う加飾装置43等が用いられてもよい。
【0038】
[固形パーソナルケア製品の製造システムの動作]
以下では、製造システム100の基本的な動作の流れについて説明する。ステップ101~ステップ105までの5つの工程を有することが好ましい。この一例を
図3に示す。
まず固形パーソナルケア製品10の発注者1が選択した固形パーソナルケア製品10のデザインの元データ3を取得する元データ取得工程が実行される(ステップ101)。本実施形態では、端末装置20の元データ取得部24により元データ3として画像データ4が読み込まれる。
【0039】
例えば端末装置20に画像データ4を入力するための入力画面が表示される。発注者1が入力画面を操作して発注者1が保有する画像データ4を選択すると、元データ取得部24により入力画面で選択(入力)された画像データ4が読み込まれる。
また例えば、固形パーソナルケア製品10の製造者等によって予め用意された複数の候補画像を提示する選択画面が表示されてもよい。この場合、発注者1が複数の候補画像の中から所望の画像を選択すると、元データ取得部24により選択画面で選択された画像データ4が読み込まれる。
【0040】
図4では、ステップ101で読み込まれる画像データ4が模式的に図示されている。この画像データ4には、四角形を構成する4辺のうち1辺(
図4では図中左側の1辺)が欠けたU字型の図柄が含まれる。このU字型の図柄は、例えば画像の外周部分に対するコントラストが比較的高い領域である。またU字型の図柄は、画像の外周部分に対して比較的コントラストの低い四角形の帯状領域で囲まれている。
【0041】
次に、元データ3(画像データ4)に基づいて、固形パーソナルケア製品10の加飾に関する加飾条件に応じた基準デザイン5を生成する基準デザイン生成工程が実行される(ステップ102)。本実施形態では、端末装置20の基準デザイン生成部25により画像データ4から基準デザイン5が生成される。
【0042】
基準デザイン生成工程では、画像データ4の色を変換する色変換工程と、画像データ4から輪郭線15を抽出する抽出工程とが実行される。
本実施形態では、色変換工程により生成された変換データ12から、輪郭線15を抽出した抽出データ13が生成される。例えば抽出データ13は、基準デザイン5における輪郭線15を表すデータとなる。
図4には、画像データ4から生成された変換データ12と抽出データ13とが模式的に図示されている。
【0043】
色変換工程では、画像データ4に対する色空間の変換処理、グレースケール化処理、及び2値化処理から選ばれる1又は2以上が実行されることが好ましい。
これらの処理は、例えば画像データ4から輪郭線15等を抽出するための前処理として利用される。例えば輪郭線15のコントラストが高いイラスト等の画像については、グレースケール化処理をしたうえで2値化することで、容易に輪郭線15の抽出が可能である。
【0044】
色空間の変換処理は、カラー画像の画素値の表現を、他の色空間での表現に変換する処理である。色空間としては、例えば赤R、緑G、青Bの各色の割合で色を表現するRGB色空間や、色相H(Hue)、彩度S(Saturation Chroma)、明度V(Value Brightness)の各パラメータの割合で色を表現するHSV色空間等が挙げられる。
【0045】
HSV色空間での画像処理等を行う場合(
図5等参照)には、RGB色空間で表現された画像データ4をHSV色空間での画像データ4に変換する処理が実行される。
逆に、RGB色空間での画像処理等を行う場合には、HSV色空間で表現された画像データ4をRGB色空間での画像データ4に変換する処理が実行される。
例えばカRGB色空間やHSV色空間での画像処理を用いたエッジ検出等の処理により、画像データ4から輪郭線15を容易に抽出することが可能である。
【0046】
図4に示す例では、色変換工程により、画像データ4の色が堆積体2に使用可能な候補色に変換される。例えば色相H、彩度S、明度V等の色に関する各種のパラメータについての閾値判定により、画像データ12の各部の色が、対応する候補色に変換される。
図4に示す例では、U字型の図柄が黒色に変換され、その他の領域が明るい灰色に変換される。この場合、変換データ12における、黒色及び明るい灰色は、複数の候補色から選択された色となっている。また画像データ4においてU字型の図柄を囲む四角形の帯状領域の色は、閾値判定により明るい灰色で表した候補色に変換される。このため、四角形の帯状領域は変換データ12では見えなくなる。なお、四角形の帯状領域の色が候補色である場合や、四角形の帯状領域の色に近い候補色がある場合には、四角形の帯状領域の色は閾値判定により対応する候補色に変換されることもある。この場合、変換データ12において四角形の帯状領域の領域が見えなくなることはない。閾値判定による候補色への変換処理については、
図5及び
図6等を参照して後に詳しく説明する。
【0047】
このように候補色で配色された変換データ12から、各色の領域を囲む輪郭線15が抽出され抽出データ13が生成される。
図4に示す例では、変換データ12からU字型の図柄の輪郭線15と、画像全体の外周に沿った四角形状の輪郭線15とが抽出される。
例えば抽出データ13において、輪郭線15や輪郭線15で囲まれた閉領域16は、堆積体2の候補色を用いて配色される。また抽出データ13において輪郭線15の線幅は、加飾可能な線幅に設定される。この場合、抽出データ13は加飾条件を満たした基準デザイン5の一例となる。
【0048】
次に、発注者1に基準デザイン5を加飾条件を満たす範囲で編集可能なように提示し、発注者1による基準デザイン5の編集結果を製品デザイン6として取得する製品デザイン取得工程が実行される(ステップ103)。本実施形態では、端末装置20の製品デザイン取得部26により基準デザイン5を編集する編集画面が表示され、編集画面での編集結果が製品デザイン6として読み込まれる。
【0049】
編集画面では、例えば輪郭線15の色及び輪郭線15で囲まれた閉領域16の色を複数の候補色の中から選択することが可能である。すなわち、発注者1は、デザインの配色を編集することが可能である。この他、輪郭線15の線幅や厚み等が選択可能であってもよい。
図4に示す製品デザイン6では、U字型の図柄の輪郭線15と、画像の外周の輪郭線15とが黒色に設定される。またU字型の図柄の輪郭線15で囲まれた閉領域16は、明るい灰色に設定される。またその他の領域には、色が設定されない。このように候補色を設定せず堆積体2を設けない領域が設定されてもよい。
【0050】
次に、製品デザイン6に基づいて、製造装置40を動作させる加飾動作プログラム7を生成する加飾動作プログラミング工程が実行される(ステップ104)。本実施形態では、端末装置20を用いて発注者1により決定された製品デザイン6が、サーバ装置30に送信される。サーバ装置30では、製品デザイン6をもとに、輪郭線15を描くためのノズル34の軌跡や、各輪郭線15や閉領域16に堆積体2を形成する順番等を規定した加飾動作プログラム7が構成される。
【0051】
図4に示す加飾動作プログラム7では、#1、#2、#3の順番で各堆積体2が形成される。例えば、#1では、画像の外周の輪郭線15に沿って堆積体2が形成され、#2では、U字型の図柄の輪郭線15に沿って堆積体2が形成される。また#3では、U字型の図柄の内側の閉領域16に堆積体2が形成される。
また加飾動作プログラム7では、輪郭線15の堆積動作を始点や終点、また描画の方向等が設定される。
図4では、画像の外周の輪郭線15と、U字型の図柄の輪郭線15における堆積動作の始点が白丸により模式的に図示されている。また各始点における描画の方向が黒色の矢印により模式的に図示されている。
加飾動作プログラム7の具体的な内容については、後に詳しく説明する。
【0052】
次に、加飾動作プログラム7に基づいて製造装置40を動作させて固形パーソナルケア製品10の加飾を行う加飾工程が実行される(ステップ105)。本実施形態では、製造装置40を制御する制御装置41により、加飾動作プログラム7が読み込まれ、シャトル45に搭載された対象物11(ワーク)が1又は2以上の加飾装置43により加飾される。
【0053】
加飾工程は、対象物11上に堆積体2を形成する堆積工程を有することが好ましい。具体的には、ディスペンサとして構成された加飾装置43により、対象物11上に堆積体2が形成されることが好ましい。従って、加飾動作プログラム7は、堆積工程を実行する加飾装置43の動作を制御するプログラムとなる。
【0054】
加飾工程では互いに異なる組成物Lを堆積する複数の加飾装置43が用いられることが好ましい。従って、加飾工程は、対象物11上に互いに色の異なる堆積体2を形成する複数の堆積工程を有することが好ましい。これにより、例えば様々な色や質感の組成物Lを用いて固形パーソナルケア製品10を装飾することが可能となり、固形パーソナルケア製品10のデザインのバリエーションを十分に増加することが可能となる。
【0055】
図4に示す例では、#1における画像の外周の輪郭線15の描画が完了しており、#2におけるU字型の図柄の輪郭線15が描画されている様子が模式的に図示されている。
例えば製品デザイン6において#1及び#2で描画される輪郭線15には、同一の堆積体2(組成物L)が用いられる。この場合、例えば黒色の堆積体2を形成することが可能な加飾装置43により、#1及び#2の描画が実行される。
また#2の描画が完了した後は、#3ではU字型の閉領域16に明るい灰色の堆積体2(組成物L)が形成される。この場合、対象物11を搭載したシャトル45が明るい灰色の堆積体2を供給する加飾装置43の動作範囲に移動したうえで、U字型の閉領域16に明るい灰色の堆積体2が形成される。
【0056】
このように、固形パーソナルケア製品10の加飾条件をもとに生成された基準デザイン5を用いて、最終的な製品デザインを決定することで、製品デザイン6から容易に加飾動作プログラムを生成することが可能となる。これにより、固形パーソナルケア製品のデザインのバリエーションの増加と固形パーソナルケア製品10の製造に要する期間及びコストの低減との両立を図ることが可能となる。
【0057】
発注者1は基準デザイン5を編集することが可能であり、デザインを部分的に修正することや、デザインの細部をカスタマイズするといったことが可能である。また、発注者1は、最終的な製品デザイン6を確認することが可能であるため、固形パーソナルケア製品10を安心して発注することが可能である。
【0058】
[基準デザイン生成工程]
基準デザイン生成工程における色変換処理について説明する。
図5には、HSV色空間におけるH値及びS値の関係(HS色空間)を示す2次元プロットがグレースケールにより図示されている。2次元プロットの縦軸は、H値(色相)であり、0以上179以下の範囲でH値を表している。また横軸は、S値(彩度)であり、0以上255以下の範囲でS値を表している。なおV値(明度)は一定の値に設定されている。以下では、H値、S値、V値を、単にH、S、Vと記載する場合がある。
【0059】
Th1、Th2、Th3は、H値に対する閾値の一例である。ここでは、Th1は約30であり、例えば黄色の色相と同等の値である。またTh2は約90であり、例えばシアンの色相と同等の値である。またTh3は約150であり、例えばマゼンダの色相と同等の値である。なお、色相環は環状であり、H=0及びH=179はともに赤色に対応している。なお、H値に対する閾値は限定されず、この他の値に設定されてよい。
【0060】
ここでは、色変換処理として、画像データ4に含まれる各画素の画素値(各画素の色)について、H値に対する閾値(Th1、Th2、Th3)を用いた閾値判定が実行される。そして閾値判定の結果に応じて各画素の画素値が候補色に置換される。
図5では3種類の候補色(Color1、Color2、Color3)への置換が行われる。
H値が0≦H<Th1である画素の色は、Color1に置換される。
H値がTh1≦H<Th2である画素の色は、Color2に置換される。
H値がTh2≦H<Th3である画素の色は、Color3に置換される。
H値がTh3≦H≦179である画素の色は、Color1に置換される。
【0061】
図6の(1)は、色変換処理を行う前の画像データ4の模式図である。この画像データ4には大文字のアルファベット"A"、"B"、"C"の3文字が含まれており、各文字の色がそれぞれ異なっている。この画像データ4がHSV色空間で表現された画像データ4に変換され、変換後の各画素のH値に対して、閾値判定が実行され、画素の色が置換される。
【0062】
ここでは、"A"、"B"、"C"の各文字が以下のように色変換される。
図6の(2)に示すように、"A"に含まれる画素は、Th2≦H<Th3となり、Color2に置換される。
図6の(3)に示すように、"B"に含まれる画素は、0≦H<Th1(あるいはTh3≦H≦179)となり、Color1に置換される。
図6の(4)に示すように、"C"に含まれる画素は、Th1≦H<Th2となり、Color3に置換される。
なお、
図6では、"A"、"B"、"C"の背景となる部分の色についての色変換が省略されているが、もちろん背景に含まれる画素についても色変換が行われてよい。
【0063】
これにより、様々な色を含んで構成された画像データ4を、複数の候補色だけで配色された画像に容易に変換することが可能となる。従って色変換処理により生成される変換データ12は、画像データ4を候補色で表現した画像であるともいえる。これにより、加飾条件を満たすように配色された基準デザイン5等を容易に実現することが可能となる。
【0064】
Color1に置換される色(0≦H<Th1、及びTh3≦H≦179となる色)は、赤色に近い色である。この場合、Color1は、赤色の成分が強い候補色に設定される。Color2に置換される色(Th1≦H<Th3となる色)は、緑色に近い色である。この場合、Color2は、緑色の成分が強い候補色に設定される。Color3に置換される色(Th3≦H≦179となる色)は、青色に近い色である。この場合、Color2は、青色の成分が強い候補色に設定される。
このように設定することで、色変換が行われた変換データ12の色合いを、元の画像データ4の色合いに近づけることが可能である。
【0065】
閾値の範囲を設定する方法や、閾値の範囲と候補色とを対応付ける方法は限定されない。例えば赤色に近い色が、青色の成分が強い候補色に置換するように候補色が対応付けられてもよい。また、上記ではH値について3つの閾値を設定したが、閾値の数は限定されない。閾値は1つでもよいし2つでもよい。また4つ以上の閾値が設定されてもよい。
【0066】
H値に代えて、S値に対する閾値や、V値に対する閾値を用いて閾値判定が実行されてもよい。この場合、H値、S値、及びV値についての閾値判定のいずれか1つが実行されてもよいし、2つ以上を組み合わせてもよい。
例えばS値が低い場合には、彩度が低い候補色に置換し、S値が高い場合には、彩度が高い候補色に置換する。またV値が低い場合には、明度が低い候補色に置換し、V値が高い場合には、明度が高い候補色に置換する。このような処理が組み合わせて実行される。
【0067】
このように、基準デザイン生成工程では、H値に対する閾値、S値に対する閾値、及びV値に対する閾値から選ばれる1又は2以上を用いて画像データ4の画素値について閾値判定を実行し、当該判定結果に応じて画像データ4の画素値が複数の候補色に置換される。
すなわち、各画素(ピクセル)の色が予め用意された複数の候補色で構成されたカラーパレットの色に置換される。
予め用意された加飾用の組成物L(堆積体2)の色に各画素の色を当て込むことで、加飾可能な様態を備えた基準デザイン5を容易に生成することが可能となる。また候補色で配色されたデザインを用いることで、加飾動作プログラム7を生成する際に色変換等を行う必要がなく、加飾動作プログラム7の作成効率を向上することが可能となる。
【0068】
基準デザイン生成工程における抽出処理について説明する。
図7Aに示す画像データ4には、
図6に示す"A"、"B"、"C"の文字に加え、顔の図柄が含まれている。顔の図柄は、円形の輪郭と、その内側に配置された右目及び左目となる円形の黒色の領域と、口を表す曲線とで構成される。このうち、口を表す曲線は、両端が閉じていない輪郭線15である。
【0069】
図7Aに示す画像データ4に対して、上記した色変換処理を実行すると、
図7Bに示すような変換データ12が生成される。ここでは、"A"、"B"、"C"がそれぞれ、Color2(暗い灰色)、Color1(灰色)、及びColor3(明るい灰色)に置換される。顔の図柄の輪郭の内部は、"B"と同じColor1(灰色)に置換される。顔の図柄の右目及び左目となる円形の領域及び口を表す曲線は、ともにColor4(黒色)に変換される。Color1~4はいずれも堆積体2の候補色である。
【0070】
抽出処理では、例えば変換データ12において同一の候補色に置換された領域の境界となる画素が輪郭線15として抽出される。この場合、輪郭線15は、画素を結んだ線となる。
例えば
図7Cに示すように、抽出データ13では、"A"、"B"、"C"の文字の輪郭線15が抽出される、白抜きの文字となる。また、顔の図柄では、顔全体の輪郭と、左右の目と、口を表表す輪郭線15が抽出される。
このように、色変換処理のあとで抽出処理を行うことで、輪郭線15を容易に抽出することが可能となる。
【0071】
上記では、輪郭線15が画素を結んで構成される場合について説明した。以下では、基準デザイン生成工程におけるスプライン曲線を用いた輪郭線15の抽出処理について説明する。
図8Aは、画素を結んで構成される輪郭線15が抽出された抽出データ13の一例である。
図8Bは、
図8Aの部分領域28aの拡大図であり、
図8Aの輪郭線15を拡大したものである。
図8Cは、スプライン曲線17について説明するための模式図である。
【0072】
図8A及び
図8Bに示すように、画像データ4(ピクセルデータ)から輪郭線15をする際に、輪郭線15となる各画素を単純に結ぶと、輪郭線15は、滑らかな曲線ではなく、画素単位でカクつく線となる。このように、ステップ状に折れ曲がった輪郭線15をそのまま描画した場合、折れ曲がりが目立ってしまいデザインを損ねる場合があり得る。
【0073】
そこで、画素を直接つなげた輪郭線15(第1の輪郭線15p)に代えて、スプライン曲線を用いた輪郭線15(第2の輪郭線15s)を算出してもよい。
具体的には、画像データ4から複数の画素をつなげた第1の輪郭線15pが抽出される。また第1の輪郭線15pを構成する複数の頂点のうち少なくとも1つを制御点として第1の輪郭線15pを近似するスプライン曲線17を含む第2の輪郭線15sが算出される。そして、第2の輪郭線15sを含む基準デザイン5が生成される。
【0074】
図8Cでは、複数の画素をつなげた第1の輪郭線15pの頂点Pが白丸により模式的に図示されている。この頂点Pの座標をもとに多項式近似を行い、第1の輪郭線15pを近似するスプライン曲線17が算出される。なお
図8Cでは、各頂点Pを通るスプライン曲線17が図示されているが、スプライン曲線17は、必ずしも頂点を通る必要は無い。またスプライン曲線17を算出するための多項式としては、例えば3次多項式が用いられる。なおより高次の多項式が用いられてもよいし、近似の精度が低くてもよい場合等には、2次多項式等が用いられてもよい。
【0075】
図9Aは、
図8Aの部分領域28bの拡大図であり、画素を直接つなげた第1の輪郭線15pを拡大したものである。
図9Bは、
図9Aに示す第1の輪郭線15pに対して、3次の多項式によるスプライン補間を実行したものであり、スプライン曲線17を含む第2の輪郭線15sが図示されている。
図9A及び
図9Bに図示された黒丸は、第1の輪郭線15pの頂点Pであり、
図9Bでは、スプライン曲線17の制御点となっている。
【0076】
図9Aに示すように、第1の輪郭線15pでは、格子状に配置された画素をつないでいるため、急激に折れ曲がる部分等が存在し全体として滑らかな曲線にはならない。一方で、スプライン曲線17を含む第2の輪郭線15sは、画素の座標とは独立した滑らかな曲線となる。
第2の輪郭線15sは、基準デザイン5の輪郭線15として用いられる。例えば基準デザイン5のデータは、ベクタ形式のデータとして構成され、第2の輪郭線15sは、画素とは独立したオブジェクトとして基準デザイン5のデータに格納される。
【0077】
このように、基準デザイン生成工程では、画像に対して輪郭線15を構成する頂点Pとなる画素のうち少なくとも1つを制御点にもつスプライン曲線を用いて基準デザイン5が生成される。これにより、ピクセル座標から基準デザイン5を生成した場合の輪郭線15のカクつきが抑制され、意匠性を向上することが可能となる。
なお、必ずしもスプライン曲線を用いて基準デザイン5を生成する必要はなく、スプライン曲線を使用するか否かを選択可能にしてもよい。例えば、基準デザイン5を生成する前にスプライン補間の有無を選択可能なように発注者に提示してもよい。また以下で説明する編集画面等において、スプライン補間をした場合の輪郭線15と、スプライン補間をしていない輪郭線15とを切り替え可能に提示してもよい。
【0078】
基準デザイン生成工程において、複数の候補色により配色された基準デザイン5が生成されることが好ましい。
例えば、スプライン曲線17を用いて生成された輪郭線15(第2の輪郭線15s)により囲まれた領域が、基準デザイン5における閉領域16となる。この閉領域16は、色変換処理により算出された変換データ12と同様に、候補色を用いて配色される。また各輪郭線15も変換データ12と同様に、候補色を用いて配色される。
複数の候補色により配色された基準デザイン5は、編集されていない初期デザインとして編集画面60に表示されることが好ましい。
【0079】
[製品デザイン取得工程]
製品デザイン取得工程において表示される編集画面での基準デザイン5の編集について説明する。
図10A及び
図10Bには、発注者1による編集が行われる前及び発注者1による編集が行われた後の編集画面60(基準デザイン5)がそれぞれ示されている。
編集画面60には、編集エリア61と、カラーパレット62と、線幅選択欄63と、ラインツール64と、消去ツール65と、OKボタン66と、Backボタン67と設けられる。
【0080】
編集エリア61は、基準デザイン5が表示されるエリアである。編集エリア61では、基準デザイン5の輪郭線15や閉領域16の色等が編集可能である。また編集エリア61内を拡大・縮小して表示することが可能であってもよい。
カラーパレット62は、色を選択するための選択欄である。カラーパレット62には、堆積体2に使用可能な複数の候補色が配置される。ここでは10種類の候補色が配置されているが、候補色の数は限定されない。また堆積体2を設けない部分を指定する色として透明色等が用意されていてもよい。
線幅選択欄63は、輪郭線15の線幅を選択するための選択欄である。ここでは、4種類の線幅が選択可能である。なお線幅の種類や数は限定されず、例えば加飾装置43であるディスペンサの特性等に応じて適宜設定されてよい。
ラインツール64は、輪郭線15を追加するツールである。例えば基準デザイン5を生成する過程で輪郭線15の一部が失われた場合等には、ラインツール64で失われた部分を書き足すことが可能である。この他、ラインツール64を用いて輪郭線15を任意に追加することが可能である。
消去ツール65は、輪郭線15を消去するツールである。例えば基準デザイン5に不要な輪郭線15が含まれている場合には、消去ツール65を選択して不要な部分をなぞることで、輪郭線15を部分的に消去することが可能である。
【0081】
OKボタン66は、編集を完了させるボタンである。OKボタン66を選択すると、例えば編集が完了したかを確認する確認画面等が表示される。確認画面において、編集の完了が確認された場合には、発注者1による編集が完了したものとして、その時点で編集画面60に表示されている基準デザイン5が、最終的な製品デザイン6として読み込まれる。
Backボタン67は、編集画面60が表示される前の状態に画面を戻すボタンである。Backボタン67が選択された場合、例えば画像データ4の入力画面や、メニュー画面等に画面が戻る。なお、画面を戻す前に編集画面60での編集内容が失われる旨を確認する確認画面等が表示されてもよい。
この他、編集内容を保存する保存ボタンや、直前の操作をキャンセルするUndoボタン等が設けられてもよい。
【0082】
図10Aでは、"A"、"B"、"C"の文字と、顔全体と、左右の目と、口を表す輪郭線15が黒色で図示されている。このうち、口を表す輪郭線15は開曲線15aであり、それ以外の輪郭線15は閉曲線15bである。
なお、開曲線15aとは、閉じていない線であり、閉曲線15bとは、閉じた線である。本開示において、開曲線15a及び閉曲線15bには、直線のみで構成された図形も含まれる。
【0083】
閉曲線15bの内側は、輪郭線15で囲まれた閉領域16となる。従って、"A"、"B"、"C"の文字と、顔全体と、左右の目の内側の領域は、いずれも閉領域16である。
以下では、基準デザイン5には、1又は2以上の輪郭線15と1又は2以上の輪郭線15により囲まれた1又は2以上の閉領域16とが含まれるものとする。
【0084】
製品デザイン取得工程において、輪郭線15ごとに複数の候補色から輪郭線15の色を選択可能なように基準デザイン5を発注者1に提示することが好ましい。すなわち、独立した輪郭線15ごとに発注者1が製品の色を予め用意されたカラーパレット62から選択することが可能である。
【0085】
例えば編集エリア61内で各輪郭線15を選択すると、選択された輪郭線15が編集状態となり強調して表示される。この状態でカラーパレット62の色を選択すると、編集状態となっている輪郭線15の色がカラーパレット62で選択された色に変更される。
例えば、
図10Bでは、顔全体の輪郭線15が選択され、顔内部の閉領域16と同じ色が選択されている。このように、輪郭線15の色の選択自由度を与えることで、より発注者1の要望に沿ったデザインを成形することが可能となる。
【0086】
製品デザイン取得工程において、1又は2以上の閉領域16ごとに複数の候補色から閉領域16の色を選択可能なように基準デザイン5を発注者1に提示することが好ましい。すなわち、独立した閉領域16ごとに発注者1が製品の色を予め用意されたカラーパレット62から選択することが可能である。
【0087】
例えば編集エリア61内で各閉領域16を選択すると、選択された閉領域16が編集状態となり強調して表示される。この状態でカラーパレット62の色を選択すると、編集状態となっている閉領域16の色がカラーパレット62で選択された色に変更される。
例えば、
図10Bでは、"B"及び"C"の閉領域16の色が、"A"と同じ色に変更される。また顔全体の閉領域16の色が暗い灰色から明るい灰色に変更される。また左右の目に対尾する閉領域16では、背景と同様に透明色が指定される。このように、閉領域16の色の選択自由度を与えることで、より発注者1の要望に沿ったデザインを成形することが可能となる。
【0088】
輪郭線15や閉領域16に堆積される堆積体2の厚みが編集可能であってもよい。例えば厚みを選択する選択欄や、厚みを数値で入力する入力欄当が設けられてもよい。
輪郭線15や閉領域16が移動可能であってもよい。この場合、各要素を個別に移動して配置することが可能となる。
基準デザイン5全体の大きさ、位置、向き等が調整可能であってもよい。例えば対象物11において堆積体2が形成されるエリアが表示され、そのエリア内での基準デザイン5の大きさ、位置、向き等が編集される。
この他、加飾条件を満たす範囲で基準デザイン5を構成する任意の要素が編集可能に提示されてよい。
【0089】
[加飾動作プログラミング工程]
加飾動作プログラミング工程において設定されるノズル34の軌跡について説明する。
図11A及び
図11Bには、加飾装置43が開曲線15a及び閉曲線15bとして構成された輪郭線15に沿って組成物Lを供給し堆積動作を行う様子が模式的に図示されている。ここでは、開曲線15aが点線で図示されており、組成物L(堆積体2)が太い実線で図示されている。また、堆積動作の始点68(Start)及び終点69(Stop)が白丸で図示されている。
加飾動作プログラム7としては、例えばGコードを用いて記述されたNC(Numerical Control)プログラム等が用いられる。この他、加飾装置43を動作させることが可能な任意の形式のプログラムが用いられてよい。
【0090】
図11Aでは、加飾動作プログラム7は、加飾装置43のノズル34の軌跡が開曲線15aに沿った軌跡となるように構成される。この時、加飾動作プログラム7は、開曲線15aの端部のうち一方を堆積動作の始点68、他方を終点69とするように生成される。
このように、加飾動作プログラミング工程において、製品デザイン6を構成する輪郭線15に開曲線15aが含まれる場合、開曲線15aの一端を堆積体2の堆積動作の始点68に設定し、開曲線15bの他端を堆積体2の堆積動作の終点69に設定する。これは、開曲線15aの途中に始点68や終点69を設定しないことを意味する。
【0091】
例えば
図11Aでは、開曲線15aの図中左側の端点が始点68に設定され、その反対側となる図中右側の端点が終点69に設定される。これにより、加飾装置43は、始点68から終点69に向けて連続して堆積動作を行うことが可能となる。この方法では、始点68と終点69の位置が重なることはないため、同じ位置に組成物Lが過剰に供給される加飾時の液だまり等が抑制され、輪郭線15を精度よく描画することが可能である。
【0092】
図11Bでは、加飾動作プログラム7は、加飾装置43のノズル34の軌跡が閉曲線15bに沿った軌跡となるように構成される。閉曲線15bを描画する場合には、例えば途中で堆積動作を中断することがないようにノズル34の軌跡が設定される。この場合、加飾動作プログラム7は、例えば閉曲線15b上の任意の点が堆積動作の始点68及び終点69となるように生成される。これにより、閉曲線15b上に複数の液だまりが発生するといった事態を回避することが可能となる。
なお上記した液だまり等の発生を抑制するため、堆積動作の始点68及び終点69を多少ずらして設定することも可能である。
【0093】
加飾動作プログラミング工程において設定される充填量について説明する。
加飾工程には、堆積体2となる組成物Lを対象物11上に充填する工程が含まれることが好ましい。この工程は、閉領域16全体に同一の組成物Lを堆積させる場合等に用いられる。
組成物Lを充填する工程では、まず閉じた輪郭線15(閉曲線15b)が先に描画されることが好ましい。その後、輪郭線15で囲まれた閉領域16に組成物Lが充填されることが好ましい。
加飾動作プログラム7では、閉領域16に供給する組成物Lの量(すなわち組成物Lの充填量)が設定されることが好ましい。
【0094】
加飾動作プログラミング工程において、閉領域16の面積値に基づいて閉領域16に対する組成物Lの充填量を設定することが好ましい。
ここで、閉領域16の面積値とは、閉領域16の面積を表す値である。例えば閉領域16に含まれる画素数が面積値として用いられる。また製品デザイン6に実際のサイズ(縦及び横の長さ等)が設定されている場合には、各閉領域16の実際の面積が面積値として用いられてもよい。いずれにしろ、各閉領域16の面積値は同じ形式で算出される。
【0095】
図12に示す例では、"A"、"B"、"C"の閉領域16の面積値が150、200、170となっている。また顔の図柄において左目及び右目の閉領域16の面積値は、ともに30となっている。さらに、顔全体の閉領域16の面積値は、1000となっているが、これは顔全体の輪郭線15で囲まれた領域の面積値から、左目及び右目の閉領域16の面積値を引いた値である。
【0096】
これらの面積値に応じて、組成物Lの充填量が決定される。例えば面積値に所定の係数をかけた値が充填量として算出される。所定の係数は、基準デザインの実際のサイズや、充填する組成物L(堆積体2)の厚み等に応じて適宜設定される。
このように、各閉領域16の面積値を用いることで、加飾動作プログラミング工程において充填量を決定する処理を自動化することが可能となり、加飾動作プログラム7を効率的に作成することが可能となる。
【0097】
次に、加飾動作プログラミング工程において設定される充填位置について説明する。
組成物Lを充填する場合、例えばノズル34と対象物11との相対位置は固定されることが好ましい。加飾動作プログラム7では、組成物Lを充填する際の対象物11上でのノズル34の位置(すなわち組成物Lの充填位置)が設定されることが好ましい。
図13A及び
図13Bは、顔の図柄、及び、文字"C"における充填位置Fの一例を示す模式図である。充填位置Fは、対象となる閉領域16の内側に設定される。
【0098】
加飾動作プログラミング工程において、閉領域16の重心位置Gに基づいて閉領域16の内部に閉領域16に対する組成物Lの充填位置Fを設定することが好ましい。
ここで、閉領域16の重心位置Gとは、閉領域16を平面的な図形として見た場合の重心の座標である。例えば閉領域16が円形である場合、その中心が重心となる。また閉領域16が矩形である場合、対角線の交点が重心となる。重心位置Gを算出する方法は限定されない。
【0099】
例えば
図13Aに示す例では、左目及び右目は円形の閉領域16となっており、その中心が重心位置Gとなる。この場合、重心位置Gは閉領域16に含まれているため、そのまま充填位置Fに設定される。
顔全体の閉領域16について重心位置Gを求めると、閉領域16の輪郭線15は円形であるものの、その内部には左目及び右目の閉領域16が含まれるため、重心位置Gは顔全体を表す円形の輪郭線15の中心よりも図中下側にずれた位置になる。この場合でも重心位置Gは、閉領域16に含まれているため、そのまま充填位置Fに設定される。
充填位置Fを重心位置Gに設定することで、閉領域16全体に均一かつ短時間で組成物Lを充填することが可能となる。
【0100】
一方で
図13Bに示すように文字"C"の重心位置Gは、閉領域16により囲まれた領域に位置する。すなわち、重心位置Gは、閉領域16の外側に位置する。
この場合、例えば重心位置Gに最も近い閉領域16の境界(輪郭線15)上の近接ポイントが検出される。そして、近接ポイントP1と重心位置Gとを結ぶ直線が近接ポイントP1とは反対側で輪郭線15と交差する交差ポイントP2が検出される。この近接ポイントP1と交差ポイントP2との中点が、充填位置Fに設定される。
これにより、充填位置Fを、重心位置Gの近傍に配置することが可能となるとともに、輪郭線15と充填位置Fとの距離が離れるため、組成物Lが閉領域16の外側に漏れるといった事態を回避することが可能となる。
【0101】
この他、重心位置Gが閉領域16の外側にある場合に、充填位置Gを設定する方法は限定されない。例えば、近接ポイントP1から一定の距離だけ離れた位置に充填位置Fが設定されてもよい。また、近接ポイントP1と交差ポイントP2との間隔が短い場合(閉領域16が狭くなっている場合)等には、近接ポイントP1(重心位置G)に近い範囲で、輪郭線15からの距離が十分に確保可能な位置に充填位置F等が設定されてもよい。
このように、各閉領域16の重心位置Gを基準にすることで、加飾動作プログラミング工程において充填位置を決定する処理を自動化することが可能となり、加飾動作プログラム7を効率的に作成することが可能となる。
【0102】
[加飾工程]
製造装置40は、典型的にはステージ44及び複数のシャトル45からなる搬送システム42と、マニピュレータロボット46と、複数の加飾装置43とを有する。これらを備えた例を
図14に示す。
【0103】
ステージ44は、典型的には複数のセグメントが組み合わされて構成される。各セグメントは、典型的には物理的に独立した机状のユニットであり、それぞれ電磁コイルを内蔵する。複数のセグメントは、シリアルなライン的ではなく、互いに接続されるように2次元的に配置され、ステージ44を構成することが好ましい。
【0104】
ステージ44は、複数のステーション50を有することが好ましい。ここでステーション50とは、例えば対象物11の供給、排出、加飾といった固形パーソナルケア製品10を製造するための各工程が行われるエリアである。
例えば各ステーション50は、ステージ44においてシリアルなライン的ではなく、自在に行き来が可能である様に2次元的に配置されることが好ましい。
【0105】
製造装置40は、典型的には対象物11を供給するステーション50と、対象物11を排出するステーション50とを有する。これらの対象物11を供給及び排出する動作は、マニピュレータロボット46によって実行される。以下では、対象物11の供給及び排出が行われるステーション50を供給ステーション51及び排出ステーション52と記載する。
【0106】
製造装置40は、各々が対象物11に対して互いに独立した加飾動作を実行可能な複数のステーション50を有することが好ましい。各ステーション50には、それぞれ加飾装置43が配置され加飾装置43による加飾動作が行われる。以下では、加飾動作が実行されるステーション50を加飾ステーション53と記載する。
図14に示す例では加飾装置43a、43b、及び43cが設けられた3つの加飾ステーション53a、53b、及び53cが図示されている。なお、加飾ステーション53の数は限定されない。
【0107】
また、製造装置40には、加飾以外にも検査やクリーニング等の作業を実行するためのステーションが設けられてもよい。このように、製造装置40には、対象物11に対して様々な作業を行う複数の作業ステーションが配置され、各作業ステーションには対応する作業を行う機械等が配置される。上記した加飾ステーション53は、作業ステーションの一例であり、加飾装置は、作業ステーションに設けられる機械の一例である。
【0108】
複数のシャトル45は、対象物11を搭載し複数のステーション50間を移動することが好ましい。
各シャトル45は、典型的には永久磁石を含む。ステージ44の電磁コイルのオン及びオフが図示しない制御装置41により制御された状態で、シャトル45はステージ44から浮上してステージ44を浮遊し、ステージ44を2次元的に移動する。シャトル45は、対象物11を搭載して複数のステーション50間を移動することで、ステージ44上でワーク を搬送する。シャトル45は、搭載されたワークを位置決めするための治具を有してもよい。なお、シャトル45について「ステージ44上」等と記載するとき、シャトル45はステージ44に接触せず、ステージ44から僅かな空間を空けて浮上した状態であることを意味する。
本実施形態では、シャトル45は、搬送ユニットに相当する。
【0109】
加飾ステーション53a、53b、及び53cでは、例えばそれぞれ互いに異なる色の組成物Lが対象物11(ワーク)に供給され、互いに異なる色の堆積体2が形成されることが好ましい。また各加飾ステーション53a、53b、及び53cでは、シャトル45に搭載されて運ばれてきた各対象物11ごとに、対応する加飾動作プログラム7に従って、輪郭線15に沿った組成物Lの描画や、閉領域16への組成物Lの充填等の加飾動作が行われることが好ましい。
従って、各加飾ステーション53a、53b、及び53cで行われる加飾動作の内容やタイミング等は、完全に独立している。このように独立した加飾動作が可能であるため、様々なデザインが施された固形パーソナルケア製品を低コストかつ短時間で製造することが可能となる。
なお、複数の加飾ステーション53において、異なる色の組成物Lを供給する構成に限定されない。例えば、複数の加飾ステーション53において、同一の色の組成物Lを互いに異なる線幅で供給して堆積体2を形成するようにしてもよい。
【0110】
加飾工程において、対象物11は同一のシャトル45に搭載された状態で複数のステーション50間を移動することが好ましい。例えば、供給ステーション51において、シャトル45に搭載された対象物11は、そのシャトル45に搭載されたままいずれかの加飾ステーション53に移動する。
【0111】
加飾ステーション53では、対象物11は、シャトル45に搭載された状態で加飾されることが好ましい。例えば、加飾ステーション53内の所定の位置にシャトル45が停止した状態で、加飾装置43のノズル34が移動して、輪郭線15等が描画される。また例えば、加飾装置43のノズル34が加飾ステーション53内の所定の位置に固定された状態で、シャトル45が移動することにより輪郭線15等が描画されてもよい。
【0112】
1つの加飾ステーション53での加飾動作が完了すると、対象物11は、同一のシャトル45に搭載されたまま、他の加飾ステーション53等へ移動される。全ての加飾動作が行われ、製品デザイン6が表す装飾が施された対象物11は、同一のシャトル45に搭載されたまま、排出ステーションに移動される。
このように、製造装置40では、同一のシャトル45に搭載されたまま対象物11がステーション50間を移動するため、ステーション50ごとに対象物11の載せ替え等を行う必要がない。これにより、載せ替え等にかかる時間を削減することが可能となり、製造サイクルを大幅に向上することが可能となる。
【0113】
以上、本実施形態に係る固形パーソナルケア製品の製造方法では、発注者が選択した画像データ4が取得され、画像データ4を用いて、加飾条件に応じた基準デザイン5が生成される。また基準デザイン5は、加飾条件を満たす範囲で編集可能に提示され、その編集結果が製品デザイン6として取得される。そして製品デザイン6から生成された加飾動作プログラムに従って、製造装置40により固形パーソナルケア製品10の加飾が行われる。これにより、固形パーソナルケア製品のデザインのバリエーションの増加と固形パーソナルケア製品の製造に要する期間及びコストの低減との両立を図ることが可能となる。
【0114】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0115】
加飾装置43の例
加飾装置43は、典型的には、流動性を有する組成物を、組成物が供給される対象物11上に供給する供給部35と、供給部35と連通するように一体的に配置されたノズル34とを備える。典型的には、平板状のシャトル45がノズル34の下方且つノズル34と対向する位置に配されており、シャトル45の上面に対象物11が搭載できる。これらを備えた一例を
図15に示す。
【0116】
加飾装置43は、供給部35とシャトル45とを所定の位置に支持又は保持する。加飾装置43は、ノズル34の位置及びシャトル45の位置を、任意の方向に相対的に移動させる。これによって、ノズル34及びシャトル45の一方又は両方を、平面方向、鉛直方向又はその組み合わせの方向に移動させて、ノズル34及びシャトル45上の対象物11を他方に対して相対的に移動させることができる。
【0117】
供給部35は、流動性を有する組成物Lを対象物11側に送液する部材である。供給部35は、送液部36と、組成物収容部37とを備えることが好ましい。
送液部36は、流路38を介して組成物収容部37が連通して接続されていることが好ましい。これにより、組成物収容部37から送液部36の内部に供給された組成物Lをノズル34側に連続的に又は非連続的に供給したり、あるいは供給を停止したりできる。このような送液部36としては、組成物Lを液滴状に吐出可能なジェットディスペンサー、あるいは組成物Lを連続的に吐出可能なモーノディスペンサーやスクリューディスペンサーを用いることができる。
組成物収容部37は、その一方がエア等の加圧手段やポンプと接続されており、組成物収容部37に収容されている組成物Lを、流路38を介して、送液部36側に圧送できるように構成されていることが好ましい。
【0118】
ノズル34は、典型的には、組成物Lを供給部35から対象物11に向けて供給する管状の部材である。ノズル34は、その内部に形成された空間である組成物Lの流路が組成物Lの流動方向に沿って形成されている。ノズル34は、その一方の端部であるノズル先端が組成物Lの供給口を構成し、他方の端部は上述した供給部35と連通して接続されている。ノズル34の構成材料は特に限定されず、例えば金属やプラスチックなどを採用できる。
【0119】
組成物L由来である堆積体2(造形体)は、パウダー化粧品等の粉体を主成分とするパーソナルケア製品を製造する観点から、その固形分として、粉体を好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上含む。
組成物L由来である堆積体2は、成形性といった観点から、その固形分として、粉体を好ましくは99質量%以下含む。
堆積体2をこのような構成とするためには、例えば組成物Lに粉体を上述の固形分の範囲で含有させたり、あるいは、液媒及び粉体を含む組成物Lを用いて対象物11上に供給した後、固化工程を行って液媒を除去したりすることで達成することができる。
【0120】
組成物の例
特に断りのない限り、以下に説明する物質の状態(三態)は、1気圧、20℃を基準とする。
組成物は、組成物に含まれる材料の均一分散性を向上し品質を安定化させることや、ノズルから吐出した堆積体の崩れを抑制し形状を安定化させるといった観点から、その粘度が、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.5Pa・s以上、更に好ましくは1Pa・s以上である。
また、上記粘度は、吐出性を向上させ、成形性を向上する観点から、好ましくは1000Pa・s以下、より好ましくは500Pa・s以下、更に好ましくは200Pa・s以下である。
上述した組成物の粘度は、組成物の温度をノズル34からの供給時の組成物と同じ温度、すなわち吐出時の温度にした上で測定する。例えば組成物Lがスラリーである等といった加熱溶融液以外のものであり、室温(25℃)でノズル34から供給する場合には、25℃において、B型粘度計(東機産業株式会社製、デジタル粘度計TVB-10R)を用いて測定された値とする。この場合の測定条件は、ローターをサンプルの粘度範囲に合わせてローターNo.M1、M2、M3、M4、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、T-A、T-B、T-C、T-D及びT-Eのいずれかとし、回転数を3~100rpmとし、測定時間を60秒間とする。組成物が加熱溶融液である場合、組成物の温度をノズル34からの供給時の組成物と同じ温度にした上で、前述の測定条件にて粘度を測定する。
【0121】
組成物は、粉体等の固体及び油剤から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
このような固体としては、例えば、着色顔料及び体質顔料などの通常の化粧料成分に用いられる粉体を含むことが好ましい。
着色顔料及び体質顔料としては、例えば、無機粉体、有機粉体、無機粉体と有機粉体との複合粉体などが挙げられる。
無機粉体としては、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ベントナイト、雲母、チタン被膜雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン、カーボンブラック、チッ化ホウ素これらの複合体等が挙げられる。有機粉体としては、ポリアミド、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、長鎖アルキルリン酸金属塩、N-モノ長鎖アルキルアシル塩基性アミノ酸、これらの複合体等が挙げられる。
これらの体質顔料や着色顔料は、着色しているか又は非着色(例えば、白色又は本質的に透明)であり、組成物又は皮膚に対して、着色、光の回折、油分吸収、半透明性、不透明性、光沢、光沢のない外観、滑らか感などのうちの一つ以上の効果を提供し得る。
【0122】
組成物中における粉体の含有量は、その目的に応じて異なるが、乾燥といった生産性の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。
組成物中における粉体の含有量は、供給時の流動性といった生産性の観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
このような範囲であることで、高精細な立体形状を有するパーソナルケア製品を製造しやすくすることができ、また製品を使用したときの良好な使用感を高めることができる。
組成物中における粉体の平均粒径は、着色力や明度、彩度等の光学的性質の調整といった観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上である。
組成物中における粉体の平均粒径はノズル詰まりを抑制し連続的に安定した吐出を可能とするといった観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で測定される累積体積50容量%における体積累積粒径D50とする。なお、最終的な製品から粉体の平均粒径を測る場合には、まず製品を水や油に溶解させ、バインダー成分を溶かして溶媒に粒子を分散させる。その後、粒度分布計を用いて固形物としての粒度分布を測定し、得られた結果の体積累積粒径D50を平均粒径とする。
組成物中における粉体の平均粒径は、ノズル34からの安定供給性といった観点から、ノズル34の断面の長さD1より小さいことが好ましい。ノズル34の断面が真円でない場合は、ノズル34の断面の最小長さをD1とする。
組成物中における粉体の平均粒径は、上述の方法で製造された堆積体の平面視における線幅W1を細くし、立体的且つ高精細なデザインを安定的に形成するといった観点から、ノズル34の断面の長さD1との比(平均粒径/ノズル断面長さ)が、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.35以下、より一層好ましくは0.3以下である。
平均粒径/ノズル断面長さは小さければ小さいほど好ましいが、現実的には0.001以上である。
【0123】
流動体中に含まれ得る油剤は、1気圧、20℃で液体の油(以下、これを液体油ともいう。)、及び1気圧、20℃で固体の油(以下、これを固体油ともいう。)から選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。
液体油としては、例えば、直鎖又は分岐の炭化水素油、植物油、動物油、エステル油、シリコーン油、高分子アルコールが挙げられる。
直鎖又は分岐の炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン等が挙げられる。植物油としては、ホホバ油、オリーブ油等が挙げられる。
動物油としては、液状ラノリン等が挙げられる。
エステル油としては、モノアルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
高分子アルコールとしては、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
固体油としては、例えば、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、セラミド等が挙げられる。
【0124】
組成物中における油剤の含有量は、その目的に応じて異なるが、総量として、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは1.5質量%以上である。
組成物中における油剤の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
このような範囲であることで、パーソナルケア製品としての良好な発色性や感触を高めることができる。
【0125】
組成物は、目的とするパーソナルケア製品の種類に応じて、増粘剤、皮膜剤、界面活性剤、糖、多価アルコール、水溶性高分子、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、皮膚コンディショニング剤、ビタミン、酸化防止剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤等から選ばれる一種又は二種以上の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
ベンゾフェノン誘導体としては、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸塩、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸塩等が挙げられる。
メトキシ桂皮酸誘導体としては、メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
紫外線散乱剤としては、例えば平均粒径が0.1μm以下の微粒子を用いることができる。
紫外線散乱剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン及びシリカ等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0126】
組成物は、液媒を更に含むことも好ましい。液媒は、化粧料を溶解又は分散させる溶媒又は分散媒として使用することができる液体である。
組成物をスラリーの形態とする場合、組成物は、粉体及び液媒を少なくとも含む混合物であることが好ましい。組成物を化粧料スラリーの形態とする場合には、組成物は、上述した顔料を含む粉体、油剤及び液媒を少なくとも含む混合物であることが好ましい。
【0127】
上述した液体(液媒)としては、例えば、液体の状態において揮発性を有する物質(揮発性溶媒)が挙げられる。具体的には液体(液媒)としては、水、アルコール、ケトン及び炭化水素等から選ばれる一種又は二種以上が好ましく挙げられる。
アルコールとしては、例えば一価の炭素数1~6の鎖式脂肪族アルコールや、一価の炭素数3~6の環式脂肪族アルコールや、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、プロパノール、ペンタノールなどが挙げられる。
ケトンとしては例えば炭素数3~6の鎖式脂肪族ケトンや、炭素数3~6の環式脂肪族ケトンや、炭素数8~10の芳香族ケトンが好適に用いられる。それらの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどが挙げられる。
炭化水素としては、例えばイソパラフィン系炭化水素が好適に用いられ、その具体例としては、IPソルベントが挙げられる。
【0128】
組成物に液媒を含む場合、組成物中における液媒の含有量は、その目的に応じて異なるが、総量として、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは40質量%以上である。
組成物中における液媒の含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
このような範囲であることで、組成物の構成材料の均一分散性を高めつつ、取り扱い性を高めることができる。
【0129】
7.その他
本発明は、以下の各構成を有してもよい。
<1>
固形パーソナルケア製品の製造方法であって、
前記固形パーソナルケア製品の発注者が選択した前記固形パーソナルケア製品のデザインの元データを取得する元データ取得工程と、
前記元データに基づいて、前記固形パーソナルケア製品の加飾に関する加飾条件に応じた基準デザインを生成する基準デザイン生成工程と、
前記発注者に前記基準デザインを前記加飾条件を満たす範囲で編集可能なように提示し、前記発注者による前記基準デザインの編集結果を製品デザインとして取得する製品デザイン取得工程と、
前記製品デザインに基づいて、加飾機構を動作させる加飾動作プログラムを生成する加飾動作プログラミング工程と、
前記加飾動作プログラムに基づいて、前記加飾機構を動作させて前記固形パーソナルケア製品の加飾を行う加飾工程と
を有する固形パーソナルケア製品の製造方法。
<2>
前記加飾工程は、対象物上に堆積体を形成する堆積工程を有し、
前記加飾条件は、前記堆積体の色及び形状の一方又は両方に関する条件を含む
<1>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<3>
前記加飾工程は、前記対象物上に互いに色の異なる前記堆積体を形成する複数の堆積工程を有する
<2>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<4>
前記加飾条件は、前記堆積体に使用可能な複数の候補色を有し、
前記基準デザインは、1又は2以上の輪郭線と前記1又は2以上の輪郭線により囲まれた1又は2以上の閉領域を有し、
前記製品デザイン取得工程において、前記1又は2以上の閉領域ごとに前記複数の候補色から前記閉領域の色を選択可能なように前記基準デザインを前記発注者に提示する
<2>又は<3>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<5>
前記加飾条件は、前記堆積体に使用可能な複数の候補色を有し、
前記基準デザインは、1又は2以上の輪郭線を有し、
前記製品デザイン取得工程において、前記1又は2以上の輪郭線ごとに前記複数の候補色から前記輪郭線の色を選択可能なように前記基準デザインを前記発注者に提示する
<2>~<4>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<6>
前記加飾条件は、前記堆積体に使用可能な複数の候補色を有し、
前記基準デザイン生成工程において、前記複数の候補色により配色された前記基準デザインを生成する
<2>~<5>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<7>
前記元データは、画像データであり、
前記基準デザイン生成工程において、前記画像データに対する色空間の変換処理、グレースケール化処理、及び2値化処理から選ばれる1又は2以上を実行する
<2>~<6>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<8>
前記元データは、画像データであり、
前記加飾条件は、前記堆積体に使用可能な複数の候補色を有し、
前記基準デザイン生成工程において、H値に対する閾値、S値に対する閾値、及びV値に対する閾値から選ばれる1又は2以上を用いて前記画像データの画素値について閾値判定を実行し、当該判定結果に応じて前記画像データの画素値を前記複数の候補色に置換する
<2>~<7>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<9>
前記元データは、画像データであり、
前記基準デザイン生成工程において、前記画像データから複数の画素をつなげた第1の輪郭線を抽出し、前記第1の輪郭線を構成する複数の頂点のうち1又は2以上を制御点として前記第1の輪郭線を近似するスプライン曲線を含む第2の輪郭線を算出し、前記第2の輪郭線を含む前記基準デザインを生成する
<2>~<8>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<10>
前記加飾動作プログラミング工程において、前記製品デザインを構成する輪郭線に開曲線が含まれる場合、前記開曲線の一端を前記堆積体の堆積動作の始点に設定し、前記開曲線の他端を前記堆積体の堆積動作の終点に設定する
<2>~<9>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<11>
前記加飾工程は、前記堆積体となる組成物を前記対象物上に充填する工程を有し、
前記製品デザインは、1又は2以上の輪郭線と前記1又は2以上の輪郭線により囲まれた1又は2以上の閉領域を有し、
前記加飾動作プログラミング工程において、前記閉領域の面積値に基づいて前記閉領域に対する前記組成物の充填量を設定する
<2>~<10>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<12>
前記加飾工程は、前記堆積体となる組成物を前記対象物上に充填する工程を有し、
前記製品デザインは、1又は2以上の輪郭線と前記1又は2以上の輪郭線により囲まれた1又は2以上の閉領域を有し、
前記加飾動作プログラミング工程において、前記閉領域の重心位置に基づいて前記閉領域の内部に前記閉領域に対する前記組成物の充填位置を設定する
<2>~<11>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<13>
前記加飾工程において前記対象物上に形成される前記堆積体の厚みは、0.05mm以上である
<2>~<12>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<14>
前記堆積工程は、前記対象物上に流動性を有する組成物を供給し、前記組成物を固化させて、前記対象物上に前記組成物由来である前記堆積体を造形する
<2>~<13>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<15>
前記組成物は、化粧料となる粉体と液体状の分散媒との混合物である分散液、化粧料となる化合物を溶媒に溶解させた溶液、及び化粧料若しくは油剤の単体又は化粧料を含む材料を加熱溶融させた溶融液から選ばれる1又は2以上を含む
<14>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<16>
前記固形パーソナルケア製品の加飾は、前記対象物に対する前記組成物由来の前記堆積体によるパターンの描画を含み、
前記加飾条件は、描画に用いることが可能な色、描画に用いることが可能な線幅、描画が可能な領域、前記組成物由来の前記堆積体の色、及び前記堆積体の形状から選ばれる1又は2以上を含む
<14>又は<15>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<17>
前記対象物は、紙、フィルム、不織布、金属、樹脂、及び既に製造された固形パーソナルケア製品から選ばれる1又は2以上を含み、好ましくは既に製造された固形パーソナルケア製品を含み、具体的には基材が入った容器を含む
<2>~<16>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<18>
前記加飾機構は、前記加飾動作プログラムに基づいて前記対象物を加飾する
<2>~<17>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<19>
前記加飾機構は、前記対象物を加飾する加飾装置として、前記対象物上に流動性のある組成物を導入するノズルを備えたディスペンサを含む
<2>~<18>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<20>
前記元データ取得工程は、前記発注者が入力した前記元データを読み込む工程、又は、予め用意された前記元データの候補の中から前記発注者が選択したデータを読み込む工程の一方又は両方を含む
<1>~<19>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<21>
前記製品デザイン取得工程は、前記加飾条件を満たす範囲で前記基準デザインを編集可能なように構成された編集画面を生成し、前記発注者が使用する表示装置に前記編集画面を表示する
<1>~<20>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<22>
前記加飾機構は、各々が対象物に対して互いに独立した加飾動作を実行可能な複数のステーションを有する
<1>~<21>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<23>
前記加飾機構は、前記対象物を搭載し複数のステーション間を移動する1又は2以上の搬送ユニットを有し、
前記加飾工程において、前記対象物は同一の前記搬送ユニットに搭載された状態で前記複数のステーション間を移動する
<1>~<22>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<24>
固形パーソナルケア製品の製造システムであって、
前記固形パーソナルケア製品の発注者が選択した前記固形パーソナルケア製品のデザインの元データを取得する元データ取得部と、
前記元データに基づいて、前記固形パーソナルケア製品の加飾に関する加飾条件に応じた基準デザインを生成する基準デザイン生成部と、
前記発注者に前記基準デザインを前記加飾条件を満たす範囲で編集可能なように提示し、前記発注者による前記基準デザインの編集結果を製品デザインとして取得する製品デザイン取得部と、
前記製品デザインに基づいて、加飾動作プログラムを生成する加飾動作プログラミング部と、
前記加飾動作プログラムに基づいて動作し前記固形パーソナルケア製品の加飾を行う加飾機構と
を有する固形パーソナルケア製品の製造システム。
<25>
前記製造システムは、端末装置、サーバ装置、及び前記加飾機構を含む製造装置を有し、
前記元データ取得部、前記基準デザイン生成部、前記製品デザイン取得部、及び前記飾動作プログラミング部は、前記端末装置及び前記サーバ装置により構成される
<24>に記載の固形パーソナルケア製品の製造システム。
<26>
前記サーバ装置は、前記端末装置及び前記製造装置の各々と通信可能に接続される
<25>に記載の固形パーソナルケア製品の製造システム。
<27>
前記端末装置は、携帯端末、タブレット端末、ノート型PC、及び、デスクトップPCから選ばれる1又は2以上を含む
<25>又は<26>に記載の固形パーソナルケア製品の製造システム。
<28>
前記端末装置は、前記発注者に前記基準デザインを編集可能に表示する表示装置、前記発注者による操作入力を受け付ける入力デバイス、及び前記端末装置の動作を制御する端末コントローラを有する
<25>~<27>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造システム。
<29>
前記サーバ装置は、複数の前記端末装置と通信可能に構成される
<25>~<28>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造システム。
<30>
前記端末装置は、端末コントローラを有し、
前記端末コントローラ及び前記サーバ装置は、前記端末装置の動作を制御するように構成される
<25>~<29>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造システム。
<31>
固形パーソナルケア製品の発注者が選択した前記固形パーソナルケア製品のデザインの元データを取得する元データ取得工程と、
前記元データに基づいて、前記固形パーソナルケア製品の加飾に関する加飾条件に応じた基準デザインを生成する基準デザイン生成工程と、
前記発注者に前記基準デザインを前記加飾条件を満たす範囲で編集可能なように提示し、前記発注者による前記基準デザインの編集結果を製品デザインとして取得する製品デザイン取得工程と、
前記製品デザインに基づいて、加飾機構を動作させる加飾動作プログラムを生成する加飾動作プログラミング工程と、
前記加飾動作プログラムに基づいて、前記加飾機構を動作させて前記固形パーソナルケア製品の加飾を行う加飾工程と
を実行することにより製造される固形パーソナルケア製品。
【符号の説明】
【0130】
1…発注者
3…元データ
5…基準デザイン
6…製品デザイン
7…加飾動作プログラム
10…固形パーソナルケア製品