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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183017
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】固形パーソナルケア製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20231220BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20231220BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALI20231220BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20231220BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231220BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q1/10
A61Q1/08
A61Q1/04
A61Q19/10
A61Q1/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096370
(22)【出願日】2022-06-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 喬大
(72)【発明者】
【氏名】夏井 翔平
(72)【発明者】
【氏名】茂木 知之
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC352
4C083AC642
4C083AD012
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD512
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083CC19
4C083CC23
4C083CC25
4C083DD21
4C083FF04
4C083FF06
(57)【要約】
【課題】立体感に富んだ精緻な立体模様を持つ固形パーソナルケア製品を提供することに関する。
【解決手段】固形パーソナルケア製品の製造方法は、立体模様を持つ固形パーソナルケア製品の製造方法であり、対象物上に設けられた固形の基材を前記基材が貫通しないように切削する切削工程を有する。前記切削工程において、高さ方向の段差幅が0.001mm以上1mm以下となる層状の段差を複数有する段差部を形成し、前記基材の表面の最頂部と最底部との高低差が1mm以上となるように前記基材を切削する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品の製造方法であって、
前記製造方法は、対象物上に設けられた固形の基材を前記基材が貫通しないように切削する切削工程を有し、
前記切削工程において、高さ方向の段差幅が0.001mm以上1mm以下となる層状の段差を複数有する段差部を形成し、前記基材の表面の最頂部と最底部との高低差が1mm以上となるように前記基材を切削する
固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項2】
前記切削工程において、前記基材に接触して前記基材を切削する切削工具と、前記対象物とを相対的に移動させて前記基材を切削する
請求項1に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項3】
前記切削工程において、前記切削工具を前記高さ方向に沿って所定量だけ移動する第1のステップと、前記切削工具を前記高さ方向に直交する平面方向に移動する第2のステップとを交互に繰り返すことで前記段差部を形成する
請求項2に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項4】
前記切削工具の前記高さ方向における前記基材に対する切込み量は、0.001mm以上1mm以下である
請求項2又は3に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項5】
前記切削工具の前記高さ方向に直交する平面方向における前記基材に対する切込み量は、0.001mm以上1mm以下である
請求項2~4のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項6】
前記切削工具は、回転刃を有し、
前記回転刃の直径は、0.1mm以上5mm以下である
請求項2~5のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項7】
前記切削工程において切削された前記基材の表面の少なくとも一部が最終的な製品の表面に含まれるように前記基材に前記立体模様を施す
請求項1~6のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項8】
前記基材は、前記対象物上で打型された粉体化粧料である
請求項1~7のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項9】
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品であって、
前記立体模様が形成される固形の基材と、
前記立体模様として前記基材に形成され、高さ方向の段差幅が0.001mm以上1mm以下となる層状の段差を複数有する段差部と
を有する固形パーソナルケア製品。
【請求項10】
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品であって、
前記基材の表面の最頂部と最底部との高低差が1mm以上である
請求項9に記載の固形パーソナルケア製品。
【請求項11】
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品であって、
前記基材の硬さは、0.1N以上100N以下である
請求項9又は10に記載の固形パーソナルケア製品。
【請求項12】
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品であって、
前記基材は、粉体を含み、
前記粉体の平均粒径は、0.01μm以上1mm以下である
請求項9又は10に記載の固形パーソナルケア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形パーソナルケア製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アイシャドウやファンデーション等の固形化粧料や固形石鹸等の固形パーソナルケア製品に装飾を施す方法として、型を用いる方法が知られている。例えば、型を有するプレスヘッドを用いて打型する方法や、ラバーモールドの内部に原料を流し込む方法により固形パーソナルケア製品に形状を与えることで、立体的な装飾が可能である。
【0003】
特許文献1には、打型された化粧料を切削して多色化粧料を製造する方法について記載されている。この方法では、化粧皿に下打型層と上打型層とが積層される。各層は色の異なる化粧料で構成され、ドリルやレーザで上打型層を切削することで、立体的に切り込まれた多色の模様が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-57573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
型を用いて形状を付与する方法では、立体形状が部分的にかけることや角が丸くなることがあり、加工精度が低くなる可能性がある。また特許文献1のように化粧料の層を単純に除去するような加工だけでは、立体的な表現に限界がある。
【0006】
本発明の課題は、立体感に富んだ精緻な立体模様を持つ固形パーソナルケア製品を提供することが可能な固形パーソナルケア製品の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る製造方法は、立体模様を持つ固形パーソナルケア製品の製造方法である。
前記製造方法は、対象物上に設けられた固形の基材を前記基材が貫通しないように切削する切削工程を有することが好ましい。
前記製造方法は、前記切削工程において、高さ方向の段差幅が0.001mm以上1mm以下となる層状の段差を形成することが好ましい。
前記製造方法は、前記段差を複数有する段差部を形成することが好ましい。
前記製造方法は、前記切削工程において、前記基材の表面の最頂部と最底部との高低差が1mm以上となるように前記基材を切削することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、立体感に富んだ精緻な立体模様を持つ固形パーソナルケア製品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る切削装置の構成例を示す模式図である。
図2】固形パーソナルケア製品の構成例を示す模式的な斜視図である。
図3】固形パーソナルケア製品の構成例を示す模式的な断面図である。
図4】固形パーソナルケア製品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図5】固形パーソナルケア製品の製造方法の一例を示す模式図である。
図6】段差部を切削する工程を説明する模式図である。
図7】XY平面に沿って切削する工程を説明する模式図である。
図8】立体模様の一例における高さを示すマップである。
図9図8に示すAA線に沿った高さのプロファイルを示すグラフである。
図10図8に示すAA線に沿った高さのプロファイルを示す表である。
図11】立体模様の他の一例における高さを示すマップである。
図12図11に示すBB線に沿った高さのプロファイルを示すグラフである。
図13図11に示すBB線に沿った高さのプロファイルを示す表である。
図14】比較例として挙げる金型によるプレス成型を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
[切削装置の構成]
本発明の一実施形態に係る切削装置100は、人体に適用可能な固形パーソナルケア製品10の製造工程のうち切削工程を行う装置である。
切削工程では、切削装置100により、固形パーソナルケア製品10として構成される対象物11上に設けられた固形の基材12が切削され、基材12の表面に立体模様40が形成される。これにより立体模様40を持つ固形パーソナルケア製品10が製造される。
切削装置100及び切削装置100を用いて製造された固形パーソナルケア製品10の実施形態の一例をそれぞれ図1及び図2に示す。
【0011】
切削装置100を用いて実行される本製造方法によって製造される固形パーソナルケア製品10は、これを皮膚上に直接塗布したり、あるいは水等の液媒に溶解又は分散させた液体を皮膚上に塗布、散布又は滴下等したりすることで、人体に適用可能なものである。固形パーソナルケア製品10は、1気圧、20℃において固体である。
このような固形パーソナルケア製品10としては、例えば、メークアップ化粧品などの固形化粧品、固形石鹸、固形入浴剤などが挙げられるが、これらに限られない。
メークアップ化粧品としては、化粧料粉末等を含むアイシャドウやファンデーション、油剤及び顔料を含む口紅等が挙げられる。
【0012】
対象物11は、固形パーソナルケア製品10の製造工程における加工対象(ワーク)である。切削工程が行われる対象物11は、典型的には、固形の基材12と、容器13とを有する。
図1には、切削工程が行われる前の対象物11が模式的に図示されている。図示例では、皿状の容器13に固形の基材12を充填したものが対象物11として用いられる。
【0013】
基材12は、典型的には、固形パーソナルケア製品10を構成する固形の材料である。基材12は、粉体を含むことが好ましい。具体的には、粉体を含む組成物Lを容器13に導入し、組成物Lを固化したものが基材12として用いられることが好ましい。
以下では、固形パーソナルケア製品10が、粉体化粧料からなる固形化粧品である場合について説明する。なお、これに限定されず、固形パーソナルケア製品10は、固形石鹸、固形入浴剤等の他の製品であってもよい。
【0014】
基材12を構成する粉体化粧料は、乾式化粧料および湿式化粧料のどちらであってもよい。
乾式化粧料は、粉体状の組成物を容器13に充填して組成物Lをプレスして固化したものである。この場合、化粧料等の粉体により組成物Lが構成される。粉体状の組成物Lは、1種類の粉体で構成されてもよいし、複数種類の粉体を混合したものであってもよい。
湿式化粧料は、流動性を有する組成物Lを容器13に供給し、その後、組成物Lを固化させたものである。流動性を有する組成物Lとしては、以下のものが挙げられる:化粧料などの粉体と、液体である分散媒とを含む混合物である分散液(いわゆるスラリー);化粧料などの各種の化合物を液体の溶媒に溶解させた溶液;化粧料若しくは油剤の単体又は化粧料を含む組成物Lを加熱溶融させた溶融液。流動性を有する組成物Lは、組成物L中の揮発成分を吸収・乾燥させることで、固化させることができる。
【0015】
容器13は、典型的には、上方が開口し、組成物L(基材12)を収容可能なように構成された皿状の部材である。容器13は、基材12(組成物L)を収容する凹状の収容部14を有し、化粧皿として機能する。
容器13を構成する材料としては、特に制限はなく、例えば、紙、フィルム、不織布、金属、及び樹脂が用いられる。また、これらの材料を組み合わせて容器13が構成されてもよい。
図示例では、平面形状が円形の容器13が用いられているが、容器13の形状は任意に設定可能である。例えば平面形状が三角形や四角形等の多角形状の容器13や、平面形状が半円形や楕円形といった容器13が用いられてもよい。
【0016】
以下では、容器13において基材12(組成物L)を収容する収容部14の底面を容器底面15と記載する(図3参照)。また、容器13において収容部14が設けられる側とは反対側の表面を容器裏面16と記載する。容器底面15及び容器裏面16は、収容部14の底を構成する部分の上側の表面及び下側の表面であり、互いに平行な面として構成される。
【0017】
以下では、容器13に形成された基材12(組成物L)の高さ方向をZ方向と記載する。Z方向は、容器底面15(容器裏面16)に直交する方向である。
またZ方向と直交する平面をXY平面と記載し、XY平面において互いに直交する方向をX方向及びY方向と記載する。例えば容器底面15(容器裏面16)は、XY平面と平行な面となる。本実施形態では、XY平面に沿った方向(X方向やY方向)は、高さ方向に直交する平面方向に相当する。
【0018】
基材12は、対象物11上で打型された粉体化粧料であることが好ましい。基材12は、典型的には、対象物11上で平面状に打型されるが、これに限定されず、ロゴマーク等の図柄や所定の立体形状が打型により形成された基材12に対して切削加工が行われてもよい。後述するように、本実施形態に係る製造方法では、容器13に組成物Lである粉体化粧料を供給した後に、組成物Lを打型する打型工程が行われる。そして打型工程の後で、切削工程が行われる。
打型工程では、典型的には、容器13の上方からみて露出した組成物Lの表面が平坦な面となるように、組成物Lが打型される。従って、切削前の対象物11の基材12の表面は、凹凸のない平坦な打型面17となる。
例えば図1に示す対象物11では、容器13の内側に平坦な打型面17をもつ基材12が形成される。打型面17は、典型的には、XY平面(容器底面15や容器裏面16)と平行に形成される。
【0019】
切削装置100は、対象物11上に設けられた固形の基材12を切削する。
切削装置100は、ステージ30と、支持部31と、駆動部32と、切削工具33と、切削制御装置34とを有することが好ましい。切削装置100は、切削工具33を用いて基材12を切削するように構成される。また切削装置100には、切削された基材12を吸引する吸引部等が設けられてもよい。
【0020】
ステージ30は、対象物11が載置される載置台である。ステージ30は、例えば平板状の部材であり、ステージ30の一方の主面は、対象物11(容器13)が載置される載置面35となる。典型的には、対象物11は、図示しない固定部材を用いてステージ30の載置面35に固定される。固定部材としては、例えば載置面35と容器13とを固定する粘着テープや治具等が用いられる。
ステージ30は、例えば磁気浮遊型リニア搬送装置のシャトルとして構成される。この場合ステージ30は、搬送機構として機能する。この他、ステージ30は、XY方向に移動する2軸ステージ、あるいはXYZ方向に移動する3軸ステージとして構成されてもよい。
【0021】
支持部31は、駆動部32と切削工具33とを支持する部材であり、ステージ30の直上で切削工具33が取付けられた駆動部32を支持する。図1に示す例では、支持部31は、ステージ30と干渉しない位置に設けられた柱(図示省略)に接続され、先端部分で駆動部32を支持する片持ちの構造部材として構成される。支持部31の具体的な構成は限定されず、例えば両端が柱に接続され中央部分で駆動部32を支持するブリッジ状の支持部31等が用いられてもよい。
【0022】
駆動部32は、切削工具33を回転駆動する。例えば駆動部32は、切削工具33を固定する固定具(チャック等)をそなえたモータである。あるいは、駆動部32として、固定具を備えた回転部材が用いられてもよい。この場合、回転部材(固定具)は、プーリーやギア等を介してモータに接続される。
駆動部32(切削工具33)の回転軸は、典型的には、ステージ30の載置面35と直交するように設定される。
【0023】
切削工具33は、基材12に接触して基材12を切削することが好ましい。
具体的には、切削工具33は、回転刃36を有することが好ましい。本実施形態では、駆動部32により回転された回転刃により基材12が切削される。このような切削工具33として、典型的にはエンドミルが用いられる。なお、切削工具33としてドリルが用いられてもよい。
【0024】
切削制御装置34は、CPUやメモリ(RAM、ROM)等のコンピュータに必要なハードウェア構成を有し、切削装置100の動作を制御する。例えばCPUが図示しない記憶部に記憶されている切削装置100用の制御プログラム(基本プログラム)をRAMにロードして実行することにより、切削装置100の各部(ステージ30や駆動部32等)が動作する。
【0025】
切削制御装置34は、例えば基本プログラムのサブルーチンとして切削動作プログラムを読み込む。切削動作プログラムは、立体模様40を形成するための切削動作を切削装置100に実行させるプログラムである。切削動作プログラムとしては、例えばGコードを用いて記述されたNC(Numerical Control)プログラム等が用いられる。この他、切削装置100を動作させることが可能な任意の形式のプログラムが用いられてよい。
【0026】
切削装置100は、切削工程において、基材12に接触して基材12を切削する切削工具33と、対象物11とを相対的に移動させて基材を切削することが好ましい。これにより、切削工具33を用いた精度の高い立体加工が可能となる。
具体的には、切削装置100は、切削工具33と対象物11とを、X方向、Y方向、及びZ方向に沿って相対的に移動可能なように構成される。これは、例えば切削工具33とステージ30とを、ステージ30の載置面35内で直交する2方向、及び、載置面35と直交する方向に沿って相対的に移動する構成である。
【0027】
対象物11が載置されたステージ30の位置を固定したまま、切削工具33(支持部31)がXYZの各方向に移動されてもよい。
また切削工具33(支持部31)の位置を固定したまま、対象物11が載置されたステージ30がXYZの各方向に移動されてもよい。
また切削工具33とステージ30との両方が移動されてもよい。この場合、例えば切削工具33がZ方向に移動し、ステージ30がXY方向に移動するといった構成も可能である。
この他、切削工具33と対象物11とを相対的に移動させる方法は限定されない。
【0028】
切削工具33に設けられる回転刃36の直径は、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。回転刃36の直径は、例えば上記の範囲で任意に設定可能である。
このうち、例えば直径が0.1mm以上2mm以下の回転刃36を用いることで、細い溝幅を容易に実現することが可能となり、高精細な立体模様40を実現することが可能となる。
また例えば直径が2mm以上5mm以下の回転刃36を用いることで、切削加工の加工速度を向上することが可能となる。
なお、回転刃36の直径は限定されず、例えば立体模様40の形状や、要求される加工速度等に応じて任意の直径の回転刃36をもつ切削工具33が用いられてよい。
【0029】
[固形パーソナルケア製品の構成]
切削工程を施すことで、図2に示すように、対象物11を構成する基材12には、立体模様40が形成される。このように立体模様40が形成された対象物11が、立体模様40を持つ固形パーソナルケア製品10となる。
立体模様40は、例えばひらがな及びカタカナ等の日本語文字、アルファベット、アラビア数字、ローマ数字、諸外国の文字等の各種文字、直線及び曲線並びにこれらの組み合わせからなる図形や幾何学形状、記号、色、模様又はこれらの組み合わせの形状の模様でよい。
【0030】
図2に示す立体模様40には、5つの頂点をもつ星形の図柄が含まれる。ここでは、小さな星形41aと星形41aと相似なそれよりも大きな星形41bが、平面視で中心が一致するように配置される。星形41aは、星形41bの輪郭が形成される位置よりも高い位置に配置され、星形41a及び41bの対応する頂点を結ぶ稜線の両側には、星形41bの輪郭にかけて段差状の斜面が形成される。
図2に示す例は立体模様40の一例であり、切削工程では任意の立体模様40を形成することが可能である。
【0031】
以下では図3を参照して、立体模様40を有する固形パーソナルケア製品10(対象物11)について説明する。
固形パーソナルケア製品10は、立体模様40が形成される固形の基材12と、基材12を収容する容器13とを有する。容器13は、典型的には対象物11として用いられたものである。また基材12には、切削工程において切削された部分がそのまま残される。従って立体模様40の少なくとも一部には切削された部分(切削面等)が含まれる。
【0032】
切削工程では、対象物11上に設けられた固形の基材12を基材12が貫通しないように切削することが好ましい。
すなわち、切削装置100による切削は、基材12を収容する容器13の容器底面15が露出しないように行われる。これは、例えば切削工具33の先端のZ位置が、容器底面15のZ位置よりも高い位置となるように切削装置100を制御することで実現される。
【0033】
このように基材12を貫通するような切削動作は行われないため、図3に示すように、固形パーソナルケア製品10では、容器13の容器底面15が露出することはない。
これにより、容器13の全面に粉体化粧料である基材12残すことが出来る。また容器底面15を切削工具33で切削することがないため、容器13の部材が化粧料に混入するといった事態が回避可能である。
【0034】
切削工程では、高さ方向(Z方向)の段差幅Δsが0.001mm以上1mm以下となる層状の段差を複数有する段差部43を形成することが好ましい。
段差部43では、例えばXY平面に平行な層面44が高さを変えて層状に配置される。すなわち段差部43は、Z方向と直交する複数の層面44を有する。隣接する層面44におけるZ位置の差(高低差)が段差幅Δsとなる。段差幅Δsは、一定であってもよいし、層ごとに異なっていてもよい。上記した範囲で段差幅Δsを設定することで、様々な立体模様40を精度よく実現することが可能である。
例えば図3に示すように、立体模様40では、段差部43により階段状の斜面が形成される。
【0035】
段差幅Δsは、例えば滑らかな斜面を形成するという観点から、好ましくは0.2mm以下であり、より好ましくは0.1mm以下、更に好ましくは0.05mm以下である。また段差幅Δsは、例えば段差部43の加工速度を向上するという観点から、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.3mm以上である。
この他、段差幅Δsは限定されず、立体模様40のデザインや要求される加工速度等に応じて適宜設定されてよい。
【0036】
段差部43を構成する層状の段差の平面方向(XY平面方向)における幅Δwは、0.001mm以上1mm以下となることが好ましい。段差の平面方向における幅Δwは、層面44の平面方向における幅である。幅Δwは、一定であってもよいし、XY平面上の位置ごとに異なっていてもよいし、層ごとに異なっていてもよい。上記した範囲で段差幅Δwを設定することで、様々な立体模様40を精度よく実現することが可能である。
【0037】
切削工程では、基材12の表面の最頂部45と最底部46との高低差が1mm以上となるように基材12を切削することが好ましい。
最頂部45とは、基材12の表面において最もZ位置が高い部分である。例えば、切削されていない部分では、打型面17がそのまま残っており、そのZ位置は切削された部分に比べZ位置が高い。従って、打型面17が残っている場合には、その部分が最頂部45となる。また打型面17が残っていない場合には、容器13の全面にわたって切削が行われたことになる。この場合、最もZ位置が高い部分が最頂部45となる。
最底部46とは、基材12の表面において最もZ位置が低い部分である。すなわち最底部46は、打型面17から最も深く切削された基材12の表面部分であると言える。
【0038】
図3に示す例では、右上がりの段差部43において、左側の最も低い部分が最底部46となる。また最底部46の左側で容器13の内壁に接する周縁部分47は、切削されていない部分であり、最頂部45となる。また段差部43の右側の最も高い頂上部分48と、その右側にある凸部49も切削されていないため最頂部45となる。
固形パーソナルケア製品10では、このような最底部46と、最頂部45との高低差を1mm以上とすることで、高低差を確実に知覚することが可能となる。この結果、立体感に富んだ立体模様40を実現することが可能となる。
また切削工程では、金型等を用いる場合に比べ、幅の狭い形状、高い形状、深い形状等を容易に実現することが可能である、図示例では、幅が狭く比較的高い凸部49が形成される。これにより、高低差のある精緻な模様が実現可能となる。
【0039】
ここで、固形パーソナルケア製品10の空隙率について説明する。
空隙率とは、例えば粉体を含む組成物Lにおいて、各粉体の間の空隙の割合である。例えば粉体の間であって、空洞となっている部分が、空隙となる。また粉体の間であって、油脂等のバインダーで満たされた部分を空隙に含めてもよい。あるいは、断面において、所定の粒径よりも大きい粉体が占める部分以外を空隙としてもよい。
X線CTを用いて基材にX線を照射して得られる断層像を解析することによって、空隙となる部分を算出し、単位面積当たりの空隙部分の面積が空隙率として算出される。この他、空隙率を算出する方法は限定されない。
【0040】
固形パーソナルケア製品10では、最頂部45の高さ位置及び最底部46の高さ位置の間にある第1の領域51における基材12の空隙率V1と、最底部46の高さ位置よりも低い高さ位置にある第2の領域52における基材12の空隙率V2とが略同様であることが好ましい。例えば、V1/V2=1±0.1となる範囲で固形パーソナルケア製品10が構成される。
【0041】
上記したように、固形パーソナルケア製品10となる対象物11には、容器13の全面にわたって平坦な打型面17が形成される。この工程により、容器13に収容される基材12(組成物L)は、一様にプレスされ、容器13内の基材12の空隙率は一様となる。
また切削工程では、基材12内部の空隙率をほとんど変化させることなく、基材12の立体加工が可能である。このため、第1の領域51及び第2の領域52における空隙率は略同様となる。
このような構成により、粉体化粧料の密度の偏りがなく、粉体化粧料の取れ具合等が使用中を通して安定した固形パーソナルケア製品を実現することが可能である。
【0042】
基材12の硬さは、0.1N以上100N以下であることが好ましい。
基材12の硬さは、例えば切削した立体形状を崩れにくくし細かい加工を実現するという観点から、好ましくは1N以上であり、より好ましくは3N以上である。また基材12の硬さは、切削時の基材12の欠けや破損等を抑制するという観点から、好ましくは50N以下であり、より好ましくは30N以下である。
基材の硬さは、レオメータやフォースゲージ、硬度計等を用いて測定することができる。例えばレオメータ(株式会社サン科学製CR-100)に、基材表面との接触部分がφ2mmとなる治具を取り付けて、治具を基材表面から1mm押し込んだ際の荷重を測定することで、基材12の硬さが算出される。
【0043】
上記したように基材12には、粉体(粉体化粧料)が含まれる。粉体の平均粒径は、0.01μmm以上1mm以下であることが好ましい。
粉体の平均粒径は、例えば着色力や明度、彩度等の光学的性質の調整といった観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。
また粉体の平均粒径は、切削時の欠け等を抑制し加工精度を確保する観点から、好ましくは0.5mm以下であり、より好ましくは0.3mm以下である。
【0044】
平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で測定される累積体積50容量%における体積累積粒径D50とする。なお、最終的な製品から粉体の平均粒径を測る場合には、まず製品を水や油に溶解させ、バインダー成分を溶かして溶媒に粒子を分散させる。その後、粒度分布計を用いて固形物としての粒度分布を測定し、得られた結果の体積累積粒径D50を平均粒径とする。
【0045】
[固形パーソナルケア製品の製造方法]
図4及び図5を参照して、固形パーソナルケア製品10の製造方法について説明する。
まず、容器13に組成物Lである粉体化粧料が供給される(ステップ101)。図5Aに示すように、容器13の収容部14を満たすように組成物Lが充填される。
組成物Lが乾式の化粧料である場合、例えば容器13の上方に配置されたホッパーから所定量の組成物Lが収容部14に供給される。また組成物Lが湿式の化粧料である場合、例えば容器13の上方に配置されたモーノポンプからスラリー状の組成物Lが収容部14に供給される。この他、容器13に組成物Lを供給する方法は限定されない。
【0046】
次に、容器13に供給された組成物Lを打型する打型工程が実行される(ステップ102)。ここでは、図5Bに示すように、プレスヘッド20を用いて収容部14の上方から組成物Lがプレスされ、最終的に打型面17が形成される。打型面17は、典型的には平面である。
例えば、ステップ101において容器13に充填された組成物Lに対して、組成物Lを固化するための本打型が行われる。そして本打型のあとに、仕上げ用のフラットな型を持つプレスヘッド20を用いて打型を行い、平坦な打型面17が形成される。
なお、仕上げ用の打型を行わずに本打型により平坦な打型面17が形成されてもよい。また本打型の前に予備打型等を行ってもよい。このような打型工程により、平坦な打型面17を持つ固形の基材12を備えた対象物11が構成される。
【0047】
次に、固形の基材12を切削する切削工程が実行される(ステップ103)。ここでは、図5Cに示すように、切削工具33を備える切削装置100により固形の基材12が切削され、基材12の表面に立体模様40が形成される。
切削工程では、上記したように、対象物上に設けられた固形の基材を前記基材が貫通しないように切削される。従って、容器13の底(容器底面15)が露出しない範囲で基材12が切削される。
【0048】
切削工程では、切削工程において切削された基材12の表面の少なくとも一部が最終的な製品の表面に含まれるように基材12に立体模様40が施される。すなわち、最終的な製品表面の少なくとも一部には、切削工具33により切削された切削面が含まれる。なお、最終的な製品表面には、切削されていない打型面17が含まれてもよい。
このように、切削面を最終的な製品の表面とすることで、切削後に打型工程等を行う必要がなくなる。また、打型工程においても、例えば本打型を行った後はフラットな型等を用いた打型を行えばよく、加飾用の型等は不要となる。
例えば切削工程により立体模様40が施された対象物11は、そのまま立体模様40を持つ固形パーソナルケア製品10となる。なお、立体模様40が施された対象物11に対して、基材12の剥がれ等を抑えるための表面処理等が行われてもよい。
【0049】
[段差部の切削]
図6を参照して、段差部43を切削する工程について説明する。
本実施形態では、切削工程において、切削工具33を高さ方向に沿って所定量だけ移動する第1のステップと、切削工具33を高さ方向に直交する平面方向に移動する第2のステップとを交互に繰り返すことで段差部43を形成することが好ましい。
【0050】
切削装置100において、第1のステップは、切削工具33をZ方向に移動するステップである。これは切削工具33の回転軸に沿って切削工具33を移動するステップとなる。
また切削装置100において、第2のステップは、切削工具33をXY平面に沿って移動するステップである。これは切削工具33の回転軸を中心とする半径方向に切削工具33を移動するステップとなる。
【0051】
図6の(1)から(6)には、層状の段差部43を切削する際の切削工具33の動作が模式的に図示されている。ここでは、打型面17から切削が開始されるものとする。
図6の(1)では、切削の開始位置において、切削工具33を切削の対象となる打型面17からZ方向に沿って所定量Δvだけ下降させる(第1のステップ)。Δvは、基材12に対するZ方向における切込み量である。段差部43を切削する工程では、Δvは段差部43の段差幅Δsに相当する。ここでは切削工具33をZ方向に沿って移動する様子が、実線の矢印により模式的に図示されている。
図6の(2)では、切削工具33をΔvだけ切り込んだ状態で、XY平面に沿って移動することで第1の層面44aを形成する(第2のステップ)。ここでは切削工具33をXY平面に沿って移動する様子が、点線の矢印により模式的に図示されている。なおXY平面に沿った切削については図7を参照して後述する。
図6の(3)では、第1の層面44aを形成するためのXY平面に沿った切削が完了している。この場合、次の層を構成する第2の層面44bの切削の開始位置まで切削工具33が移動される。
【0052】
図6の(4)では、第2の層面44bを切削する開始位置において、切削工具33を第1の層面44aからZ方向に沿って所定の切込み量Δvだけ下降させる(第1のステップ)。なおΔvの値は、(2)での切込み量と同じである必要はない。
図6の(5)では、切削工具33を第1の層面44aに対してΔvだけ切り込んだ状態で、XY平面に沿って移動することで第2の層面44bを形成する(第2のステップ)。なお、第2の層面44bを形成する際に、(2)で形成された第1の層面44bも部分的に切削される。従って(5)の加工は、第2の層面44bを形成するとともに、第1の層面44bの平面形状を決定する加工となる。
図6の(6)では、第2の層面44bを形成するためのXY平面に沿った切削が完了している。この場合、次の層の切削の開始位置まで切削工具33が移動される。
【0053】
図6の(1)から(3)は、切削工具33を高さ方向に所定の切込み量で切込み、切削工具33をXY平面上に移動させて切削を行う工程であり、一つの層(第1の層面44a)を形成する工程である。また図6の(4)から(6)は、一つの層を形成した後に、切削工具33を高さ方向に所定の切込み量でさらに切込み、XY平面上に切削工具33を移動させて切削を行う工程であり、次の層(第2の層面44b)を形成する工程である。このように、各層面44を形成する工程を繰り返すことで、層状の複数の段差からなる段差部43が形成される。
【0054】
図6に示す例では、Z位置が高い層面44から順番に形成された。すなわち、Z位置が高い方から順番に段差が形成された。これに限定されず、例えばZ位置が低い方から順番に段差が形成されてもよい。この場合、例えば最初に最も深い位置にある層面44から順番に形成される。この他、中間の位置にある層面44を先に形成し、その後で上層の層面44や下層の層面44を形成するといったことも可能である。
【0055】
図6では、切削されていない打型面17から段差部43を直接加工する例について説明した。これに限定されず、例えば最初に基材12を粗く切削して段差部43の概形を形成し、その後で最終的な段差部43の形状を切削するといったことも可能である。この場合、例えば概形を切削した時点でXY平面における切削すべき面積が大幅に減少する。これにより、例えば第2のステップに要する加工時間が大幅に短縮され、全体の加工時間を短くすることが可能である。
【0056】
[高さ方向における切込み量Δv]
切削工程において、切削工具33の高さ方向(Z方向)における基材12に対する切込み量Δvは、0.001mm以上1mm以下であることが好ましい。
Z方向の切込み量Δvは、XY平面に沿って切削される基材12の深さとなる。この上限以下の範囲で切込み量Δvを設定することで基材12が割れるといった事態を回避することが可能である。
【0057】
Δvが小さいほど、Z方向の段差が細かい精緻な立体形状を加工することが可能となる。逆にΔvが大きいほど、切削に要する加工時間を短縮することが可能となる。
Z方向の切込み量Δvは、例えば段差幅の小さい精緻な加工を実現するといった観点から、好ましくは0.15mm以下であり、より好ましくは0.1mm以下である。
またZ方向の切込み量Δvは、例えば加工時間を短縮するといった観点から、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.2mm以上である。
【0058】
[XY平面に沿った切削]
図7を参照して、XY平面に沿って基材12を切削する工程について説明する。この工程は、例えば図6における第2のステップ(図6の(2)及び(5))に適用可能である。
図7A図7B、及び図7Cには、XY平面における切削工具33の軌跡54が模式的に図示されている。切削工具33の軌跡54は、切削工具33の回転軸Oが通る経路である。
また各図に記載したΔhは、基材12に対するXY平面方向における切込み量である。Δhは、典型的には切削工具33の回転刃36の直径φよりも小さく設定される。従ってXY平面に沿った切削では、Δhの幅で基材12が切削される。
【0059】
図7Aに示す軌跡54aは、Y方向に沿った切削を繰り返す軌跡54の例である。この場合、Y方向に沿った切削の後、切削工具33はX方向に沿って切込み量Δhだけ移動される。その後、切削工具33がX方向にΔhだけシフトした状態で、Y方向に沿った切削が再開される。
このように、Y方向に沿って切削しX方向に沿って切り込む軌跡54aは、例えばY方向に沿って延在する領域等を切削する場合に用いられる。
【0060】
図7Bに示す軌跡54bは、X方向に沿った切削を繰り返す軌跡54の例である。この場合、X方向に沿った切削の後、切削工具33はY方向に沿って切込み量Δhだけ移動される。その後、切削工具33がY方向にΔhだけシフトした状態で、X方向に沿った切削が再開される。
このように、X方向に沿って切削しY方向に沿って切り込む軌跡54bは、例えばX方向に沿って延在する領域等を切削する場合に用いられる。
【0061】
図7Cに示す軌跡54cは、X方向及びY方向に対して傾斜した第1の方向に沿った切削を繰り返す軌跡54の例である。この場合、第1の方向に沿った切削の後、切削工具33はXY平面において第1の方向と直交する第2の方向に沿って切込み量Δhだけ移動される。その後、切削工具33が第2の方向にΔhだけシフトした状態で、第1の方向に沿った切削が再開される。第1の方向(第2の方向)は任意に設定可能である。
このように、第1の方向に沿って切削し第2の方向に沿って切り込む軌跡54cは、例えばX方向やY方向に対して傾いて配置される領域等を切削する場合に用いられる。
【0062】
[高さ方向に直交する平面方向における切込み量Δh]
切削工程において、切削工具33の高さ方向(Z方向)に直交する平面方向(XY平面に沿った方向)における基材12に対する切込み量Δhは、0.001mm以上1mm以下であることが好ましい。
XY平面に沿った切込み量Δhは、XY平面において切削される基材12の幅となる。この上限以下の範囲で切込み量Δhを設定することで基材12が割れるといった事態を回避することが可能である。
【0063】
Δhが小さいほど、立体模様40を構成する段差、溝、凸部等の平面形状を細かく表現することが可能となり、精緻な立体形状を加工することが可能となる。逆にΔhが大きいほど、切削に要する加工時間を短縮することが可能となる。
XY平面に沿った切込み量Δhは、例えば平面形状が精緻に加工された立体模様40を実現するといった観点から、好ましくは0.8mm以下であり、より好ましくは0.6mm以下である。
またXY平面に沿った切込み量Δhは、例えば加工時間を短縮するといった観点から、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.3mm以上である。
【0064】
切削加工により製造された固形パーソナルケア製品10の硬さは、0.1N以上100N以下であることが好ましい。
固形パーソナルケア製品10の硬さは、レオメータやフォースゲージ、硬度計等を用いて測定することができる。例えばレオメータ(株式会社サン科学製CR-100)に、製品表面との接触部分がφ2mmとなる治具を取り付けて、治具を製品表面から1mm押し込んだ際の荷重を測定することで、固形パーソナルケア製品10の硬さが算出される。
【0065】
<実施例1>
図8図9、及び図10を参照して、切削により形成された立体模様40を持つ固形パーソナルケア製品10の実施例について説明する。本実施例では、図2と同様に、5つの頂点を持つ立体的な星形の図柄が立体模様40として形成される。この図柄には、小さい星形41aと大きい星形41bとが含まれ、このうち小さい星形41aが高い位置に形成される。
図8に示すAA線上には[1]~[12]までの測定位置が図示されている。このうち、測定位置[1]~[11]は、段差部43を構成する各段差の層面44上の位置となるように設定されている。また測定位置[12]は、小さい星形41aを構成する最頂部45に設定されている。なお、測定位置[12]が設定された部分は、切削されていない打型面17である。
本実施例では、段差部43を切削する際のZ方向の切込み量Δv(段差幅Δs)を150μmに設定した。また、XY方向の切込み量Δhを0.5mmに設定した。切削工具はR0.5mmのボールエンドミルを用い、送り速度は500mm/minに設定した。
基材となる粉体化粧料は、以下の原料を混合し打型したものを用いた。レオメータ(株式会社サン科学製CR-100)にφ2mmの治具を取り付けて、治具を基材表面から1mm押し込んだ際の荷重から算出した硬度は、6.5Nであった。
<組成>
・油剤 :11%
・顔料粉体 :89%
顔料粉体としては、タルクやマイカ、酸化チタン、酸化鉄等からなる原料を用いた。粉体の平均粒径は63.0μmであった。
【0066】
図9は、図8のAA線に沿った高さ(Z位置)のプロファイルである。以下では、星形41bの周りに形成された最底部46に対する各点のZ位置を、各点の高さと記載する。
図10には、各測定位置[1]~[12]における、最底部46に対する高さ[μm]と、高さ方向ピッチ[μm]とが示されている。ここで高さ方向ピッチは、i番目の測定位置の高さから(i-1)番目の測定位置の高さを引いたものであり、1つ前の測定位置に対する高低差、すなわち1つの段差の段差幅を表している。
【0067】
図9に示すように、本実施例では、段差部43のプロファイルには、層状の段差に対応するステップ状の構造が見られる。また図10に示すように、各測定位置間の高さ方向ピッチを見ると、切込み量Δv(段差幅Δs)として設定された150μmに近い値となっており、段差部43が適正に形成されていることがわかる。
また最頂部45である測定位置[12]の高さは、1786.10μmであり、1mm以上の深い立体模様40が形成されていることがわかる。
切込み量Δvを150μm程度に設定した場合、Z方向に切り込むステップ(第1のステップ)を12回行うことで、1.8mmに近い高低差をもつ形状を切削できる。これより、例えば比較的早い加工速度で、精度のよい立体模様40を実現することが可能となる。
【0068】
<実施例2>
図11図12、及び図13を参照して、切削により形成された立体模様40を持つ固形パーソナルケア製品10の他の実施例について説明する。本実施例では、図2及び実施例1と同様に、5つの頂点を持つ立体的な星形の図柄が立体模様40として形成される。
図11に示すBB線上には[1]~[20]までの測定位置が図示されている。このうち、測定位置[1]~[18]までは、図中左側の段差部43上に設定されている。また測定位置[19]は、図中左側の段差部43が接続する最頂部45を挟んで右側に形成される段差部43上に設定される。また測定位置[20]は、小さい星形41aを構成する最頂部45(打型面17)に設定されている。
本実施例では、加工時間の短縮のため、まず荒取り加工条件として、段差部43を切削する際のZ方向の切込み量Δv(段差幅Δs)を200μmに設定し、XY方向の切込み量Δhを0.5mmに設定して切削を行った。その後、仕上げ加工条件として、段差部43を切削する際のZ方向の切込み量Δv(段差幅Δs)を100μmに設定し、XY方向の切込み量Δhを0.5mmに設定して切削を行った。切削工具はR0.5mmのボールエンドミルを用い、送り速度は1000mm/minに設定した。
基材となる粉体化粧料は、実施例1と同一のものを用いた。
【0069】
図12は、図11のBB線に沿った高さ(Z位置)のプロファイルである。また図13には、各測定位置[1]~[20]における、最底部46に対する高さ[μm]と、高さ方向ピッチ[μm]とが示されている。
図12に示すように、本実施例では、段差部43のプロファイルは、例えば図9に示す実施例に比べて滑らかな傾斜を構成する。すなわち、150μmの段差幅よりも、100μmの段差幅を用いることで、段差部43がより滑らかな傾斜面として構成されていることがわかる。
また最頂部45である測定位置[20]の高さは、2152.62μmであり、2mm以上の深い立体模様40が形成されていることがわかる。
このように、切込み量Δvを100μm程度に設定した場合でも、高い高低差を設けることで十分に立体感ある立体模様40を実現することが可能となる。また切込み量Δvが小さいため、滑らかな斜面や曲面等を精度よく形成することが可能となる。
【0070】
図14には、比較例として金型によるプレス成型の一例が図示されている。図14Aでは、金型60をもつプレスヘッド61により容器13に収容された組成物Lが打型される。
金型60には、断面が三角形状の凹部62aと、幅の狭い凹部62bとが形成される。金型60はプレスヘッド61により容器13内の組成物Lに押し当てれられる。この結果、図14Bに示すように、組成物L上には金型60に設けられた凹部62a及び62bの形状を写し取った凸部63a及び63bが成形される。
【0071】
金型60を用いた場合、角部の転写性が悪く、角が丸くなる、あるいは角が欠けるといた場合がある。例えば図14Bの凸部63aのように先端が欠けることや、凸部63bのように角が丸くなることが起こり得る。また幅の狭い凹部62bには組成物Lが入り込みにくいため、細い幅の凸部63bを精度よく形成することが難しい。
このように、金型60のみでは精緻な模様の加飾が困難であり、また狭幅で高さのあるようなデザインを実現することが難しい。
【0072】
金型60の制作には、時間と費用とがかかり、開発期間が長期化することや、初期投資が増大するといった可能性がある。また、頻繁なデザイン変更やデザインのカスタマイズ等への対応が難しく、多品種に対応することが困難である。
さらに、金型60を用いたプレス成型により立体形状を形成すると、立体形状が形成された基材12に密度差が生じることが考えられる。例えば、金型60により強くプレスされた部分では、他の部分と比べて密度が高くなる。このような密度差により、化粧料の取れ具合といった製品の使用感が不均一となる可能性がある。
【0073】
本実施形態に係る固形パーソナルケア製品10の製造方法では、対象物11上に設けられた固形の基材12を基材12が貫通しないように切削することで、立体模様40を持つ固形パーソナルケア製品10が製造される。立体模様40としては、高さ方向の段差幅が0.001mm以上1mm以下となる層状の複数の段差からなる段差部43が形成される。また基材12の表面の最頂部45と最底部46との高低差が1mm以上となるように基材12が切削される。これにより、立体感に富んだ精緻な立体模様40を持つ固形パーソナルケア製品10を提供することが可能となる。
【0074】
固形の基材12を切削することで、立体模様40が形成される。このため、金型では困難なデザインも実現することが可能である。例えば幅が狭く高さのある凸部や、幅が狭く深さのある凹部を容易に形成することが可能となる。また、角が欠けたり、角が丸くなったりしないため、精緻な立体形状を高精度に実現することが可能となる。これにより、基材12の表面に高精細な模様付けが可能となり、精緻な立体デザインを実現することが可能となる。
【0075】
切削加工では、立体形状を形成するための金型60等が不要となる。これにより初期投資を削減し、開発期間(リードタイム)を短縮することが可能となる。
また金型60を使わないため、デザインの変更やデザインのカスタマイズ等も容易になる。さらに、任意の立体模様40をもつ固形パーソナルケア製品10を1個から製造すること可能であり、例えば発注者がカスタマイズしたオリジナルの立体模様40を備える固形パーソナルケア製品10等を容易に提供することが可能となる。
【0076】
さらに、切削加工では、基材12の密度(空隙率)を変化させることなく、すなわち化粧料等の密度差を生じさせることなく、1mm以上の高低差のある立体感に富んだデザインを実現することが可能である。これにより、高さのある立体的なデザインを有しつつ、化粧料の取れ具合等の使用感が安定する製品を提供することが可能となる。
【0077】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0078】
上記の実施形態では、固形パーソナルケア製品において、基材の表面の最頂部と最底部との高低差が1mm以上であり、高さ方向の段差幅が0.001mm以上1mm以下となる層状の段差を複数有する段差部が設けられる構成について説明した。
例えば、高低差が1mm未満である構成や、段差部が設けられない構成も可能である。
【0079】
高低差を1mm未満とする固形パーソナルケア製品が構成されてもよい。この場合、立体模様が形成される固形の基材に段差部が形成された製品が構成されてもよい。ここで段差部は、立体模様として基材に形成され、高さ方向の段差幅が0.001mm以上1mm以下となる層状の段差を複数有する部分である。
この構成では、段差部により精緻な立体模様を実現することが可能である。
【0080】
層状の段差を複数有する段差部を設けない固形パーソナルケア製品が構成されてもよい。この場合、立体模様が形成される固形の基材を有し、基材の表面の最頂部と最底部との高低差が1mm以上である製品が構成されてもよい。
この構成では、高低差が1mm以上であるため製品のデザインに十分な立体感を与えることが可能である。
【0081】
上記では、容器に収容された基材を切削する例について説明したが、基材は必ずしも容器に収容される必要は無い。例えば固形石鹸や固形入浴剤といった容器を必要としない固形パーソナルケア製品に対しては、固形の基材そのものを容器等に乗せることなく切削してもよい。この場合も基材を貫通しないように、切削が行われればよい。
上記では、エンドミルやドリル等の切削刃を持つ切削工具を用いる場合について説明した。これに限定されず例えばレーザ光を照射して基材を切削するレーザ切削装置等が用いられてもよい。
【0082】
組成物の例
特に断りのない限り、以下に説明する物質の状態(三態)は、1気圧、20℃を基準とする。
組成物は、粉体等の固体及び油剤から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
このような固体としては、例えば、着色顔料及び体質顔料などの通常の化粧料成分に用いられる粉体を含むことが好ましい。
着色顔料及び体質顔料としては、例えば、無機粉体、有機粉体、無機粉体と有機粉体との複合粉体などが挙げられる。
無機粉体としては、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ベントナイト、雲母、チタン被膜雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン、カーボンブラック、チッ化ホウ素これらの複合体等が挙げられる。
有機粉体としては、ポリアミド、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、長鎖アルキルリン酸金属塩、N-モノ長鎖アルキルアシル塩基性アミノ酸、これらの複合体等が挙げられる。
これらの体質顔料や着色顔料は、着色しているか又は非着色(例えば、白色又は本質的に透明)であり、組成物又は皮膚に対して、着色、光の回折、油分吸収、半透明性、不透明性、光沢、光沢のない外観、滑らか感などのうちの一つ以上の効果を提供し得る。
【0083】
組成物中における粉体の含有量は、その目的に応じて異なるが、乾燥といった生産性の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。
組成物中における粉体の含有量は、供給時の流動性といった生産性の観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
このような範囲であることで、高精細な立体形状を有するパーソナルケア製品を製造しやすくすることができ、また製品を使用したときの良好な使用感を高めることができる。
【0084】
流動性のある組成物が用いられる場合、流動体中に含まれ得る油剤は、1気圧、20℃で液体の油(以下、これを液体油ともいう。)、及び1気圧、20℃で固体の油(以下、これを固体油ともいう。)から選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。
液体油としては、例えば、直鎖又は分岐の炭化水素油、植物油、動物油、エステル油、シリコーン油、高分子アルコールが挙げられる。
直鎖又は分岐の炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン等が挙げられる。植物油としては、ホホバ油、オリーブ油等が挙げられる。
動物油としては、液状ラノリン等が挙げられる。
エステル油としては、モノアルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
高分子アルコールとしては、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
固体油としては、例えば、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、セラミド等が挙げられる。
【0085】
組成物中における油剤の含有量は、その目的に応じて異なるが、総量として、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは1.5質量%以上である。
組成物中における油剤の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
このような範囲であることで、パーソナルケア製品としての良好な発色性や感触を高めることができる。
【0086】
組成物は、目的とするパーソナルケア製品の種類に応じて、増粘剤、皮膜剤、界面活性剤、糖、多価アルコール、水溶性高分子、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、皮膚コンディショニング剤、ビタミン、酸化防止剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤等から選ばれる一種又は二種以上の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
ベンゾフェノン誘導体としては、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸塩、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸塩等が挙げられる。
メトキシ桂皮酸誘導体としては、メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
紫外線散乱剤としては、例えば平均粒径が0.1μm以下の微粒子を用いることができる。
紫外線散乱剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン及びシリカ等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0087】
組成物は、液媒を更に含むことも好ましい。液媒は、化粧料を溶解又は分散させる溶媒又は分散媒として使用することができる液体である。
組成物をスラリーの形態とする場合、組成物は、粉体及び液媒を少なくとも含む混合物であることが好ましい。組成物を化粧料スラリーの形態とする場合には、組成物は、上述した顔料を含む粉体、油剤及び液媒を少なくとも含む混合物であることが好ましい。
【0088】
上述した液体(液媒)としては、例えば、液体の状態において揮発性を有する物質(揮発性溶媒)が挙げられる。具体的には液体(液媒)としては、水、アルコール、ケトン及び炭化水素等から選ばれる一種又は二種以上が好ましく挙げられる。
アルコールとしては、例えば一価の炭素数1~6の鎖式脂肪族アルコールや、一価の炭素数3~6の環式脂肪族アルコールや、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、プロパノール、ペンタノールなどが挙げられる。
ケトンとしては例えば炭素数3~6の鎖式脂肪族ケトンや、炭素数3~6の環式脂肪族ケトンや、炭素数8~10の芳香族ケトンが好適に用いられる。それらの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどが挙げられる。
炭化水素としては、例えばイソパラフィン系炭化水素が好適に用いられ、その具体例としては、IPソルベントが挙げられる。
【0089】
組成物に液媒を含む場合、組成物中における液媒の含有量は、その目的に応じて異なるが、総量として、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは40質量%以上である。
組成物中における液媒の含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
このような範囲であることで、組成物の構成材料の均一分散性を高めつつ、取り扱い性を高めることができる。
【0090】
本発明は、以下の各構成を有してもよい。
<1>
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品の製造方法であって、
前記製造方法は、対象物上に設けられた固形の基材を前記基材が貫通しないように切削する切削工程を有し、
前記切削工程において、高さ方向の段差幅が0.001mm以上1mm以下となる層状の段差を複数有する段差部を形成し、前記基材の表面の最頂部と最底部との高低差が1mm以上となるように前記基材を切削する
固形パーソナルケア製品の製造方法。
<2>
前記切削工程において、前記基材に接触して前記基材を切削する切削工具と、前記対象物とを相対的に移動させて前記基材を切削する
<1>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<3>
前記切削工程において、前記切削工具を前記高さ方向に沿って所定量だけ移動する第1のステップと、前記切削工具を前記高さ方向に直交する平面方向に移動する第2のステップとを交互に繰り返すことで前記段差部を形成する
<2>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<4>
前記段差部は、前記高さ方向と直交する複数の層面を有し、
前記切削工程において、前記複数の層面を、前記高さ方向の位置が高い順番に形成する
<2>又は<3>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<5>
前記切削工具の前記高さ方向における前記基材に対する切込み量は、0.001mm以上1mm以下である
<2>~<4>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<6>
前記切削工具の前記高さ方向に直交する平面方向における前記基材に対する切込み量は、0.001mm以上1mm以下である
<2>~<5>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<7>
前記切削工具の前記平面方向における前記基材に対する切込み量は、0.8mm以下であり、好ましくは0.6mm以下である
<2>~<5>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品。
<8>
前記切削工具の前記平面方向における前記基材に対する切込み量は、0.1mm以上であり、好ましくは0.3mm以上である
<2>~<5>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品。
<9>
前記切削工具は、回転刃を有し、
前記回転刃の直径は、0.1mm以上5mm以下である
<2>~<8>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<10>
前記回転刃の直径は、0.1mm以上2mm以下である
<2>~<8>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<11>
前記回転刃の直径は、2mm以上5mm以下である
<2>~<8>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<12>
前記切削工程において切削された前記基材の表面の少なくとも一部が最終的な製品の表面に含まれるように前記基材に前記立体模様を施す
<1>~<11>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<13>
前記基材は、前記対象物上で打型された粉体化粧料である
<1>~<12>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<14>
前記基材は、前記対象物上で露出した前記粉体化粧料の表面が平坦な面となるように打型される
<13>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<15>
前記段差部は、前記層状の段差の前記高さ方向に直交する平面方向における幅が0.001mm以上1mm以下である
<1>~<14>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<16>
前記切削工程を行う切削装置は、
前記対象物が載置されるステージと、
前記対象物を切削する切削工具と、
前記切削工具を駆動する駆動部と、
前記ステージに対して前記駆動部を支持する支持部と、
前記切削装置の動作を制御する切削制御装置と
を有する
<1>~<15>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<17>
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品であって、
前記立体模様が形成される固形の基材と、
前記立体模様として前記基材に形成され、高さ方向の段差幅が0.001mm以上1mm以下となる層状の段差を複数有する段差部と
を有する固形パーソナルケア製品。
<18>
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品であって、
前記基材の表面の最頂部と最底部との高低差が1mm以上である
<17>に記載の固形パーソナルケア製品。
<19>
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品であって、
前記基材の硬さは、0.1N以上100N以下である
<17>又は<18>に記載の固形パーソナルケア製品。
<20>
前記基材の硬さは、1N以上であり、好ましくは3N以上である
<17>又は<18>に記載の固形パーソナルケア製品。
<21>
前記基材の硬さは、50N以下であり、好ましくは30N以下である
<17>又は<18>に記載の固形パーソナルケア製品。
<22>
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品であって、
前記基材は、粉体を含み、
前記粉体の平均粒径は、0.01μm以上1mm以下である
<17>~<21>のいずれか一項に記載の固形パーソナルケア製品。
<23>
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品であって、
前記立体模様が形成される固形の基材を有し、
前記基材の表面の最頂部と最底部との高低差が1mm以上である
固形パーソナルケア製品。
<24>
前記固形パーソナルケア製品は、層状の段差を複数有する段差部を有し、
前記段差部では、高さ方向と直交する層面が高さを変えて層状に配置される
<23>に記載の固形パーソナルケア製品。
【符号の説明】
【0091】
10…固形パーソナルケア製品
11…対象物
12…基材
33…切削工具
43…段差部
45…最頂部
46…最底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品であって、
前記立体模様が形成される固形の基材と、
前記立体模様として前記基材に形成され、高さ方向の段差幅が0.001mm以上0.2mm以下となる層状の段差を複数有する段差部と
を有し、
前記基材の表面の最頂部と最底部との高低差が1mm以上である
固形パーソナルケア製品。
【請求項2】
前記段差部は、前記高さ方向に直交する平面方向に平行な層面が高さを変えて層状に配置される
請求項1に記載の固形パーソナルケア製品。
【請求項3】
前記立体模様は、前記段差部により形成された階段状の斜面を含む
請求項2に記載の固形パーソナルケア製品。
【請求項4】
前記段差部は、前記層状の段差の前記高さ方向に直交する平面方向における幅が0.001mm以上1mm以下である
請求項1に記載の固形パーソナルケア製品。
【請求項5】
前記基材の硬さは、3N以上である
請求項1に記載の固形パーソナルケア製品。
【請求項6】
前記基材は、粉体を含む組成物からなり、
前記組成物中における粉体の含有量は、70質量%以上である
請求項1に記載の固形パーソナルケア製品。
【請求項7】
立体模様を持つ固形パーソナルケア製品の製造方法であって、
前記製造方法は、対象物上に設けられた固形の基材を前記基材が貫通しないように切削する切削工程を有し、
前記切削工程において、高さ方向の段差幅が0.001mm以上1mm以下となる層状の段差を複数有する段差部を形成し、前記基材の表面の最頂部と最底部との高低差が1mm以上となるように前記基材を切削し、
前記切削工程において、前記基材に接触して前記基材を切削する切削工具と、前記対象物とを相対的に移動させて前記基材を切削し、
前記切削工程において、前記切削工具を前記高さ方向に沿って所定量だけ移動する第1のステップと、前記切削工具を前記高さ方向に直交する平面方向に移動する第2のステップとを交互に繰り返すことで前記段差部を形成し、
前記切削工具の前記高さ方向における前記基材に対する切込み量は、0.001mm以上1mm以下であり、
前記切削工具の前記高さ方向に直交する平面方向における前記基材に対する切込み量は、0.001mm以上1mm以下であり、
前記切削工程を行う切削装置は、
前記対象物が載置されるステージと、
前記対象物を切削する前記切削工具と、
前記切削工具を駆動する駆動部と、
前記ステージに対して前記駆動部を支持する支持部と、
前記切削装置の動作を制御する切削制御装置と
を有し、
前記切削制御装置は、所定の記憶部に記憶された前記切削装置の制御プログラムを実行することにより前記ステージ及び前記駆動部を動作させる
固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項8】
前記立体模様は、前記段差部により形成された階段状の斜面を含む
請求項7に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
図3に示す例では、右上がりの段差部43において、左側の最も低い部分が最底部46となる。また最底部46の左側で容器13の内壁に接する周縁部分47は、切削されていない部分であり、最頂部45となる。また段差部43の右側の最も高い頂上部分48と、その右側にある凸部49も切削されていないため最頂部45となる。
固形パーソナルケア製品10では、このような最底部46と、最頂部45との高低差を1mm以上とすることで、高低差を確実に知覚することが可能となる。この結果、立体感に富んだ立体模様40を実現することが可能となる。
また切削工程では、金型等を用いる場合に比べ、幅の狭い形状、高い形状、深い形状等を容易に実現することが可能である図示例では、幅が狭く比較的高い凸部49が形成される。これにより、高低差のある精緻な模様が実現可能となる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
[固形パーソナルケア製品の製造方法]
図4及び図5を参照して、固形パーソナルケア製品10の製造方法について説明する。
まず、容器13に組成物Lである粉体化粧料が供給される(ステップ101)。図5Aに示すように、容器13の収容部14を満たすように組成物Lが充填される。
組成物Lが乾式の化粧料である場合、例えば容器13の上方に配置されたホッパーから所定量の組成物Lが収容部14に供給される。また組成物Lが湿式の化粧料である場合、例えば容器13の上方に配置されたモーノポンプ(登録商標)からスラリー状の組成物Lが収容部14に供給される。この他、容器13に組成物Lを供給する方法は限定されない。