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特開2023-183018パーソナルケア製品の製造方法及び製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183018
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】パーソナルケア製品の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20231220BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20231220BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231220BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20231220BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B05D3/00 C
A61Q1/00
A61Q19/00
A61Q5/02
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096372
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂木 知之
(72)【発明者】
【氏名】平野 喬大
(72)【発明者】
【氏名】夏井 翔平
【テーマコード(参考)】
4C083
4D075
【Fターム(参考)】
4C083CC03
4C083CC23
4C083CC25
4C083CC38
4C083FF04
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC71
4D075AC78
4D075AC88
4D075BB02X
4D075DA04
4D075DA07
4D075DA08
4D075DB01
4D075DB18
4D075DB20
4D075DB31
4D075DC30
4D075EA05
4D075EA07
4D075EA10
4D075EA15
4D075EC07
4D075EC11
4D075EC13
4D075EC30
(57)【要約】
【課題】磁気浮遊型リニア搬送装置の位置決め精度を高め、目的とする製品を高精度に製造する。
【解決手段】パーソナルケア製品の製造方法は、シャトルの原点位置であるシャトル原点位置を、加工ステーションの座標系の原点位置である加工ステーション原点位置に設定するための、シャトル固有の補正値を算出し、供給ステーションでワークが搭載されたシャトルを、加工ステーションに移動させ、シャトル原点位置を、補正値に基づき加工ステーション原点位置に設定し、加工ステーションにおいてシャトル及び加工ツールの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、加工ツールにワークへの加工工程を実行させ、ワークに加工工程が実行された後、シャトルを排出ステーションに移動させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に適用可能なパーソナルケア製品の製造方法であって、
それぞれ電磁コイルを内蔵する複数のセグメントにより構成され、複数のステーションを有するステージと、
永久磁石を有し、前記パーソナルケア製品の前駆体であるワークを搭載して前記ステージ上を浮遊した状態で移動することで前記ワークを搬送する複数のシャトルと、
を有し、
前記複数のステーションは、
前記ワークが供給される供給ステーションと、
加工ツールにより、前記シャトルに搭載された前記ワークに加工工程が実行される加工ステーションと、
前記ワークが排出される排出ステーションと、を含む
製造装置において、
前記シャトルの原点位置であるシャトル原点位置を、前記加工ステーションの座標系の原点位置である加工ステーション原点位置に設定するための、前記シャトル固有の補正値を算出し、
前記供給ステーションで前記ワークが搭載された前記シャトルを、前記加工ステーションに移動させ、
前記シャトル原点位置を、前記補正値に基づき前記加工ステーション原点位置に設定し、
前記加工ステーションにおいて前記シャトル及び前記加工ツールの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、前記加工ツールに前記ワークへの加工工程を実行させ、
前記ワークに前記加工工程が実行された後、前記シャトルを前記排出ステーションに移動させる
製造方法。
【請求項2】
前記複数のステーションは、複数の前記加工ステーションを含み、
前記補正値を、前記加工ステーション毎に算出し、
前記シャトル原点位置を、前記加工ステーション毎の前記補正値に基づき、前記加工ステーション毎の前記加工ステーション原点位置に設定する
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記シャトル及び前記シャトルに搭載された前記ワークの組み合わせに応じて固有の前記補正値を算出する
請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記複数のステーションは、計測ステーションを含み、
前記計測ステーションに位置する前記シャトルの位置である実際位置を計測し、
前記計測ステーションの基準位置と前記実際位置との誤差に基づき前記補正値を算出する
請求項1乃至3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記計測ステーション及び前記加工ステーションは、同一のセグメントに設けられ、
前記同一のセグメント内の前記計測ステーションで算出された前記補正値に基づき、前記加工ステーションの前記シャトル原点位置を設定する
請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記補正値は、前記シャトル原点位置のZ座標値を前記加工ステーション原点位置のZ座標値に設定するためのZ座標補正値を含み、
前記Z座標補正値を用いて、前記シャトル原点位置のZ座標値と前記加工ステーション原点位置のZ座標値との誤差を、±0.5mm以内に設定する
請求項1乃至5の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記補正値は、前記シャトル原点位置のX座標値及び/又はY座標値を前記加工ステーション原点位置のX座標値及び/又はY座標値に設定するためのX座標補正値及び/又はY座標補正値を含み、
前記X座標補正値及び/又はY座標補正値を用いて、前記シャトル原点位置のX座標値及び/又はY座標値と前記加工ステーション原点位置のX座標値及び/又はY座標値との誤差を、それぞれ±0.5mm以内に設定する
請求項1乃至5の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記加工ステーションで実行される前記加工工程は、
前記加工ツールの切削機械及び前記シャトルの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させながら、前記ワークに導入された前記組成物を切削して溝部を形成する工程、及び/又は
流動性を有する前記組成物を前記加工ツールのノズルから前記シャトルに搭載された前記ワークに導入しながら、前記ノズル及び前記シャトルの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて前記組成物を堆積させる工程
を含む
請求項1乃至7の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記加工工程は、Gコードを用いたNCプログラムを制御装置が実行することにより実行される
請求項1乃至8の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
人体に適用可能なパーソナルケア製品の製造装置であって、
それぞれ電磁コイルを内蔵する複数のセグメントにより構成され、複数のステーションを有するステージと、
永久磁石を有し、前記パーソナルケア製品の前駆体であるワークを搭載して前記ステージ上を浮遊した状態で移動することで前記ワークを搬送する複数のシャトルと、
制御装置と、
を具備し、
前記複数のステーションは、
前記ワークが供給される供給ステーションと、
加工ツールにより、前記シャトルに搭載された前記ワークに加工工程が実行される加工ステーションと、
前記ワークが排出される排出ステーションと、を含み、
前記制御装置は、
前記シャトルの原点位置であるシャトル原点位置を、前記加工ステーションの座標系の原点位置である加工ステーション原点位置に設定するための、前記シャトル固有の補正値を算出し、
前記供給ステーションで前記ワークが搭載された前記シャトルを、前記加工ステーションに移動させ、
前記シャトル原点位置を、前記補正値に基づき前記加工ステーション原点位置に設定し、
前記加工ステーションにおいて前記シャトル及び前記加工ツールの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、前記加工ツールに前記ワークへの加工工程を実行させ、
前記ワークに前記加工工程が実行された後、前記シャトルを前記排出ステーションに移動させる
製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に適用可能なパーソナルケア製品の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石で構成される搬送板(シャトル)が電磁コイルを内蔵した机(セグメント)上を浮遊して自在に動き回ることができる、磁気浮遊型リニア搬送が知られている(特許文献1)。コンベア搬送に代表される、一方向にしか搬送できない従来の搬送システムに対して、リニア搬送システムは個々のシャトルが独立して自在にワークを搬送可能であることから、各シャトルが搬送するワークは、それぞれ異なる搬送経路で異なる加工工程を経ることも可能であり、多品種同時生産を可能とする次世代搬送システムとして注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014-531189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気浮遊型リニア搬送システムにおけるシャトルには、形状(寸法・厚み)や永久磁石から発せられる磁気に個体差がある為、各シャトルを一律に制御しても、目標とする位置座標(X,Y,Z)に対してばらつきが生じてしまう。加えて、メカレス機構なので、機械精度並みの搬送精度が得られないこともある。しかし、移動先でワークに施される加工工程の中には、ワークの位置精度が求められるものが少なくない。すると、設計通りの加工をワークに施すことが難しい。また、加工ツールとワークが意図せず接触して破損してしまう可能性もある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、磁気浮遊型リニア搬送装置の位置決め精度を高め、目的とする製品を高精度に製造することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るパーソナルケア製品の製造方法は、
人体に適用可能なパーソナルケア製品の製造方法であって、
それぞれ電磁コイルを内蔵する複数のセグメントにより構成され、複数のステーションを有するステージと、
永久磁石を有し、前記パーソナルケア製品の前駆体であるワークを搭載して前記ステージ上を浮遊した状態で移動することで前記ワークを搬送する複数のシャトルと、
を有し、
前記複数のステーションは、
前記ワークが供給される供給ステーションと、
加工ツールにより、前記シャトルに搭載された前記ワークに加工工程が実行される加工ステーションと、
前記ワークが排出される排出ステーションと、を含む
製造装置において、
前記シャトルの原点位置であるシャトル原点位置を、前記加工ステーションの座標系の原点位置である加工ステーション原点位置に設定するための、前記シャトル固有の補正値を算出し、
前記供給ステーションで前記ワークが搭載された前記シャトルを、前記加工ステーションに移動させ、
前記シャトル原点位置を、前記補正値に基づき前記加工ステーション原点位置に設定し、
前記加工ステーションにおいて前記シャトル及び前記加工ツールの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、前記加工ツールに前記ワークへの加工工程を実行させ、
前記ワークに前記加工工程が実行された後、前記シャトルを前記排出ステーションに移動させる。
【0007】
本発明の一形態に係るパーソナルケア製品の製造装置は、
人体に適用可能なパーソナルケア製品の製造装置であって、
それぞれ電磁コイルを内蔵する複数のセグメントにより構成され、複数のステーションを有するステージと、
永久磁石を有し、前記パーソナルケア製品の前駆体であるワークを搭載して前記ステージ上を浮遊した状態で移動することで前記ワークを搬送する複数のシャトルと、
制御装置と、
を具備し、
前記複数のステーションは、
前記ワークが供給される供給ステーションと、
加工ツールにより、前記シャトルに搭載された前記ワークに加工工程が実行される加工ステーションと、
前記ワークが排出される排出ステーションと、を含み、
前記制御装置は、
前記シャトルの原点位置であるシャトル原点位置を、前記加工ステーションの座標系の原点位置である加工ステーション原点位置に設定するための、前記シャトル固有の補正値を算出し、
前記供給ステーションで前記ワークが搭載された前記シャトルを、前記加工ステーションに移動させ、
前記シャトル原点位置を、前記補正値に基づき前記加工ステーション原点位置に設定し、
前記加工ステーションにおいて前記シャトル及び前記加工ツールの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、前記加工ツールに前記ワークへの加工工程を実行させ、
前記ワークに前記加工工程が実行された後、前記シャトルを前記排出ステーションに移動させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、磁気浮遊型リニア搬送装置の位置決め精度を高め、目的とする製品を高精度に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る製造装置を示す。
図2】複数のステーションを示す。
図3】補正値を説明するための模式図である。
図4】製造方法を示すフローチャートである。
図5】第2の機械の例を示す。
図6】複数のステーションの別の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
1.製造装置
本発明の一実施形態に係る製造装置1は、人体に適用可能なパーソナルケア製品710の製造装置である。
パーソナルケア製品710は、これを皮膚上に直接塗布したり、あるいは水等の液媒に溶解又は分散させた液体を皮膚上に塗布、散布又は滴下等したりすることで、人体に適用可能なものである。
このようなパーソナルケア製品710としては、例えば、化粧品、洗浄剤及び入浴剤から選ばれる1又は2以上を含む。
化粧品は、メークアップ化粧品、基礎化粧品、香水及びヘアケア製品等を含む。
洗浄剤はシャンプー、練り石鹸及び固形石鹸等を含む。
メークアップ化粧品は、化粧料粉末等を含むアイシャドウ及びファンデーション、油剤等を含む口紅等の固形化粧品を含む。
パーソナルケア製品710は、立体的な成形を可能とする観点から、1気圧、20℃において固体であることが好ましい。
本実施形態では、製造装置1を用いて製造されるパーソナルケア製品710を、化粧料粉末等を含むアイシャドウ又はファンデーション等のパウダー化粧品等の粉体を主成分とする固形のパーソナルケア製品710とする。
【0011】
製造装置1は、ワーク700に、パーソナルケア製品710を構成する1又は2以上の組成物を導入することで、パーソナルケア製品710を製造する。該組成物は典型的には流動性を有する。
流動性を有する組成物は、液体そのものであるか、液体を含むものであることが好ましい。即ち、本発明において用いられる組成物は、固体のみの形態又は気体のみの形態は除外される。このような組成物としては、例えば、化粧料などの粉体と、液体である分散媒とを含む混合物である分散液(いわゆるスラリー)や、化粧料などの各種の化合物を液体の溶媒に溶解させた溶液、あるいは、化粧料又は油剤の単体又は化粧料を含む組成物を加熱溶融させた溶融液などが挙げられる。
【0012】
製造装置1は、典型的にはステージ100と、複数のシャトル200と、制御装置300とを有する。ステージ100及び複数のシャトル200は、リニア搬送システムを構成することが好ましい。製造装置1は、さらに、マニピュレータロボット400と、第1の機械500と、第2の機械600とを有してもよい。これらを備えた例を図1に示す。
【0013】
ステージ100は典型的には、複数(例えば、8個)のセグメント101が組み合わされて構成される。各セグメント101は、典型的には物理的に独立した机状のユニットであり、それぞれ電磁コイルを内蔵する。複数のセグメント101は、シリアルなライン的ではなく、互いに接続されるように2次元的に配置され、ステージ100を構成することが好ましい。
【0014】
ステージ100は、複数のステーション110~119を有することが好ましい。複数のステーション110~119は、ステージ100を役割に応じて仮想的に分割した複数のエリアである。それぞれのステーション110~119は、それぞれのセグメント101内に配置されてもよいし、隣接するセグメント101に跨って配置されてもよい。それぞれのセグメント101に複数(例えば、2~4個)のステーションが配置されてもよいし、1個のステーションが配置されてもよい。それぞれのステーション110~119のサイズは、シャトル200のサイズ以上でよい。この配置の一例を図2に示す。
【0015】
各シャトル200は、典型的には永久磁石を含む。ステージ100の電磁コイルのオンオフ及び電流値が制御装置300により制御された状態で、シャトル200はステージ100から浮上してステージ100を浮遊し、ステージ100を2次元的に移動する。シャトル200は、ワーク700を搭載して複数のステーション110~119間を移動することで、ステージ100上でワーク700を搬送する。シャトル200は、搭載されたワーク700を位置決めするための治具210(図3)を有してもよい。なお、シャトル200について「ステージ100上」等と記載するとき、シャトル200はステージ100に接触せず、ステージ100から僅かな空間を空けて浮上した状態であることを意味する。
【0016】
ワーク700は、典型的には、金皿や樹脂製の皿に、パーソナルケア製品710を構成する第1の組成物により構成される基材が充填されてなる。基材は、例えば、プレストパウダー、即ち、粉体を圧縮した打型品、例えばファンデーションである。皿は、金皿や樹脂製の皿に代えて、パーソナルケア製品710を構成する1又は2以上の組成物を導入可能であれば、紙、フィルム又は不織布等により製造されてもよい。
【0017】
ワーク700をステージ100上のシャトル200に供給し、ステージ100上のシャトル200から排出するために、典型的にはマニピュレータロボット400を用いる。1個のマニピュレータロボット400がワーク700を供給及び排出してもよい。あるいは、1個のマニピュレータロボット400がワーク700を供給し、別のマニピュレータロボット400がワーク700を排出してもよい。
【0018】
第1の機械500は、ワーク700がシャトル200に搭載された状態で、ワーク700に第1の加工工程を実行する。第2の機械600は、ワーク700がシャトル200に搭載された状態で、ワーク700に第2の加工工程を実行する。典型的には、第1の加工工程及び第2の加工工程は、ワーク700の基材に加飾を施す作業である。ワーク700がシャトル200に搭載された状態で作業するとは、ワーク700をシャトル200からXYステージ等に載せ替える必要が無いことを意味する。載せ替えやアラインメントを行う装置やこれに掛かる時間が不要となるので、設備が拡大するのを防ぎ、サイクルタイムを短縮することができる。
【0019】
第1の機械500は、典型的には、ワーク700に充填された第1の組成物により構成される基材を切削する切削工具(例えば、エンドミル、ドリル、フライス等の加工ツール)を有することが好ましい。第1の機械500が実行する第1の加工工程は、例えば、溝部形成工程であることが好ましい。溝部形成工程は、切削工具及びシャトル200の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させながら、切削工具により基材の表面を切削することで、基材の表面に線状の溝部を形成することが好ましい。
【0020】
第2の機械600は、典型的には、流動性を有する第2の組成物を吐出するノズル(加工ツール)を有するディスペンサであることが好ましい。この工程は所謂3Dプリンタと同様である。第2の機械600が実行する第2の加工工程は、例えば、線状体堆積工程であることが好ましい。線状体堆積工程は、ノズル及びシャトル200の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させながら、ノズルから流動性を有する第2の組成物を吐出することで、第2の組成物により構成される線状体を、基材に形成された線状の溝部の少なくとも一部に堆積することで、基材を加飾することが好ましい。線状体は、立体的模様を形成する。
【0021】
この様に、本実施形態では、第2の組成物により構成される線状体を、第1の組成物により構成される基材の未切削の平面ではなく、基材を切削して形成した溝部の少なくとも一部の中に堆積することで、線状体が基材から脱落するのを防止し、意匠的な品質を向上する。即ち、本実施形態では、溝部と線状体のデザインは略同じ形状であることが好ましい。
【0022】
第1の組成物と第2の組成物とは、同じものでもよいが、典型的には異なる。第1の組成物と第2の組成物が異なるとは、典型的にはその色が異なる。色が異なるとは、具体的には第1の組成物と第2の組成物の明度、彩度、色相、パール等の配合による色及び質感から選ばれる一又は二以上が異なる。第1の組成物と第2の組成物とは、含有する粒子の粒径や配合成分が異なってもよい。色が異なることで、線状体730の視認性や意匠性が向上する。
立体的模様は、例えばひらがな及びカタカナ等の日本語文字、アルファベット、アラビア数字、ローマ数字、諸外国の文字等の各種文字、直線及び曲線並びにこれらの組み合わせからなる図形や幾何学形状、記号、色、模様又はこれらの組み合わせの形状の模様でよい。
【0023】
制御装置300は、典型的にはCPUがROMに記録されたコンピュータプログラムをRAMにロードして実行することにより製造装置1を制御する。ここでいう製造装置とは典型的にはステージ100、マニピュレータロボット400、第1の機械500及び第2の機械600を含む。制御装置300は、コンピュータプログラムを実行してステージ100の電磁コイルのオンオフ及び電流値を制御してシャトル200を移動させる。
【0024】
制御装置300は、上記の基本コンピュータプログラムのサブルーチンとしてGコードを用いたNCプログラムに基づき、第1の機械500及び第2の機械600を制御することが好ましい。第1の機械500及び第2の機械600のオンオフは、Gコードにより制御される。制御装置300は、複数の異なる第1のプログラムの何れかを実行するように第1の機械500を制御し、複数の異なる第2のプログラムの何れかを実行するように第2の機械600を制御することができる。例えば、制御装置300は、異なる第1のプログラム(NCプログラム)に基づき、第1の機械500に、異なる形状(異なる模様)の溝部を切削加工させることが可能である。制御装置300は、異なる第2のプログラム(NCプログラム)に基づき、第2の機械600に、異なる形状(異なる模様)の線状体を堆積させることが可能である。なお、第1の機械500及び第2の機械600が固定でシャトル200が第1の機械500及び第2の機械600に対して移動する場合、制御装置300は、シャトル200が移動するようにステージ100を制御する。
【0025】
2.複数のステーション
ステージ100は、複数のステーション110~119を有することが好ましい。複数のステーション110~119は、供給ステーション110と、待機ステーション111と、第1の計測ステーション112と、第1の加工ステーション113と、第2の加工ステーション114と、第2の計測ステーション115と、第2の作業待機ステーション116と、複数の排出待機ステーション117と、排出ステーション118と、供給待機ステーション119とを含むことが好ましい。これらを有する一例を図2に示す。
ステージ100のうち、複数のステーション110~119以外のエリアは、複数のステーション間の経路として使用される。
【0026】
複数のステーション110~119は、シリアルなライン的ではなく、自在に行き来が可能である様に2次元的に配置されることが好ましい。具体的には、第1の加工ステーション113と第2の加工ステーション114とを結ぶ直線に対して、第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114と供給ステーション110及び排出ステーション118とをそれぞれ結ぶ複数の直線が交差するように、第1の加工ステーション113、第2の加工ステーション114、供給ステーション110及び排出ステーション118が2次元に配置されることが好ましい。
【0027】
供給ステーション110では、典型的にはマニピュレータロボット400により、空のシャトル200にワーク700が搭載される。ワーク700には、パーソナルケア製品を構成する第1の組成物が充填され、第1の組成物により構成される基材が形成されている。
待機ステーション111では、供給ステーション110でワーク700が搭載されたシャトル200が、供給ステーション110から第1の計測ステーション112に移動するために待機する。
第1の計測ステーション112では、供給ステーション110から出発したワーク700が搭載されたシャトル200が、第1の加工ステーション113に移動するために待機する。第1の計測ステーション112では、光学センサ(レーザ光センサ)、超音波センサ又は赤外線センサ等の距離センサ112S(図3)、若しくは画像センサ、又は光学センサと画像センサの両方を用いて、第1の計測ステーション112に位置するシャトル200の位置(実際位置)(X,Y,Z)を計測する。
【0028】
第1の加工ステーション113には、典型的には第1の機械500が設置される。第1の加工ステーション113では、ワーク700がシャトル200に搭載された状態で、第1の機械500がワーク700に第1の加工工程(溝部形成工程)を実行する。
第2の加工ステーション114には、典型的には第2の機械600が設置される。第2の加工ステーション114では、ワーク700がシャトル200に搭載された状態で、第2の機械600がワーク700に第2の加工工程(線状体堆積工程)を実行する。
第2の計測ステーション115では、第1の加工ステーション113から第2の加工ステーション114に移動するシャトル200が待機する。第2の計測ステーション115では、光学センサ(レーザ光センサ)、超音波センサ又は赤外線センサ等の距離センサ112S(図3)、若しくは画像センサ、又は光学センサと画像センサの両方を用いて、第2の計測ステーション115に位置するシャトル200の位置(実際位置)(X,Y,Z)を計測する。
【0029】
複数の排出待機ステーション117は、連続的に配置された第1の排出待機ステーション117Aと、第2の排出待機ステーション117Bと、第3の排出待機ステーション117Cとを含むことが好ましい。排出ステーション118の直前に第1の排出待機ステーション117Aが配置される。第1の排出待機ステーション117Aの直前に第2の排出待機ステーション117Bが配置される。第2の排出待機ステーション117Bの直前に第3の排出待機ステーション117Cが配置される。複数の排出待機ステーション117は、第1の加工工程(溝部形成工程)及び第2の加工工程(線状体堆積工程)が終了しパーソナルケア製品710となったワーク700を搭載したシャトル200が、排出ステーション118に移動するために待機する。
【0030】
排出ステーション118では、典型的にはマニピュレータロボット400により、パーソナルケア製品710となったワーク700をシャトル200から排出し、シャトル200を空にする。
供給待機ステーション119では、排出ステーション118でワーク700が排出された空のシャトル200が、供給ステーション110に移動するために待機する。
【0031】
3.本実施形態のコンセプト
図3は、補正値を説明するための模式図である。
ステージ100は、磁気浮遊型リニア搬送装置であり、メカレス機構であるため、ステージ100上でシャトル200を移動するとき、機械精度並みの搬送精度が得られないおそれがある。言い換えれば、シャトル200をステージ100上の目標とする位置(X,Y,Z)で精密に停止させることは難しい。
【0032】
加えて、シャトル200の形状(XY方向の寸法、Z方向の厚みD1)及び永久磁石の磁気、セグメント101の高さ等の寸法及び電磁コイルの磁気、さらにはシャトル200に搭載されるワーク700の金皿及び基材の形状(XY方向の寸法、Z方向の厚みD2)にはすべて個体差がある。また、シャトル200の浮上制御量(浮上高さ)D3は、シャトル200、ワーク700及びセグメント101の組み合わせにより異なる。
【0033】
このため、シャトル200の原点位置(X,Y,Z)と第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114の原点位置(X,Y,Z)とが一致する様に各シャトル200を一律に制御しても、第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114の原点位置に対してシャトル200の原点位置が一致せずばらつきが生じてしまう。
【0034】
しかし、第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114でワーク700に施される加工工程(溝部形成工程、線状体堆積工程)は、ワーク700の位置(X,Y,Z)の精度が求められる。このため、シャトル200の原点位置と第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114の原点位置とが異なると、設計通りの加工をワーク700に施せなくなるおそれがある。また、第1の機械500の切削工具や第2の機械600のノズルとワーク700に充填された組成物701とが接触し、ワーク700に充填された組成物701が破損するおそれがある。
【0035】
そこで、本実施形態では、シャトル200に搭載されたワーク700に第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114で溝部形成工程及び線状体堆積工程を実行する前に、シャトル200及びシャトル200に搭載されたワーク700の組み合わせに応じて固有の補正値を算出する。補正値とは、シャトル200の原点位置(シャトル原点位置)を、第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114の座標系の原点位置(加工ステーション原点位置)にそれぞれ設定するための、シャトル200固有の補正値である。即ち、第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114毎に、個別に補正値を算出する。
以下、第1の計測ステーション112において第1の加工ステーション113での補正値を算出する方法を説明する。説明は省略するが、第2の計測ステーション115において第2の加工ステーション114での補正値を算出する方法も同様である。
【0036】
制御装置300は、シャトル200を第1の計測ステーション112の基準位置で停止させる。このとき、シャトル200の実際位置は、第1の計測ステーション112の基準位置(即ち、シャトル200の目標の停止位置)から、所定のずれ量でずれると仮定する。このずれ量が補正値となる。仮に、シャトル200の原点位置が第1の加工ステーション113の原点位置と一致する様にシャトル200を停止させると、シャトル200の原点位置は、第1の加工ステーション113の原点位置から、同じずれ量でずれて停止することが予測される。この様にシャトル200の原点位置が第1の加工ステーション113の原点位置からずれることにより、シャトル200に搭載されたワーク700に対する切削位置も同じずれ量でずれることになる。
【0037】
そこで、本実施形態では、第1の加工ステーション113において、シャトル200の原点位置(X,Y,Z)を、補正値(即ち、予測されるずれ量)に基づき、第1の加工ステーション113の原点位置(X,Y,Z)に設定する。これにより、第1の加工ステーション113において、Gコードを用いたNCプログラムに基づき第1の機械500を制御するとき、第1の機械500が動作する第1の加工ステーション113の座標系の原点位置と、シャトル200の原点位置とが一致することになる。その結果、シャトル200に搭載されたワーク700の基材に、目標とする設計の加工を高精度に実行することができる。
【0038】
補正値は、シャトル200の原点位置のX座標値、Y座標値及びZ座標値を第1の加工ステーション113の原点位置のX座標値、Y座標値及びZ座標値に設定するためのX座標補正値、Y座標補正値及びZ座標補正値を含む。X座標補正値を用いて、シャトル200の原点位置のX座標値と第1の加工ステーション113の原点位置のX座標値との誤差が、±0.5mm以内に設定される。Y座標補正値を用いて、シャトル200の原点位置のY座標値と第1の加工ステーション113の原点位置のY座標値との誤差が、±0.5mm以内に設定される。Z座標補正値を用いて、シャトル200の原点位置のZ座標値と第1の加工ステーション113の原点位置のZ座標値との誤差が、±0.5mm以内に設定される。
【0039】
ここで、X座標値の誤差及びY座標値の誤差より、Z座標値の誤差が小さいように設定される。言い換えれば、XY方向の位置ずれより、Z方向の位置ずれが精密に調整される。何故なら、パーソナルケア製品710の完成品をユーザが見たとき、目標とする設計から溝部及び線状体がXY方向に位置ずれしていても、ユーザはその位置ずれに気が付かず違和感を覚えない可能性がある。一方、第1の機械500の切削工具がシャトル200に対して相対的にZ方向に位置ずれすると、基材に形成された溝部が浅くなり溝部内に堆積された線状体が基材から脱落しやすくなったり、逆に、基材に形成された溝部が深くなり基材が割れやすく結果的に溝部内に堆積された線状体も割れやすく脱落しやすくなったりするおそれがある。また、第2の機械600のノズルがシャトル200に対して相対的にZ方向に位置ずれすると、目標とする設計とは異なるデザインの線状体が堆積されるおそれがある。このため、XY方向の位置ずれより、Z方向の位置ずれが精密に調整されるのがよい。
【0040】
具体例を説明する。第1の加工ステーション113で実行される、Gコードを用いたNCプログラムの指令値(X,Y,Z)が、第1の加工ステーション113の原点位置に対して(A1,B1,C1)であると仮定する。また、第1の計測ステーションで算出した補正値が(a1,b1,c1)であると仮定する。このとき、第1の加工ステーション113において、第1のシャトルS1の指令値を、第1のシャトルS1固有の補正値に基づき(A1+a1,B1+b1,C1+c1)と補正することで、第1のシャトルS1の原点位置が、第1の加工ステーション113の原点位置に設定される。
【0041】
上述のように、シャトル200及びシャトル200に搭載されたワーク700の組み合わせに応じて固有の補正値が算出される。例えば、第2のシャトルS2の指令値(A2,B2,C2)を、第2のシャトルS2固有の補正値(a2,b2,c2)に基づき(A2+a2,B2+b2,C2+c2)と補正することで、第2のシャトルS2の原点位置が、第1の加工ステーション113の原点位置に設定される。第3のシャトルS3の指令値(A3,B3,C3)を、第3のシャトルS3固有の補正値に基づき(A3+a3,B3+b3,C3+c3)と補正することで、第3のシャトルS3の原点位置が、第1の加工ステーション113の原点位置に設定される。
【0042】
4.製造方法
製造装置1を用いたパーソナルケア製品の製造方法を説明する。本実施形態の製造方法は、磁気浮遊型搬送装置である製造装置1を用い、供給ステーション110でパーソナルケア製品710の前駆体であるワーク700を積載した複数のシャトル200が、ステージ100上に設けられた第1の加工ステーション113から第2の加工ステーション114を経由することで、ワーク700に所定の加工を施しながら、完成品であるパーソナルケア製品710となったワーク700を排出ステーション118まで搬送する。
【0043】
制御装置300は、起動すると、ステージ100上の1又は複数のシャトル200を初期位置に移動させる。ユーザ(作業者等)は、HMI(Human Machine Interface)を用いて、製造装置1が製造するパーソナルケア製品の品種や個数の情報を制御装置300に入力する。制御装置300は、入力された情報を実現するための変数をコンピュータプログラムに入力し、コンピュータプログラムを実行することで、パーソナルケア製品を製造するための動作を開始する。以下は動作の一具体例である。以下、説明の簡略化のため、1個のシャトル200を説明する。
電磁コイルを内蔵するステージ100は、シャトル200を電磁的に検出する。制御装置300は、ステージ100がシャトル200を電磁的に検出した結果に基づき、シャトル200が位置するステーション110~119を判断することができる。
【0044】
図4は、製造方法を示すフローチャートである。
制御装置300は、シャトル200を供給待機ステーション119に初期配置する(ステップS1)。制御装置300は、シャトル200を供給ステーション110に移動し(ステップS2)、マニピュレータロボット400を制御して、ワーク700をシャトル200に搭載する(ステップS3)。ワーク700には、第1の組成物により構成される基材が充填されている。制御装置300は、シャトル200を待機ステーション111(ステップS4)から第1の計測ステーション112に移動し、シャトル200を第1の計測ステーション112の基準位置で停止させる(ステップS5)。
【0045】
制御装置300は、光学センサ(レーザ光センサ)、超音波センサ又は赤外線センサ等の距離センサ112S(図3)、若しくは画像センサ、又は光学センサと画像センサの両方を用いて、第1の計測ステーション112に位置するシャトル200の位置(実際位置)(X,Y,Z)を計測する。制御装置300は、第1の計測ステーション112の基準位置(即ち、シャトル200の目標の停止位置)と、シャトル200の実際位置との誤差に基づき、第1の加工ステーション113で用いるための補正値を算出する(ステップS11)。
制御装置300は、シャトル200を第1の加工ステーション113に移動させ、算出した補正値に基づき、シャトル200の原点位置を第1の加工ステーション113の原点位置に設定する(ステップS6)。
【0046】
制御装置300は、第1の機械500を制御して、第1の加工ステーション113においてシャトル200及び第1の機械500の切削工具(加工ツール)の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させながら、ワーク700に導入された第1の組成物により構成される基材を切削して溝部を形成する(ステップS7)。ここで、シャトル200の原点位置が第1の加工ステーション113の原点位置に設定されているため、基材の表面の目標とするXY位置に目標とするZ位置から、溝部を形成することができる。
制御装置300は、シャトル200を第1の加工ステーション113から第2の計測ステーション115に移動し、シャトル200を第2の計測ステーション115の基準位置で停止させる(ステップS8)。
【0047】
制御装置300は、光学センサ(レーザ光センサ)、超音波センサ又は赤外線センサ等の距離センサ112S(図3)、若しくは画像センサ、又は光学センサと画像センサの両方を用いて、第2の計測ステーション115に位置するシャトル200の位置(実際位置)(X,Y,Z)を計測する。制御装置300は、第2の計測ステーション115の基準位置(即ち、シャトル200の目標の停止位置)と、シャトル200の実際位置との誤差に基づき、第2の加工ステーション114で用いるための補正値を算出する(ステップS15)。
制御装置300は、シャトル200を第2の加工ステーション114に移動させ、算出した補正値に基づき、シャトル200の原点位置を第2の加工ステーション114の原点位置に設定する(ステップS9)。
【0048】
制御装置300は、第2の機械600を制御して、第2の加工ステーション114において、流動性を有する第2の組成物を第2の機械600のノズル(加工ツール)からシャトル200に搭載されたワーク700に導入しながら、ノズル及びシャトル200の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて第2の組成物を堆積させることで線状体を形成する(ステップS10)。第2の機械600は、ワーク700に充填された第1の組成物により構成される基材の表面に形成された溝部に、線状体を堆積する。ここで、シャトル200の原点位置が第2の加工ステーション114の原点位置に設定されているため、基材の表面の目標とするXY位置に目標とするZ位置から、線状体を堆積することができる。
【0049】
制御装置300は、シャトル200を、第2の加工ステーション114から、第3の排出待機ステーション117C、第2の排出待機ステーション117B及び第1の排出待機ステーション117Aをこの順に移動し(ステップS12)、排出ステーション118へと移動する(ステップS13)。制御装置300は、シャトル200が排出ステーション118に到着すると、シャトル200に搭載されていたワーク700に対する全ての作業が終了し、ワーク700がパーソナルケア製品710の完成品となったと判断する。制御装置300は、マニピュレータロボット400を制御して、排出ステーション118に位置するシャトル200から、ワーク700を排出する(ステップS14)。
【0050】
制御装置300は、排出ステーション118に位置するシャトル200の重量が減少したことを検出すると、シャトル200からワーク700が排出されたと判断し、シャトル200を制御するための実行中のプログラムを削除し、新たに、シャトル200が供給ステーション110に移動するための制御を開始する。
【0051】
5.補正値算出のバリエーション
第1の計測ステーション112及び第1の加工ステーション113は、同一のセグメント101に設けられてもよい。この場合、同一のセグメント101内の第1の計測ステーション112で算出された補正値に基づき、第1の加工ステーション113のシャトル原点位置が設定される。上述のように、セグメント101の高さ等の寸法及び電磁コイルの磁気には個体差がある。このため、補正対象である第1の加工ステーション113と同一のセグメント101内にある第1の計測ステーション112で補正値を算出することで、補正値がセグメント101の個体差の影響を受けることがない。このため、第1の計測ステーション112で算出した補正値が、第1の加工ステーション113で採用すべき補正値とより高い精度で一致するため、第1の加工ステーション113での原点位置を精密に設定することができる。例えば、第1の加工ステーション113を第1の計測ステーション112として使用してもよい。言い換えれば、第1の加工ステーション113で補正値を算出してもよい。第2の計測ステーション115及び第2の加工ステーション114にも同様のことが言える。
【0052】
複数のシャトル200は、異なるワーク700を搭載して何周もステージ100上を移動する。シャトル200が異なるワーク700を搭載して第1の計測ステーション112に到達する度に、補正値を算出してもよい。言い換えれば、複数のシャトル200と複数のワーク700との組み合わせ毎に補正値を算出してもよい。これにより、シャトル200の個体差に加えてワーク700の個体差に応じて補正値を算出できるので、第1の加工ステーション113での原点位置を精密に設定することができる。第2の計測ステーション115及び第2の加工ステーション114にも同様のことが言える。
【0053】
逆に、各シャトル200が第1の計測ステーション112に最初に到達した回のみ、補正値を算出し、その補正値をそのシャトル200の原点位置の設定に利用し続けてもよい。これにより、毎回補正値を算出する場合に比べて計算量が減り、全体的なサイクルタイムの短縮を図れる。本明細書で「全体的なサイクルタイム」とは、1個のパーソナルケア製品を製造するときのサイクルタイムを意図するものではなく、多品種のパーソナルケア製品を含む多数のパーソナルケア製品を製造するときのサイクルタイムを意図する。第2の計測ステーション115及び第2の加工ステーション114にも同様のことが言える。
【0054】
第2の計測ステーション115を設けずに、第1の計測ステーション112で算出した補正値を、第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114の両方で使用してもよい。これにより、計算量が減り、全体的なサイクルタイムの短縮を図れる。
【0055】
6.第2の機械の例
第2の機械600は、典型的には、流動性を有する第2の組成物Lを、組成物が供給されるワーク700上に供給する供給部20と、供給部20と連通するように一体的に配置されたノズル21とを備える。典型的には、平板状のシャトル200がノズル21の下方且つノズル21と対向する位置に配されており、シャトル200の上面にワーク700が搭載できる。これらを備えた一例を図7に示す。
【0056】
第2の機械600は、供給部20とシャトル200とを所定の位置に支持又は保持する。第2の機械600は、ノズル21の位置及びシャトル200の位置を、任意の方向に相対的に移動させる。これによって、ノズル21及びシャトル200の少なくとも一方を、平面方向、鉛直方向又はその組み合わせの方向に移動させて、ノズル21及びシャトル200上のワーク700の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させることができる。
【0057】
供給部20は、流動性を有する第2の組成物Lをワーク700側に送液する部材である。供給部20は、送液部25と、組成物収容部26とを備えることが好ましい。
送液部25は、流路28を介して組成物収容部26が連通して接続されていることが好ましい。これにより、組成物収容部26から送液部25の内部に供給された第2の組成物Lをノズル21側に連続的に又は非連続的に供給したり、あるいは供給を停止したりできる。このような送液部25としては、第2の組成物Lを液滴状に吐出可能なジェットディスペンサー、あるいは第2の組成物Lを連続的に吐出可能なモーノディスペンサーやスクリューディスペンサーを用いることができる。
組成物収容部26は、その一方がエア等の加圧手段やポンプと接続されており、組成物収容部26に収容されている第2の組成物Lを、流路28を介して、送液部25側に圧送できるように構成されていることが好ましい。
【0058】
ノズル21は、典型的には、第2の組成物Lを供給部20からワーク700に向けて供給する管状の部材である。ノズル21は、その内部に形成された空間である第2の組成物Lの流路が第2の組成物Lの流動方向に沿って形成されている。ノズル21は、その一方の端部であるノズル先端が第2の組成物Lの供給口を構成し、他方の端部は上述した供給部20と連通して接続されている。ノズルの構成材料は特に限定されず、例えば金属やプラスチックなどを採用できる。
【0059】
7.第1の組成物及び第2の組成物の例
特に断りのない限り、以下に説明する物質の状態(三態)は、1気圧、20℃を基準とする。
第1の組成物及び第2の組成物は、組成物に含まれる材料の均一分散性を向上し品質を安定化させることや、ノズルから吐出した線状体の崩れを抑制し形状を安定化させるといった観点から、その粘度が、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.5Pa・s以上、更に好ましくは1Pa・s以上である。また、上記粘度は、吐出性を向上させ、成形性を向上する観点から、好ましくは1000Pa・s以下、より好ましくは500Pa・s以下、更に好ましくは200Pa・s以下である。上述した組成物の粘度は、組成物の温度をノズル21からの供給時の組成物と同じ温度、すなわち吐出時の温度にした上で測定する。例えば組成物がスラリーである等といった加熱溶融液以外のものであり、室温(25℃)でノズルから供給する場合には、25℃において、B型粘度計(東機産業株式会社製、デジタル粘度計TVB-10R)を用いて測定された値とする。この場合の測定条件は、ローターをサンプルの粘度範囲に合わせてローターNo.M1、M2、M3、M4、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、T-A、T-B、T-C、T-D及びT-Eのいずれかとし、回転数を3~100rpmとし、測定時間を60秒間とする。組成物が加熱溶融液である場合、組成物の温度をノズル21からの供給時の組成物と同じ温度にした上で、前述の測定条件にて粘度を測定する。
【0060】
第1の組成物及び第2の組成物は、粉体等の固体及び油剤から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。このような固体としては、例えば、着色顔料及び体質顔料などの通常の化粧料成分に用いられる粉体を含むことが好ましい。着色顔料及び体質顔料としては、例えば、無機粉体、有機粉体、無機粉体と有機粉体との複合粉体などが挙げられる。無機粉体としては、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ベントナイト、雲母、チタン被膜雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン、カーボンブラック、チッ化ホウ素これらの複合体等が挙げられる。有機粉体としては、ポリアミド、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂 、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、長鎖アルキルリン酸金属塩、N-モノ長鎖アルキルアシル塩基性アミノ酸、これらの複合体等が挙げられる。これらの体質顔料や着色顔料は、着色しているか又は非着色(例えば、白色又は本質的に透明)であり、組成物又は皮膚に対して、着色、光の回折、油分吸収、半透明性、不透明性、光沢、光沢のない外観、滑らか感などのうちの一つ以上の効果を提供し得る。
【0061】
組成物中における粉体の含有量は、その目的に応じて異なるが、乾燥といった生産性の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。組成物中における粉体の含有量は、供給時の流動性といった生産性の観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。このような範囲であることで、高精細な立体形状を有するパーソナルケア製品を製造しやすくすることができ、また製品を使用したときの良好な使用感を高めることができる。組成物中における粉体の平均粒径は、着色力や明度、彩度等の光学的性質の調整といった観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上である。組成物中における粉体の平均粒径はノズル詰まりを抑制し連続的に安定した吐出を可能とするといった観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で測定される累積体積50容量%における体積累積粒径D50とする。なお、最終的な製品から粉体の平均粒径を測る場合には、まず製品を水や油に溶解させ、バインダー成分を溶かして溶媒に粒子を分散させる。その後、粒度分布計を用いて固形物としての粒度分布を測定し、得られた結果の体積累積粒径D50を平均粒径とする。組成物中における粉体の平均粒径は、ノズルからの安定供給性といった観点から、ノズル21の断面の長さD1より小さいことが好ましい。ノズル21の断面が真円でない場合は、ノズルの断面の最小長さをD1とする。組成物中における粉体の平均粒径は、上述の方法で製造された線状体の平面視における線幅W1を細くし、立体的且つ高精細なデザインを安定的に形成するといった観点から、ノズル21の断面の長さD1との比(平均粒径/ノズル断面長さ)が、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.35以下、より一層好ましくは0.3以下である。平均粒径/ノズル断面長さは小さければ小さいほど好ましいが、現実的には0.001以上である。
【0062】
流動体中に含まれ得る油剤は、1気圧、20℃で液体の油(以下、これを液体油ともいう。)、及び1気圧、20℃で固体の油(以下、これを固体油ともいう。)から選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。
液体油としては、例えば、直鎖又は分岐の炭化水素油、植物油、動物油、エステル油、シリコーン油、高分子アルコールが挙げられる。直鎖又は分岐の炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン等が挙げられる。植物油としては、ホホバ油、オリーブ油等が挙げられる。動物油としては、液状ラノリン等が挙げられる。エステル油としては、モノアルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。 高分子アルコールとしては、ポリエチレングリコール等が挙げられる。固体油としては、例えば、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、セラミド等が挙げられる。
【0063】
組成物中における油剤の含有量は、その目的に応じて異なるが、総量として、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは1.5質量%以上である。組成物中における油剤の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。このような範囲であることで、パーソナルケア製品としての良好な発色性や感触を高めることができる。
【0064】
組成物は、目的とするパーソナルケア製品の種類に応じて、増粘剤、皮膜剤、界面活性剤、糖、多価アルコール、水溶性高分子、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、皮膚コンディショニング剤、ビタミン、酸化防止剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤等から選ばれる一種又は二種以上の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。ベンゾフェノン誘導体としては、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸塩、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸塩等が挙げられる。メトキシ桂皮酸誘導体としては、メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。紫外線散乱剤としては、例えば平均粒径が0.1μm以下の微粒子を用いることができる。紫外線散乱剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン及びシリカ等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0065】
第1の組成物及び第2の組成物は、液媒を更に含むことも好ましい。液媒は、化粧料を溶解又は分散させる溶媒又は分散媒として使用することができる液体である。第1の組成物及び第2の組成物をスラリーの形態とする場合、第1の組成物及び第2の組成物は、粉体及び液媒を少なくとも含む混合物であることが好ましい。第1の組成物及び第2の組成物を化粧料スラリーの形態とする場合には、第1の組成物及び第2の組成物は、上述した顔料を含む粉体、油剤及び液媒を少なくとも含む混合物であることが好ましい。
【0066】
上述した液体(液媒)としては、例えば、液体の状態において揮発性を有する物質(揮発性溶媒)が挙げられる。具体的には液体(液媒)としては、水、アルコール、ケトン及び炭化水素等から選ばれる一種又は二種以上が好ましく挙げられる。アルコールとしては、例えば一価の炭素数1~6の鎖式脂肪族アルコールや、一価の炭素数3~6の環式脂肪族アルコールや、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、プロパノール、ペンタノールなどが挙げられる。ケトンとしては例えば炭素数3~6の鎖式脂肪族ケトンや、炭素数3~6の環式脂肪族ケトンや、炭素数8~10の芳香族ケトンが好適に用いられる。それらの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどが挙げられる。炭化水素としては、例えばイソパラフィン系炭化水素が好適に用いられ、その具体例としては、IPソルベントが挙げられる。
【0067】
第1の組成物及び第2の組成物に液媒を含む場合、組成物中における液媒の含有量は、その目的に応じて異なるが、総量として、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは40質量%以上である。組成物中における液媒の含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。このような範囲であることで、第1の組成物及び第2の組成物の構成材料の均一分散性を高めつつ、取り扱い性を高めることができる。
【0068】
第1の組成物又は第2の組成物由来である線状体は、パウダー化粧品等の粉体を主成分とするパーソナルケア製品を製造する観点から、その固形分として、粉体を好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上含む。組成物由来である線状体は、成形性といった観点から、その固形分として、粉体を好ましくは99質量%以下含む。線状体をこのような構成とするためには、例えば第1の組成物又は第2の組成物Lに粉体を上述の固形分の範囲で含有させたり、あるいは、液媒及び粉体を含む第1の組成物又は第2の組成物Lを用いてワーク700上に供給した後、固化工程を行って液媒を除去したりすることで達成することができる。
【0069】
8.変形例
上記実施形態は、第1の加工ステーション113で第1の機械500が溝部形成工程を実行し、第2の加工ステーション114で第2の機械600が線状体堆積工程を実行する。これに代えて、第1の加工ステーション113で第1の機械500が溝部形成工程を実行し、第2の加工ステーション114で第2の機械600が溝部形成工程を実行してもよい。第1の加工ステーション113で第1の機械500が線状体堆積工程を実行し、第2の加工ステーション114で第2の機械600が線状体堆積工程を実行してもよい。第1の加工ステーション113で第1の機械500が線状体堆積工程を実行し、第2の加工ステーション114で第2の機械600が溝部形成工程を実行してもよい(この場合、基材の表面の一部に線状体を堆積し、別の一部に溝部を形成する)。
【0070】
工程の順番を問わない加工の場合、シャトル200は適宜空いている加工ステーション113及び114に行き、必要な加工が施される。このため、図2のような一方通行の動き方ではなくなる。その例を図6に示す。図6のステージ100は、第3の計測ステーション116をさらに含む。
【0071】
制御装置300は、シャトル200が第1の計測ステーション112に位置するとき、第1の加工ステーション113が空いておらず第2の加工ステーション114が空いている場合には、第2の加工ステーション114で用いるための補正値を算出する。制御装置300は、シャトル200を第2の加工ステーション114に移動させ、算出した補正値に基づき、シャトル200の原点位置を第2の加工ステーション114の原点位置に設定する。制御装置300は、第2の機械600を制御して、第2の加工ステーション114において加工工程を実行する。
【0072】
制御装置300は、シャトル200を第2の加工ステーション114から第3の計測ステーション116に移動し、シャトル200を第3の計測ステーション116の基準位置で停止させる。制御装置300は、第3の計測ステーション116で、第1の加工ステーション113で用いるための補正値を算出する。制御装置300は、シャトル200を第1の加工ステーション113に移動させ、算出した補正値に基づき、シャトル200の原点位置を第1の加工ステーション113の原点位置に設定する。制御装置300は、第1の機械500を制御して、第1の加工ステーション113において加工工程を実行する。
【0073】
制御装置300は、シャトル200を、第1の加工ステーション113から、第3の排出待機ステーション117C、第2の排出待機ステーション117B及び第1の排出待機ステーション117Aをこの順に移動し、排出ステーション118へと移動する。
【0074】
本実施形態では、ステージ100上の各計測ステーション112、115、116で補正値を算出している。これに代えて、予め、シャトル200の個体差に起因するシャトル200毎の補正値を算出し、第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114で用いる補正値をHMI上で入力しておき、シャトル200の原点位置(X,Y,Z)を、第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114の原点位置(X,Y,Z)に設定してもよい。なお、X座標補正値、Y座標補正値及びZ座標補正値の全てを、予め算出しHMI上で入力しておいてもよい。あるいは、X座標補正値、Y座標補正値及びZ座標補正値の一部を予め算出しHMI上で入力しておき、残りはステージ100上の各計測ステーション112、115、116でのインライン計測に基づき補正値を算出してもよい。例えば、Z座標補正値を予め算出しHMI上で入力しておき、X座標補正値及びY座標補正値はステージ100上の各計測ステーション112、115、116でのインライン計測に基づき補正値を算出してもよい。
【0075】
9.結語
本実施形態では、第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114において、シャトル200の原点位置(X,Y,Z)を、補正値(即ち、予測されるずれ量)に基づき、第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114の原点位置(X,Y,Z)に設定する。これにより、第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114において、Gコードを用いたNCプログラムに基づき第1の機械500及び第2の機械600を制御するとき、第1の機械500及び第2の機械600が動作する第1の加工ステーション113及び第2の加工ステーション114の座標系の原点位置と、シャトル200の原点位置とが一致することになる。その結果、シャトル200に搭載されたワーク700の基材に、目標とする設計の加工を高精度に実行することができる。本実施形態によれば、磁気浮遊型リニア搬送装置である製造装置1において、位置決め精度を高め、目的とするパーソナルケア製品710を高精度に製造することが可能となる。
【0076】
本技術の各実施形態及び各変形例について上に説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
1 製造装置
100 ステージ
101 セグメント
110 供給ステーション
113 第1の加工ステーション
114 第2の加工ステーション
118 排出ステーション
200 シャトル
700 ワーク
710 パーソナルケア製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6