(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183022
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231220BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/00 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096380
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田富 琢磨
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033AA15
2H033BA25
2H033BA27
2H033BA29
2H033BA32
2H033BA59
2H033BE00
2H033BE06
2H033CA07
2H033CA09
2H033CA30
2H033CA53
2H270KA36
2H270LA24
2H270LA25
2H270MA33
2H270MA35
2H270MB30
2H270MB43
2H270MH09
2H270SA11
2H270SB16
2H270SB22
2H270SC12
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】記録媒体を格納する格納部において記録媒体を加熱する場合に、定着装置における画像不良を抑制すること。
【解決手段】画像形成装置1は、定着ニップ部における記録媒体Pの搬送方向に直交する幅方向の中央部の温度と端部の温度とを制御すると共に、カセット31に格納されている記録媒体Pをカセットヒーター37により加熱する場合の幅方向の中央部の温度と端部の温度との温度差が、カセット31に格納されている記録媒体Pをカセットヒーター37により加熱しない場合の幅方向の中央部の温度と端部の温度との温度差よりも小さくなるように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
記録媒体を格納する格納部と、
前記格納部に格納されている記録媒体を加熱する第1の加熱手段と、
前記格納部より給送される記録媒体に未定着のトナー画像を形成する画像形成手段と、
前記未定着のトナー画像に当接する回転可能な定着部材と、前記定着部材に当接して定着ニップ部を形成する回転可能な加圧部材と、前記定着部材を加熱する第2の加熱手段と、を備え、前記画像形成手段により記録媒体に形成された前記未定着のトナー画像を前記定着ニップ部において前記第2の加熱手段によって加熱することにより記録媒体に定着させる定着装置と、
前記定着ニップ部における記録媒体の搬送方向に直交する幅方向の中央部の温度と端部の温度とを制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記格納部に格納されている記録媒体を前記第1の加熱手段により加熱する場合の前記中央部の温度と前記端部の温度との温度差が、前記格納部に格納されている記録媒体を前記第1の加熱手段により加熱しない場合の前記温度差よりも小さくなるように制御する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着装置の温度を検知する検知手段を有し、
前記制御手段は、
前記検知手段により検知された温度が閾値温度以上の場合に、前記中央部又は前記端部から放熱を促すと共に、前記格納部に格納されている記録媒体を前記第1の加熱手段により加熱する場合における前記閾値温度の補正量を、前記格納部に格納されている記録媒体を前記第1の加熱手段により加熱しない場合における前記閾値温度の補正量よりも小さくすることにより前記温度差を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
補正レベルを設定可能な設定手段を有し、
前記制御手段は、
前記設定手段により設定された前記補正レベルに応じた前記閾値温度の補正量により前記温度差を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記定着装置により前記未定着のトナー画像を記録媒体に定着させる際の温調温度を制御すると共に、前記格納部に格納されている記録媒体を前記第1の加熱手段により加熱する場合の前記温調温度の補正量を、前記格納部に格納されている記録媒体を前記第1の加熱手段により加熱しない場合の前記温調温度の補正量よりも小さくする、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上の未定着のトナー画像を加熱して記録媒体に定着させる定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式等を利用した画像形成装置では、トナーによって記録媒体上に形成された画像を記録媒体に定着させるために定着装置が用いられている。定着装置としては、加熱回転体であるローラ又はベルト状の定着部材と、加圧回転体であるローラ又はベルト状の加圧部材と、を用いた定着装置が一般的に用いられている。
【0003】
しかしながら、近年、画像形成装置に対しては、環境への意識の高まりに伴って省資源化のために従来と比較して薄紙等の薄い記録媒体に画像を形成することが求められるようになっている。このような薄い記録媒体には、剛度が低いことにより歪み易く且つ折れ易いため、紙シワ又は紙後端の反り上がり(以下、「後端ハネ」と記載する)が発生することが知られている。ユーザーは、このような紙シワ又は後端ハネが発生した場合に、直ちにサービスマンに連絡して、画像形成装置の修理又は調整をサービスマンに依頼する必要がある。
【0004】
ここで、定着装置における紙シワ又は後端ハネといった画像不良の発生及び程度に影響を与える要因としては、定着部材若しくは加圧部材の温度、又は記録媒体の定着装置への突入時の搬送速度等の多くの要因がある。定着装置における加熱温度及び搬送速度等の設定値は、通常、画像形成装置が設置された環境の温度又は湿度に応じて、最適な設定値に自動で変更される。
【0005】
このような定着装置における加熱温度及び搬送速度等の最適な設定値は、記録媒体の剛度毎に異なる。従って、従来、記録媒体の剛度に関わりなく環境に応じて設定値を設定する場合には、設定された設定値は不十分となり、紙シワの発生又は過剰な補正による後端ハネに起因する画像不良が発生してしまうことがあった。
【0006】
このような状況において、特許文献1は、記録紙にシワが発生する兆候を検知する画像形成装置を開示している。特許文献1の画像形成装置は、不可視トナー画像の規則性の乱れをセンサで検知することによってシワが発生する兆候をいち早く察知し、不可視トナー画像の規則性の乱れを検知した場合にはユーザーにその旨を報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、記録媒体の剛度をより良い状態に保つために、給紙部に格納される記録媒体を加熱するカセットヒーターを配置する場合において、記録媒体の剛度は、カセットヒーターによって加熱されることにより環境に関わらず変化してしまう。従って、特許文献1においては、カセットヒーターを配置する場合に、定着装置における紙シワ又は後端ハネに起因する画像不良を抑制することができないという課題を有する。
【0009】
本発明の目的は、記録媒体を格納する格納部において記録媒体を加熱する場合に、定着装置における画像不良の発生を抑制することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、記録媒体を格納する格納部と、前記格納部に格納されている記録媒体を加熱する第1の加熱手段と、前記格納部より給紙される記録媒体に未定着のトナー画像を形成する画像形成手段と、前記未定着のトナー画像に当接する回転可能な定着部材と、前記定着部材に当接して定着ニップ部を形成する回転可能な加圧部材と、前記定着部材を加熱する第2の加熱手段と、を備え、前記画像形成手段により記録媒体に形成された前記未定着のトナー画像を前記定着ニップ部において前記第2の加熱手段によって加熱することにより記録媒体に定着させる定着装置と、前記定着ニップ部における記録媒体の搬送方向に直交する幅方向の中央部の温度と端部の温度とを制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記格納部に格納されている記録媒体を前記第1の加熱手段により加熱する場合の前記中央部の温度と前記端部の温度との温度差を、前記格納部に格納されている記録媒体を前記第1の加熱手段により加熱しない場合の前記温度差よりも小さくする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録媒体を格納する格納部において記録媒体を加熱する場合に、定着装置における画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の定着装置の断面模式図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の定着装置の一部の斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一部の模式図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の定着装置の定着ベルトの断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の定着装置で生じる画像不良の要因を示す模式図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の定着装置における幅方向の搬送速度を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る画像形成装置のカセットヒーターをONした際とOFFした際との記録媒体の含有水分量を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の操作部に表示される表示の一例を示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る画像形成装置が実行する温度制御処理を示すフロー図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る画像形成装置が有する通常テーブルの一例を示す図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る画像形成装置が有する専用テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
<画像形成装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る画像形成装置1の構成について、
図1及び
図2を参照しながら、詳細に説明する。
【0015】
画像形成装置1は、ここでは複数の感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kを有する電子写真方式のフルカラーの中間転写方式の画像形成装置を例示する。また、画像形成装置1は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置又はこれらの複数の機能を備える複合機等である。なお、画像形成装置1は、上記に限らず、中間転写ベルト25を介さずに、感光体ドラム20から記録媒体に直接転写する直接転写方式の装置であってもよいし、単色のトナー画像を形成する装置(例えば、モノクロ機)であってもよい。
【0016】
具体的には、画像形成装置1は、CPU10と、メモリ11と、露光装置22と、中間転写ベルト25と、二次転写装置26と、定着装置27と、排出トレイ28と、カセット31と、給紙ローラ32と、を有している。また、画像形成装置1は、レジストローラ33と、対向ローラ34と、排紙ローラ35と、カセットヒーター37と、読み取り装置160と、操作部180と、画像形成部200Y、200M、200C、200Kと、を有している。
【0017】
なお、
図2において、画像形成部200Y、200M、200C、200Kを纏めて画像形成部200として記載する。
【0018】
制御手段としてのCPU10は、メモリ11に記憶されている制御プログラムを実行することにより画像形成装置1の動作を制御する。CPU10は、操作部180より入力される電気信号に基づいて、定着装置27を含む各部の動作を制御して後述の温度制御処理を実行する。CPU10は、定着装置27の温度センサTH1から入力される電気信号の示す温度と閾値温度との比較結果に基づいて、定着装置27の定着ベルト100が目標温度(例えば、180℃)に維持されるように定着装置27を制御する。CPU10は、記録媒体Pにおける紙シワ又は後端ハネの発生を抑制するために、操作部180より入力される電気信号に基づいて上記の閾値温度を補正する。
【0019】
メモリ11は、制御プログラム及びデータを記憶している。なお、メモリ11が記憶している制御プログラムは、CPU10が内蔵する図示しない記憶手段に記憶されていても良い。
【0020】
露光装置22は、帯電された感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kの表面を画像データに応じて露光することによって、感光体ドラム20Y、20M、20C、20K上に静電潜像を形成する。
【0021】
中間転写ベルト25は、無端状ベルトである。中間転写ベルト25には、画像形成部200Y、200M、200C、200Kの一次転写装置24Y、24M、24C、24Kによって、Y、M、C及びKの全色のトナー画像が順次一次転写及び重畳されてフルカラーのトナー画像が形成される。ここで、Yはイエロー、Mはマゼンタ、Cはシアン及びKはブラックである。
【0022】
二次転写装置26は、対向ローラ34と共に中間転写ベルト25を介して転写ニップ部を形成している。二次転写装置26は、転写ニップ部において、中間転写ベルト25上に形成されたフルカラーのトナー画像を、レジストローラ33より搬送されてくる用紙等の記録媒体Pに一括して二次転写させる。
【0023】
ここで、記録媒体Pは、普通紙、コート紙、厚紙、薄紙、封筒又はOHPシート等である。以下の説明においては、説明の便宜上、用紙(記録紙)、通紙、給紙又は排紙等の紙に纏わる用語を用いて説明する。なお、記録媒体Pとしては、少なくとも紙を用いることができるものの、紙のみに限定されるものではない。
【0024】
定着装置27は、二次転写装置26より搬送されてくる記録媒体P上に形成された未定着のトナー画像に熱と圧力とを加えて、未定着のトナー画像を記録媒体に定着させる定着処理を行う。定着装置27は、定着処理した記録媒体Pを排紙ローラ35に向けて搬送する。なお、定着装置27の構成の詳細については後述する。
【0025】
排出トレイ28は、排紙ローラ35より排出される記録媒体Pを積載する。
【0026】
格納部としてのカセット31は、記録媒体Pを収容して格納する。
【0027】
給紙ローラ32は、カセット31に収容されている記録媒体Pを1枚ずつ分離してレジストローラ33に向けて給送する。
【0028】
レジストローラ33は、給紙ローラ32により搬送されてくる記録媒体Pの搬送を一旦停止する。レジストローラ33は、中間転写ベルト25上に形成されたトナー画像が記録媒体Pの所定の位置に転写されるように、中間転写ベルト25上のトナー画像が転写ニップ部に到達するタイミングに合わせて、記録媒体Pを転写ニップ部に搬送する。
【0029】
対向ローラ34は、中間転写ベルト25の内側に設けられている。
【0030】
排紙ローラ35は、定着装置27より搬送されてくる記録媒体Pを排出トレイ28に排出する。
【0031】
第1の加熱手段としてのカセットヒーター37は、CPU10の制御により、カセット31に収容されている記録媒体Pが吸湿しないようにカセット31に収容されている記録媒体Pを加熱する。
【0032】
読み取り装置160は、画像形成装置1の上部に設けられている。読み取り装置160には、何れも図示しない操作者により原稿が載置される原稿台、原稿台に載置された原稿を遮蔽するための原稿カバー、及び原稿台に載置された原稿の画像情報を読み取るCCDを有する原稿読み取り部が設けられている。読み取り装置160は、原稿読み取り部によって読み取った原稿の画像情報をCPU10に出力する。
【0033】
設定手段としての操作部180は、操作者により各種の情報が入力される入力手段、及び各種の情報を表示する表示手段として機能する。操作部180は、入力手段に対する操作者の操作に応じた電気信号をCPU10に出力する。具体的には、操作部180は、操作者の操作によりコピースタートの指示が入力された場合に、コピースタートの指示を示す電気信号をCPU10に出力する。操作部180は、操作者の操作によりトナー画像を形成すべき用紙等の記録媒体Pのサイズ、種類及び枚数等に対応する情報が入力された場合に、入力された情報に応じた電気信号をCPU10に出力する。
【0034】
画像形成手段としての画像形成部200Y、200M、200C、200Kは、画像形成装置1の装置本体1Aの内部において直列に配置されている。画像形成部200Y、200M、200C、200Kは、可視画像化するまでのプロセスをY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)及びK(ブラック)の各色で並列処理するタンデム方式を採用している。画像形成部200Y、200M、200C、200Kは、CPU10の制御によりトナー画像を形成し、形成したトナー画像を中間転写ベルト25に転写する。なお、画像形成部200Y、200M、200C、200Kは、
図1に示す順序で配列される場合に限らず、任意の順序で配列される。
【0035】
画像形成部200Y、200M、200C、200Kは、感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kと、一次帯電装置21Y、21M、21C、21Kと、露光装置22Y、22M、22C、22Kと、を備えている。また、画像形成装置200Y、200M、200C、200Kは、現像装置23Y、23M、23C、23Kと、一次転写装置24Y、24M、24C、24Kと、を備えている。なお、画像形成部200Y、200M、200C、200Kは、図示しないクリーニング装置も備えている。
【0036】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kは、
図1において反時計回りの方向に回転駆動される。
【0037】
一次帯電装置21Y、21M、21C、21Kは、電圧が印加されることにより対応する感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kの表面を一様に帯電させる。
【0038】
露光装置22Y、22M、22C、22Kは、帯電された感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kの表面を、画像データに応じて露光することによって感光体ドラム20Y、20M、20C、20K上に静電潜像を形成する。
【0039】
現像装置23Y、23M、23C、23Kは、感光体ドラム20Y、20M、20C、20K上に形成された静電潜像を、トナー(現像剤)を用いて現像することによりトナー画像として可視化させる。現像装置23Y、23M、23C、23Kは、例えばトナーを負に帯電させて感光体ドラム20Y、20M、20C、20K上に供給する。
【0040】
一次転写装置24Y、24M、24C、24Kは、現像装置23によって現像された感光体ドラム20Y、20M、20C、20K上のトナー画像を中間転写ベルト25上に順次重ねて一次転写させる。
【0041】
なお、図示しないクレーニング装置は、一次転写後に感光体ドラム20Y、20M、20C、20K上に残留したトナーを除去する。
【0042】
上記の構成を有する画像形成装置1において、トナー画像を形成すべき記録媒体Pのサイズ又は種類の指示は、操作部180から入力されるものに限らない。例えば、画像形成装置1は、操作部180より記録媒体Pのサイズ又は種類の指示がない場合に、トナー画像を形成すべき記録媒体Pのサイズを読み取り装置160が読み取った原稿のサイズに合わせる構成としてもよい。
【0043】
また、画像形成装置1は、プリンタとしても使用可能である。具体的には、画像形成装置1は、何れも図示しないLANケーブルを介して外部のパーソナルコンピュータと接続可能な構成とし、接続されている外部のパーソナルコンピュータから入力された画像情報に基づいて画像形成を実行する。この際に、CPU10には、トナー画像を形成すべき記録媒体Pのサイズ、種類及び枚数に対応する情報も、接続されている外部のパーソナルコンピュータより入力される。この場合、画像形成装置1には、外部のパーソナルコンピュータより画像情報と共にプリントスタートの指示を示す電気信号が入力される。
【0044】
なお、画像形成装置1は、接続されている外部のパーソナルコンピュータより画像情報が入力されても直ぐに画像形成を開始せずに、操作部180よりプリントスタートの指示を示す電気信号が入力されてから画像形成を開始する構成としても良い。
【0045】
<定着装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る画像形成装置1の定着装置27の構成について、
図2から
図6を参照しながら、詳細に説明する。
【0046】
図4において、
図4(a)は、誘導加熱装置300の斜視図であり、
図4(b)は、ステー102及び内部コア104の斜視図である。
【0047】
定着装置27は、定着ベルト100と、パッド部材101と、ステー102と、定着パッド103と、内部コア104と、フランジ105と、分離ガイド106と、誘導加熱装置300と、を備えている。また、定着装置27は、加圧ローラ600と、温度センサTH1と、中央ファンTH2と、端部ファンTH3と、を備えている。
【0048】
定着ベルト100は、金属層を有する無端状の回転可能なベルトである。定着ベルト100は、記録媒体Pの未定着のトナー画像を担持する側の面と当接する定着部材である。
【0049】
パッド部材101は、定着ベルト100の内側に設けられている。パッド部材101は、耐熱性の樹脂によって形成されており、加圧ローラ600側に定着パッド103を保持している。パッド部材101は、定着ベルト100と加圧ローラ600との間に押圧力を作用させて定着ニップ部Nを形成する部材である。
【0050】
ステー102は、パッド部材101及び内部コア104を保持している。
【0051】
定着パッド103は、ステンレス等の金属又はセラミックス等の硬度の高い材質によって形成されている。定着パッド103は、定着ベルト100の長手方向(
図3において紙面に対して直交する方向)に沿って延設されており、厚さ1mm程度である。
【0052】
内部コア104は、誘導加熱をより効果的に行うために、定着ベルト100の内側のステー102の誘導加熱装置300側に設けられている。内部コア104は、誘導加熱装置300の後述の励磁コイル301に高周波電流を印加することにより発生する磁束がより効率的に定着ベルト100の加熱に用いられるように、磁束を遮蔽するフェライト等の高透磁率の材料によって形成されている。
【0053】
フランジ105には、分離ガイド106が係合している。
【0054】
分離ガイド106は、定着ニップ部Nを通過する記録媒体Pが定着ベルト100に巻き付かないように、記録媒体Pの搬送方向において定着ニップ部Nの下流側に設けられているガイド部材である。分離ガイド106は、定着ベルト100と接触して定着ベルト100に傷をつけないように、定着ベルト100に対して間隔(隙間)を設けて配置されている。分離ガイド106は、図示しないバネ等の付勢手段により付勢された状態でフランジ105に係合している。
【0055】
第2の加熱手段としての誘導加熱装置300は、定着ベルト100の外周面の上面側において、定着ベルト100との間に所定のギャップ(隙間)を空けて配設されている。誘導加熱装置300は、定着ベルト100を誘導加熱する加熱源であり、定着ベルト100を発熱させる。なお、誘導加熱装置300の構成の詳細については後述する。
【0056】
加圧部材としての加圧ローラ600は、定着ベルト100の外周に当接するように配設されている。加圧ローラ600は、定着ベルト100を介してパッド部材101に圧接することにより、定着ベルト100との間で定着ニップ部Nを形成している。加圧ローラ600は、
図3に示すように、外径が30mmの金属製の芯金600aと、ゴム層である弾性層600bと、離型層600cと、を積層して構成されている。離型層600cは、加圧ローラ600の表層であり、フッ素樹脂層(例えば、PFA又はPTFE)である。
【0057】
検知手段としての温度センサTH1は、例えばサーミスタ等の温度検知素子であり、定着ベルト100の記録媒体の搬送方向に直交する幅方向(以下、単に「幅方向」と記載する)の中央部において、定着ベルト100の内面に接触するように設けられている。温度センサTH1は、CPU10に接続されており、定着ベルト100の温度を検知して、検知した温度に応じた電気信号をCPU10に出力する。
【0058】
中央ファン(中央FAN)TH2は、CPU10の制御により駆動する。中央ファンTH2は、駆動した際に加圧ローラ600の幅方向の中央部に送風して、加圧ローラ600の幅方向の中央部からの放熱を促す。
【0059】
端部ファン(端部FAN)TH3は、CPU10の制御により駆動する。端部ファンTH3は、駆動した際に加圧ローラ600の幅方向の端部に送風して、加圧ローラ600の幅方向の端部からの放熱を促す。
【0060】
上記の構成を有する定着装置27において、定着ベルト100と加圧ローラ600とは、一対の回転体として協働して定着ニップ部Nを形成する。定着装置27は、定着ニップ部Nにおいて記録媒体Pを挟持搬送することにより、トナー画像を担持する記録媒体Pに熱と圧力とを加えて、記録媒体Pにトナー画像を定着させる。
【0061】
<誘導加熱装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る画像形成装置1の誘導加熱装置300の構成について、
図2から
図6を参照しながら、詳細に説明する。
【0062】
誘導加熱装置300は、励磁コイル301と、外側磁性体コア302と、コイル保持部材303と、を備えている。
【0063】
励磁コイル301は、横長及び船底状の例えばリッツ線等の電線を定着ベルト100の周面及び側面の一部に対向するように巻回して構成されている。励磁コイル301には、CPU10の制御により、定着ベルト100が目標温度(例えば、180℃)に維持されるように図示しない電源装置(励磁回路)から電力が供給される。励磁コイル301には、定着ベルト100が回転している状態において、例えば電源装置より20kHzから60kHzの高周波電流が供給される。励磁コイル301は、高周波電流が供給されることにより磁束を発生して定着ベルト100の金属層(導電層)を誘導発熱させる。
【0064】
外側磁性体コア302は、励磁コイル301より発生した磁束が定着ベルト100の金属層以外に漏れないように励磁コイル301を覆っている。外側磁性体コア302は、励磁コイル301に高周波電流が供給されることにより発生した磁束が、より効率的に定着ベルト100の加熱に用いられるように、磁束を遮蔽するフェライト等の高透磁率の材料によって形成されている。
【0065】
コイル保持部材303は、励磁コイル301と外側磁性体コア302とを支持する厚さ2mm程度の電気絶縁性を有する樹脂である。
【0066】
なお、画像形成装置1は、誘導加熱装置300により電磁誘導方式によって定着ベルト100を加熱したが、これに限らず、例えば、定着ベルト100の内側にハロゲンヒーター、セラミックヒータ又は赤外線ランプ等の加熱源を設けてもよい。また、このような定着ベルト100の加熱源は、定着ベルト100の外側に設ける構成としても良い。更に、加圧ローラ600を加熱する加熱源を設ける構成としても良い。
【0067】
<定着ベルトの構成>
本発明の実施の形態1に係る画像形成装置1の定着ベルト100の構成について、
図6を参照しながら、詳細に説明する。
【0068】
定着ベルト100は、内側から外側に向かって、滑性層100d、基層100a、弾性層100b及び離型層100cの順に積層されて構成されている。
【0069】
基層100aは、内径が20~40mm程度の金属層である。基層100aは、鉄合金、ニッケル合金、銅及び銀等を適宜選択して形成されている。定着ベルト100の外径は、ここでは30mmを例示する。基層100aの内径は、ここでは約29.6mmを例示する。
【0070】
弾性層100bは、基層100aの外周に設けられており、耐熱性ゴム層である。弾性層100bの厚さは、100μmから800μmの範囲内で設定されるのが好ましい。弾性層100bの厚さは、ここでは定着ベルト100の熱容量を小さくしてウォーミングアップタイムを短縮し、且つ、カラー画像を定着するときに好適な定着画像を得ることを考慮して200μmを例示する。
【0071】
離型層100cは、定着ベルト100の表面抵抗が1.0E+6(Ω)以上となるように、弾性層100bの外周に定着ベルト100の表層として設けられている。離型層100cは、トナーに対する離型性を高めるために、フッ素樹脂(例えば、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン))によって形成されている。離型層100cの厚さは、ここでは40μmを例示する。なお、離型層100cは、上述の表面抵抗を満たす範囲で、フッ素樹脂に加えてカーボンブラックを含有する構成としても良い。
【0072】
滑性層100dは、基層100aの内面側に設けられており、温度センサTH1に当接している。滑性層100dは、温度センサTH1との摺動摩擦を低下させるために、摺動性が高くなるように構成されている。滑性層100dの厚さは、10μmから50μmであることが好ましい。滑性層100dは、ここでは30μmのポリイミド層を例示する。滑性層100dの表面には、定着ベルト100の内面の潤滑性を維持するために潤滑剤としての耐熱性グリスが塗布されている。
【0073】
<紙シワ及び後端ハネの防止>
本発明の実施の形態1に係る画像形成装置1における紙シワ及び後端ハネの防止について、
図7及び
図8を参照しながら、詳細に説明する。
【0074】
図7において、
図7(a)は、紙シワ602が発生した状態を示しており、
図7(b)は、後端ハネ603が発生した状態を示している。また、
図7において、矢印は記録媒体Pの通紙方向(搬送方向)を示している。
【0075】
図8において、
図8(a)は、記録媒体Pの幅方向の中央部の送り速度Vcが端部の送り速度Veよりも早い状態を示しており、
図8(b)は、記録媒体Pの幅方向の中央部の送り速度Vcが端部の送り速度Veよりも遅い状態を示している。また、
図8において、矢印の長さは送り速度の速さを表しており、矢印の長さが長いほど送り速度が速いことを示している。
【0076】
剛度の低い薄紙の記録媒体Pには、高温多湿環境において定着ニップ部Nを通過する際に、
図7(a)に示すように、紙シワ602を生じる場合がある。特に定着装置27が冷えた状態の立ち上げ時には、記録媒体Pが通過する通紙領域において、幅方向の端部が中央部よりも放熱しやすいため、中央部の温度が端部の温度に比べて高くなり、加圧ローラ600の幅方向の中央部の外径が端部の外径よりも大きくなる。この状態において定着ニップ部Nに記録媒体Pを通過させる場合には、端部の送り速度Veに対して中央部の送り速度Vcが速くなる。この送り速度の差により、記録媒体Pの搬送方向の後方部分において幅方向の端部が中央側に寄っていく歪が発生して紙シワ602が発生する。
【0077】
このような定着ニップ部Nにおける紙シワ602の発生を抑制するために、定着装置27は、幅方向の中央部の圧力と比較して端部の圧力が高くなるような圧分布を形成する。
【0078】
具体的には、CPU10は、定着ニップ部Nにおける幅方向の中央部の温度と端部の温度との温度差を制御して加圧ローラ600の幅方向の中央部の外径と端部の外径との外径差を変化させる。これにより、CPU10は、幅方向の中央部の送り速度Vcに対して端部の送り速度Veを速くすると共に(Vc<Ve)、幅方向の中央部の圧力と比較して端部の圧力が高くなるような圧分布を形成して、紙シワ602の発生を抑制する。
【0079】
一方、幅方向の中央部の送り速度Vcに対して端部の送り速度Veを速くし過ぎる場合には、記録媒体Pの搬送方向の後端部において中央部から端部に開くような歪が発生する。このような歪により、
図7(b)に示すように、搬送方向の後端側に画質を低下させる要因となる後端ハネ603が発生する。
【0080】
このような定着ニップ部Nにおける後端ハネ603の発生を抑制するために、CPU10は、幅方向の中央部の圧力と比較して端部の圧力が低くなるような圧分布を形成する。
【0081】
具体的には、CPU10は、定着ニップ部Nにおける幅方向の中央部の温度と端部の温度との温度差を制御して加圧ローラ600の幅方向の中央部の外径と端部の外径との外径差を変化させる。これにより、CPU10は、中央部の送り速度Vcに対して端部の送り速度Veを遅くすると共に(Vc>Ve)、幅方向の中央部の圧力と比較して端部の圧力が低くなるような圧分布を形成して、後端ハネ603の発生を抑制する。
【0082】
このように、紙シワ602及び後端ハネ603は、加圧ローラ600の幅方向の中央部の温度と端部の温度との温度差に伴う搬送速度差に起因して発生する。従って、紙シワ602の発生を抑制するためには、定着ベルト100の幅方向の中央部を冷却すると共に端部を加熱することが考えられる。また、後端ハネ603の発生を抑制するためには、定着ベルト100の幅方向の中央部を加熱すると共に端部を冷却することが考えられる。一方、冷却に伴い定着ベルト100の表面温度も低下してしまうが、必要な定着性は満たす必要がある。
【0083】
CPU10は、上述の条件を満たすために、プリント待機中である前回転時の待機温度と、未定着のトナー画像を記録媒体Pに定着させる際の温調温度と、中央ファンTH2及び端部ファンTH3の送風の開始及び停止のタイミングと、を変更する。これにより、画像形成装置1は、紙シワ602及び後端ハネ603の発生を抑制することができる。
【0084】
例えば、CPU10は、紙シワ602の発生を抑制するためにより強く補正をしたい場合に、中央ファンTH2を停止させる温度を通常時より高く設定し、前回転時の待機温度を通常時より高く設定すると共に、温調温度を通常時より低く設定する。これにより、中央ファンTH2の停止を遅くすることができ、幅方向の中央部の温度に対して端部の温度を高くすることができる。
【0085】
また、CPU10は、後端ハネ603の発生を抑制するためにより強く補正をしたい場合に、上述の紙シワ602の場合の制御と逆の制御を行う。即ち、CPU10は、中央ファンTH2を停止させる温度を通常時より低く設定し、前回転時の待機温度を通常時より低く設定する。これにより、中央ファンTH2の停止を早くすることができ、中央部の温度に対して端部の温度を低くすることができる。
【0086】
<カセットヒーターのON又はOFFによる記録媒体の剛度の変化>
本発明の実施の形態1に係る画像形成装置1におけるカセットヒーター37のON又はOFFによる記録媒体Pの剛度の変化について、
図9を参照しながら、詳細に説明する。
【0087】
一般に、紙シワ602は、記録媒体Pの剛度に相関があることが知られている。紙シワ602は、記録媒体Pの剛度が大きいほど発生しづらく、記録媒体Pの剛度が小さいほど発生しやすい。記録媒体Pの剛度は、記録媒体Pが含んでいる水分量(以下、「含有水分量」と記載する)によって大きく変化する。画像形成装置1は、このような記録媒体Pの含有水分量による剛度の低下を抑制するために、記録媒体Pを収納しているカセット31にカセットヒーター37を設けて、記録媒体Pの含有水分量を管理している。
【0088】
画像形成装置1の設置された環境が高温多湿の場合において、記録媒体Pの含有水分量は、カセットヒーター37がOFFの場合に、記録媒体Pが周囲の水分を吸湿することにより上昇する。この場合には、記録媒体Pの剛度は低下する。
【0089】
一方、記録媒体Pの含有水分量は、カセットヒーター37がONの場合に、僅かに上昇するものの、記録媒体Pが周囲の水分を吸湿し難いことにより、カセットヒーター37がOFFの場合に比べて抑制される。この場合には、記録媒体Pの剛度の低下は抑制される。
【0090】
このように、記録媒体Pの含有水分量は、カセットヒーター37のONとOFFとで差分Sを生じる。従って、CPU10は、カセットヒーター37のON及びOFFに応じて、冷却ファンを停止させる閾値となる温度等の設定値を変更する。これにより、記録媒体Pの剛度に起因する紙シワ602の補正不足による紙シワ602の発生、又は記録媒体Pの剛度に起因する紙シワ602の過剰な補正による後端ハネ603の発生を抑制することができる。
【0091】
<温度制御処理>
本発明の実施の形態1に係る画像形成装置1が実行する温度制御処理について、
図10及び
図11を参照しながら、詳細に説明する。
【0092】
ここで、操作部180は、
図10に示すように、操作者による指示が入力される操作ボタン部180Aと、各種のメッセージ等の情報を表示する表示部180Bと、を備えている。表示部180Bは、タッチパネル方式の液晶画面であり、各種の情報に加えて、操作ボタン(キー)も表示する。画像形成装置1にプリント動作を行わせるための各種の設定は、表示部180Bに表示される操作ボタンによっても入力可能になっている。例えば、操作者によるコピースタート又はプリントスタート等の指示は、操作部180より入力可能になっている。
【0093】
図11に示す温度制御処理は、画像形成装置1が図示しない電源スイッチがオンされることにより通電命令を受けて立ち上げ制御へ移行後に、プリント命令の入力を待機する状態となることにより開始される。ここで、プリント命令とは、画像形成部200への画像形成処理の実行命令であり、例えば操作部180又は図示しない外部のパーソナルコンピュータからのプリントスタートの指示である。また、CPU10は、メモリ11に記憶された制御プログラムを実行することにより
図11に示す温度制御処理を実行する。
【0094】
まず、CPU10は、プリント命令が入力された場合に、入力されたプリント命令よりシート情報を取得すると共に、カセットヒーター37がONされているか否かのカセットヒーターの情報を取得する(S1)。ここで、シート情報は、トナー画像を形成する記録媒体Pのサイズ、坪量及び種別の情報であり、操作者による指示として操作部180又は外部のパーソナルコンピュータよりCPU10によって取得される。
【0095】
次に、CPU10は、取得したカセットヒーターの情報に基づいて、カセットヒーター37がONされているか否かを判定する(S2)。
【0096】
CPU10は、カセットヒーター37がONされている場合に(ステップS2:Yes)、メモリ11に記憶されているカセットヒーターON用の専用テーブルの補正値を設定する(S3)。これにより、CPU10は、設定した専用テーブルの補正値によって閾値温度を補正して、温度センサTH1より入力される電気信号の示す温度が閾値温度以上の場合に、中央ファンTH2又は端部ファンTH3を駆動させる。
【0097】
次に、CPU10は、JOBを開始して(S4)、その後に温度制御処理を終了する。
【0098】
一方、CPU10は、カセットヒーター37がOFFの場合に(ステップS2:No)、メモリ11に記憶されているカセットヒーターOFF用の通常テーブルの補正値を設定する(S5)。これにより、CPU10は、設定した通常テーブルの補正値によって閾値温度を補正して、温度センサTH1より入力される電気信号の示す温度が閾値温度以上の場合に、中央ファンTH2又は端部ファンTH3を駆動させる。そして、CPU10は、その後にステップS4の処理を実行する。
【0099】
ここで、
図12は、カセットヒーターOFF用の通常テーブルの一例を示しており、
図13は、カセットヒーターON用の専用テーブルの一例を示している。
図12及び
図13において、中央FANOFF温度は、中央ファンTH2の駆動を停止させる閾値温度を補正する補正値であり、端部FANON温度は、端部ファンTH3の駆動を開始させる閾値温度を補正する補正値である。また、前回転時待機温度は、前回転時に設定される待機温度を補正する補正値であり、温調温度は、温調温度の補正値である。
【0100】
補正レベルは、1から5までの5段階で設定可能としている。補正レベル1及び2の補正値は、記録媒体Pの後端ハネ603に対する補正値であり、数字が小さいほど補正値が大きくなる。また、補正レベル4及び5の補正値は、記録媒体Pの紙シワ602に対する補正値であり、数字が大きいほど補正値が大きくなる。
【0101】
図13に示す専用テーブルにおける中央FANOFF温度の補正値は、補正レベル1、2、4及び5において、
図12に示す通常テーブルの中央FANOFF温度の補正値よりも絶対値が小さい。また、
図13に示す専用テーブルにおける端部FANON温度の補正値は、補正レベル1及び2において、
図12に示す通常テーブルの端部FANON温度の補正値よりも絶対値が小さい。なお、専用テーブル及び通常テーブルにおいて、補正レベル3は、補正値が0であるため補正しない場合を示している。
【0102】
CPU10は、
図13に示す専用テーブルを使用することにより、
図12に示す通常テーブルを使用する場合に比べて、幅方向の中央部の温度と端部の温度との温度差が小さくなるように制御する。
【0103】
例えば、CPU10は、紙シワ602を補正するために補正レベル5が設定されている場合に、専用テーブル使用時の中央ファンTH2を停止させる閾値温度を、通常テーブル使用時の中央ファンTH2を停止させる閾値温度よりも低温度にする。このため、CPU10は、専用テーブル使用時の中央ファンTH2を停止させる閾値温度の補正値(10℃)を、通常テーブル使用時の中央ファンTH2を停止させる閾値温度の補正値(15℃)よりも小さくする。即ち、CPU10は、専用テーブル使用時の閾値温度の補正量を、通常テーブル使用時の閾値温度の補正量よりも小さくする。
【0104】
これにより、CPU10は、専用テーブル使用時における中央ファンTH2の送風開始のタイミングを、通常テーブル使用時における中央ファンTH2の送風開始のタイミングよりも早くすることができる。または、CPU10は、専用テーブル使用時における中央ファンTH2の送風停止のタイミングを、通常テーブル使用時における中央ファンTH2の送風停止のタイミングよりも遅くすることができる。
【0105】
これに加えて、CPU10は、専用テーブル使用時の温調温度を、通常テーブル使用時の温調温度よりも低温度にする。このため、CPU10は、専用テーブル使用時の温調温度の補正値(-5℃)の絶対値を、通常テーブル使用時の温調温度の補正値(-10℃)の絶対値よりも小さくする。即ち、CPU10は、専用テーブル使用時の温調温度の補正量を、通常テーブル使用時の温調温度の補正量よりも小さくする。
【0106】
この結果、専用テーブル使用時における幅方向の中央部の温度と端部の温度との温度差を、通常テーブル使用時における幅方向の中央部の温度と端部の温度との温度差よりも小さくすることができ、紙シワ602の過剰な補正を抑制することができる。
【0107】
一方、例えば、CPU10は、後端ハネ603を補正するために補正レベル2が設定されている場合に、専用テーブル使用時の中央ファンTH2を停止させる閾値温度を、通常テーブル使用時の中央ファンTH2を停止させる閾値温度よりも高温度にする。このため、CPU10は、専用テーブル使用時の中央ファンTH2を停止させる閾値温度の補正値(-3℃)の絶対値を、通常テーブル使用時の中央ファンTH2を停止させる閾値温度の補正値(-5℃)の絶対値よりも小さくする。即ち、CPU10は、専用テーブル使用時の閾値温度の補正量を、通常テーブル使用時の閾値温度の補正量よりも小さくする。
【0108】
これにより、CPU10は、専用テーブル使用時における中央ファンTH2の送風開始のタイミングを、通常テーブル使用時における中央ファンTH2の送風開始のタイミングよりも遅くすることができる。または、CPU10は、専用テーブル使用時における中央ファンTH2の送風停止のタイミングを、通常テーブル使用時における中央ファンTH2の送風停止のタイミングよりも早くすることができる。
【0109】
この結果、専用テーブル使用時における幅方向の中央部の温度と端部の温度との温度差を、通常テーブル使用時における幅方向の中央部の温度と端部の温度との温度差よりも小さくすることができ、後端ハネ603の発生を抑制することができる。
【0110】
CPU10は、上記の温度制御処理の終了後に、設定された補正値に基づいて記録媒体Pに画像を形成する。
【0111】
このように、CPU10は、高温多湿の環境においてカセットヒーター37がONの場合に、カセットヒーターOFF用の通常テーブルからカセットヒーターON用の専用テーブルに切り替えて補正値を設定する。これにより、カセットヒーター37による記録媒体Pの剛度変化に応じた最適な補正値で画像を形成することが可能となり、過剰な補正による後端ハネ603に起因する画像不良を発生させることなく、また紙シワ602の発生を抑制することができる。
【0112】
ここで、紙シワ602の補正の強さは、ユーザーのニーズに応じて、操作者が操作部180の表示部180Bによって設定できる。
【0113】
具体的には、CPU10は、操作者により操作部180に紙シワ602の補正の強さの選択画面を表示させる指示が入力された場合に、表示部180Bに紙シワ602の補正の強さの選択画面を表示させる。例えば、CPU10は、
図10に示すように、表示部180Bに「シワ補正レベルの設定」のソフトキー180Cを表示させる。CPU10は、表示部180Bに表示させた「シワ補正レベルの設定」のソフトキー180Cが押下された場合に、紙シワ602の補正レベルを設定する。
【0114】
CPU10は、設定された補正レベルをメモリ11に記憶させ、メモリ11に記憶させた補正レベルに応じて紙シワ602及び後端ハネ603を抑制する。これにより、ユーザーは自身のニーズに応じて、紙シワ602及び後端ハネ603を抑制するための補正レベルを選択することができる。
【0115】
本実施の形態では、定着ニップ部における記録媒体Pの搬送方向に直交する幅方向の中央部の温度と端部の温度とを制御する。また、記録媒体Pをカセットヒーター37により加熱する場合の中央部の温度と端部の温度との温度差が、記録媒体Pをカセットヒーター37により加熱しない場合の温度差よりも小さくなるように制御する。これにより、記録媒体Pを格納するカセット31において記録媒体Pを加熱する場合に、定着装置27における画像不良を抑制することができる。
【0116】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。
【0117】
具体的には、上記の実施の形態において、補正レベルを5段階にしたが、これに限らず、補正レベルを10段階等の任意の段階にすることができる。
【0118】
また、上記の実施の形態において、通常テーブルと専用テーブルとにおける中央FANOFF温度、前回転時待機温度、端部FANON温度及び温調温度の補正値を異ならせた。しかしながら、これに限らず、通常テーブルと専用テーブルとにおける、中央FANOFF温度及び端部FANON温度の補正値のみを異ならせてもよいし、中央FANOFF温度の補正値のみを異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 画像形成装置
1A 装置本体
10 CPU
11 メモリ
25 中間転写ベルト
26 二次転写装置
27 定着装置
31 カセット
32 給紙ローラ
33 レジストローラ
37 カセットヒーター
100 定着ベルト
100a 基層
100b 弾性層
100c 離型層
100d 滑性層
101 パッド部材
102 ステー
103 定着パッド
104 内部コア
105 フランジ
106 分離ガイド
160 読み取り装置
180 操作部
180A 操作ボタン部
180B 表示部
180C ソフトキー
200 画像形成部
300 誘導加熱装置
600 加圧ローラ
TH1 温度センサ
TH2 中央ファン
TH3 端部ファン