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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183030
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】抗菌性繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/267 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
D06M15/267
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096394
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】中之庄 正弘
(72)【発明者】
【氏名】仁科 彰
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA02
4L033AA05
4L033AB01
4L033AB04
4L033AC10
4L033BA16
4L033CA19
(57)【要約】
【課題】
本発明は、繊維の変色を抑制し、多様な繊維に抗菌性を付与することが可能であり、具体的には親水性の異なる幅広い繊維に対して効率的に抗菌性を付与できることを特徴とする、繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
アミノ基含有単量体由来の構造単位および単独重合体に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位を有する共重合体(A)を含む溶液を用いて処理する工程を含む繊維の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基含有単量体由来の構造単位および単独重合体に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位を有する共重合体(A)を含む溶液を用いて処理する工程を含む繊維の製造方法。
【請求項2】
前記溶液がpHを2.0以上13.0以下であり、前記繊維が親水性繊維である請求項1に記載の繊維の製造方法。
【請求項3】
前記溶液がpHを2.0以上13.0以下であり、前記繊維が疎水性繊維である請求項1に記載の繊維の製造方法。
【請求項4】
前記共重合体(A)の含有量が、繊維1平方メートル当たり0.01g~10gである、請求項1~3のいずれかに記載の繊維の製造方法。
【請求項5】
前記溶液100質量における共重合体(A)の含有量が0.1質量部以上30質量部以下である請求項1~4のいずれかに記載の繊維の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の製造方法により得られた繊維を用いて成形する工程を含む繊維構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性を有する繊維の製造方法に関する。より詳しくは、カチオン性基含有共共重合体(A)を含む溶液を用いて処理する工程を含む繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の清潔志向及び衛生上の観点から、抗菌加工が施された種々のものが市販されている。抗菌加工品に使用される抗菌剤についても種々のものが開発され、無機系及び有機系の抗菌剤が開発されている。無機系抗菌剤とは抗菌性を有する金属を含むものであり、抗菌性を有する金属としては銀や銅、亜鉛等が挙げられる。また、有機系抗菌剤としては、塩素、ヨードの化合物、フェノール、アルコール、ホルマリン及び4級アンモニウム等の有機化合物やそれらを含有するポリマーなどが挙げられる。
例えば特許文献1には、銀系化合物を含有するアクリロニトリル系繊維にpH1~6の範囲内で熱処理を施してなる銀担持アクリロニトリル系繊維を繊維構造物の構成繊維として5~15重量%含有せしめることを特徴とする繊維構造物の抗菌抗黴性能付与方法が記載されている。
また特許文献2には、繊維材料からなる基材シートに液剤が含浸されてなるウエットシートであって、前記液剤は、(A)乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸若しくはこれらの酸の塩、又はこれらの酸及び塩から選択される2種以上の組み合わせ、(B)第四級アンモニウム塩型界面活性剤、及び(C)水、を含有するとともにエタノールを非含有であり、且つ25℃におけるpHが3.0以上6.0未満である、ウエットシートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-249609号公報
【特許文献2】特開2020-199090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献記載の態様は抗菌性を有するものの、特許文献1に記載の銀系化合物は繊維の黄変や塩化物イオン等の存在による変質(白変)を引き起こすことが懸念され、特許文献2に記載の第四級アンモニウム塩型化合物は繊維からの流出や幅広い繊維への付着が困難であるとの課題があることが判明した。
本発明は、繊維の変色を抑制し、多様な繊維に抗菌性を付与することが可能であり、具体的には親水性の異なる幅広い繊維に対して効率的に抗菌性を付与できることを特徴とする、繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。
すなわち本発明はアミノ基含有単量体由来の構造単位および単独重合体に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位を有する共重合体(A)を含む溶液を用いて処理する工程を含む繊維の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、繊維の変色を抑制し、多様な繊維に抗菌性を付与することが可能であり、具体的には親水性の異なる幅広い繊維に対して効率的に抗菌性を付与できることを特徴とする、繊維の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の繊維の製造方法は、アミノ基含有単量体由来の構造単位および単独重合体に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位を有する共重合体(A)を含む溶液を用いて処理する工程を含むことを特徴とする。
本明細書において、「樹脂」は「重合体(ポリマー)」よりも広い概念である。樹脂は、例えば1種または2種以上の重合体からなってもよいし、必要に応じて、ポリマー以外の材料、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤、相溶化剤、安定化剤などを含んでいてもよい。
本開示の「単量体由来の構造単位」とは、例えば重合反応によって、各不飽和二重結合を有する単量体のエチレン性不飽和二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が単結合(-C-C-)となった構造)に相当し、当該不飽和二重結合を有する単量体を重合することによって得ても良いし、後変性によりそれら構造を得ても良い。
【0008】
<共重合体(A)>
本開示の共重合体(A)は、アミノ基含有単量体由来の構造単位を有する。
本開示のアミノ基含有単量体由来の構造単位とは、アミノ基を含有する単量体由来の構造単位であって、例えば、第1~3級アミノ基、第1~3級アミノ基の酸による中和物、第4級アンモニウム塩基等が挙げられ、第3級アミノ基、第3級アミノ基の酸による中和物又は第4級アンモニウム塩基が好ましい。第3級アミノ基又は第3級アミノ基の酸による中和物としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基又はこれらの塩酸、酢酸、クエン酸等の酸による中和物が好ましい。
本開示の第1~3級アミノ基としては、下記式(1);
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~12の炭化水素基を表す。)で表される構造であることが好ましい。
本開示の炭化水素基は、鎖状構造であっても、環構造を有していてもよいが、鎖状構造であることが好ましい。炭化水素基が鎖状構造である場合、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。
本開示の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、更に好ましくはアルキル基である。
また、本開示の炭化水素基の炭素数としては、1~10が好ましく、より好ましくは1~8であり、特に好ましくは1~5であり、最も好ましくは1~2である。
本開示のR1及びR2のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1~12の炭化水素基であることが好ましく、R1及びR2の両方が炭素数1~12の炭化水素基であることがより好ましい。すなわち、第1~3級アミノ基の中でも、第3級アミノ基が好ましい。
本開示の第1~3級アミン塩基としては、下記式(2);
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R1、R2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を表す。Y-は、陰イオンを表す。)で表される構造であることが好ましい。炭化水素基の具体例及び好ましい形態は、上述のとおりである。
本開示の第4級アンモニウム塩基としては、下記式(3);
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、R3~R5は、同一又は異なって、炭素数1~12の炭化水素基を表す。Y-は、陰イオンを表す。)で表される構造であることが好ましい。炭素数1~12の炭化水素基の具体例及び好ましい形態は、上述のとおりである。
本開示の炭素数1~12の炭化水素基としては、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基であることが好ましい。
R3~R5の炭素数としては、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~7であり、特に好ましくは1~5である。
R3~R5の炭化水素基としては、メチル基又はエチル基が最も好ましい。
本開示の式(2)及び(3)におけるY-は、特に制限されないが、例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲン化物イオン;硫酸メチルイオン等の硫酸アルキルイオン;酢酸イオン等の有機酸のイオン等が挙げられる。
本開示の式(2)におけるY-は、有機酸のイオンが好ましい。
本開示の式(3)におけるY-は、ハロゲン化物イオン、硫酸アルキルイオンが好ましい。
本開示のアミノ基含有単量体としては、アミノ基を含有する単量体である限り特に制限はないが、例えば、下記式(4-1)~(4-3);
【0015】
【化4】
【0016】
(式(4-1)~(4-3)中、R6~R8は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す。Xは、直接結合又は2価の連結基を表す。式(4-1)及び(4-2)中、R1、R2は、上記式(1)におけるR1、R2と同様である。式(4-3)中、R3~R5は、上記式(3)におけるR3~R5と同様である。Y-は、陰イオンを表す。)で表される構造であることが好ましい。
上記R8における炭素数1~5のアルキル基は、メチル基であることが好ましい。上記R8としては、水素原子又はメチル基が好ましい。抗菌性及び耐加水分解性の観点からR8としてはメチル基がより好ましい。上記R6、R7は、水素原子であることが好ましい。
上記式(4-1)及び(4-2)のXにおける2価の連結基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数1~12のアルキレン基や、下記式(5);
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、mは、0~12の整数を表す。)、下記式(6);
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、eは、0~4の整数を表す。)及び下記式(7);
【0021】
【化7】
【0022】
(式中、kは、1~10の整数を表す。)で表される構造が挙げられる。
上記式(5)におけるmは、1~8であることが好ましく、より好ましくは1~5である。
上記式(7)におけるkは、1~8であることが好ましく、より好ましくは1~5である。
上記式(4-3)のXにおける2価の連結基としては、炭素数1~12のアルキレン基であることが好ましい。
【0023】
本開示のアミノ基含有単量体として、具体的には、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N-ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及び上記モノマーに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及び上記モノマーに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれらの塩酸等の酸による中和物;モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(tert-ブチルアミノ)エチル等のモノアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及びこれらの塩酸等の酸による中和物;モノメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のモノアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及びこれらの塩酸等の酸による中和物;(メタ)アクリル酸-2-アミノエチル等の(メタ)アクリル酸とアルカノールアミンとのエステル類及びこれらの塩酸等の酸による中和物;N,N-ジアリルメチルアミン及びこれに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸等の酸による中和物;アリルアミン及びこれの塩酸等の酸による中和物;1-アリルオキシ-3-ジブチルアミノ-2-オール、1-アリルオキシ-3-ジエタノールアミノ-2-オール等の炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1~24のアミン化合物との付加反応物及びこれに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸等の酸による中和物等が挙げられる。
本開示の炭素数1~24のアミン化合物は、アミノ基を有し、炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体の環状エーテル構造と反応することができる限り特に制限されない。炭素数1~24のアミン化合物の炭素数は、1~20が好ましく、1~16がより好ましい。炭素数1~24のアミン化合物としては、第1級アミン、第2級アミンが挙げられ、例えば、炭素数1~24の(ジ)アルキルアミン、炭素数1~24の(ジ)アルカノールアミン、炭素数1~24のアルキルアルカノールアミン等が挙げられる。)
本開示の炭素数1~24の(ジ)アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン等が好ましい。
本開示の炭素数1~24の(ジ)アルカノールアミンとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン、ヘキサノールアミン等が好ましい。
本開示の炭素数1~24のアルキルアルカノールアミンとしては、メチルエタノールアミン等が好ましい。
【0024】
上記式(4-1)~(4-3)のXにおける2価の連結基としては、上記式(5)で表される構造が好ましい。上記アミノ基含有単量体は上記式(4-1)~(4-3)におけるR8が、メチル基であり、Xが、上記式(5)で表される構造であることが好ましい。
本開示のアミノ基含有単量体として、好ましくは、N,N-ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及びこれらの塩酸等の酸による中和物やこれらに4級化剤を付加させたモノマー、N,N-ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及びこれらの塩酸等の酸による中和物やこれらに4級化剤を付加させたモノマー、中でもN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びこれらの塩酸等の酸による中和物やこれらに4級化剤を付加させたモノマーがより好ましい。上記4級化剤としては、特に制限されるものではないが、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ-n-プロピル等のアルキル硫酸等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
【0025】
本開示の共重合体(A)としては、アミノ基含有単量体由来の構造単位に加えて、アミノ基を有さない単量体由来の構造単位を有し、アミノ基を有さない単量体としては単独重合体に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体であることが好ましい。
溶解性パラメータは、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE」(1974年、Vol.14、No.2)の147~154ページに記載の方法によって計算される値である。
以下にその方法を概説する。単独重合体の溶解性パラメータ(δ)(cal/cm3)1/2は、該重合体を形成している構成単位の蒸発エネルギー(△ei)及びモル体積(△vi)に基づいて、下記の計算法により算出される。
δ=(△ei/△vi)1/2 (cal/cm3)1/2
単独重合体(ホモポリマー)に対する溶解性パラメータが15以下であれば、本開示の共重合体(A)における疎水性が充分なものとなり、微生物の細胞膜に対する親和性が向上し、細胞膜との相互作用が増大することで、細胞膜の生理活性にダメージを与えるため、従来のポリマー型抗菌剤よりも抗菌性能に優れる。
本開示のアミノ基を有さない単量体の溶解性パラメータとして好ましくは14以下であり、より好ましくは13以下であり、更に好ましくは12以下である。上記溶解性パラメータとしては通常5以上である。
本開示のアミノ基を有さない単量体としては、単独重合体での溶解性パラメータが15以下であれば特に制限されないが、(メタ)アクリル酸と置換基を有していてもよいアルコールとのエステル((メタ)アクリレート)類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α―アリルオキシアクリル酸及びこれらの塩等の不飽和モノカルボン酸類;スチレン等の芳香族ビニル系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;酢酸ビニル等の不飽和アルコールとカルボン酸とのエステル;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;1-アリルオキシ-3-ブトキシプロパン-2-オール等の炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1~20のアルコールとの付加反応物;アリルアルコールのエチレンオキシド付加物、メタリルアルコールのエチレンオキシド付加物、イソプレノールのエチレンオキシド付加物等の炭素数2~20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそれらの末端疎水変性物;N-ビニルピロリドン等の環状ビニル系単量体が挙げられる。
本開示のアミノ基を有さない単量体としては、溶解性パラメータが15以下のものの中でも、炭素数が2以上のアルキル基を有するものが好ましい。アミノ基を有さない単量体が、炭素数2以上のアルキル基を有することにより、微生物の細胞膜との親和性が増し、抗菌性がより向上する。
【0026】
本開示の不飽和モノカルボン酸の塩としては、金属塩が挙げられる。本開示の金属塩の金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が挙げられる。
本開示の(メタ)アクリレートにおける置換基としては、水酸基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~18のアルコキシ基;オキシアルキレン基、スルホン酸基、リン酸基等のオキソ基含有基;フルオロ基等のハロゲノ基;グリシジル基等のエポキシ基;アルデヒド基等のカルボニル基等が挙げられる。
本開示の(メタ)アクリレートとしては、前記置換基を有しないアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられる。
本開示の置換基を有する(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、オキソ基含有(メタ)アクリレート、フルオロ基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、カルボニル基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
本開示の水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1~18の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本開示のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
本開示のオキソ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート等の(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレート;アルコキシポリエチレングリコールメタクリレート(アントックスLMA-10)等のアルキレングリコールの繰り返し数が1~100のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;スルホプロピル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
本開示のフルオロ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2~6のフルオロ基含有アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本開示のエポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテル等が挙げられる。
本開示のカルボニル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール-1,4-アクリレートアセチルアセテート、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシアルキルプロペナール等が挙げられる。
本開示のアミノ基を有さない単量体としては、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。
本開示の(メタ)アクリル酸エステルとしては、、下記式(8);
【0028】
【化8】
【0029】
(式中、R9は、水素原子又はメチル基を表す。R10は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
上記R10における炭化水素基の炭素数は、1~20であることが好ましい。より好ましくは1~16であり、更に好ましくは1~12であり、特に好ましくは1~8であり、最も好ましくは2~8である。R10における炭化水素基の炭素数が1~20であれば、重合体の水溶性、粘度を好適な範囲とすることができ、取扱いに優れるものとなる。上記炭化水素基の炭素数が1~12であれば、重合体の製造が容易となり、さらに、抗菌性に加えて安全性にも優れるものとなる。さらに上記炭化水素基の炭素数が2~8であれば、重合体の製造が容易であるだけでなく、安全性に優れ、かつ細菌の細胞膜との親和性が増し、抗菌性がより向上するものとなる。
上記R10における炭化水素基としては、特に制限されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の環状炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基は、分岐を有していてもよく、分岐を有する場合の炭化水素基の炭素数は、主鎖及び分岐鎖の合計の炭素数を意味する。
上記R10におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルへキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ステアリル基、イコシル基等が挙げられる。
上記R10におけるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
上記R10におけるアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ドデシニル基、オクタデシニル基、イコシニル基等が挙げられる。
【0030】
上記R10における芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o-キシリル基等が挙げられる。
上記R10におけるシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
上記R10におけるシクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
上記R10における炭化水素基として、好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、より好ましくはアルキル基である。
すなわち本開示の(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル(メタ)アクリレート)が好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとして好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートであり、より好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
本開示の共重合体(A)はまた、アミノ基を有さない単量体として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位と、更に溶解性パラメータが15以下であって、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマー由来の構造単位とを有するものであることが好ましい。このような構造単位を有する共重合体もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーは、溶解性パラメータが15以下であって、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基のいずれかの官能基を有しているものであればよく、(メタ)アクリル酸エステル構造を有しているものであっても、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーに分類するものとする。
【0031】
本開示の共重合体(A)としては、アミノ基を有さない単量体として、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーとを共重合することにより、得られる重合体の水溶性が向上し、また、塩やpHによる重合体の析出、抗菌性の低下等の影響をより充分に緩和することができるため、幅広いpH領域において重合体を使用することができ、弱酸性のものが多い化粧品や、中性から弱アルカリ領域のものが多い洗剤等の種々の用途に好適に用いることができる。
上記カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーとしては、上述の不飽和モノカルボン酸類;水酸基含有(メタ)アクリレート;アルキルビニルエーテル類;炭素数2~20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物;炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1~20のアルコールとの付加反応物等が挙げられる。
カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーとしては、不飽和モノカルボン酸類;水酸基含有(メタ)アクリレート;炭素数2~20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物;炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1~20のアルコールとの付加反応物が好ましい。
上記不飽和モノカルボン酸類としては、(メタ)アクリル酸及びこれらの塩が好ましい。上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0032】
上記炭素数2~20の不飽和アルコールの炭素数は、2~18であることが好ましく、炭素数2~20の不飽和アルコールとしては、ビニルアルコール、アリルアルコール、イソプレニルアルコール等が挙げられる。
上記炭素数2~20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物におけるアルキレンオキシドの炭素数は、2~16であることが好ましく、より好ましくは、2~12であり、更に好ましくは2~6であり、特に好ましくは2~4であり、最も好ましくは2~3である。上記アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
上記アルキレンオキシドの平均付加モル数は、1~100であることが好ましい。より好ましくは、1~80であり、更に好ましくは、1~70であり、特に好ましくは、1~50である。
上記炭素数2~20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物としては、イソプレノールのエチレンオキシド付加物が好ましい。
上記炭素数1~20のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等のアルキルアルコールが挙げられる。好ましくはエタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数2~16のアルキルアルコールである。
上記炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1~20のアルコールとの付加反応物としては1-アリルオキシ-3-ブトキシプロパン-2-オールが好ましい。
【0033】
本開示の共重合体(A)としては、アミノ基含有単量体由来の構造単位および単独重合体に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位以外のその他単量体由来の構造単位を有していても良い。
本開示のその他単量体としては、溶解性パラメータが15超であるアミノ基を有さない単量体が挙げられる。
本開示のその他単量体としては、粘度を調整する観点から溶解性パラメータの値にかかわらずエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体が含まれていてもよい。エチレン性不飽和基を2個以上有する単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、サッカロース、ソルビトール、1,4-ブタンジオール等のポリオールの2置換以上の水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステル類;上記ポリオールの2置換以上のメタクリル酸エステル類;上記ポリオールの2置換以上の水酸基とアリルアルコール、ビニルアルコール等の不飽和アルコールとのエーテル類;フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、メタクリル酸アリル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、1,5-ヘキサジエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらのその他の単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
抗菌性を向上させる観点から、本開示の共重合体(A)はその他の単量体として重合性金属塩を共重合していてもよい。重合性金属塩としてはアクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、α―アリルオキシアクリル酸亜鉛等の不飽和カルボン酸の重金属塩が挙げられる。
本開示の共重合体(A)100質量部におけるアミノ基含有単量体由来の構造単位の含有量としては、36質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、55質量部以上がさらに好ましく、60質量部以上が特に好ましく、99.9質量以下が好ましく、99質量部以下がより好ましく、98質量部以下がさらに好ましく、97質量部以下、96質量部以下、95質量部以下、94質量部以下の順で特に好ましい。
本開示の共重合体(A)のアミノ基含有単量体が第1~3級アミノ基含有単量体及び/又はこれらの酸による中和物の場合、共重合体(A)100質量部におけるアミノ基含有単量体由来の構造単位の含有量は、36~99.9質量部であることが好ましい。すなわち、上記アミノ基含有単量体が、第1~3級アミノ基含有単量体及び/又はこれらの酸による中和物であり、第1~3級アミノ基含有単量体及び/又はこれらの酸による中和物由来の構造単位の含有量が、共重合体(A)100質量部あたり36~99.9質量部であるアミノ基含有重合体も本発明の1つである。
本開示の共重合体(A)のアミノ基含有単量体が第1~3級アミノ基含有単量体及び/又はこれらの酸による中和物の場合、共重合体(A)100質量部におけるアミノ基含有単量体由来の構造単位の含有量は、36質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましく、50質量部以上、55質量部以上、60質量部以上の順で特に好ましく、99.9質量部以下が好ましい。
また、本開示の共重合体(A)のアミノ基含有単量体が第4級アンモニウム塩の場合、共重合体(A)100質量部におけるアミノ基含有単量体由来の構造単位の含有量は、51~99.9質量部であることが好ましい。すなわち、アミノ基含有単量体が、第4級アンモニウム塩基含有単量体であり、第4級アンモニウム塩基含有単量体由来の構造単位の含有量が、共重合体(A)100質量部において51~99.9質量部であるアミノ基含有重合体もまた本発明の1つである。
【0035】
本開示の共重合体(A)のアミノ基含有単量体が第4級アンモニウム塩の場合、共重合体(A)100質量部におけるアミノ基含有単量体由来の構造単位の含有量は、51質量部以上が好ましく、53質量部以上がより好ましく、55質量部以上がさらに好ましく、60質量部以上が特に好ましく、99.9質量部以下が好ましく、95質量部以下がより好ましく、90質量部以下がさらに好ましく、85質量部以下、80質量部以下の順で特に好ましい。
本開示の共重合体(A)100質量部おける単独重合体に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位の含有量としては、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましく、0.5質量部以上、1.0質量部以上、3.0質量部以上、5.0質量部以上の順で特に好ましく、64質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、48質量部以下、45質量部以下、40質量部以下、30質量部以下の順で特に好ましい。
本開示の共重合体(A)のアミノ基含有単量体が第1~3級アミノ基含有単量体及び/又はこれらの酸による中和物の場合、共重合体(A)100質量部おける単独重合体に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位の含有量としては、0.01質量部以上が好ましく、64質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましく、50質量部以下、45質量部以下が、40質量部以下の順で特に好ましい。
本開示の共重合体(A)のアミノ基含有単量体が第4級アンモニウム塩の場合、共重合体(A)100質量部おける単独重合体に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位の含有量としては、0.01質量部以上が好ましく、5.0質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、15質量部以上、20質量部以上の順で特に好ましく、49質量部以下が好ましく、47質量部以下がより好ましく、45質量部以下がさらに好ましく、40質量部以下の順で特に好ましい。
本開示の共重合体(A)において、アミノ基含有単量体由来の構造単位100質量部に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位の含有量としては、抗菌性能の観点から0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましく、2.0質量部以上、4.0質量部以上、5.0質量部以上の順で特に好ましく、99.9質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましく。70質量部以下、60質量部以下。50質量部以下の順で特に好ましい。
【0036】
溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位と、更にカルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマー由来の構造単位とを有していてもよく、本開示の共重合体(A)におけるカルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマー由来の構造単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位100質量部に対して、0以上が好ましく、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
本開示の共重合体(A)において溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体として(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位を有する場合、共重合体(A)100質量部における(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位の含有量としては、0.01質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、3.0質量部以上がさらに好ましく、49質量部以下が好ましく、45質量以下がより好ましく、40質量以下がさらに好ましい。
本開示の共重合体(A)100質量部におけるその他単量体由来の構造単位の含有量としては、0質量部以上であってよく、0質量部を超えていてもよく、10質量部以下であってよく、8質量部以下、5質量部以下であってよい。
【0037】
本開示の共重合体(A)におけるその他単量体としてエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体を用いる際には、共重合体(A)100質量部におけるエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体由来の構造単位の含有量としては、0質量部以上であってよく、1質量部以下であってよく、0.5質量部以下、0.1質量部以下であってよい。
本開示の共重合体(A)としては、アミノ基含有単量体由来の構造単位および単独重合体に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位のみからなる重合体もまた、好ましい形態の1つである。この場合、アミノ基含有単量体由来の構造単位と溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位の割合の合計は100質量%であり、これらの構造単位のそれぞれの割合は、100質量%から上述のアミノ基含有単量体由来の構造単位の割合又は溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位の割合を差し引いた値となる。
本開示の共重合体(A)の重量平均分子量は、4000~100万である。アミノ基含有重合体の重量平均分子量がこのような範囲であれば、抗菌剤を使用する素材に対する抗菌剤の吸着性が向上するため、洗浄した際に洗い流されることを充分に抑制し、上記素材に対する抗菌作用が向上する。
【0038】
上記重量平均分子量として好ましくは4000~80万であり、より好ましくは5000~60万であり、更に好ましくは6000~40万であり、一層好ましくは7000~20万であり、更に一層好ましくは7000~10万であり、特に好ましくは7000~8万である。重合体の重量平均分子量は、公知の手法によって測定することができ、具体的には実施例に記載の方法などが挙げられる。
本開示の共重合体(A)の構造はランダム共重合体構造、グラフト構造、ブロック共重合体構造、グラジエント共重合体構造、星形構造、デンドリマー構造などが挙げられるが、いずれの構造であってもよい。
【0039】
<共重合体(A)の製造方法>
本開示の共重合体(A)の製造方法は特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例は、上述のとおりである。本開示の共重合体(A)は単独で優れた抗菌性を発揮するため、2種以上のポリマーブレンドの抗菌剤を製造する場合のような混練作業が不要であり、本開示の重合体を製造することで、ポリマーブレンドの抗菌剤に比べてより少ない工程で抗菌性に優れた共重合体を得ることができる。
本開示の共重合体(A)の原料となる単量体成分100質量部におけるアミノ基含有単量体の割合としては、36質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、55質量部以上がさらに好ましく、60質量部以上が特に好ましく、99.9質量以下が好ましく、99質量部以下がより好ましく、98質量部以下がさらに好ましく、97質量部以下、96質量部以下、95質量部以下、94質量部以下の順で特に好ましい。
本開示の共重合体(A)に用いるアミノ基含有単量体として第1~3アミノ基含有単量体及び/又はこれらの酸による中和物を用いる際には、共重合体(A)の原料となる単量体成分100質量部における第1~3アミノ基含有単量体及び/又はこれらの酸による中和物の割合としては、36質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましく、50質量部以上、55質量部以上、60質量部以上の順で特に好ましく、99.9質量部以下が好ましい。
【0040】
本開示の共重合体(A)に用いるアミノ基含有単量体として第4級アンモニウム塩を用いる際には、共重合体(A)の原料となる単量体成分100質量部における第4級アンモニウム塩を有するアミノ基含有単量体の割合としては、51質量部以上が好ましく、53質量部以上がより好ましく、55質量部以上がさらに好ましく、60質量部以上が特に好ましく、99.9質量部以下が好ましく、95質量部以下がより好ましく、90質量部以下がさらに好ましく、85質量部以下、80質量部以下の順で特に好ましい。
本開示の共重合体(A)の原料となる単量体成分100質量部における溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体の割合としては、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましく、0.5質量部以上、1.0質量部以上、3.0質量部以上、5.0質量部以上の順で特に好ましく、64質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、48質量部以下、45質量部以下、40質量部以下、30質量部以下の順で特に好ましい。
本開示の共重合体(A)に用いるアミノ基含有単量体として第1~3アミノ基含有単量体及び/又はこれらの酸による中和物を用いる際には、本開示の共重合体(A)の原料となる単量体成分100質量部における溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体の割合としては、0.01質量部以上が好ましく、64質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましく、50質量部以下、45質量部以下が、40質量部以下の順で特に好ましい。
本開示の共重合体(A)に用いるアミノ基含有単量体として第4級アンモニウム塩を用いる際には、本開示の共重合体(A)の原料となる単量体成分100質量部における溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体の割合としては、0.01質量部以上が好ましく、5.0質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、15質量部以上、20質量部以上の順で特に好ましく、49質量部以下が好ましく、47質量部以下がより好ましく、45質量部以下がさらに好ましく、40質量部以下の順で特に好ましい。
【0041】
本開示の共重合体(A)の原料となる単量体成分において、アミノ基含有単量体100質量部に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体の割合としては、抗菌性能の観点から0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましく、2.0質量部以上、4.0質量部以上、5.0質量部以上の順で特に好ましく、99.9質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましく。70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下の順で特に好ましい。
溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、更にカルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーとを用いてもよく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部に対するカルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーの割合としては、0以上が好ましく、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
本開示の共重合体(A)の溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを有する場合、共重合体(A)の原料となる単量体成分100質量部における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合としては、0.01質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、3.0質量部以上がさらに好ましく、49質量部以下が好ましく、45質量以下がより好ましく、40質量以下がさらに好ましい。
本開示の共重合体(A)の原料となる単量体成分100質量部におけるその他単量体の割合としては、0質量部以上であってよく、0質量部を超えていてもよく、10質量部以下であってよく、8質量部以下、5質量部以下であってよい。
その他単量体としてエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体を用いる際には、共重合体(A)の原料となる単量体成分100質量部におけるエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体の割合としては、0質量部以上であってよく、1質量部以下であってよく、0.5質量部以下、0.1質量部以下であってよい。
【0042】
本開示の共重合体(A)は、上記単量体成分を重合開始剤の存在下で重合する方法により製造することが好ましい。単量体成分を重合させる際には、重合方法に応じて重合開始剤を適宜用いることができる。上記重合開始剤としては、通常用いられるものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、アゾ系化合物が好ましい。上記重合開始剤としては、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記重合開始剤の使用量は、上記単量体成分の重合を開始できる量であれば特に制限されないが、全単量体成分100質量部に対して、通常0.01~50質量部であり、好ましくは0.05~30質量部、より好ましくは0.05~20質量部であることが好ましい。
本開示のアミノ基含有単量体の使用方法としては、それらを酸により中和した酸中和物、又は、4級化剤により4級化した4級アンモニウム塩として用いてもよい。アミノ基含有単量体の中和に用いる酸としては、特に制限されるものではないが、塩酸、硫酸等の無機酸;酢酸、クエン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸等の有機酸が挙げられる。アミノ基含有単量体の4級化剤としては、上述のとおりである。
上記酸、又は、4級化剤を用いる場合、これらの使用量としては、本開示のアミノ基含有単量体の一部又は全部が中和又は4級化される限り特に制限されないが、重合反応に用いるアミノ基含有単量体1モルに対して、酸、又は、4級化剤は0.1~1モルであることが好ましい。
【0043】
本開示の共重合体(A)の製造方法において、単量体成分や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法;単量体のうちの一(例えば、アミノ基含有単量体)の一部を反応容器に仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができうることから、重合開始剤と単量体成分を反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。
本開示の共重合体(A)の製造方法としては、例えば、溶液重合やバルク重合、懸濁重合、乳化重合、リビング重合やグラフト重合等の方法で行うことができ、特に限定されるものではないが、溶液重合が好ましい。この際使用できる溶媒は、水単独もしくは水と溶剤との混合溶媒であることが好ましい。水のみを使用する場合には、脱溶剤工程を省略できる点で好適である。
本開示の共重合体(A)の製造方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。また、共重合の際、必要に応じて使用される溶媒としては、公知のものを使用でき、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、THF(テトラヒドロフラン)等の1価のアルコール類;グリセリン、(ポリ)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等の芳香族又は脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、単量体成分及び得られる重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1~4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることが好ましい。上記溶媒は、比較的安価なものであり、本開示の共重合体(A)の製造方法は、経済的にも優れる。また、本開示の共重合体(A)の製造方法においては、水にプロピレングリコールやエチレングリコール等の多価アルコール溶媒を加えて重合してもよい。上記多価アルコール溶媒は水と併用することによって、ポリマーの溶解性を高めることができ、ソープフリー重合をより充分に抑制することができる。これにより、水溶性に乏しいポリマーの生成をより充分に抑制し、溶液の透明性をより向上させることができる。
上記多価アルコール溶媒と水とを併用する場合、水100質量%に対する多価アルコール溶媒の割合は、0~200質量%であることが好ましい。
製造方法は、必要に応じて、任意の連鎖移動剤、pH調節剤、緩衝剤などを用いることができる。
【0044】
得られたポリマーは水に任意に溶解するもの、もしくは任意に分散するものどちらでもよいが、水に任意に溶解するものが特に好ましい。
重合の際の温度は特に限定されないが、通常50~120℃であり、好ましくは60~110℃である。重合時の温度が上記範囲であれば、残存単量体成分が少なくなる傾向にある。なお、重合時の温度は、重合反応の進行中において、常に一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応の進行中に経時的に重合温度を変動(昇温又は降温)させてもよい。また、単量体成分を重合させる際には、単量体成分が均一に重合するようにするために、適宜、撹拌することが好ましい。
重合時間は特に制限されず、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2~9時間程度である。
なお、本発明において、「重合時間」とは単量体の滴下前の加熱撹拌を行っている時間、単量体を添加している時間及び単量体の滴下後の熟成時間を表す。
反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でも不活性雰囲気でもどちらでもよい。
上記重合反応系における重合反応が終了した時点での水溶液中の固形分濃度(すなわち単量体の重合固形分濃度)は、20質量%以上が好ましく、25~80質量%であることがより好ましい。このように重合反応終了時の固形分濃度が20質量%以上と高ければ、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。そのため、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程を省略することができるなど、効率よく共重合体(A)を含む抗菌剤を得ることができる。それゆえ、その製造効率を大幅に上昇させたものとすることができ、その結果、本開示の共重合体(A)の抗菌剤の生産性を大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制することが可能となる。
【0045】
本開示の共重合体(A)製造方法は、全ての使用原料の添加が終了した以後に、単量体の重合率を上げること等を目的として熟成工程を設けても良い。熟成時間は、通常1~240分間、好ましくは1~180分間、より好ましくは1~120分間である。熟成時間が1分間未満の場合には、熟成不十分につき単量体成分が残ることがあり、残存単量体に起因する毒性や臭気などが問題となる。
また、熟成工程における好ましい重合体溶液の温度は、上記重合温度と同様の範囲である。したがって、ここでの温度も一定温度(好ましくは上記滴下が終了した時点での温度)で保持してもよいし、熟成中に経時的に温度を変化させてもよい。
<組成物>
本開示の共重合体(A)を含む組成物としては、共重合体(A)以外のその他の成分を含んでいてもよい。
上記その他の成分としては、抗菌剤の抗菌性能を阻害するものでない限り特に制限されないが、例えば、アルカリ調整剤、アニオン界面活性剤、相溶化剤や安定化剤、架橋剤等の添加剤等が挙げられる。
また、本開示の組成物は、抗菌性を向上させる観点から、更に金属塩や金属酸化物、金属水酸化物などを含んでいてもよい。金属塩又は酸化物、金属水酸化物における金属としては、銅や、亜鉛、銀等の重金属が好ましい。
本開示の架橋剤としては、重合体が有する架橋性官能基と反応して架橋構造を形成する限り特に制限されないが、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、ジエタノールアミン、オキサゾリン基含有ポリマー(株式会社日本触媒製エポクロス)、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0046】
本開示の組成物100質量部における共重合体(A)の含有量としては、特に制限されないが、10質量部以上であってよく、上限は80質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下であってよい。
~95質量%であり、更に好ましくは10~90質量%である。
本開示のその他の成分の含有量は、抗菌剤の抗菌性能を阻害しなければ、特に制限されないが、共重合体(A)100質量部に対して、0~20質量部であることが好ましい。
【0047】
<繊維の製造方法>
本発明の繊維の製造方法としては、アミノ基含有単量体由来の構造単位および単独重合体に対する溶解性パラメータが15以下であるアミノ基を有さない単量体由来の構造単位を有する共重合体(A)を含む溶液を用いて処理する工程を含むことを特徴とする。
本開示の溶液としては、特に制限されないが、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、THF(テトラヒドロフラン)等の1価のアルコール類;グリセリン、(ポリ)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等の芳香族又は脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が挙げられる。
本開示の溶液としては、共重合体(A)の製造時に用いた溶媒をそのまま使用しても良いし、別途追加して使用しても良い。
親水性繊維とは、一般的に水への馴染みの良い繊維のことであるが、本開示の親水性繊維としては、JIS L1907(繊維製品の吸水性試験方法)に規定される滴下法において、鏡面反射が消えるまでの時間が短い繊維のことである。この時間は水分が繊維に馴染み浸透するまでの時間を反映している。その時間は任意に設定されるが、たとえば30秒以内である繊維が挙げられる。
本開示の親水性繊維の具体例としては、綿、麻、アセテートなどのセルロース繊維、羊毛、絹などの動物繊維、プロミックスなどの半合成繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどの再生繊維などが挙げられる。ポリエステル、ポ
リエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維を界面活性剤等で親水化処理したものも親水性繊維として挙げられる。
【0048】
本開示の疎水性繊維としては、JIS L1907(繊維製品の吸水性試験方法)に規定される滴下法において、鏡面反射が消えるまでの時間がたとえば30秒超である繊維が挙げられる。0
本開示の疎水性繊維の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)を含むポリエステル系、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)を含むポリオレフィン系、PPとPEとからなる芯鞘構造の複合繊維、サイド・バイ・サイド型複合繊維等の複合繊維などが挙げられる。
本開示の繊維として親水性繊維を用いた場合、繊維の抗菌性向上および抗菌性の維持の観点から、溶液のpHとしては、2.0以上であってよく、3.0以上が好ましく、3.5以上がより好ましく、4.0以上がさらに好ましく、4.5以上が特に好ましく、5.0以上、6.0以上、6.5以上、7.0以上、7.5以上であっても良い。
この範囲であれば、重合体が親水性繊維に効率よく吸着されるため、経済的である。上限は特に限定されないが、例えば13.0以下であってよく、12.0以下、11.0以下10.0以下、9.0以下であってよく、8.0以下が好ましく、7.0以下がより好ましく、6.0以下がさらに好ましく、5.5以下が特に好ましい。pHが13.0以下であってよく、12.0以下が好ましく、11.0以下がより好ましく、10.0以下がさらに好ましく、9.5以下が特に好ましく、9.0以下、8.0以下であっても良い。
本開示の繊維として疎水性繊維を用いた場合、繊維の抗菌性向上および抗菌性の維持の観点から、溶液のpHとしては、13.0以下であってよく、12.0以下が好ましく、11.0以下がより好ましく、10.0以下がさらに好ましく、9.5以下が特に好ましく、9.0以下、8.0以下であっても良い。この範囲であれば、重合体が疎水性繊維に効率よく吸着されるため、経済的である。下限は特に限定されないが、例えばpHが2.0以上であってよく、3.0以上、4.0以上、5.0以上であってよく、6.0以上が好ましく、7.0以上がより好ましく、8.0以上がさらに好ましい。
【0049】
本開示の繊維として親水性繊維を用いた場合、共重合体(A)の水への溶解度としては、繊維の抗菌性向上および抗菌性の維持の観点から、0.1g/100g以上が好ましく、0.5g/100g以上がより好ましく、1g/100g以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、例えば共重合体(A)の水への溶解度が10~30g/100g程度のものを用いることが好適である。
本開示の繊維として疎水性繊維を用いた場合、共重合体(A)の水への溶解度としては、繊維の抗菌性向上および繊維への効率的な共重合体(A)の吸着の観点から、10g/100g以下が好ましく、5g/100g以下がより好ましく、1g/100g以下がさらに好ましい。水への溶解度の下限は特に限定されず、溶液中に分散するよう適切な溶媒を使用して実施すればよい。
本開示の繊維の製造方法において、共重合体(A)と繊維の質量比(共重合体(A)の質量/繊維の質量)としては、1/10000~1/10が好ましく、1/5000~1/20がより好ましく、1/1000~1/30がさらに好ましい。
本開示の繊維の製造方法において、溶液100質量部における共重合体(A)の含有量は、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。
【0050】
本開示の繊維を製造するにあたり、共重合体(A)を含む溶液を用いて処理する工程としては、繊維を共重合体(A)を含む溶液に浸漬させる工程(浸漬工程)と、繊維を脱水する工程(脱水工程)と、溶媒を乾燥させる工程(乾燥工程)とを含むことがより好ましい。なお、上記製造方法は、浸漬工程の前に、繊維を乾燥する工程(予備乾燥工程)を、乾燥工程の前に繊維に繊維処理剤を固定化する工程(固定化工程)を含んでいてもよい。
上記予備乾燥工程の温度及び時間は特に制限されないが、80~150℃で1~180分間行うことが好ましい。
上記繊維処理剤の水溶液の繊維処理剤の濃度は、特に制限されないが、0.01~30質量%であることが好ましい。
上記浸漬工程における浸漬時間は、1~60分間が好ましい。
上記脱水工程においては、例えば、脱水機、マングルを用いて脱水を行うことが好ましい。
上記後加工工程は、脱水工程と固定化工程との間に中乾燥工程を行ってもよい。中乾燥工程は、80~150℃において、1~180分間行うことが好ましい。
上記固定化工程は、例えば、繊維がセルロース繊維である場合、好ましくは100~160℃において、1~30分間行うことが好ましい。繊維がポリエステル繊維等の合成繊維である場合、100~220℃において、1~30分間行うことが好ましい。
【0051】
<繊維構造物>
本開示の共重合体(A)用いて処理された繊維は種々の構造に成形された繊維構造物として用いることができる。
本開示の繊維構造物としては、糸、ヤーン(ラップヤーンも含む)、フィラメント、織物、編物、不織布、紙状物、シート状物、積層体、綿状体(球状や塊状のものを含む)等を挙げることができ、他の繊維との混合により、実質的に均一に分布させたものや、複数の層を有する構造物の場合には、いずれかの層(単数でも複数でも良い)に集中して存在させたものや、夫々の層に特定比率で分布させたもの等を挙げることができる。
本開示の繊維構造物の用途としては、衣類、寝具、布団、カーテン、壁紙、カーペット、マット、シーツ、フィルター、マスク、ワイパー、タオル、防護衣類、防護ネット、廃鶏袋、鶏舎用品、医療用シートなどが挙げられ、本開示の共重合体(A)が抗菌性を有することから特に衛生マスク、サージカルマスク、防塵マスク(例えば、N95対応マスク(Particulate Respirator Type N95)、呼吸用保護具)等のマスクに用いることもできる。
成形された繊維構造物に対して共重合体(A)を含む溶液を用いて処理することも、本開示の繊維の製造方法に含まれる。
成形された繊維構造物に対して、共重合体(A)を含む溶液を用いて処理する方法としては、上述の繊維の製造方法に記載の内容が参照される。
【実施例0052】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<重量平均分子量の測定方法>
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定条件、装置などは以下の通りである。
【0053】
装置:Waters社製
e2695
検出器:示差屈折率計(RI)検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel α-M、α-2500
カラム温度:40℃
流速:0.8mL/min
注入量:10μL(試料濃度0.4wt%の溶離液調製溶液)
検量線:ジーエルサイエンス社製
ポリエチレングリコール
GPCソフト:Waters社製
EMPOWER3
溶離液:0.5M酢酸+0.2M硝酸Na/アセトニトリル=50/50(v/v)
【0054】
<重合体の固形分の測定方法>
得られたポリマー溶液約1gを秤量し、熱風乾燥機で200℃で15分間乾燥させた後の残渣の質量を固形分として、乾燥前質量に対する比率を%で表示した。
<pH測定方法>
pHメーター(堀場製作所社製「F-72」)により25℃での値を測定した。
<繊維の吸水性試験方法>
JIS L1907(繊維の吸水性試験)をもとにして繊維の吸水性試験を実施した。まず、試料を10cm×10cmで5枚切り出した。試料を試験片保持枠にクリップで固定し、試験片の表面から10mmのところにビュレットを設置した。水による光の反射が明らかに見えるように500-1000lxの照度の光源を設置し、見やすい角度から観察した。ビュレットから水を一滴滴下し、水滴が試験片の表面に達したときから、その試験片が水滴を吸収して鏡面反射が消え、湿潤だけが残った状態になるまでの時間をストップウォッチで1秒単位で計測した。60秒以上かかる場合は、「60秒以上」とし、5枚の平均を取った。
鏡面反射消えるまでの時間が30秒以内の繊維を親水性繊維と判定し、30秒超の繊維を疎水性繊維と判定した。
各繊維の吸水性試験結果を表1に記載する。
【0055】
【表1】
【0056】
<合成例1>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水11.1gと1,3-ブタンジオール100.0g(株式会社ダイセル製)を仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(別名:N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート)(共栄社化学株式会社製、以下DAMと称す)60.0gからなるモノマー溶液1と、メタクリル酸エチル(共栄社化学株式会社製、以下EMAと称す)40.0gからなるモノマー溶液2と、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(富士フイルム和光純薬株式会社製、以下V-50と称す)3%水溶液36.6gからなる開始剤水溶液をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下し
た。滴下開始時間に関して、モノマー溶液1、2と開始剤水溶液は同時に滴下を開始し、モノマー溶液1は180分間、モノマー溶液2は170分間、開始剤水溶液は210分間滴下した。全滴下終了後、さらに30分間反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を完結させたのち、純水52.5gと1,3-ブタンジオール200.0gを添加して共重合体(A1)を得た。得られた共重合体(A1)の固形分は19.8%、pHは9.0、重量平均分子量は48000であった。得られた共重合体(A1)に純水とクエン酸1水和物を加えて撹拌し、pHが6.0となる10%共重合体水溶液を調製した。
【0057】
<比較合成例>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水59gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中にDAM62.9g、10%V-50水溶液64.1g及び酢酸22.8gをそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間は、DAMを120分間、V-50水溶液を150分間、酢酸を120分間とした。また、滴下開始時間に関して、各滴下液はすべて同時に滴下を開始した。
滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を90℃に保持して熟成し重合を完結させ、比較共重合体を得た。
【0058】
[実施例1]
合成例1で作製した試験液100gに対し、クエン酸一水和物を7.5gを加えてよく撹拌することでpH5.0とし、蒸留水で共重合体(A1)の濃度が0.1質量%となるように希釈して処理液1を得た。
各種の布を0.4gずつ裁断し、それぞれの布に対して1cm2あたり10μlとなるよう処理液1を滴下した。その後、キムタオルに挟んで上から圧力をかけることで脱水し、55℃のオーブンで終夜乾燥することで処理布を得た。
[実施例2]
合成例1で作製した試験液100gに対し、クエン酸一水和物を0.4gを加えてよく撹拌することでpH9.0とし、蒸留水で共重合体(A1)の濃度が0.1質量%となるように希釈して処理液2を得た。
その後、実施例1の記載と同様に処理することで処理布を得た。
[比較例1]
比較合成例で取得した比較共重合体の100g溶液に対し、蒸留水で比較共重合体の濃度が0.2質量%となるように希釈し、さらに0.1M水酸化ナトリウム水溶液でpH5.0に調整することで比較処理液1を得た。
その後、実施例1の記載と同様に処理することで処理布を得た。
[比較例2]
比較合成例で取得した比較共重合体の100g溶液に対し、蒸留水で比較共重合体の濃度が0.2質量%となるように希釈し、さらに0.1M水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0に調整することで比較処理液2を得た。
その後、実施例1の記載と同様に処理することで処理布を得た。
[比較例3]
1%硝酸水溶液でpH3.0に調整した20mmol/lの硝酸銀水溶液を比較処理液3とした。比較処理液3を10ml取り、各種の布を0.4gずつ裁断したものを投入して98℃で10分間処理を行い、水洗、乾燥した後、10mmol/lに調整したシュウ酸ナトリウム水溶液中に投入して、98℃で10分間処理を行い、水洗、乾燥を行うことで銀処理布を得た。
[比較例4]
20mmol/lに調整した塩化ベンザルコニウム水溶液を比較処理液4とした。比較処理液4を10ml取り、比較例3と同様に処理することで塩化ベンザルコニウム処理布を得た。
【0059】
<処理布の抗菌性試験>
JIS L1902:2015年に準じる形で処理布の抗菌性試験を実施した。抗菌活性値は以下の計算方法で算出し、試験菌は大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972)及びアクネ菌(Cutibacterium acnes NBRC 107605)を用いた。なお、アクネ菌については好気状態では生育しないため、培養をチャンバー内で嫌気状態で実施し、布上での培養時間を72時間に変更し、専用の培地(GAM寒天培地)を用いて実施した。
抗菌活性値
={log(未処理布・培養後生菌数)-log(未処理布・接種直後生菌数)}
-{log(処理布・培養後生菌数)-log(処理布・接種直後生菌数)}
◎:抗菌活性値3以上
〇:抗菌活性値2以上3未満
△:抗菌活性値1以上2未満
×:抗菌活性値1未満
各処理液で処理した布の抗菌性評価結果を表2に記載する。
【0060】
【表2】
【0061】
次に、各処理液処理した布を、ターゴトメーターを用いて5分間洗浄し、その後脱水乾燥した。得られた布の抗菌性評価結果を表3に記載する。
【0062】
【表3】
【0063】
これらの結果から、本開示の共重合体(A)を含む溶液は、親水性布(親水性繊維)、疎水性布(疎水性繊維)どちらの繊維に対しても抗菌性を付与することができることが確認された。
なお、親水性布(親水性繊維)に対しては低pHの共重合体(A)を含む溶液を用いて処理することにより、疎水性布(疎水性繊維)に対しては高pHの共重合体(A)を含む溶液を用いて処理することにより、耐水性をも付与できることが確認できた。
一方、比較共重合体を含む溶液は、親水性布(親水性繊維)、疎水性布(疎水性繊維)どちらの繊維に対しても弱い抗菌性しか付与することができなかった。また、水洗処理により抗菌性はまったく消失することが明らかとなった。
<布に対する吸着性試験>
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2における脱水工程でキムタオルの代わりにラテックス手袋を着用して手で布を絞り、液を回収した。液中の共重合体の残存濃度を測定し、布に対する吸着率を以下の式で算出した。
【0064】
布に対する吸着率(%)
= (吸着試験後の液中の残存濃度/吸着試験後の残存濃度)
× 100
各処理布に対する吸着性試験結果を表4に記載する。
【0065】
【表4】
【0066】
これらの結果から、本開示の共重合体(A)を含む溶液は、高pHでは親水性布(親水性繊維)に対してより強く吸着され、また低pHでは疎水性布(疎水性繊維)に対してより強く吸着された。また、比較重合体を含む溶液は、どちらの繊維に対しても吸着率は低かった。
<布に対する熱負荷試験>
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3で得られた各処理布について、ターゴトメーターを用いて5分間洗浄し、その後脱水し80℃で乾燥する工程を5回繰り返した。得られた布の色合いを目視にて下記の基準で観察を行った。
〇:処理前の布と比較し、色合いに変化がほとんどない
△:処理前の布と比較し、やや黄色みがかっている
×:黄色みがかっている
各布に対する熱負荷試験結果を表5に記載する
【0067】
【表5】
【0068】
これらの結果より、親水性布(親水性繊維)に対しては低pHの共重合体(A)を含む溶液を用いて処理し、また疎水性布(疎水性繊維)に対しては高pHの共重合体(A)を含む溶液を用いて処理することで、布の黄変を抑制できることがわかった。また、銀系抗菌剤や塩化ベンザルコニウム液の処理により、布の黄変が促進されることもわかった。
本開示の共重合体(A)を含む処理液が、親水性具合の異なる繊維へ幅広く用いることができることが明らかとなった。その理由としては、本開示の共重合体(A)が多数のアミノ基を有していることにより、pHによって親水性が大きく変化することが可能であることが要因であると考えられる。
すなわち、酸を加えてpHを低くすると親水性が高まることにより水溶性が増し、塩基を加えてpHを高くすると疎水性が高まることにより水溶性が減少する。これらの特徴から、低pH領域では本重合体は親水性布に、高pH領域では疎水性布に吸着して効果を持続させることができると考えられる。