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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183040
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】建設機械の油圧回路
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/045 20190101AFI20231220BHJP
【FI】
F15B21/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096413
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】小西 勲
(72)【発明者】
【氏名】前田 寛
(72)【発明者】
【氏名】南浦 弘尚
(72)【発明者】
【氏名】宮森 和哉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義隆
【テーマコード(参考)】
3H082
【Fターム(参考)】
3H082AA06
3H082CC02
3H082DB08
3H082EE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作動油の温度が過剰に上昇するのを抑制するとともに、オイルクーラの損傷を防止可能な油圧回路を提供する。
【解決手段】油圧回路2は、油圧ポンプ4からワークツール6への作動油の供給を制御する制御弁8と、制御弁8と作動油タンク12とを接続する第1戻り管路20と、第1戻り管路20に配置されたオイルクーラ24と、第1戻り管路20から分岐してオイルクーラ24を経由せずに作動油タンク12に延びる第2戻り管路26と、管路18から分岐して電磁開閉弁32を経由して第1戻り管路20まで延びる第3戻り管路30と、操作装置34から出力された信号に基づいて制御弁8および電磁開閉弁32を開放させるコントローラ36と、作動油温度センサ38とを備える。コントローラ36は、温度センサ38によって検出された温度が所定値未満の場合に、オイルクーラ24を通過する作動油量を減少させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の油圧回路であって、
可変容量形の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプが吐出した作動油によって作動するワークツールと、
前記油圧ポンプから前記ワークツールへの作動油の供給を制御する制御弁と、
前記制御弁と前記ワークツールとを接続する一対の管路と、
前記制御弁と作動油タンクとを接続する第1戻り管路と、
前記第1戻り管路に配置された第1チェック弁と、
前記第1チェック弁よりも下流側の前記第1戻り管路に配置されたオイルクーラと、
前記第1戻り管路から分岐して前記オイルクーラを経由せずに前記作動油タンクに延びる第2戻り管路と、
前記第2戻り管路に配置された第2チェック弁と、
前記一対の管路の一方から分岐して前記第1チェック弁と前記オイルクーラとの間の前記第1戻り管路まで延びる第3戻り管路と、
前記第3戻り管路に配置された電磁開閉弁と、
前記ワークツールを作動させるための信号を出力する操作装置と、
前記操作装置から出力された信号に基づいて、前記制御弁および前記電磁開閉弁を開放させるコントローラと、
前記コントローラに電気的に接続され作動油の温度を検出する温度センサとを備え、
前記コントローラは、前記温度センサによって検出された温度が所定値未満の場合に、前記オイルクーラを通過する作動油量を減少させる建設機械の油圧回路。
【請求項2】
前記コントローラは、前記温度センサによって検出された温度が所定値未満の場合における前記制御弁の開口面積を、前記温度センサによって検出された温度が前記所定値以上の場合における前記制御弁の開口面積よりも大きくする、請求項1に記載の建設機械の油圧回路。
【請求項3】
前記コントローラは、前記温度センサによって検出された温度が低くなるにしたがって前記制御弁の開口面積を次第に大きくする、請求項2に記載の建設機械の油圧回路。
【請求項4】
前記コントローラは、前記温度センサによって検出された温度が所定値未満の場合における前記油圧ポンプの吐出量を、前記温度センサによって検出された温度が前記所定値以上の場合における前記油圧ポンプの吐出量よりも少なくする、請求項1に記載の建設機械の油圧回路。
【請求項5】
前記コントローラは、前記温度センサによって検出された温度が低くなるにしたがって前記油圧ポンプの吐出量を次第に少なくする、請求項4に記載の建設機械の油圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ハンマー等のワークツールを備える建設機械の油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例である油圧ショベルは、下部走行体と、下部走行体に旋回自在に支持された上部旋回体と、上部旋回体に装着されたフロント作業機とを備える。油圧ショベルのフロント作業機は、上部旋回体に揺動自在に連結されたブームと、ブームの先端に揺動自在に連結されたアームとを含む。
【0003】
油圧ショベルにおいては、ワークツールとして掘削作業用のバケットがアームの先端に装着されているものが多いが、バケット以外にも様々なワークツールがアームの先端に装着され得る。バケット以外のワークツールとしては、たとえば、コンクリートや岩石等を破砕するための油圧ハンマー(油圧ブレーカ)がある。
【0004】
ワークツールとして油圧ハンマーを使用する際、油圧ハンマーの所要能力を発揮させるためには、油圧ハンマーの背圧を所定値未満にしなければならない。そこで、制御弁を経由しないで、ワークツールから作動油タンクに作動油を戻す回路が採用されることがある(たとえば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-128076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、油圧ハンマーからの戻り油がオイルクーラを通らない構成であると、油圧ハンマーの作動中に作動油の温度が過剰に上昇するおそれがある。一方、油圧ハンマーからの戻り油がオイルクーラを通るようになっていると、作動油の温度が低く作動油の粘度が高くなっている場合に、オイルクーラの上流側の圧力が上昇し、オイルクーラが損傷してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、作動油の温度が過剰に上昇するのを抑制するとともに、オイルクーラの損傷を防止することができる建設機械の油圧回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の建設機械の油圧回路が提供される。すなわち、
「建設機械の油圧回路であって、
可変容量形の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプが吐出した作動油によって作動するワークツールと、
前記油圧ポンプから前記ワークツールへの作動油の供給を制御する制御弁と、
前記制御弁と前記ワークツールとを接続する一対の管路と、
前記制御弁と作動油タンクとを接続する第1戻り管路と、
前記第1戻り管路に配置された第1チェック弁と、
前記第1チェック弁よりも下流側の前記第1戻り管路に配置されたオイルクーラと、
前記第1戻り管路から分岐して前記オイルクーラを経由せずに前記作動油タンクに延びる第2戻り管路と、
前記第2戻り管路に配置された第2チェック弁と、
前記一対の管路の一方から分岐して前記第1チェック弁と前記オイルクーラとの間の前記第1戻り管路まで延びる第3戻り管路と、
前記第3戻り管路に配置された電磁開閉弁と、
前記ワークツールを作動させるための信号を出力する操作装置と、
前記操作装置から出力された信号に基づいて、前記制御弁および前記電磁開閉弁を開放させるコントローラと、
前記コントローラに電気的に接続され作動油の温度を検出する温度センサとを備え、
前記コントローラは、前記温度センサによって検出された温度が所定値未満の場合に、前記オイルクーラを通過する作動油量を減少させる建設機械の油圧回路」が提供される。
【0009】
好ましくは、前記コントローラは、前記温度センサによって検出された温度が所定値未満の場合における前記制御弁の開口面積を、前記温度センサによって検出された温度が前記所定値以上の場合における前記制御弁の開口面積よりも大きくする。
【0010】
前記コントローラは、前記温度センサによって検出された温度が低くなるにしたがって前記制御弁の開口面積を次第に大きくするのが望ましい。
【0011】
前記コントローラは、前記温度センサによって検出された温度が所定値未満の場合における前記油圧ポンプの吐出量を、前記温度センサによって検出された温度が前記所定値以上の場合における前記油圧ポンプの吐出量よりも少なくしてもよい。
【0012】
前記コントローラは、前記温度センサによって検出された温度が低くなるにしたがって前記油圧ポンプの吐出量を次第に少なくするのが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の建設機械の油圧回路においては、操作装置から信号が出力されると、制御弁とともに電磁開閉弁が開放され、ワークツールから排出された作動油が電磁開閉弁およびオイルクーラを通って作動油タンクに戻るので、作動油の温度が過剰に上昇するのを抑制することができる。
【0014】
また、本発明の建設機械の油圧回路においては、温度センサによって検出された温度が所定値未満の場合に、オイルクーラを通過する作動油量を減少させるので、オイルクーラ上流側の過剰な圧力上昇を抑制し、オイルクーラの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に従って構成された建設機械の油圧回路を示す回路図。
図2】ワークツールが作動する場合の作動油の流れを付加した回路図。
図3】温度センサによって検出された作動油の温度と、制御弁の開口面積との関係を示すグラフ。
図4】温度センサによって検出された作動油の温度と、油圧ポンプの吐出量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の建設機械の油圧回路の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
(油圧回路2)
図1に示す建設機械の油圧回路2は、たとえば、油圧ショベルに搭載され得る。油圧回路2は、可変容量形の油圧ポンプ4と、油圧ポンプ4が吐出した作動油によって作動するワークツール6と、油圧ポンプ4からワークツール6への作動油の供給を制御する制御弁8とを備える。
【0018】
(油圧ポンプ4)
油圧ポンプ4は、エンジンまたは電動モータ等の駆動源10によって駆動され、作動油タンク12から作動油を吸い込んでポンプ管路14に吐出するようになっている。図1に示すとおり、ポンプ管路14は、油圧ポンプ4と制御弁8とを接続する管路である。図示の実施形態では、1個の油圧ポンプ4が示されているが、油圧ポンプ4は2個以上設けられていてもよい。
【0019】
(ワークツール6)
ワークツール6と制御弁8とは、一対の管路16、18によって接続されている。図1には、ワークツール6として単動ワークツール(たとえば、油圧ハンマー)が示されており、単動ワークツールにおいては、一対の管路16、18の一方(図示の例では、管路16)を、ワークツール6に作動油を供給するための供給管路としてのみ使用し、一対の管路16、18の他方(図示の例では、管路18)を、ワークツール6から作動油を排出するための排出管路としてのみ使用する。
【0020】
ワークツール6は、上記単動ワークツールに限定されることはなく、複動ワークツールであってもよい。複動ワークツールにおいては、一対の管路16、18を交互に供給管路として使用するとともに、一対の管路16、18を交互に排出管路として使用する。複動ワークツールとしては、たとえば、木材等を掴むためのグラップルを挙げることができる。
【0021】
図1には、ワークツール6として、ワークツール6の可動部を作動させる油圧モータが示されているが、ワークツール6の可動部を作動させる油圧アクチュエータは、油圧シリンダであってもよい。
【0022】
(制御弁8)
図示の実施形態の制御弁8は、油圧ポンプ4からワークツール6に通じる油路を閉じるとともに、ワークツール6から作動油タンク12に通じ油路を閉じる閉位置8aと、ポンプ管路14と管路16とを連通するとともに、管路18と第1戻り管路20(制御弁8と作動油タンク12とを接続する管路)とを連通する第1開位置8bと、ポンプ管路14と管路18とを連通するとともに、管路16と第1戻り管路20とを連通する第2開位置8cとを有する。
【0023】
なお、単動ワークツールが装着された場合には、閉位置8aと、第1・第2開位置8b、8cのいずれか一方とが使用され、複動ワークツールが装着された場合には、閉位置8aと、第1・第2開位置8b、8cの双方とが使用される。
【0024】
(第1チェック弁22、オイルクーラ24)
制御弁8と作動油タンク12とを接続する第1戻り管路20には、第1チェック弁22と、オイルクーラ24とが配置されている。第1チェック弁22は、制御弁8側から作動油タンク12側への流れを許容し、作動油タンク12側から制御弁8側への流れを阻止するようになっている。オイルクーラ24は、第1チェック弁22よりも下流側(作動油タンク12側)に設けられている。
【0025】
(第2チェック弁28)
油圧回路2には、第1戻り管路20から分岐してオイルクーラ24を経由せずに作動油タンク12に延びる第2戻り管路26が設けられている。第2戻り管路26には、第2チェック弁28が配置されており、第2チェック弁28は、第1チェック弁22と同様に、制御弁8側から作動油タンク12側への流れを許容し、作動油タンク12側から制御弁8側への流れを阻止するようになっている。
【0026】
(電磁開閉弁32)
また、油圧回路2には、管路18(単動ワークツールが装着された場合に排出管路としてのみ使用される管路)から分岐して第1戻り管路20まで延びる第3戻り管路30が設けられている。第3戻り管路30は、第1チェック弁22とオイルクーラ24との間の第1戻り管路20に接続されている。第3戻り管路30には、電磁開閉弁32が設けられている。
【0027】
図1に示す例では、ワークツール6が単動ワークツールであるため、排出管路としてのみ使用される管路18から第3戻り管路30が延びているが、ワークツール6が複動ワークツールである場合には、さらに、管路16から分岐して第1戻り管路20まで延びる第4戻り管路(図示していない。)が設けられていてもよい。第4戻り管路は、第3戻り管路30と同じように、第1チェック弁22とオイルクーラ24との間の第1戻り管路20に接続され、第4戻り管路には電磁開閉弁が配置され得る。
【0028】
図1に示すとおり、油圧回路2は、さらに、ワークツール6を作動させるための信号を出力する操作装置34と、操作装置34から出力された信号に基づいて、制御弁8および電磁開閉弁32を開放させるコントローラ36と、作動油の温度を検出する温度センサ38とを備える。
【0029】
(操作装置34)
操作装置34は、操作量が増大するにしたがって電気信号の出力強度が高くなる入力機器(たとえば、ジョイスティック、スライドスイッチ)を有する構成でよい。操作装置34は、ワークツール6を作動させるための信号のほか、ワークツール6以外の他の油圧アクチュエータを作動させるための信号を出力してもよい。
【0030】
(コントローラ36)
コントローラ36は、処理装置および記憶装置を有するコンピュータから構成されている。図1に示すとおり、コントローラ36には、油圧ポンプ4、制御弁8、操作装置34および温度センサ38が電気的に接続されている。図示していないが、コントローラ36には、電磁開閉弁32も電気的に接続されている。
【0031】
そして、コントローラ36においては、操作装置34および温度センサ38から出力された信号に応じて、油圧ポンプ4の容量を制御するとともに、制御弁8および電磁開閉弁32を開放させるようになっている。
【0032】
(温度センサ38)
温度センサ38は、作動油タンク12に付設されており、温度センサ38によって検出された作動油の温度は、コントローラ36に送信される。
【0033】
図示の実施形態の油圧回路2は、管路16から分岐して作動油タンク12まで延びる第1リリーフ管路40と、管路18から分岐して作動油タンク12まで延びる第2リリーフ管路42と、第1リリーフ管路40に配置された第1リリーフ弁44と、第2リリーフ管路42に配置された第2リリーフ弁46とを含んでいる。
【0034】
さらに、油圧回路2は、第1リリーフ管路40に付設された第1補充管路48と、第1補充管路48に配置された第1補充チェック弁50と、第2リリーフ管路42に付設された第2補充管路52と、第2補充管路52に配置された第2補充チェック弁54とを有する。
【0035】
第1補充管路48は、第1リリーフ弁44を迂回する形で第1リリーフ管路40に接続されており、第1補充チェック弁50および第1リリーフ弁44は並列に配置されている。第1補充チェック弁50は、作動油タンク12側から管路16への流れを許容し、管路16から作動油タンク12側への流れを阻止するようになっている。
【0036】
第2補充管路52は、第1補充管路48と同じように、第2リリーフ弁46を迂回する形で第2リリーフ管路42に接続されており、第2補充チェック弁54および第2リリーフ弁46は並列に配置されている。第2補充チェック弁54は、作動油タンク12側から管路18への流れを許容し、管路18から作動油タンク12側への流れを阻止する。
【0037】
そして、管路16、18内に負圧が生じた際には、第1・第2補充チェック弁50、54が開いて、管路16、18内に作動油が補充されるため、キャビテーションの発生が防止される。
【0038】
(油圧回路2の動作)
次に、上述したとおりの油圧回路2の動作について説明する。
【0039】
操作装置34が操作されていない場合には、操作装置34からコントローラ36に信号が出力されない。この場合には、コントローラ36から制御弁8に開放指令が出力されず、制御弁8は閉位置8aに位置づけられる。このため、油圧ポンプ4の吐出油がワークツール6に流入せず、ワークツール6は作動しない。また、コントローラ36から電磁開閉弁32にも開放指令は出力されず、電磁開閉弁32の閉塞状態が維持される。
【0040】
操作装置34が操作された場合には、操作装置34からコントローラ36に信号が出力される。そうすると、コントローラ36は、制御弁8を作動させ、油圧ポンプ4からワークツール6に通じる油路を開放させる。
【0041】
図示の実施形態では図2に示すように、コントローラ36は、制御弁8を第1開位置8bに位置づけ、ポンプ管路14と管路16とを連通させるとともに、管路18と第1戻り管路20とを連通させる。これによって、油圧ポンプ4の吐出油がワークツール6に供給され、ワークツール6が作動する。このとき、温度センサ38によって検出された作動油の温度が所定値以上の場合には、制御弁8の開口面積が所定面積A(図3参照。)に制御され、油圧ポンプ4の吐出量が所定吐出量Q(図4参照。)となるように調整される。
【0042】
また、コントローラ36は、操作装置34からコントローラ36に信号が出力された場合に電磁開閉弁32を開放させる。このときの電磁開閉弁32の開口面積は、第3戻り管路30を通過する経路(図2において矢印F1で示す経路)の抵抗が、管路18、制御弁8、第1戻り管路20および第2戻り管路26を通過する経路の抵抗(図2において破線矢印F2で示す経路)よりも低くなるように、設定されている。
【0043】
したがって、ワークツール6から排出された作動油の多くは、第3戻り管路30(経路F1)を通り、オイルクーラ24において冷却されてから作動油タンク12に戻るので、作動油の温度が過剰に上昇するのが抑制される。
【0044】
なお、操作装置34からコントローラ36に信号が出力されている際には、管路18と第1戻り管路20とが制御弁8によって連通しているため、作動油の一部は、経路F2を通って作動油タンク12に戻るようになっていてもよい。
【0045】
上記のとおり、操作装置34からコントローラ36に信号が出力されると、コントローラ36は、制御弁8および電磁開閉弁32を開放させる。ただし、作動油の温度が低く作動油の粘度が高いときには、オイルクーラ24の上流側の圧力が上昇してオイルクーラ24が損傷するおそれがあることから、コントローラ36は、温度センサ38によって検出された作動油の温度が所定値未満である場合に、オイルクーラ24を通過する作動油量(経路F1を通過する作動油量)を減少させる。
【0046】
具体的には、コントローラ36は、温度センサ38によって検出された温度が所定値未満の場合における制御弁8の開口面積を、温度センサ38によって検出された温度が所定値以上の場合における制御弁8の開口面積(所定面積A)よりも大きくする。
【0047】
そうすると、経路F2の抵抗が下がり、経路F2を通過して作動油タンク12に戻る作動油量が増加するので、オイルクーラ24を通過する経路F1の作動油量が減少する。したがって、オイルクーラ24の上流側の過剰な圧力上昇を抑制し、オイルクーラ24の損傷を防止することができる。
【0048】
図3に示すように、コントローラ36は、温度センサ38によって検出された作動油の温度が低くなるにしたがって、制御弁8の開口面積を次第に大きくするようになっているのが望ましい。作動油の温度が低く作動油の粘度が高いほど、オイルクーラ24の上流側の圧力が上昇しやすいところ、作動油の温度が低くなるにしたがって制御弁8の開口面積を次第に大きくすることで、オイルクーラ24の上流側の過剰な圧力上昇を効果的に抑制することができる。
【0049】
オイルクーラ24を通過する作動油量を減少させる制御として、制御弁8の開口制御を説明したが、コントローラ36は、制御弁8の開口制御以外の制御を実行してもよい。たとえば、コントローラ36は、温度センサ38によって検出された温度が所定値未満の場合における油圧ポンプ4の吐出量を、温度センサ38によって検出された温度が所定値以上の場合における油圧ポンプ4の吐出量よりも少なくしてもよい。
【0050】
これによって、オイルクーラ24を通過する経路F1の作動油量も減少するので、オイルクーラ24の上流側の過剰な圧力上昇を抑制し、オイルクーラ24の損傷を防止することができる。
【0051】
さらに、図4に示すように、コントローラ36は、温度センサ38によって検出された作動油の温度が低くなるにしたがって、油圧ポンプ4の吐出量を次第に少なくするのが好適である。これによって、作動油の温度が低く作動油の粘度が高いほど、オイルクーラ24を通過する経路F1の作動油量が減少するので、オイルクーラ24の上流側の過剰な圧力上昇を効果的に抑制することができる。
【0052】
このような油圧ポンプ4の吐出量制御は、上述の制御弁8の開口面積制御とともに実行可能である。また、油圧ポンプ4の吐出量制御に係る温度の所定値t2(図4参照。)は、制御弁8の開口面積制御に係る温度の所定値t1(図3参照。)と同一であってもよく、異なる温度(たとえば、t2>t1)であってもよい。
【0053】
以上のとおりであり、図示の実施形態の油圧回路2においては、操作装置34から信号が出力されると、制御弁8とともに電磁開閉弁32が開放され、ワークツール6から排出された作動油が電磁開閉弁32およびオイルクーラ24を通って作動油タンク12に戻るので、作動油の温度が過剰に上昇するのを抑制することができる。
【0054】
また、油圧回路2においては、温度センサ38によって検出された温度が所定値未満の場合に、オイルクーラ24を通過する作動油量を減少させるので、オイルクーラ24の上流側の過剰な圧力上昇を抑制し、オイルクーラ24の損傷を防止することができる。
【0055】
なお、上述の説明においては、操作装置34の操作量によらず、温度センサ38によって検出された温度が所定値以上であれば、制御弁8の開口面積が所定面積Aに制御される例を説明したが、操作装置34に加えられる操作量に応じて、制御弁8の開口面積が変動するようになっていてもよい。このような条件下において、作動油の温度が所定値未満の場合における制御弁8の開口面積は、作動油の温度が所定値以上であって操作装置34の操作量が同一の場合における制御弁8の開口面積よりも大きくなるように制御される。
【0056】
また、上述の説明においては、操作装置34の操作量によらず、温度センサ38によって検出された温度が所定値以上であれば、油圧ポンプ4の吐出量が所定吐出量Qとなるように調整される例を説明したが、操作装置34に加えられる操作量に応じて、油圧ポンプ4の吐出量が変動するようになっていてもよい。この場合には、作動油の温度が所定値未満の場合における油圧ポンプ4の吐出量は、作動油の温度が所定値以上であって操作装置34の操作量が同一の場合における油圧ポンプ4の吐出量よりも少なくなるように制御される。
【符号の説明】
【0057】
2:油圧回路
4:油圧ポンプ
6:ワークツール
8:制御弁
12:作動油タンク
16:管路
18:管路
20:第1戻り管路
22:第1チェック弁
24:オイルクーラ
26:第2戻り管路
28:第2チェック弁
30:第3戻り管路
32:電磁開閉弁
34:操作装置
36:コントローラ
38:温度センサ
図1
図2
図3
図4