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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183043
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】車両の支持部品の防振部材
(51)【国際特許分類】
   B60K 5/12 20060101AFI20231220BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20231220BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20231220BHJP
   F16F 1/387 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B60K5/12 Z
B60K5/12 J
F16F15/08 K
F16F1/38 F
F16F1/387 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096422
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敬太
(72)【発明者】
【氏名】赤井 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】上林 拓
(72)【発明者】
【氏名】林 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】北野 利幸
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 正人
(72)【発明者】
【氏名】安川 昭
【テーマコード(参考)】
3D235
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3D235BB25
3D235CC01
3D235CC12
3D235CC15
3D235EE03
3D235EE09
3D235EE23
3D235EE35
3D235FF34
3D235HH42
3D235HH51
3J048AA01
3J048BA19
3J048EA36
3J059AB11
3J059AD04
3J059BA42
3J059BC06
3J059DA15
3J059EA03
3J059GA01
(57)【要約】
【課題】耐久性を向上させることができる車両の支持部品の防振部材を提供する。
【解決手段】車体11においてユニット20を支持するトルクロッド33の防振部材50であって、トルクロッド33は、ユニット20が一側に固定され、防振部材50が嵌合される開口部41Bが後側に形成される外金具41と、防振部材50に設けられ、車体11に固定される内筒金具42と、を有し、防振部材50は、少なくとも、内筒金具42と外金具41とを繋いで、車体11に対するユニット20の相対的な動き量を伸縮することによって吸収する伸縮部52と、成型時に金型90のエア抜きをするために形成され、伸縮部52の伸縮方向に沿って伸縮部52と連続して形成される薄膜部53と、を有し、薄膜部53には、伸縮部52の脆弱部52Aの側面にて所定幅の縁部53Eが形成されるように開口部53Cが形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体においてユニットを支持する支持部品の防振部材であって、
前記支持部品は、前記ユニットまたは前記車体の一方が一側に固定され、前記防振部材が嵌合される開口部が他側に形成される外金具と、前記防振部材に設けられ、前記ユニットまたは前記車体の他方に固定される内筒金具と、を有し、
前記防振部材は、少なくとも、前記内筒金具と前記外金具とを繋いで、前記車体に対する前記ユニットの相対的な動き量を伸縮することによって吸収する伸縮部と、成型時に金型のエア抜きをするために形成され、前記伸縮部の伸縮方向に沿って前記伸縮部と連続して形成される薄膜部と、を有し、
前記薄膜部には、前記伸縮部の脆弱部の側面にて所定幅の縁部が形成されるように、開口部が形成される、
車両の支持部品の防振部材。
【請求項2】
車体においてユニットを支持する支持部品の防振部材であって、
前記支持部品は、前記ユニットまたは前記車体の一方が一側に固定され、前記防振部材が嵌合される開口部が他側に形成される外金具と、前記防振部材に設けられ、前記ユニットまたは前記車体の他方に固定される内筒金具と、を有し、
前記防振部材は、少なくとも、前記内筒金具と前記外金具とを繋いで、前記車体に対する前記ユニットの相対的な動き量を伸縮することによって吸収する伸縮部と、成型時に金型のエア抜きをするために形成され、前記伸縮部の伸縮方向に沿って前記伸縮部と連続して形成される薄膜部と、を有し、
前記薄膜部には、前記伸縮部の脆弱部の側面に前記薄膜部が形成されないように、開口部が形成される、
車両の支持部品の防振部材。
【請求項3】
車体においてユニットを支持する支持部品の防振部材であって、
前記支持部品は、前記ユニットまたは前記車体の一方が一側に固定され、前記防振部材が嵌合される開口部が他側に形成される外金具と、前記防振部材に設けられ、前記ユニットまたは前記車体の他方に固定される内筒金具と、を有し、
前記防振部材は、少なくとも、前記内筒金具と前記外金具とを繋いで、前記車体に対する前記ユニットの相対的な動き量を伸縮することによって吸収する伸縮部と、成型時に金型のエア抜きをするために形成され、前記伸縮部の伸縮方向に沿って前記伸縮部と連続して形成される薄膜部と、を有し、
前記薄膜部には、前記伸縮部の脆弱部の側面から所定間隔を隔てて凸部、凹部または複数の孔部が形成される、
車両の支持部品の防振部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両の支持部品の防振部材であって、
前記薄膜部は、前記伸縮部に対して車両上下方向の中央部より上部に形成される、
車両の支持部品の防振部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体においてユニットを支持する支持部品の防振部材に関する。
【背景技術】
【0002】
支持部品(マウント)は、車体においてユニットを支持する。例えば、エンジンマウントは、車体においてエンジンを支持すると共にエンジンを防振および制振する。例えば、特許文献1には、エンジンマウントの防振部材であってゴム等の弾性体によって形成される防振部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-223850号公報
【0004】
「従来の防振部材」
図17から図20を用いて、従来の防振部材150について説明する。
【0005】
図17に示すように、従来の防振部材150は、例えば、車体においてユニットを支持する支持部品としてのトルクロッド133に設けられている。トルクロッド133は、ユニットに固定される外金具141と、車体に固定される内筒金具142と、防振部材150とを有している。
【0006】
防振部材150は、ゴム等の弾性体によって形成され、内筒金具142と外金具141とが直接接触しないように内筒金具142の周囲に形成されるストッパ部151と、内筒金具142と外金具141とを繋いで、車体に対するユニットの相対的な動き量を伸縮することによって吸収する伸縮部152と、成型時に金型190(図18参照)のエア抜きをするために形成され、伸縮部152の伸縮方向に沿って伸縮部152と連続して形成される薄膜部153とを有している。
【0007】
図18に示すように、例えば射出成型によって防振部材150を製造する場合には、金型190の上方のゲート191からゴムを流入かつ充填し(ステップS111及びステップS112)、金型190の上方にエア残りが発生するため(ステップS113)、ゴムを過充填してエア抜き部192からエア抜きをすることによってエア残りを無くして欠肉が無いようにしている(ステップS114)。このエア抜き部192によって形成される部分が薄膜部153となる。
【0008】
図19に示すように、防振部材150では、車両の加減速によって伸縮部152が伸縮するため、薄膜部153も伸縮部152に従って伸縮する。薄膜部153は、伸縮が繰り返されると破断に至る。破断した薄膜部153の切れ目は、さらに伸縮が繰り返されると伸縮部152の側面まで到達する場合がある。なお、図19では、説明を分かり易くするため、外金具141を一部省略して記載している。
【0009】
図20(A)に示すように、薄膜部153の切れ目が伸縮部152の側面まで到達した状態で、車両が加速した場合には、外金具141側の薄膜部153が引っ張られ、薄膜部153の切れ目が伸縮部152の側面に到達した到達部Pに荷重が集中し、到達部Pが他の部位よりも早く劣化する。一方、図20(B)に示すように、車両が減速した場合には、内筒金具142側の薄膜部153が引っ張られ、同じく到達部Pに荷重が集中し、到達部Pが他の部位よりも早く劣化する。
【0010】
つまり、防振部材150の成形時の余剰材料として形成される薄膜部153が破断して切れ目が伸縮部152に到達した場合には、到達部Pに荷重が集中し、到達部Pが他の部位よりも早く劣化するため、防振部材150の耐久性が低下することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、耐久性を向上させることができる車両の支持部品の防振部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る防振部材は、車体においてユニットを支持する支持部品の防振部材であって、支持部品は、ユニットまたは車体の一方が一側に固定され、防振部材が嵌合される開口部が他側に形成される外金具と、防振部材に設けられ、ユニットまたは車体の他方に固定される内筒金具と、を有し、防振部材は、少なくとも、内筒金具と外金具とを繋いで、車体に対するユニットの相対的な動き量を伸縮することによって吸収する伸縮部と、成型時に金型のエア抜きをするために形成され、伸縮部の伸縮方向に沿って伸縮部と連続して形成される薄膜部と、を有し、薄膜部には、伸縮部の脆弱部の側面にて所定幅の縁部が形成されるように開口部が形成されることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る防振部材は、車体においてユニットを支持する支持部品の防振部材であって、支持部品は、ユニットまたは車体の一方が一側に固定され、防振部材が嵌合される開口部が他側に形成される外金具と、防振部材に設けられ、ユニットまたは車体の他方に固定される内筒金具と、を有し、防振部材は、少なくとも、内筒金具と外金具とを繋いで、車体に対するユニットの相対的な動き量を伸縮することによって吸収する伸縮部と、成型時に金型のエア抜きをするために形成され、伸縮部の伸縮方向に沿って伸縮部と連続して形成される薄膜部と、を有し、薄膜部には、薄膜部が伸縮部の脆弱部の側面には形成されないように開口部が形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る防振部材は、車体においてユニットを支持する支持部品の防振部材であって、支持部品は、ユニットまたは車体の一方が一側に固定され、防振部材が嵌合される開口部が他側に形成される外金具と、防振部材に設けられ、ユニットまたは車体の他方に固定される内筒金具と、を有し、防振部材は、少なくとも、内筒金具と外金具とを繋いで、車体に対するユニットの相対的な動き量を伸縮することによって吸収する伸縮部と、成型時に金型のエア抜きをするために形成され、伸縮部の伸縮方向に沿って伸縮部と連続して形成される薄膜部と、を有し、薄膜部には、伸縮部の脆弱部の側面から所定間隔を隔てて凸部、凹部または複数の孔部が形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る防振部材において、薄膜部は、伸縮部に対して車両上下方向の中央部より上部に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両の支持部品の防振部材によれば、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る車両のユニットの支持構造を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る支持部品を示す平面図である。
図3】第1実施形態の一例である防振部材を示す平面図である。
図4】防振部材の製造工程の一部を示す模式図である。
図5】防振部材の効果を示す平面図である。
図6】第1実施形態の他の一例である防振部材を示す平面図である。
図7】第1実施形態の他の一例である防振部材を示す平面図である。
図8】第1実施形態の他の一例である防振部材を示す斜視図である。
図9図8の防振部材の製造工程の一部を示す模式図である。
図10】第2実施形態の一例である防振部材を示す平面図である。
図11】防振部材の効果を示す平面図である。
図12】第2実施形態の他の一例である防振部材を示す平面図である。
図13】第3実施形態の一例である防振部材を示す斜視図である。
図14】防振部材の効果を示す斜視図である。
図15】第3実施形態の他の一例である防振部材を示す斜視図である。
図16】第3実施形態の他の一例である防振部材を示す斜視図である。
図17】従来の支持部品を示す平面図である。
図18】従来の防振部材の製造工程の一部を示す模式図である。
図19】従来の防振部材の破断に至る状態を示す斜視図である。
図20】従来の防振部材の劣化に至る状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0019】
「車両のユニットの支持構造」
図1を用いて、実施形態に係る車両10のユニット20の支持構造について説明する。
【0020】
車両10のユニット20の支持構造では、車体11において支持部品30によってユニット20を支持する。支持部品30としてのトルクロッド33は、後述する防振部材50を有している(図2参照)。車両10のトルクロッド33の防振部材50によれば、詳細は後述するが、耐久性を向上させることができる。
【0021】
車両10は、例えば4輪のエンジン車両である。ただし、車両は、エンジン車両に限定されることなく、電動車両またはハイブリッド車両であってもよい。また、以下では、適宜、車両上下方向の上側または下側、車両幅方向の左側または右側、車両前後方向の前側または後側に従って説明する。
【0022】
ユニット20は、車体11に搭載される重量物である。ユニット20は、例えば車体11の前部に搭載される。ただし、ユニット20は、車体11の後部または側部に搭載されてもよい。ユニット20は、例えば車両10の走行用のエンジンである。ただし、ユニット20は、電動機またはバッテリであってもよい。
【0023】
支持部品30は、骨格部材であるフロントサイドメンバフレーム12にそれぞれ設けられるRHマウント31およびLHマウント32と、サスペンションの骨格部材としてのサスペンションメンバ13に設けられるRRマウント(以下、トルクロッド)33とを含む。RHマウント31およびLHマウント32は、ユニット20の左右側をそれぞれ支持する。また、トルクロッド33は、ユニット20の後部を支持する。
【0024】
本実施形態では、車体11においてユニット20を3点支持構成としたが、これに限定されない。例えば、3点支持構成にユニット20の前部にマウントを追加した4点支持構成であってもよい。
【0025】
「支持部品」
図2を用いて、実施形態に係る支持部品30としてのトルクロッド33について説明する。
【0026】
トルクロッド33は、上述したように、サスペンションメンバ13においてユニット20の後部を支持する(図1参照)。トルクロッド33は、それぞれ詳細は後述する、外金具41と、内筒金具42と、防振部材50とを有している。
【0027】
外金具41は、車両前後方向に沿って長尺状に形成され、アルミ、鉄等によって形成される。また、外金具41の前部には、ユニット20とボルト等の固定具によって締結される複数の固定孔41Aが形成される。また、外金具41の後部には、防振部材50が嵌合される円形状の開口部41Bが形成される。
【0028】
内筒金具42は、例えば略三角形状に形成され、アルミ、鉄等によって形成される。内筒金具42は、例えば後述する防振部材50のストッパ部51に設けられている(図3参照)。内筒金具42の中央部には、サスペンションメンバ13とボルト等の固定具によって締結されるための固定孔42Aが形成されている。
【0029】
防振部材50は、外金具41の開口部41Bに固定されている。また、防振部材50の略中央部には、内筒金具42が固定されている。防振部材50について、詳細は後述する。なお、防振部材50は、トルクロッド33に設けられるが、RHマウント31またはLHマウント32に設けられてもよい。
【0030】
本実施形態のトルクロッド33は、外金具41がユニット20に固定され、内筒金具42が車体11に固定される構成としたが、外金具41が車体11に固定され、内筒金具42がユニット20に固定される構成であってもよい。
【0031】
「第1実施形態の防振部材」
図3から図5を用いて、第1実施形態の一例である防振部材50について説明する。
【0032】
図3に示すように、防振部材50は、上述したようにトルクロッド33に設けられ(図2参照)、ゴム等の弾性体によって形成されている。防振部材50は、詳細は後述するが、予め成型時に薄膜部53に開口部53C、53Dを形成し、薄膜部53の破断による切れ目の進行を開口部53C、53Dまでとし、伸縮部52の脆弱部52Aに破断による切れ目が到達しないようにしている。
【0033】
防振部材50は、内筒金具142と外金具141とが直接接触しないように例えば内筒金具42の周囲に形成されるストッパ部51と、内筒金具142と外金具141とを繋いで、サスペンションメンバ13に対するユニット20の相対的な動き量を伸縮することによって吸収する伸縮部52と、成型時に金型90(図4参照)のエア抜きをするために形成され、伸縮部52の伸縮方向に沿って伸縮部52と連続して形成される薄膜部53とを有している。
【0034】
ストッパ部51は、内筒金具142と外金具141とが直接接触しないように内筒金具42の周囲に形成される。ストッパ部51によれば、内筒金具142と外金具141とが直接接触してそれぞれが破損する、または異音が発生することを防ぐことができる。また、ストッパ部51は、車両10の加減速によって外金具41(サスペンションメンバ13)に対して内筒金具42(ユニット20)と共に移動する部分である。
【0035】
伸縮部52は、内筒金具42と外金具41とにそれぞれ固定され、内筒金具42と外金具41とを連結する部分である。伸縮部52は、ストッパ部51から後側に向かって外側に拡がるようにそれぞれ形成される。また、伸縮部52は、車両10の加減速によってサスペンションメンバ13に対するユニット20の相対的な動き量を伸縮することによって吸収する部分である。伸縮部52は、脆弱部52Aを有している。
【0036】
脆弱部52Aは、伸縮部52の伸縮が繰り返されることによって伸縮部52において劣化の進行が早い部分である。脆弱部52Aには、伸縮部52の幅狭部分、および車両上下方向から見て側面の曲率が大きい部分等が含まれる。
【0037】
図4に示すように、薄膜部53は、成型時に金型90のエア抜きをするために形成される部分である。例えばゴムの射出成型によって防振部材50を製造する場合には、金型90の上方のゲート91からゴムを流入かつ充填し(ステップS11及びステップS12)、金型90の上方にエア残りが発生するため(ステップS13)、ゴムを過充填してエア抜き部92からエア抜きをすることによってエア残りを無くして欠肉が無いようにしている(ステップS14)。このエア抜き部92によって形成される部分が薄膜部53となる。
【0038】
再度、図3に示すように、薄膜部53は、防振部材50において車両上下方向の略中央部において車両前後方向に沿って形成される。薄膜部53は、前部に形成される前部薄膜部53Aと、後部に形成される後部薄膜部53Bとを有している。前部薄膜部53Aと後部薄膜部53Bとは、車両前後方向においてストッパ部51および伸縮部52によって区切られている。
【0039】
前部薄膜部53Aには、予め成型時に形成された開口部53Cが左右側にそれぞれ形成される。開口部53Cの縁部であって伸縮部52の脆弱部52Aの側面には、所定幅の縁部53Eが形成される。また、後部薄膜部53Bには、予め成型時に形成された開口部53Dが形成される。開口部53Dの縁部であって伸縮部52の脆弱部52Aの側面には、所定幅の縁部53Fが形成される。
【0040】
本実施形態では、前部薄膜部53Aに開口部53Cが形成され、後部薄膜部53Bに開口部53Dが形成されるが、前部薄膜部53Aにのみ開口部53Cが形成されてもよく、後部薄膜部53Bにのみ開口部53Dが形成されてもよい。
【0041】
図5(A)に示すように、防振部材50では、車両10の加速によって伸縮部52が伸縮するため、前部薄膜部53Aも伸縮部52に従って伸縮する。前部薄膜部53Aは、伸縮が繰り返されると破断に至る。破断した前部薄膜部53Aの切れ目は、さらに伸縮が繰り返されると開口部53Cに到達する場合がある。その後、さらに伸縮が繰り返されると開口部53Cの車両幅方向の端部が破断に至る。
【0042】
一方、図5(B)は、車両10の減速によって切れ目が進行する状態を示している。切れ目の進行は、加速の場合とほぼ同様である。なお、図5(A)および図5(B)では、前部薄膜部53Aが破断した場合を示しているが、後部薄膜部53Bが破断した場合も同様である。
【0043】
上述した構成では、前部薄膜部53Aに開口部53Cが形成されることによって、前部薄膜部53Aが破断した場合にも、切れ目が開口部53Cに到達すれば、それ以上切れ目が進行することがない。つまり、脆弱部52Aの側面に形成された所定幅の縁部53Eに切れ目が到達されにくい。そのため、脆弱部52Aに荷重が集中されにくい。これにより、薄膜部53の破断による伸縮部52の脆弱部52Aの劣化を防ぐことができる。この結果、防振部材50の耐久性を向上させることができる。
【0044】
「第1実施形態の他の一例の防振部材」
図6から図9を用いて、第1実施形態の他の一例である防振部材50について説明する。以下では、上述した防振部材50と同様の部材については同一の符号を用いて説明する。
【0045】
図6に示すように、開口部53Cの縁部であって伸縮部52の側面の全周に所定幅の縁部53Eが形成されてもよい。また、開口部53Dの縁部であって伸縮部52の側面の全周に所定幅の縁部53Fが形成されてもよい。これにより、上述した防振部材50と同様の効果が得られる。
【0046】
本実施形態では、前部薄膜部53Aに開口部53Cが形成され、後部薄膜部53Bに開口部53Dが形成されるが、前部薄膜部53Aにのみ開口部53Cが形成されてもよく、 後部薄膜部53Bにのみ開口部53Dが形成されてもよい。
【0047】
図7に示すように、開口部53Cの縁部であって前部薄膜部53Aの全周に沿って所定幅の縁部53Eが形成されてもよい。また、開口部53Dの縁部であって後部薄膜部53Bの全周に沿って所定幅の縁部53Fが形成されてもよい。これにより、上述した防振部材50と同様の効果が得られる。
【0048】
本実施形態では、前部薄膜部53Aに開口部53Cが形成され、後部薄膜部53Bに開口部53Dが形成されるが、前部薄膜部53Aにのみ開口部53Cが形成されてもよく、後部薄膜部53Bにのみ開口部53Dが形成されてもよい。
【0049】
図8に示すように、薄膜部53は、防振部材50において車両上下方向の上部に形成されることが好ましい。より好ましくは、薄膜部53は、防振部材50において車両上下方向の上端部に形成されることが好ましい。
【0050】
図9に示すように、上述した薄膜部53が上端部に形成される防振部材50を成型するには、エア抜き部92が金型90の上面(ゲート91が設けられる面)と連続して設けられることが好ましい。
【0051】
ここで、金型90の上部に溜まったエアをエア抜き部92に押し出すためには、金型90のゲート91からゴムを過充填する際に(上述したステップS13(図4参照))、大きな圧力によってゴムを充填する必要がある。例えば、金型90の下方にエア抜き部92が設けられている場合には、さらに充填圧力を大きくする必要がある。
【0052】
そこで、本実施形態のように、エア抜き部92が金型90の上面と連続して設けられる構成とすることによって、金型90の上部に溜まったエアをエア抜き部92に押し出す際に必要以上に大きい圧力を加える必要がない。
【0053】
「第2実施形態の防振部材」
図10から図11を用いて、第2実施形態の一例である防振部材60について説明する。
【0054】
防振部材60は、詳細は後述するが、予め成型時に薄膜部63に開口部63C、63Dを形成し、薄膜部63の破断による切れ目の進行を開口部63C、63Dまでとし、伸縮部62の脆弱部62Aに破断による切れ目が到達しないようにしている。
【0055】
防振部材60の各部材について特に説明がない場合は、上述した防振部材50の対応する各部材と同様の構成である。図10に示すように、防振部材60は、ストッパ部61と、伸縮部62と、薄膜部63とを有している。伸縮部62は、脆弱部62Aを有している。また、薄膜部63は、前部薄膜部63Aと、後部薄膜部63Bとを有している。
【0056】
前部薄膜部63Aには、左右側にそれぞれ予め成型時に形成された開口部63Cが形成される。開口部63Cの縁部であって伸縮部62の脆弱部62Aの側面には、前部薄膜部63Aが形成されない。また、後部薄膜部63Bには、予め成型時に形成された開口部63Dが形成される。開口部63Dの縁部であって伸縮部62の脆弱部62Aの側面には、後部薄膜部63Bが形成されない。
【0057】
本実施形態では、前部薄膜部63Aに開口部63Cが形成され、後部薄膜部63Bに開口部63Dが形成されるが、前部薄膜部63Aにのみ開口部63Cが形成されてもよく、後部薄膜部63Bにのみ開口部63Dが形成されてもよい。
【0058】
図11(A)に示すように、防振部材60では、車両10の加速によって伸縮部62が伸縮するため、前部薄膜部63Aも伸縮部62に従って伸縮する。前部薄膜部63Aは、伸縮が繰り返されると破断に至る。破断した前部薄膜部63Aの切れ目は、さらに伸縮が繰り返されると開口部63Cに到達する場合がある。
【0059】
一方、図11(B)は、車両10の減速によって切れ目が進行する状態を示している。切れ目の進行は、加速の場合とほぼ同様である。なお、図11(A)および図11(B)では、前部薄膜部63Aが破断した場合を示しているが、後部薄膜部63Bが破断した場合も同様である。
【0060】
上述した構成では、前部薄膜部63Aに開口部63Cが形成されることによって、前部薄膜部63Aが破断した場合にも、切れ目が開口部63Cに到達すれば、それ以上切れ目が進行することがない。つまり、脆弱部62Aの側面に切れ目が到達されにくい。そのため、脆弱部62Aに荷重が集中されにくい。これにより、薄膜部63の破断による伸縮部62の脆弱部62Aの劣化を防ぐことができる。この結果、防振部材60の耐久性を向上させることができる。
【0061】
「第2実施形態の他の一例の防振部材」
図12を用いて、第2実施形態の他の一例である防振部材60について説明する。以下では、上述した防振部材60と同様の部材については同一の符号を用いて説明する。
【0062】
図12に示すように、開口部63Cの縁であって伸縮部62の側面の全周に前部薄膜部63Aが形成されない構成であってもよい。また、開口部63Dの縁部であって伸縮部62の側面の全周に後部薄膜部63Bが形成されない構成であってもよい。これにより、上述した防振部材60と同様の効果が得られる。
【0063】
本実施形態では、前部薄膜部63Aに開口部63Cが形成され、後部薄膜部63Bに開口部63Dが形成されるが、前部薄膜部63Aにのみ開口部63Cが形成されてもよく、後部薄膜部63Bにのみ開口部63Dが形成されてもよい。
【0064】
また、薄膜部63は、防振部材60において車両上下方向の上部に形成されることが好ましい。より好ましくは、薄膜部63は、防振部材60において車両上下方向の上端部に形成されることが好ましい(図8参照)。
【0065】
「第3実施形態の防振部材」
図13および図14を用いて、第3実施形態の一例である防振部材70について説明する。
【0066】
防振部材70の各部材について特に説明がない場合は、上述した防振部材50の対応する部材と同様の構成である。図13に示すように、防振部材70は、ストッパ部71と、伸縮部72と、薄膜部73とを有している。伸縮部72は、脆弱部72Aを有している。また、薄膜部73は、前部薄膜部73Aと、後部薄膜部73Bとを有している。
【0067】
前部薄膜部73Aには、伸縮部72の脆弱部72Aの側面から所定間隔を隔てて凸部73Dが形成される。また、後部薄膜部73Bには、伸縮部72の脆弱部72Aの側面から所定間隔を隔てて同様に凸部(図示なし)が形成される。
【0068】
本実施形態では、前部薄膜部73Aに凸部73Dが形成され、後部薄膜部73Bに同様に凸部が形成されるが、前部薄膜部73Aにのみ凸部73Dが形成されてもよく、後部薄膜部73Bにのみ凸部が形成されてもよい。また、凸部73Dは、脆弱部72Aの側面に沿って複数形成されてもよい。
【0069】
図14に示すように、防振部材70では、車両10の加減速によって伸縮部72が伸縮するため、薄膜部73も伸縮部72に従って伸縮する。薄膜部73は、伸縮が繰り返されると破断に至る。破断した薄膜部73の切れ目は、さらに伸縮が繰り返されると凸部73Dに沿って進行する。なお、図14では、前部薄膜部73Aが破断した場合を示しているが、後部薄膜部73Bが破断した場合も同様である。
【0070】
上述した構成では、脆弱部72Aの側面に切れ目が到達されにくい。そのため、脆弱部72Aに荷重が集中されにくい。これにより、薄膜部73の破断による伸縮部72の脆弱部72Aの劣化を防ぐことができる。この結果、防振部材70の耐久性を向上させることができる。
【0071】
「第3実施形態の他の一例の防振部材」
図15および図16を用いて、第3実施形態の他の一例である防振部材70について説明する。以下では、上述した防振部材70と同様の部材については同一の符号を用いて説明する。
【0072】
図15に示すように、前部薄膜部73Aには、伸縮部72の脆弱部72Aの側面から所定間隔を隔てて凹部73Eが形成される。また、後部薄膜部73Bには、伸縮部72の脆弱部72Aの側面から所定間隔を隔てて凹部(図示なし)が形成される。これにより、上述した防振部材70と同様の効果が得られる。
【0073】
本実施形態では、前部薄膜部73Aに凹部73Eが形成され、後部薄膜部73Bに凹部73Eが形成されるが、前部薄膜部73Aにのみ凹部73Eが形成されてもよく、後部薄膜部73Bにのみ凹部73Eが形成されてもよい。また、凹部73Eは、脆弱部72Aの側面に沿って複数本形成されてもよい。
【0074】
図16に示すように、前部薄膜部73Aには、伸縮部72の脆弱部72Aの側面から所定間隔を隔てて複数の孔部73Fが形成される。また、後部薄膜部73Bには、伸縮部72の脆弱部72Aの側面から所定間隔を隔てて複数の孔部(図示なし)が形成される。これにより、上述した防振部材70と同様の効果が得られる。
【0075】
本実施形態では、前部薄膜部73Aに複数の孔部73Fが形成され、後部薄膜部73Bに複数の孔部が形成されるが、前部薄膜部73Aにのみ複数の孔部73Fが形成されてもよく、後部薄膜部73Bにのみ複数の孔部が形成されてもよい。また、複数の孔部73Fは、脆弱部72Aの側面に沿って複数列形成されてもよい。
【0076】
また、薄膜部73は、防振部材70において車両上下方向の上部に形成されることが好ましい。より好ましくは、薄膜部73は、防振部材70において車両上下方向の上端部に形成されることが好ましい(図8参照)。
【0077】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
10 車両、11 車体、12 フロントサイドメンバフレーム、13 サスペンションメンバ、20 ユニット、30 支持部品、31 RHマウント、32 LHマウント、33 トルクロッド、41 外金具、41A 固定孔、41B 開口部、42 内筒金具、50 防振部材、51 ストッパ部、52 伸縮部、52A 脆弱部、53 薄膜部、53A 前部薄膜部、53B 後部薄膜部、53C 開口部、53D 開口部、53E 縁部、53F 縁部、60 防振部材、61 ストッパ部、62 伸縮部、62A 脆弱部、63 薄膜部、63A 前部薄膜部、63B 後部薄膜部、63C 開口部、63D 開口部、70 防振部材、71 ストッパ部、72 伸縮部、72A 脆弱部、73 薄膜部、73A 前部薄膜部、73B 後部薄膜部、73D 凸部、73E 凹部、73F 孔部、90 金型、91 ゲート、92 エア抜き部、133 トルクロッド、141 外金具、142 内筒金具、150 防振部材、151 ストッパ部、152 伸縮部、153 薄膜部、190 金型、191 ゲート、192 エア抜き部、P 到達部
図1
図2
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図4
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図10
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