(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183045
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】操舵装置のトルク検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
G01L3/10 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096424
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】上野 星治
(57)【要約】
【課題】ステータと集磁ヨークとの干渉を抑制することのできる操舵装置のトルク検出装置を提供すること。
【解決手段】第1ピニオンギア88aに組み付けられ、ハウジング20の内側に配置されて第1ピニオンギア88aを回転自在に支持する軸受70と、第1ピニオンギア88aに固定されるステータ50と、ハウジング20に対して相対移動不可に配置され、かつ、軸方向において隙間を有してステータ50のフランジ部51と重なる集磁ヨーク43と、ハウジング20に形成されるカバースクリュ格納凹部23に形成される雌ねじ24に螺合して軸受70を固定するカバースクリュ60と、カバースクリュ60が軸受70から離れる方向への移動を規制する規制部材33と、を備え、カバースクリュ60と軸受70とが当接した状態におけるステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との隙間の最小値が、カバースクリュ60と規制部材33との間の隙間より大きい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの内側に配置されるシャフトと、
前記シャフトに対して前記シャフトの軸方向に相対移動不可に組み付けられ、かつ、前記ハウジングの内側に配置されて前記シャフトを回転自在に支持する軸受と、
前記シャフトの径方向における外側に突出するフランジ部を備え、かつ、前記シャフトに固定されるステータと、
前記ハウジングに対して相対移動不可に配置され、かつ、前記軸方向において隙間を有して前記ステータの前記フランジ部と重なる集磁ヨークと、
円環状に形成されて前記シャフトが内側を通り、かつ、前記ハウジングに形成されるカバースクリュ格納凹部の内周面に形成される雌ねじに螺合して前記軸受を前記ハウジングとの間で前記軸方向に挟み込んで固定するカバースクリュと、
前記軸方向において前記カバースクリュに対して前記軸受が配置される側の反対側に配置され、前記カバースクリュが前記軸受から離れる方向への前記カバースクリュの移動を規制する規制部材と、
を備え、
前記カバースクリュと前記軸受とが当接した状態における、前記ステータの前記フランジ部と前記集磁ヨークとの前記軸方向の隙間の最小値が、前記カバースクリュと前記規制部材との間の前記軸方向の隙間より大きい操舵装置のトルク検出装置。
【請求項2】
前記ハウジングに対して、前記軸方向において前記カバースクリュに対して前記軸受が配置される側の反対側の位置で前記ハウジングに固定され、前記集磁ヨークが配置される第2ハウジングを備え、
前記規制部材は、前記第2ハウジングに形成される請求項1に記載の操舵装置のトルク検出装置。
【請求項3】
前記ハウジングには、前記第2ハウジングが配置される端部側の内周面に、前記軸方向において所定の深さで凹むインロー凹部を有し、
前記第2ハウジングには、前記軸方向において前記ハウジングが位置する側に向かって突出し、前記インロー凹部に入り込むことにより前記ハウジングに対する前記径方向への位置決めが行われるインロー凸部が形成され、
前記第2ハウジングには、前記ハウジングに対して前記軸方向に当接して前記ハウジングに対する前記軸方向の位置決めが行われる平面部が形成され、
前記規制部材は、前記インロー凸部によって形成される請求項2に記載の操舵装置のトルク検出装置。
【請求項4】
前記集磁ヨークは、集磁ヨークハウジングに格納され、
前記集磁ヨークハウジングは、前記第2ハウジングに固定される請求項2または3に記載の操舵装置のトルク検出装置。
【請求項5】
前記第2ハウジングには、前記径方向に開口するセンサ開口部が形成され、
前記集磁ヨークハウジングは、前記センサ開口部に挿入されて前記第2ハウジングに固定される請求項4に記載の操舵装置のトルク検出装置。
【請求項6】
前記ステータは一対が配置され、
前記集磁ヨークハウジングは、前記集磁ヨークが一対の前記ステータのそれぞれの前記フランジ部の間に挿入された状態で前記第2ハウジングに固定される請求項4に記載の操舵装置のトルク検出装置。
【請求項7】
前記ハウジングには、前記軸受を格納する軸受格納凹部が形成され、
前記カバースクリュ格納凹部は、前記軸方向において前記軸受格納凹部と異なる位置に前記軸受格納凹部の直径よりも大きな直径で形成され、
前記カバースクリュには、外周面に雄ねじが形成され、
前記軸受は、前記軸受格納凹部に格納された状態で、前記軸受の外輪が前記カバースクリュと前記軸受格納凹部との間で挟み込まれることにより前記ハウジングに組み付けられる請求項1に記載の操舵装置のトルク検出装置。
【請求項8】
前記カバースクリュの内径は、前記軸受の内輪の外径よりも小さい請求項7に記載の操舵装置のトルク検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、操舵装置のトルク検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操舵装置が有する回転体に加わるトルクを検出するトルク検出装置としては、様々な手法のものが存在するが、その一例として、磁気の変化を検出することによりトルクの検出を行うものがある。例えば、特許文献1に記載されたトルク検出装置は、N極とS極とが交互に並び入力軸に固定される永久磁石と、第1ステータ及び第2ステータとを備えてハンドル側ピニオン軸に固定されるステータユニットと、第1コレクタと第2コレクタと磁気センサとを備えて第1ステータ及び第2ステータで導かれた磁束を集磁するセンサユニットとを有している。これにより、トルク検出装置は、第1コレクタと第2コレクタとの間の磁束密度を検出し、検出した磁束密度を電圧信号に変換することにより、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクを検出することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
操舵装置のトルク検出装置は、これらのように回転体に作用するトルクを検出するが、トルク検出装置によってトルクを検出する回転体は、回転可能に支持する必要があるため、回転体は軸受を介してハウジングに支持される。回転体を支持する軸受は、例えば、軸受の内輪が回転体に対して相対移動不可となって回転体に組み付けられ、軸受の外輪が、ハウジングに対して螺合するナットによって軸方向への移動が不可となってハウジングに組み付けられる。これにより、回転体は、軸受を介してハウジングに相対回転可能に支持される。
【0005】
しかしながら、軸受を支持するナットが緩んだ場合、軸受は軸方向に移動することが可能になり、これに伴い、回転軸もハウジングに対して軸方向への移動が可能になる。ここで、永久磁石の磁束を導くステータは、回転軸に固定され、ステータで導かれた磁束を集磁するコレクタ、即ち、集磁ヨークは、ハウジングに固定されている。このため、ナットが緩むことに起因して回転軸がハウジングに対して軸方向に移動した場合、回転軸に取り付けられるステータが回転軸と共に軸方向に移動し、ハウジングに固定される集磁ヨークとステータとの距離が近付くことになる。
【0006】
このように、軸受をハウジングに組み付けるナットが緩むことにより回転軸が軸方向に移動する状態になった際に、回転軸が大きく移動した場合には、回転体と共にステータも大きく移動するため、集磁ヨークとステータとが干渉することになる。集磁ヨークとステータとが干渉した場合、集磁ヨークやステータが変形し、集磁ヨークによる集磁が適切に行われなくなるため、トルク検出装置からの出力が異常になり、トルクを精度よく検出することができなくなる。このため、トルク検出装置周りの部品の組み立て方について、改善の余地があった。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、ステータと集磁ヨークとの干渉を抑制することのできる操舵装置のトルク検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の操舵装置のトルク検出装置は、ハウジングと、前記ハウジングの内側に配置されるシャフトと、前記シャフトに対して前記シャフトの軸方向に相対移動不可に組み付けられ、かつ、前記ハウジングの内側に配置されて前記シャフトを回転自在に支持する軸受と、前記シャフトの径方向における外側に突出するフランジ部を備え、かつ、前記シャフトに固定されるステータと、前記ハウジングに対して相対移動不可に配置され、かつ、前記軸方向において隙間を有して前記ステータの前記フランジ部と重なる集磁ヨークと、円環状に形成されて前記シャフトが内側を通り、かつ、前記ハウジングに形成されるカバースクリュ格納凹部の内周面に形成される雌ねじに螺合して前記軸受を前記ハウジングとの間で前記軸方向に挟み込んで固定するカバースクリュと、前記軸方向において前記カバースクリュに対して前記軸受が配置される側の反対側に配置され、前記カバースクリュが前記軸受から離れる方向への前記カバースクリュの移動を規制する規制部材と、を備え、前記カバースクリュと前記軸受とが当接した状態における、前記ステータの前記フランジ部と前記集磁ヨークとの前記軸方向の隙間の最小値が、前記カバースクリュと前記規制部材との間の前記軸方向の隙間より大きい。
【0009】
この構成によれば、カバースクリュに対する、軸受が配置される側の反対側に規制部材が配置されるため、カバースクリュが緩んだ場合でも、カバースクリュが移動する際の移動量を規制部材によって制限することができる。これにより、軸受が組み付けられるシャフトに固定されるステータの軸方向の移動量の大きさを、カバースクリュと規制部材との間の軸方向の隙間の大きさに制限することができる。さらに、カバースクリュと軸受とが当接した状態における、ステータのフランジ部と集磁ヨークとの軸方向の隙間の最小値が、カバースクリュと規制部材との間の軸方向の隙間より大きくなっている。このため、カバースクリュが緩むことによってステータが、カバースクリュと規制部材との間の隙間と同じ大きさで集磁ヨークに対して軸方向に相対移動した場合でも、ステータのフランジ部と集磁ヨークとの間に軸方向の隙間を有する状態を維持することができる。この結果、ステータと集磁ヨークとの干渉を抑制することができる。
【0010】
望ましい形態として、前記ハウジングに対して、前記軸方向において前記カバースクリュに対して前記軸受が配置される側の反対側の位置で前記ハウジングに固定され、前記集磁ヨークが配置される第2ハウジングを備え、前記規制部材は、前記第2ハウジングに形成される。
【0011】
この構成によれば、規制部材は、第2ハウジングに形成されるため、カバースクリュが緩んだ際にカバースクリュの移動量を制限する規制部材として、専用の部材を設けることなく、規制部材を容易に配置することができる。この結果、カバースクリュが緩んだ際におけるカバースクリュの移動量を容易に制限することができ、ステータと集磁ヨークとの干渉を抑制することができる。
【0012】
望ましい形態として、前記ハウジングには、前記第2ハウジングが配置される端部側の内周面に、前記軸方向において所定の深さで凹むインロー凹部を有し、前記第2ハウジングには、前記軸方向において前記ハウジングが位置する側に向かって突出し、前記インロー凹部に入り込むことにより前記ハウジングに対する前記径方向への位置決めが行われるインロー凸部が形成され、前記第2ハウジングには、前記ハウジングに対して前記軸方向に当接して前記ハウジングに対する前記軸方向の位置決めが行われる平面部が形成され、前記規制部材は、前記インロー凸部によって形成される。
【0013】
この構成によれば、第2ハウジングに形成される規制部材は、ハウジングに対する第2ハウジングの位置決めを行うインロー凸部によって形成されるため、カバースクリュの移動量を制限する規制部材は、ハウジングに第2ハウジングを固定することにより、カバースクリュの移動量を制限することのできる適切な位置に配置することができる。この結果、カバースクリュが緩んだ際におけるカバースクリュの移動量を容易に制限することができ、ステータと集磁ヨークとの干渉を抑制することができる。
【0014】
望ましい形態として、前記集磁ヨークは、集磁ヨークハウジングに格納され、前記集磁ヨークハウジングは、前記第2ハウジングに固定される。
【0015】
この構成によれば、集磁ヨークは、第2ハウジングに固定される集磁ヨークハウジングに格納され、第2ハウジングは、軸受が固定されるハウジングに取り付けられ、ステータは、軸受が組み付けられるシャフトに固定される。このため、カバースクリュが緩んだ際のカバースクリュの移動量を規制部材によって制限することにより、軸受とシャフトとを介してステータの移動量を制限することができ、集磁ヨークに対する相対的なステータの移動量を制限することができる。この結果、ステータのフランジ部と集磁ヨークとの距離が小さくなり過ぎることを抑制でき、ステータと集磁ヨークとの干渉を抑制することができる。
【0016】
望ましい形態として、前記第2ハウジングには、前記径方向に開口するセンサ開口部が形成され、前記集磁ヨークハウジングは、前記センサ開口部に挿入されて前記第2ハウジングに固定される。
【0017】
この構成によれば、集磁ヨークを格納する集磁ヨークハウジングは、第2ハウジングに形成されるセンサ開口部に挿入されて第2ハウジングに固定されるため、集磁ヨークを第2ハウジングに対して容易に高い位置精度で配置することができる。これにより、ステータのフランジ部と集磁ヨークとの軸方向の隙間を適切な大きさにすることができ、ステータのフランジ部と集磁ヨークとの距離が小さくなり過ぎることを抑制することができる。この結果、カバースクリュが緩んだ際におけるステータと集磁ヨークとの干渉を抑制することができる。
【0018】
望ましい形態として、前記ステータは一対が配置され、前記集磁ヨークハウジングは、前記集磁ヨークが一対の前記ステータのそれぞれの前記フランジ部の間に挿入された状態で前記第2ハウジングに固定される。
【0019】
この構成によれば、集磁ヨークハウジングは、一対のステータのそれぞれのフランジ部の間に集磁ヨークが挿入された状態で第2ハウジングに固定されるため、集磁ヨークを、ステータのフランジ部に対して軸方向の隙間を有する位置に容易に配置することができる。これにより、ステータのフランジ部と集磁ヨークとの軸方向の隙間を適切な大きさにすることができ、ステータのフランジ部と集磁ヨークとの距離が小さくなり過ぎることを抑制することができる。この結果、カバースクリュが緩んだ際におけるステータと集磁ヨークとの干渉を抑制することができる。
【0020】
望ましい形態として、前記ハウジングには、前記軸受を格納する軸受格納凹部が形成され、前記カバースクリュ格納凹部は、前記軸方向において前記軸受格納凹部と異なる位置に前記軸受格納凹部の直径よりも大きな直径で形成され、前記カバースクリュには、外周面に雄ねじが形成され、前記軸受は、前記軸受格納凹部に格納された状態で、前記軸受の外輪が前記カバースクリュと前記軸受格納凹部との間で挟み込まれることにより前記ハウジングに組み付けられる。
【0021】
この構成によれば、ハウジングには、軸受格納凹部と軸方向において異なる位置にカバースクリュ格納凹部が形成されるため、カバースクリュは、外周面の雄ねじをカバースクリュ格納凹部の雌ねじに螺合させることにより、軸受格納凹部で格納する軸受を、カバースクリュと軸受格納凹部とで挟み込んで容易に固定することができる。これにより、軸受が組み付けられるシャフトの軸方向における移動を規制することができ、シャフトに固定されるステータを、ステータのフランジ部と集磁ヨークとの間に軸方向の隙間を有する状態で配置し、隙間を有する状態を維持することができる。この結果、ステータと集磁ヨークとの干渉を抑制することができる。
【0022】
望ましい形態として、前記カバースクリュの内径は、前記軸受の内輪の外径よりも小さい。
【0023】
この構成によれば、カバースクリュの内径は、軸受の内輪の外径よりも小さいため、シャフトを軸方向へ移動させる方向の大きな荷重が操舵装置に作用し、軸受の内輪と外輪が軸方向に相対移動する損傷が軸受に発生した場合でも、外輪に対して相対移動した内輪をカバースクリュに当接させることができる。これにより、軸受の内輪72は、外輪に対する軸方向の相対移動が規制されるため、内輪が組み付けられるシャフトの、ハウジングに対する相対移動を規制することができる。この結果、操舵装置に大きな荷重が作用した場合に操舵装置に発生する損傷を抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示に係る操舵装置のトルク検出装置は、ステータと集磁ヨークとの干渉を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施形態の操舵装置を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る操舵装置の要部斜視図である。
【
図5】
図5は、トルクセンサが有するマグネットとステータ及び集磁ヨークの概要を説明する模式図である。
【
図7】
図7は、第2ハウジングに対して集磁ヨークアッセンブリが取り付けられている部分の詳細図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す第2ハウジングに集磁ヨークアッセンブリを取り付ける前の状態を示す詳細図である。
【
図9】
図9は、
図7における集磁ヨークが配置されている位置での斜視断面図である。
【
図10】
図10は、
図6に示すカバースクリュと軸受とが当接している部分を示す詳細図である。
【
図11】
図11は、
図10に示す第2ハウジングのインロー凸部とカバースクリュとの隙間についての詳細図である。
【
図12】
図12は、
図6に示すステータのフランジ部と集磁ヨークとの隙間についての詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0027】
[実施形態]
図1は、実施形態の操舵装置80を説明するための模式図である。
図2は、実施形態に係る操舵装置80の要部斜視図である。なお、
図2は、ラックバー88bを図示するため電動モータ102と第2ピニオンギア88cの図示は省略している。
図1に示すように、操舵装置80は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、スタブシャフト87と、ステアリングギア88と、タイロッド89とを備える。また、操舵装置80は、制御装置(以下、ECU(Electronic Control Unit)という。)100と、トルクセンサ10と、電動モータ102を備える。車速センサ101は、車両に備えられ、CAN(Controller Area Network)通信により車速信号VをECU100に出力する。
【0028】
ステアリングシャフト82は、一方の端部でステアリングホイール81に連結され、他方の端部でユニバーサルジョイント84に連結される。
【0029】
ロアシャフト85は、一方の端部でユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部でユニバーサルジョイント86に連結される。スタブシャフト87は、一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、他方の端部でトルクセンサ10に連結される。トルクセンサ10は、一方の端部でスタブシャフト87に連結され、他方の端部でステアリングギア88が有する第1ピニオンギア88aに連結されている。
【0030】
詳しくは、第1ピニオンギア88aは、スタブシャフト87に連結される側の反対側の端部に、後述するラックバー88bと噛み合うギア88ag(
図4参照)が形成される軸状の部材になっており、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとは、トーションバー87a(
図4参照)を介して連結されている。トーションバー87aは、一端がスタブシャフト87に連結され、他端が第1ピニオンギア88aに連結され、トーションバー87aは、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとの間で回転トルクを伝達する。
【0031】
トルクセンサ10は、トルクセンサ10に連結されるシャフトに作用するトルクを検出するトルク検出装置になっており、トーションバー87aを介してスタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとの間で伝達される回転トルクを検出する。即ち、トーションバー87aを介して連結されるスタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとは、トルクセンサ10によってトルクを検出する際における検出対象のシャフトになっている。
【0032】
ステアリングギア88は、第1ピニオンギア88aと、ラックバー88bと、第2ピニオンギア88cとを備える。第1ピニオンギア88aは、トーションバー87aを介してスタブシャフト87に連結される。ラックバー88bは、ラック歯88bg(
図4参照)が第1ピニオンギア88aのギア88ag(
図4参照)に噛み合う。また、ラックバー88bは、第1ピニオンギア88aとは異なる位置で第2ピニオンギア88cに噛み合う。
【0033】
第2ピニオンギア88cには、図示しないウォーム減速装置を介して、電動モータ102が連結されており、第2ピニオンギア88cは、電動モータ102から伝達される駆動力により回転になっている。電動モータ102は、図示しないウォーム減速装置を介して、第2ピニオンギア88cを回転させる。電動モータ102は、例えばブラシレスモータであるが、ブラシ(摺動子)及びコンミテータ(整流子)を備えるモータであってもよい。
【0034】
ステアリングギア88は、第1ピニオンギア88aや第2ピニオンギア88cに伝達された回転運動を、ラックハウジング90の内側に配置されるラックバー88bで直進運動に変換する。本実施形態に係る操舵装置80は、ラックバー88bが第1ピニオンギア88aや第2ピニオンギア88cから伝達される回転運動により直進運動を行うデュアルピニオンアシスト方式である。タイロッド89は、ラックバー88bに連結される。すなわち、操舵装置80は、ラックアンドピニオン式の電動パワーステアリング装置である。
【0035】
トルクセンサ10は、ステアリングホイール81を介してステアリングシャフト82に伝達された運転者の操舵力を操舵トルクとして検出する。車速センサ101は、操舵装置80が搭載される車両の走行速度(車速)を検出する。電動モータ102と、トルクセンサ10と、車速センサ101とがECU100に、電気的に接続される。
【0036】
ECU100は、電動モータ102の動作を制御する。また、ECU100は、トルクセンサ10及び車速センサ101のそれぞれから信号を取得する。すなわち、ECU100は、トルクセンサ10から操舵トルクTを取得し、かつ車速センサ101から車両の車速信号Vを取得する。ECU100は、イグニッションスイッチ103がオンの状態で、電源装置(例えば車載のバッテリ)104から電力が供給される。ECU100は、操舵トルクTと車速信号Vとに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU100は、その算出された補助操舵指令値に基づいて電動モータ102へ供給する電力値Xを調節する。ECU100は、電動モータ102から誘起電圧の情報又は電動モータ102に設けられたレゾルバ等の回転検出装置から出力される情報を動作情報Yとして取得する。
【0037】
ステアリングホイール81に入力された操作者(運転者)の操舵力は、第1ピニオンギア88aに伝達される。第1ピニオンギア88aに伝達された操舵力は、ステアリングギア88を介してタイロッド89に伝達され、車輪を変位させる。
【0038】
また、ステアリングホイール81に入力された操作者の操舵力は、ステアリングホイール81から第1ピニオンギア88aまでの操舵力の伝達経路に配置されるトルクセンサ10に伝わる。このとき、ECU100は、操舵トルクTをトルクセンサ10から取得し、かつ車速信号Vを車速センサ101から取得する。そして、ECU100は、電動モータ102の動作を制御する。電動モータ102が作り出した補助操舵トルクは、第2ピニオンギア88cに伝達される。
【0039】
第2ピニオンギア88cに伝達された補助操舵トルクは、ステアリングギア88を介してタイロッド89に伝達され、車輪を変位させる。すなわち、操舵装置80は、第1ピニオンギア88aを介してラックバー88bに伝達された操作者の操舵力に加え、第2ピニオンギア88cを介してラックバー88bに伝達された電動モータ102の補助操舵トルクも用いて車輪を変位させる。
【0040】
図1に示すように、操舵装置80は、第2ピニオンギア88cにアシスト力が付与されるデュアルピニオン方式であるがこれに限定されない。操舵装置80は、例えば、ステアリングシャフト82にアシスト力が付与されるコラムアシスト方式や、第1ピニオンギア88aにアシスト力が付与されるシングルピニオンアシスト方式の電動パワーステアリング装置でもよい。また、ボールネジによりラックバー88bにアシスト力を付与するボールネジ式など、ピニオンを介さずにラックバー88bにアシスト力を付与する種類のラックアシスト式の電動パワーステアリング装置でもよい。
【0041】
図3は、
図2のA-A断面図である。
図4は、
図2のB-B断面図である。なお、以下の説明では、トルクセンサ10が配置されるスタブシャフト87や第1ピニオンギア88aの軸方向を、トルクセンサ10においても軸方向として説明する。同様に、スタブシャフト87や第1ピニオンギア88aの軸心を中心とする周方向を、トルクセンサ10においても周方向として説明し、スタブシャフト87や第1ピニオンギア88aの軸心を中心とする径方向を、トルクセンサ10においても径方向として説明する。
【0042】
スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとにおける、トーションバー87aを介して連結される部分の周囲には、ハウジング20と第2ハウジング30とが配置されている。ハウジング20は、軸方向において第1ピニオンギア88a寄りの位置に配置されて主に第1ピニオンギア88aを覆っており、第2ハウジング30は、軸方向においてスタブシャフト87寄りの位置に配置されて主にスタブシャフト87を覆っている。換言すると、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとは、少なくとも一部がハウジング20と第2ハウジング30との内側に配置されており、スタブシャフト87は少なくとも一部が第2ハウジング30との内側に配置され、第1ピニオンギア88aは少なくとも一部がハウジング20の内側に配置されている。第2ハウジング30は、ハウジング20に対して取付けボルト37により取り付けられており、これにより第2ハウジング30は、ハウジング20に固定されている。
【0043】
ハウジング20の内側には軸受70が配置されており、軸受70は、第1ピニオンギア88aとハウジング20との間に配置されている。第1ピニオンギア88aは、ハウジング20との間に配置される軸受70を介してハウジング20に回転自在に支持されている。つまり、第1ピニオンギア88aには、軸受70の内周面側が第1ピニオンギア88aの軸方向に相対移動不可に組み付けられ、第1ピニオンギア88aに組み付けられた軸受70は、外周面側がハウジング20に配置されている。第1ピニオンギア88aとハウジング20との間には、このように軸受70が介在することにより、第1ピニオンギア88aは、軸受70を介してハウジング20に回転自在に支持されている。
【0044】
また、第2ハウジング30の内側には軸受75が配置されており、軸受75は、スタブシャフト87と第2ハウジング30との間に配置されている。スタブシャフト87は、第2ハウジング30との間に配置される軸受75を介して第2ハウジング30に回転自在に支持されている。つまり、スタブシャフト87には、軸受75の内周面側がスタブシャフト87の軸方向に相対移動不可に組み付けられ、スタブシャフト87に組み付けられた軸受75は、外周面側が第2ハウジング30に配置されている。スタブシャフト87と第2ハウジング30との間には、このように軸受75が介在することにより、スタブシャフト87は、軸受75を介して第2ハウジング30に回転自在に支持されている。
【0045】
第1ピニオンギア88aは、ハウジング20に回転自在に支持され、スタブシャフト87は、第2ハウジング30に回転自在に支持されるため、トーションバー87aを介して連結される第1ピニオンギア88aとスタブシャフト87とは、一体となってハウジング20と第2ハウジング30とに回転自在に支持されている。
【0046】
ハウジング20と第2ハウジング30は、車体に対して回転不可の状態で取り付けられ、ハウジング20に配置される軸受70と第2ハウジング30に配置される軸受75とによって、スタブシャフト87や第1ピニオンギア88aを回転自在に支持する。
【0047】
また、スタブシャフト87と第2ハウジング30との間には、シール部材76が配置されている。シール部材76は、軸方向において軸受75に対して第1ピニオンギア88aが位置する側の反対側の位置で、スタブシャフト87と第2ハウジング30との間に配置されている。本実施形態では、操舵装置80は、スタブシャフト87が位置する側が上側となり、第1ピニオンギア88aが位置する側が下側になる向きで配置される。このため、シール部材76は、第2ハウジング30における上端付近に配置されており、第2ハウジング30の上側から水等が第2ハウジング30内に入り込むことを抑制できる。
【0048】
ハウジング20は、第1ピニオンギア88aにおけるラックバー88bと噛み合う部分も覆っている。即ち、第1ピニオンギア88aには、軸方向においてスタブシャフト87が連結される側の端部の反対側の端部寄りの位置に、ラックバー88bと噛み合うギア88agが形成されており、ハウジング20は、第1ピニオンギア88aにおけるギア88agが形成される側の端部も覆って形成されている。
【0049】
また、ハウジング20は、第1ピニオンギア88aに噛み合うラックバー88bも覆っている。このため、ラックバー88bは、ラックバー88bに形成されるラック歯88bgが、第1ピニオンギア88aに形成されるギア88agに噛み合った状態で、第1ピニオンギア88aと共にハウジング20に覆われてハウジング20内に配置される。
【0050】
また、ハウジング20には、ラックバー88bにおける第1ピニオンギア88aのギア88agに噛み合う側の反対側の位置に、貫通孔26が形成されている。貫通孔26には、押圧部材91と、バネ92と、封止部材93とが収容されている。押圧部材91は、ラックバー88bにおける第1ピニオンギア88aが位置する側の反対側から、ラックバー88bに当接している。封止部材93は、貫通孔26の開口部に配置されて開口部を封止している。
【0051】
バネ92は、圧縮バネからなり、封止部材93と押圧部材91との間で押し縮められた状態で封止部材93と押圧部材91との間に配置されている。このため、押圧部材91は、バネ92からの付勢力によりラックバー88bに押し付けられており、ラックバー88bは、押圧部材91からの付勢力により、ラック歯88bgが形成される面が、第1ピニオンギア88aのギア88agに押し付けられている。これにより、ラックバー88bは、ラック歯88bgが第1ピニオンギア88aのギア88agに対して噛み合う状態が維持される。
【0052】
トルクセンサ10は、第2ハウジング30内に配置されており、第1シャフトであるスタブシャフト87と、トーションバー87aを介してスタブシャフト87に連結される第2シャフトである第1ピニオンギア88aとの端部付近に配置されている。スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとは、いずれも中空となる部分を有する軸になっており、一方の軸の端部が、他方の軸の端部から当該軸の内側に入り込んでいる。本実施形態では、スタブシャフト87が、第1ピニオンギア88aの内側に入り込んでいる。
【0053】
トーションバー87aは、スタブシャフト87の内側から第1ピニオンギア88aの内側に亘って配置されており、一端がスタブシャフト87に連結され、他端が第1ピニオンギア88aに連結されている。つまり、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとは、直接連結されておらず、軸状の部材であるトーションバー87aを介して連結されている。このため、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aは相対回転が可能になっており、トーションバー87aに捩じれが発生した際には、トーションバー87aの捩じれに伴って、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとは相対回転をする。
【0054】
トルクセンサ10は、これらのようにトーションバー87aを介して連結されるスタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとの端部付近に配置されており、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとの相対回転の角度を検出することにより、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとの間で作用するトルクを検出することが可能になっている。
【0055】
トルクセンサ10は、マグネット55と、ステータ50と、集磁ヨーク43とを有している。マグネット55とステータ50とは、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとに分かれてそれぞれ取り付けられている。集磁ヨーク43は、集磁ヨークアッセンブリ40に含まれており、集磁ヨークアッセンブリ40が第2ハウジング30に取り付けられることにより、集磁ヨーク43は第2ハウジング30に固定されている。これらのように構成されるトルクセンサ10は、トーションバー87aが捩じれてスタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとが相対回転をした際における磁気の変化に基づいて、トルクの検出を行うことが可能になっている。
【0056】
図5は、トルクセンサ10が有するマグネット55とステータ50及び集磁ヨーク43の概要を説明する模式図である。トルクセンサ10が有するマグネット55とステータ50とは、一方が第1シャフトに取り付けられており、他方が第2シャフトに取り付けられている。本実施形態では、マグネット55は、第1シャフトであるスタブシャフト87に取り付けられており、ステータ50は、第2シャフトである第1ピニオンギア88aに取り付けられている。このうち、マグネット55は、略円筒状の形状で形成されており、複数のN極とS極とが周方向に交互に配置された多極磁石になっている。
【0057】
ステータ50は、フランジ部51と、ティース部52とを有している。フランジ部51は、厚み方向が軸方向となる、円環状の板状の形状で形成されている。ティース部52は、円環状のフランジ部51の内周部分からフランジ部51の軸方向に向かって延出し、板の厚み方向がフランジ部51の径方向となる向きとなる板状の形状で形成されている。また、ティース部52は、複数のティース部52が間隔をあけてフランジ部51の周方向に並んで配置されている。
【0058】
このように形成されるステータ50は、同等の形状で形成される一対のステータ50である第1ステータ50aと第2ステータ50bとを有しており、第1ステータ50aと第2ステータ50bとは、それぞれフランジ部51とティース部52とを有している。即ち、第1ステータ50aは、円環状の第1フランジ部51aと複数の第1ティース部52aとを有しており、第2ステータ50bは、円環状の第2フランジ部51bと複数の第2ティース部52bとを有している。第1ステータ50aと第2ステータ50bとは、双方のフランジ部51が同軸上に位置し、かつ、フランジ部51が他方のステータ50から離れる方向に位置する向きで、いずれも同じ軸に取り付けられ、本実施形態ではいずれも第1ピニオンギア88aに取り付けられる。
【0059】
つまり、第1ステータ50aは、第1ティース部52aが第1フランジ部51aから第2ステータ50b側に向かって延出する向きで配置され、第2ステータ50bは、第2ティース部52bが第2フランジ部51bから第1ステータ50a側に向かって延出する向きで配置される。その際に、第1ティース部52aと第2ティース部52bとは、いずれも複数が間隔をあけて第1フランジ部51aや第2フランジ部51bに設けられるため、第1ステータ50aと第2ステータ50bとは、周方向において他方のステータ50のティース部52が位置しない部分に、自己のステータ50のティース部52が位置するように組み合わされる。
【0060】
スタブシャフト87に取り付けられるマグネット55は、このように組み合わされる第1ステータ50aと第2ステータ50bとの内側に配置される。また、マグネット55とステータ50とは、軸方向がスタブシャフト87や第1ピニオンギア88aの軸方向と一致する向きで配置される。これらのため、マグネット55とステータ50とは、マグネット55の外周面がステータ50のティース部52に対して対向する位置関係となる状態で、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとに取り付けられて配置される。マグネット55とステータ50とは、これらの位置関係で配置されることにより、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとの間でトーションバー87aを介してトルクが伝達されてスタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとが相対的に微小に回転をした際には、マグネット55とステータ50との相対的な位置関係が変化することに伴って、マグネット55からステータ50に作用する磁束が変化する。
【0061】
また、ステータ50の近傍には、集磁ヨークアッセンブリ40が有する集磁ヨーク43が配置される。集磁ヨーク43は、マグネット55からステータ50に作用する磁束の変化を検出するための部材になっており、ステータ50が有するフランジ部51の近傍に配置される。ステータ50としては、第1ステータ50aと第2ステータ50bとの一対が設けられているため、これに対応して集磁ヨーク43も、第1集磁ヨーク43aと第2集磁ヨーク43bとの一対が設けられている。即ち、集磁ヨーク43は、第1ステータ50aが有する第1フランジ部51aの近傍には第1集磁ヨーク43aが配置され、第2ステータ50bが有する第2フランジ部51bの近傍には第2集磁ヨーク43bが配置されている。
【0062】
一対の集磁ヨーク43は、ステータ50が有する2箇所のフランジ部51同士の間に位置しており、軸方向において隙間を有してステータ50のフランジ部51と重なっている。つまり、第1集磁ヨーク43aは、第1集磁ヨーク43aが有する第1フランジ部51aにおける第2フランジ部51bが位置する面側の近傍に配置され、第2集磁ヨーク43bは、第2集磁ヨーク43bが有する第2フランジ部51bにおける第1フランジ部51aが位置する面側の近傍に配置されている。このように、フランジ部51の近傍に集磁ヨーク43が位置することにより、集磁ヨーク43は、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとが相対的に微小に回転をした際における、マグネット55からステータ50に作用する磁束が変化を検出することが可能なっている。
【0063】
さらに、2つの集磁ヨーク43の間には、ホールIC44が配置されている。ホールIC44は、集磁ヨーク43におけるステータ50のフランジ部51の近傍に位置する部分から離れた位置で、集磁ヨーク43同士の間に配置されている。ホールIC44は、2つの集磁ヨーク43に作用する磁束密度の変化を検出し、検出した磁束密度の変化を電気信号に変換して電気信号として出力することが可能になっている。なお、ホールICに代えて、磁気抵抗効果やトンネル磁気抵抗効果を応用した磁気センサを用いることができる。要するに、集磁ヨーク43の間に生じる磁束密度の変化を、電気信号として出力することができればよい。
【0064】
図6は、
図3に示すトルクセンサ10周りの詳細図である。マグネット55は、第1スリーブ56によってスタブシャフト87に取り付けられている。第1スリーブ56は、筒状の部材になっており、第1スリーブ56に対してスタブシャフト87を圧入することにより、第1スリーブ56はスタブシャフト87に取り付けられている。マグネット55は、第1スリーブ56の外周面に、例えば接着剤により固定されており、これにより、マグネット55は、スタブシャフト87と一体となって回転可能になっている。
【0065】
ステータ50は、第2スリーブ53とキャリア54とによって第1ピニオンギア88aに取り付けられている。第2スリーブ53は、筒状の部材になっており、第2スリーブ53に対して第1ピニオンギア88aを圧入することにより、第2スリーブ53は第1ピニオンギア88aに取り付けられている。キャリア54は、筒状の部材になっており、射出成形により第2スリーブ53と一体に形成されている。このため、キャリア54は、第2スリーブ53が第1ピニオンギア88aに取り付けられることにより、第2スリーブ53と共にキャリア54も第1ピニオンギア88aに取り付けられる。
【0066】
第2スリーブ53によって第1ピニオンギア88aに取り付けられるキャリア54は、第2スリーブ53に支持されることにより、第1ピニオンギア88aからスタブシャフト87側に向かった位置に配置され、スタブシャフト87の径方向における外側の位置に配置される。さらに、キャリア54は、軸方向においてマグネット55が位置する位置と同じ位置に配置されており、マグネット55の径方向に外側に配置されている。
【0067】
ステータ50は、このように配置されるキャリア54に取り付けられている。詳しくは、第1ステータ50aと第2ステータ50bとのそれぞれのステータ50は、ティース部52がキャリア54の径方向における内側に位置し、フランジ部51が、キャリア54の径方向における内側から外側に向かって突出する形態で、キャリア54に取り付けられている。これにより、一対のステータ50である第1ステータ50aと第2ステータ50bはいずれも、軸方向においてマグネット55が位置する位置と同じ位置に配置され、マグネット55の径方向に外側に配置される。
【0068】
また、第1ステータ50aと第2ステータ50bとは、第1ピニオンギア88aに取り付けられる第2スリーブ53と一体に形成されるキャリア54に取り付けられるため、第1ピニオンギア88aと一体となって回転可能になっている。このように第1ピニオンギア88aと一体となって回転可能に配置されるステータ50は、換言すると、第1ピニオンギア88aの径方向における外側に突出するフランジ部51を備え、かつ、第1ピニオンギア88aに固定されている。
【0069】
一対の集磁ヨーク43は、集磁ヨーク43を有する集磁ヨークアッセンブリ40が第2ハウジング30に固定され、第2ハウジング30はハウジング20に固定されているため、集磁ヨーク43は、第2ハウジング30を介してハウジング20に固定されている。即ち、集磁ヨーク43は、ハウジング20に対して相対移動不可に配置されている。
【0070】
ハウジング20には、内面側に軸受格納凹部25と、カバースクリュ格納凹部23と、インロー凹部22とが形成されている。ハウジング20の内面に形成される軸受格納凹部25とカバースクリュ格納凹部23とインロー凹部22とは、軸方向における位置が互いに異なる位置に形成されている。本実施形態では、軸受格納凹部25とカバースクリュ格納凹部23とインロー凹部22とは、軸方向においてラックバー88bが配置される側から第2ハウジング30が位置する側に向けて順に形成されている。
【0071】
軸受格納凹部25とカバースクリュ格納凹部23とインロー凹部22とは、径方向における大きさが互いに異なって形成されており、軸受格納凹部25、カバースクリュ格納凹部23、インロー凹部22の順で径方向における大きさが大きくなって、ハウジング20に内面に形成されている。このため、軸受格納凹部25と、カバースクリュ格納凹部23と、インロー凹部22とは、径方向における外側に向かって凹むと共に、軸方向における第2ハウジング30が位置する側からラックバー88bが配置される側に向かって凹む凹部として形成されている。
【0072】
軸受格納凹部25は、第1ピニオンギア88aを支持する軸受70を格納可能になっている。軸受70は、円環状に形成される外輪71と、外輪71よりも小さい径で円環状に形成される内輪72と、外輪71と内輪72との間に複数配置されるボール73とを有する、いわゆるボールベアリングになっている。第1ピニオンギア88aには、軸受70の内輪72が組み付けられ、軸受格納凹部25は、軸受70の外輪71が格納される。このため、軸受格納凹部25の内径は、軸受70の外輪71の外径と同程度の大きさになっている。
【0073】
また、軸受格納凹部25は、軸受70の外輪71における、軸方向においてラックバー88bが配置される側の面に対向し、軸受70の外輪71に対して軸方向から当接する面を有している。このため、軸受格納凹部25は、軸受70の外輪71が嵌め込まれ、軸受70の外輪71における、軸方向においてラックバー88bが配置される側の面に当接することにより、軸受格納凹部25に軸受70が格納される。
【0074】
軸方向において軸受格納凹部25に対して第2ハウジング30が位置する側に形成されるカバースクリュ格納凹部23は、軸受格納凹部25の直径よりも大きな直径で形成されている。カバースクリュ格納凹部23の内周面には、雌ねじ24が形成されている。カバースクリュ格納凹部23には、カバースクリュ60が格納される。
【0075】
カバースクリュ60は、内径が第1ピニオンギア88aの外径より大きく、外径がカバースクリュ格納凹部23の内径と同程度の大きさとなる円環状に形成され、外周面に雄ねじ61が形成されている。カバースクリュ60は、外周面に雄ねじ61がカバースクリュ格納凹部23の雌ねじ24に螺合することによって、カバースクリュ格納凹部23に格納される。カバースクリュ格納凹部23に格納されるカバースクリュ60の内側には、第1ピニオンギア88aが軸方向に通って配置される。
【0076】
カバースクリュ格納凹部23に格納されるカバースクリュ60は、軸受格納凹部25に格納される軸受70の軸方向における移動を規制し、軸受70をハウジング20との間で軸方向に挟み込んで固定する。即ち、カバースクリュ60は、外周面に形成される雄ねじ61を、カバースクリュ格納凹部23の雌ねじ24に螺合させ、軸受70が位置する側に向かって締め込むことにより、軸受70の外輪71における、軸方向において第2ハウジング30が位置する側の面に当接する。これにより、カバースクリュ60は、ハウジング20に形成される軸受格納凹部25における、軸受70の外輪71に対して軸方向から当接する面との間で、軸受70の外輪71を軸方向に挟み込むことにより、軸受格納凹部25に格納される軸受70を固定する。
【0077】
換言すると、軸受70は、軸受格納凹部25に格納された状態で、軸受70の外輪71がカバースクリュ60と軸受格納凹部25との間で軸方向に挟み込まれることにより、ハウジング20に組み付けられる。
【0078】
軸方向においてカバースクリュ格納凹部23に対して第2ハウジング30が位置する側に形成されるインロー凹部22は、カバースクリュ格納凹部23の直径よりも大きな直径で形成されている。インロー凹部22は、ハウジング20における第2ハウジング30が配置される端部側の内周面に、軸方向において所定の深さで凹んで形成されている。
【0079】
ハウジング20に固定される第2ハウジング30には、インロー凹部22に入り込むインロー凸部32が形成されている。インロー凸部32は、軸方向において第2ハウジング30からハウジング20が位置する側に向かって突出して形成されており、第2ハウジング30は、インロー凸部32がインロー凹部22に入り込むことにより、ハウジング20に対する径方向への位置決めが行われる。
【0080】
インロー凸部32は、円筒状に形成されて第2ハウジング30から突出しており、外径が、インロー凹部22の内径よりも僅かに小さくなっている。インロー凸部32の外周面には、シール部材であるOリング34が嵌り込む溝部が形成されており、インロー凸部32は、溝部にOリング34が嵌り込んだ状態で、インロー凹部22に入り込む。これにより、インロー凸部32がインロー凹部22に入り込んだ状態では、Oリング34によってハウジング20と第2ハウジング30との間のシール性が確保される。
【0081】
また、第2ハウジング30には、ハウジング20に対して軸方向に当接する平面部31が形成されており、第2ハウジング30は、平面部31がハウジング20に対して軸方向に当接することにより、ハウジング20に対して軸方向の位置決めが行われる。詳しくは、第2ハウジング30の平面部31は、インロー凸部32の付け根の周囲に形成され、軸方向においてハウジング20に対向する平面になっている。一方、ハウジング20における第2ハウジング30が位置する側の端部には、軸方向において第2ハウジング30の平面部31に対向する平面部21が形成されている。
【0082】
第2ハウジング30のインロー凸部32をハウジング20のインロー凹部22に入り込ませて第2ハウジング30をハウジング20に固定する際には、第2ハウジング30の平面部31がハウジング20の平面部21に当接することにより、第2ハウジング30は、ハウジング20に対して軸方向への位置決めが行われる。これにより、第2ハウジング30は、ハウジング20に対して、径方向と軸方向の位置決めが行われて固定される。
【0083】
また、第2ハウジングには集磁ヨーク43が配置されるが、このように第2ハウジング30がハウジング20に対して、軸方向においてカバースクリュ60に対して軸受70が配置される側の反対側の位置でハウジング20に固定されることにより、集磁ヨーク43は、第2ハウジング30を介してハウジング20に固定される。
【0084】
ハウジング20に第2ハウジング30を固定した状態では、ハウジング20のインロー凹部22に入り込む第2ハウジング30のインロー凸部32は、カバースクリュ格納凹部23に格納されるカバースクリュ60に対して、軸方向において軸受70が配置される側の反対側に配置される。このように、軸方向においてカバースクリュ60に対して軸受70が配置される側の反対側に配置されるインロー凸部32は、カバースクリュ60が軸受70から離れる方向へのカバースクリュ60の移動を規制する規制部材33としても設けられている。
【0085】
詳しくは、インロー凸部32の内径は、カバースクリュ60における、軸方向において第2ハウジング30が位置する側の端部である軸受側端部63の位置での外径よりも小さくなっている。このため、カバースクリュ60が、軸方向においてインロー凸部32が位置する側に移動した際には、インロー凸部32は、カバースクリュ60に当接することが可能になっている。
【0086】
このようにカバースクリュ60に当接するインロー凸部32は、軸受70から軸方向に離れる方向へのカバースクリュ60の移動を規制することが可能になっており、インロー凸部32は、規制部材33として設けられている。換言すると、第2ハウジング30には、軸受70から離れる方向へのカバースクリュ60の移動を規制する規制部材33が形成されており、規制部材33は、インロー凸部32によって形成される。
【0087】
図7は、第2ハウジング30に対して集磁ヨークアッセンブリ40が取り付けられている部分の詳細図である。
図8は、
図7に示す第2ハウジング30に集磁ヨークアッセンブリ40を取り付ける前の状態を示す詳細図である。
図9は、
図7における集磁ヨーク43が配置されている位置での斜視断面図である。集磁ヨーク43は、集磁ヨーク43やホールIC44(
図6参照)を一体のユニットとして構成する集磁ヨークアッセンブリ40に含まれており、集磁ヨークアッセンブリ40が第2ハウジング30に固定されることにより、集磁ヨーク43は、第2ハウジング30に固定される。詳しくは、集磁ヨークアッセンブリ40は、集磁ヨークアッセンブリ40における筐体である集磁ヨークハウジング41を有しており、集磁ヨーク43やホールIC44は、集磁ヨークハウジング41に格納されている。
【0088】
第2ハウジング30における集磁ヨークアッセンブリ40が取り付けられる部分には、第2ハウジング30に対して径方向に開口するセンサ開口部35が形成されている。また、第2ハウジング30のセンサ開口部35の側方には、集磁ヨークアッセンブリ40を第2ハウジング30に取り付ける取付けボルト42が螺合するねじ孔36が形成されている。
【0089】
集磁ヨークアッセンブリ40は、集磁ヨーク43を格納する集磁ヨークハウジング41が第2ハウジング30の外側からセンサ開口部35に挿入され、取付けボルト42によって第2ハウジング30に取り付けられることにより、第2ハウジング30に固定される。
【0090】
センサ開口部35に挿入されて第2ハウジング30に固定される集磁ヨークハウジング41は、集磁ヨークハウジング41に格納される集磁ヨーク43が、一対のステータ50のそれぞれのフランジ部51の間に挿入された状態で、第2ハウジング30に固定される。これにより、集磁ヨーク43は、第1集磁ヨーク43aと第2集磁ヨーク43bとのそれぞれが、一対のステータ50のフランジ部51同士の間に挿入され、軸方向において隙間を有してステータ50のフランジ部51と重なる状態で、第2ハウジング30に固定される。
【0091】
集磁ヨークアッセンブリ40が第2ハウジング30に取り付けられた状態では、トルクセンサ10で検出したトルクを電気信号として外部に出力する接続端子45は、第2ハウジング30の外部に露出して配置される。接続端子45には、トルクセンサ10からの電気信号をECU100に伝達する信号線が接続される。
【0092】
図10は、
図6に示すカバースクリュ60と軸受70とが当接している部分を示す詳細図である。
図11は、
図10に示す第2ハウジング30のインロー凸部32とカバースクリュ60との隙間についての詳細図である。第1ピニオンギア88aを回転自在に支持する軸受70は、カシメ部材74を用いて内輪72が第1ピニオンギア88aに対して相対移動不可となって組み付けられている。詳しくは、第1ピニオンギア88aには、外周面から突出する突出部88apが形成されており、軸受70は、内輪72の軸方向における一端を突出部88apに突き当てて配置する。カシメ部材74は、内輪72の軸方向における他端側に配置し、内輪72に突き当てながらカシメることにより第1ピニオンギア88aに固定する。これにより、軸受70は、第1ピニオンギア88aの突出部88apとカシメ部材74とによって内輪72が軸方向に挟み込まれ、第1ピニオンギア88aに対して相対移動不可となって組み付けられている。
【0093】
ハウジング20に形成されるカバースクリュ格納凹部23に格納されるカバースクリュ60は、内径が軸受70の内輪72の外径よりも小さくなっている。つまり、カバースクリュ60は、軸受70の外輪71に当接することにより、軸方向における軸受70の移動を規制するが、カバースクリュ60は、内周面64の内径が、軸受70の内輪72の外径よりも小さくなって形成されている。
【0094】
このように形成されるカバースクリュ60は、カバースクリュ格納凹部23に対して螺合しており、螺合しているねじを締め込むことにより、軸受格納凹部25に格納される軸受70を軸受格納凹部25との間で挟み込むことが可能になっている。即ち、カバースクリュ60は、軸方向において軸受70が位置する側に向けて締め込むことにより、カバースクリュ60における軸受70が位置する側の端部である軸受側端部63が軸受70の外輪71に当接する。これにより、カバースクリュ60は、ハウジング20に対する、軸方向における軸受70の相対的な移動を、カバースクリュ60と軸受格納凹部25とで規制することができる。
【0095】
軸受70は、第1ピニオンギア88aに対して相対移動不可となって組み付けられるため、ハウジング20に対する軸受70の相対移動をカバースクリュ60によって規制した場合、軸受70が組み付けられる第1ピニオンギア88aも、ハウジング20に対して軸方向への相対移動が不可となる。カバースクリュ60は、このようにハウジング20に対する軸受70の軸方向への相対移動を規制することにより、ハウジング20に対する第1ピニオンギア88aの軸方向への相対移動を規制する。
【0096】
カバースクリュ60の軸受側端部63が軸受70の外輪71に当接し、カバースクリュ60と軸受格納凹部25とによって軸受70を軸方向に挟み込んだ状態では、カバースクリュ60における第2ハウジング30側の端部であるセンサ側端部62と第2ハウジング30のインロー凸部32との間には、軸方向の隙間が形成される。換言すると、第2ハウジング30のインロー凸部32は、カバースクリュ60の移動を規制する規制部材33としても設けられているため、カバースクリュ60と軸受格納凹部25とによって軸受70を挟み込んだ状態では、カバースクリュ60のセンサ側端部62と規制部材33との間には、軸方向の隙間が形成される。
【0097】
図12は、
図6に示すステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との隙間についての詳細図である。第2ハウジング30の内側に配置されるトルクセンサ10は、一対の集磁ヨーク43が、一対のステータ50のそれぞれのフランジ部51同士の間に位置しており、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との間に軸方向の隙間を有して配置されている。つまり、第1ステータ50aの第1フランジ部51aと第1集磁ヨーク43aは双方の間に軸方向の隙間を有して配置されており、第2ステータ50bの第2フランジ部51bと第2集磁ヨーク43bとは双方の間に軸方向の隙間を有して配置されている。
【0098】
これらのステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との間の軸方向の隙間Gap2は、第2ハウジング30のインロー凸部32により形成される規制部材33と、カバースクリュ60のセンサ側端部62との間の軸方向の隙間Gap1よりも大きくなっている。この場合におけるステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との間の軸方向の隙間Gap2は、第1ステータ50aの第1フランジ部51aと第1集磁ヨーク43aとの間の軸方向の隙間Gap2と、第2ステータ50bの第2フランジ部51bと第2集磁ヨーク43bとの間の軸方向の隙間Gap2との双方を示している。
【0099】
詳しくは、カバースクリュ60と軸受70とが当接した状態における、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との軸方向の隙間Gap2は、フランジ部51と集磁ヨーク43との軸方向の隙間Gap2の最小値が、規制部材33とカバースクリュ60との間の軸方向の隙間Gap1よりも大きくなっている。ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との軸方向の隙間Gap2は、例えば、0.6~1.2mmの範囲内になっており、規制部材33とカバースクリュ60との間の軸方向の隙間Gap1は、例えば、0.5mm以下になっている。つまり、カバースクリュ60が軸受70に当接してカバースクリュ60と軸受格納凹部25とで軸受70を挟み込んだ状態では、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との隙間Gap2は、ステータ50が第1ピニオンギア88aと共に回転した際のいずれの状態においても、規制部材33とカバースクリュ60との間の軸方向の隙間Gap1よりも大きくなっている。
【0100】
換言すると、第2ハウジング30のインロー凸部32により形成される規制部材33は、カバースクリュ60と軸受70とが当接した状態における、カバースクリュ60と規制部材33との間の軸方向の隙間Gap1が、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との軸方向の隙間Gap2の最小値よりも小さくなって配置されている。
【0101】
次に、操舵装置80の作用について説明する。操舵装置80が搭載される車両の運転時に、ステアリングホイール81が操作をされた場合は、ステアリングホイール81に付与された操舵力は、ステアリングホイール81からステアリングシャフト82に伝えられる。ステアリングシャフト82に伝えられた操舵力は、操舵トルクとしてステアリングシャフト82からロアシャフト85に伝達され、ロアシャフト85からスタブシャフト87を経て第1ピニオンギア88aに伝達される。これにより、第1ピニオンギア88aを有するステアリングギア88は、第1ピニオンギア88aから伝達された回転運動を、ラックバー88bの直線運動に変換し、タイロッド89を動作させる。
【0102】
また、本実施形態に係る操舵装置80は、運転者の操舵をアシストする補助操舵トルクを発生させる電動モータ102を有している。電動モータ102は、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aと間に亘って配置されるトルクセンサ10により検出した操舵トルクに基づいて補助操舵トルクを発生する。
【0103】
トルクセンサ10は、スタブシャフト87に付与された操舵トルクを、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとが相対回転した際における相対回転の角度に基づいて検出する。即ち、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとは、トーションバー87aを介して連結されているため、スタブシャフト87に操舵トルクが付与された際には、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとの間では、トーションバー87aを介して操舵トルクが伝達される。その際に、トーションバー87aが僅かに捩じれることにより、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとは、相対回転をする。
【0104】
トルクセンサ10は、マグネット55がスタブシャフト87に取り付けられ、ステータ50が第1ピニオンギア88aに取り付けられることにより、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとが相対回転をした際には、トルクセンサ10が有するマグネット55とステータ50も、相対的に回転をする。マグネット55とステータ50と相対回転の角度は、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとの間で作用する操舵トルクが大きくなるに従って相対回転の角度が大きくなる。
【0105】
マグネット55とステータ50とが相対回転した場合は、マグネット55からステータ50に作用する磁束が変化する。ステータ50の近傍に配置される集磁ヨーク43は、マグネット55からステータ50に作用する磁束の変化を検出することが可能になっている。このため、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとの相対回転に伴ってマグネット55とステータ50が相対回転をした際には、ステータ50の近傍に配置される集磁ヨーク43は、マグネット55からステータ50に作用する磁束の変化を検出することができる。
【0106】
このように、集磁ヨーク43で検出する、マグネット55からステータ50に対して作用する磁束は、マグネット55とステータ50と相対回転の角度に応じて変化する。ホールIC44は、集磁ヨーク43によって検出した、マグネット55とステータ50との相対回転の角度に応じて変化する磁束を電気信号に変換し、接続端子45から第2ハウジング30の外部に伝達してECU100に伝達する。
【0107】
ECU100は、トルクセンサ10から伝達された電気信号に基づいて電動モータ102を作動させ、電動モータ102に補助操舵トルクを発生させる。つまり、トルクセンサ10のホールIC44からECU100に伝達された電気信号は、マグネット55とステータ50との相対回転の角度に応じて変化し、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとの間で作用する操舵トルクTに基づいて変化する。このため、ECU100は、トルクセンサ10のホールIC44から伝達された電気信号を、スタブシャフト87及び第1ピニオンギア88aに作用する操舵トルクTによって変化する情報として使用し、ホールIC44から伝達される電気信号に基づいて電動モータ102へ供給する電力値Xを調節し、電動モータ102に補助操舵トルクを発生させる。
【0108】
即ち、ECU100は、トルクセンサ10から操舵トルクTの信号を取得し、車速センサ101から車両の車速信号Vを取得し、さらに、電動モータ102に設けられた回転検出装置から電動モータ102の動作情報Yを取得し、これらの動作情報Yと操舵トルクTと車速信号Vとに基づいて電動モータ102に補助操舵トルクを発生させる。電動モータ102で発生した補助操舵トルクは、第2ピニオンギア88cに伝達される。第2ピニオンギア88cを有するステアリングギア88は、第2ピニオンギア88cから伝達された回転運動を、ラックバー88bの直線運動に変換する。これにより、運転者がステアリングホイール81に付与した操舵力は、電動モータ102で発生した補助操舵トルクによりアシストされる。
【0109】
また、運転者がステアリングホイール81を操舵した際には、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとは操舵力が伝達されることにより回転をする。トルクセンサ10が配置されるハウジング20及び第2ハウジング30は、車体に対して回転不可の状態で取り付けられており、スタブシャフト87と第1ピニオンギア88aとは、軸受70と軸受75を介して、ハウジング20と第2ハウジング30とに回転自在に支持されている。
【0110】
ここで、軸受70は、カバースクリュ60が軸受70に当接することにより、カバースクリュ60とハウジング20との間で軸方向に挟み込まれて固定されるが、カバースクリュ60は、カバースクリュ格納凹部23の内周面に形成される雌ねじ24に螺合することにより、軸受70の軸方向における位置を規制している。即ち、カバースクリュ格納凹部23の雌ねじ24に螺合するカバースクリュ60は、軸受70が位置する側に向かって締め込まれることにより、軸受70の外輪71に当接している。
【0111】
このため、軸受70に対するカバースクリュ60の締め込みが緩み、カバースクリュ60が軸受70の外輪71から軸方向に離れた場合、カバースクリュ60は、軸受70の軸方向における位置を規制することができなくなる。例えば、車両の走行時における振動がカバースクリュ60に対して長期間に亘って伝わり、カバースクリュ60の締め込みが徐々に緩むことによってカバースクリュ60が軸受70から離れた場合、軸受70は、軸方向においてカバースクリュ60が位置する側に移動することが可能になる。即ち、軸受70は、ハウジング20に対して軸方向に相対移動することが可能になる。
【0112】
軸受70がハウジング20に対して軸方向に相対移動することが可能になった場合は、軸受70が組み付けられる第1ピニオンギア88aも、ハウジング20に対して軸方向に相対移動することが可能になる。第1ピニオンギア88aはスタブシャフト87を介してスタブシャフト87に連結されており、ハウジング20には、取付けボルト37によって第2ハウジング30が固定されている。このため、ハウジング20に対して第1ピニオンギア88aが軸方向に相対移動することが可能になった場合は、第1ピニオンギア88aとスタブシャフト87とは、ハウジング20と第2ハウジング30とに対して、一体となって軸方向に相対移動することが可能になる。
【0113】
操舵トルクを検出するトルクセンサ10は、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との間に軸方向の隙間を有する状態で配置されているが、ステータ50は第1ピニオンギア88aに固定され、集磁ヨーク43は第2ハウジング30に固定されている。このため、ハウジング20と第2ハウジング30とに対して第1ピニオンギア88aが軸方向に相対移動した場合は、第1ピニオンギア88aに固定されるステータ50は、第2ハウジング30に固定される集磁ヨーク43に対して軸方向に相対移動する。この場合、ステータ50と集磁ヨーク43との軸方向の相対移動に伴い、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との間の軸方向の隙間が変化する。
【0114】
ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との間の隙間が変化した場合、スタブシャフト87に固定されるマグネット55からステータ50に作用する磁束を、集磁ヨーク43によって適切に検出することができなくなり、操舵トルクを適切に検出することができなくなることがある。つまり、集磁ヨーク43は、ステータ50のフランジ部51との距離が近くなり過ぎた場合、集磁ヨーク43によって磁束を検出する性能が低下してしまう。このため、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43の距離が近くなり過ぎた場合には、トルクセンサ10は、マグネット55からステータ50に対して作用する磁束に基づいて検出する操舵トルクを、精度良く検出することができなくなる。
【0115】
さらに、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43とが近付くことにより、フランジ部51と集磁ヨーク43とが干渉した場合、集磁ヨーク43やステータ50が変形し、集磁ヨーク43によって検出する磁束は、異常な値になることが考えられる。この場合、トルクセンサ10で検出する操舵トルクは、異常な値で出力されることになる。このため、本実施形態では、カバースクリュ60が緩んだ際における軸受70の軸方向における移動を、カバースクリュ60が軸方向に移動する際の移動量を制限することによって規制し、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との距離が近くなり過ぎることを抑制している。
【0116】
つまり、トルクセンサ10は、カバースクリュ60における軸受70が配置される側の反対側に規制部材33が配置され、カバースクリュ60と軸受70とが当接した状態における、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との軸方向の隙間Gap2の最小値が、カバースクリュ60と規制部材33との間の軸方向の隙間Gap1より大きくなっている。このため、カバースクリュ60が緩むことにより、カバースクリュ60が、軸受70が位置する側の反対側に移動した場合でも、カバースクリュ60は、カバースクリュ60と規制部材33との間の隙間Gap1の分だけ移動したら、規制部材33に当接する。即ち、カバースクリュ60が緩んだ際におけるカバースクリュ60の軸方向における移動量の大きさは、カバースクリュ60と軸受70とが当接した状態における、カバースクリュ60と規制部材33との間の軸方向の隙間Gap1の大きさになっている。
【0117】
カバースクリュ60が緩むことにより、軸受70がハウジング20に対してカバースクリュ60が位置する側に移動する場合、軸受70は、カバースクリュ60に当接する位置まで移動することができる。このため、カバースクリュ60が緩んだ際における軸受70の軸方向における移動量の大きさは、カバースクリュ60と同様に、カバースクリュ60と軸受70とが当接した状態における、カバースクリュ60と規制部材33との間の軸方向の隙間Gap1の大きさになっている。
【0118】
さらに、軸受70は、第1ピニオンギア88aに対して軸方向に相対移動不可となって組み付けられているため、カバースクリュ60が緩んだ際における、ハウジング20に対する第1ピニオンギア88aの軸方向における移動量の大きさは、軸受70の移動量と同じ大きさになっている。
【0119】
また、ステータ50は、第1ピニオンギア88aに固定されているため、カバースクリュ60が緩んだ際における、ステータ50の軸方向における移動量の大きさも、軸受70の移動量と同じ大きさになっている。即ち、カバースクリュ60が緩んだ際における第2ハウジング30に対するステータ50の軸方向における移動量の大きさは、カバースクリュ60と軸受70とが当接した状態における、カバースクリュ60と規制部材33との間の軸方向の隙間Gap1の大きさになっている。
【0120】
これに対し、カバースクリュ60と軸受70とが当接した状態における、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との軸方向の隙間Gap2の最小値は、カバースクリュ60と規制部材33との間の軸方向の隙間Gap1よりも大きくなっている。つまり、カバースクリュ60と軸受70とが当接した状態における、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との軸方向の隙間Gap2の最小値は、カバースクリュ60が緩んだ際におけるステータ50の軸方向における移動量の大きさよりも大きくなっている。
【0121】
このため、軸受70の移動を規制するカバースクリュ60が緩むことによってハウジング20に対して軸受70が軸方向に相対移動し、軸受70と共に第1ピニオンギア88aとステータ50とが集磁ヨーク43に対して軸方向に相対移動する場合でも、ステータ50のフランジ部51が集磁ヨーク43に干渉することを抑制できる。即ち、軸受70の移動を規制するカバースクリュ60が緩んだ場合でも、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との間に隙間を有する状態を維持することができる。これにより、軸受70をハウジング20に固定するカバースクリュ60が緩んだ場合でも、トルクセンサ10は、スタブシャフト87に固定されるマグネット55からステータ50に作用する磁束を、集磁ヨーク43によって適切に検出することができ、操舵トルクを適切に検出することができる。
【0122】
ここで、操舵装置80に大きな衝撃が作用した場合、操舵装置80が損傷することがある。例えば、操舵装置80が搭載される車両の車輪に大きな荷重が作用した場合、車輪に作用した荷重が車輪からラックバー88bに伝わり、ラックバー88bから第1ピニオンギア88aに伝わる。第1ピニオンギア88aは、このように大きな荷重が伝わることにより、軸方向に移動しようとするが、第1ピニオンギア88aは、ハウジング20に対する軸方向への相対移動が軸受70によって規制されている。このため、第1ピニオンギア88aが大きな荷重によって軸方向に移動しようとする場合は、第1ピニオンギア88aに作用する大きな荷重は、軸受70に伝達される。
【0123】
第1ピニオンギア88aから軸受70に伝達される荷重は、第1ピニオンギア88aから軸受70の内輪72に伝達されるが、一方で、軸受70の外輪71は、カバースクリュ60とハウジング20とによって軸方向への移動が規制されている。このため、軸受70の内輪72は、第1ピニオンギア88aから軸受70に伝達される大きな荷重によって、軸受70の外輪71に対して軸方向に相対移動しようとする。これにより、軸受70は、内輪72とボール73が軸方向にずれたり、外輪71とボール73が軸方向にずれたりし、内輪72と外輪71とが軸方向にずれることがある。即ち、軸受70は、第1ピニオンギア88aから軸受70に伝達される大きな荷重によって損傷し、内輪72と外輪71とが軸方向にずれることがある。
【0124】
軸受70の内輪72が第1ピニオンギア88aと共に、外輪71に対して、軸方向においてカバースクリュ60が位置する側(
図10における上側)に移動した場合、軸受70の内輪72は、カバースクリュ60に当接する。つまり、軸受70の外輪71に当接して軸受70をハウジング20に固定するカバースクリュ60は、内周面64の内径が、軸受70の内輪72の外径よりも小さくなっている。このため、軸受70の内輪72が外輪71に対して、軸方向においてカバースクリュ60が位置する側に移動した場合、軸受70の内輪72は、カバースクリュ60の内周面64の内側を通過することができず、カバースクリュ60に当接する。
【0125】
これにより、軸受70の内輪72は、外輪71に対する軸方向の相対移動が規制されるため、軸受70の内輪72が組み付けられる第1ピニオンギア88aも、ハウジング20や第2ハウジング30に対する軸方向の相対移動が規制される。従って、操舵装置80は、第1ピニオンギア88aを軸方向に移動させるような大きな荷重が操舵装置80に作用した場合でも、軸受70の内輪72の移動が規制されることにより、第1ピニオンギア88aの移動も規制され、操舵装置80に大きな損傷が発生することを抑制することができる。
【0126】
以上のように、本実施形態に係る操舵装置80のトルクセンサ10は、軸受70を固定するカバースクリュ60に対する、軸受70が配置される側の反対側に規制部材33が配置されている。これにより、カバースクリュ60が緩んだ場合でも、カバースクリュ60が移動する際の移動量を規制部材33によって制限することができ、軸受70が組み付けられる第1ピニオンギア88aに固定されるステータ50の軸方向の移動量の大きさを、カバースクリュ60と規制部材33との間の軸方向の隙間Gap1の大きさに制限することができる。さらに、カバースクリュ60と軸受70とが当接した状態における、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との軸方向の隙間Gap2の最小値が、カバースクリュ60と規制部材33との間の軸方向の隙間Gap1より大きくなっている。このため、カバースクリュ60が緩むことによってステータ50が、カバースクリュ60と規制部材33との間の隙間Gap1と同じ大きさで集磁ヨーク43に対して軸方向に相対移動した場合でも、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との間に軸方向の隙間を有する状態を維持することができる。この結果、ステータ50と集磁ヨーク43との干渉を抑制することができる。
【0127】
また、規制部材33は、ハウジング20に固定される第2ハウジング30に形成されるため、カバースクリュ60が緩んだ際にカバースクリュ60の移動量を制限する規制部材33として、専用の部材を設けることなく、規制部材33を容易に配置することができる。この結果、カバースクリュ60が緩んだ際におけるカバースクリュ60の移動量を容易に制限することができ、ステータ50と集磁ヨーク43との干渉を抑制することができる。
【0128】
また、第2ハウジング30に形成される規制部材33は、ハウジング20に形成されるインロー凹部22に入り込むことによりハウジング20に対する第2ハウジング30の位置決めを行うインロー凸部32によって形成される。このため、カバースクリュ60の移動量を制限する規制部材33は、ハウジング20に第2ハウジング30を固定することにより配置することができ、また、カバースクリュ60の移動量を制限することのできる適切な位置に配置することができる。この結果、カバースクリュ60が緩んだ際におけるカバースクリュ60の移動量を容易に制限することができ、ステータ50と集磁ヨーク43との干渉を抑制することができる。
【0129】
また、集磁ヨーク43は、第2ハウジング30に固定される集磁ヨークハウジング41に格納され、第2ハウジング30は、軸受70が固定されるハウジング20に取り付けられ、ステータ50は、軸受70が組み付けられる第1ピニオンギア88aに固定される。このため、カバースクリュ60が緩んだ際のカバースクリュ60の移動量を規制部材33によって制限することにより、軸受70と第1ピニオンギア88aとを介してステータ50の移動量を制限することができ、集磁ヨーク43に対する相対的なステータ50の移動量を制限することができる。この結果、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との距離が小さくなり過ぎることを抑制でき、ステータ50と集磁ヨーク43との干渉を抑制することができる。
【0130】
また、集磁ヨーク43を格納する集磁ヨークハウジング41は、第2ハウジング30に形成されるセンサ開口部35に挿入されて第2ハウジング30に固定されるため、集磁ヨーク43を第2ハウジング30に対して容易に高い位置精度で配置することができる。これにより、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との軸方向の隙間Gap2を適切な大きさにすることができ、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との距離が小さくなり過ぎることを抑制することができる。この結果、カバースクリュ60が緩んだ際におけるステータ50と集磁ヨーク43との干渉を抑制することができる。
【0131】
また、集磁ヨークハウジング41は、一対のステータ50のそれぞれのフランジ部51の間に集磁ヨーク43が挿入された状態で第2ハウジング30に固定されるため、集磁ヨーク43を、ステータ50のフランジ部51に対して軸方向の隙間を有する位置に容易に配置することができる。これにより、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との軸方向の隙間Gap2を適切な大きさにすることができ、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との距離が小さくなり過ぎることを抑制することができる。この結果、カバースクリュ60が緩んだ際におけるステータ50と集磁ヨーク43との干渉を抑制することができる。
【0132】
また、ハウジング20には、軸受格納凹部25と軸方向において異なる位置に、内周面に雌ねじ24が形成されるカバースクリュ格納凹部23が形成されるため、カバースクリュ60は、外周面の雄ねじ61をカバースクリュ格納凹部23の雌ねじ24に螺合させることにより、軸受格納凹部25で格納する軸受70を、カバースクリュ60と軸受格納凹部25とで挟み込んで容易に固定することができる。これにより、軸受70が組み付けられる第1ピニオンギア88aの軸方向における移動を規制することができ、第1ピニオンギア88aに固定されるステータ50の、第2ハウジング30に対する軸方向の相対移動を容易に規制することができる。従って、第1ピニオンギア88aに固定されるステータ50を、第2ハウジング30に固定される集磁ヨーク43と、ステータ50のフランジ部51との間に軸方向の隙間を有する状態で配置すると共に、隙間を有する状態を維持することができる。この結果、ステータ50と集磁ヨーク43との干渉を抑制することができる。
【0133】
また、カバースクリュ60の内径は、軸受70の内輪72の外径よりも小さいため、第1ピニオンギア88aを軸方向へ移動させる方向の大きな荷重が操舵装置80に作用し、軸受70の内輪72と外輪71が軸方向に相対移動する損傷が軸受70に発生した場合でも、外輪71に対して相対移動した内輪72をカバースクリュ60に当接させることができる。これにより、軸受70の内輪72は、外輪71に対する軸方向の相対移動が規制されるため、内輪72が組み付けられる第1ピニオンギア88aの、ハウジング20や第2ハウジング30に対する相対移動を規制することができる。この結果、操舵装置80に大きな荷重が作用した場合に操舵装置80に発生する損傷を抑えることができる。
【0134】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、カバースクリュ60が緩んだ際のカバースクリュ60の移動を規制する規制部材33は、第2ハウジング30のインロー凸部32に形成されているが、規制部材33は、第2ハウジング30のインロー凸部32以外によって形成されていてもよい。規制部材33は、カバースクリュ60と軸受70とが当接した状態における、カバースクリュ60と規制部材33との間の軸方向の隙間Gap1が、ステータ50のフランジ部51と集磁ヨーク43との軸方向の隙間Gap2の最小値よりも小さくなって配置されていれば、規制部材33の形態は問わない。
【0135】
以上、本開示の好適な実施形態を説明したが、本開示は上記の実施形態に記載されたものに限定されない。実施形態や変形例として説明した構成は、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0136】
10 トルクセンサ(トルク検出装置)
20 ハウジング
21、31 平面部
22 インロー凹部
23 カバースクリュ格納凹部
24 雌ねじ
25 軸受格納凹部
30 第2ハウジング
32 インロー凸部
33 規制部材
35 センサ開口部
37、42 取付けボルト
40 集磁ヨークアッセンブリ
41 集磁ヨークハウジング
43 集磁ヨーク
43a 第1集磁ヨーク
43b 第2集磁ヨーク
44 ホールIC
45 接続端子
50 ステータ
51 フランジ部
52 ティース部
54 キャリア
55 マグネット
60 カバースクリュ
61 雄ねじ
62 センサ側端部
63 軸受側端部
64 内周面
70、75 軸受
71 外輪
72 内輪
73 ボール
74 カシメ部材
80 操舵装置
81 ステアリングホイール
82 ステアリングシャフト
84、86 ユニバーサルジョイント
85 ロアシャフト
87 スタブシャフト
87a トーションバー
88 ステアリングギア
88a 第1ピニオンギア
88ag ギア
88ap 突出部
88b ラックバー
88bg ラック歯
88c 第2ピニオンギア
89 タイロッド
90 ラックハウジング
91 押圧部材
92 バネ
100 ECU
101 車速センサ
102 電動モータ
103 イグニッションスイッチ
104 電源装置