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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183046
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/00 20170101AFI20231220BHJP
   E06B 1/32 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
E05F5/00 D
E06B1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096425
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐野 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 知可
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 岳宏
(72)【発明者】
【氏名】小俣 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 理絵
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011CA01
2E011CA05
2E011CB01
2E011CC01
2E011CC02
(57)【要約】
【課題】断熱性能を高めることができ、さらに樹脂枠材の破損を抑制することができる建具を提供する。
【解決手段】建具は、開口枠と、開口枠にスライド可能に支持される障子と、障子の全開位置を規制するストッパ部材とを備える。横枠は、第1レール片を有する金属横枠と、第2レール片を有し、金属横枠と連結される樹脂横枠とを有する。レールは、第1レール片及び第2レール片に形成され、見込み方向に貫通する切欠部と、見付け面に形成された被係合部とを有する。ストッパ部材は、レールが挿入され、レールを跨ぐように配置される溝部と、切欠部に挿入され、レールを見込み方向に挿通する係止部と、被係合部に係脱可能な係合爪部とを有し、第1レール片の端面でストッパ部材の係止部を係止する。
【選択図】図9B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦枠と横枠とを有する開口枠と、
前記横枠に形成されたレールで案内され、前記開口枠にスライド可能に支持される障子と、
前記レールの端部に装着され、前記障子の全開位置を規制するストッパ部材と、
を備え、
前記横枠は、
第1レール片を有する金属横枠と、
前記第1レール片と係合して前記レールを形成する第2レール片を有し、前記金属横枠の枠内側見込み面を覆うように該金属横枠と連結される樹脂横枠と、
を有し、
前記レールは、
前記第1レール片及び前記第2レール片に形成され、当該レールを見込み方向に貫通する切欠部と、
見付け面に形成された被係合部と、
を有し、
前記ストッパ部材は、
前記レールが挿入され、前記レールを跨ぐように配置される溝部と、
前記切欠部に挿入され、前記レールを見込み方向に挿通する係止部と、
前記被係合部に係脱可能な係合爪部と、
を有し、
前記切欠部は、前記レールの長手方向を基準として、金属製の前記第1レール片の切欠距離よりも樹脂製の前記第2レール片の切欠距離が大きく形成されることで、前記第1レール片の端面で前記ストッパ部材の前記係止部を係止する
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記被係合部は、前記レールの第1見付け面に形成された係合穴を含み、
前記係合爪部は、前記係合穴に係合して上下方向に抜け止めされる第1爪部を含み、
前記第1爪部は、前記レールの長手方向を基準として、前記端部側とは逆側を向いた側面にテーパ面を有する
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項2に記載の建具であって、
前記被係合部は、さらに、前記レールの第2見付け面に形成された係合突起を含み、
前記係合爪部は、前記係合突起に係合して上下方向に抜け止めされる第2爪部を含み、
前記第2レール片は、前記第1レール片を覆うように設けられ、前記係合穴及び前記係合突起は、前記第2レール片に形成されている
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の建具であって、
さらに、前記レールの前記端部側に位置する前記縦枠の枠内側見込み面を覆うように該縦枠に装着され、該縦枠との間に見込み方向に沿って延びた中空部を形成する樹脂製のカバー部材を備え、
前記ストッパ部材の見込み面には、前記カバー部材の端部を収容する凹部が設けられている
ことを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項4に記載の建具であって、
前記レールの長手方向を基準とした場合に、前記切欠部の長さは、前記係止部の長さよりも大きく形成され、
前記係止部が前記切欠部に挿入された状態で、前記切欠部には、前記レールの長手方向を基準とした前記凹部の長さと同一以上の長さの隙間が確保される
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口枠で障子をスライド可能に支持した建具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅や店舗等の窓として、開口枠で左右の障子を互いにスライド可能に支持した引違い窓や、一方のみをスライド可能に支持した片引き窓等の建具がある。特許文献1には、引違い窓の建具において、障子を案内する横枠のレール端部に戸当たりストッパー(ストッパ部材)を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-061090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような建具では、断熱性能を向上させるため、開口枠を金属枠材と樹脂枠材の複合構造とする場合がある。ところが、このような複合構造の建具では、障子がストッパ部材に対して衝撃的に衝突した場合に樹脂枠材に衝撃が加えられ、樹脂枠材が破損する懸念がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、断熱性能を高めることができ、さらに樹脂枠材の破損を抑制することができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る建具は、縦枠と横枠とを有する開口枠と、前記横枠に形成されたレールで案内され、前記開口枠にスライド可能に支持される障子と、前記レールの端部に装着され、前記障子の全開位置を規制するストッパ部材と、を備え、前記横枠は、第1レール片を有する金属横枠と、前記第1レール片と係合して前記レールを形成する第2レール片を有し、前記金属横枠の枠内側見込み面を覆うように該金属横枠と連結される樹脂横枠と、を有し、前記レールは、前記第1レール片及び前記第2レール片に形成され、当該レールを見込み方向に貫通する切欠部と、見付け面に形成された被係合部と、を有し、前記ストッパ部材は、前記レールが挿入され、前記レールを跨ぐように配置される溝部と、前記切欠部に挿入され、前記レールを見込み方向に挿通する係止部と、前記被係合部に係脱可能な係合爪部と、を有し、前記切欠部は、前記レールの長手方向を基準として、金属製の前記第1レール片の切欠距離よりも樹脂製の前記第2レール片の切欠距離が大きく形成されることで、前記第1レール片の端面で前記ストッパ部材の前記係止部を係止する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、断熱性能を高めることができ、さらに樹脂枠材の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る建具を室内側から見た姿図である。
図2図1に示す建具の縦断面図である。
図3図1に示す建具の横断面図である。
図4A】上枠及びその室内側のレールに装着される第1ストッパ部材を示す縦断面図である。
図4B】下枠及びその室内側のレールに装着される第2ストッパ部材を示す縦断面図である。
図5A】上枠及びその室外側のレールに装着される第3ストッパ部材を示す縦断面図である。
図5B】下枠及びその室外側のレールに装着される第4ストッパ部材を示す縦断面図である。
図6A】第1ストッパ部材の斜視図である。
図6B図6Aとは異なる方向から見た第1ストッパ部材の斜視図である。
図7】第1ストッパ部材の平面図である。
図8図7中のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9A】上枠と外障子の戸先側に配置される縦枠との連結部、及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図9B図9Aに示す上枠の室内側のレールに第1ストッパ部材を着脱する動作を示す斜視図である。
図9C図9Bに示す第1ストッパ部材をレールに装着した状態を示す斜視図である。
図10A】上枠及びその室内側のレールに装着される第1ストッパ部材を拡大した縦断面図である。
図10B】上枠及びその室内側のレールに装着される第1ストッパ部材の模式的な正面断面図である。
図11A】上枠と内障子の戸先側に配置される縦枠との連結部、及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図11B図11Aに示す上枠の室内側のレールに第3ストッパ部材を着脱する動作を示す斜視図である。
図11C図11Bに示す第3ストッパ部材をレールに装着した状態を示す斜視図である。
図12A】第2ストッパ部材の斜視図である。
図12B図12Aとは異なる方向から見た第2ストッパ部材の斜視図である。
図13A】下枠と外障子の戸先側に配置される縦枠との連結部、及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図13B図13Aに示す下枠の室内側のレールに第2ストッパ部材を装着した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る建具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1図3に示すように、本実施形態に係る建具10は、建物躯体の開口部に固定される開口枠12と、開口枠12の内側にスライド可能に配設された外障子14及び内障子15とを備える。本実施形態では、障子14,15を左右にスライドさせることにより開口枠12の内側に形成した開口16を開閉可能な引違い窓の建具10を例示する。障子14,15は、一方が開口枠12にはめ殺され、他方のみがスライドする片引き窓であってもよい。障子の設置枚数は3枚以上であってもよい。
【0011】
開口枠12は、上枠12aと、下枠12bと、左右の縦枠12c,12dとを四周枠組みすることで矩形の開口16を形成したものである。
【0012】
本出願において、見込み方向とは建具10の室内外方向、つまり室内側から室外側に向かう方向又はその逆方向(図中に矢印Zで示す方向)をいい、見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な縦枠12c等の場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上枠12a等の場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Yで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。枠内側とは、枠状部材である開口枠12等の内側部分をいう。枠外側とは、枠状部材である開口枠12等の外側部分をいう。枠内方向とは、枠状部材の枠外側から枠内側に向かう方向をいう。枠外方向とは、枠状部材の枠内側から枠外側に向かう方向をいう。
【0013】
先ず、建具10の全体構成を説明する。
【0014】
開口枠12は、室外側に配設される金属枠材18と、室内側に配設される樹脂枠材20とを組み合わせた複合構造の窓枠である。金属枠材18は、アルミニウム等の金属材料の押出形材である。樹脂枠材20は、塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂材料の押出形材である。金属枠材18は、金属上枠18aと、金属下枠18bと、左右の金属縦枠18c,18dとを含む。樹脂枠材20は、樹脂上枠20aと、樹脂下枠20bと、左右の樹脂縦枠20c,20dとを含む。
【0015】
図2に示すように、上枠12aは、建物躯体にねじ22で固定される金属上枠18aに対し、樹脂上枠20aを連結した構成である。
【0016】
金属上枠18aは、室外側部材18a1と室内側部材18a2とを断熱材18a3で連結し、断熱性能を高めた構成である。室外側部材18a1は、開口枠12の水切り面を形成する。室外側部材18a1の枠内側見込み面には、レール片24aが突出形成されている。室内側部材18a2の枠内側見込み面には、レール片25aが突出形成されている。金属上枠18aは、断熱材18a3を用いず、1部材で構成してもよい。
【0017】
樹脂上枠20aは、ベース部材20a1と、アングル部材20a2とを有する。ベース部材20a1は、見込み方向に並んだレール片24b,25bを枠内側見込み面に有し、全体として略クランク形状を有する。アングル部材20a2は、レール片25bから室内側へと連続するように設けられる。アングル部材20a2の室内側端部は、ねじ22で建物躯体やこれに固定された額縁等に固定される。
【0018】
上枠12aの枠内側見込み面には、枠内側に突出するレール24,25が見込み方向に並んで設けられている。レール24は、外障子14をスライド可能に案内するガイドレールである。レール24は、金属上枠18aのレール片24aと、樹脂上枠20aのレール片24bとで形成され、矩形の中空形状を有する。レール25は、内障子15をスライド可能に案内するガイドレールである。レール25は、金属上枠18aのレール片25aと、樹脂上枠20aのレール片25bとで形成され、矩形の中空形状を有する。このため、レール24,25は、高い断熱性能と外観品質とが両立される。
【0019】
図2に示すように、下枠12bは、建物躯体にねじ22で固定される金属下枠18bに対し、樹脂下枠20bを連結した構成である。
【0020】
金属下枠18bは、室外側部材18b1と室内側部材18b2とを断熱材18b3で連結し、断熱性能を高めた構成である。室外側部材18b1の枠内側見込み面には、レール片26aが突出形成されている。室内側部材18b2の枠内側見込み面には、レール片27aが突出形成されている。レール片26a,26bは、下枠12bの見込み方向に並んでいる。金属下枠18bは、断熱材18b3を用いず、1部材で構成してもよい。
【0021】
樹脂下枠20bは、室外側部材20b1と、室内側部材20b2とを有する。室外側部材20b1は、室外側端部に上方に突出したレール片26bを形成した横板に見込み方向で一対の脚部を設け、これら脚部を金属下枠18bの室外側部材18b1に係合させた構成である。室内側部材20b2は、室外側端部に上方に突出したレール片27bを形成した横板を有し、この横板の室内側端部に略L字に屈曲したアングル部28を形成した構成である。室内側部材20b2は、室外側部材20b1と同様に見込み方向で一対設けられた脚部により、金属縦枠18cの室内側部材18b2に係合している。アングル部28は、ねじ22で建物躯体やこれに固定された額縁等に固定される。
【0022】
下枠12bの枠内側見込み面には、枠内側に突出するレール26,27が見込み方向に並んで設けられている。レール26は、外障子14をスライド可能に案内するガイドレールである。レール26は、金属下枠18bのレール片26aと、樹脂下枠20bのレール片26bとで形成され、矩形の中空形状を有する。レール27は、内障子15をスライド可能に案内するガイドレールである。レール27は、金属下枠18bのレール片27aと、樹脂下枠20bのレール片27bとで形成され、矩形の中空形状を有する。このため、レール26,27も、高い断熱性能と外観品質とが両立される。
【0023】
図3に示すように、縦枠12cは、全閉位置にある外障子14の戸先側に配置される。縦枠12cは、建物躯体にねじ22で固定される金属縦枠18cに対し、樹脂縦枠20cを連結した構成である。
【0024】
金属縦枠18cは、プレート部30と、レール片32aとを有する。プレート部30は、室内外方向に沿って延在し、ねじ22で建物躯体に固定される。レール片32aは、プレート部30の枠内側見込み面30aから枠内側に突出している。レール片32aは、枠内側見込み面30aの見込み方向で中央よりも室外側に寄った位置に設けられている。
【0025】
樹脂縦枠20cは、ベース部34と、アングル部35とを有する。ベース部34は、室内外方向に沿って延在し、ねじ22で金属縦枠18cの枠内側見込み面30aに固定される。ベース部34の枠内側見込み面34aには、その室外側端部から枠内側に突出したレール片32bが形成されている。アングル部35は、ベース部34の室内側端部に一体的に形成され、ねじ22で建物躯体やこれに固定された額縁等に固定される。
【0026】
縦枠12cの枠内側見込み面には、枠内側に突出するレール32が設けられている。レール32は、全閉位置にある外障子14を支持する部分である。レール32は、金属縦枠18cのレール片32aと、樹脂縦枠20cのレール片32bとで形成され、矩形の中空形状を有する。レール片32a,32bは、レール32の頂面32cで互いに係合している。
【0027】
ベース部34の枠内側見込み面34aには、カバー部材36が装着されている。カバー部材36は、例えばPVC等の樹脂材料の押出形材である。カバー部材36は、ベース部34の枠内側見込み面を覆うように樹脂縦枠20cに対して装着され、樹脂縦枠20cを金属縦枠18cに連結するねじ22の頭部を隠している。
【0028】
カバー部材36は、アングル部35の見込み面35aから連続するように配置され、見込み方向に沿って延在する見込み面36aを有する。見込み面36aは、アングル部35と隣接する位置から外障子14の室内側表面に近接する位置まで延びた略フラットな面である。これにより樹脂縦枠20cは、アングル部35からカバー部材36までの見込み面35a,36aが略フラットに形成され、同時にカバー部材36と外障子14との間の隙間が狭小化され、建具10の外観品質を向上させる。さらに、カバー部材36は、ねじ22の頭部を隠すことで、建具10の外観品質を一層向上させる。
【0029】
カバー部材36は、樹脂縦枠20cとの間に2つの中空部37a,37bを形成する。中空部37aは、樹脂縦枠20cに形成された中空部37cの枠内側に積層されるように配置され、見込み方向に沿って延在する。中空部37bは、中空部37a,37cの室内側で見付け方向に延びている。このように、3つの中空部37a~37cは、互いに見込み方向又は見付け方向に並んで配置される。その結果、建具10は、外障子14の室内側で室内に大きく露出する縦枠12cの断熱性能が向上し、結露の発生も抑制される。樹脂縦枠20c及びカバー部材36に形成される中空部の数は3以外としてもよい。
【0030】
図3に示すように、縦枠12dは、全閉位置にある内障子15の戸先側に配置される。縦枠12dは、建物躯体にねじ22で固定される金属縦枠18dに対し、樹脂縦枠20dを連結した構成である。
【0031】
金属縦枠18dは、プレート部38と、ヒレ部39と、レール片40aとを有する。プレート部38は、室内外方向に沿って延在し、ねじ22で建物躯体に固定される。ヒレ部39は、プレート部38の枠内側見込み面38aから枠内側に突出している。レール片40aは、枠内側見込み面38aの見込み方向でヒレ部39よりも室内側の位置で枠内側に突出している。
【0032】
ヒレ部39は、全閉位置にある内障子15の室外側表面15aに対向する。ヒレ部39には、室外側表面15aを臨んで開口するポケット部39aが形成されている。ポケット部39aは、熱膨張性部材41を設置することができる。熱膨張性部材41は、加熱されると膨張する部材であり、例えば加熱によって発泡する黒鉛等の加熱発泡材である。建具10は、ポケット部39aに熱膨張性部材41を設けることで、火災時にヒレ部39と内障子15との間の隙間を膨張した熱膨張性部材41で埋めることができる。
【0033】
樹脂縦枠20dは、レール片40bと、アングル部42とを有し、全体として略クランク形状を有する。レール片40bは、樹脂縦枠20dの室外側端部から枠内側に突出している。アングル部42は、樹脂縦枠20dの室内側端部に形成された略L字状の部分であり、ねじ22で建物躯体やこれに固定された額縁等に固定される。
【0034】
縦枠12cの枠内側見込み面には、枠内側に突出するレール40が設けられている。レール40は、全閉位置にある内障子15を支持する部分である。レール40は、金属縦枠18dのレール片40aと、樹脂縦枠20dのレール片40bとで形成され、矩形の中空形状を有する。レール片40a,40bは、レール40の頂面40cで互いに係合している。
【0035】
図1図3に示すように、外障子14は、面材44と、面材44の四周を囲む上框45a、下框45b、戸先框45c及び召合せ框45dとを備える。
【0036】
面材44は、例えば相互間にスペーサを挟んで一対の板ガラス44a,44bを対面させた2層の複層ガラスである。面材44は、1層でもよいし、3層以上の構造でもよい。
【0037】
各框45a~45dは、それぞれPVC等の樹脂材料の押出形材である。各框45a~45dは、枠内側を向いて開口した開口溝46を有する。開口溝46は、面材44の外周縁部を保持するものである。召合せ框45d以外の各框45a~45cは、枠外側を向いて開口したガイド溝47を有する。上框45aのガイド溝47は、上枠12aのレール24がスライド可能に挿入される。下框45bのガイド溝47は、下枠12bのレール26がスライド可能に挿入される。戸先框45cのガイド溝47は、外障子14を全閉位置とした際に縦枠12cのレール32が挿入される。
【0038】
図2に示すように、下框45bには、戸車48が配設されている。戸車48は、下框45bのガイド溝47内に配置されたローラであり、レール26の頂面26cから突出する突起26d上を転動する。これにより外障子14は、上下の框45a,45bのガイド溝47がレール24,26によってガイドされつつ、開口16内を円滑にスライドする。この際、各レール24,26の室内外両側の見付け面には、各框45a,45bのガイド溝47内に設置された気密水密材49がそれぞれ摺接する。気密水密材49は、例えばモヘアやタイト材である。
【0039】
全閉位置において、外障子14は、戸先框45cのガイド溝47が、対向する縦枠12cのレール32を呑み込むことで安定して保持される(図3参照)。この際、レール32の室内外両側の見付け面には、戸先框45cのガイド溝47内に設置された気密水密材49がそれぞれ接触する。
【0040】
図1図3に示すように、内障子15は、上枠12aのレール25と下枠12bのレール27との間でスライド可能にガイドされ、室外側の障子14に対して引違いに移動できる。内障子15は、召合せ框45dの構成が多少異なる以外は外障子14と略左右対称構造でよい。そこで、内障子15の各構成要素については外障子14の各構成要素と同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。なお、全閉位置において、内障子15は、戸先框45cのガイド溝47が、対向する縦枠12dのレール40を呑み込むことで安定して保持される(図3参照)。レール27の頂面27cにも、レール26の突起26dと同様な突起27dが設けられ、内障子15の戸車48が転動する。
【0041】
障子14,15は、いずれも全閉位置とされた場合に、互いの召合せ框45d,45d同士が召し合う(図3参照)。この際、互いの召合せ框45d,45dに設けられた煙返し片50同士が噛合し、一方の召合せ框45dの見付け面に設けられた気密水密材49が他方の召合せ框45dの対向する見付け面に接触する。また、この際、内障子15の召合せ框45dに設けたクレセント52aを外障子14の召合せ框45dに設けたクレセント受け52bに係合させ、障子14,15を施錠することもできる。
【0042】
図4A及び図4Bに示すように、室内側の上下のレール25,27の端部25A,27Aには、それぞれストッパ部材54,55が装着される。図5A及び図5Bに示すように、室外側の上下のレール24,26の端部24A,26Aには、それぞれストッパ部材56,57が装着される。
【0043】
第1ストッパ部材54は、内障子15の全開位置を規制する上部の戸当たり部材であり、レール25の縦枠12c側の端部25Aに装着される(図9C参照)。第2ストッパ部材55は、内障子15の全開位置を規制する下部の戸当たり部材であり、レール27の縦枠12c側の端部27Aに装着される(図3及び図13B参照)。第3ストッパ部材56は、外障子14の全開位置を規制する上部の戸当たり部材であり、レール24の縦枠12d側の端部24Aに装着される(図11C参照)。第4ストッパ部材57は、外障子14の全開位置を規制する下部の戸当たり部材であり、レール26の縦枠12d側の端部26Aに装着される(図3参照)。本実施形態において、端部24A,25A,26A,27Aとは、レール24~27の小口端面から所定距離、例えば10cm以内の範囲であると言うこともできる。
【0044】
各レール24~27の具体的な構成を説明する。
【0045】
図4A及び図5Aに示すように、上枠12aの室内側のレール25は、金属上枠18aのレール片25aと樹脂上枠20aのレール片25bとを係合部58で係合した構成である。係合部58は、レール25の頂面25cではなく、室内側見付け面25dに配置される。
【0046】
レール片25aは、先端に向けて室内側から室外側へと傾斜した後、再び枠内側に延び、さらに室内側へと屈曲して見込み方向に突出した屈曲部25a1と、屈曲部25a1の傾斜部分から室内側に突出したヒレ25a2とを有する。レール片25bは、直角な鉤爪状に屈曲し、レール片25aの屈曲部25a1を包含する先端部25b1を有する。先端部25b1は、屈曲部25a1を包含した状態で、その先端がヒレ25a2に係合する(係合部58)。レール片25aは、係合部58よりも根本側が樹脂製のカバー片25eによって覆われている。カバー片25eは、樹脂上枠20aのアングル部材20a2に形成されている。これによりレール25は、外面の略全体が樹脂材によって形成され、高い断熱性能と外観品質を有する。
【0047】
上枠12aの室外側のレール24は、金属上枠18aのレール片24aと樹脂上枠20aのレール片24bとを係合部59で係合した構成である。係合部59は、レール24の頂面24cに配置される。係合部59は、例えばL字状に屈曲したレール片24aの室内側端部に形成され、枠内側を向いて開口したフック状爪部に対し、レール片24bの先端に形成され、枠外側を向いて開口したフック状爪部を係合させた構成である。
【0048】
図4B及び図5Bに示すように、下枠12bの室内側のレール27は、金属下枠18bのレール片27aと樹脂下枠20bのレール片27bとを係合部60で係合した構成である。突起27dは、レール片27aにおける頂面26cを形成する部分に設けられている。突起27dは、レール片27aの室内側端部から上方に突出しており、断面略キノコ形状を有する。係合部60は、レール27の頂面27cに配置され、突起27dの室内側に隣接する。係合部60は、レール片27aの室内側端部に形成され、枠内側を向いて開口したフック状爪部に対し、レール片27bの先端に形成され、枠外側を向いて開口したフック状爪部を係合させた構成である。
【0049】
下枠12bの室外側のレール26は、金属下枠18bのレール片26aと、樹脂下枠20bのレール片26bとを係合部61で係合した構成である。突起27d及び係合部61は、室内側のレール27における突起27d及び係合部60と実質的に同一構造でよい。つまり突起26dは、レール片26aの頂面26cを形成する部分の室内側端部に設けられている。係合部61は、頂面26cに配置され、レール片26aのフック状爪部に対し、レール片26bのフック状爪部を係合させた構成である。
【0050】
次に、第1ストッパ部材54及びその周辺部でのレール25の構成を説明する。先ず、第1ストッパ部材54の構成を説明する。
【0051】
図6A図8に示すように、第1ストッパ部材54は、本体部54aと、凹部54bと、溝部54cと、係止部54dと、一対の係合爪部54e,54fとを有する。第1ストッパ部材54は、例えば樹脂材料の射出成形によって形成され、他のストッパ部材55~57も同様に成形される。
【0052】
本体部54aは、略かまぼこ屋根形状に形成され、レール25を覆うレールカバー部64と、レールカバー部64から室外側に突出し、レール24,25間に配置される突出部65とを有する(図9B及び図9Cも参照)。第1ストッパ部材54の見込み面64aは、レールカバー部64に形成され、僅かに湾曲した曲面形状を有する。凹部54bは、見込み面64aのうち、第1ストッパ部材54がレール25に装着された状態で端部25A側、つまり縦枠12c側の縁部を一段低く凹ませた部分である。
【0053】
溝部54cは、レールカバー部64の内側でレール25の長手方向に沿って延在すする。溝部54cは、見込み面64a側と逆側を向いて開口した溝部であり、レールカバー部64の側面64bにも略アーチ状に開口している。溝部54cは、見込み方向での幅寸法がレール25の幅寸法よりも僅かに大きく形成されることで、レール25を頂面25cから飲み込むことができる。
【0054】
係止部54dは、溝部54cの奥側、つまり溝部54cの側面64b側とは逆側に隣接して設けられている。係止部54dは、見込み方向沿って延び、溝部54cを堰き止めるようにダム状に配置された壁体である。係止部54dは、内障子15の召合せ框45dが衝突した際にレール25に係止される部分である。
【0055】
係合爪部54e,54fは、それぞれ見込み面64aの裏面から上下方向に突出した弾性片66と、弾性片66の先端に形成された爪部67とを有する。係合爪部54e,54fは、溝部54cの見込み方向での幅寸法と略同一の間隔を介して互いに対向し、互いの爪部67,67同士が向かい合っている。一方の係合爪部54eは、爪部67の係止部54d側を臨む側面にテーパ面67aを有する。テーパ面67aは、爪部67の側面を爪部67の突出方向に向かって次第に係止部54dから離間する方向に傾斜させた傾斜面である。
【0056】
次に、第1ストッパ部材54が装着されるレール25の端部25A及びその周辺部の構成を説明する。
【0057】
図9A図10Aに示すように、レール25は、切欠部70と、係合穴71と、係合突起72とを端部25Aに有する。
【0058】
切欠部70は、レール25の縦枠12c側の端面から所定距離離間した位置に設けられ、レール25を見込み方向に貫通している。切欠部70は、レール片25a,25bを頂面25cから枠外方向に向かって略U字状に切り欠いた形状を有し、枠内側を向いて開口している。
【0059】
図10Bに示すように、切欠部70は、レール25の長手方向を基準として、金属製のレール片25aの切欠距離Laよりも樹脂製のレール片25bの切欠距離Lbが大きい。これにより切欠部70は、縦枠12c側の内端面において、レール片25aの端面70aとレール片25bの端面70bとが段違いに配置されている。具体的には、金属製のレール片25aの端面70aが、樹脂製のレール片25bの端面70bよりも切欠部70の内側に張り出した位置にある。なお、本実施形態の切欠部70は、縦枠12c側とは逆側の内端面では、レール片25a,25bの端面が略面一に配置されている。
【0060】
図9A図9B及び図10Aに示すように、係合穴71は、レール25の室内側見付け面25dに形成された矩形状の開口である。係合穴71は、樹脂製のカバー片25eに貫通形成されている。係合穴71は、レール25の長手方向を基準として、切欠部70よりも端部25Aの小口端面に近い位置に形成されている。また、係合穴71は、係合部58よりも枠外側に配置されている。係合穴71は、第1ストッパ部材54の係合爪部54eが係合される。
【0061】
図10Aに示すように、係合突起72は、レール25の室外側見付け面25fに形成された爪状の突起である。係合突起72は、樹脂製のレール片25bに形成され、レール25の長手方向に沿って延在している。係合突起72は、レール25の高さ方向で係合穴71と略同一位置に設けられている。係合突起72は、第1ストッパ部材54の係合爪部54fが係合される。
【0062】
次に、レール25に対する第1ストッパ部材54の着脱構造及びその作用効果を説明する。
【0063】
図9Bに示すように、第1ストッパ部材54の装着動作は、先ず、第1ストッパ部材54を下から上に向かって移動させ、溝部54cにレール25を頂面25cから挿入する。そうすると、第1ストッパ部材54は、係止部54dが切欠部70に挿入され、室外側の係合爪部54fが係合突起72に係合する(図10A参照)。
【0064】
続いて、第1ストッパ部材54を端部25Aの小口端面側へとレール25の長手方向に沿ってスライドさせる。そうすると、係合爪部54fと係合突起72との係合状態が維持されたまま、今度は室内側の係合爪部54eが係合穴71に横から係合する(図10A参照)。この際、凹部54bは、縦枠12cに装着されたカバー部材36の上端面36bと、レール25との間に形成された隙間G1に挿入される。つまりカバー部材36の上端部が凹部54bに収容される。
【0065】
以上により、第1ストッパ部材54がレール25に装着される。この装着状態において、第1ストッパ部材54は、切欠部70、係合穴71、隙間G、及び上端面36bを覆い隠す(図9C及び図10A参照)。従って、建具10は高い外観品質が得られる。
【0066】
ところで、第1ストッパ部材54は、レール25に装着された状態では、係止部54dが切欠部70に挿入され、レール25を見込み方向に挿通した状態となる(図10B参照)。この際、切欠部70では、金属製のレール片25aの端面70aが樹脂製のレール片25bの端面70bよりも内側に張り出している。このため、第1ストッパ部材54がレール25に沿ってスライドして装着されることで、係止部54dは端面70aに当接又は近接する。
【0067】
従って、レール25は、内障子15が全開され、召合せ框45dが第1ストッパ部材54の側面64bに衝撃的に衝突した場合に、金属製の端面70aが係止部54dを係止する。その結果、建具10は、上枠12aに樹脂上枠20aを用いて断熱性能を高めた構成でありながらも、内障子15が第1ストッパ部材54に衝突した際の衝撃が樹脂製のレール片25bに直接的に伝達されることを回避でき、樹脂上枠20aの破損を抑制できる。また、第1ストッパ部材54は、係止部54dが樹脂材よりも熱影響を受けにくい金属材のレール片25aに当接する構成としている。このため、第1ストッパ部材54は、熱影響によって樹脂製のレール片25bが伸縮したとしても、装着位置の位置ずれや脱落等の発生を抑制できる。
【0068】
また、第1ストッパ部材54は、レール25の長手方向での係止部54dの長さLcが切欠部70の切欠距離Laよりも小さい(図10B参照)。このため、第1ストッパ部材54がレール25に装着された状態で、係止部54dは、切欠部70の端面70aとは逆側の端面との間に隙間G2を形成する。レール25の長手方向での隙間G2の長さは、隙間G1に挿入される凹部54bの長さと同一以上であるとよい。これにより第1ストッパ部材54は、係止部54dを切欠部70に挿入した状態で、レール25の長手方向に沿った十分なスライド距離が確保される。その結果、第1ストッパ部材54は、凹部54bを隙間G1に対して円滑に抜き差しすることができ、レール25に対する着脱作業が円滑なものとなる。
【0069】
図9Bに示すように、第1ストッパ部材54の取外動作は、上記した装着動作と逆の手順でよい。すなわち、第1ストッパ部材54は、先ず、レール25の長手方向に沿って端部25Aから離間する方向にスライドさせる。そうすると、係合爪部54fと係合突起72との係合状態が維持されたまま、室内側の係合爪部54eが係合穴71から抜去される。
【0070】
この際、係合爪部54eの爪部67は、係合穴71からの抜去方向で先頭側の側面にテーパ面67aを有する。このため、第1ストッパ部材54は、テーパ面67aが係合穴71の縁部を円滑に摺動し、爪部67を係合穴71から容易に抜去することができる。その結果、第1ストッパ部材54は、爪部67の側面が係合穴71の縁部に引っ掛かり、爪部67を係合穴71から円滑に抜けなくなる事態を回避でき、取外動作が容易となる。
【0071】
第1ストッパ部材54は、係合爪部54eが係合穴71から離脱した後は、上から下に向かって移動させて溝部54cをレール25から抜去すればよい。この際、室外側の係合爪部54fは、弾性片66が弾性変形することで爪部67が係合突起72から円滑に離脱する。以上により、第1ストッパ部材54がレール25から取り外される。
【0072】
次に、第3ストッパ部材56及びその周辺部でのレール24の構成を説明する。
【0073】
第3ストッパ部材56は、大部分の構成が上記した第1ストッパ部材54と同一又は同様である。このため、以下では、第3ストッパ部材56について、第1ストッパ部材54と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略し、以降のストッパ部材54,57についても同様とする。
【0074】
図5A図11B及び図11Cに示すように、第3ストッパ部材56は、凹部54bが設けられず、突出部65にスリット状の凹部65aが設けられている点が第1ストッパ部材54と異なる。従って、第3ストッパ部材56も、レールカバー部64及び突出部65が設けられた本体部54aと、溝部54cと、係止部54dと、係合爪部54e,54fとを有する。なお、第3ストッパ部材56の係合爪部54eにはテーパ面67aが設けていない。
【0075】
図11A及び図11Bに示すように、このような第3ストッパ部材56が装着されるレール24は、切欠部74と、係合穴75と、係合突起76とを端部24Aに有する。
【0076】
切欠部74は、上記したレール25の切欠部70と略同一構造でよい。つまり切欠部74でも、レール25の長手方向を基準として、金属製のレール片24aの切欠距離よりも樹脂製のレール片24bの切欠距離が大きい。これにより切欠部74でも、縦枠12d側の内端面において、レール片24aの端面78aがレール片25bの端面78bよりも内側に張り出した段違い状態で配置されている。
【0077】
図11Bに示すように、係合穴75は、レール24の室外側見付け面に形成された矩形状の開口である。係合穴75は、金属製のレール片24aに貫通形成されている。係合穴75は、レール24の長手方向を基準として、切欠部74よりも端部24Aの小口端面に近い位置に形成されている。係合穴75は、第3ストッパ部材56の係合爪部54eが係合される。
【0078】
図11Aに示すように、係合突起76は、レール24の室内側見付け面に形成された爪状の突起である。係合突起76は、樹脂製のレール片24bに形成され、レール24の長手方向に沿って延在している。係合突起76は、レール24の高さ方向で係合穴75よりも多少枠外側に設けられている。係合突起76は、第3ストッパ部材56の係合爪部54fが係合される。
【0079】
次に、レール24に対する第3ストッパ部材56の着脱構造及びその作用効果を説明する。
【0080】
図11B及び図11Cに示すように、レール24の端部24A側の縦枠12dには、カバー部材36が設けられていない。このため、凹部54bを持たない第3ストッパ部材56の装着動作は、第3ストッパ部材56を下から上に向かって移動させ、溝部54cにレール24を頂面24cから挿入するだけでよい。そうすると、第3ストッパ部材56は、係止部54dが切欠部74に挿入され、室外側の係合爪部54eが係合穴75に係合し、室内側の係合爪部54fが係合突起76に係合する(図5Aも参照)。
【0081】
以上により、第3ストッパ部材56がレール24に装着される。この装着状態において、第3ストッパ部材56は、第1ストッパ部材54の場合と同様、切欠部74、及び係合穴75を覆い隠す。また、第3ストッパ部材56は、凹部65aにヒレ部39が挿入されることで、ヒレ部39の上端面と上枠12aとの隙間も覆い隠す。従って、建具10は高い外観品質が得られる。
【0082】
さらに、第3ストッパ部材56においても、切欠部74に挿入された係止部54dは、金属製のレール片24aの端面78aに当接又は近接する。このため、建具10は、樹脂上枠20aを用いて断熱性能を高めた構成でありながらも、外障子14が第3ストッパ部材56に衝突した際の衝撃が樹脂製のレール片24bに直接的に伝達されることを回避でき、樹脂上枠20aの破損を抑制できる。勿論、第3ストッパ部材56についても、樹脂材の伸縮に起因した装着位置の位置ずれや脱落等の発生を抑制でき、他のストッパ部材55,57についても同様な効果が得られる。
【0083】
図11Bに示すように、第3ストッパ部材56の取外動作は、上記した装着動作と逆の手順でよい。すなわち、第3ストッパ部材56は、上から下に押し下げるだけで、係合爪部54e,54fの弾性片66がそれぞれ外側に弾性変形し、係合穴75及び係合突起76から離脱する。このように、第3ストッパ部材56は、取外動作時にレール24の長手方向に対するスライドが不要であり、係合爪部54eは弾性片66の弾性変形によって円滑に係合穴75から抜去可能である。このため、第3ストッパ部材56は、その係合爪部54eにテーパ面67aを設けない構成としている。
【0084】
次に、第2ストッパ部材55及びその周辺部でのレール27の構成を説明する。
【0085】
図12A図12B及び図13Bに示すように、第2ストッパ部材55は、凹部54b及び突出部65が設けられず、本体部54aに連接部80及びカバー部81が設けられている点が異なる以外は、第1ストッパ部材54と略上下対称構造である。従って、第2ストッパ部材55も、レールカバー部64が設けられた本体部54aと、溝部54cと、係止部54dと、係合爪部54e,54fとを有する。
【0086】
連接部80は、湾曲した円弧状の見込み面64aの一側部に設けられ、見込み方向に沿ったフラットな平面を有する立壁状部分である。カバー部81は、連接部80の室外側側部から斜め後方に張り出した壁板である。
【0087】
図13Aに示すように、このような第2ストッパ部材55が装着されるレール27は、切欠部84と、係合穴85と、係合突起86とを端部27Aに有する。
【0088】
切欠部84は、上記したレール25の切欠部70と同様な構造である。つまり切欠部84でも、レール27の長手方向を基準として、金属製のレール片27aの切欠距離よりも樹脂製のレール片27bの切欠距離が大きい。但し、レール27は、切欠部84よりも端部27Aの小口端面側では、樹脂製のレール片27b自体を除去し、金属製のレール片27aのみを残した構造としている。このため、切欠部84は、縦枠12c側の内端面において、レール片27aの端面88のみが配置される。
【0089】
係合穴85は、レール27の室外側見付け面に形成された矩形状の開口である。係合穴85は、金属製のレール片27aに貫通形成されている。係合穴85は、レール27の長手方向を基準として、切欠部84よりも端部27Aの小口端面に近い位置に形成されている。係合穴85は、第2ストッパ部材55の係合爪部54eが係合される。
【0090】
係合突起86は、レール27の室内側見付け面に形成された爪状の突起である。本実施形態の係合突起86は、レール片27aの係合部60を形成するフック状爪部の下面が兼用している(図4B参照)。係合突起86は、レール27の高さ方向で係合穴75よりも多少枠内側に設けられている。係合突起86は、第2ストッパ部材55の係合爪部54fが係合される。
【0091】
次に、レール27に対する第2ストッパ部材55の着脱構造及びその作用効果を説明する。
【0092】
図13A及び図13Bに示すように、第2ストッパ部材55の着脱動作は、第1ストッパ部材54の着脱動作と上下逆である以外は略同一である。すなわち、第2ストッパ部材55は、先ず、上から下に向かって移動させて溝部54cにレール27を頂面27cから挿入する。そうすると、第2ストッパ部材55は、係止部54dが切欠部84に挿入され、室内側の係合爪部54fが係合突起86に係合する(図4B参照)。
【0093】
続いて、第2ストッパ部材55を端部27Aの小口端面側へとレール27の長手方向に沿ってスライドさせる。そうすると、係合爪部54fと係合突起86との係合状態が維持されたまま、今度は室外側の係合爪部54eが係合穴85に係合する(図4Bも参照)。この際、連接部80は、縦枠12cに装着されたカバー部材36の下端面36cと下枠12bの枠内側見込み面90と間に形成された隙間を埋めるように配置される。
【0094】
以上により、第2ストッパ部材55がレール27に装着される。この装着状態において、第2ストッパ部材55は、切欠部84、係合穴85、下端面36c、及び下端面36cと枠内側見込み面90との間の隙間を覆い隠す。従って、建具10は高い外観品質が得られる。
【0095】
さらに、第2ストッパ部材55においても、切欠部84に挿入された係止部54dは、金属製のレール片24aの端面88に当接又は近接する。このため、建具10は、下枠12bに樹脂下枠20bを用いて断熱性能を高めた構成でありながらも、内障子15が第2ストッパ部材55に衝突した際の衝撃が樹脂製のレール片27bに直接的に伝達されることを回避でき、樹脂下枠20bの破損を抑制できる。
【0096】
第2ストッパ部材55の取外動作は、上記した装着動作と逆の手順でよいため、詳細な説明を省略する。第1ストッパ部材54の場合と同様、第2ストッパ部材55の取外動作時にも、テーパ面67aの作用によって係合爪部54eが円滑に係合穴85から抜去される。
【0097】
図12A図12B及び図13Bに示すように、第2ストッパ部材55は、室外側及び溝部54c側の外周壁の下端面に複数の水抜き凹部92を有する。水抜き凹部92は、第2ストッパ部材55がレール27に装着された際、下枠12bの枠内側見込み面90との間に室外側へと連通する水抜き穴を形成する。これにより下枠12bの枠内側見込み面90に溜まった雨水等をこの水抜き穴を介して室外側へと円滑に排水できる。
【0098】
図3及び図5Bに示すように、第4ストッパ部材57の構成及びレール26への取付構造は、第3ストッパ部材56の構成及びレール24への取付構造と略上下反転構造でよいため、詳細な説明は省略する。なお、第4ストッパ部材57が装着されるレール26の端部26Aは、内障子15の室外側にあって樹脂下枠20bが装着されない領域である。このため、第4ストッパ部材57は、金属下枠18bのレール片26aに装着すればよい。
【0099】
上記では、ストッパ部材54~57の構成がそれぞれ多少異なる例を示したが、例えばストッパ部材55~57は、第1ストッパ部材54と同一又は対象な構造としてもよく、レール24~27についても同様である。
【0100】
上記では、第1ストッパ部材54は、その室内外の見付け面25d,25fに係合穴71及び係合突起72を有する構成を例示したが、係合爪部54e,54fが係合する被係合部は係合穴71及び係合突起72の一方のみで構成されてもよく、他のストッパ部材55~57についても同様でよい。この場合、係合爪部54e,54fも一方のみを用いればよい。
【0101】
以上のように、本発明の第1態様に係る建具は、縦枠と横枠とを有する開口枠と、前記横枠に形成されたレールで案内され、前記開口枠にスライド可能に支持される障子と、前記レールの端部に装着され、前記障子の全開位置を規制するストッパ部材と、を備え、前記横枠は、第1レール片を有する金属横枠と、前記第1レール片と係合して前記レールを形成する第2レール片を有し、前記金属横枠の枠内側見込み面を覆うように該金属横枠と連結される樹脂横枠と、を有し、前記レールは、前記第1レール片及び前記第2レール片に形成され、当該レールを見込み方向に貫通する切欠部と、見付け面に形成された被係合部と、を有し、前記ストッパ部材は、前記レールが挿入され、前記レールを跨ぐように配置される溝部と、前記切欠部に挿入され、前記レールを見込み方向に挿通する係止部と、前記被係合部に係脱可能な係合爪部と、を有し、前記切欠部は、前記レールの長手方向を基準として、金属製の前記第1レール片の切欠距離よりも樹脂製の前記第2レール片の切欠距離が大きく形成されることで、前記第1レール片の端面で前記ストッパ部材の前記係止部を係止する。このような構成によれば、障子が全開される際に衝突するストッパ部材の係止部が、切欠部内で金属製の第1レール片の端面で係止される。その結果、当該建具は、横枠に樹脂枠材を用いて断熱性能を高めた構成でありながらも、障子がストッパ部材に衝突した際の衝撃が樹脂製のレール片に直接的に伝達されることを回避でき、樹脂枠材の破損を抑制できる。
【0102】
前記被係合部は、前記レールの第1見付け面に形成された係合穴を含み、前記係合爪部は、前記係合穴に係合して上下方向に抜け止めされる第1爪部を含み、前記第1爪部は、前記レールの長手方向を基準として、前記端部側とは逆側を向いた側面にテーパ面を有する構成としてもよい。そうすると、ストッパ部材は、係合穴に第1爪部が係合した状態でその係合方向である上下方向と直交するレールの長手方向にスライドさせた際に、第1爪部を係合穴から円滑に離脱させることができる。
【0103】
前記被係合部は、さらに、前記レールの第2見付け面に形成された係合突起を含み、前記係合爪部は、前記係合突起に係合して上下方向に抜け止めされる第2爪部を含み、前記第2レール片は、前記第1レール片を覆うように設けられ、前記係合穴及び前記係合突起は、前記第2レール片に形成された構成としてもよい。そうすると、レールは、金属製の第1レール片が樹脂製の第2レール片で覆われた構成となり、断熱性能が一層向上する。
【0104】
さらに、前記レールの前記端部側に位置する前記縦枠の枠内側見込み面を覆うように該縦枠に装着され、該縦枠との間に見込み方向に沿って延びた中空部を形成する樹脂製のカバー部材を備え、前記ストッパ部材の見込み面には、前記カバー部材の端部を収容する凹部が設けられた構成としてもよい。そうすると、カバー部材によって縦枠での断熱性能及び外観品質が向上し、さらにその端部をストッパ部材の凹部によって隠すことで外観品質が一層向上する。
【0105】
前記レールの長手方向を基準とした場合に、前記切欠部の長さは、前記係止部の長さよりも大きく形成され、前記係止部が前記切欠部に挿入された状態で、前記切欠部には、前記レールの長手方向を基準とした前記凹部の長さと同一以上の長さの隙間が確保される構成としてもよい。そうすると、ストッパ部材は、係止部を切欠部に挿入した状態で、レールの長手方向に沿った十分なスライド距離を確保でき、レールに対する着脱作業が一層円滑になる。
【0106】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0107】
10 建具、12 開口枠、12a 上枠、12b 下枠、12c,12d 縦枠、14 外障子、15 内障子、18a 金属上枠、18b 金属下枠、18c,18d 金属縦枠、24,25,26,27,32,40 レール、24a,24b,25a,25b,26a,26b,27a,27b,32a,32b,40a,40b レール片、36 カバー部材、54 第1ストッパ部材、54a 本体部、54b,65a 凹部、54c 溝部、54d 係止部、54e,54f 係合爪部、55 第2ストッパ部材、56 第3ストッパ部材、57 第4ストッパ部材、67 爪部、67a テーパ面、70,74,84 切欠部、71,75,85 係合穴、72,76,86 係合突起
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B