IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図1
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図2
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図3
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図4
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図5
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図6
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図7
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図8
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図9
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図10
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図11
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図12
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図13
  • 特開-試料採取キットおよび試料採取方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183047
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】試料採取キットおよび試料採取方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20231220BHJP
   A61M 39/18 20060101ALI20231220BHJP
   A61M 39/24 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61J1/20 314B
A61M39/18
A61M39/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096426
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】川口 悟司
(72)【発明者】
【氏名】松岡 千恵子
(72)【発明者】
【氏名】丸田 千明
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕輔
【テーマコード(参考)】
4C047
4C066
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047AA11
4C047CC01
4C047DD02
4C047DD03
4C047DD05
4C047DD11
4C047DD22
4C047DD33
4C047GG15
4C047HH07
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066EE01
4C066EE06
4C066EE12
4C066FF01
4C066GG01
4C066GG06
4C066GG07
4C066JJ01
4C066JJ07
4C066JJ10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改良された試料採取キットおよび試料採取方法を提供する。
【解決手段】試料採取キット10は、医療用バッグ20が接続可能であり、内部に液体試料の流路を形成するチューブ部材180と、所定量の前記液体試料を、陰圧により内部へ誘導して一時的に収容する減圧容器112を有する収容部42と、前記液体試料を前記減圧容器112から採取する培養ボトル30が接続可能なアダプタ50と、を備え、前記収容部42は、前記チューブ部材180の内部と前記減圧容器112の内部との連通を可能にするホルダ122と、前記減圧容器112と前記ホルダ122との間への外気の流入を遮断する遮断部材132と、をさらに備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用バッグが接続可能であり、内部に液体試料の流路を形成するチューブ部材と、
前記チューブ部材に接続され、所定量の前記液体試料を、陰圧により内部へ誘導して一時的に収容する減圧容器を有する収容部と、
前記チューブ部材に接続され、前記液体試料を前記減圧容器から採取する培養ボトルが接続可能なアダプタと、を備え、
前記収容部は、
前記減圧容器を保持し、前記減圧容器と接続可能であり、前記減圧容器と接続した際に、前記チューブ部材の内部と前記減圧容器の内部との連通を可能にするホルダと、
前記減圧容器と前記ホルダとの間への外気の流入を遮断する遮断部材と、
をさらに備える、試料採取キット。
【請求項2】
請求項1に記載の試料採取キットであって、
前記ホルダは、
筒状に形成され、前記減圧容器を前記ホルダの軸方向に相対移動可能に保持するホルダ本体と、
前記ホルダ本体の内側に配置され、前記減圧容器の封止部に穿刺可能な針部と、を有し、
前記ホルダを前記減圧容器と接続するために前記減圧容器が前記ホルダ本体の内側に押し込まれることに伴い、前記針部が前記封止部に穿刺される、試料採取キット。
【請求項3】
請求項2に記載の試料採取キットであって、
前記遮断部材は、前記減圧容器の外周面と前記ホルダ本体の内周面との間に配置される環状の封止部材である、試料採取キット。
【請求項4】
請求項3に記載の試料採取キットであって、
前記封止部材は、前記ホルダ本体の前記内周面に設けられたホルダ側パッキンを含み、
前記ホルダに前記減圧容器を接続するために前記ホルダ本体の内側に前記減圧容器の頂部が押し込まれる間、前記ホルダ側パッキンが前記減圧容器の前記外周面を摺動する、試料採取キット。
【請求項5】
請求項4に記載の試料採取キットであって、
前記封止部材は、前記減圧容器の前記外周面に設けられた容器側パッキンを含み、
前記ホルダに前記減圧容器を接続するために前記ホルダ本体の内側に前記減圧容器の前記頂部が押し込まれる間、前記容器側パッキンが前記ホルダの前記内周面を摺動する、試料採取キット。
【請求項6】
請求項3に記載の試料採取キットであって、
前記ホルダ本体は、前記チューブ部材に接続された第1端部と、前記減圧容器が挿入された開口が設けられた第2端部とを有し、
前記封止部材は、前記減圧容器の前記外周面に設けられた容器側パッキンを含み、
前記第1端部と前記第2端部との間で前記ホルダ本体の前記内周面に突起部が設けられ、
前記ホルダに前記減圧容器が接続される前において、前記容器側パッキンは前記突起部と前記第2端部との間に位置し、
前記ホルダに前記減圧容器が接続されるときに、前記容器側パッキンが前記突起部を乗り越えることにより、前記ホルダからの前記減圧容器の脱離が阻止される、試料採取キット。
【請求項7】
請求項2に記載の試料採取キットであって、
前記遮断部材は、前記減圧容器の外周面と前記ホルダ本体の内周面との間に形成される環状領域を覆う被覆部材である、試料採取キット。
【請求項8】
請求項7に記載の試料採取キットであって、
前記ホルダ本体は、前記減圧容器が挿入された開口を有し、
前記被覆部材は、前記開口を覆うように、前記ホルダ本体に環状に取り付けられるとともに、前記減圧容器の底部を収容する袋部材を含む、試料採取キット。
【請求項9】
請求項7に記載の試料採取キットであって、
前記ホルダ本体は、前記減圧容器が挿入された開口を有し、
前記被覆部材は、前記環状領域を覆うように、前記ホルダ本体に環状に取り付けられるとともに、前記減圧容器を環状に囲むように前記減圧容器に取り付けられる蛇腹状の膜部材を含む、試料採取キット。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の試料採取キットであって、
前記減圧容器は、第1減圧容器と、第2減圧容器とを含み、
前記ホルダは、前記第1減圧容器が接続される第1ホルダと、前記第2減圧容器が接続される第2ホルダとを含み、
前記試料採取キットは、前記アダプタと前記第1ホルダと前記第2ホルダとの連通状態を切り替える切替機構をさらに備える、試料採取キット。
【請求項11】
請求項10に記載の試料採取キットであって、
前記チューブ部材は、
前記医療用バッグに接続可能な採取チューブと、
前記第1ホルダに接続された第1チューブと、
前記第2ホルダに接続された第2チューブと、
を有し、
前記第1ホルダは、前記第1チューブを介して前記採取チューブと連通可能であり、
前記第2ホルダは、前記第2チューブを介して前記採取チューブと連通可能であり、
前記切替機構は、
前記第1チューブに取り付けられた第1クランプと、
前記第2チューブに取り付けられた第2クランプと、
を有する、試料採取キット。
【請求項12】
請求項10に記載の試料採取キットであって、
前記チューブ部材は、前記医療用バッグに接続可能な採取チューブを有し、
前記切替機構は、前記採取チューブに連結された十字活栓を有し、
前記十字活栓は、前記採取チューブと前記第1ホルダとを連通させる第1切替状態と、前記採取チューブと前記第2ホルダとを連通させる第2切替状態と、前記第1ホルダと前記アダプタとを連通させる第3切替状態と、前記第2ホルダと前記アダプタとを連通させる第4切替状態と、に選択的に切替可能である、試料採取キット。
【請求項13】
請求項10に記載の試料採取キットであって、
前記チューブ部材は、
前記医療用バッグに接続可能な採取チューブと、
前記第1ホルダに接続された第1チューブと、
前記第2ホルダに接続された第2チューブと、
を有し、
前記第1ホルダは、前記第1チューブを介して前記採取チューブと連通可能であり、
前記第2ホルダは、前記第2チューブを介して前記採取チューブと連通可能であり、
前記切替機構は、
前記第1チューブに取り付けられた第1クランプと、
前記第2チューブに取り付けられた第2クランプと、
を有し、
前記アダプタは、
前記第1チューブに接続されるとともに前記培養ボトルとして第1培養ボトルが接続される第1アダプタと、
前記第2チューブに接続されるとともに前記培養ボトルとして前記第1培養ボトルとは異なる第2培養ボトルが接続される第2アダプタとを含む、試料採取キット。
【請求項14】
請求項10に記載の試料採取キットであって、
前記チューブ部材は、
前記医療用バッグに接続可能な採取チューブと、
前記第1ホルダに接続された第1チューブと、
前記第2ホルダに接続された第2チューブと、
を有し、
前記第1ホルダは、前記第1チューブを介して前記採取チューブと連通可能であり、
前記第2ホルダは、前記第2チューブを介して前記採取チューブと連通可能であり、
前記試料採取キットは、前記採取チューブに接続される空気回収部材をさらに備え、
前記空気回収部材は、前記医療用バッグから前記採取チューブ内を前記液体試料が移動することにより前記採取チューブ内から排出される空気を回収する、試料採取キット。
【請求項15】
請求項1に記載の試料採取キットを用いた試料採取方法であって、
前記医療用バッグと前記チューブ部材とを接合する接合工程と、
前記遮断部材により前記外気の流入を遮断しながら前記減圧容器を前記ホルダに接続し、前記減圧容器の陰圧により前記チューブ部材を介して前記医療用バッグから前記液体試料を前記減圧容器に収容させる収容工程と、
前記アダプタに前記培養ボトルを接続し、前記培養ボトルの陰圧により前記減圧容器内から前記培養ボトル内へと前記液体試料を移送し、前記培養ボトルを前記アダプタから脱離する採取工程と、
を備える、試料採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料採取キットおよび試料採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッグ(ポーチ)内の血液製剤を真空ボトルに無菌的にサンプリングするためのサンプリング方法およびサンプリング装置が開示されている。バッグ内の血液製剤は例えば血小板である。サンプリング装置は、バッグに接続されるチューブと、チューブを介して液体試料を貯留するチャンバと、チャンバに接続されたサンプルポートとを含む。
【0003】
サンプリング装置の使用において、チャンバの目盛と液体試料の液面とを目視で確認しながら、チャンバ内に所望量の液体試料を測り取った後、サンプルポートに真空ボトルが接続される。サンプルポートに真空ボトルが接続されると、真空ボトル内の陰圧により液体試料がチャンバ内から真空ボトル内へと移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8777921号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明によると、チャンバ内に所望量の液体試料を測り取るのが困難である。そのため、真空ボトルに採取される液体試料が所望量を越える、または所望量に満たない場合がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、試料採取キットであって、医療用バッグが接続可能であり、内部に液体試料の流路を形成するチューブ部材と、前記チューブ部材に接続され、所定量の前記液体試料を、陰圧により内部へ誘導して一時的に収容する減圧容器を有する収容部と、前記チューブ部材に接続され、前記液体試料を前記減圧容器から採取する培養ボトルが接続可能なアダプタと、を備え、前記収容部は、前記減圧容器を保持し、前記減圧容器と接続可能であり、前記減圧容器と接続した際に、前記チューブ部材の内部と前記減圧容器の内部との連通を可能にするホルダと、前記減圧容器と前記ホルダとの間への外気の流入を遮断する遮断部材と、をさらに備える。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様による試料採取キットを用いた試料採取方法であって、前記医療用バッグと前記チューブ部材とを接合する接合工程と、前記遮断部材により前記外気の流入を遮断しながら前記減圧容器を前記ホルダに接続し、前記減圧容器の陰圧により前記チューブ部材を介して前記医療用バッグから前記液体試料を前記減圧容器に収容させる収容工程と、前記アダプタに前記培養ボトルを接続し、前記培養ボトルの陰圧により前記減圧容器内から前記培養ボトル内へと前記液体試料を移送し、前記培養ボトルを前記アダプタから脱離する採取工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定量の液体試料を精度良く培養ボトルに採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施の形態に係る試料採取キットと、医療用バッグと、培養ボトルとを示す図である。
図2図2Aは、初期状態の収容部の断面図である。図2Bは、使用中の収容部の断面図である。
図3図3は、医療用バッグのチューブと試料採取キットの採取チューブとを接合する接合工程を説明するための図である。
図4図4は、医療用バッグから液体試料を第1減圧容器に収容させる第1収容工程を説明するための図である。
図5図5は、医療用バッグから液体試料を第2減圧容器に収容させる第2収容工程を説明するための図である。
図6図6は、試料採取キットの採取チューブを封止して医療用バッグを試料採取キットから切り離す封止工程を説明するための図である。
図7図7は、液体試料の第1採取工程で、第1減圧容器内の液体試料を第1培養ボトルへと移送した状態を示す図である。
図8図8は、液体試料の第1採取工程で、第1培養ボトルをアダプタから脱離した状態を示す図である。
図9図9は、液体試料の第2採取工程で、第2減圧容器内の液体試料を第2培養ボトルへと移送した状態を示す図である。
図10図10Aは、変形例1における初期状態の収容部の断面図である。図10Bは、使用中の収容部の断面図である。
図11図11は、変形例2における初期状態の収容部の断面図である。
図12図12は、変形例3における初期状態の収容部の断面図である。
図13図13は、液体試料の流路の切替機構として十字活栓が用いられた変形例4を示す図である。
図14図14は、アダプタが第1アダプタおよび第2アダプタを含む変形例5を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、一実施の形態に係る試料採取キット10と、医療用バッグ20と、培養ボトル30とを示す図である。本実施の形態に係る試料採取キット10は、医療用バッグ20内の血液製剤から培養ボトル30に液体試料を採取するために使用される。医療用バッグ20には血液製剤(例えば、血小板製剤)が収容されている。
【0012】
試料採取キット10は、チューブ部材180、2つの収容部42、44、アダプタ50、空気回収部材60および切替機構90を有する。以下、一方の収容部42を「第1収容部42」と呼び、他方の収容部44を「第2収容部44」と呼ぶ。第1収容部42、第2収容部44、アダプタ50および空気回収部材60は、チューブ部材180に接続されている。チューブ部材180は、内部に液体試料の流路を形成する。チューブ部材180は、採取チューブ70、第1チューブ72、第2チューブ74、および移送チューブ76を有する。
【0013】
採取チューブ70の一端は、初期状態で閉じている。採取チューブ70の一端は、例えば無菌接合装置により医療用バッグ20のチューブ20aと接合可能である。医療用バッグ20のチューブ20aは、医療用バッグ20の出力ポート20bを介して医療用バッグ20の内部に連通している。第1チューブ72と第2チューブ74と移送チューブ76とが、採取チューブ70から分岐している。
【0014】
第1チューブ72は、第1収容部42に接続されている。第2チューブ74は、第2収容部44に接続されている。移送チューブ76は、アダプタ50に接続されている。
【0015】
図2Aは、初期状態の第1収容部42の断面図である。図2Aに示すように、第1収容部42は、第1減圧容器112、第1ホルダ122および遮断部材132を有する。
【0016】
第1減圧容器112は所定量(例えば8mL~10mL)の液体試料を収容可能である。第1減圧容器112内は陰圧に設定されている。第1減圧容器112は、採取チューブ70および第1ホルダ122を介して、医療用バッグ20(図1参照)から所定量の液体試料を、第1減圧容器112の陰圧により内部へ誘導して一時的に収容する。
【0017】
第1減圧容器112は、有底筒状の容器本体112aと、容器本体112aに装着された封止部112bとを有する。容器本体112aは、内部を視認可能であるように透明性を有することが好ましい。封止部112bは、容器本体112aの頂部112pに設けられた口部に配置される。封止部112bは例えばゴム栓である。
【0018】
第1ホルダ122は、第1減圧容器112を保持し、第1減圧容器112と接続可能である。第1ホルダ122は、第1チューブ72を介して採取チューブ70と連通可能である。第1ホルダ122は、第1減圧容器112と接続した際に、第1チューブ72の内部と第1減圧容器112の内部との連通を可能にする。第1ホルダ122および第1減圧容器112に用いられる素材は、例えばPET等の樹脂素材である。
【0019】
第1ホルダ122は、ホルダ本体122aと針部122bと連結筒122cとを有する。ホルダ本体122aは、筒状に形成される。ホルダ本体122aは、第1減圧容器112を第1ホルダ122の軸方向AXに相対移動可能に保持する。ホルダ本体122aは、連結筒122cを介して第1チューブ72に接続された第1端部122pと、当該第1端部122pと反対側の端部である第2端部122qとを有する。第2端部122qには開口122eが設けられる。ホルダ本体122aの開口122eに第1減圧容器112が挿入されている。
【0020】
針部122bおよび連結筒122cは、ホルダ本体122aの第1端部122pに取り付けられる。針部122bは、ホルダ本体122aの内側に配置されており、第1減圧容器112の封止部112bに穿刺可能である。針部122bは、ホルダ本体122aの第1端部122pから開口122eに向かってホルダ本体122aの内側へ延在する。連結筒122cは、第1端部122pから離れる方向に、ホルダ本体122aの外側へ延在する。第1チューブ72は、連結筒122cを介して針部122bに連通する。
【0021】
遮断部材132は、第1減圧容器112と第1ホルダ122との間への外気の流入を遮断する。本実施の形態において、遮断部材132は、ホルダ側パッキン132hおよび容器側パッキン132cを含む。ホルダ側パッキン132hおよび容器側パッキン132cに用いられる素材は、例えばゴムまたは樹脂等である。ホルダ側パッキン132hおよび容器側パッキン132cは、いずれも、第1減圧容器112の外周面112sと、第1ホルダ122のホルダ本体122aの内周面122sとの間に配置される環状の封止部材である。
【0022】
ホルダ側パッキン132hおよび容器側パッキン132cは、いずれも第1減圧容器112と第1ホルダ122との間の空間Sへの外気の流入を阻止する。このため、当該空間Sの滅菌状態が維持される。なお、第1収容部42には、遮断部材132として、ホルダ側パッキン132hおよび容器側パッキン132cのいずれか一方のみが設けられてもよい。
【0023】
容器側パッキン132cは、第1減圧容器112の外周面112sに設けられる。容器側パッキン132cは、第1減圧容器112の外周面112sに形成された環状溝112gに配置される。容器側パッキン132cの内周部は、当該内周部の全周に亘って第1減圧容器112の外周面112s(環状溝112g)に気密に密着する。容器側パッキン132cの外周部は、当該外周部の全周に亘ってホルダ本体122aの内周面122sに気密に密着する。
【0024】
初期状態において、容器側パッキン132cは、ホルダ本体122aの第1端部122pと第2端部122qとの間にある。第1減圧容器112の外周面112sとホルダ本体122aの内周面122sとの間に形成される領域を、環状領域200と呼ぶ。容器側パッキン132cは、ホルダ本体122aの内側(空間S)への外気の流入を、環状領域200の位置で遮断する。
【0025】
ホルダ側パッキン132hは、ホルダ本体122aの第2端部122qに配置されている。ホルダ側パッキン132hは、ホルダ本体122aの内側に位置する。ホルダ側パッキン132hは、ホルダ本体122aの内周面122sに形成された環状溝122gに配置される。図2Aに示すホルダ側パッキン132hの内周部は、当該内周部の全周に亘ってホルダ本体122aの内周面122s(環状溝122g)に気密に密着する。ホルダ側パッキン132hの外周部は、当該外周部の全周に亘って第1減圧容器112の外周面112sに気密に密着する。
【0026】
図2Aに示すように、第1減圧容器112がホルダ本体122aの内側へ押し込まれる前の初期状態において、第1減圧容器112の封止部112bは、第1ホルダ122の針部122bから離間している。また初期状態において、第1減圧容器112の頂部112p、容器側パッキン132cおよびホルダ側パッキン132hは、ホルダ本体122aの内側に位置する。
【0027】
図2Bは、使用中の第1収容部42の断面図である。図2Bに示すように、第1減圧容器112がホルダ本体122aの内側へ押し込まれることにより、第1ホルダ122のホルダ本体122aの針部122bが、第1減圧容器112の封止部112bを穿刺する。針部122bの第1減圧容器112への穿刺により、第1ホルダ122は第1減圧容器112に接続される。第1ホルダ122のホルダ本体122aの内側に第1減圧容器112の頂部112pが押し込まれる間、ホルダ側パッキン132hは、第1減圧容器112の外周面112sを摺動する。それとともに、容器側パッキン132cは、ホルダ本体122aの内周面122sを摺動する。
【0028】
図1において、第2ホルダ164は、第2減圧容器154を保持し、第2減圧容器154と接続可能である。第2ホルダ164は、第2チューブ74を介して採取チューブ70と連通可能である。第2ホルダ164は、第2減圧容器154と接続した際に、第2チューブ74の内部と第2減圧容器154の内部との連通を可能にする。
【0029】
第2収容部44は、第2減圧容器154、第2ホルダ164および遮断部材174を有する。第2収容部44の構成は、それぞれ、上述した第1収容部42の構成と同様である。そのため、第2収容部44の構成に関する説明を省略する。
【0030】
アダプタ50は、移送チューブ76を介して第1チューブ72および第2チューブ74に接続される。アダプタ50の開口に培養ボトル30が挿入されることにより、アダプタ50には培養ボトル30が接続可能である。培養ボトル30内は陰圧にされている。
【0031】
アダプタ50内には、培養ボトル30のゴム栓に穿刺可能な針50aが配置されている。針50aはゴムカバー50bによって覆われている。針50aが培養ボトル30のゴム栓に突き刺さる際に、針50aがゴムカバー50bを貫通する。アダプタ50から培養ボトル30が脱離すると、ゴムカバー50bは針50aを再び覆って封止する。なお、アダプタ50は、初期状態においてアダプタ50の開口を覆う不図示のフィルム等を有してもよい。初期状態から、フィルムが剥離されて開口が露出するまでの間、アダプタ50内では滅菌状態が維持される。
【0032】
空気回収部材60は、チューブ60aを介して採取チューブ70に接続される。空気回収部材60のチューブ60aには開閉可能なクランプ60bが取り付けられている。空気回収部材60に用いられる素材は、例えば塩化ビニル、ポリオレフィンまたはポリウレタン等である。
【0033】
切替機構90は、チューブ部材180に取り付けられている。本実施の形態において、切替機構90は、第1クランプ90Aと第2クランプ90Bと第3クランプ90Cとを含む。切替機構90は、第1ホルダ122と第2ホルダ164とアダプタ50との連通状態を切り替える。
【0034】
第1クランプ90Aは第1チューブ72に取り付けられている。第1クランプ90Aが開くと、第1チューブ72内を液体試料が流通可能となる。第1クランプ90Aが閉じると、第1チューブ72内の液体試料の流通が阻止される。
【0035】
第2クランプ90Bは第2チューブ74に取り付けられている。第2クランプ90Bが開くと、第2チューブ74内を液体試料が流通可能となる。第2クランプ90Bが閉じると、第2チューブ74内の液体試料の流通が阻止される。
【0036】
第3クランプ90Cは移送チューブ76に取り付けられている。第3クランプ90Cが開くと、移送チューブ76内を液体試料が流通可能となる。第3クランプ90Cが閉じると、移送チューブ76内の液体試料の流通が阻止される。
【0037】
上記のように構成された試料採取キット10は、以下のように使用される。
【0038】
図3は、医療用バッグ20のチューブ20aと試料採取キット10の採取チューブ70とを接合する接合工程を説明するための図である。この接合工程において、ユーザは、医療用バッグ20のチューブ20aの一端と、採取チューブ70の一端とを、無菌接合装置を用いて接合する。第1~第3クランプ90A~90Cは接合工程の前に閉じておく。こうして形成された接合部220を介して、医療用バッグ20のチューブ20aの内腔と採取チューブ70の内腔とが互いに連通する。
【0039】
ユーザは、空気回収部材60のチューブ60aに取り付けられたクランプ60bを開く。医療用バッグ20から採取チューブ70内を液体試料が移動することにより採取チューブ70内から排出される空気を、空気回収部材60が回収する(空気回収工程)。なお、空気回収部材60が回収する空気には、医療用バッグ20内から採取チューブ70内に移動した空気も含まれる。ユーザが医療用バッグ20を手で押すことにより、医療用バッグ20内の空気を空気回収部材60により回収することができる。
【0040】
図4は、医療用バッグ20から液体試料を第1減圧容器112に収容させる第1収容工程を説明するための図である。この第1収容工程において、ユーザは、クランプ60bを閉じて、第1クランプ90Aを開く。ユーザは、第1減圧容器112の頂部112pが第1ホルダ122の第1端部122pに近付くように、第1減圧容器112を第1ホルダ122のホルダ本体122aの内側へ押し込む。
【0041】
ユーザは、ホルダ側パッキン132hおよび容器側パッキン132cにより外気の流入を遮断しながら、第1ホルダ122を第1減圧容器112に接続することができる。第1減圧容器112内の陰圧により、採取チューブ70および第1チューブ72を介して医療用バッグ20から所定量の液体試料が第1減圧容器112に収容される。
【0042】
図5は、医療用バッグ20から液体試料を第2減圧容器154に収容させる第2収容工程を説明するための図である。この第2収容工程において、ユーザは、第1クランプ90Aを閉じて、第2クランプ90Bを開く。ユーザは、第2減圧容器154を、第2ホルダ164の内側へ押し込む。
【0043】
ユーザは、遮断部材174により外気の流入を遮断しながら、第2ホルダ164を第2減圧容器154に接続することができる。第2減圧容器154内の陰圧により、採取チューブ70および第2チューブ74を介して医療用バッグ20から所定量の液体試料が第2減圧容器154に収容される。
【0044】
図6は、試料採取キット10の採取チューブ70を封止して医療用バッグ20を試料採取キット10から切り離す封止工程を説明するための図である。この封止工程において、ユーザは、第2クランプ90Bを閉じて、採取チューブ70を、チューブシーラーを用いて封止し、切断する。試料採取キット10は、医療用バッグ20から分離される。ユーザは、第1減圧容器112に収容された所定量の液体試料を採取する培養ボトル30として、第1培養ボトル30Aを用意する。
【0045】
図7は、液体試料の第1採取工程で、第1減圧容器112内の液体試料を第1培養ボトル30Aへと移送した状態を示す図である。上述した封止工程の後、ユーザは、第1クランプ90Aおよび第3クランプ90Cを開く。第1培養ボトル30Aの陰圧の絶対値は、第1減圧容器112の陰圧の絶対値よりも大きい。このため、ユーザが、用意した第1培養ボトル30Aをアダプタ50に接続すると、第1培養ボトル30Aの陰圧により第1減圧容器112内から第1培養ボトル30A内へと液体試料が移送される。
【0046】
図8は、液体試料の第1採取工程で、第1培養ボトル30Aをアダプタ50から脱離した状態を示す図である。上述した第1採取工程で第1減圧容器112から第1培養ボトル30Aへ液体試料が移送された後、ユーザは、第1クランプ90Aおよび第3クランプ90Cを閉じて、第1培養ボトル30Aをアダプタ50から脱離する。
【0047】
図9は、液体試料の第2採取工程で、第2減圧容器154内の液体試料を第2培養ボトル30Bへと移送した状態を示す図である。第1培養ボトル30Aがアダプタ50から脱離した後、ユーザは、第2クランプ90Bおよび第3クランプ90Cを開き、第2培養ボトル30Bを用意する。第2培養ボトル30Bの陰圧の絶対値は、第2減圧容器154の陰圧の絶対値よりも大きい。このため、ユーザが、用意した第2培養ボトル30Bをアダプタ50に接続すると、第2培養ボトル30Bの陰圧により第2減圧容器154内から第2培養ボトル30B内へと液体試料が移送される。
【0048】
上述した第2採取工程で第2減圧容器154から第2培養ボトル30Bへ液体試料が移送された後、ユーザは、第2クランプ90Bおよび第3クランプ90Cを閉じて、第2培養ボトル30Bをアダプタ50から脱離する。
【0049】
なお、上述した第1培養ボトル30Aおよび第2培養ボトル30Bに採取された液体試料は、それぞれ好気性菌および嫌気性菌の培養に用いられてもよい。すなわち、第1培養ボトル30Aは好気性菌培養ボトルでもよく、第2培養ボトル30Bは嫌気性菌培養ボトルでもよい。図3図7に示した接合工程、収容工程、封止工程および採取工程を通じて、液体試料が第1培養ボトル30Aに採取された段階で、採取チューブ70、第1チューブ72および移送チューブ76内の空気は除去されている。
【0050】
図3に示した空気回収工程に伴って採取チューブ70内の一部およびチューブ60a内の空気が除去され、図4に示した第1収容工程に伴って採取チューブ70内の残りの部分の空気が除去される。したがって、図5に示した第2収容工程を実施する際、第2減圧容器154内に流入する空気は、第2チューブ74内および第2ホルダ164の針部122b内に存在していた空気のみである。
【0051】
また、図7に示した第1採取工程に伴って移送チューブ76内および針50a内の空気が除去される。したがって、図9に示す第2培養ボトル30Bに流入する空気は、図7に示す第1培養ボトル30Aに流入する空気よりも格段に少ない。使用に支障がない範囲で第2チューブ74の長さを可及的に短く設定することで、第2培養ボトル30Bに流入する空気の量を最小限に抑えることができ、第2培養ボトル30Bを嫌気性菌の培養に用いることができる。
【0052】
[変形例]
上述した実施の形態は、以下のように変形されることとしてもよい。
【0053】
(変形例1)
図10Aは、変形例1における初期状態の第1収容部42Aの断面図である。図10Aに示す第1収容部42Aの第1ホルダ122Aは、図2Aに示す第1収容部42の第1ホルダ122と比べて、環状の突起部230を有する点で異なる。突起部230は、第1ホルダ122Aのホルダ本体122aの第1端部122pと第2端部122qとの間でホルダ本体122aの内周面122sに設けられる。
【0054】
図10Aに示すように、第1ホルダ122Aに第1減圧容器112が接続される前の初期状態において、容器側パッキン132cは突起部230と第2端部122qとの間に位置する。なお、図10Aには、ホルダ側パッキン132hが示されているが、ホルダ側パッキン132hは必須ではない。
【0055】
図10Bは、使用中の第1収容部42Aの断面図である。第1ホルダ122Aに第1減圧容器112を接続するためにホルダ本体122aの内側に第1減圧容器112の頂部112pが押し込まれる間、容器側パッキン132cは、ホルダ本体122aの内周面122sを摺動する。第1ホルダ122Aに第1減圧容器112が接続されるとき、容器側パッキン132cが突起部230を乗り越える。
【0056】
これにより、第1ホルダ122Aからの第1減圧容器112の脱離が阻止される。図10Bには、突起部230が容器側パッキン132cを支えて、第1減圧容器112の第1ホルダ122Aからの脱離を阻止する様子が示されている。なお、図示しないが、変形例1における第2収容部44の第2ホルダ164もまた、第1収容部42Aの第1ホルダ122Aと同様に環状の突起部を有するが、その説明は省略する。
【0057】
(変形例2)
上述した実施の形態においては、遮断部材132として、いずれも環状の封止部材であるホルダ側パッキン132hおよび容器側パッキン132cが用いられている。しかし、遮断部材132として、それらの封止部材に代えて、第1減圧容器112の外周面112sとホルダ本体122aの内周面122sとの間の環状領域200を覆う被覆部材が用いられてもよい。
【0058】
図11は、変形例2における初期状態の第1収容部42Bの断面図である。本変形例では、被覆部材として、第1ホルダ122Bのホルダ本体122aの第2端部122qが有する開口122eを覆う袋部材132bが、第1収容部42Bに設けられている。袋部材132bは、透明性および可撓性を有する。袋部材132bは、ホルダ本体122aの第2端部122qに環状に取り付けられ、第1減圧容器112の底部112qを収容する。袋部材132bに用いられる素材は、例えばPETである。
【0059】
第1収容部42Bの初期状態において、袋部材132bは、ホルダ本体122aの内側への外気の流入を遮断する。ユーザは、第1ホルダ122Bに第1減圧容器112を接続するために第1収容部42Bを操作する際、袋部材132bを介して第1減圧容器112をホルダ本体122aの内側に押し込むことができる。ホルダ本体122aの内側に第1減圧容器112の頂部112pが押し込まれる間も、外気の遮断は保たれる。第1ホルダ122Bに第1減圧容器112が接続された状態においても、外気の遮断は保たれる。
【0060】
(変形例3)
変形例2における被覆部材は袋部材132bに限られない。図12は、変形例3における初期状態の第1収容部42Cの断面図である。本変形例では、被覆部材として、環状領域200を覆う蛇腹状の膜部材132fが、第1収容部42Cに設けられている。膜部材132fは、ホルダ本体122aの第2端部122qに環状に取り付けられるとともに、第1減圧容器112を環状に囲むように第1減圧容器112に取り付けられる。
【0061】
第1収容部42Cの初期状態において、膜部材132fは、ホルダ本体122aの内側への外気の流入を遮断する。ユーザは、第1ホルダ122Cに第1減圧容器112を接続するために第1収容部42Cを操作する際、第1減圧容器112をホルダ本体122aの内側に押し込むことができる。第1減圧容器112がホルダ本体122aの内側に押し込まれる際、膜部材132fは収縮する。ホルダ本体122aの内側に第1減圧容器112の頂部112pが押し込まれる間も、外気の遮断は保たれる。第1ホルダ122Cに第1減圧容器112が接続された状態においても、外気の遮断は保たれる。
【0062】
(変形例4)
図13は、液体試料の流路の切替機構90として十字活栓92が用いられた変形例4を示す図である。採取チューブ70、第1チューブ72、第2チューブ74および移送チューブ76が十字活栓92に連結される。十字活栓92は、ハウジング92aと、流路部材92bと、レバー92dとを有する。ハウジング92aの外周に沿って、採取チューブ70、第1チューブ72、移送チューブ76および第2チューブ74がそれぞれ接続される4つのポート93a~93dが90°の角度間隔で設けられている。
【0063】
流路部材92bは、L字状の流路92cを有する。ユーザがレバー92dを操作することにより、流路部材92bがハウジング92aに対して回転する。4つのポート93a~93dのうちのいずれか2つのポートが、流路部材92bにより連通する。こうして、液体試料の流路が切替えられる。
【0064】
十字活栓92は、第1切替状態と第2切替状態と第3切替状態と第4切替状態とを選択的に切替可能である。第1切替状態は、採取チューブ70の内腔と第1チューブ72の内腔とを連通させる状態である。第1切替状態では、ポート93aとポート93bとが流路92cを介して連通する。医療用バッグ20から液体試料を第1減圧容器112に収容させる第1収容工程において、ユーザは、十字活栓92を第1切替状態にする。
【0065】
第2切替状態は、採取チューブ70の内腔と第2チューブ74の内腔とを連通させる状態である。第2切替状態では、ポート93aとポート93dとが流路92cを介して連通する。医療用バッグ20から液体試料を第2減圧容器154に収容させる第2収容工程において、ユーザは、十字活栓92を第2切替状態にする。
【0066】
第3切替状態は、第1チューブ72の内腔と移送チューブ76の内腔とを連通させる状態である。第3切替状態では、ポート93bとポート93cとが流路92cを介して連通する。第1減圧容器112内の液体試料を第1培養ボトル30Aへと移送する第1採取工程において、ユーザは、十字活栓92を第3切替状態にする。
【0067】
第4切替状態は、第2チューブ74の内腔と移送チューブ76の内腔とを連通させる状態である。第4切替状態では、ポート93dとポート93cとが流路92cを介して連通する。第2減圧容器154内の液体試料を第2培養ボトル30Bへと移送する第2採取工程において、ユーザは、十字活栓92を第4切替状態にする。
【0068】
(変形例5)
図14は、アダプタ50が第1アダプタ50Xおよび第2アダプタ50Yを含む変形例5を示す図である。第1アダプタ50Xは、移送チューブ76Aを介して第1チューブ72に接続される。第1アダプタ50Xの開口に第1培養ボトル30Aが挿入されることにより、第1アダプタ50Xには第1培養ボトル30Aが接続可能である。第2アダプタ50Yは、移送チューブ76Bを介して第2チューブ74に接続される。第2アダプタ50Yの開口に第2培養ボトル30Bが挿入されることにより、第2アダプタ50Yには第2培養ボトル30Bが接続可能である。
【0069】
本変形例における切替機構90として、上述した実施の形態と同様に第1クランプ90Aおよび第2クランプ90Bが用いられるが、第3クランプ90Cは用いられない。液体試料の第1収容工程において、ユーザは、クランプ60bを閉じて、第1クランプ90Aを開く(第2クランプ90Bは閉じられている)。ユーザは、第1ホルダ122を第1減圧容器112に接続する。医療用バッグ20から所定量の液体試料が第1減圧容器112に収容される。
【0070】
第2収容工程において、ユーザは、第1クランプ90Aを閉じて、第2クランプ90Bを開く。ユーザは、第2ホルダ164を第2減圧容器154に接続する。医療用バッグ20から所定量の液体試料が第2減圧容器154に収容される。第2減圧容器154への液体試料の収容が完了したら、ユーザは、第2クランプ90Bを閉じて、採取チューブ70を封止する。この時点で、第1クランプ90Aおよび第2クランプ90Bは閉じられている。
【0071】
第1採取工程において、ユーザは、第1培養ボトル30Aを第1アダプタ50Xに接続する。第1減圧容器112内から第1培養ボトル30A内へと液体試料が移送される。第2採取工程において、ユーザは、第2培養ボトル30Bを第2アダプタ50Yに接続する。第2減圧容器154内から第2培養ボトル30B内へと液体試料が移送される。なお、第1採取工程と第2採取工程とは、タイミングをずらして順次実施してもよく、同時並行で実施してもよい。第2採取工程を、第1採取工程よりも先に実施してもよい。
【0072】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0073】
(1)試料採取キット(10)は、医療用バッグ(20)が接続可能であり、内部に液体試料の流路を形成するチューブ部材(180)と、前記チューブ部材に接続され、所定量の前記液体試料を、陰圧により内部へ誘導して一時的に収容する減圧容器(112、154)を有する収容部(42、42A、42B、42C、44)と、前記チューブ部材に接続され、前記液体試料を前記減圧容器から採取する培養ボトル(30、30A、30B)が接続可能なアダプタ(50、50X、50Y)と、を備え、前記収容部は、前記減圧容器を保持し、前記減圧容器と接続可能であり、前記減圧容器と接続した際に、前記チューブ部材の内部と前記減圧容器の内部との連通を可能にするホルダ(122、122A、122B、122C、164)と、前記減圧容器と前記ホルダとの間への外気の流入を遮断する遮断部材(132、132c、132h、132b、132f)と、をさらに備える。これにより、所定量の液体試料を、滅菌状態で簡単に精度良く採取できる。
【0074】
(2)前記ホルダは、筒状に形成され、前記減圧容器を前記ホルダの軸方向(AX)に相対移動可能に保持するホルダ本体(122a)と、前記ホルダ本体の内側に配置され、前記減圧容器の封止部(112b)に穿刺可能な針部(122b)と、を有し、前記ホルダを前記減圧容器と接続するために前記減圧容器が前記ホルダ本体の内側に押し込まれることに伴い、前記針部が前記封止部に穿刺されてもよい。これにより、簡単な操作でホルダを確実に減圧容器と接続できる。
【0075】
(3)前記遮断部材は、前記減圧容器の外周面(112s)と前記ホルダ本体の内周面(122s)との間に配置される環状の封止部材であってもよい。これにより、ホルダ本体の内側への外気の流入が効果的に遮断される。
【0076】
(4)前記封止部材は、前記ホルダ本体の前記内周面に設けられたホルダ側パッキン(132h)を含み、前記ホルダに前記減圧容器を接続するために前記ホルダ本体の内側に前記減圧容器の頂部(112p)が押し込まれる間、前記ホルダ側パッキンが前記減圧容器の前記外周面を摺動してもよい。これにより、ホルダ本体の内側の滅菌状態が保たれる。
【0077】
(5)前記封止部材は、前記減圧容器の前記外周面に設けられた容器側パッキン(132c)を含み、前記ホルダに前記減圧容器を接続するために前記ホルダ本体の内側に前記減圧容器の前記頂部が押し込まれる間、前記容器側パッキンが前記ホルダの前記内周面を摺動してもよい。これにより、ホルダ本体の内側の滅菌状態が、より効果的に保たれる。
【0078】
(6)前記ホルダ本体は、前記チューブ部材に接続された第1端部(122p)と、前記減圧容器が挿入された開口(122e)が設けられた第2端部(122q)とを有し、前記封止部材は、前記減圧容器の前記外周面に設けられた容器側パッキン(132c)を含み、前記第1端部と前記第2端部との間で前記ホルダ本体の前記内周面に突起部(230)が設けられ、前記ホルダに前記減圧容器が接続される前において、前記容器側パッキンは前記突起部と前記第2端部との間に位置し、前記ホルダに前記減圧容器が接続されるときに、前記容器側パッキンが前記突起部を乗り越えることにより、前記ホルダからの前記減圧容器の脱離が阻止されてもよい。これにより、液体試料の採取を安定的に行うことができる。
【0079】
(7)前記遮断部材は、前記減圧容器の外周面(112s)と前記ホルダ本体の内周面(122s)との間に形成される環状領域(200)を覆う被覆部材であってもよい。ホルダ本体の内側への外気の流入を遮断する構造を簡易に実現することができる。
【0080】
(8)前記ホルダ本体は、前記減圧容器が挿入された開口(122e)を有し、前記被覆部材は、前記開口を覆うように、前記ホルダ本体に環状に取り付けられるとともに、前記減圧容器の底部(112q)を収容する袋部材(132b)を含んでもよい。これにより、ホルダ本体の内側の滅菌状態が保たれる。
【0081】
(9)前記ホルダ本体は、前記減圧容器が挿入された開口を有し、前記被覆部材は、前記環状領域を覆うように、前記ホルダ本体に環状に取り付けられるとともに、前記減圧容器を環状に囲むように前記減圧容器に取り付けられる蛇腹状の膜部材(132f)を含んでもよい。これにより、ホルダ本体の内側の滅菌状態が保たれる。また、少ない材料で操作性が良好な被覆部材を実現できる。
【0082】
(10)前記減圧容器は、第1減圧容器(112)と、第2減圧容器(154)とを含み、前記ホルダは、前記第1減圧容器が接続される第1ホルダ(122、122A、122B、122C)と、前記第2減圧容器が接続される第2ホルダ(164)とを含み、前記試料採取キットは、前記アダプタと前記第1ホルダと前記第2ホルダとの連通状態を切り替える切替機構(90、90A、90B、90C、92)をさらに備えてもよい。これにより、2つの培養ボトルに液体試料を採取することができる。
【0083】
(11)前記チューブ部材は、前記医療用バッグに接続可能な採取チューブ(70)と、前記第1ホルダに接続された第1チューブ(72)と、前記第2ホルダに接続された第2チューブ(74)と、を有し、前記第1ホルダは、前記第1チューブを介して前記採取チューブと連通可能であり、前記第2ホルダは、前記第2チューブを介して前記採取チューブと連通可能であり、前記切替機構は、前記第1チューブに取り付けられた第1クランプ(90A)と、前記第2チューブに取り付けられた第2クランプ(90B)と、を有してもよい。これにより、簡単な構造で2つの培養ボトルに液体試料を採取することができる。
【0084】
(12)前記チューブ部材は、前記医療用バッグに接続可能な採取チューブ(70)を有し、前記切替機構は、前記採取チューブに連結された十字活栓(92)を有し、前記十字活栓は、前記採取チューブと前記第1ホルダとを連通させる第1切替状態と、前記採取チューブと前記第2ホルダとを連通させる第2切替状態と、前記第1ホルダと前記アダプタとを連通させる第3切替状態と、前記第2ホルダと前記アダプタとを連通させる第4切替状態と、に選択的に切替可能であってもよい。これにより、液体試料の流路の切替を簡単に実現することができる。
【0085】
(13)前記チューブ部材は、前記医療用バッグに接続可能な採取チューブ(70)と、前記第1ホルダに接続された第1チューブ(72)と、前記第2ホルダに接続された第2チューブ(74)と、を有し、前記第1ホルダは、前記第1チューブを介して前記採取チューブと連通可能であり、前記第2ホルダは、前記第2チューブを介して前記採取チューブと連通可能であり、前記切替機構は、前記第1チューブに取り付けられた第1クランプ(90A)と、前記第2チューブに取り付けられた第2クランプ(90B)と、を有し、前記アダプタは、前記第1チューブに接続されるとともに前記培養ボトルとして第1培養ボトル(30A)が接続される第1アダプタ(50X)と、前記第2チューブに接続されるとともに前記培養ボトルとして前記第1培養ボトルとは異なる第2培養ボトル(30B)が接続される第2アダプタ(50Y)とを含んでもよい。これにより、2つの培養ボトルに液体試料を効率的に採取することができる。
【0086】
(14)前記チューブ部材は、前記医療用バッグに接続可能な採取チューブ(70)と、前記第1ホルダに接続された第1チューブ(72)と、前記第2ホルダに接続された第2チューブ(74)と、を有し、前記第1ホルダは、前記第1チューブを介して前記採取チューブと連通可能であり、前記第2ホルダは、前記第2チューブを介して前記採取チューブと連通可能であり、前記試料採取キットは、前記採取チューブに接続される空気回収部材(60)をさらに備え、前記空気回収部材は、前記医療用バッグから前記採取チューブ内を前記液体試料が移動することにより前記採取チューブ内から排出される空気を回収してもよい。液体試料が空気とともに採取されると、採取された液体試料が所定量を下回るという問題が生じるおそれがあるが、これによりこうした問題が生じることを防止できる。
【0087】
(15)前記試料採取キットを用いた試料採取方法であって、前記医療用バッグと前記チューブ部材とを接合する接合工程と、前記遮断部材により前記外気の流入を遮断しながら前記減圧容器を前記ホルダに接続し、前記減圧容器の陰圧により前記チューブ部材を介して前記医療用バッグから前記液体試料を前記減圧容器に収容させる収容工程と、前記アダプタに前記培養ボトルを接続し、前記培養ボトルの陰圧により前記減圧容器内から前記培養ボトル内へと前記液体試料を移送し、前記培養ボトルを前記アダプタから脱離する採取工程と、を備える。これにより、所定量の液体試料を、滅菌状態で簡単に精度良く採取できる。
【0088】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0089】
10…試料採取キット 20…医療用バッグ
30…培養ボトル 42、44…収容部
50…アダプタ 60…空気回収部材
70…採取チューブ 72…第1チューブ
74…第2チューブ 76…移送チューブ
90…切替機構 92…十字活栓
112…第1減圧容器 122…第1ホルダ
132、174…遮断部材 154…第2減圧容器
164…第2ホルダ 180…チューブ部材
200…環状領域 220…接合部
230…突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14