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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183048
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】車両用ドア
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20231220BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B60J5/00 501B
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096427
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一弥
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BB08
3D023BC01
3D023BD03
3D023BE25
(57)【要約】
【課題】ドアパネルからの容易な取り外しを可能にするとともに高温時の熱変形を軽減させた車両用ドアを提供する。
【解決手段】 車両用ドア100は、インナパネル11とアウタパネルとが重ね合わされて接合されたドアパネル200と、インナパネル11の車室側の側面に取り付けられて車室内側へ向かって張り出すドアトリム10と、ドアトリム10の側面上の特定点16に設けられてインナパネル11に向けて突出するリブ14と、ドアトリム10の熱膨張により特定点16が変位をする向きへ向けてリブ14の先端部に形成される引っ掛け爪21と、インナパネル11に形成されて引っ掛け爪21が差し込まれる差込孔24と、差込孔24に差し込まれた引っ掛け爪21が特定点16の変位により係合される差込孔24の縁部23と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナパネルとアウタパネルとが重ね合わされて接合されたドアパネルと、
前記インナパネルの車室側の側面に取り付けられて車室内側へ向かって張り出すドアトリムと、
前記ドアトリムの側面上の特定点に設けられて前記インナパネルに向けて突出するリブと、
前記ドアトリムの熱膨張により前記特定点が変位をする向きへ向けて前記リブの先端部に形成される引っ掛け爪と、
前記インナパネルに形成されて前記引っ掛け爪が差し込まれる差込孔と、
前記差込孔に差し込まれた前記引っ掛け爪が前記特定点の前記変位により係合される前記差込孔の縁部と、を備えることを特徴とする車両用ドア。
【請求項2】
前記引っ掛け爪の爪先は、前記変位の車両前後方向のベクトル成分に向けられる請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項3】
前記リブは前記ドアトリムに一体成形される請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項4】
前記ドアトリムに形成されて車室内側へ向かって膨出するスピーカ収容部を備え、
前記リブは前記スピーカ収容部から連続して前記インナパネルに向けて傾斜する傾斜面に設けられる請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項5】
前記ドアトリムから前記インナパネルに向けて突出するボスを備え、
前記リブは前記ボスの頂部から前記インナパネルに向けて突出する請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項6】
前記リブの板厚方向の前記引っ掛け爪側に薄肉部を設ける請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項7】
前記薄肉部は前記リブの基部に設けられる請求項6に記載の車両用ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内側にドアトリムを有する車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
自動四輪車両のドアは、金属製のドアパネルの車室側の側面に内装部材である樹脂製のドアトリムがクリップで留められて構成される。ドアトリムに収納スペースやアームレストなどのアクセサリが設けられることで、車室内に快適な居住性が確保される。
ドアトリムの素材である樹脂は金属よりも熱膨張係数が10倍程度大きいため、夏季など気温が高い日にはドアトリムがドアパネルよりも顕著に膨張する。よって、ドアトリムは、通常その縁周部がクリップでドアパネルに固定されるため、昇温すると一部が車室側に膨出しようとする。ドアトリムの膨出量が大きくなることでドアパネルからの距離が大きくなると、ドアトリムとドアパネルの間に隙間が発生して外観が悪化する。また、走行時にドアトリムが振動した場合にその振幅が大きくなるため、振動音が大きくなる。
【0003】
このようなドアトリムの熱変形による膨出を軽減するため、従来から、ドアトリムを固定するクリップの数量を増やすなどの工夫がなされている。しかし、クリップの数量が増加するとクリップを固定する台座の数量も増えるため、ドアトリムの重量が増加する。また、クリップの数量だけ部品点数も増加する。自動車内装部品の熱変形による隙間の発生を防ぐために、引っ掛け爪を一体成形して相手部品に引っ掛けて膨出を抑制する構造が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-156651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した引っ掛け爪構造をドアトリムに適用した場合、引っ掛け爪がインナパネルに引っ掛かり、ドアトリムをドアパネルから取り外す妨げになるという課題があった。ドアトリムをドアパネルから取り外すのが容易でないと、内蔵部品のメンテナンスが煩雑になる。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、ドアパネルからの容易な取り外しを維持して高温時の熱変形を軽減させた車両用ドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る車両用ドアは、インナパネルとアウタパネルとが重ね合わされて接合されたドアパネルと、前記インナパネルの車室側の側面に取り付けられて車室内側へ向かって張り出すドアトリムと、前記ドアトリムの側面上の特定点に設けられて前記インナパネルに向けて突出するリブと、前記ドアトリムの熱膨張により前記特定点が変位をする向きへ向けて前記リブの先端部に形成される引っ掛け爪と、前記インナパネルに形成されて前記引っ掛け爪が差し込まれる差込孔と、前記差込孔に差し込まれた前記引っ掛け爪が前記特定点の前記変位により係合される前記差込孔の縁部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ドアパネルからの容易な取り外しを維持して高温時の熱変形を軽減させた車両用ドアが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る車両用ドアを車両の車室側からみた概略部分側面図。
図2】(A) ドアパネルのアウタパネルを外してサイドドアを車外側から示す斜視図、(B) (A)における領域Ωの拡大図、(C) (B)においてインナパネルを外してドアトリムの裏面を露出させた領域Ωの拡大図。
図3】(A) 図2(C)で拡大して示される図2(A)の領域Ωを角度を変えて示す斜視図、(B) (A)中の領域Θをさらに拡大して示す斜視図。
図4】(A)常温時における第1のリブと差込孔の縁部との配置関係を示す図、(B)高温時における第1のリブと差込孔の縁部との配置関係を示す図。
図5】(A) 図4(A)のA-A線による断面を示す断面図、(B) 図4(A)のB-B線による断面を示す断面図。
図6】(A) リブを設けなかった場合のドアトリムの膨出方向の変形量を解析した解析結果を示す図、(B) リブを設けた場合のドアトリムの膨出方向の変形量を解析した解析結果を示す図。
図7】(A) 常温時における第2実施形態に係る車両用ドアのリブの側面断面図、(B) 高温時における第2実施形態に係る車両用ドアのリブの側面断面図。
図8】(A) 常温時における第2実施形態の変形例に係るリブの側面断面図、(B) 高温時における第2実施形態の変形例に係るリブの側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る車両用ドア100を車両の車室側からみた概略側面図である。
第1実施形態に係る車両用ドア100は、例えば図1に示されるように、車両の車体側面に設けられたドア開口部を開閉するサイドドアである。サイドドア100は、車両の側面を構成する金属製のドアパネル200の車室内側の側面に、樹脂製のドアトリム10が取り付けられて構成される。ドアトリム10は、ドアパネル200に重ね合わされて車室内側へ向かって膨出する内装部材である。ドアパネル200は、不図示のアウタパネルにインナパネル11が重ね合わされてその周縁部どうしが接合されて構成される。
なお、以下の説明及び図面における「前」又は「後」の向きは、ドア100を車両に取り付けたときの車両における前後の向きを基準にする。また、ドアトリム10の「裏面」とは、車室内に面する意匠面とは反対側の側面、つまりドアパネル200に面する側面をいう。
【0012】
また、図2(A)は、ドアパネル200のアウタパネルを外してサイドドア100を車外側から示す斜視図である。図2(A)では、アウタパネルを外してインナパネル11を露出させた状態のサイドドア100を示している。
また、図2(B)は、図2(A)における領域Ωの拡大図である。
また、図2(C)は、図2(B)においてインナパネル11を外してドアトリム10の裏面を露出させた領域Ωの拡大図である。
【0013】
インナパネル11の周縁部には、図2(A)に示されるように、リベット型のクリップ12が約十か所嵌め込まれている。このクリップ12は、図2(C)に示されるように、ドアトリム10の裏面に形成された台座13にも嵌め込まれ、ドアトリム10をドアパネル200に固定する。また、クリップ12の一部は、図2(A)に示されるように、ドアトリム10の周縁部以外にも熱変形量の大きい箇所でインナパネル11に接近した箇所にも設けられる。
【0014】
また、ドアトリム10の裏面には、図2(A)~図2(C)に示されるように、ドアパネル200に向かって延びるプレート形状のリブ14がドアトリム10と一体的に成形される。リブ14は、ドアトリム10が熱膨張によって車室側に膨出する変形量が大きいと予想される箇所に設けられる。以下、このような箇所を「特定点」とよぶ。つまり、ドアトリム10のこの特定点16(図3(A),(B))上にリブ14が形成されることになる。特定点16となる位置は、例えば予め実施された熱変形解析の結果を加味して決定される。
ドアトリム10及びインナパネル11はともに、高温になると膨張して面内方向に広がろうとする。前述のように、樹脂製のドアトリム10は、金属製のインナパネル11の10倍程度の線膨張係数を有する。よって、特定点16は、ドアトリム10のパネル面方向にもインナパネル11に対して広がるように変位する。
【0015】
ところで、ドアトリム10内の前方下部には、スピーカ収容部17が設けられることが多い。スピーカ収容部17は、スピーカを収容するため、車室側に膨出している。よって、スピーカ収容部17の周辺は車室内側に膨出しやすい。よって、スピーカ収容部17の近傍で特にドアトリム10のパネル中央寄りにリブ14を設けるのが好ましい。各車種に応じたリブ14の配置決定には、上述の熱変形解析結果及び他の部品の配置がさらに加味される。以下では、図2(A)~(C)に示されるように、スピーカ収容部17の近傍であってスピーカ収容部17よりもドアトリム10のパネル中央寄りの部位に2つのリブ14a,14bが設けられた例で説明する。
【0016】
第1のリブ14aは、スピーカ収容部17から連続してインナパネル11に向けて傾斜する傾斜面18に設けられている。
一方、第2のリブ14bは、ドアトリム10に形成された既存のボス19の頂部から突出している。ボス19は、インナパネル11に適宜当接してドアトリム10とインナパネル11との距離を維持してドアトリム10の形状を確保する。このボス19にリブ14bを設けることで、長く突出するリブ14をボス19で補強することができる。
【0017】
また、図3(A)は、図2(C)で拡大して示される図2(A)の領域Ωを角度を変えて示す斜視図である。
また、図3(B)は、図3(A)中の領域Θをさらに拡大して示す斜視図である。
リブ14の先端部は、図3(A),(B)に示されるように、上述の熱変形解析により特定された特定点16のプレート面上の変位の向きに屈曲して引っ掛け爪21が形成される。つまり、特定点16の変位する向きに引っ掛け爪21が向くように、リブ14が配置される。
ただし、引っ掛け爪21の形成される向きは、必ずしも特定点16の変位の向きに完全に一致していなくてもよい。多くの場合、引っ掛け爪21は、変位の車両前後方向のベクトル成分の向きに向けて前方又は後方に向けて形成される。車両用ドア100は、一般に前後方向の長さすなわち横幅が、それに直角な高さ方向の長さすなわち縦幅よりも長いため、横幅方向により膨張するためである。
【0018】
ここで、図4(A),(B)は、第1のリブ14aと差込孔24の縁部23との配置関係を示す図である。
図4(A)は、常温時における第1のリブ14aの配置状態を示している。
図4(B)は、高温時における第1のリブ14aの配置状態を示している。
また、図5(A)は図4(A)のA-A線による断面を示す断面図,図5(B)は図4(A)のB-B線による断面を示す断面図である。
リブ14は、特定点16が変位をしない常温時には、図4(A)及び図5(A)に示されるように、引っ掛け爪21が差込孔24の縁部23に引っ掛からないように設計される。言い換えると、常温時には、ドアトリム10をインナパネル11から水平に引き離せば、引っ掛け爪21が差込孔24の縁部23に引っ掛からずにスムーズに引き離すことができる。
【0019】
一方、リブ14は、図4(B)及び図5(B)に示されるように、高温時に、特定点16に追従して移動した引っ掛け爪21が差込孔24の縁部23に引っ掛かるように設計される。この引っ掛け爪21によって、夏季など高温時にドアトリム10が熱膨張しようとする際に、ドアトリム10の車室側への膨出が阻止される。つまり、特定点16が引っ掛け爪21でインナパネル11に引っ掛かることで、特定点16におけるドアトリム10の変形が軽減される。
このように、リブ14は、ドアトリム10の熱膨張により特定点16が変位してはじめて縁部23に引っ掛け爪21が引っ掛かるように設計される。
【0020】
なお、差込孔24は、インナパネル11に設けられている既存の開口部を利用してもよいし、リブ14のために別途設けられてもよい。
第1のリブ14aでは、専用に設けられた開口部24a(図4(b))に差し込まれている。
一方、第2のリブ14bは、配線取り出し用にインナパネル11に設けられた既存の開口部24bに差し込まれている。いずれの開口部24a,24bも、常温時には縁部23が引っ掛け爪21と接触せず、高温時には引っ掛け爪21に引っ掛かり上述の差込孔24として機能する。
【0021】
ここで、図6(A),(B)は、熱変形解析を用いて、ドアトリム10の膨出方向の変形量を解析した解析結果を示す図である。
図6(A)はリブ14を設けなかった場合、図6(B)はスピーカ収容部17の近傍のサンプル点δにリブ14を設けた場合の解析結果を示している。
この熱変形解析では、図2(A)で示したクリップ12の位置を、回転自由度および並進自由度を拘束して解析した。図6(A),(B)において、色の濃い箇所はドアトリム10の膨出量が大きいことを示している。また、色の薄い箇所はドアトリム10がインナパネル11側に凹んだことを示している。
【0022】
図6(A)から、スピーカ収容部17周辺部の膨出方向の変形量が大きいことが読み取れる。
解析の結果、サンプル点δにおける車室側への変形量は、リブ14を設けなかった場合を1としたときに、0.64となった。つまり、リブ14を設けた場合に、サンプル点δの車室内側への変形量は減少した。また、図6(A),(B)を比較することで、リブ14を設けることで、リブ14を設けた位置から離れた箇所においても、膨出方向の変形量が減少することが確認できた。
【0023】
以上のように、第1実施形態にかかる車両用ドア100によれば、ドアトリム10の脱着を妨げずに高温時のドアトリム10の車室側への膨出を防止することができる。よって、ドアトリム10および内蔵部品のメンテナンス性を維持してドアトリム10の膨出を防止することができる。
また、ドアトリム10に一体成形でリブ14を設けることで、部品点数の増加による部品コストの増加および車両用ドア100の重量の増加を防止することができる。
【0024】
また、ドアトリム10の変形量の大きい箇所にリブ14を設けることで、台座13が必要なクリップ12の適用箇所を、ドアトリム10とインナパネル11との距離が近い箇所に限定することができる。よって、高い台座13を用いる必要がないため、ドアトリム10を軽量化することができる。
また、リブ14bを傾斜面18に設けることで、スピーカ収容部17の底部に設ける場合と比較してリブ14bの突出長さを短くできる。よって、引っ掛け爪21が差込孔24に引っ掛かった際の荷重に対する剛性を高めることができる。
【0025】
(第2実施形態)
図7(A),(B)は、第2実施形態に係る車両用ドア100のリブ14の側面断面図である。
図7(A)は、常温時におけるリブ14Xの配置状態を示している。
図7(B)は、高温時におけるリブ14Xの配置状態を示している。
第2実施形態に係る車両用ドア100では、図7(A),(B)に示されるように、リブ14の板厚方向の引っ掛け爪21側に薄肉部26が設けられる。
常温時におけるドアトリム10の取り外しを容易にするには、差込孔24はできるだけ大きいことが好ましい。しかし、差込孔24を大きくすると、高温時に引っ掛け爪21が差込孔24の縁部23に引っ掛かりにくくなる。
【0026】
そこで、第2実施形態では、リブ14に薄肉部26を設けて、リブ14を高温時に引っ掛け爪21側に倒れ込むように変形させる。リブ14の引っ掛け爪21側の側面を削ぎ落とした形状にすることで、削ぎ落とされた樹脂の分だけ膨張しなくなる。よって、引っ掛け爪21側の側面とその反対側の側面との膨張の差異により、リブ14は高温時に引っ掛け爪21側に倒れ込む。
このようにリブ14を倒れ込ませて、引っ掛け爪21の移動量を大きくすることで、常温時には間隔が広く空いた引っ掛け爪21と縁部23とが高温時には確実に引っ掛かる。
【0027】
なお、倒れ込むのはリブ14のうち薄肉部26及び薄肉部26よりも先端部側である。よって、薄肉部26は、できるだけリブ14の基部の位置に設けられるのが好ましい。
また、薄肉部26の削ぎ落とし形状は、図7(A),(B)のような矩形形状ででなくてもよい。例えば、薄肉部26の形状は、リブ14の中腹部から基部に向かって徐々に先細っていくように斜めに削ぎ落とされた形状であってもよい。
【0028】
また、図8(A),(B)は、変形例に係るリブ14Yの側面断面図である。
図8(A)は、常温時におけるリブ14Yの配置状態、図8(B)は、高温時におけるリブ14Yの配置状態を示している。
リブ14の変形例では、図8(A),(B)に示されるように、リブ14の引っ掛け爪21とは反対側の側面に筋交い部27を備える。筋交い部27はリブ14に倒れ掛かるようにリブ14とドアトリム10のプレート面とを接続する。
【0029】
筋交い部27は、高温時に熱膨張により伸長して、リブ14を縁部23に向けて倒れ込ませるように回転させる。リブ14を倒れ込ませて確実にインナパネル11に引っ掛けるという点で、筋交い部27は薄肉部26と同様の効果を発揮する。
なお、筋交い部27は、高温時にリブ14を押して倒れ込ませることができれば、その形状は特に限定されない。筋交い部27の形状は、リブ14と同程度の幅を有するプレート形状であってもよいし、棒形状や他のさらに複雑な形状などであってもよい。
【0030】
なお、リブ14を倒れ込ませて引っ掛け爪21を縁部23に引っ掛けること以外、第2実施形態は第1実施形態と同様の構造及び機能を有する。よって、重複する構造の説明は省略する。また、図面においても同様の構造には同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
以上のように、第2実施形態にかかる車両用ドア100によれば、高温時にリブ14を倒れ込ませて引っ掛け爪21の移動量を増加させることで、確実に引っ掛け爪21をインナパネル11に引っ掛けることができる。
【0032】
以上のように、各実施形態に係る車両用ドア100の少なくとも一つによれば、ドアパネル200からの容易な取り外しを維持して高温時の熱変形を軽減することができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0034】
例えば、実施形態ではサイドドアのドアトリムを例に説明したが、本発明が適用されるドアはサイドドアに限定されず、バックドアなど他のドアであってもよい。
また、実施形態ではリブの形状をプレート形状として説明したが、リブの形状は棒形状であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…ドアトリム、11…インナパネル、12…クリップ、13…台座、14(14a,14b,14X,14Y)…リブ、14a(14)…第1のリブ、14b(14)…第2のリブ、16…特定点、17…スピーカ収容部、18…傾斜面、19…ボス、21…引っ掛け爪、23…縁部、24…差込孔、24a…開口部、24b…開口部、26…薄肉部、27…筋交い部、100…サイドドア(車両用ドア)、200…ドアパネル、Θ…領域、Ω…領域、δ…サンプル点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8