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特開2023-183052半導体記憶装置、及び半導体記憶装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183052
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】半導体記憶装置、及び半導体記憶装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10B 43/27 20230101AFI20231220BHJP
   H10B 41/27 20230101ALI20231220BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01L27/11582
H01L27/11556
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096444
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】北山 大輝
(72)【発明者】
【氏名】有賀 智崇
(72)【発明者】
【氏名】池田 光雄
(72)【発明者】
【氏名】池野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】梶田 明広
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP02
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP76
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER14
5F083ER19
5F083ER22
5F083GA10
5F083JA03
5F083JA04
5F083JA05
5F083JA19
5F083JA32
5F083JA39
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA11
5F083LA12
5F083LA16
5F083LA20
5F083MA06
5F083MA16
5F083MA19
5F083PR05
5F083PR21
5F083PR22
5F083ZA01
5F083ZA13
5F101BA01
5F101BA45
5F101BB04
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH02
5F101BH15
(57)【要約】
【課題】性能の高い半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置10は、トンネル絶縁膜53と、トンネル絶縁膜53の上に設けられた電荷捕獲膜54と、電荷捕獲膜54の上にブロック絶縁膜55,56を介して設けられた導電体層40と、を備える。導電体層40は、モリブデンを含む第1層41と、第1層41を挟んでブロック絶縁膜55,56とは反対側となる位置に設けられた層であって、タングステンを含む第2層42と、を含む。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル絶縁膜と、
前記トンネル絶縁膜の上に設けられた電荷蓄積層と、
前記電荷蓄積層の上にブロック絶縁膜を介して設けられた導電体層と、を備え、
前記導電体層は、
モリブデンを含む第1層と、
前記第1層を挟んで前記ブロック絶縁膜とは反対側となる位置に設けられた層であって、タングステンを含む第2層と、を含む、半導体記憶装置。
【請求項2】
前記導電体層は、
前記第1層を挟んで前記第2層とは反対側となる位置に設けられた層であって、タングステンを含む第3層、を更に含む、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第3層におけるフッ素原子の濃度が、1×1017atoms/cm以下である、請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記ブロック絶縁膜と前記導電体層との間には第4層が設けられている、請求項1又は2に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第4層は、窒素、チタン、モリブデン、及びタングステンのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記第1層は、窒素、及び塩素のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記第1層における窒素原子の濃度又は塩素原子の濃度が、1×1018atoms/cm以下である、請求項6に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
トンネル絶縁膜の上に電荷蓄積層を形成し、
前記電荷蓄積層の上にブロック絶縁膜を形成し、
前記ブロック絶縁膜の上に、モリブデンを含む第1層を形成し、
前記第1層の上に、タングステンを含む第2層を形成する、半導体記憶装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1層の形成、及び、前記第2層の形成を、周囲の雰囲気を外気から遮断した状態のまま連続して行う、請求項8に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項10】
前記ブロック絶縁膜の上に、タングステンを含む第3層を形成し、
当該第3層の上に前記第1層を形成する、請求項9に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項11】
前記ブロック絶縁膜の上に、チタン、モリブデン、及びタングステンのうちの少なくとも1つを含む第4層を形成し、
当該第4層の上に前記第1層を形成する、請求項9に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項12】
前記ブロック絶縁膜の上に、窒素、チタン、モリブデン、及びタングステンのうちの少なくとも1つを含む第4層を形成し、
当該第4層の上に前記第3層を形成する、請求項10に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置、及び半導体記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNAND型フラッシュメモリのような半導体記憶装置は、ワード線として機能する複数の導電体層を備えている。導電体層の材料としては、例えばタングステンが用いられる。近年では、導電体層の材料として、例えばモリブデンのような高抵抗化しにくい材料を用いることも検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-513065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開示された実施形態によれば、性能の高い半導体記憶装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体記憶装置は、トンネル絶縁膜と、トンネル絶縁膜の上に設けられた電荷蓄積層と、電荷蓄積層の上にブロック絶縁膜を介して設けられた導電体層と、を備える。導電体層は、モリブデンを含む第1層と、第1層を挟んでブロック絶縁膜とは反対側となる位置に設けられた層であって、タングステンを含む第2層と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係るメモリシステムの構成例を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る半導体記憶装置の等価回路を示す図である。
図4】第1実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す図である。
図5】第1実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す断面図である。
図6図5のVI-VI断面を示す図である。
図7】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を説明するための図である。
図8】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を説明するための図である。
図9】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を説明するための図である。
図10】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を説明するための図である。
図11】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を説明するための図である。
図12】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を説明するための図である。
図13】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を説明するための図である。
図14】第2実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を説明するための図である。
図15】第2実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す断面図である。
図16】第3実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す断面図である。
図17】第4実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0008】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る半導体記憶装置10は、NAND型フラッシュメモリとして構成された不揮発性の記憶装置である。図1には、半導体記憶装置10を含むメモリシステムの構成例がブロック図として示されている。このメモリシステムは、メモリコントローラ1と、半導体記憶装置10とを備える。尚、半導体記憶装置10は、図1のメモリシステムにおいて実際には複数設けられているのであるが、図1においてはそのうちの1つのみが図示されている。半導体記憶装置10の具体的な構成については後に説明する。このメモリシステムは、不図示のホストと接続可能である。ホストは、例えば、パーソナルコンピュータや携帯端末等の電子機器である。
【0009】
メモリコントローラ1は、ホストからの書き込みリクエストに従って半導体記憶装置10へのデータの書き込みを制御する。また、メモリコントローラ1は、ホストからの読み出しリクエストに従って半導体記憶装置10からのデータの読み出しを制御する。
【0010】
メモリコントローラ1と半導体記憶装置10との間では、チップイネーブル信号/CE、レディービジー信号R/B、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE、/RE、ライトプロテクト信号/WP、データである信号DQ<7:0>、データストローブ信号DQS、/DQS、の各信号が送受信される。
【0011】
チップイネーブル信号/CEは、半導体記憶装置10をイネーブルにするための信号である。レディービジー信号R/Bは、半導体記憶装置10がレディ状態であるか、ビジー状態であるかを示すための信号である。「レディ状態」とは、外部からの命令を受け付ける状態である。「ビジー状態」とは、外部からの命令を受け付けない状態である。コマンドラッチイネーブル信号CLEは、信号DQ<7:0>がコマンドであることを示す信号である。アドレスラッチイネーブル信号ALEは、信号DQ<7:0>がアドレスであることを示す信号である。ライトイネーブル信号/WEは、受信した信号を半導体記憶装置10に取り込むための信号であり、メモリコントローラ1によりコマンド、アドレス、及びデータを受信する都度アサートされる。メモリコントローラ1は、信号/WEが“L(Low)”レベルである間に信号DQ<7:0>を取り込むよう半導体記憶装置10に指示する。
【0012】
リードイネーブル信号RE、/REは、メモリコントローラ1が、半導体記憶装置10からデータを読み出すための信号である。これらは例えば、信号DQ<7:0>を出力する際の半導体記憶装置10の動作タイミングを制御するために使用される。ライトプロテクト信号/WPは、データ書き込み及び消去の禁止を半導体記憶装置10に指示するための信号である。信号DQ<7:0>は、半導体記憶装置10とメモリコントローラ1との間で送受信されるデータの実体であり、コマンド、アドレス、及びデータを含む。データストローブ信号DQSは、信号DQ<7:0>の入出力のタイミングを制御するための信号である。信号/DQSは信号DQSの相補信号である。
【0013】
メモリコントローラ1は、RAM301と、プロセッサ302と、ホストインターフェイス303と、ECC回路304と、メモリインターフェイス305と、を備える。RAM301、プロセッサ302、ホストインターフェイス303、ECC回路304、及びメモリインターフェイス305は、互いに内部バス306で接続されている。
【0014】
ホストインターフェイス303は、ホストから受信したリクエスト、ユーザデータ(書き込みデータ)等を内部バス306に出力する。また、ホストインターフェイス303は、半導体記憶装置10から読み出されたユーザデータ、プロセッサ302からの応答等をホストへ送信する。
【0015】
メモリインターフェイス305は、プロセッサ302の指示に基づいて、ユーザデータ等を半導体記憶装置10へ書き込む処理、及び、半導体記憶装置10から読み出す処理を制御する。
【0016】
プロセッサ302は、メモリコントローラ1を統括的に制御する。プロセッサ302は、例えばCPUやMPU等である。プロセッサ302は、ホストからホストインターフェイス303経由でリクエストを受けた場合に、そのリクエストに従った制御を行う。例えば、プロセッサ302は、ホストからのリクエストに従って、半導体記憶装置10へのユーザデータ及びパリティの書き込みをメモリインターフェイス305へ指示する。また、プロセッサ302は、ホストからのリクエストに従って、半導体記憶装置10からのユーザデータ及びパリティの読み出しをメモリインターフェイス305へ指示する。
【0017】
プロセッサ302は、RAM301に蓄積されるユーザデータに対して、半導体記憶装置10上の格納領域(メモリ領域)を決定する。ユーザデータは、内部バス306経由でRAM301に格納される。プロセッサ302は、メモリ領域の決定を、書き込み単位であるページ単位のデータ(ページデータ)に対して実施する。半導体記憶装置10の1ページに格納されるユーザデータのことを、以下では「ユニットデータ」とも称する。ユニットデータは、一般的には符号化されて、符号語として半導体記憶装置10に格納される。本実施形態では、符号化は必須ではない。メモリコントローラ1は、符号化せずにユニットデータを半導体記憶装置10に格納してもよいが、図1では、一構成例として符号化を行う構成を示している。メモリコントローラ1が符号化を行わない場合には、ページデータはユニットデータと一致する。また、1つのユニットデータに基づいて1つの符号語が生成されてもよいし、ユニットデータが分割された分割データに基づいて1つの符号語が生成されてもよい。また、複数のユニットデータを用いて1つの符号語が生成されてもよい。
【0018】
プロセッサ302は、ユニットデータごとに書き込み先の半導体記憶装置10のメモリ領域を決定する。半導体記憶装置10のメモリ領域には物理アドレスが割当てられている。プロセッサ302は、ユニットデータの書き込み先のメモリ領域を、物理アドレスを用いて管理する。プロセッサ302は、決定したメモリ領域(物理アドレス)を指定してユーザデータを半導体記憶装置10へ書き込むようメモリインターフェイス305へ指示する。プロセッサ302は、ユーザデータの論理アドレス(ホストが管理する論理アドレス)と物理アドレスとの対応を管理する。プロセッサ302は、ホストからの論理アドレスを含む読み出しリクエストを受信した場合は、論理アドレスに対応する物理アドレスを特定し、物理アドレスを指定してユーザデータの読み出しをメモリインターフェイス305へ指示する。
【0019】
ECC回路304は、RAM301に格納されたユーザデータを符号化して、符号語を生成する。また、ECC回路304は、半導体記憶装置10から読み出された符号語を復号する。ECC回路304は、例えばユーザデータに付与されたチェックサム等を利用することで、データにおけるエラーの検出、及び当該エラーの訂正を行う。
【0020】
RAM301は、ホストから受信したユーザデータを半導体記憶装置10へ記憶するまでに一時格納したり、半導体記憶装置10から読み出したデータをホストへ送信するまでに一時格納したりする。RAM301は、例えば、SRAMやDRAM等の汎用メモリである。
【0021】
図1では、メモリコントローラ1が、ECC回路304とメモリインターフェイス305をそれぞれ備える構成例が示されている。しかしながら、ECC回路304がメモリインターフェイス305に内蔵されていてもよい。また、ECC回路304が、半導体記憶装置10に内蔵されていてもよい。図1に示される各要素の具体的な構成や配置は、特に限定されない。
【0022】
ホストから書き込みリクエストを受信した場合、図1のメモリシステムは次のように動作する。プロセッサ302は、書き込み対象となるデータをRAM301に一時記憶させる。プロセッサ302は、RAM301にストアされたデータを読み出し、ECC回路304に入力する。ECC回路304は、入力されたデータを符号化し、符号語をメモリインターフェイス305に入力する。メモリインターフェイス305は、入力された符号語を半導体記憶装置10に書き込む。
【0023】
ホストから読み出しリクエストを受信した場合、図1のメモリシステムは次のように動作する。メモリインターフェイス305は、半導体記憶装置10から読み出した符号語をECC回路304に入力する。ECC回路304は、入力された符号語を復号し、復号されたデータをRAM301にストアする。プロセッサ302は、RAM301にストアされたデータを、ホストインターフェイス303を介してホストに送信する。
【0024】
半導体記憶装置10の構成について説明する。図2に示されるように、半導体記憶装置10は、メモリセルアレイ430と、センスアンプ440と、ロウデコーダ450と、入出力回路401と、ロジック制御回路402と、シーケンサ421と、レジスタ422と、電圧生成回路423と、入出力用パッド群411と、ロジック制御用パッド群412と、電源入力用端子群413と、を備えている。
【0025】
メモリセルアレイ430は、データを記憶する部分である。メモリセルアレイ430は、複数のビット線BL及び複数のワード線WLに関連付けられた複数のメモリセルトランジスタMTを有している。メモリセルアレイ430の具体的な構成については、図3図6を参照しながら後に説明する。
【0026】
センスアンプ440は、ビット線BLに印加される電圧を調整したり、ビット線BLの電圧を読み出してデータに変換したりするための回路である。センスアンプ440は、データの読み出し時には、メモリセルトランジスタMTからビット線BLに読み出された読み出しデータを取得し、取得した読み出しデータを入出力回路401に転送する。センスアンプ440は、データの書き込み時には、ビット線BLを介して書き込まれる書き込みデータをメモリセルトランジスタMTに転送する。センスアンプ440の動作は、シーケンサ421により制御される。
【0027】
ロウデコーダ450は、ワード線WLのそれぞれに電圧を印加するための、不図示のスイッチ群として構成された回路である。ロウデコーダ450は、レジスタ422からブロックアドレス及びロウアドレスを受け取り、当該ブロックアドレスに基づいて対応するブロックを選択するとともに、当該ロウアドレスに基づいて対応するワード線WLを選択する。ロウデコーダ450は、選択されたワード線WLに対して電圧生成回路423からの電圧が印加されるよう、上記のスイッチ群の開閉を切り換える。ロウデコーダ450の動作はシーケンサ421により制御される。
【0028】
入出力回路401は、メモリコントローラ1との間で、信号DQ<7:0>、及び、データストローブ信号DQS、/DQSを送受信する。入出力回路401は、信号DQ<7:0>内のコマンド及びアドレスをレジスタ422に転送する。また、入出力回路401は、書き込みデータ及び読み出しデータを、センスアンプ440との間で送受信する。
【0029】
ロジック制御回路402は、メモリコントローラ1からチップイネーブル信号/CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE、/RE、及びライトプロテクト信号/WPを受信する。また、ロジック制御回路402は、レディービジー信号R/Bをメモリコントローラ1に転送して、半導体記憶装置10の状態を外部に通知する。
【0030】
シーケンサ421は、メモリコントローラ1から入出力回路401及びロジック制御回路402へと入力された制御信号に基づいて、メモリセルアレイ430を含む各部の動作を制御する。
【0031】
レジスタ422は、コマンドやアドレスを一時的に保持する部分である。レジスタ422には、書き込み動作や読み出し動作、及び消去動作等を指示するコマンドが保持される。当該コマンドは、メモリコントローラ1から入出力回路401に入力された後、入出力回路401からレジスタ422に転送され保持される。
【0032】
また、レジスタ422は、上記のコマンドに対応するアドレスも保持される。当該アドレスは、メモリコントローラ1から入出力回路401に入力された後、入出力回路401からレジスタ422に転送され保持される。
【0033】
更に、レジスタ422は、半導体記憶装置10の動作状態を示すステータス情報も保持する。ステータス情報は、メモリセルアレイ430等の動作状態に応じて、シーケンサ421によって都度更新される。ステータス情報は、メモリコントローラ1からの要求に応じて、状態信号として入出力回路401からメモリコントローラ1へと出力される。
【0034】
電圧生成回路423は、メモリセルアレイ430におけるデータの書き込み動作、読み出し動作、及び、消去動作のそれぞれに必要な電圧を生成する部分である。このような電圧には、例えば、それぞれのワード線WLに印加される電圧や、それぞれのビット線BLに印加される電圧等が含まれる。電圧生成回路423の動作はシーケンサ421によって制御される。
【0035】
入出力用パッド群411は、メモリコントローラ1と入出力回路401との間で各信号の送受信を行うための、複数の端子(パッド)が設けられた部分である。それぞれの端子は、信号DQ<7:0>、及び、データストローブ信号DQS、/DQSのそれぞれに対応して個別に設けられている。
【0036】
ロジック制御用パッド群412は、メモリコントローラ1とロジック制御回路402との間で各信号の送受信を行うための、複数の端子(パッド)が設けられた部分である。それぞれの端子は、チップイネーブル信号/CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE、/RE、ライトプロテクト信号/WP、及び、レディービジー信号R/Bのそれぞれに対応して個別に設けられている。
【0037】
電源入力用端子群413は、半導体記憶装置10の動作に必要な各電圧の印加を受けるための、複数の端子が設けられた部分である。それぞれの端子に印加される電圧には、電源電圧Vcc、VccQ、Vpp、及び接地電圧Vss等が含まれる。
【0038】
電源電圧Vccは、動作電源として外部から与えられる回路電源電圧であり、例えば3.3V程度の電圧である。電源電圧VccQは、例えば1.2Vの電圧である。電源電圧VccQは、メモリコントローラ1と半導体記憶装置10との間で信号を送受信する際に用いられる電圧である。電源電圧Vppは、電源電圧Vccよりも高圧の電源電圧であり、例えば12Vの電圧である。
【0039】
メモリセルアレイ430の具体的な構成について説明する。図3には、メモリセルアレイ430の構成が等価回路図として示されている。同図に示されるように、メモリセルアレイ430は、複数のストリングユニットSU0~SU3を含む。それぞれのストリングユニットSU0~SU3は、複数のNANDストリングSRを含む。更に、それぞれのNANDストリングSRは、例えば、8つのメモリセルトランジスタMT0~MT7、及び、2つのセレクトトランジスタSTD、STSを含む。NANDストリングSRに含まれるメモリセルトランジスタやセレクトトランジスタの数は、図1の例とは異なっていてもよい。
【0040】
複数のストリングユニットSU0~SU3は、全体で1つのブロックを構成しており、このようなブロックがメモリセルアレイ430には複数設けられている。図3においては単一のブロックのみが図示されており、その他のブロックについては図示が省略されている。
【0041】
以下の説明においては、ストリングユニットSU0~SU3のそれぞれを区別せず「ストリングユニットSU」とも表記することがある。同様に、メモリセルトランジスタMT0~MT7のそれぞれを区別せず「メモリセルトランジスタMT」とも表記することがある。
【0042】
それぞれのストリングユニットSUには、N本設けられたビット線BL0~BL(N-1)と同じ数のNANDストリングSRが含まれる。Nは正の整数である。NANDストリングSRに含まれるメモリセルトランジスタMT0~MT7は、セレクトトランジスタSTDのソースと、セレクトトランジスタSTSのドレインと、の間において直列に配置されている。セレクトトランジスタSTDのドレインはいずれかのビット線BL0等に接続されている。セレクトトランジスタSTSのソースはソース線SLに接続されている。以下の説明においては、ビット線BL1~BL(N-1)のそれぞれを区別せず「ビット線BL」とも表記することがある。
【0043】
後に説明するように、それぞれのメモリセルトランジスタMTは、ゲート部分に電荷蓄積層を有するトランジスタとして構成されている。当該電荷蓄積層に蓄積された電荷量が、メモリセルトランジスタMTに保持されるデータに対応したものとなる。メモリセルトランジスタMTは、電荷蓄積層として例えば窒化シリコン膜等を用いたチャージトラップ型のものであってもよく、電荷蓄積層として例えばシリコン膜等を用いたフローティングゲート型のものであってもよい。
【0044】
ストリングユニットSU0に含まれる複数のセレクトトランジスタSTDのゲートは、いずれもセレクトゲート線SGD0に接続されている。セレクトゲート線SGD0は、各セレクトトランジスタSTDの開閉を切り換えるための電圧が印加される線である。ストリングユニットSU1~SU3についても同様に、それぞれのストリングユニットSUに対応して、セレクトトランジスタSTDに電圧を印加するためのセレクトゲート線SGD1~SGD3が設けられている。
【0045】
ストリングユニットSU0に含まれる複数のセレクトトランジスタSTSのゲートは、いずれもセレクトゲート線SGS0に接続されている。セレクトゲート線SGS0は、各セレクトトランジスタSTSの開閉を切り換えるための電圧が印加される線である。ストリングユニットSU1~SU3についても同様に、それぞれのストリングユニットSUに対応して、セレクトトランジスタSTSに電圧を印加するためのセレクトゲート線SGS1~SGS3が設けられている。尚、1つのブロックを構成するストリングユニットSU0~SU3間においてセレクトゲート線SGSが共有され、ストリングユニットSU0~SU3に含まれる全てのセレクトトランジスタST2のゲートが共通のセレクトゲート線SGSに接続されていてもよい。
【0046】
メモリセルトランジスタMT0~MT7のそれぞれのゲートは、ワード線WL0~WL7に接続されている。ワード線WL0~WL7は、メモリセルトランジスタMT0~MT7の開閉を切り換えたり、メモリセルトランジスタMT0~MT7の各電荷蓄積層に蓄積された電荷量を変化させたりする等の目的で、電圧が印加される線である。
【0047】
半導体記憶装置10におけるデータの書き込み及び読み出しは、いずれかのストリングユニットSUにおける、いずれかのワード線WLに接続された複数のメモリセルトランジスタMTに対して、「ページ」と称される単位ごとに一括して行われる。一方、半導体記憶装置10におけるデータの消去は、ブロックに含まれる全てのメモリセルトランジスタMTに対して、一括して行われる。このようなデータの書き込み、読み出し、及び消去を行うための具体的な方法としては、公知となっている様々な方法を採用することができるので、その詳細な説明については省略する。
【0048】
図4には、半導体記憶装置10のうち、メモリセルアレイ430及びその近傍の部分の構成が模式的な斜視図として示されている。同図に示されるように、半導体記憶装置10は、基板20と、絶縁体層21と、半導体層22と、複数の絶縁体層30及び導電体層40と、を備えている。尚、図4に示されるz方向は、基板20の表面に対し垂直な方向である。同図に示されるx方向は、z方向に対し垂直な方向であり、ビット線BLが伸びている方向である。同図に示されるy方向は、z方向及びx方向のいずれに対しても垂直な方向である。
【0049】
基板20は、図4のz方向側において平坦な面を有する板状の部材であって、例えばシリコンウェハである。以下に説明する絶縁体層21、半導体層22、絶縁体層30、及び導電体層40等は、基板20のz方向側において、例えばCVD成膜により形成された複数層の膜となっている。基板20の表面には、例えば、素子分離領域20iが設けられている。素子分離領域20iは、例えば、シリコン酸化物を含む絶縁領域であり、その一部において、トランジスタTrのソース及びドレイン領域を区画する部分である。
【0050】
絶縁体層21は、例えば酸化シリコンのような絶縁性の材料により形成された層である。基板20の表面側には、例えば上記のトランジスタTrや、配線LN等を含む周辺回路が形成されている。この周辺回路は、図2に示されるセンスアンプ440やロウデコーダ450等を構成するものである。絶縁体層21は、これら周辺回路の全体を覆っている。
【0051】
半導体層22は、図3のソース線SLとして機能する層である。半導体層22は、例えば、不純物がドープされた多結晶シリコンのような、シリコンを含む材料により形成されている。半導体層22は、メモリセルアレイ430の-z方側となる部分において、上記の絶縁体層21に埋め込まれている。
【0052】
尚、半導体層22は、その全体がシリコンのような半導体材料により形成されていてもよいのであるが、図4の例のように、半導体層22aと導電層22bからなる2層構造になっていてもよい。半導体層22aは例えばシリコンのような半導体材料により形成された層であり、導電層22bは例えばタングステンのような金属材料により形成された層である。
【0053】
絶縁体層30及び導電体層40は、半導体層22の上方(+z)側においてそれぞれ複数形成されており、図4のz方向に沿って交互に並ぶように配置されている。
【0054】
導電体層40は、モリブデン等を含む材料により形成された、導電性を有する層である。それぞれの導電体層40は、図3におけるワード線WL0~WL7やセレクトゲート線SGS1、SGD1等として用いられるものである。後に説明するように、それぞれの導電体層40には、互いに異なる材料からなる複数の層(後述の第1層41等)が含まれるのであるが、図4においてはその図示が省略されている。絶縁体層30は、互いに隣り合う導電体層40の間となる位置に配置され、両者の間を電気的に絶縁するものである。絶縁体層30は、例えば、酸化シリコンを含む材料により形成されている。
【0055】
複数の絶縁体層30及び導電体層40がz方向に沿って積層されている領域には、これらをz方向に沿って貫くように複数のメモリホールMHが形成されており、メモリホールMHの内側にメモリピラー50が形成されている。それぞれのメモリピラー50は、最もz方向側にある絶縁体層30から、半導体層22に至るまでの範囲において形成されている。尚、それぞれのメモリピラー50は、図3に示されるNANDストリングSRに対応するものである。
【0056】
図5には、メモリピラー50を、その長手方向に沿った中心軸を通る面(例えばx-z平面)で切断した場合の断面が示されている。また、図6には、図5のVI-VI断面が示されている。
【0057】
図6に示されるように、メモリピラー50は略円形の断面形状を有している。メモリピラー50は、コア部51と、半導体部52と、トンネル絶縁膜53と、電荷捕獲膜54と、ブロック絶縁膜55と、を有している。
【0058】
コア部51は、メモリピラー50のうち最も中心側に設けられた部分である。コア部51は、例えば酸化シリコンのような絶縁性の材料により形成されている。
【0059】
半導体部52は、コア部51を外周側から覆う層として形成された膜である。半導体部52は、例えばアモルファスシリコンを含む材料によって形成されており、メモリセルトランジスタMT等のチャンネルが形成される部分である。尚、コア部51が設けられておらず、半導体部52がメモリピラー50の中心に設けられているような態様であってもよい。
【0060】
トンネル絶縁膜53は、半導体部52を外周側から覆う層として形成された膜である。トンネル絶縁膜53は、例えば、シリコン酸化物、又は、シリコン酸化物とシリコン窒化物とを含む。トンネル絶縁膜53は、半導体部52と電荷捕獲膜54との間の電位障壁を形成するためのものである。例えば、半導体部52から電荷捕獲膜54へ電子を注入するとき(書き込み動作時)、及び、半導体部52から電荷捕獲膜54へ正孔を注入するとき(消去動作時)のそれぞれにおいて、電子又は正孔が、トンネル絶縁膜53の電位障壁を通過する。
【0061】
電荷捕獲膜54は、トンネル絶縁膜53の外側を覆う層として形成された膜である。電荷捕獲膜54は、例えば、シリコン窒化物を含み、膜中に電荷をトラップするトラップサイトを有する。電荷捕獲膜54のうち、ワード線WLである導電体層40と半導体部52との間に挟まれた部分は、先に述べた「電荷蓄積層」として、メモリセルトランジスタMTの記憶領域を構成する。メモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、電荷捕獲膜54における電荷の有無、又は、当該電荷の量によって変化する。これにより、メモリセルトランジスタMTは情報を保持する。
【0062】
ブロック絶縁膜55は、導電体層40から電荷捕獲膜54側への電荷のバックトンネリングを抑制するための膜である。ブロック絶縁膜55の材料としては、例えば、アルミニウム酸化物等の金属酸化物や、シリコン酸化物等を用いることができる。
【0063】
図5に示されるように、ワード線WLである導電体層40は、その外周側の全体がブロック絶縁膜56により覆われている。ブロック絶縁膜56は、上記のブロック絶縁膜55と同様に、導電体層40から電荷捕獲膜54側への電荷のバックトンネリングを抑制するための膜である。本実施形態では、このようにブロック絶縁膜が二重の膜として形成されている。ブロック絶縁膜56の材料としては、ブロック絶縁膜55と同様に、例えば、アルミニウム酸化物等の金属酸化物や、シリコン酸化物等を用いることができる。
【0064】
本実施形態では、それぞれの導電体層40が、第1層41と、第2層42と、を含む。第1層41は、導電体層40のうち外側(つまりブロック絶縁膜56側)に設けられた層であり、モリブデン(Mo)を主成分として含む材料により形成されている。第1層41は、例えばモリブデン単体の層である。第2層42は、第1層41の内側、すなわち、第1層41を挟んでブロック絶縁膜56とは反対側となる位置に設けられた層であり、タングステン(W)を主成分として含む材料により形成されている。第2層42は、例えばタングステン単体の層である。
【0065】
第2層42の更に内側には、空間SPが形成されている。空間SPは、後に説明するように、半導体記憶装置10が製造される過程において形成される微小な空間である。尚、空間SPの厚さは均等ではなく、場所によっては厚さが0となっているような部分も生じ得るのであるが、図5においては、空間SPが均等な厚さを有する空間として模式的に描かれている。
【0066】
以上のように、半導体記憶装置10のメモリセルアレイ430は、トンネル絶縁膜53と、トンネル絶縁膜53の上に設けられた電荷捕獲膜54と、電荷捕獲膜54の上にブロック絶縁膜55、56を介して設けられた導電体層40と、を備える。導電体層40は、モリブデンを含む第1層41と、第1層41を挟んでブロック絶縁膜55、56とは反対側となる位置に設けられた層であって、タングステンを含む第2層42と、を含んでいる。導電体層40がこのような多層構造となっていることの利点については後に説明する。
【0067】
メモリピラー50のうち、導電体層40が接続されている部分の内側のそれぞれは、トランジスタとして機能する。つまり、それぞれのメモリピラー50では、その長手方向に沿って複数のトランジスタが直列に接続された状態となっている。それぞれの導電体層40は、ブロック絶縁膜55、56や電荷捕獲膜54を介して、各トランジスタのゲートに接続されている。トランジスタの内側にある半導体部52は、当該トランジスタのチャネルとして機能する。
【0068】
メモリピラー50の長手方向に沿って、上記のように直列に並ぶそれぞれのトランジスタは、その一部が、図3における複数のメモリセルトランジスタMTとして機能する。また、直列に並ぶ複数のメモリセルトランジスタMTの両側に形成されたトランジスタは、図3におけるセレクトトランジスタSTD、STSとして機能する。
【0069】
図4に戻って説明を続ける。同図に示されるように、それぞれのメモリピラー50のz方向側には、複数のビット線BLが設けられている。それぞれのビット線BLは、x方向に沿って伸びる直線状の配線として形成されており、y方向に沿って並ぶように配置されている。メモリピラー50の上端は、コンタクトCbを介して、いずれかのビット線BLに接続されている。これにより、各メモリピラー50の半導体部52が、ビット線BLに対し電気的に接続されている。
【0070】
積層された導電体層40及び絶縁体層30は、スリットSTによって複数に分断されている。スリットSTは、y方向に沿って伸びるように形成された直線状の溝であり、例えば、半導体層22まで達する深さまで形成されている。
【0071】
また、積層された導電体層40及び絶縁体層30のz方向側部分は、スリットSHEによって分断されている。スリットSHEは、y方向に沿って伸びるように形成された浅い溝である。スリットSHTは、複数の導電体層40のうち、セレクトゲート線SGDとして設けられたもののみを分断する深さまで形成されている。
【0072】
メモリピラー50のうち-z方向側の端部においては、トンネル絶縁膜53等が除去されており、半導体部52が半導体層22に対して接続されている。これにより、ソース線SLとして機能する半導体層22と、各トランジスタのチャネルとが電気的に接続されている。
【0073】
以下では半導体記憶装置10の製造方法について説明する。
【0074】
<積層工程>先ず、基板20の表面に周辺回路を形成した上で、当該周辺回路を覆う絶縁体層21や、絶縁体層21を覆う半導体層22を形成する。その後、半導体層22上面に、複数の絶縁体層30及び犠牲層60を交互に積層する。犠牲層60は、後の工程において導電体層40にリプレイスされる層である。このような犠牲層60としては、例えば窒化シリコンが用いられる。図7には、積層された絶縁体層30及び犠牲層60の一部が図示されている。これらの積層方向(図7の上下方向)は、図4のz方向と同じである。
【0075】
<メモリホール形成工程>積層工程の後は、メモリホール形成工程が行われる。メモリホール形成工程では、積層された絶縁体層30及び犠牲層60のうち、メモリピラー50と対応する部分のそれぞれにメモリホールMHが形成される。メモリホールMHは、図4のz方向に伸びる略円柱形状の細長い穴であり、例えばRIEにより形成される。メモリホールMHは、例えば、半導体層22に到達する深さまで形成される。図8には、メモリホール形成工程が完了した状態が示されている。
【0076】
<メモリピラー形成工程>メモリホール形成工程の後は、メモリピラー形成工程が行われる。メモリピラー形成工程では、メモリホールMHの内側にメモリピラー50が形成される。具体的には、メモリホールMHの内面に、ブロック絶縁膜55、電荷捕獲膜54、トンネル絶縁膜53、半導体部52、及びコア部51が、例えばCVD成膜によってこの順に形成される。図9には、メモリピラー形成工程が完了した状態が示されている。
【0077】
<犠牲層除去工程>メモリピラー形成工程の後は、犠牲層除去工程が行われる。犠牲層除去工程では、先ず、図4に示されるスリットSTが形成される。これにより、積層された絶縁体層30及び犠牲層60が分断される。その後、スリットSTを介したウェットエッチングによって犠牲層60が除去される。このとき、積層されたそれぞれの絶縁体層30は、間に隙間(空間SP)が空いている状態で残留する。ただし、それぞれの絶縁体層30は、メモリピラー50及び不図示の支持柱によって支持されるので、その形状が維持される。図10には、犠牲層除去工程が完了した状態が示されている。
【0078】
<絶縁膜形成工程>犠牲層除去工程の後は、絶縁膜形成工程が行われる。絶縁膜形成工程では、空間SPを区画する各面の全体を覆うように、ブロック絶縁膜56が形成される。ブロック絶縁膜56は、例えばCVDもしくはALDによって成膜される。図11には、絶縁膜形成工程が完了した状態が示されている。
【0079】
<導電体層形成工程>絶縁膜形成工程の後は、導電体層形成工程が行われる。導電体層形成工程では、ブロック絶縁膜56のうち空間SPを区画する各面の全体を覆うように、導電体層40が形成される。具体的には、図12に示されるように、ブロック絶縁膜56の上に先ず第1層41が形成される。続いて、図13に示されるように、第1層41の上に第2層42が形成される。これにより、図5に示される構成のメモリセルアレイ430が完成する。第1層41の厚さは5nm以上であることが好ましい。また、第2層42の厚さは、3nmから5nmの範囲とすることが好ましい。例えば、第1層41の厚さは、第2層42の厚さよりも厚い。ここで、「厚さ」とは、例えばz方向における寸法を指してよい。
【0080】
ところで、ワード線として設けられる層の材料としては、従来はタングステン(W)が用いられることが多かった。しかしながら、半導体記憶装置の小型化や性能向上に伴って、当該層の材料としてモリブデンを用いることの検討が進められている。
【0081】
しかしながら、モリブデンは、タングステンに比べると酸素が拡散しやすい材料であることが知られている。このため、製造工程等においてモリブデンの層(ワード線)が外気に曝されると、モリブデン内に酸素が拡散し、半導体記憶装置10の性能が低下してしまう可能性がある。
【0082】
そこで、本実施形態では、モリブデンを主成分とする第1層41で導電体層40を形成した上で、第1層41の外側(空間SP側)を、タングステンを主成分とする第2層42で覆うこととしている。
【0083】
上記の導電体層形成工程において、第1層41及び第2層42はいずれも、例えばCVDもしくはALDによって成膜される。第1層41を形成する際は、原料ガスとして例えばMoOCl、MoOCl、H、NH、等を含むガスを用いることができる。第2層42を形成する際は、原料ガスとして例えばWF、H、B、SiH、等を含むガスを用いることができる。SiHに替えてNHを用いてもよい。
【0084】
不図示の成膜装置において第1層41が形成された後は、製造途中の半導体記憶装置10を成膜装置のチャンバーから取り出すことなく、供給されるガス種等を変更することで、そのまま第2層42の形成が行われる。つまり、第1層41の形成、及び、第2層42の形成は、周囲の雰囲気を外気から遮断した状態のまま連続して行われる。図12の状態において空間SPに外気が導入されないので、第1層41の表面は、外気に触れることなく第2層42によって覆われることとなる。これにより、モリブデンを含む第1層41の一部が酸化したり、第1層41の内部に酸素が拡散したりすることを抑制できる。
【0085】
尚、図13の状態において、第2層42の周囲には空間SPの一部が残留している。導電体層形成工程が完了した後、半導体記憶装置10が成膜装置のチャンバーから取り出される際等においては、空間SPには外気が導入され、第2層42が外気に曝される可能性がある。
【0086】
しかしながら、タングステンを主成分として含む第2層42は、上記のように酸素が拡散しにくい層となっている。このような第2層42で第1層41が覆われているので、第1層41の内部に向けた酸素の拡散が十分に抑えられている。これにより、酸素の拡散に起因した半導体記憶装置10の性能低下が防止される。
【0087】
第1層41は、上記のようにMoOCl、MoOCl、H、NH、等の原料ガスにより形成された結果として、窒素及び塩素を含んでいる。原料ガスの選択により、第1層41が、窒素及び塩素のうちの一方のみを含んでいる構成としてもよい。いずれの場合も、第1層41に不純物として含まれる窒素原子の濃度、又は塩素原子の濃度は、1×1019atoms/cm以下に抑えることが好ましく、1×1018atoms/cm以下に抑えることが更に好ましい。
【0088】
第2層42は、成膜時の原料ガスとしてWFを用いた結果として、不純物としてフッ素(F)を含む膜となっている。第2層42のフッ素が拡散してブロック絶縁膜55(アルミニウム酸化物等)まで到達すると、ブロック絶縁膜55の劣化が生じる可能性がある。しかしながら、本実施形態では、第2層42とブロック絶縁膜55との間に第1層41が介在しているので、ブロック絶縁膜55へのフッ素の到達は十分に抑えられる。従って、第2層42の原料ガスとしてWFを用いても問題はない。尚、フッ素の到達を更に抑制する必要がある場合には、第2層42の成膜時における原料ガスとして、例えばWOCl、H、B、SiH(又はNH)、等を含むガスを用いればよい。
【0089】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0090】
本実施形態に係る半導体記憶装置10は、導電体層形成工程の内容、及び、その結果として形成される導電体層40の構成において、第1実施形態と異なっている。
【0091】
絶縁膜形成工程においてブロック絶縁膜56が形成された後は、本実施形態では図14のように、ブロック絶縁膜56の上に第3層43が先ず形成される。第3層43は、タングステンを主成分として含む材料により形成された膜である。第3層43は、例えばタングステン単体の層である。第3層43は、ブロック絶縁膜56のうち、ブロック絶縁膜55や絶縁体層30とは反対側の面全体を覆うように形成される。第3層43の厚さは3nm以上であることが好ましく、4nm以上であることが更に好ましい。第3層43の厚さは、例えば第1層41の厚さよりも薄い。第3層43は、第1層41や第2層42と同様に、例えばCVDもしくはALDによって成膜される。第3層43を形成する際は、原料ガスとして例えばWOCl、H、B、SiH、等を含むガスを用いることができる。SiHに替えてNHを用いてもよい。
【0092】
その後は、第1実施形態における導電体層形成工程と同様に、第1層41及び第2層42が順に形成される。つまり、本実施形態では、ブロック絶縁膜56の上に、タングステンを含む第3層43を形成し、当該第3層43の上に第1層41、第2層42を順に形成する。第3層43の形成、第1層41の形成、及び、第2層42の形成は、周囲の雰囲気を外気から遮断した状態のまま連続して行われることが好ましい。尚、第2層42の厚さは、本実施形態では2nmから4nmの範囲とすることが好ましい。図15には、導電体層40の形成が完了した状態、すなわち、本実施形態に係る半導体記憶装置10の構成が示されている。
【0093】
このように、本実施形態に係る半導体記憶装置10では、導電体層40が第3層43を更に含んでいる。第3層43は、第1層41を挟んで第2層42とは反対側となる位置に設けられた層であって、タングステンを含む層として設けられている。
【0094】
タングステンを主成分として含む第3層43は、ブロック絶縁膜55に向けた酸素の拡散を防止する機能を有している。ただし、本実施形態では、第2層42によって酸素の侵入及び拡散が十分に防止されているので、第3層43によって酸素の拡散を防止する必要性は小さい。このため、第3層43を十分に薄く形成し、導電体層40の電気抵抗を第1実施形態と同程度に抑えることが可能となる。また、酸素の拡散防止機能を第3層43にも持たせることで、第1実施形態に比べて第2層42を薄くできるという効果も得られる。更に、第3層43を介在させることにより、第1層41におけるモリブデンの大粒径化を促進し、低抵抗化する、という効果も得られる。
【0095】
第3層43は、ブロック絶縁膜55に近い位置にあるので、不純物としてフッ素を含むことは好ましくない。そこで、本実施形態では上記のように、原料ガスとしてWOCl、H、B、SiH、等を含むガス(つまり、フッ素を殆ど含まないガス)を用いることで、第3層43が含むフッ素の量を可能な限り低減している。第3層43におけるフッ素原子の濃度は、1×1017atoms/cm以下であることが好ましい。
【0096】
第3実施形態について説明する。以下では、上記の第2実施形態(図15)と異なる点について主に説明し、第2実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0097】
図16に示されるように、本実施形態に係る半導体記憶装置10では、第4層44が更に設けられている。第4層44は、ブロック絶縁膜56と導電体層40との間、具体的には、ブロック絶縁膜56と第3層43との間に設けられた層である。第4層44は、所謂「バリアメタル」として機能する層であり、本実施形態では窒化チタン(TiN)を含む材料に形成されている。第4層44が設けられていることにより、ブロック絶縁膜56に対する導電体層40の密着性を向上させることができる。第4層44は、窒化モリブデン(MoN)又は窒化タングステン(WN)を含む材料により形成されていてもよい。第4層44は、窒素、チタン、モリブデン、及びタングステンのうちの少なくとも1つを含んでいればよい。
【0098】
第4層44は、ブロック絶縁膜56のうち、ブロック絶縁膜55や絶縁体層30とは反対側の面全体を覆うように形成される。第4層44は、第1層41等と同様に、例えばCVDもしくはALDによって成膜される。その後は、第2実施形態と同様に、第3層43、第1層41、及び第2層42が順に形成される。第4層44の形成、第3層43の形成、第1層41の形成、及び、第2層42の形成は、周囲の雰囲気を外気から遮断した状態のまま連続して行われることが好ましい。
【0099】
第4実施形態について説明する。以下では、上記の第3実施形態(図16)と異なる点について主に説明し、第3実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0100】
図17に示されるように、本実施形態に係る半導体記憶装置10では、第3層43が設けられておらず、ブロック絶縁膜56と導電体層40との間、具体的には、ブロック絶縁膜56と第1層41との間に、第3実施形態と同様の第4層44が設けられている。
【0101】
本実施形態では、ブロック絶縁膜56の上に第4層44が形成された後、第4層44の上に、第1層41及び第2層42が順に形成される。第4層44の形成、第1層41の形成、及び、第2層42の形成は、周囲の雰囲気を外気から遮断した状態のまま連続して行われることが好ましい。
【0102】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0103】
10:半導体記憶装置、40:導電体層、41:第1層、42:第2層、53:トンネル絶縁膜、54:電荷捕獲膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17