(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183054
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20231220BHJP
A62D 3/40 20070101ALI20231220BHJP
F23G 5/20 20060101ALI20231220BHJP
F23G 5/16 20060101ALI20231220BHJP
B09B 101/75 20220101ALN20231220BHJP
B09B 101/77 20220101ALN20231220BHJP
B09B 101/90 20220101ALN20231220BHJP
【FI】
B09B3/40 ZAB
A62D3/40
F23G5/20 A
F23G5/16 Z
B09B101:75
B09B101:77
B09B101:90
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096446
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】506347517
【氏名又は名称】DOWAエコシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】福地 洋一
(72)【発明者】
【氏名】池田 武史
(72)【発明者】
【氏名】村重 勝士
(72)【発明者】
【氏名】阿部 俊司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋人
【テーマコード(参考)】
3K078
3K261
4D004
【Fターム(参考)】
3K078AA05
3K078AA07
3K078BA03
3K078BA09
3K078BA21
3K261AA05
3K261AA07
3K261DA00
3K261DA06
4D004AA02
4D004AA07
4D004AB06
4D004CA22
4D004CA28
4D004CB09
4D004CC20
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA10
4D004DA11
4D004DA20
(57)【要約】
【課題】1,100℃以上の燃焼温度および滞留時間を安定して確保し、多種多様な低濃度PCB廃棄物を無害化処理することができる低濃度PCB廃棄物の処理方法を提供する
【解決手段】PCBを含有する廃棄物を加熱してPCB廃棄物からPCBを揮発させる加熱工程と、加熱工程により排出される排ガスを加熱して無害化処理する排ガス処理工程とを有するPCB廃棄物の処理方法であって、加熱工程において、PCB廃棄物とともに耐火物を回転燃焼炉に供給する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCBを含有する廃棄物を加熱してPCB廃棄物からPCBを揮発させる加熱工程と、前記加熱工程により排出される排ガスを加熱して無害化処理する排ガス処理工程とを有するPCB廃棄物の処理方法であって、
前記加熱工程において、前記PCB廃棄物とともに耐火物を回転燃焼炉に供給することを特徴とする、低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
【請求項2】
前記耐火物は、溶倒温度1200℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
【請求項3】
前記耐火物は、目開き50mmの篩上且つ目開き200mmの篩下を90%以上含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
【請求項4】
前記耐火物は、前記回転燃焼炉の燃焼ガスカロリーに応じて0.04~0.3kg/MJで供給することを特徴とする、請求項1または2に記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
【請求項5】
前記回転燃焼炉に供給する前記PCB廃棄物の重量に対する前記耐火物の重量が2~20倍であることを特徴とする、請求項1または2に記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
【請求項6】
燃焼速度が速いPCB廃棄物と燃焼速度が遅いPCB廃棄物とを混合して前記回転燃焼炉に供給することを特徴とする、請求項1または2に記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
【請求項7】
固体の前記PCB廃棄物を一辺400mm以下として前記回転燃焼炉に供給することを特徴とする、請求項1または2に記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
【請求項8】
前記PCB廃棄物は、PCB濃度が5000mg/kg以上100,000mg/kg以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低濃度PCB廃棄物を無害化するためのPCB含有廃棄物の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、耐熱性、絶縁性に優れ、難分解性であることから、かつて絶縁油等として広く用いられていたが、人体および環境に対する毒性の高さから、現在ではその製造、輸入および使用が禁止されている。また、PCB特別措置法により、PCBを使用した既存の機器類は、2027年3月までに無害化処理した上での廃棄処理を完了しなければならないことになっている。
【0003】
従来、PCB廃棄物の処理として、溶剤洗浄や、真空加熱分離方式での処理が行われている。例えば特許文献1には、低濃度PCBを含有する液体や固体の廃棄物を850℃以上で分解し、無害化処理する方法が開示されている。なお、PCB廃棄物とは、PCBを含有した廃棄物をいい、特別に指定された保管・処分を行う必要があるものをいう。PCB廃棄物の具体例としては、絶縁油にPCBを使用したトランスやコンデンサ等が挙げられる。
【0004】
ところが、近年新たに、感圧紙等に5,000mg/kgを超えるPCBが含有されていることが発覚した。これに伴い、PCB特別措置法が改正され、5,000mg/kg(0.5%)以上、100,000mg/kg(10%)以下のPCBを含有する汚泥、紙くず、木くず、繊維くず、廃プラスチック類が、改正低濃度PCB廃棄物と認定され、一般の無害化処理認定施設での無害化処理が可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の低濃度PCB廃棄物よりも高濃度の改正低濃度PCB廃棄物においては、環境省による無害化実証試験に基づき、1,100℃以上で滞留時間2秒以上という処理基準が定められている。ところが、従来の無害化処理は、上記特許文献1に開示された方法のように、850℃で2秒以上の処理を行うものであり、改正低濃度PCB廃棄物の処理を行うことができない。
【0007】
また、従来の処理施設では、改正低濃度PCB廃棄物と認定された廃ウェス類、スラッジ・活性炭、おがくず、紙くず、木くず、脱脂綿、繊維くず、廃プラスチック類、等の許可品目に対し、感圧紙、塗膜(Pb含有)、可燃固形物、不燃固形物、油泥といった多種多様な低濃度PCB汚染物の性状に対応しきれず、処理品目の限定や処理量の制限を必要としたり、安定操業ができないといった問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、1,100℃以上の燃焼温度および滞留時間を安定して確保し、多種多様な低濃度PCB廃棄物を無害化処理することができる低濃度PCB廃棄物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するため、本発明は、PCBを含有する廃棄物を加熱してPCB廃棄物からPCBを揮発させる加熱工程と、前記加熱工程により排出される排ガスを加熱して無害化処理する排ガス処理工程とを有するPCB廃棄物の処理方法であって、前記加熱工程において、前記PCB廃棄物とともに耐火物を回転燃焼炉に供給することを特徴とする、低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法を提供する。
【0010】
前記耐火物は、溶倒温度1200℃以上であることが好ましい。また、前記耐火物は、目開き50mmの篩上且つ目開き200mmの篩下を90%以上含むことが好ましい。
【0011】
前記耐火物は、前記回転燃焼炉の燃焼ガスカロリーに応じて0.04~0.3kg/MJで供給してもよい。
【0012】
前記回転燃焼炉に供給する前記PCB廃棄物の重量に対する前記耐火物の重量が2~20倍でもよい。燃焼速度が速いPCB廃棄物と燃焼速度が遅いPCB廃棄物とを混合して前記回転燃焼炉に供給してもよい。また、固体の前記PCB廃棄物を一辺400mm以下として前記回転燃焼炉に供給してもよい。
【0013】
前記PCB廃棄物は、PCB濃度が5000mg/kg以上100,000mg/kg以下でもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転燃焼炉内において、1,100℃以上の燃焼温度および滞留時間を安定して確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態にかかる低濃度PCB廃棄物の処理設備の例を示す概略図である。
【
図2】ロータリーキルンおよび二次燃焼室の内部の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明に係る低濃度PCB廃棄物の処理設備の例を示す。本実施形態において、被処理物である低濃度PCB廃棄物は、5,000mg/kg~100,000mg/kgのPCBを含有するものとする。処理装置1は、低濃度PCB廃棄物からPCBを揮発させる加熱工程を行う廃棄物焼却部11と、加熱工程で発生した排ガスを無害化処理する排ガス処理工程を行う排ガス処理部12とを有している。廃棄物焼却部11は、低濃度PCB廃棄物9を燃焼させる回転燃焼炉の一例であるロータリーキルン21と、ロータリーキルン21の出口に連結して設けられた二次燃焼室22とを備えている。排ガス処理部12は、二次燃焼室22で発生する排ガスを燃焼処理する三次燃焼炉23、および三次燃焼炉23で処理された煤塵を含む排ガスを冷却、中和、および除塵する冷却塔24、第一洗浄塔25、第二洗浄塔26、第一湿式電気集塵機27、第二湿式電気集塵機28が順に配置されている。なお、回転燃焼炉には、ロータリーキルンの他に回転ストーカ式焼却炉などがある。
【0018】
図2は、ロータリーキルン21および二次燃焼室22の内部を示す図である。ロータリーキルン21の片端(
図2において左端)が低濃度PCB廃棄物9の搬入口31である。他端(下流側)が出口32であり、出口32は二次燃焼室22の側方に連結されている。ロータリーキルン21は、内部を所定温度、例えば600℃~1300℃に加熱するバーナー(図示省略)を備え、被処理物である低濃度PCB廃棄物9を搬出方向に搬送しながら加熱する。
【0019】
低濃度PCB廃棄物9は、供給ホッパ20(
図1)から、ロータリーキルン21内に、耐火物の一例である耐火レンガ10とともに投入する。被処理物である低濃度PCB廃棄物9は、感圧紙、塗膜(Pb含有)、可燃固形物、不燃固形物、油泥等であり、これらが混在してもよい。固形物の場合、円滑な供給を行うためには、粒径400mm以下に破砕してから供給することが好ましい。また、油泥のような燃焼速度の速いPCB廃棄物に対しては、供給熱負荷量の管理だけでは安定処理が困難な場合がある。このようなときには、ウェス等を同梱し、固体の表面燃焼で燃焼速度を低下させることにより、確実にPCBを揮発させることができるようになる。
【0020】
耐火レンガ10は、1100℃以上の炉内での溶融、固着を防ぐため、溶倒温度1200℃以上のものが好ましい。また、粒径が小さすぎると軟化・溶融状態になる部分が多くなりクリンカを形成しやすく、廃棄物の飛散を防止する効果が低減することがあり、廃棄物が耐火レンガ10にマスキングされて酸欠状態になり燃焼が妨げられることがある。さらに、粒径が大きすぎると供給時のトラブルが増加するおそれがあり、炉壁内を破損するおそれも高まる。そのため、目開き50mmの篩上且つ目開き200mmの篩下を90%以上含むものが好ましい。さらに、耐火レンガ10の供給量は、ロータリーキルン21に加熱の目的で供給する燃焼ガスの総熱量(燃焼ガスカロリー)を見て、廃棄物燃焼熱量当たりの供給量として0.04~0.3kg/MJの範囲で調整できる。このとき、供給される廃棄物の重量に対する耐火レンガ10の重量は2~20倍程度となりうる。または1t~2t/hで供給することができる。
【0021】
さらに、必要に応じて、PCB廃棄物の焼却時に従来用いていた灯油等の助燃剤を、ロータリーキルン21内に供給する。
【0022】
低濃度PCB廃棄物9を耐火レンガ10とともに供給することにより、熱容量を向上させ、ロータリーキルン21の出口付近、例えば
図2に示すように出口32から3mの位置から二次燃焼室22の煙道33にわたり、安定して1100℃以上を確保することができる。したがって、低濃度PCB廃棄物9を1100℃以上の範囲に2秒以上対流させ、PCBを完全分解させることができる。そのため、従来用いていた助燃剤の量を削減できる。また、低濃度PCB廃棄物9が高温の耐火レンガ10に接触して撹拌されながら燃焼するので、確実にPCBを分解、揮発させることができる。
【0023】
さらに、低濃度PCB廃棄物9が紙状の場合、耐火レンガ10に接触していることで、キルン入口からの燃焼空気によって紙状の廃棄物が炉内を飛散するのを抑制する効果がある。また、耐火レンガ10により低濃度PCB廃棄物9の燃え殻等が溶融固着せずに間隙が生じ、酸欠による未燃焼を抑制する効果も発揮される。すなわち、低濃度PCB廃棄物9のPCBの分解を促進するとともに、排出系統のトラブルを抑制することができる。
【0024】
なお、本発明で使用される耐火レンガ10は、耐火物の補修工事などで発生するハツリ品を利用することができるので、低コストで実施可能である。
【0025】
ロータリーキルン21で燃焼した低濃度PCB廃棄物9の燃え殻は、二次燃焼室22の下部の排出口34から排出され、排ガスは、二次燃焼室22の煙道33を介して三次燃焼炉23へ排出される。三次燃焼炉23では、所定温度および滞留時間で排ガスを燃焼させ、高温燃焼した煤塵を含む排ガスは、冷却塔24、第一洗浄塔25、第二洗浄塔26、第一湿式電気集塵機27、第二湿式電気集塵機28を順に通過して冷却、中和、および除塵された後、大気に放出される。なお、本発明において、排ガス処理部12は、
図1に示す構成に限るものではない。
【0026】
以上のように、本発明によれば、低濃度PCB廃棄物9と耐火レンガ10との混焼により燃焼効率が向上し、100,000mg/kg以下の低濃度PCB廃棄物9を安定して無害化処理することが可能となる。また、低濃度PCB廃棄物9を破砕しなくても処理が可能であり、さらに低濃度PCB廃棄物9が耐火レンガ10に接触しながらロータリーキルン21内で搬送されることで、多種多様な性状の低濃度PCB廃棄物9を処理することができる。さらに、燃焼速度が速いPCB廃棄物9と燃焼速度が遅いPCB廃棄物9とを混合してロータリーキルン21に供給すれば、油泥、塗膜屑など、幅広い熱量の低濃度PCB廃棄物9に対応することができる。ここで、燃焼速度が速いPCB廃棄物としては、可燃性のPCB廃棄物、例えば、油泥、廃プラスチック類などがあり、燃焼速度が遅いPCB廃棄物としては、不燃性の汚泥などがある。
【0027】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0028】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0029】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)PCBを含有する廃棄物を加熱してPCB廃棄物からPCBを揮発させる加熱工程と、前記加熱工程により排出される排ガスを加熱して無害化処理する排ガス処理工程とを有するPCB廃棄物の処理方法であって、
前記加熱工程において、前記PCB廃棄物とともに耐火物を回転燃焼炉に供給することを特徴とする、低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
(2)前記耐火物は、溶倒温度1200℃以上であることを特徴とする、前記(1)に記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
(3)前記耐火物は、目開き50mmの篩上且つ目開き200mmの篩下を90%以上含むことを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
(4)前記耐火物は、前記回転燃焼炉の燃焼ガスカロリーに応じて0.04~0.3kg/MJで供給することを特徴とする、前記(1)~(3)のいずれかに記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
(5)前記回転燃焼炉に供給する前記PCB廃棄物の重量に対する前記耐火物の重量が2~20倍であることを特徴とする、前記(1)~(4)のいずれかに記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
(6)燃焼速度が速いPCB廃棄物と燃焼速度が遅いPCB廃棄物とを混合して前記回転燃焼炉に供給することを特徴とする、前記(1)~(5)のいずれかに記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
(7)固体の前記PCB廃棄物を一辺400mm以下として前記回転燃焼炉に供給することを特徴とする、前記(1)~(6)のいずれかに記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
(8)前記PCB廃棄物は、PCB濃度が5000mg/kg以上100,000mg/kg以下であることを特徴とする、前記(1)~(7)のいずれかに記載の低濃度PCB廃棄物の無害化処理方法。
【実施例0030】
[実施例1]
表1に示すように、PCB濃度が5,500~65,000mg/kgの低濃度PCB廃棄物9を1260kg用意し、種類ごとに40L容量のメディカルペール(471mm×320mm×354mm)に詰め替えて、供給ホッパ20から搬入口31を介して全長8.3mのロータリーキルン21に投入した。なお、低濃度PCB廃棄物9は、必要に応じて一辺が400mm以下の大きさに破砕等を行った後、種類ごとにメディカルペールに詰めた。
【0031】
ロータリーキルン21の燃焼ガスカロリーは6,437MJであった。耐火レンガ10(溶倒温度1400℃、目開き50mmの篩上且つ目開き200mmの篩下を95%含む)を1870kg/hで供給し、低濃度PCB廃棄物9を103kg/hで供給し、燃焼処理を行った。供給した低濃度PCB廃棄物の重量に対する耐火レンガ10の重量は18.2倍であった。
【0032】
ロータリーキルン21において、低濃度PCB廃棄物9を1,100℃以上の高温で焼却したところ、表2に示すように、排ガスの滞留時間2s以上を確保できた。また、PCB分解率は99.9997%であった。
【0033】
また、煙道の排ガス中のPCB濃度、燃え殻及び煤塵中のPCB溶出濃度、排水中のPCB濃度、敷地境界大気中のPCB濃度、敷地外周辺大気中のPCB濃度、のそれぞれについて測定を行った。その結果、いずれも基準値等を下回り、試料の投入及び1,100℃以上の高温燃焼により、低濃度PCB廃棄物が完全に分解されていることを確認した。
【0034】
【0035】
【0036】
[実施例2、実施例3]
実施例2として、目開き50mm篩下の耐火レンガ10(平均粒径35mm程度)を実施例1と同重量で供給し、それ以外は実施例1と同様の操作を繰り返して、燃焼処理を実施した。また、実施例3として、目開き200mmの篩上の耐火レンガ10(平均粒径500mm程度)を実施例1と同重量で供給し、それ以外は実施例1と同様の操作を繰り返して、燃焼処理を実施した。
【0037】
その結果、実施例2、3ともに、実施例1と同様、排ガスは各基準値等を下回り、低濃度PCB廃棄物が完全に分解されていることを確認できた。
【0038】
ただし、実施例2では、目開き50mm篩下の耐火レンガ10を供給したため、耐火レンガ10および燃え殻が、ロータリーキルン21や二次燃焼室22の下部で溶融固着している箇所が見られた。また、実施例3では、目開き200mmの篩上の耐火レンガ10を供給したため、供給時に供給ホッパ20やダンパに動作不良が発生し対応が必要となることがあった。
【0039】
[比較例1]
比較例として、耐火レンガ10を供給しないこと以外は実施例1と同様の操作を繰り返して、燃焼処理を実施した。その結果、排ガス温度が1100℃未満であり、PCB廃棄物の処理基準を満たさなかった。
【0040】
表3に、実施例1の耐火レンガを供給した場合と、耐火レンガを供給しなかった比較例1のそれぞれにおける、全長8.3mのロータリーキルンの4点の炉内温度の測定結果を示す。なお、実施例2、実施例3の場合も、炉内温度は実施例1と同様であった。
【0041】
【0042】
耐火レンガを供給した実施例1~3では、入口から2m以降の下流側で1100℃を超えたが、比較例1では全長にわたって1100℃に達することがなかった。すなわち、本発明例である実施例1~3は、耐火レンガとの混焼により燃焼効率が向上し、低濃度PCB廃棄物を1100℃以上、2秒以上で安定して焼却し、100,000mg/kg以下の改正低濃度PCB汚染物の無害化処理が確実に行われることがわかった。比較例1は実施例1~3と同じ量の燃焼ガスをロータリーキルン21に供給したが、ロータリーキルン21内の温度は、実施例1~3に比較して低い結果となった。