IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

特開2023-183065印刷制御装置、印刷制御方法、印刷制御プログラム
<>
  • 特開-印刷制御装置、印刷制御方法、印刷制御プログラム 図1
  • 特開-印刷制御装置、印刷制御方法、印刷制御プログラム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183065
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】印刷制御装置、印刷制御方法、印刷制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231220BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J11/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096470
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】平山 大介
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EA25
2C056EB13
2C056EB27
2C056EB29
2C056EB37
2C056EC07
2C056EC12
2C056EC33
2C056EC34
2C056FA10
2C056HA12
2C058AB08
2C058AC07
2C058AE04
2C058GB15
2C058GB48
2C058GC09
(57)【要約】
【課題】プリントヘッドの挿継位置からの待避に伴う被印刷物の無駄を低減できる印刷制御装置等を提供する。
【解決手段】搬送される被印刷物50A、50Bに対してインクを吐出するプリントヘッド11を備える印刷装置10を制御する印刷制御装置30は、プリントヘッド11の搬送方向の前段において、当該プリントヘッド11によって印刷中の第1被印刷物50Aに対して、新たな第2被印刷物50Bが挿し継がれたことを検知する挿継検知部31と、第2被印刷物50Bが挿し継がれた紙継位置RCがプリントヘッド11による印刷箇所を通過する際、当該プリントヘッド11による単位印刷長の整数倍の距離を搬送される間、当該プリントヘッド11を第1被印刷物50Aおよび第2被印刷物50Bから待避させるプリントヘッド待避部34と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被印刷物に対してインクを吐出するプリントヘッドを備える印刷装置を制御する印刷制御装置であって、
前記プリントヘッドの搬送方向の前段において、当該プリントヘッドによって印刷中の第1被印刷物に対して、新たな第2被印刷物が挿し継がれたことを検知する挿継検知部と、
前記第2被印刷物が挿し継がれた挿継位置が前記プリントヘッドによる印刷箇所を通過する際、当該プリントヘッドによる単位印刷長の整数倍の距離を搬送される間、当該プリントヘッドを前記第1被印刷物および前記第2被印刷物から待避させるプリントヘッド待避部と、
を備える印刷制御装置。
【請求項2】
前記プリントヘッド待避部は、前記挿継位置が前記印刷箇所を通過する前であって、前記単位印刷長の印刷を完了した際に前記プリントヘッドの待避を開始する、請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記第2被印刷物が挿し継がれた後に切断される前記第1被印刷物の前記挿継位置からの切断長を検知する切断長検知部を更に備え、
前記プリントヘッド待避部は、前記挿継位置および前記切断長が前記印刷箇所を通過した後に前記プリントヘッドの待避を終了する、
請求項1または2に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
前記第1被印刷物および前記第2被印刷物には、前記単位印刷長の一次印刷が施されており、
前記プリントヘッドは、前記第1被印刷物および前記第2被印刷物に、前記単位印刷長の二次印刷を施す、
請求項1または2に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
搬送される被印刷物に対してインクを吐出するプリントヘッドを備える印刷装置を制御する印刷制御方法であって、
前記プリントヘッドの搬送方向の前段において、当該プリントヘッドによって印刷中の第1被印刷物に対して、新たな第2被印刷物が挿し継がれたことを検知する挿継検知ステップと、
前記第2被印刷物が挿し継がれた挿継位置が前記プリントヘッドによる印刷箇所を通過する際、当該プリントヘッドによる単位印刷長の整数倍の距離を搬送される間、当該プリントヘッドを前記第1被印刷物および前記第2被印刷物から待避させるプリントヘッド待避ステップと、
を備える印刷制御方法。
【請求項6】
搬送される被印刷物に対してインクを吐出するプリントヘッドを備える印刷装置を制御する印刷制御プログラムであって、
前記プリントヘッドの搬送方向の前段において、当該プリントヘッドによって印刷中の第1被印刷物に対して、新たな第2被印刷物が挿し継がれたことを検知する挿継検知ステップと、
前記第2被印刷物が挿し継がれた挿継位置が前記プリントヘッドによる印刷箇所を通過する際、当該プリントヘッドによる単位印刷長の整数倍の距離を搬送される間、当該プリントヘッドを前記第1被印刷物および前記第2被印刷物から待避させるプリントヘッド待避ステップと、
をコンピュータに実行させる印刷制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
巻取紙等のシート状の被印刷物に印刷する印刷装置として、特許文献1のようなインクジェット印刷装置が知られている。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の各色のプリントヘッドまたは印刷ノズルが、回転する搬送ローラ等によって搬送される被印刷物に対して当該各色のインクを吐出することで所望の絵柄を印刷する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-181874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリントヘッドによって印刷中の「古い」被印刷物(以下では「第1被印刷物」ともいう)に対して「新しい」被印刷物(以下では「第2被印刷物」ともいう)を挿し継いで、印刷装置をほとんど停止させることなく新旧の被印刷物を切り替えることを本明細書では「挿継」または「紙継」(被印刷物が巻取紙等の紙の場合)という。第1被印刷物と第2被印刷物の挿継位置または紙継位置にはテープ等の接着物が残存しているため、当該接着物と接触しないようにプリントヘッドを一時的に印刷位置から待避させることが好ましい。しかし、プリントヘッドを待避させている間も被印刷物が搬送され続けるため、プリントヘッドが印刷位置に復帰した後に被印刷物(挿継後の第2被印刷物)に対する印刷開始のタイミングや位置を再調整する必要がある。この間にも搬送され続ける被印刷物は、プリントヘッドによる印刷が施されずに無駄になってしまう。被印刷物が紙の場合は、いわゆる損紙が大量に発生してしまう。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、プリントヘッドの挿継位置からの待避に伴う被印刷物の無駄を低減できる印刷制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の印刷制御装置は、搬送される被印刷物に対してインクを吐出するプリントヘッドを備える印刷装置を制御する印刷制御装置であって、プリントヘッドの搬送方向の前段において、当該プリントヘッドによって印刷中の第1被印刷物に対して、新たな第2被印刷物が挿し継がれたことを検知する挿継検知部と、第2被印刷物が挿し継がれた挿継位置がプリントヘッドによる印刷箇所を通過する際、当該プリントヘッドによる単位印刷長の整数倍の距離を搬送される間、当該プリントヘッドを第1被印刷物および第2被印刷物から待避させるプリントヘッド待避部と、を備える。
【0007】
この態様では、挿し継がれた第1被印刷物および第2被印刷物が単位印刷長の整数倍の距離を搬送される間だけプリントヘッドが待避されるため、当該プリントヘッドは待避から復帰した直後に第2被印刷物に対する単位印刷長の印刷を開始できる。従って、プリントヘッドの挿継位置からの待避に伴う被印刷物の無駄(損紙等)を低減できる。
【0008】
本発明の別の態様は、印刷制御方法である。この方法は、搬送される被印刷物に対してインクを吐出するプリントヘッドを備える印刷装置を制御する印刷制御方法であって、プリントヘッドの搬送方向の前段において、当該プリントヘッドによって印刷中の第1被印刷物に対して、新たな第2被印刷物が挿し継がれたことを検知する挿継検知ステップと、第2被印刷物が挿し継がれた挿継位置がプリントヘッドによる印刷箇所を通過する際、当該プリントヘッドによる単位印刷長の整数倍の距離を搬送される間、当該プリントヘッドを第1被印刷物および第2被印刷物から待避させるプリントヘッド待避ステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プリントヘッドの挿継位置からの待避に伴う被印刷物の無駄を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】印刷制御装置によって制御される印刷装置の構成を模式的に示す。
図2】プリントヘッド待避部によるプリントヘッドの待避を模式的に示す被印刷物の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る印刷制御装置30によって制御される印刷装置10の構成を模式的に示す。印刷装置10は、巻取紙またはウェブ等のシート状の被印刷物50(50Aおよび/または50B)に対して、プリントヘッド11によるインクジェット印刷を施す。図示の例では、旧軸である第1回転軸41に巻かれた第1被印刷物50Aおよび新軸である第2回転軸42に巻かれた第2被印刷物50Bに対して、1ページの印刷面または紙面に相当する単位印刷長(以下では「リピート長」ともいう)の一次絵柄P1およびP2が予め印刷されている。連続する一次絵柄P1間または連続する一次絵柄P2間の搬送方向(図1において概ね左から右に向かう方向)における間隔が、単位印刷長を模式的に表している。
【0014】
インクジェット印刷部を構成するプリントヘッド11は、見当制御部20およびインク吐出制御部23による制御の下、リピート長の一次絵柄P1、P2の一次印刷が施された被印刷物50A、50Bに対して、実質的に同じリピート長の二次印刷(以下では「追刷」ともいう)を施す。模式的に図示されるように、プリントヘッド11の追刷による二次絵柄P3は、一次絵柄P1、P2上に重ねて印刷される。後述する見当制御部20によって、一次絵柄P1、P2と二次絵柄P3の印刷ずれ(以下では「見当誤差」ともいい、見当誤差を低減するための各次印刷の位置制御を「見当制御」ともいう)が低減されている。このように本実施形態では、プリントヘッド11が一次印刷済の被印刷物50に追刷(二次印刷)を施す例について説明するが、本発明はプリントヘッド11が追刷ではない通常の印刷を行う場合にも同様に適用できる。
【0015】
被印刷物50に予め施される一次印刷およびプリントヘッド11による二次印刷(追刷)で使用される塗料は任意であるが、本実施形態では、一次印刷および二次印刷の両方において、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の各色のインクが使用される。なお、追刷部としてのプリントヘッド11では、被印刷物50の表面保護のためのワニス等の表面保護塗料が追刷塗料として使用されてもよい。
【0016】
プリントヘッド11は、インク吐出制御部23による制御の下、搬送される被印刷物50に対して一または複数の色のインクを吐出する一または複数のプリントヘッドまたは印刷ノズルを含む。図1における一つのプリントヘッド11は、これらの一または複数のプリントヘッドまたは印刷ノズルを代表している。複数設けられる場合の各プリントヘッド11は、典型的には互いに異なる色のインクを被印刷物50に対して吐出する。プリントヘッド11の数は任意であり、例えば四つのプリントヘッド11を設けることによって、一般的なシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の四色のインクによるフルカラー印刷を被印刷物50に対して施せる。
【0017】
搬送ローラ12は、インクジェット印刷中のプリントヘッド11に対向する位置において、被印刷物50を搬送方向に搬送する搬送部または回転搬送部であり、ローラ駆動モータ22によって図1における反時計回り方向に回転駆動される。搬送ローラ12のサイズ(具体的には半径や円周)は任意であるが、例えば搬送ローラ12の円周がリピート長のN倍(Nは自然数)になっている場合は、搬送ローラ12が一回転する間にプリントヘッド11は二次絵柄P3を被印刷物50にN回印刷する。
【0018】
プリントヘッド11自体および/またはプリントヘッド11による印刷箇所(インクの吐出箇所)は、被印刷物50の搬送方向(図1においてプリントヘッド11に対向する位置では概ね左から右に向かう方向)に交差する方向に移動可能としてもよい。例えば、プリントヘッド11および/または印刷箇所は、被印刷物50の搬送方向に直交する方向(図1の紙面に垂直な方向)に往復移動可能としてもよい。この場合のプリントヘッド11および/または印刷箇所の往復移動速度または走査速度は、それに交差または直交する被印刷物50の搬送速度より大きい。
【0019】
具体的には、被印刷物50が搬送方向(以下では「縦方向」ともいう)に1画素分搬送される間に、プリントヘッド11および/または印刷箇所は走査方向(以下では「横方向」ともいう)の全画素分を走査し、印刷を施すべき画素位置に選択的にインクが吐出される。このようなインクジェット印刷が適切に行われるように、プリントヘッド11および/または印刷箇所の走査速度または印刷速度は、被印刷物50の搬送速度または搬送ローラ12の回転速度に応じて適応的に制御されてもよい。あるいは、プリントヘッド11および/または印刷箇所の走査速度は一定として、横方向の各走査の間に被印刷物50の搬送速度または搬送ローラ12の回転速度に応じた停止期間または待機期間を設けてもよい。また、プリントヘッド11および/または印刷箇所の走査速度や停止期間が、被印刷物50の搬送速度または搬送ローラ12の回転速度によらず一定でもよい。以下では、被印刷物50の搬送速度または搬送ローラ12の回転速度が一定の生産速度になっており、プリントヘッド11および/または印刷箇所の走査速度や停止期間も一定になっているものとする。
【0020】
プリントヘッド11は、後述する見当制御部20による見当制御のためのレジスタマークを一リピート長毎に印刷する。また、被印刷物50に予め施される一次印刷においても、同様のレジスタマークが一リピート長毎に印刷されている。各印刷面または各ページにおいて、一次印刷による一次レジスタマークと、二次印刷(プリントヘッド11)による二次レジスタマークは、被印刷物50の搬送方向に沿った所定間隔で印刷される。
【0021】
見当制御部20は、一次絵柄P1、P2と二次絵柄P3の印刷ずれ(見当誤差)を、一次レジスタマークおよび二次レジスタマークの所定間隔からのずれとして検知し、それを低減するように搬送ローラ12の位相(回転位置)をローラ駆動モータ22によって制御する。あるいは、見当制御部20は、マークセンサ21によって検知される見当誤差を低減するように、プリントヘッド11による印刷箇所、走査速度、停止期間等を制御してもよい。また、見当制御部20は、インク吐出制御部23によって、ローラ駆動モータ22と同期したインク吐出タイミングで、所期の二次絵柄P3を被印刷物50に順次描画するためのインクをプリントヘッド11に吐出させる。一次レジスタマークおよび二次レジスタマークの搬送方向に沿った間隔は、搬送ローラ12の後段に設けられるマークセンサ21によって検知される。マークセンサ21は、一次レジスタマークと二次レジスタマークを同時に検知可能な光検知素子等の二つの検知部を備える。この二つの検知部の搬送方向に沿った間隔は、一次レジスタマークと二次レジスタマークの所期の間隔(所定間隔)と略等しいため、一方の検知部によって一次レジスタマークが検知されている間に、他方の検知部によって二次レジスタマークが検知される。このようにマークセンサ21によって検知された一次レジスタマークと二次レジスタマークの間隔が所定間隔からずれている場合、その印刷ずれ(見当誤差)を低減するための指令を、見当制御部20がローラ駆動モータ22やプリントヘッド11および/またはヘッド駆動モータ35に与える。
【0022】
図1Aに示されるように、旧軸である第1回転軸41から搬送方向に巻き出される第1被印刷物50Aの残量が少なくなると、プリントヘッド11によって印刷中の当該第1被印刷物50Aに対して、新軸である第2回転軸42から搬送方向に巻き出される第2被印刷物50Bが挿し継がれる。このように新旧の巻取紙等の被印刷物50A、50Bを切り替えることを挿継または紙継という。第1被印刷物50Aおよび第2被印刷物50Bは、挿継位置としての紙継位置RCにおいて、テープ等の接着物によって互いに接着される。そして、図1Aにおける紙継位置RCの前段に設けられるカッター等の切断部43が、切断位置CPにおいて第1被印刷物50Aを切断する。この結果、被印刷物50は、紙継位置RCの直前および直後において第1被印刷物50Aと第2被印刷物50Bが重なる短い区間を除いて、紙継位置RCより後段(図1における右側)では第1被印刷物50Aのみによって構成され、紙継位置RCより前段(図1における左側)では第2被印刷物50Bのみによって構成される。
【0023】
以上のような紙継によって第1被印刷物50Aと第2被印刷物50Bの紙継位置RCにはテープ等の接着物が残存するため、図1Bに示されるように当該接着物と接触しないようにプリントヘッド11を一時的に印刷位置(図1Aにおけるプリントヘッド11の位置)から待避させることが好ましい。以下で説明する本実施形態に係る印刷制御装置30は、プリントヘッド11の紙継位置RCからの待避に伴う被印刷物50の無駄を低減するものである。
【0024】
印刷制御装置30は、前述の見当制御部20およびインク吐出制御部23に加えて、挿継検知部31と、切断長検知部32と、搬送量検知部33と、プリントヘッド待避部34を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。
【0025】
挿継検知部31は、プリントヘッド11の搬送方向の前段において、当該プリントヘッド11によって印刷中の第1被印刷物50Aに対して、新たな第2被印刷物50Bが紙継位置RCにおいて挿し継がれたこと(紙継)を検知する。具体的には、挿継検知部31は、切断部43が切断位置CPにおいて第1被印刷物50Aを切断した際に生成する切断信号に基づいて紙継を検知してもよいし、紙継位置RCにおいて第1被印刷物50Aおよび第2被印刷物50Bが互いに接着された際(あるいは、第1被印刷物50Aおよび第2被印刷物50Bの接着部が紙継位置RCを通過した際)に生成される接着信号に基づいて紙継を検知してもよい。切断長検知部32について後述するように、紙継位置RCおよび切断位置CPの搬送方向の距離(後述するテール領域TLの長さ)は典型的には既知の一定値であるため、切断信号および接着信号のいずれに基づいて紙継が検知されたとしても、その際の紙継位置RCおよび切断位置CPの両方が挿継検知部31によって検知される。
【0026】
切断長検知部32は、第2被印刷物50Bが挿し継がれた後に切断される第1被印刷物50Aの切断位置CPと紙継位置RCの間の搬送方向の距離である切断長を検知する。具体的には、切断長検知部32は、切断部43が切断位置CPにおいて第1被印刷物50Aを切断した際の紙継位置RC(接着物等の位置)に基づいて切断長を検知してもよい。あるいは、典型的には既知の設定値である切断位置CPと紙継位置RCの間の切断長を、切断長検知部32が予め保持していてもよい。図1Bに模式的に示されるように、被印刷物50における紙継位置RCと切断位置CPの間のテール領域TLでは、切断長検知部32によって検知される切断長に亘って、第1被印刷物50Aと第2被印刷物50Bが併存している。
【0027】
なお、図示は省略するが、紙継位置RCの前段(図1における概ね左側)に第1被印刷物50Aの後端部が残存することでテール領域TLが形成されるのと同様に、紙継位置RCの後段(図1における概ね右側)に第2被印刷物50Bの先端部が残存するフロント領域が形成されてもよい。後述するように、本実施形態に係る印刷制御装置30(特にプリントヘッド待避部34)は、接着物が残存する紙継位置RCだけでなく、第1被印刷物50Aおよび第2被印刷物50Bが併存するテール領域TLおよび/またはフロント領域がプリントヘッド11と接触しないように、当該プリントヘッド11を一時的に印刷位置から待避させる。
【0028】
搬送量検知部33は、挿継検知部31によって紙継が検知された後の被印刷物50の搬送量を、図1Aにおける紙継位置RCとプリントヘッド11の間に設けられる一または複数の測長ロール44によって検知する。これによって、図1Aにおける紙継位置RCや前後のテール領域TLおよび/またはフロント領域について、図1Bのようにプリントヘッド11に接近したことやプリントヘッド11との具体的な距離を検知できる。
【0029】
プリントヘッド待避部34は、図1Bに示されるように紙継位置RCや前後のテール領域TLおよび/またはフロント領域がプリントヘッド11による印刷箇所を通過する際、当該プリントヘッド11を被印刷物50から待避させる。図1Bの例では、プリントヘッド待避部34から待避指令を受け取ったヘッド駆動モータ35が、プリントヘッド11を被印刷物50または搬送ローラ12から離れる方向(図1における下方)に駆動して一時的に待避させる。図2に関して後述するように、プリントヘッド11は、被印刷物50がリピート長の所定の整数倍の距離を搬送される間、プリントヘッド待避部34およびヘッド駆動モータ35によって、図1Bにおける待避位置に待避される。そして、プリントヘッド11の待避開始後に搬送量検知部33によって検知される被印刷物50の搬送量がリピート長の所定の整数倍に達すると、プリントヘッド11は、プリントヘッド待避部34およびヘッド駆動モータ35によって、被印刷物50または搬送ローラ12に近づく方向(図1における上方)に駆動されて図1Aにおける印刷位置に復帰する。
【0030】
図2は、プリントヘッド待避部34によるプリントヘッド11の待避を模式的に示す被印刷物50の平面図である。本図の左右方向が被印刷物50の搬送方向であり、この方向に沿って絵柄P1~P3がリピート長lで繰り返し印刷されている。前述のように、第1被印刷物50Aと第2被印刷物50Bの紙継位置RCにはテープ等の接着物が残存している。また、紙継位置RCの前段(図2における左側)には、第1被印刷物50Aの後端部が残存することでテール領域TLが形成されている。一方、本図の例では、紙継位置RCの後段(図2における右側)には、第2被印刷物50Bの先端部によるフロント領域が形成されていない。すなわち、紙継位置RCでは、第2被印刷物50Bの先端がテープ等の接着物によって第1被印刷物50Aに接着されている。このように図2の例では、紙継位置RCの後段には第1被印刷物50Aのみが存在し、紙継位置RCの前段のテール領域TLには第1被印刷物50Aおよび第2被印刷物50Bが併存し、テール領域TLの前段には第2被印刷物50Bのみが存在する。
【0031】
プリントヘッド待避部34は、紙継位置RCとテール領域TL(および/またはフロント領域)を含む一または複数のページ(リピート長)がプリントヘッド11による印刷箇所を通過する際、当該プリントヘッド11を被印刷物50から待避させる。図示の例では、紙継位置RC(およびフロント領域)を含むフロント側(右側)の1ページと、紙継位置RCを含まずテール領域TLを含むテール側(左側)の2ページの合計3ページ分がプリントヘッド11による印刷箇所を通過する際、当該プリントヘッド11を被印刷物50から待避させる。
【0032】
具体的には、プリントヘッド待避部34は、紙継位置RCが印刷箇所を通過する前であって、プリントヘッド11が紙継位置RCの直前のリピート長(ページ)の印刷を完了した待避開始時STに当該プリントヘッド11の待避を開始する。待避開始時STにおけるプリントヘッド11と紙継位置RCの距離は図示のlである。換言すれば、プリントヘッド待避部34は、紙継位置RCがプリントヘッド11の手前の距離lに到達した時(待避開始時ST)に、当該プリントヘッド11の待避を開始する。待避開始時STは、例えば、搬送量検知部33によって検知される。前述のように、搬送量検知部33は、挿継検知部31によって紙継が検知された後の被印刷物50の搬送量を検知する。ここで、紙継が検知された際の図1Aにおける紙継位置RCとプリントヘッド11の間の搬送方向の距離をDとし、搬送量検知部33によって検知される図1Aの状態からの紙継位置RCの搬送量をdとすれば、d=D-lとなった時が待避開始時STとなる。
【0033】
図2に示されるように、第2被印刷物50Bの余分な先端部によるフロント領域が形成されない場合、紙継位置RCを含むフロント側の待避区間は最小の1ページ分に収められる。ここで、フロント側の待避区間の長さをリピート長lを単位とする整数「n」によって表す場合、nは1以上であり、特にフロント領域が形成されない場合はn=1にできる。なお、フロント領域が形成される場合は、当該フロント領域にプリントヘッド11が接触しないように、プリントヘッド待避部34が図2における待避開始時STより早い待避開始時ST′等にプリントヘッド11の待避を開始してもよい。図示の待避開始時ST′についてはn=2となる。このように、フロント領域が形成される場合はnが2以上となることもあるが、後述するテール領域TLと同様に、フロント領域の長さに応じた最小限のnを設定できる。以上のようなフロント側の待避区間(長さn×l)を設けることで、紙継位置RCおよびフロント領域とプリントヘッド11の接触を防止できる。また、プリントヘッド11は待避開始時STの直前まで第1被印刷物50Aに対するリピート長の印刷(図示の「P1 & P3」のように、予め一次印刷された一次絵柄P1上への二次絵柄P3の印刷)を継続できる。
【0034】
また、プリントヘッド待避部34は、紙継位置RCおよびテール領域TL(切断長)が印刷箇所を通過した後であって、プリントヘッド11がテール領域TLの直後のリピート長(ページ)の印刷を開始する待避終了時EDに当該プリントヘッド11の待避を終了する。ここで、テール側の待避区間の長さをリピート長lを単位とする整数「m」によって表す場合、mは1以上であり、図示のようにリピート長lより長いテール領域TLが形成される場合はmが2以上となることもある(図示の例ではm=2)。このようなテール側の待避区間の長さ「m×l」は、典型的にはテール領域TLの長さ(切断長)より大きい。また、テール側とフロント側を合わせた待避区間の総長「(m+n)×l」は、常にテール領域TL(およびフロント領域)の総長より大きい。以上のようなテール側の待避区間(長さm×l)を設けることで、紙継位置RCおよびテール領域TLとプリントヘッド11の接触を防止できる。また、プリントヘッド11は待避終了時EDに待避から復帰した直後に、インク吐出制御部23による制御の下で第2被印刷物50Bに対するリピート長の印刷(図示の「P2 & P3」のように、予め一次印刷された一次絵柄P2上への二次絵柄P3の印刷)を開始できる。
【0035】
なお、待避終了時EDにおけるプリントヘッド11と紙継位置RCの距離は図示のl+m×lである(但し、l+l=l)。換言すれば、プリントヘッド待避部34は、紙継位置RCがプリントヘッド11の先の距離l+m×lに到達した時(待避終了時ED)に、当該プリントヘッド11の待避を終了する。待避終了時EDは、前述の待避開始時STと同様に、例えば、搬送量検知部33によって検知される。具体的には、搬送量検知部33によって検知される図1Aの状態からの紙継位置RCの搬送量dが、D+l+m×lとなった時が待避終了時EDとなる。
【0036】
以上のように、プリントヘッド待避部34によるプリントヘッド11の待避区間は、紙継位置RCや前後のテール領域TLおよび/またはフロント領域とプリントヘッド11の接触を避けるための最小限の長さ(m+n)×lに設定できる。ここで、待避区間の長さをリピート長lの整数(m+n)倍としたことで、プリントヘッド11は待避開始時STの直前まで第1被印刷物50Aに対するリピート長の印刷を継続でき、待避終了時EDに待避から復帰した直後に第2被印刷物50Bに対するリピート長の印刷を開始できる。従って、本実施形態によれば、プリントヘッド11の紙継位置RCや前後のテール領域TLおよび/またはフロント領域からの待避に伴う被印刷物50の無駄(損紙等)を低減できる。
【0037】
なお、フロント側の待避区間の長さ「n」およびテール側の待避区間の長さ「m」は、それぞれ独立に設定可能としてもよい。前述のように、フロント側の待避区間の長さ「n」は、フロント領域が形成されない場合は典型的に「1」に設定され、フロント領域が形成される場合はその長さに応じた最小限の自然数に手動または自動で設定される。また、テール側の待避区間の長さ「m」は、テール領域TLの長さに応じた最小限の自然数に手動または自動で設定される。印刷内容に応じて変動するリピート長lと異なり、テール領域TLは固定長(例えば50cm)とされることが多いため、印刷物毎に設定されるリピート長lと所与(固定長)の切断長に基づいて最適な「m」を自動的に導出できる。
【0038】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0039】
実施形態では、被印刷物50として巻取紙であるウェブを例示したが、印刷装置10は任意の被印刷物に印刷可能である。例えば、被印刷物は、任意の素材で形成されるシートでもよいし、容器や製品など任意の形状の個体の表面でもよい。
【0040】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 印刷装置、11 プリントヘッド、12 搬送ローラ、20 見当制御部、30 印刷制御装置、31 挿継検知部、32 切断長検知部、33 搬送量検知部、34 プリントヘッド待避部、50A 第1被印刷物、50B 第2被印刷物。
図1
図2