(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183066
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】印刷制御装置、印刷制御方法、印刷制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096471
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】平山 大介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA20
2C056EB12
2C056EB27
2C056EB29
2C056EB35
2C056EC07
2C056EC12
2C056EC31
2C056EC37
2C056EE17
2C056FA10
2C056HA29
(57)【要約】
【課題】追刷を適切に開始できる印刷制御装置等を提供する。
【解決手段】搬送される被印刷物50に対してインクを吐出する印刷ノズル111を備えるインクジェット印刷部11と、当該インクジェット印刷部11の後段において被印刷物50に対して追刷を施す追刷部12と、を備える印刷装置10を制御する印刷制御装置40は、インクジェット印刷部11において、回転によって被印刷物50を搬送する主搬送ローラ112の回転軌道上の基準点を検知する基準点検知部41と、基準点の検知に応じて、印刷ノズル111による被印刷物50に対する印刷を開始するインクジェット印刷開始部42と、基準点の検知に応じて、追刷部12による被印刷物50における追刷開始位置を演算する追刷開始位置演算部43と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被印刷物に対してインクを吐出する印刷ノズルを備えるインクジェット印刷部と、当該インクジェット印刷部の後段において前記被印刷物に対して追刷を施す追刷部と、を備える印刷装置を制御する印刷制御装置であって、
前記インクジェット印刷部において、回転によって前記被印刷物を搬送する回転搬送部の回転軌道上の基準点を検知する基準点検知部と、
前記基準点の検知に応じて、前記印刷ノズルによる前記被印刷物に対する印刷を開始するインクジェット印刷開始部と、
前記基準点の検知に応じて、前記追刷部による前記被印刷物における追刷開始位置を演算する追刷開始位置演算部と、
を備える印刷制御装置。
【請求項2】
前記追刷開始位置演算部は、前記インクジェット印刷開始部による印刷開始位置および前記追刷部の距離と、前記被印刷物の搬送速度に基づいて、前記追刷開始位置を演算する、請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記搬送速度は、前記基準点検知部による前記基準点の検知間隔と、前記回転搬送部の回転軌道の長さに基づく、請求項2に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
前記回転搬送部は、前記インクジェット印刷部に設けられる搬送ローラであり、
前記基準点検知部は、前記搬送ローラの円周上の前記基準点を検知する、
請求項1から3のいずれかに記載の印刷制御装置。
【請求項5】
前記基準点検知部は、前記搬送ローラの回転位置を検知するエンコーダによって構成され、前記基準点が所定の回転位置に来た時に基準点検知信号を出力する、請求項4に記載の印刷制御装置。
【請求項6】
前記エンコーダは、前記搬送ローラの一回転毎にZ相信号を出力するインクリメンタル方式であり、
前記基準点検知信号は前記Z相信号である、
請求項5に記載の印刷制御装置。
【請求項7】
前記搬送ローラは、前記印刷ノズルに対向する位置において前記被印刷物を搬送する主搬送ローラである、請求項4に記載の印刷制御装置。
【請求項8】
搬送される被印刷物に対してインクを吐出する印刷ノズルを備えるインクジェット印刷部と、当該インクジェット印刷部の後段において前記被印刷物に対して追刷を施す追刷部と、を備える印刷装置を制御する印刷制御方法であって、
前記インクジェット印刷部において、回転によって前記被印刷物を搬送する回転搬送部の回転軌道上の基準点を検知する基準点検知ステップと、
前記基準点の検知に応じて、前記印刷ノズルによる前記被印刷物に対する印刷を開始するインクジェット印刷開始ステップと、
前記基準点の検知に応じて、前記追刷部による前記被印刷物における追刷開始位置を演算する追刷開始位置演算ステップと、
を備える印刷制御方法。
【請求項9】
搬送される被印刷物に対してインクを吐出する印刷ノズルを備えるインクジェット印刷部と、当該インクジェット印刷部の後段において前記被印刷物に対して追刷を施す追刷部と、を備える印刷装置を制御する印刷制御プログラムであって、
前記インクジェット印刷部において、回転によって前記被印刷物を搬送する回転搬送部の回転軌道上の基準点を検知する基準点検知ステップと、
前記基準点の検知に応じて、前記印刷ノズルによる前記被印刷物に対する印刷を開始するインクジェット印刷開始ステップと、
前記基準点の検知に応じて、前記追刷部による前記被印刷物における追刷開始位置を演算する追刷開始位置演算ステップと、
をコンピュータに実行させる印刷制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
巻取紙等のシート状の被印刷物に印刷する印刷装置として、特許文献1のようなインクジェット印刷装置が知られている。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の各色の印刷ノズルが、回転する搬送ローラ等によって搬送される被印刷物に対して当該各色のインクを吐出することで所望の絵柄を印刷する。
【0003】
インクジェット印刷装置によって各色の一次印刷が施された被印刷物に対して、表面保護のためのワニス(またはニス)等の別の塗料による二次印刷(以下では「追刷」ともいう)が施されることがある。このような場合、一次印刷と二次印刷の印刷ずれ(以下では「見当誤差」ともいい、見当誤差を低減するための各次印刷の位置制御を「見当制御」ともいう)が生じないように、被印刷物における二次印刷の開始位置および/または開始タイミング(以下では総称して「追刷開始位置」ともいう)を適切に決定する必要がある。
【0004】
例えば、見当制御のために一次印刷の際に印刷されたレジスタマーク等の見当制御マークを検知するマークセンサを利用して、追刷開始位置を適切に決定できる。具体的には、インクジェット印刷装置における搬送ローラ等が一定の搬送速度(以下では「生産速度」ともいう)で被印刷物を搬送している場合には、インクジェット印刷装置が一定の(空間)間隔で一次印刷の見当制御マークを印刷し、当該見当制御マークをマークセンサが一定の(時間)間隔で検知する。このような一定の検知間隔に基づいて、一次印刷の各見当制御マークが二次印刷部(追刷部)に到達するタイミングを正確に把握できるため、一次印刷に対する二次印刷の開始位置(追刷開始位置)を適切に決定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、印刷開始時にはインクジェット印刷装置における搬送ローラ等を生産速度まで加速する必要がある。この加速期間中は、インクジェット印刷装置が一次印刷の見当制御マークを印刷する(空間)間隔、および/または、当該見当制御マークをマークセンサが検知する(時間)間隔が一定とならず、上記のように追刷開始位置を適切に決定できない。このため、搬送ローラ等が一定の生産速度に達するまでの間に不定速度で搬送された一次印刷済の被印刷物に対しては、二次印刷(追刷)を適切に開始できない恐れがある。このような場合、適切な二次印刷(追刷)が施されなかった一次印刷済の被印刷物は無駄になってしまう。被印刷物が紙の場合は、いわゆる損紙が大量に発生してしまう。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、追刷を適切に開始できる印刷制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の印刷制御装置は、搬送される被印刷物に対してインクを吐出する印刷ノズルを備えるインクジェット印刷部と、当該インクジェット印刷部の後段において被印刷物に対して追刷を施す追刷部と、を備える印刷装置を制御する印刷制御装置であって、インクジェット印刷部において、回転によって被印刷物を搬送する回転搬送部の回転軌道上の基準点を検知する基準点検知部と、基準点の検知に応じて、印刷ノズルによる被印刷物に対する印刷を開始するインクジェット印刷開始部と、基準点の検知に応じて、追刷部による被印刷物における追刷開始位置を演算する追刷開始位置演算部と、を備える。
【0009】
この態様では、インクジェット印刷部における回転搬送部上の基準点の検知に応じて、印刷ノズルによる印刷(一次印刷)が開始されると共に、追刷部(二次印刷部)による追刷開始位置が演算される。被印刷物が生産速度に達したことをトリガとして追刷開始位置を決定する上記のマークセンサを利用する方法に対して、この態様によればインクジェット印刷部における回転搬送部上の基準点の検知をトリガとして追刷開始位置の演算を開始できるため、被印刷物の搬送速度に関わらず迅速に追刷開始位置を決定して適切に追刷を開始できる。従って、追刷開始位置の決定の遅れによる被印刷物の無駄(損紙等)を低減できる。
【0010】
本発明の別の態様は、印刷制御方法である。この方法は、搬送される被印刷物に対してインクを吐出する印刷ノズルを備えるインクジェット印刷部と、当該インクジェット印刷部の後段において被印刷物に対して追刷を施す追刷部と、を備える印刷装置を制御する印刷制御方法であって、インクジェット印刷部において、回転によって被印刷物を搬送する回転搬送部の回転軌道上の基準点を検知する基準点検知ステップと、基準点の検知に応じて、印刷ノズルによる被印刷物に対する印刷を開始するインクジェット印刷開始ステップと、基準点の検知に応じて、追刷部による被印刷物における追刷開始位置を演算する追刷開始位置演算ステップと、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、追刷を適切に開始できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】印刷制御装置によって制御される印刷装置の構成を模式的に示す。
【
図2】エンコーダによる主搬送ローラの円周上の基準点の検知の例を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る印刷制御装置40によって制御される印刷装置10の構成を模式的に示す。印刷装置10は、回転軸60に巻かれた巻取紙またはウェブ等のシート状の被印刷物50に対して、インクジェット印刷部11による一次印刷と追刷部12による二次印刷(追刷)を施す。インクジェット印刷部11および追刷部12で使用される塗料は任意であるが、本実施形態では、インクジェット印刷部11においてシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の各色のインクが一次印刷塗料として使用され、追刷部12において表面保護のためのワニスが二次印刷塗料(追刷塗料)として使用される。
図1では、インクジェット印刷部11による各色の一次絵柄P1と、追刷部12によるワニスの二次絵柄P2が模式的に示されている。インクジェット印刷部11および追刷部12は、回転軸60から巻き出された被印刷物50の搬送方向(
図1において概ね左から右に向かう方向)において、1ページの印刷面または紙面に相当する単位印刷長(以下では「リピート長」ともいう)毎に、それぞれの絵柄P1およびP2を被印刷物50に印刷する。
図1に示される理想的な状態では、一次絵柄P1と二次絵柄P2の印刷ずれ(見当誤差)がない。
【0016】
インクジェット印刷部11は、搬送される被印刷物50に対して各色のインクを吐出する一または複数の印刷ノズル111を備える。
図1の例では、印刷ノズル111として三つの印刷ノズル111A、111B、111Cが模式的に示されている。複数の印刷ノズル111A、111B、111Cは、典型的には互いに異なる色のインクを被印刷物50に対して吐出する。印刷ノズル111の数は任意であり、例えば四つの印刷ノズル111を設けることによって、一般的なシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の四色のインクによるフルカラー印刷を被印刷物50に対して施せる。
【0017】
インクジェット印刷部11は、印刷ノズル111によるインクジェット印刷中に被印刷物50を搬送方向に搬送する搬送部または回転搬送部として、主搬送ローラ112と一または複数の副搬送ローラ113を備える。主搬送ローラ112は、印刷ノズル111に対向する位置において被印刷物50を搬送するローラであり、不図示の駆動モータによって
図1における時計回り方向に回転駆動される。主搬送ローラ112のサイズ(具体的には半径や円周)は任意であるが、例えば主搬送ローラ112の円周がリピート長のN倍(Nは自然数)になっている場合は、主搬送ローラ112が一回転する間に印刷ノズル111は一次絵柄P1を被印刷物50にN回印刷する。
【0018】
印刷ノズル111自体および/または印刷ノズル111による印刷箇所(インクの吐出箇所)は、被印刷物50の搬送方向(
図1において印刷ノズル111に対向する位置では概ね上から下に向かう方向)に交差する方向に移動可能としてもよい。例えば、印刷ノズル111および/または印刷箇所は、被印刷物50の搬送方向に直交する方向(
図1の紙面に垂直な方向)に往復移動可能としてもよい。この場合の印刷ノズル111および/または印刷箇所の往復移動速度または走査速度は、それに交差または直交する被印刷物50の搬送速度より大きい。
【0019】
具体的には、被印刷物50が搬送方向(以下では「縦方向」ともいう)に1画素分搬送される間に、印刷ノズル111および/または印刷箇所は走査方向(以下では「横方向」ともいう)の全画素分を走査し、印刷を施すべき画素位置に選択的にインクが吐出される。このようなインクジェット印刷が適切に行われるように、印刷ノズル111および/または印刷箇所の走査速度または印刷速度は、被印刷物50の搬送速度または主搬送ローラ112の回転速度に応じて適応的に制御される。あるいは、印刷ノズル111および/または印刷箇所の走査速度は一定として、横方向の各走査の間に被印刷物50の搬送速度または主搬送ローラ112の回転速度に応じた停止期間または待機期間を設けてもよい。また、印刷ノズル111および/または印刷箇所の走査速度や停止期間が、被印刷物50の搬送速度または主搬送ローラ112の回転速度によらず一定でもよい。この場合、被印刷物50の搬送速度が生産速度に達していない間は、縦方向につぶれた一次絵柄P1が印刷ノズル111によって印刷される。また、一次絵柄P1と共に印刷ノズル111によって印刷される後述のレジスタマークの縦方向の(空間)間隔も、所期の所定間隔より短くなる。
【0020】
副搬送ローラ113は、主搬送ローラ112と連動して被印刷物50を搬送する。
図1の例では、主搬送ローラ112の前段に配置される第1副搬送ローラ113Aと、主搬送ローラ112の後段に配置される第2副搬送ローラ113Bが模式的に示されている。各副搬送ローラ113は、不図示の駆動モータによって
図1における反時計回り方向に回転駆動されてもよいし、主搬送ローラ112の時計回り方向の回転に従って反時計回り方向に回転する従動ローラでもよい。
【0021】
インクジェット印刷部11と追刷部12の間には、被印刷物50の搬送速度を制御する速度制御部20が設けられる。速度制御部20は、マークセンサ21によるレジスタマーク等のマークの検知間隔に基づいて、被印刷物50の現在の搬送速度を検知する。レジスタマークは、後述する見当制御部30による見当制御のためにインクジェット印刷部11が一リピート長(単位印刷長)毎に余白等に印刷する見当制御マークである。このため、印刷装置10において設定された既知のリピート長を、マークセンサ21によるレジスタマーク等の検知間隔で除算することで、被印刷物50の現在の搬送速度が得られる。
【0022】
なお、前述の印刷ノズル111の横方向の走査速度等が被印刷物50の縦方向の搬送速度によらず一定の場合、被印刷物50の搬送速度が生産速度に達していない間は印刷ノズル111によって印刷されるレジスタマーク等の縦方向の間隔が既知のリピート長と一致しない。この場合、速度制御部20が被印刷物50の搬送速度を正確に検知できるのは、被印刷物50の搬送速度が生産速度に達した後になる。速度制御部20は、検知された被印刷物50の現在の搬送速度を、不図示の上位コントローラ等から与えられる目標の搬送速度(例えば生産速度)と比較し、その差を小さくするための電流等を駆動モータ22に印加する。この結果、駆動モータ22によって回転駆動される搬送ローラ23は、現在の搬送速度より目標の搬送速度に近い速度で回転して被印刷物50を搬送する。
【0023】
インクジェット印刷部11の後段において被印刷物50に対して追刷(二次印刷)を施す追刷部12は、版胴121と圧胴122を備える。二次絵柄P2の刷版が巻き付けられた版胴121は、駆動モータ32によって
図1における時計回り方向に回転駆動されて二次絵柄P2を被印刷物50に印刷する。典型的には、版胴121および/または刷版の円周はリピート長(単位印刷長)と等しく、版胴121が一回転する間に二次絵柄P2が被印刷物50に1回印刷される。圧胴122は、被印刷物50を版胴121に対して付勢し、版胴121による二次絵柄P2の印刷に適した印刷圧力(印圧)を生成する。なお、追刷部12は、版胴121および圧胴122によらない他の方式の印刷部(例えば、インクジェット印刷部11のようなインクジェット印刷部)でもよい。インクジェット印刷部11と同様に、追刷部12は後述する見当制御部30による見当制御のためのレジスタマークを一リピート長毎に印刷する。各印刷面または各ページにおいて、一次印刷(インクジェット印刷部11)による一次レジスタマークと、二次印刷(追刷部12)による二次レジスタマークは、被印刷物50の搬送方向に沿った所定間隔で印刷される。
【0024】
見当制御部30は、一次絵柄P1と二次絵柄P2の印刷ずれ(見当誤差)を、一次レジスタマークおよび二次レジスタマークの所定間隔からのずれとして検知し、それを低減するように版胴121の位相(回転位置)を駆動モータ32によって制御する。一次レジスタマークおよび二次レジスタマークの搬送方向に沿った間隔は、版胴121の後段に設けられるマークセンサ31によって検知される。マークセンサ31は、一次レジスタマークと二次レジスタマークを同時に検知可能な光検知素子等の二つの検知部を備える。この二つの検知部の搬送方向に沿った間隔は、一次レジスタマークと二次レジスタマークの所期の間隔(所定間隔)と略等しいため、一方の検知部によって一次レジスタマークが検知されている間に、他方の検知部によって二次レジスタマークが検知される。このようにマークセンサ31によって検知された一次レジスタマークと二次レジスタマークの間隔が所定間隔からずれている場合、その印刷ずれ(見当誤差)を低減するための電流等を見当制御部30が駆動モータ32に印加する。
【0025】
以上のような印刷装置10を制御するための本実施形態に係る印刷制御装置40は、基準点検知部41と、インクジェット印刷開始部42と、追刷開始位置演算部43を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。
【0026】
基準点検知部41は、インクジェット印刷部11において、回転によって被印刷物50を搬送する回転搬送部の回転軌道上の基準点を検知する。基準点の検知対象としての回転搬送部としては、
図1に模式的に示される前述の主搬送ローラ112、第1副搬送ローラ113A、第2副搬送ローラ113Bが例示される。回転搬送部としての主搬送ローラ112等の円周上の基準点を検知する基準点検知部41は、エンコーダ411および近接センサ412の少なくともいずれかを備える。
【0027】
エンコーダ411は、主搬送ローラ112等の回転位置を検知し、その円周上の基準点が所定の回転位置に来た時に基準点検知信号を出力する。
図2は、エンコーダ411による主搬送ローラ112の円周上の基準点の検知の例を模式的に示す。エンコーダ411の方式は、インクリメンタル方式でもよいしアブソリュート方式でもよい。主搬送ローラ112の一回転毎にZ相信号を出力するインクリメンタル方式のエンコーダ411の場合、
図2に示されるように、主搬送ローラ112の円周上の基準点Pが第1印刷ノズル111Aによる印刷箇所に来た時に、基準点検知信号としてのZ相信号を出力する。換言すれば、基準点Pが主搬送ローラ112の中心Oと第1印刷ノズル111Aの先端(インク吐出端)を結ぶ直線L上に来た図示の状態において、検知される主搬送ローラ112の機械角度(回転角度)がZ相信号を出力すべき「0度」(または「360度」)となるように、インクリメンタル方式のエンコーダ411が主搬送ローラ112および/またはそれを回転駆動する不図示の駆動モータに取り付けられる。
【0028】
図示の状態から主搬送ローラ112が時計回り方向に回転すると、インクリメンタル方式のエンコーダ411が出力するA相およびB相の信号によって、検知される主搬送ローラ112の機械角度が「0度」から「359度」までカウントアップする。そして、主搬送ローラ112が再び図示の状態に戻ると、インクリメンタル方式のエンコーダ411が出力する基準点検知信号としてのZ相信号によって、検知される主搬送ローラ112の機械角度が「360度」から「0度」にリセットされる。
【0029】
図2の例では、インクリメンタル方式のエンコーダ411が図示の状態で基準点検知信号としてのZ相信号を出力したが、以下のような様々な変形例が考えられる。例えば、インクリメンタル方式のエンコーダ411が基準点検知信号としてのZ相信号を出力する「0度」の回転位置を、点線によって模式的に示される基準点P′の位置としてもよい。この基準点P′は、第1印刷ノズル111Aによる印刷箇所(前述の基準点Pがある箇所)より手前に位置する。後述するように、基準点検知信号は印刷ノズル111(特に最前段の第1印刷ノズル111A)によるインクジェット印刷を開始するトリガとなるが、基準点検知部41(エンコーダ411)による基準点検知信号(Z相信号)の出力タイミングと、印刷ノズル111によるインクジェット印刷の開始タイミングの間に無視できない遅延がある場合がある。このような場合、Z相信号を出力すべき基準点P′を前述の基準点Pより手前(反時計回り方向側)に設けることで、印刷ノズル111によるインクジェット印刷の開始の遅延の影響を低減できる。
【0030】
また、インクリメンタル方式のエンコーダ411が出力する基準点検知信号は、Z相信号に限らずA相信号および/またはB相信号でもよい。例えば、上記のような印刷ノズル111によるインクジェット印刷の開始の遅延の影響を低減するために、基準点Pが「0度」(または「360度」)にある図示の状態より前、例えば基準点Pが図示のP′の回転位置(例えば「345度」)にある時に基準点検知信号を出力させる。この回転位置でインクリメンタル方式のエンコーダ411が出力する信号はA相信号および/またはB相信号であるため、これらをZ相信号の代わりの基準点検知信号として印刷ノズル111によるインクジェット印刷等を開始させる。なお、エンコーダ411がアブソリュート方式の場合も、以上のインクリメンタル方式のエンコーダ411と同様に、主搬送ローラ112、第1副搬送ローラ113A、第2副搬送ローラ113B等の円周上の基準点P(またはP′)が任意の回転位置に来た時に基準点検知信号を出力できる。
【0031】
なお、
図2では基準点検知部41としてのエンコーダ411によって検知される基準点P(またはP′)が模式的に示されているが、このような目印がなくてもエンコーダ411は主搬送ローラ112等の機械角度を検知でき、基準点検知信号としてのZ相信号等を出力できる。一方、基準点検知部41を近接センサ412によって構成する場合は、当該近接センサ412によって検知可能な図示のような基準点P(またはP′)の目印を主搬送ローラ112等の円周上に設けるのが好ましい。また、基準点検知部41が基準点を検知する回転搬送部は、主搬送ローラ112、第1副搬送ローラ113A、第2副搬送ローラ113B等の搬送ローラに限られない。例えば、回転駆動される無限軌道や輪状のベルトによって被印刷物50を搬送する任意の回転搬送部の回転軌道上の基準点Pを、エンコーダ411や近接センサ412等の基準点検知部41によって検知できる。また、回転搬送部の回転軌道上には複数の基準点Pが一定間隔で設けられてもよい。
【0032】
インクジェット印刷開始部42は、基準点検知部41による基準点Pの検知に応じて、印刷ノズル111による被印刷物50に対する印刷を開始する。
図2の例では、基準点Pが図示の「0度」の回転位置に来た時にエンコーダ411から出力されるZ相信号等の基準点検知信号をトリガとして、インクジェット印刷開始部42が最前段の第1印刷ノズル111Aに当該「0度」の回転位置を印刷箇所としてインクジェット印刷を開始させる。前述のように、基準点検知信号(Z相信号等)の出力タイミングと、第1印刷ノズル111Aによるインクジェット印刷の開始タイミングの間に遅延がある場合は、基準点Pが第1印刷ノズル111Aの手前の図示の回転位置P′(例えば「345度」)に来た時に基準点検知部41に基準点検知信号(A相信号および/またはB相信号等)を出力させ、基準点Pが図示の「0度」の回転位置に来ると同時に第1印刷ノズル111Aにインクジェット印刷を開始させられる。以降、基準点Pが第2印刷ノズル111Bの回転位置(例えば「25度」)に来た時に、インクジェット印刷開始部42は第2印刷ノズル111Bにインクジェット印刷を開始させ、基準点Pが第3印刷ノズル111Cの回転位置(例えば「50度」)に来た時に、インクジェット印刷開始部42は第3印刷ノズル111Cにインクジェット印刷を開始させる。
【0033】
追刷開始位置演算部43は、基準点検知部41による基準点Pの検知に応じて、追刷部12による被印刷物50における追刷開始位置を演算する。ここで「追刷開始位置」とは、インクジェット印刷開始部42によって最前段の第1印刷ノズル111Aがインクジェット印刷を開始する被印刷物50における位置と実質的に等しい。
図2の例では、第1印刷ノズル111Aがインクジェット印刷を開始する「0度」の回転位置にある基準点Pが示す被印刷物50上の位置が追刷開始位置S(インクジェット印刷開始位置Sでもある)となる。追刷開始位置演算部43は、このような被印刷物50における追刷開始位置Sが追刷部12における版胴121による印刷箇所に到達するタイミングを演算する。
【0034】
なお、前述の印刷ノズル111の横方向の走査速度等が被印刷物50の縦方向の搬送速度によらず一定の場合、被印刷物50の搬送速度が生産速度に達していない間は印刷ノズル111によって印刷される一次絵柄P1が縦方向につぶれている。このような一次絵柄P1の上には二次絵柄P2を適切に追刷できないため、追刷開始位置演算部43は、被印刷物50の搬送速度が生産速度に達した後に最初に印刷される一次絵柄P1に対応するインクジェット印刷開始位置Sおよび追刷開始位置Sを演算する。後述するように、被印刷物50の搬送速度が生産速度に達したことはエンコーダ411等の基準点検知部41によって検知できる。
【0035】
追刷開始位置演算部43は、インクジェット印刷開始部42(具体的には第1印刷ノズル111A)による
図2のインクジェット印刷開始位置Sおよび追刷部12(具体的には版胴121)の距離dと、搬送ローラ23等による被印刷物50の搬送速度v等に基づいて、被印刷物50における追刷開始位置S(または追刷開始タイミング)を演算する。例えば、搬送速度vが一定の場合、追刷部12による追刷開始タイミングは、
図2で第1印刷ノズル111Aがインクジェット印刷開始位置Sにおいてインクジェット印刷を開始してからd/vの時間が経過した時である。ここで、インクジェット印刷部11(第1印刷ノズル111A)と追刷部12(版胴121)の距離dは固定値であり、予め印刷装置10において設定されているものとする。
【0036】
また、被印刷物50の搬送速度vは、前述のように、マークセンサ21によるレジスタマーク等のマークの検知間隔と既知のリピート長(生産速度におけるレジスタマーク等の縦方向の間隔)に基づいて速度制御部20によって演算されてもよいが、それではインクジェット印刷部11において生産速度で印刷されたレジスタマーク等がマークセンサ21に到達するまで待たなければならない。そこで、インクジェット印刷部11に併設されるエンコーダ411や近接センサ412等の基準点検知部41による基準点Pの検知間隔(時間)と、回転搬送部(主搬送ローラ112等)の回転軌道の長さ(換言すれば、基準点Pが基準点検知部41によって再び検知されるまでに移動する距離)に基づいて、被印刷物50の搬送速度vを検知するのが好ましい。このように回転搬送部に設けられる基準点Pに基づいて基準点検知部41によって検知される搬送速度vは、回転搬送部の搬送速度に応じて変動しうるリピート長(一次絵柄P1の縦方向の長さ)に基づかないため正確性が高い。
【0037】
以上のように、インクジェット印刷部11(第1印刷ノズル111A)がインクジェット印刷開始位置Sにおいてインクジェット印刷を開始した直後から被印刷物50の搬送速度vをトラッキングできる。被印刷物50の搬送速度vを早期に把握することで、
図2におけるインクジェット印刷開始位置Sからの被印刷物50の搬送量を迅速に演算できるため、追刷を開始すべき追刷開始位置Sが追刷部12に到達するタイミングを高精度に決定できる。このように、本実施形態によれば、被印刷物50の搬送速度vが変動する場合でも、迅速に追刷開始位置Sを決定して適切に追刷を開始できる。従って、追刷開始位置の決定の遅れによる被印刷物50の無駄(損紙等)を低減できる。なお、主搬送ローラ112等の回転量を検知可能なエンコーダ411によれば、被印刷物50の搬送量を直接的に検知できるため、搬送速度vを演算せずに追刷開始位置を決定してもよい。
【0038】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0039】
実施形態では、被印刷物50として巻取紙であるウェブを例示したが、印刷装置10は任意の被印刷物に印刷可能である。例えば、被印刷物は、任意の素材で形成されるシートでもよいし、容器や製品など任意の形状の個体の表面でもよい。
【0040】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 印刷装置、11 インクジェット印刷部、12 追刷部、20 速度制御部、30 見当制御部、40 印刷制御装置、41 基準点検知部、42 インクジェット印刷開始部、43 追刷開始位置演算部、50 被印刷物、111 印刷ノズル、112 主搬送ローラ、121 版胴、411 エンコーダ、412 近接センサ。