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特開2023-183067超伝導機器冷却装置、および超伝導機器冷却装置の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183067
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】超伝導機器冷却装置、および超伝導機器冷却装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20231220BHJP
   F25B 9/14 20060101ALI20231220BHJP
   F25B 9/06 20060101ALI20231220BHJP
   H10N 60/81 20230101ALI20231220BHJP
【FI】
F25B9/00 A
F25B9/14 530Z
F25B9/06 A
H01L39/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096472
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】森江 孝明
(72)【発明者】
【氏名】平山 貴士
【テーマコード(参考)】
4M114
【Fターム(参考)】
4M114AA31
4M114BB04
4M114BB07
4M114CC03
4M114CC16
4M114DA02
4M114DA12
4M114DA15
4M114DA17
4M114DA32
4M114DA33
4M114DA34
4M114DA46
4M114DA52
(57)【要約】
【課題】超伝導機器冷却装置におけるユーザビリティを向上する。
【解決手段】超伝導機器冷却装置は、超伝導機器を冷却する極低温冷凍機10と、ユーザーによる極低温冷凍機10の複数の性能パラメータの選択を受け付け、選択された複数の性能パラメータを表す運転モード設定S1を生成するように構成されるインターフェイス110と、インターフェイス110から運転モード設定S1を受信し、選択された複数の性能パラメータに影響する極低温冷凍機10の複数の運転パラメータを制御するように構成されるコントローラ120と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導機器を冷却する極低温冷凍機と、
ユーザーによる前記極低温冷凍機の複数の性能パラメータの選択を受け付け、選択された複数の性能パラメータを表す運転モード設定を生成するように構成されるインターフェイスと、
前記インターフェイスから前記運転モード設定を受信し、前記選択された複数の性能パラメータに影響する前記極低温冷凍機の複数の運転パラメータを制御するように構成されるコントローラと、を備えることを特徴とする超伝導機器冷却装置。
【請求項2】
前記運転モード設定は、ユーザーによる前記極低温冷凍機の複数の性能パラメータの優先順位付けを含み、
前記選択された複数の性能パラメータは、前記優先順位付けに基づく第1優先度をもつ第1性能パラメータおよび第2優先度をもつ第2性能パラメータを含み、前記第1優先度は、前記第2優先度に比べて高い優先度を表し、
前記コントローラは、前記第2性能パラメータに比べて前記第1性能パラメータを優先的に改善するように前記複数の運転パラメータを制御するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の超伝導機器冷却装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記第1性能パラメータの現在値を第1目標値と比較し、
前記第1性能パラメータが前記第1目標値を満たさない場合、前記第2性能パラメータが第2目標値を満たすか否かにかかわらず、前記複数の運転パラメータのうち前記第1性能パラメータに影響する第1運転パラメータを制御するように構成されることを特徴とする請求項2に記載の超伝導機器冷却装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記第2性能パラメータの現在値を前記第2目標値と比較し、
前記第1性能パラメータが前記第1目標値を満たし、かつ前記第2性能パラメータが前記第2目標値を満たさない場合、前記複数の運転パラメータのうち前記第2性能パラメータに影響する第2運転パラメータを制御するように構成されることを特徴とする請求項3に記載の超伝導機器冷却装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記第1性能パラメータが前記第1目標値を満たさない場合、前記第2性能パラメータが第2目標値を満たすか否かにかかわらず、第1警告を発し、
前記第1性能パラメータが前記第1目標値を満たし、かつ前記第2性能パラメータが前記第2目標値を満たさない場合、第2警告を発することを特徴とする請求項4に記載の超伝導機器冷却装置。
【請求項6】
前記コントローラは、それぞれが、異なる運転モード設定に対応する複数の制御アルゴリズムを備え、
各制御アルゴリズムは、対応する運転モード設定において選択された前記複数の性能パラメータのうち少なくとも1つの性能パラメータを改善するように前記複数の運転パラメータを制御するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の超伝導機器冷却装置。
【請求項7】
前記選択された複数の性能パラメータは、前記極低温冷凍機の1段温度、前記極低温冷凍機の2段温度、および前記極低温冷凍機の消費電力のうち、2つの性能パラメータであることを特徴とする請求項1に記載の超伝導機器冷却装置。
【請求項8】
前記極低温冷凍機は、膨張機と、前記膨張機に冷媒ガスを供給する圧縮機とを備え、
前記膨張機は、前記膨張機を駆動する膨張機モータと、前記膨張機モータの運転周波数を制御する膨張機インバータとを備え、
前記圧縮機は、前記圧縮機を駆動する圧縮機モータと、前記圧縮機モータの運転周波数を制御する圧縮機インバータとを備え、
前記複数の運転パラメータは、前記圧縮機モータの運転周波数および前記膨張機モータの運転周波数を含むことを特徴とする請求項1に記載の超伝導機器冷却装置。
【請求項9】
超伝導機器冷却装置の運転方法であって、前記超伝導機器冷却装置は、超伝導機器を冷却する極低温冷凍機を備え、前記方法は、
ユーザーによる前記極低温冷凍機の複数の性能パラメータの選択を受け付けることと、
選択された前記複数の性能パラメータに影響する前記極低温冷凍機の複数の運転パラメータを制御することと、を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導機器冷却装置、および超伝導機器冷却装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導コイルなどの超伝導機器は、超伝導を発現するために極低温に冷却される必要がある。超伝導機器の極低温冷却には、極低温冷凍機がよく用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-052225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存の超伝導機器冷却装置は、典型的には、その製造業者が定めた既定の運転条件で動作するように設計されている。そのため、超伝導機器のユーザーにとっては、自身の判断で超伝導機器冷却装置の運転条件を調整する余地があまりないのが実情である。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、超伝導機器冷却装置のユーザビリティを向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、超伝導機器冷却装置は、超伝導機器を冷却する極低温冷凍機と、ユーザーによる極低温冷凍機の複数の性能パラメータの選択を受け付け、選択された複数の性能パラメータを表す運転モード設定を生成するように構成されるインターフェイスと、インターフェイスから運転モード設定を受信し、選択された複数の性能パラメータに影響する極低温冷凍機の複数の運転パラメータを制御するように構成されるコントローラと、を備える。
【0007】
本発明のある態様によると、超伝導機器冷却装置の運転方法が提供される。超伝導機器冷却装置は、超伝導機器を冷却する極低温冷凍機を備える。方法は、ユーザーによる極低温冷凍機の複数の性能パラメータの選択を受け付けることと、選択された複数の性能パラメータに影響する極低温冷凍機の複数の運転パラメータを制御することと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、超伝導機器冷却装置におけるユーザビリティを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る超伝導磁石装置を概略的に示す図である。
図2】実施形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図3】実施形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図4】実施形態に係る超伝導機器冷却装置の運転方法の一例を示すフローチャートである。
図5】実施形態に係る超伝導機器冷却装置の運転方法に使用される制御アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図6図6(a)および図6(b)はそれぞれ、極低温冷凍機の1段温度および2段温度の運転周波数依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
図1は、実施形態に係る超伝導機器、たとえば超伝導磁石装置100を概略的に示す図である。超伝導磁石装置100は、例えば単結晶引き上げ装置、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)システム、MRI(Magnetic Resonance Imaging)システム、サイクロトロンなどの加速器、核融合システムなどの高エネルギー物理システム、またはその他の高磁場利用機器(図示せず)の磁場源として高磁場利用機器に搭載され、その機器に必要とされる高磁場を発生させることができる。
【0012】
超伝導磁石装置100は、極低温冷凍機10と、超伝導コイル102と、真空容器104と、輻射シールド106と、磁気シールド108とを備える。極低温冷凍機10の例示的な構成については、図2および図3を参照して後述する。
【0013】
超伝導コイル102は、真空容器104内に配置される。超伝導コイル102は、真空容器104に設置された極低温冷凍機10と熱的に結合され、超伝導転移温度以下の極低温に冷却された状態で使用される。この実施形態では、超伝導磁石装置100は、超伝導コイル102を極低温冷凍機10によって直接冷却する、いわゆる伝導冷却式として構成される。
【0014】
なお、他の実施形態では、超伝導磁石装置100は、超伝導コイル102を液体ヘリウムなどの極低温液体冷媒に浸漬する浸漬冷却式で構成されてもよい。この場合、極低温冷凍機10は、液体冷媒の冷却すなわち再凝縮に利用される。極低温冷凍機10は、液体冷媒を介して超伝導コイル102を冷却することができる。
【0015】
真空容器104は、超伝導コイル102を超伝導状態とするのに適する極低温真空環境を提供する断熱真空容器であり、クライオスタットとも呼ばれる。通例、真空容器104は、円柱状の形状、または中心部に中空部を有する円筒状の形状を有する。よって、真空容器104は、概ね平坦な円形状または円環状の天板104aおよび底板104bと、これらを接続する円筒状の側壁(円筒状外周壁、または同軸配置された円筒状の外周壁および内周壁)とを有する。極低温冷凍機10は真空容器104の天板104aに設置されてもよい。真空容器104は、周囲圧力(たとえば大気圧)に耐えるように、例えばステンレス鋼などの金属材料またはその他の適する高強度材料で形成される。
【0016】
輻射シールド106は、真空容器104内で超伝導コイル102を囲むように配置される。輻射シールド106は、真空容器104の天板104aおよび底板104bそれぞれに対向する天板106aおよび底板106bを有する。輻射シールド106の天板106aおよび底板106bは、真空容器104と同様に、概ね平坦な円形状または円環状の形状をもつ。また輻射シールド106は、天板106aと底板106bを接続する円筒状の側壁(円筒状外周壁、または同軸配置された円筒状の外周壁および内周壁)を有する。輻射シールド106は、例えば純銅(例えば、無酸素銅、タフピッチ銅など)、または他の高熱伝導金属で形成される。輻射シールド106は、真空容器104からの輻射熱を遮蔽し、輻射シールド106の内側に配置され輻射シールド106よりも低温に冷却される超伝導コイル102などの低温部を輻射熱から熱的に保護することができる。
【0017】
磁気シールド108は、超伝導コイル102が発生させる磁場が外部に漏洩するのを抑制するために、真空容器104の天板104a、底板104b、およびこれらを接続する円筒状の側壁(少なくとも外周壁)を覆っている。磁気シールド108は、例えば鉄などの磁性材料で形成される。この実施形態では、磁気シールド108は、真空容器104とは別の部材として設けられ、真空容器104の外側に固定されている。しかし、他の実施形態では、磁気シールド108の少なくとも一部が真空容器104と一体化されてもよい。例えば、真空容器104の天板104a、底板104b、およびこれらを接続する側壁のうち少なくとも一部が、磁気シールド108として機能するように磁性材料で形成されてもよい。
【0018】
極低温冷凍機10の第1冷却ステージ33が輻射シールド106の天板106aと熱的に結合され、極低温冷凍機10の第2冷却ステージ35が輻射シールド106の内側で超伝導コイル102と熱的に結合される。超伝導磁石装置100の運転中、輻射シールド106は、極低温冷凍機10の第1冷却ステージ33によって、第1冷却温度、例えば30K~70Kに冷却され、超伝導コイル102は、極低温冷凍機10の第2冷却ステージ35によって、第1冷却温度よりも低い第2冷却温度、例えば10K未満の温度(例えば約1K~約4K)に冷却される。こうして極低温に冷却された超伝導コイル102は、真空容器104外に配置されたコイル電源(図示せず)から給電されることにより、所望の高磁場を発生させることができる。
【0019】
図2および図3は、実施形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。図2には、極低温冷凍機10の外観を示し、図3には、極低温冷凍機10の内部構造を示す。極低温冷凍機10は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機である。
【0020】
極低温冷凍機10は、圧縮機12と膨張機14とを備える。詳細は後述するが、図2に示されるように、インターフェイス110およびコントローラ120が設けられ、これらは極低温冷凍機10とともに、実施形態に係る超伝導機器冷却装置を構成する。
【0021】
圧縮機12は、極低温冷凍機10の作動ガスを膨張機14から回収し、回収した作動ガスを昇圧して、再び作動ガスを膨張機14に供給するよう構成されている。作動ガスは、冷媒ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。
【0022】
なお、一般に、圧縮機12から膨張機14に供給される作動ガスの圧力と、膨張機14から圧縮機12に回収される作動ガスの圧力は、ともに大気圧よりかなり高く、それぞれ第1高圧及び第2高圧と呼ぶことができる。説明の便宜上、第1高圧及び第2高圧はそれぞれ単に高圧及び低圧とも呼ばれる。典型的には、高圧は例えば2~3MPaである。低圧は例えば0.5~1.5MPaであり、例えば約0.8MPaである。理解のために、作動ガスの流れる方向を矢印で示す。
【0023】
圧縮機12は、圧縮機本体22と、圧縮機本体22を収容する圧縮機筐体23とを備える。圧縮機12は、圧縮機ユニットとも称される。
【0024】
圧縮機本体22は、その吸入口から吸入される作動ガスを内部で圧縮して吐出口から吐出するよう構成されている。圧縮機本体22は、例えば、スクロール方式、ロータリ式、または作動ガスを昇圧するそのほかのポンプであってもよい。圧縮機本体22は、固定された一定の作動ガス流量を吐出するよう構成されていてもよい。あるいは、圧縮機本体22は、吐出する作動ガス流量を可変とするよう構成されていてもよい。圧縮機本体22は、圧縮カプセルと称されることもある。
【0025】
また、圧縮機12は、圧縮機モータ24と、コントローラ120からの圧縮機制御信号C1に基づいて圧縮機モータ24の運転周波数すなわち回転数を制御する圧縮機インバータ25とを備える。圧縮機モータ24は、圧縮機本体22を駆動する駆動源であり、例えば、三相交流で駆動する電気モータである。圧縮機インバータ25は、電源46から圧縮機インバータ25に入力される交流を、これと異なる周波数をもつ交流に変換し、変換された交流を圧縮機モータ24に供給するように構成される。電源46は、商用電源(三相交流電源)などの外部電源でありうる。圧縮機モータ24の運転周波数は、圧縮機インバータ25によって、30Hzから100Hzの範囲、または40Hzから70Hzの範囲で制御されてもよい。
【0026】
圧縮機モータ24の消費電力を計測するために第1計測器50が設けられていてもよい。第1計測器50は、圧縮機インバータ25を圧縮機モータ24に接続する給電配線に設置されていてもよい。一例として、第1計測器50は、たとえば、二電力計法に基づく三相電力計を採用することができ、または、圧縮機モータ24の消費電力を計測するその他の形式の電力センサであってもよい。第1計測器50は、有線または無線によりコントローラ120に通信可能に接続されてもよい。第1計測器50によって計測される圧縮機モータ24の消費電力を示す圧縮機電力信号E1が、第1計測器50からコントローラ120に入力されてもよい。
【0027】
なお、コントローラ120は、圧縮機モータ24の消費電力をその他の公知の手法により取得してもよく、この場合、極低温冷凍機10は上述の第1計測器50を備える必要はない。例えば、圧縮機インバータ25は、圧縮機モータ24に供給される電流および電圧から圧縮機モータ24の消費電力を検出するように構成されてもよく、コントローラ120は、圧縮機モータ24の消費電力を圧縮機インバータ25から取得してもよい。あるいは、コントローラ120は、圧縮機モータ24に供給される電流および電圧の大きさを示す信号を圧縮機インバータ25から取得し、圧縮機モータ24の消費電力を取得してもよい。
【0028】
知られているように、圧縮機12は、図示されないそのほか種々の構成要素を有しうる。例えば、吐出側の作動ガス流路には、オイルセパレータ、アドゾーバなどが設けられていてもよい。吸入側の作動ガス流路には、ストレージタンクそのほかの構成要素が設けられていてもよい。また、圧縮機12には、圧縮機本体22をオイルで冷却するオイル循環系や、オイルを冷却水で冷却する冷却系などが設けられていてもよい。
【0029】
膨張機14は、冷凍機シリンダ16と、ディスプレーサ組立体18とを備える。冷凍機シリンダ16は、ディスプレーサ組立体18の直線往復運動をガイドするとともに、ディスプレーサ組立体18との間に作動ガスの膨張室(32、34)を形成する。また、膨張機14は、膨張室への作動ガスの吸気開始タイミングおよび膨張室からの作動ガスの排気開始タイミングを定める圧力切替バルブ40を備える。
【0030】
本書では、極低温冷凍機10の構成要素間の位置関係を説明するために、便宜上、ディスプレーサの軸方向往復動の上死点に近い側を「上」、下死点に近い側を「下」と表記することとする。上死点は膨張空間の容積が最大となるディスプレーサの位置であり、下死点は膨張空間の容積が最小となるディスプレーサの位置である。極低温冷凍機10の運転時には軸方向上方から下方へと温度が下がる温度勾配が生じるので、上側を高温側、下側を低温側と呼ぶこともできる。
【0031】
冷凍機シリンダ16は、第1シリンダ16a、第2シリンダ16bを有する。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2シリンダ16bが第1シリンダ16aよりも小径である。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは同軸に配置され、第1シリンダ16aの下端が第2シリンダ16bの上端に剛に連結されている。
【0032】
ディスプレーサ組立体18は、互いに連結された第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bを備え、これらは一体に移動する。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2ディスプレーサ18bが第1ディスプレーサ18aよりも小径である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは同軸に配置されている。
【0033】
第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに収容され、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに収容されている。第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに沿って軸方向に往復移動可能であり、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに沿って軸方向に往復移動可能である。
【0034】
図3に示されるように、第1ディスプレーサ18aは、第1蓄冷器26を収容する。第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの筒状の本体部の中に、例えば銅などの金網またはその他適宜の第1蓄冷材を充填することによって形成されている。第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は第1ディスプレーサ18aの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第1蓄冷材が第1ディスプレーサ18aに収容されてもよい。
【0035】
同様に、第2ディスプレーサ18bは、第2蓄冷器28を収容する。第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの筒状の本体部の中に、例えばビスマスなどの非磁性蓄冷材、HoCuなどの磁性蓄冷材、またはその他適宜の第2蓄冷材を充填することによって形成されている。第2蓄冷材は粒状に成形されていてもよい。第2ディスプレーサ18bの上蓋部および下蓋部は第2ディスプレーサ18bの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第2ディスプレーサ18bの上蓋部の下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第2蓄冷材が第2ディスプレーサ18bに収容されてもよい。
【0036】
ディスプレーサ組立体18は、室温室30、第1膨張室32、第2膨張室34を冷凍機シリンダ16の内部に形成する。極低温冷凍機10によって冷却すべき所望の物体または媒体との熱交換のために、膨張機14は、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35を備える。室温室30は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部と第1シリンダ16aの上部との間に形成される。第1膨張室32は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部と第1冷却ステージ33との間に形成される。第2膨張室34は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部と第2冷却ステージ35との間に形成される。第1冷却ステージ33は、第1膨張室32を取り囲むように第1シリンダ16aの下部に固着され、第2冷却ステージ35は、第2膨張室34を取り囲むように第2シリンダ16bの下部に固着されている。第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35は、例えば純銅(例えば、無酸素銅、タフピッチ銅など)、または他の高熱伝導金属で形成される。
【0037】
第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に形成された作動ガス流路36aを通じて室温室30に接続され、第1ディスプレーサ18aの下蓋部に形成された作動ガス流路36bを通じて第1膨張室32に接続されている。第2蓄冷器28は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部から第2ディスプレーサ18bの上蓋部へと形成された作動ガス流路36cを通じて第1蓄冷器26に接続されている。また、第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部に形成された作動ガス流路36dを通じて第2膨張室34に接続されている。
【0038】
第1膨張室32、第2膨張室34と室温室30との間の作動ガス流れが、冷凍機シリンダ16とディスプレーサ組立体18との間のクリアランスではなく、第1蓄冷器26、第2蓄冷器28に導かれるようにするために、第1シール38a、第2シール38bが設けられていてもよい。第1シール38aは、第1ディスプレーサ18aと第1シリンダ16aとの間に配置されるように第1ディスプレーサ18aの上蓋部に装着されてもよい。第2シール38bは、第2ディスプレーサ18bと第2シリンダ16bとの間に配置されるように第2ディスプレーサ18bの上蓋部に装着されてもよい。
【0039】
図2に示されるように、膨張機14は、圧力切替バルブ40を収容する冷凍機ハウジング20を備える。冷凍機ハウジング20は、冷凍機シリンダ16と結合され、それにより、圧力切替バルブ40およびディスプレーサ組立体18を収容する気密容器が構成される。冷凍機ハウジング20および冷凍機シリンダ16は、気密容器として内外の圧力差に耐えるように、例えばステンレス鋼などの金属材料またはその他の適する高強度材料で形成される。
【0040】
圧力切替バルブ40は、図3に示されるように、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを備え、冷凍機シリンダ16内に周期的圧力変動を発生させるように構成されている。圧縮機12の作動ガス吐出口が高圧バルブ40aを介して室温室30に接続され、圧縮機12の作動ガス吸入口が低圧バルブ40bを介して室温室30に接続されている。高圧バルブ40aと低圧バルブ40bは、選択的かつ交互に開閉するように(すなわち、一方が開いているとき他方が閉じるように)構成されている。
【0041】
圧力切替バルブ40は、ロータリーバルブの形式をとってもよい。すなわち、圧力切替バルブ40は、静止したバルブ本体に対するバルブディスクの回転摺動によって高圧バルブ40aと低圧バルブ40bが交互に開閉されるように構成されていてもよい。その場合、膨張機モータ42が圧力切替バルブ40のバルブディスクを回転させるように圧力切替バルブ40に連結されていてもよい。たとえば、圧力切替バルブ40は、バルブ回転軸が膨張機モータ42の回転軸と同軸となるように配置される。
【0042】
あるいは、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bはそれぞれ個別に制御可能なバルブであってもよく、その場合、圧力切替バルブ40は、膨張機モータ42に連結されていなくてもよい。
【0043】
膨張機14は、膨張機モータ42と運動変換機構43とを備える。膨張機モータ42は、膨張機14を駆動する駆動源であり、例えば、三相交流で駆動する電気モータである。膨張機モータ42は、冷凍機ハウジング20に取り付けられている。運動変換機構43は、圧力切替バルブ40と同様に、冷凍機ハウジング20に収容されている。
【0044】
膨張機モータ42は、たとえばスコッチヨーク機構などの運動変換機構43を介してディスプレーサ駆動軸44に連結されている。運動変換機構43は、膨張機モータ42が出力する回転運動をディスプレーサ駆動軸44の直線往復運動に変換する。ディスプレーサ駆動軸44は、運動変換機構43から室温室30の中へと延び、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に固定されている。膨張機モータ42の回転は運動変換機構43によってディスプレーサ駆動軸44の軸方向往復動に変換され、ディスプレーサ組立体18は冷凍機シリンダ16内を軸方向に直線的に往復する。
【0045】
また、極低温冷凍機10には、コントローラ120からの膨張機制御信号C2に基づいて膨張機モータ42の運転周波数すなわち回転数を制御する膨張機インバータ45が設けられている。膨張機インバータ45は、この例では、圧縮機12に搭載されているが、これに限られず、膨張機14に搭載されてもよい。膨張機インバータ45は、電源46から膨張機インバータ45に入力される交流を、これと異なる周波数をもつ交流に変換し、変換された交流を圧縮機モータ24に供給するように構成される。膨張機モータ42の運転周波数は、膨張機インバータ45によって、30Hzから100Hzの範囲、または40Hzから70Hzの範囲で制御されてもよい。
【0046】
膨張機モータ42の消費電力を計測するために第2計測器51が設けられていてもよい。第2計測器51は、膨張機インバータ45を膨張機モータ42に接続する給電配線に設置されていてもよい。一例として、第2計測器51は、たとえば、二電力計法に基づく三相電力計を採用することができ、または、膨張機モータ42の消費電力を計測するその他の形式の電力センサであってもよい。第2計測器51は、有線または無線によりコントローラ120に通信可能に接続されてもよい。第2計測器51によって計測される膨張機モータ42の消費電力を示す膨張機電力信号E2が、第2計測器51からコントローラ120に入力されてもよい。
【0047】
なお、コントローラ120は、膨張機モータ42の消費電力をその他の公知の手法により取得してもよく、この場合、極低温冷凍機10は上述の第2計測器51を備える必要はない。例えば、膨張機インバータ45は、膨張機モータ42に供給される電流および電圧から膨張機モータ42の消費電力を検出するように構成されてもよく、コントローラ120は、膨張機モータ42の消費電力を膨張機インバータ45から取得してもよい。あるいは、コントローラ120は、膨張機モータ42に供給される電流および電圧の大きさを示す信号を膨張機インバータ45から取得し、膨張機モータ42の消費電力を取得してもよい。
【0048】
また、第1冷却ステージ33の温度を測定するための第1温度センサ52および第2冷却ステージ35の温度を測定するための第2温度センサ53が設けられてもよい。第1温度センサ52は、第1冷却ステージ33に取り付けられてもよい。第2温度センサ53は、第2冷却ステージ35に取り付けられてもよい。第1温度センサ52および第2温度センサ53は、有線または無線によりコントローラ120に通信可能に接続されてもよい。第1温度センサ52によって計測される第1冷却温度を示す1段温度信号T1が、第1温度センサ52からコントローラ120に入力されてもよい。第2温度センサ53によって計測される第2冷却温度を示す2段温度信号T2が、第2温度センサ53からコントローラ120に入力されてもよい。
【0049】
なお、極低温冷凍機10が第1温度センサ52および第2温度センサ53を備えることは必須ではない。第1温度センサ52と第2温度センサ53がそれぞれ第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35に取り付けられる代わりに、超伝導磁石装置100に第1温度センサ52および第2温度センサ53が設けられてもよい。この場合、第1温度センサ52は、図1に示す輻射シールド106に取り付けられ、1段温度信号T1をコントローラ120に提供してもよい。第2温度センサ53は、図1に示す超伝導コイル102に取り付けられ、2段温度信号T2をコントローラ120に提供してもよい。
【0050】
この実施の形態では、ユーザーが極低温冷凍機10の制御のための設定をコントローラ120に入力するためのインターフェイス110が設けられている。例示的な構成として、インターフェイス110は、圧縮機12に搭載された操作パネルであってもよく、圧縮機筐体23に取り付けられていてもよい。インターフェイス110には、ユーザーによる入力を受け付ける例えば操作ボタン、キーボード、タッチスクリーン等の入力手段が設けられている。ユーザーにより入力された設定を表すデータは、インターフェイス110からコントローラ120に送信される。また、インターフェイス110は、ユーザーにより入力された設定、または、極低温冷凍機10に関連するそのほかの情報をユーザーに提示するための例えばディスプレイ、警告灯、スピーカーなどの通知手段を有してもよい。
【0051】
後述のように、インターフェイス110は、ユーザーによる極低温冷凍機10の複数の性能パラメータの選択を受け付け、選択された複数の性能パラメータを表す運転モード設定S1を生成するように構成されてもよい。
【0052】
コントローラ120は、極低温冷凍機10を制御するように構成される。この実施の形態では、後述のように、コントローラ120は、インターフェイス110から運転モード設定S1を受信し、選択された複数の性能パラメータに影響する極低温冷凍機10の複数の運転パラメータを制御するように構成されてもよい。
【0053】
コントローラ120の内部構成は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0054】
たとえば、コントローラ120は、CPU(Central Processing Unit)、マイコンなどのプロセッサ(ハードウェア)と、プロセッサ(ハードウェア)が実行するソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。そうしたハードウェアプロセッサは、たとえば、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブルロジックデバイスで構成してもよいし、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)のような制御回路であってもよい。ソフトウェアプログラムは、極低温冷凍機10の制御をコントローラ120に実行させるためのコンピュータプログラムであってもよい。
【0055】
なお、インターフェイス110およびコントローラ120は、上述のように圧縮機12に搭載されることは必須ではなく、他の配置もとりうる。例えば、インターフェイス110およびコントローラ120は、膨張機14に搭載されてもよい。あるいは、インターフェイス110およびコントローラ120は、極低温冷凍機10から遠隔に配置され、極低温冷凍機10と通信可能に接続されてもよい。
【0056】
以上の構成により、極低温冷凍機10は、圧縮機12および膨張機モータ42が運転されるとき、第1膨張室32および第2膨張室34において周期的な容積変動とこれに同期した作動ガスの圧力変動を発生させる。典型的には、吸気工程においては、低圧バルブ40bが閉じ高圧バルブ40aが開くことによって、高圧の作動ガスが圧縮機12から高圧バルブ40aを通じて室温室30に流入し、第1蓄冷器26を通じて第1膨張室32に供給され、第2蓄冷器28を通じて第2膨張室34に供給される。こうして、第1膨張室32、第2膨張室34は低圧から高圧へと昇圧される。このとき、ディスプレーサ組立体18が下死点から上死点へと上動され第1膨張室32と第2膨張室34の容積が増加される。高圧バルブ40aが閉じると吸気工程は終了する。
【0057】
排気工程においては、高圧バルブ40aが閉じ低圧バルブ40bが開くことによって、高圧の第1膨張室32、第2膨張室34が圧縮機12の低圧の作動ガス吸入口に開放されるので、作動ガスが第1膨張室32、第2膨張室34で膨張し、その結果低圧となった作動ガスが第1膨張室32、第2膨張室34から第1蓄冷器26、第2蓄冷器28を通じて室温室30へと排出される。このとき、ディスプレーサ組立体18が上死点から下死点へと下動され第1膨張室32と第2膨張室34の容積が減少される。作動ガスは膨張機14から低圧バルブ40bを通じて圧縮機12に回収される。低圧バルブ40bが閉じると排気工程は終了する。
【0058】
このようにして、たとえばGMサイクルなどの冷凍サイクルが構成され、第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35が所望の極低温に冷却される。第1冷却ステージ33は、例えば約30K~約70Kの範囲にある第1冷却温度に冷却されることができる。第2冷却ステージ35は、第1冷却温度より低い第2冷却温度(例えば、約1K~約4K)に冷却されることができる。したがって、超伝導コイル102を臨界温度以下に冷却することができ、超伝導磁石装置100を動作させることができる。
【0059】
図4は、実施形態に係る超伝導機器冷却装置の運転方法の一例を示すフローチャートである。この方法は、インターフェイス110が、ユーザーによる極低温冷凍機10の複数の性能パラメータの選択を受け付けるステップ(S10)と、コントローラ120が、選択された複数の性能パラメータに影響する極低温冷凍機10の複数の運転パラメータを制御するステップ(S20)と、を備える。
【0060】
インターフェイス110は、極低温冷凍機10のさまざまな性能パラメータを、選択の候補としてユーザーに提示するように構成されてもよい。例えば、インターフェイス110は、これら候補の性能パラメータをディスプレイに表示してもよい。ユーザーはこうした表示を参照して、自身が関心をもつ性能パラメータをインターフェイス110上で選択することで、性能パラメータの選択をインターフェイス110に入力することができる。
【0061】
ユーザーに提示される極低温冷凍機10の複数の性能パラメータは、極低温冷凍機10の性能を表す少なくとも3つのパラメータであってもよい。この少なくとも3つのパラメータは、極低温冷凍機10の1段温度、極低温冷凍機10の2段温度、および極低温冷凍機10の消費電力を含んでもよい。極低温冷凍機10の1段温度、2段温度、消費電力は、極低温冷凍機10によって冷却される超伝導機器の動作に影響するため、ユーザーにとって関心の高い極低温冷凍機10の代表的な性能パラメータである。
【0062】
インターフェイス110は、選択可能な性能パラメータの候補のうち、最大で2つの性能パラメータの選択を受け付けるように構成されてもよい。選択された性能パラメータは、極低温冷凍機10の1段温度、極低温冷凍機10の2段温度、および極低温冷凍機10の消費電力のうち、1つまたは2つの性能パラメータであってもよい。
【0063】
ユーザーによる極低温冷凍機10の複数の性能パラメータの選択は、性能パラメータの優先順位付けを含んでもよい。よって、選択された複数の性能パラメータは、第1優先度をもつ第1性能パラメータおよび第2優先度をもつ第2性能パラメータを含みうる。第1優先度および第2優先度は、ユーザーによる優先順位付けに基づく。第1優先度は、第2優先度に比べて高い優先度を表す。コントローラ120は、第2性能パラメータに比べて第1性能パラメータを優先的に改善するように複数の運転パラメータを制御するように構成されてもよい。
【0064】
最大で2つの性能パラメータが優先順位付けとともに選択される場合、インターフェイス110は、異なる9通りの運転モード設定S1を生成しうる。つまり、性能パラメータが1つだけ選択される場合が以下の3通り(運転モード1~3)、2つの性能パラメータが優先順位付けとともに選択される場合が以下の6通り(運転モード4~9)である。なお、運転モード4~9について以下では、優先順位の高い順、つまり、左から第1優先度をもつ第1性能パラメータ、第2優先度をもつ第2性能パラメータの順に記載している。
運転モード1:2段温度
運転モード2:1段温度
運転モード3:消費電力
運転モード4:2段温度、1段温度
運転モード5:1段温度、2段温度
運転モード6:2段温度、消費電力
運転モード7:消費電力、2段温度
運転モード8:1段温度、消費電力
運転モード9:消費電力、1段温度
【0065】
性能パラメータ自体を選択の候補としてユーザーに提示することに代えて、インターフェイス110は、運転モード1から9のすべてまたはその一部を選択の候補としてユーザーに提示してもよい。
【0066】
選択の利便性のために、これら運転モードに名称が予め付されてもよく、インターフェイス110は、そうした運転モード名を選択のために提示してもよい。たとえば、消費電力が優先される運転モード3、運転モード7、運転モード9はそれぞれ、消費電力モード1、消費電力モード2、消費電力モード3といった運転モード名が付けられてもよい(あるいは、超伝導磁石装置100がMRI装置の場合、昼間に比べて夜間の運転ではユーザーにとって消費電力の低減が優先されうるので、夜間モード1、夜間モード2、夜間モード3と名付けられてもよい。)。
【0067】
運転モード4は、標準運転モードと名付けられてもよい。運転モード1、運転モード6はそれぞれ、緊急モード1、緊急モード2と名付けられてもよい。運転モード1は、2段温度の維持のみが優先されるので、クエンチ(超伝導の消失)が起こりうる状況においてその発生をなるべく遅らせることに役立ちうる。運転モード6は、2段温度の維持が最も優先され、消費電力が副次的に優先されるので、停電対策の補助電源で超伝導機器を動作させる状況において補助電源を長持ちさせることに役立ちうる。1段温度の維持が優先される運転モード5は、経年劣化対策モードと名付けられてもよい。極低温冷凍機10の経年劣化は1段温度の上昇に現れることがしばしばあるので、運転モード5は、経年劣化の影響を軽減することに役立ちうる。
【0068】
インターフェイス110は、選択された性能パラメータについて、当該性能パラメータの目標値をユーザーから受け付けるように構成されてもよい。これにより、ユーザーは、性能パラメータを選択するだけでなく、その性能パラメータが満たすべき目標値を設定することができる。運転モード設定S1は、ユーザーにより設定される性能パラメータの目標値を含んでもよい。
【0069】
図2に示されるように、インターフェイス110は、ユーザーによる極低温冷凍機10の複数の性能パラメータの選択を受け付けると、選択された複数の性能パラメータを表す運転モード設定S1を生成し、コントローラ120に出力する。運転モード設定S1は、コントローラ120に格納される。
【0070】
コントローラ120は、それぞれが、異なる運転モード設定S1に対応する複数の制御アルゴリズム122を備えてもよい(たとえば、コントローラ120は、運転モード1から9にそれぞれ対応する9個の制御アルゴリズム122を備えてもよい。)。各制御アルゴリズム122は、対応する運転モード設定S1において選択された複数の性能パラメータのうち少なくとも1つの性能パラメータを改善するように、極低温冷凍機10の複数の運転パラメータを制御するように構成されてもよい。
【0071】
したがって、コントローラ120は、インターフェイス110から運転モード設定S1を受け、複数の制御アルゴリズム122からこの運転モード設定S1に対応する制御アルゴリズム122を選択し、選択された制御アルゴリズム122に従って極低温冷凍機10の複数の運転パラメータを制御するように構成されてもよい。
【0072】
図5は、実施形態に係る超伝導機器冷却装置の運転方法に使用される制御アルゴリズム122の一例を示すフローチャートである。制御アルゴリズム122は、極低温冷凍機10の複数の運転パラメータを制御するステップ(図4のS20)において実行される。図示されるように、制御アルゴリズム122は、対応する運転モード設定S1において選択された性能パラメータの現在値を取得するステップ(S21)と、取得された性能パラメータの現在値を目標値と比較するステップ(S22)と、比較結果に基づいて極低温冷凍機10の運転パラメータを制御するステップ(S23)と、を備える。
【0073】
選択された性能パラメータが、極低温冷凍機10の1段温度である場合、コントローラ120は、第1温度センサ52からの1段温度信号T1から、1段温度の現在値を取得することができる。同様に、選択された性能パラメータが、極低温冷凍機10の2段温度である場合、コントローラ120は、第2温度センサ53からの2段温度信号T2から、2段温度の現在値を取得することができる。
【0074】
選択された性能パラメータが、極低温冷凍機10の消費電力である場合、コントローラ120は、第1計測器50からの圧縮機電力信号E1および第2計測器51からの膨張機電力信号E2から、極低温冷凍機10の消費電力の現在値を取得することができる。極低温冷凍機10の消費電力は、圧縮機モータ24の消費電力と膨張機モータ42の消費電力の和として求めることができる。なお上述のように、コントローラ120は、圧縮機モータ24および膨張機モータ42それぞれに供給される電流および電圧を取得し、これらから極低温冷凍機10の消費電力を演算してもよい。
【0075】
取得された性能パラメータの現在値と比較される当該性能パラメータの目標値は、上述のように、ユーザーにより設定された値であってもよい。あるいは、目標値がユーザーにより設定されていない場合には、コントローラ120は、個々の性能パラメータについての既定の目標値、またはコントローラ120により設定された目標値を使用してもよい。
【0076】
コントローラ120は、取得された性能パラメータの現在値を目標値と比較し、比較結果を生成する。比較結果は、現在値と目標値の大小関係により、以下の状態Aから状態Cの3つの状態のうちいずれかをとりうる。
状態A:現在値が目標値より小さい(低い)。
状態B:現在値が目標値に等しい。
状態C:現在値が目標値より大きい(高い)。
【0077】
なお、状態Bの「現在値が目標値に等しい」とは、現在値が目標値に厳密に一致する場合のみを含むのではなく、現在値が目標値を含む許容範囲内にある場合を含んでもよい。この許容範囲は、目標値に対する所定比率または所定量の範囲(例えば、目標値から±5%以内など)であってもよい。状態A(または状態C)は、現在値が許容範囲を超える(または許容範囲に満たない)ことを表してもよい。
【0078】
選択された性能パラメータが、極低温冷凍機10の1段温度、2段温度、または消費電力である場合、比較結果が状態Aまたは状態Bであれば、その性能パラメータは目標値を満たすとみなすことができる。一方、比較結果が状態Cのとき、その性能パラメータは目標値を満たさないとみなされる。
【0079】
コントローラ120は、性能パラメータが目標値を満たすことを示す情報をユーザーに提示するように、または、性能パラメータが目標値を満たさないことを示す情報(つまり警告)を提示するように、比較結果に基づいてインターフェイス110を動作させてもよい。例えば、コントローラ120は、ユーザーへの警告のために、インターフェイス110に設けられた警告灯を点灯させてもよい。
【0080】
ユーザーへの情報の提示とともに、またはそれに代えて、コントローラ120は、取得された性能パラメータの現在値と目標値との偏差を小さくするように、極低温冷凍機10の運転パラメータを制御してもよい。例えば、コントローラ120は、取得された性能パラメータの現在値が目標値を満たさない場合(つまり、比較結果が状態Cの場合)、目標値に向けて性能パラメータの値を変化させる(例えば、性能パラメータの値を小さくする)ように極低温冷凍機10の運転パラメータを制御してもよい。
【0081】
コントローラ120は、比較結果に基づいて、極低温冷凍機10の複数の運転パラメータから少なくとも1つを選択し、選択された運転パラメータを制御してもよい。この場合、制御アルゴリズム122は、比較結果に応じて(すなわち、複数の状態それぞれについて)、どの運転パラメータを制御するかを予め定義していてもよい。したがって、コントローラ120は、比較結果を参照して、制御対象の運転パラメータを選択することができる。
【0082】
コントローラ120は、制御対象の運転パラメータの値を決定するように構成されてもよい。コントローラ120は、運転パラメータの現在値にある変化量を加算して、運転パラメータの新たな値を決定してもよい。この変化量は、正または負の値であってもよく、それにより、運転パラメータの値は増加または減少されうる。変化量は、固定値であってもよいし、状況に応じて変更される可変値であってもよい。
【0083】
極低温冷凍機10の運転パラメータは、極低温冷凍機10の性能パラメータに影響する操作可能なパラメータであり、例えば、圧縮機モータ24の運転周波数または膨張機モータ42の運転周波数であってもよい。
【0084】
図6(a)には、圧縮機モータ24の運転周波数が40Hz、50Hz、60Hz、70Hzの4つの場合それぞれについて、1段温度と膨張機モータ42の運転周波数との関係が示されている。極低温冷凍機10の1段温度は、図6(a)に示されるように、圧縮機モータ24の運転周波数が増加するにつれて単調に低下する傾向をもつ。よって、圧縮機モータ24の運転周波数を変更(例えば増加)することによって、1段温度を調整(例えば低下)させることができる。
【0085】
同様に、1段温度は、膨張機モータ42の運転周波数が増加するにつれて単調に低下する傾向をもつ。膨張機モータ42の運転周波数を変更(例えば増加)することによって、1段温度を調整(例えば低下)させることができる。
【0086】
典型的には、膨張機モータ42の運転周波数をある大きさだけ変更する場合に比べて、圧縮機モータ24の運転周波数を同じ大きさだけ変更する場合のほうが、1段温度は、より大きく調整されうる。図6(a)から理解されるように、圧縮機モータ24の運転周波数が60Hz以下である場合に、そうした傾向は顕著である。したがって、運転モード設定S1において性能パラメータとして極低温冷凍機10の1段温度が選択されている場合、運転パラメータとして圧縮機モータ24の運転周波数を選択することが、より有効でありうる。
【0087】
図6(b)には、圧縮機モータ24の運転周波数が40Hz、50Hz、60Hz、70Hzの4つの場合それぞれについて、2段温度と膨張機モータ42の運転周波数との関係が示されている。極低温冷凍機10の2段温度は、図6(b)に示されるように、圧縮機モータ24の運転周波数が増加するにつれて単調に低下する傾向をもつ。よって、圧縮機モータ24の運転周波数を変更(例えば増加)することによって、1段温度を調整(例えば低下)させることができる。
【0088】
一方、2段温度は、膨張機モータ42の運転周波数に対して、1段温度とは異なる傾向をもつ。具体的には、圧縮機モータ24の運転周波数を一定として膨張機モータ42の運転周波数を変化させると、2段温度は、膨張機モータ42の運転周波数がある値をとるときに最低となる(例えば、図6(b)に示されるように、圧縮機モータ24の運転周波数が50Hzの場合、2段温度は、膨張機モータ42の運転周波数が50Hzのとき最低となっている。)。言い換えれば、膨張機モータ42の運転周波数がこの値より小さいときには、2段温度は、膨張機モータ42の運転周波数が増加するにつれて低下する。しかし、膨張機モータ42の運転周波数がこの値より大きいときには、2段温度は、膨張機モータ42の運転周波数が増加するにつれて高まる。したがって、2段温度を低下させるために膨張機モータ42の運転周波数の増加と減少のどちらが必要であるかは、一概に言えない。このような2段温度の運転周波数依存性は、2段温度が約4K以下にあるとき顕著に現れる。
【0089】
したがって、運転モード設定S1において性能パラメータとして極低温冷凍機10の2段温度が選択されている場合、2段温度をより低くするためには、運転パラメータとして圧縮機モータ24の運転周波数および膨張機モータ42の運転周波数の両方を制御することが望まれる。
【0090】
極低温冷凍機10の消費電力は、基本的に冷却温度とトレードオフの関係にある。消費電力は、圧縮機モータ24の運転周波数が増加するにつれて単調に増加する傾向をもつ。よって、圧縮機モータ24の運転周波数を変更(例えば低下)することによって、消費電力を調整(例えば低下)させることができる。また、消費電力は、膨張機モータ42の運転周波数の変化により増減しうる。よって、膨張機モータ42の運転周波数を変更することによって、消費電力を調整することができる。運転モード設定S1において性能パラメータとして極低温冷凍機10の消費電力が選択されている場合、運転パラメータとして圧縮機モータ24の運転周波数を選択することが、より有効でありうる。
【0091】
圧縮機モータ24の運転周波数が制御される場合、コントローラ120は、決定された圧縮機モータ24の運転周波数の値を表す圧縮機制御信号C1を生成し、圧縮機制御信号C1を圧縮機インバータ25に送信する。圧縮機インバータ25は、圧縮機制御信号C1を受け、決定された運転周波数で圧縮機モータ24を駆動するように動作する。
【0092】
同様に、膨張機モータ42の運転周波数が制御される場合、コントローラ120は、決定された膨張機モータ42の運転周波数の値を表す膨張機制御信号C2を生成し、膨張機制御信号C2を膨張機インバータ45に送信する。膨張機インバータ45は、膨張機制御信号C2を受け、決定された運転周波数で膨張機モータ42を駆動するように動作する。
【0093】
運転パラメータ変更の影響が性能パラメータに現れるまでにいくらかの時間を要するので、コントローラ120は、運転パラメータを変更したら所定時間待機してもよい。コントローラ120は、この待機時間が経過したとき、制御アルゴリズム122(S21~S23)を再び実行してもよい。
【0094】
運転モード設定S1において2つの性能パラメータが選択されている場合、コントローラ120は、第1性能パラメータの現在値および第2性能パラメータの現在値を取得し、第1性能パラメータの現在値を第1目標値と比較し、第2性能パラメータの現在値を第2目標値と比較する。第1目標値と第2目標値はそれぞれ、第1性能パラメータと第2性能パラメータの目標値である。運転モード設定S1に性能パラメータの優先順位付けが含まれる場合、上述のように、第1性能パラメータが第1優先度を有し、第2性能パラメータが第2優先度を有してもよい。比較結果は、以下の状態Aaから状態Ccの9つの状態のうちいずれかをとりうる。
状態Aa:第1性能パラメータの現在値が第1目標値より小さく、かつ第2性能パラメータの現在値が第2目標値より小さい。
状態Ab:第1性能パラメータの現在値が第1目標値より小さく、かつ第2性能パラメータの現在値が第2目標値に等しい。
状態Ac:第1性能パラメータの現在値が第1目標値より小さく、かつ第2性能パラメータの現在値が第2目標値より大きい。
状態Ba:第1性能パラメータの現在値が第1目標値に等しく、かつ第2性能パラメータの現在値が第2目標値より小さい。
状態Bb:第1性能パラメータの現在値が第1目標値に等しく、かつ第2性能パラメータの現在値が第2目標値に等しい。
状態Bc:第1性能パラメータの現在値が第1目標値に等しく、かつ第2性能パラメータの現在値が第2目標値より大きい。
状態Ca:第1性能パラメータの現在値が第1目標値より大きく、かつ第2性能パラメータの現在値が第2目標値より小さい。
状態Cb:第1性能パラメータの現在値が第1目標値より大きく、かつ第2性能パラメータの現在値が第2目標値に等しい。
状態Cc:第1性能パラメータの現在値が第1目標値より大きく、かつ第2性能パラメータの現在値が第2目標値より大きい。
【0095】
コントローラ120は、性能パラメータが目標値を満たすか否かを表す情報をユーザーに提示するように、比較結果に基づいてインターフェイス110を動作させてもよい。たとえば、コントローラ120は、第1性能パラメータが第1目標値を満たさない場合、第2性能パラメータが第2目標値を満たすか否かにかかわらず、第1警告を発してもよい(状態Ca、Cb、Cc)。このようにすれば、第2性能パラメータに比べて優先順位の高い第1性能パラメータがその目標値を満たさないことをユーザーに確実に知らせることができる。コントローラ120は、第1性能パラメータが第1目標値を満たし、かつ第2性能パラメータが第2目標値を満たさない場合、第2警告を発してもよい(状態Ac、Bc)。また、コントローラ120は、第1性能パラメータが第1目標値を満たし、かつ第2性能パラメータが第2目標値を満たす場合、正常通知を発してもよい。第1警告、第2警告、および正常通知は、インターフェイス110を介してユーザーに提示されてもよい。
【0096】
ユーザーへの情報の提示とともに、またはそれに代えて、コントローラ120は、第2性能パラメータに比べて第1性能パラメータを優先的に改善するように極低温冷凍機10の複数の運転パラメータを制御してもよい。この場合、コントローラ120は、第1性能パラメータが第1目標値を満たさない場合、第2性能パラメータが第2目標値を満たすか否かにかかわらず、複数の運転パラメータのうち第1性能パラメータに影響する第1運転パラメータを制御してもよい。第1性能パラメータの現在値と第1目標値との偏差を小さくするように、第1運転パラメータが制御されてもよい。
【0097】
コントローラ120は、第1性能パラメータが第1目標値を満たし、かつ第2性能パラメータが第2目標値を満たさない場合、複数の運転パラメータのうち第2性能パラメータに影響する第2運転パラメータを制御してもよい。第2性能パラメータの現在値と第2目標値との偏差を小さくするように、第2運転パラメータが制御されてもよい。第2運転パラメータは、第1運転パラメータとは異なりうる。第1運転パラメータが圧縮機モータ24の運転周波数(または膨張機モータ42の運転周波数)であり、第2性運転パラメータが膨張機モータ42の運転周波数(または圧縮機モータ24の運転周波数)であってもよい。
【0098】
制御アルゴリズム122の例をいくつか述べる。第1の例は、上述の運転モード4(第1性能パラメータが2段温度、第2性能パラメータが1段温度の場合)である。運転モード4に対応する制御アルゴリズム122の一例では、状態Aaから状態Ccの9つの状態それぞれについて、運転パラメータが以下のように制御される。
状態Aa:運転パラメータを維持する。
状態Ab:運転パラメータを維持する。
状態Ac:圧縮機モータ24の運転周波数を増加させる。
状態Ba:運転パラメータを維持する。
状態Bb:運転パラメータを維持する。
状態Bc:圧縮機モータ24の運転周波数を増加させる。
状態Ca:膨張機モータ42の運転周波数を変化させる。
状態Cb:膨張機モータ42の運転周波数を変化させる。
状態Cc:圧縮機モータ24の運転周波数を増加させる。
【0099】
状態Aaから状態Bcの6つの状態では、第1性能パラメータである2段温度はその目標値を満たしている。そのうち、状態Aa、Ab、Ba、Bbでは第2性能パラメータである1段温度も目標値を満たしているから、運転パラメータを変更する必要が無く、維持される。
【0100】
状態Ac、Bcでは、第1性能パラメータである2段温度については目標値を満たしながら、第2性能パラメータである1段温度が目標値を満たすように運転パラメータが制御される。状態Acは、圧縮機モータ24の運転周波数増加の結果として、1段温度(および2段温度)が下がり、状態Abに遷移することが期待される。圧縮機モータ24の運転周波数が調整可能範囲の最高値(例えば70Hz)に既に達している場合には、圧縮機モータ24の運転周波数増加に代えて、膨張機モータ42の運転周波数が増加されてもよい(この場合、状態Abまたは状態Bbに遷移することが期待される。万が一、状態Cbに遷移した場合には警告が発せられる。)。また、状態Bcは、圧縮機モータ24の運転周波数増加の結果として、1段温度(および2段温度)が下がり、状態Abまたは状態Acに遷移することが期待される。
【0101】
状態CaからCcでは、第1性能パラメータである2段温度が目標値を満たすように運転パラメータが制御される。状態Ca、Cbは、膨張機モータ42の運転周波数が増加(または低下)され、その結果として状態BaからBcのいずれかに遷移することが期待される。こうした膨張機モータ42の運転周波数の最適化にもかかわらず、状態Caが維持される場合、圧縮機モータ24の運転周波数が増加されてもよい(この場合、状態BaからBcのいずれかに遷移することが期待される。万が一、状態Caが依然として維持される場合には警告が発せられる。)。状態Ccは、圧縮機モータ24の運転周波数増加の結果として、状態BcまたはCbに遷移することが期待される。それでも状態Ccが維持される場合、膨張機モータ42の運転周波数が低下されてもよい(この場合、状態Bcに遷移することが期待される。万が一、状態Ccが依然として維持される場合には警告が発せられる。)。
【0102】
第2の例は、運転モード6(第1性能パラメータが2段温度、第2性能パラメータが消費電力の場合)である。運転モード6に対応する制御アルゴリズム122の一例では、状状態Aaから状態Ccの9つの状態それぞれについて、運転パラメータが以下のように制御される。
状態Aa:運転パラメータを維持する。
状態Ab:運転パラメータを維持する。
状態Ac:圧縮機モータ24の運転周波数を低下させる。
状態Ba:運転パラメータを維持する。
状態Bb:運転パラメータを維持する。
状態Bc:膨張機モータ42の運転周波数を変化させる。
状態Ca:圧縮機モータ24の運転周波数を増加させる。
状態Cb:圧縮機モータ24の運転周波数を増加させる。
状態Cc:圧縮機モータ24の運転周波数を増加させる。
【0103】
状態Aaから状態Bcの6つの状態では、第1性能パラメータである2段温度はその目標値を満たしている。そのうち、状態Aa、Ab、Ba、Bbでは第2性能パラメータである消費電力も目標値を満たしているから、運転パラメータを変更する必要が無く、維持される。なお、状態Aa、Abでは、圧縮機モータ24の運転周波数を低下させることで更なる消費電力の低減を目指してもよい(この場合、状態Baに遷移しうる。)。
【0104】
状態Ac、Bcでは、第1性能パラメータである2段温度については目標値を満たしながら、第2性能パラメータである消費電力が目標値を満たすように運転パラメータが制御される。状態Acは、圧縮機モータ24の運転周波数低下の結果、状態AbまたはBbに遷移することが期待される。状態Bcは、膨張機モータ42の運転周波数の変更の結果、状態AbまたはBbに遷移することが期待される(万が一、状態Bcが依然として維持される場合には警告が発せられる。)。
【0105】
状態CaからCcでは、第1性能パラメータである2段温度が目標値を満たすように運転パラメータが制御される。状態Caは、圧縮機モータ24の運転周波数増加の結果、状態BaまたはCbに遷移しうる。状態Cbは、圧縮機モータ24の運転周波数増加の結果、状態BcまたはCcに遷移しうる。状態Ccは、圧縮機モータ24の運転周波数増加の結果、状態Bcに遷移しうる(遷移しない場合、膨張機モータ42の運転周波数を変化させることで、状態Bcに遷移させてもよい。万が一、状態Ccが依然として維持される場合には警告が発せられる。)。
【0106】
第3の例は、運転モード7(第1性能パラメータが消費電力、第2性能パラメータが2段温度の場合)である。運転モード7に対応する制御アルゴリズム122の一例では、状状態Aaから状態Ccの9つの状態それぞれについて、運転パラメータが以下のように制御される。
状態Aa:運転パラメータを維持する。
状態Ab:運転パラメータを維持する。
状態Ac:膨張機モータ42の運転周波数を変化させる。
状態Ba:運転パラメータを維持する。
状態Bb:運転パラメータを維持する。
状態Bc:膨張機モータ42の運転周波数を変化させる。
状態Ca:圧縮機モータ24の運転周波数を低下させる。
状態Cb:圧縮機モータ24の運転周波数を低下させる。
状態Cc:圧縮機モータ24の運転周波数を低下させる。
【0107】
状態Aaから状態Bcの6つの状態では、第1性能パラメータである消費電力はその目標値を満たしている。そのうち、状態Aa、Ab、Ba、Bbでは第2性能パラメータである2段温度も目標値を満たしているから、運転パラメータを変更する必要が無く、維持される。なお、状態Aaでは、圧縮機モータ24の運転周波数を低下させることで更なる消費電力の低減を目指してもよい(この場合、状態Abに遷移しうる。)。
【0108】
状態Ac、Bcでは、第1性能パラメータである消費電力については目標値を満たしながら、第2性能パラメータである2段温度が目標値を満たすように運転パラメータが制御される。状態Acは、膨張機モータ42の運転周波数が増加(または低下)され、その結果として状態AbまたはBcに遷移することが期待される。こうした膨張機モータ42の運転周波数の最適化にもかかわらず、状態Acが維持される場合、圧縮機モータ24の運転周波数が増加され、状態AbまたはBcに遷移されてもよい。状態Bcは、膨張機モータ42の運転周波数が増加(または低下)され、その結果として状態AbまたはBbに遷移することが期待される(万が一、状態Bcが依然として維持される場合には警告が発せられる。)。
【0109】
状態CaからCcでは、第1性能パラメータである消費電力が目標値を満たすように運転パラメータが制御される。状態Caは、圧縮機モータ24の運転周波数低下の結果、状態BaまたはCbに遷移しうる。状態Cbは、圧縮機モータ24の運転周波数低下の結果、状態BbまたはBcに遷移しうる。状態Ccは、圧縮機モータ24の運転周波数低下の結果、状態Bcに遷移しうる。
【0110】
本書の冒頭で述べたように、既存の超伝導機器冷却装置は、その製造業者が定めた既定の運転条件で運転されることが多い。たとえば、冷却装置は、冷凍能力に十分な余力をもたせて運転されうる。この場合、想定されるさまざまな緊急事態やそのほか不測の事態がたとえ起こったとしても超伝導機器の安定的な運転を可能にすることができ有利である。その反面、超伝導機器のユーザーにとって、たとえば省エネルギーなど別の観点から、自身の判断で冷却装置の運転条件を調整する余地は少ないのが実情である。
【0111】
これに対して、実施形態に係る超伝導機器冷却装置によると、ユーザーが望ましいと考える運転状態を実現すべくユーザー自身が極低温冷凍機10の性能パラメータを選択することができる。極低温冷凍機10は、選択された性能パラメータが目標値を満たすように運転パラメータを制御し、それにより、ユーザーに望まれる運転状態を実現することができる。また、そうした望ましい運転状態が実現されない場合には、警告によりそれをユーザーに知らせることができる。したがって、超伝導機器冷却装置におけるユーザビリティを向上することができる。
【0112】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0113】
上述の実施の形態では、極低温冷凍機10の性能パラメータとして、1段温度、2段温度、消費電力が例示されているが、他の性能パラメータが使用されてもよい。例えば、超伝導磁石装置100が浸漬冷却式である場合、真空容器104内の液体冷媒槽(例えば液体ヘリウム槽)の圧力が性能パラメータとして用いられてもよい。液体冷媒槽の液体冷媒は第2冷却ステージ35で冷却されるので、液体冷媒槽の圧力は2段温度と相関する。よって、2段温度に代えて、液体冷媒槽の圧力を性能パラメータとして用いることもできる。
【0114】
上述の実施の形態では、極低温冷凍機10の運転パラメータとして、圧縮機モータ24および膨張機モータ42の運転周波数が例示されているが、他の運転パラメータが使用されてもよい。例えば、第1冷却ステージ33を加熱する第1ヒータ及び/または第2冷却ステージ35を加熱する第2ヒータが設けられている場合には、ヒータの出力が運転パラメータとして用いられてもよい。
【0115】
上述の実施の形態では、二段式のGM冷凍機を例として説明しているが、本発明はこれに限定されない。ある実施の形態においては、極低温冷凍機10は、単段式のGM冷凍機であってもよい。ある実施の形態においては、極低温冷凍機10は、例えば、ソルベイ冷凍機、スターリング冷凍機、パルス管冷凍機など、他の形式の極低温冷凍機であってもよい。
【0116】
上述の実施の形態では、極低温冷凍機10が超伝導磁石装置100を冷却する場合を例として説明しているが、本発明はこれに限定されない。ある実施の形態においては、極低温冷凍機10は、超伝導を利用した送電のための機器、超伝導を利用したセンサ機器など、他の超伝導機器のための極低温冷却を提供してもよい。
【0117】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0118】
10 極低温冷凍機、 12 圧縮機、 14 膨張機、 24 圧縮機モータ、 25 圧縮機インバータ、 42 膨張機モータ、 45 膨張機インバータ、 90 インバータ、 110 インターフェイス、 120 コントローラ、 122 制御アルゴリズム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6