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特開2023-183070レーザ加工方法、半導体デバイスの製造方法、及びレーザ加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183070
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】レーザ加工方法、半導体デバイスの製造方法、及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231220BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231220BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20231220BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
H01L21/78 B
B23K26/53
B23K26/067
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096476
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】河口 大祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦之
(72)【発明者】
【氏名】油井 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 知巳
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CB07
4E168CB15
4E168EA05
4E168JA12
4E168JA13
5F057AA03
5F057AA14
5F057BA01
5F057BA11
5F057BA30
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB12
5F057CA02
5F057CA14
5F057DA19
5F057DA22
5F057DA31
5F057FA13
5F057FA28
5F063AA01
5F063AA11
5F063AA37
5F063CC49
5F063DD25
(57)【要約】
【課題】加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物に対する影響の低減を図ることができるレーザ加工方法、半導体デバイスの製造方法、及びレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工方法は、加工対象物10の表面10aから内部にレーザ光を照射することにより、加工対象物10内の仮想面に沿って複数の改質スポットを形成する形成工程を備える。加工対象物10は、表面10aに垂直な方向から見た場合に、第1領域R1と第2領域R2とを有する。形成工程では、第1領域R1と第2領域R2との間の境界Bに沿って並ぶ複数の改質スポットからなる改質スポット列13を第2領域R2に複数形成し、複数の改質スポット列13は、複数の改質スポットの並び方向と交差する方向に沿って並んでおり、複数の改質スポット列13が形成されることにより、第2領域R2から第1領域R1に延びる亀裂が形成される。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物の内部において前記加工対象物の表面と向かい合う仮想面に沿って、前記加工対象物を切断するためのレーザ加工方法であって、
前記表面から前記加工対象物の内部にレーザ光を照射することにより、前記仮想面に沿って複数の改質スポットを形成する形成工程を備え、
前記加工対象物は、前記表面に垂直な方向から見た場合に、第1領域と第2領域とを有し、
前記形成工程では、前記第1領域と前記第2領域との間の境界に沿って並ぶ前記複数の改質スポットからなる改質スポット列を前記第2領域に複数形成し、前記複数の改質スポット列は、前記複数の改質スポットの並び方向と交差する方向に沿って並んでおり、前記複数の改質スポット列が形成されることにより、前記第2領域から前記第1領域に延びる亀裂が形成される、レーザ加工方法。
【請求項2】
前記形成工程では、前記第1領域の全体にわたって前記亀裂が形成されるように、前記第2領域に前記複数の改質スポット列を形成する、請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記複数の改質スポット列は、第1改質スポット列と、前記第1改質スポット列よりも前記第1領域の近くに配置された第2改質スポット列と、を含み、
前記形成工程では、前記第1改質スポット列を形成した後に、前記第2改質スポット列を形成する、請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記第2領域は、前記表面に垂直な方向から見た場合に、前記第1領域を囲む部分を有している、請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記形成工程では、前記レーザ光を分岐させて照射することにより、前記複数の改質スポット列に含まれる少なくとも2つの改質スポット列を同時に形成する、請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記第2領域は、複数の直線状部分を含む格子状部分を有し、
前記第1領域は、前記複数の直線状部分により囲まれた矩形状部分を複数有している、請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記複数の直線状部分に含まれる一の直線状部分を参照直線部分とし、
前記参照直線部分のうち、前記表面に垂直な方向から見た場合に、前記参照直線部分の延在方向に沿って延在する前記参照直線部分の中心線に対して一方側の領域を第1部分、前記中心線に対して他方側の領域を第2部分とすると、
前記形成工程では、前記複数の改質スポット列に含まれる少なくとも1つの改質スポット列を前記第1部分に形成すると共に、前記複数の改質スポット列に含まれる少なくとも1つの改質スポット列を前記第2部分に形成する、請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記第1部分に形成される前記少なくとも1つの改質スポット列は、複数の第1改質スポット列を含み、前記第2部分に形成される前記少なくとも1つの改質スポット列は、複数の第2改質スポット列を含み、
前記形成工程では、前記中心線に近い順に前記複数の第1改質スポット列を前記第1部分に形成すると共に、前記中心線に近い順に前記複数の第2改質スポット列を前記第2部分に形成する、請求項7に記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記加工対象物の材料は、窒化ガリウム、炭化ケイ素、サファイア、シリコン、ヒ化ガリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム又は雲母を含む、請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記加工対象物は、チップ形状、ウェハ形状又はインゴット形状を有する、請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
前記加工対象物は、半導体材料により形成されている、請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項12】
前記第1領域は、デバイス部を形成するための領域であり、前記第2領域は、デバイス部が形成されない領域である、請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項13】
前記形成工程では、前記第1領域にデバイス部が形成されている状態において、前記第2領域に前記複数の改質スポット列を形成する、請求項12に記載のレーザ加工方法。
【請求項14】
前記形成工程では、前記第1領域にデバイス部が形成されていない状態において、前記第2領域に前記複数の改質スポット列を形成する、請求項12に記載のレーザ加工方法。
【請求項15】
前記形成工程の後に、前記仮想面を境界として前記加工対象物を分離させる工程を更に備える、請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項16】
請求項1又は2に記載のレーザ加工方法を用いた半導体デバイスの製造方法であって、
前記加工対象物は、半導体材料により形成されており、
前記半導体デバイスの製造方法は、
前記形成工程と、
前記第1領域にデバイス部を形成する工程と、を備える、半導体デバイスの製造方法。
【請求項17】
加工対象物の内部において前記加工対象物の表面と向かい合う仮想面に沿って、前記加工対象物を切断するためのレーザ加工装置であって、
前記加工対象物を支持するステージと、
前記表面から前記加工対象物の内部にレーザ光を照射することにより、前記仮想面に沿って複数の改質スポットを形成するレーザ照射ユニットと、を備え、
前記加工対象物は、前記表面に垂直な方向から見た場合に、第1領域と第2領域とを有し、
前記レーザ照射ユニットは、前記第1領域と前記第2領域との間の境界に沿って並ぶ前記複数の改質スポットからなる改質スポット列を前記第2領域に複数形成し、前記複数の改質スポット列は、前記複数の改質スポットの並び方向と交差する方向に沿って並んでおり、前記複数の改質スポット列が形成されることにより、前記第2領域から前記第1領域に延びる亀裂が形成される、レーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法、半導体デバイスの製造方法、及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の加工対象物にレーザ光を照射することにより加工対象物の内部に改質領域を形成し、改質領域を境界として分離させることにより加工対象物から半導体基板等の半導体部材を切り出す加工方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-183600号公報
【特許文献2】特開2017-057103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような加工方法においては、加工時間が短いことが好ましく、また、切断面が平坦であることが好ましい。また、レーザ照射の加工対象物に対する影響が小さいことが好ましい。
【0005】
そこで、本発明は、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物に対する影響の低減を図ることができるレーザ加工方法、半導体デバイスの製造方法、及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ加工方法は、[1]「加工対象物の内部において前記加工対象物の表面と向かい合う仮想面に沿って、前記加工対象物を切断するためのレーザ加工方法であって、前記表面から前記加工対象物の内部にレーザ光を照射することにより、前記仮想面に沿って複数の改質スポットを形成する形成工程を備え、前記加工対象物は、前記表面に垂直な方向から見た場合に、第1領域と第2領域とを有し、前記形成工程では、前記第1領域と前記第2領域との間の境界に沿って並ぶ前記複数の改質スポットからなる改質スポット列を前記第2領域に複数形成し、前記複数の改質スポット列は、前記複数の改質スポットの並び方向と交差する方向に沿って並んでおり、前記複数の改質スポット列が形成されることにより、前記第2領域から前記第1領域に延びる亀裂が形成される、レーザ加工方法」である。
【0007】
このレーザ加工方法では、複数の改質スポット列を第2領域に形成することにより、第2領域から第1領域に延びる亀裂が形成される。このように第2領域から第1領域へ伸展させて亀裂を形成することで、例えば第1領域に改質スポットを形成することにより第1領域に亀裂を形成する場合と比べて、加工時間を短縮することができると共に、切断面の平坦度を向上することができる。また、このレーザ加工方法では、第2領域に複数の改質スポット列を形成することにより、第2領域から第1領域に延びる亀裂を形成する。これにより、第1領域に対してレーザ照射が与える影響を低減することができる。その結果、例えば、第1領域にデバイス部が形成される場合に、デバイス部に対してレーザ照射が与える影響を低減することができる。よって、このレーザ加工方法によれば、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物に対する影響の低減を図ることができる。なお、第1領域と第2領域との間の境界に沿って並ぶ複数の改質スポットからなる改質スポット列を、複数の改質スポットの並び方向と交差する方向に沿って並ぶように第2領域に形成することにより、第2領域から第1領域に延びる亀裂を形成することができるとの知見は、本発明者らが見出した知見である。
【0008】
本発明のレーザ加工方法は、[2]「前記形成工程では、前記第1領域の全体にわたって前記亀裂が形成されるように、前記第2領域に前記複数の改質スポット列を形成する、[1]に記載のレーザ加工方法」であってもよい。この場合、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。
【0009】
本発明のレーザ加工方法は、[3]「前記複数の改質スポット列は、第1改質スポット列と、前記第1改質スポット列よりも前記第1領域の近くに配置された第2改質スポット列と、を含み、前記形成工程では、前記第1改質スポット列を形成した後に、前記第2改質スポット列を形成する、[1]又は[2]に記載のレーザ加工方法」であってもよい。この場合、第2領域から第1領域へ亀裂が伸展しやすく、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。なお、第1領域から遠い順に複数の改質スポット列を形成すると第2領域から第1領域へ亀裂が伸展しやすいとの知見は、本発明者らが見出した知見である。
【0010】
本発明のレーザ加工方法は、[4]「前記第2領域は、前記表面に垂直な方向から見た場合に、前記第1領域を囲む部分を有している、[1]~[3]のいずれかに記載のレーザ加工方法」であってもよい。この場合、第2領域から第1領域へ亀裂を好適に伸展させることができ、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。
【0011】
本発明のレーザ加工方法は、[5]「前記形成工程では、前記レーザ光を分岐させて照射することにより、前記複数の改質スポット列に含まれる少なくとも2つの改質スポット列を同時に形成する、[1]~[4]のいずれかに記載のレーザ加工方法」であってもよい。この場合、第2領域から第1領域へ亀裂が伸展しやすく、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。なお、レーザ光を分岐させて照射して少なくとも2つの改質スポット列を同時に形成すると第2領域から第1領域へ亀裂が伸展しやすいとの知見は、本発明者らが見出した知見である。
【0012】
本発明のレーザ加工方法は、[6]「前記第2領域は、複数の直線状部分を含む格子状部分を有し、前記第1領域は、前記複数の直線状部分により囲まれた矩形状部分を複数有している、[1]~[5]のいずれかに記載のレーザ加工方法。」であってもよい。この場合、第2領域から第1領域へ亀裂が伸展しやすく、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。また、例えば、半導体ウェハを個片化するための格子状の切断領域を第2領域として利用することができる。
【0013】
本発明のレーザ加工方法は、[7]「前記複数の直線状部分に含まれる一の直線状部分を参照直線部分とし、前記参照直線部分のうち、前記表面に垂直な方向から見た場合に、前記参照直線部分の延在方向に沿って延在する前記参照直線部分の中心線に対して一方側の領域を第1部分、前記中心線に対して他方側の領域を第2部分とすると、前記形成工程では、前記複数の改質スポット列に含まれる少なくとも1つの改質スポット列を前記第1部分に形成すると共に、前記複数の改質スポット列に含まれる少なくとも1つの改質スポット列を前記第2部分に形成する、[6]に記載のレーザ加工方法」であってもよい。この場合、第2領域から第1領域へ亀裂が伸展しやすく、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。
【0014】
本発明のレーザ加工方法は、[8]「前記第1部分に形成される前記少なくとも1つの改質スポット列は、複数の第1改質スポット列を含み、前記第2部分に形成される前記少なくとも1つの改質スポット列は、複数の第2改質スポット列を含み、前記形成工程では、前記中心線に近い順に前記複数の第1改質スポット列を前記第1部分に形成すると共に、前記中心線に近い順に前記複数の第2改質スポット列を前記第2部分に形成する、[7]に記載のレーザ加工方法」であってもよい。この場合、第2領域から第1領域へ亀裂が伸展しやすく、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。
【0015】
本発明のレーザ加工方法は、[9]「前記加工対象物の材料は、窒化ガリウム、炭化ケイ素、サファイア、シリコン、ヒ化ガリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム又は雲母を含む、[1]~[8]のいずれかに記載のレーザ加工方法。」であってもよい。この場合にも、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物に対する影響の低減を図ることができる。
【0016】
本発明のレーザ加工方法は、[10]「前記加工対象物は、チップ形状、ウェハ形状又はインゴット形状を有する、[1]~[9]のいずれかに記載のレーザ加工方法」であってもよい。この場合にも、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物に対する影響の低減を図ることができる。
【0017】
本発明のレーザ加工方法は、[11]「前記加工対象物は、半導体材料により形成されている、[1]~[10]のいずれかに記載のレーザ加工方法」であってもよい。この場合、半導体材料により形成された半導体対象物を加工対象物として好適に切断することができる。
【0018】
本発明のレーザ加工方法は、[12]「前記第1領域は、デバイス部を形成するための領域であり、前記第2領域は、デバイス部が形成されない領域である、[1]~[11]のいずれかに記載のレーザ加工方法」であってもよい。この場合、デバイス部に対してレーザ照射が与える影響を低減することができる。
【0019】
本発明のレーザ加工方法は、[13]「前記形成工程では、前記第1領域にデバイス部が形成されている状態において、前記第2領域に前記複数の改質スポット列を形成する、[12]に記載のレーザ加工方法」であってもよい。この場合、第1領域に形成されたデバイス部に対してレーザ照射が与える影響を低減することができる。
【0020】
本発明のレーザ加工方法は、[14]「前記形成工程では、前記第1領域にデバイス部が形成されていない状態において、前記第2領域に前記複数の改質スポット列を形成する、[12]に記載のレーザ加工方法」であってもよい。この場合、デバイス部を形成する前の第1領域に対してレーザ照射が与える影響を低減することができ、その結果、第1領域に形成されるデバイス部に対してレーザ照射が与える影響を低減することができる。
【0021】
本発明のレーザ加工方法は、[15]「前記形成工程の後に、前記仮想面を境界として前記加工対象物を分離させる工程を更に備える、[1]~[14]のいずれかに記載のレーザ加工方法」であってもよい。この場合、加工対象物を好適に分離させることができる。
【0022】
本発明の半導体デバイスの製造方法は、[16]「[1]~[15]のいずれかに記載のレーザ加工方法を用いた半導体デバイスの製造方法であって、前記加工対象物は、半導体材料により形成されており、前記半導体デバイスの製造方法は、前記形成工程と、前記第1領域にデバイス部を形成する工程と、を備える、半導体デバイスの製造方法」である。この半導体デバイスの製造方法によれば、上述した理由により、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物に対する影響の低減を図ることができる。
【0023】
本発明のレーザ加工装置は、[17]「加工対象物の内部において前記加工対象物の表面と向かい合う仮想面に沿って、前記加工対象物を切断するためのレーザ加工装置であって、前記加工対象物を支持するステージと、前記表面から前記加工対象物の内部にレーザ光を照射することにより、前記仮想面に沿って複数の改質スポットを形成するレーザ照射ユニットと、を備え、前記加工対象物は、前記表面に垂直な方向から見た場合に、第1領域と第2領域とを有し、前記レーザ照射ユニットは、前記第1領域と前記第2領域との間の境界に沿って並ぶ前記複数の改質スポットからなる改質スポット列を前記第2領域に複数形成し、前記複数の改質スポット列は、前記複数の改質スポットの並び方向と交差する方向に沿って並んでおり、前記複数の改質スポット列が形成されることにより、前記第2領域から前記第1領域に延びる亀裂が形成される、レーザ加工装置」である。このレーザ加工装置によれば、上述した理由により、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物に対する影響の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物に対する影響の低減を図ることができるレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係るレーザ加工装置の構成図である。
図2】実施形態に係るレーザ加工方法における加工対象物の平面図である。
図3】加工対象物の断面図である。
図4】(a)は、改質スポット形成工程の一例を説明するための図であり、(b)は、改質スポット形成工程の別の例を説明するための図である。
図5】加工対象物を実際に加工した結果の例を示す図である。
図6】第1変形例に係るレーザ加工方法の加工対象物の平面図である。
図7】(a)は、第1変形例に係る改質スポット形成工程の一例を説明するための図であり、(b)は、第1変形例に係る改質スポット形成工程の別の例を説明するための図である。
図8】第2変形例に係るレーザ加工方法の加工対象物の斜視図である。
図9図8の加工対象物の断面図である。
図10図8の加工対象物の底面図である。
図11】(a)は、第3変形例に係る改質スポット形成工程の第1例を説明するための図であり、(b)は、第3変形例に係る改質スポット形成工程の第2例を説明するための図である。
図12】第4変形例に係るレーザ加工方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[レーザ加工装置の構成]
【0027】
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、ステージ2と、光源3と、空間光変調器4と、集光レンズ5と、制御部6と、を備えている。レーザ加工装置1は、加工対象物10にレーザ光Lを照射することにより、加工対象物10に改質領域11を形成する装置である。以下、第1水平方向をX方向といい、第1水平方向に垂直な第2水平方向をY方向という。また、鉛直方向をZ方向という。
【0028】
ステージ2は、例えば、加工対象物10に貼り付けられたフィルムを吸着することにより、加工対象物10を支持する。この例では、ステージ2は、X方向及びY方向の各々に沿って移動可能である。また、ステージ2は、Z方向に平行な軸線を中心線として回転可能である。
【0029】
光源3は、例えばパルス発振方式によって、加工対象物10に対して透過性を有するレーザ光Lを出力する。空間光変調器4は、光源3から出力されたレーザ光Lを変調する。空間光変調器4は、例えば反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。集光レンズ5は、空間光変調器4によって変調されたレーザ光Lを集光する。この例では、空間光変調器4及び集光レンズ5は、レーザ照射ユニットとして、Z方向に沿って移動可能である。
【0030】
ステージ2に支持された加工対象物10の内部にレーザ光Lが集光されると、レーザ光Lの集光点Cに対応する部分においてレーザ光Lが特に吸収され、加工対象物10の内部に改質領域11が形成される。改質領域11は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域11としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。
【0031】
一例として、ステージ2をX方向に沿って移動させ、加工対象物10に対して集光点CをX方向に沿って相対的に移動させると、複数の改質スポット12がX方向に沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポット12は、1パルスのレーザ光Lの照射によって形成される。1列の改質領域11は、1列に並んだ複数の改質スポット12の集合である。隣り合う改質スポット12は、加工対象物10に対する集光点Cの相対的な移動速度及びレーザ光Lの繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
【0032】
制御部6は、ステージ2、光源3、空間光変調器4及び集光レンズ5を制御する。制御部6は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部6では、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。これにより、制御部6は各種機能を実現する。
[レーザ加工方法及び半導体デバイスの製造方法]
【0033】
図2は、実施形態に係るレーザ加工方法及び半導体デバイスの製造方法における加工対象物10の平面図であり、図3は、加工対象物10の断面図である。このレーザ加工方法では、加工対象物10の内部において加工対象物10の表面10aと向かい合う仮想面Sに沿って、加工対象物10が切断(スライス/剥離)される。この例では、加工対象物10は、半導体材料により形成された半導体対象物である。加工対象物10はチップ形状を有しており、加工後に1つの半導体デバイス(半導体チップ)を構成する。この例では、加工対象物10は、矩形板状に形成されている。加工対象物10を構成する半導体材料としては、例えば、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)、サファイア、シリコン(Si)、ヒ化ガリウム(GaAs)等が挙げられる。
【0034】
実施形態に係るレーザ加工方法は、加工対象物10の表面10aから加工対象物10の内部にレーザ光Lを照射することにより、仮想面Sに沿って複数の改質スポット12を形成する改質スポット形成工程を備えている。改質スポット形成工程は、レーザ加工装置1により実施される。この例では、仮想面Sは、加工対象物10の内部において表面10aと向かい合う矩形状の面であり、表面10aと平行に、加工対象物10の側面10cに至るように延在している。加工対象物10は、表面10aと、表面10aとは反対側の表面10bと、を有している。表面10aは、レーザ加工装置1から出力されたレーザ光Lが入射する表面である。
【0035】
加工対象物10は、平面視において(表面10a,10bに垂直な方向(加工対象物10の厚さ方向)から見た場合に)、第1領域R1と、第2領域R2と、を有している。この例では、第1領域R1は矩形状であり、第2領域R2は、第1領域R1を囲む矩形リング状である。第2領域R2は、加工対象物10の外縁に沿って延在しており、加工対象物10の周縁部を構成している。
【0036】
第1領域R1は、デバイス部20を形成するために用いられる有効領域である。一方、第2領域R2は、デバイス部20が形成されない非有効領域である。デバイス部20は、例えば、第1領域R1における加工対象物10の表面10bに形成される。デバイス部20は、例えば任意の機能を奏するための素子部であり、例えば発光素子、受光素子、回路素子等である。第1領域R1には、複数のデバイス部20が形成されていてもよい。デバイス部20は、改質スポット形成工程の前に形成されてもよいし、改質スポット形成工程の後に形成されてもよい。すなわち、第1領域R1にデバイス部20を形成するデバイス形成工程は、改質スポット形成工程の前に実施されてもよいし、改質スポット形成工程の後に実施されてもよい。以下では、前者の場合を例に挙げて説明する。この場合、改質スポット形成工程では、第1領域R1にデバイス部20が形成されている状態において、加工対象物10に改質スポット12が形成される。
【0037】
図4(a)に示されるように、改質スポット形成工程では、複数(この例では3列)の改質スポット列13が第2領域R2に形成される。各改質スポット列13は、第1領域R1と第2領域R2との間の境界Bに沿って並ぶ複数の改質スポット12からなる。図4(a)には、各改質スポット列13を構成する複数の改質スポット12の配置及び形成順序が矢印で示されている。この点は後述する図4(b)、図7及び図11についても同様である。複数の改質スポット列13は、複数の改質スポット12の並び方向と交差する方向(この例では当該並び方向と垂直な方向)に沿って並んでいる。すなわち、この例では、境界Bは矩形状であり、第1辺B1、第2辺B2、第3辺B3及び第4辺B4を有している。第1辺B1は第3辺B3と平行であり、第2辺B2は第4辺B4と平行である。各改質スポット列13は、第1辺B1~第4辺B4の各々に沿って並ぶ複数の改質スポット12により構成されている。各改質スポット列13を構成する複数の改質スポット12は、平面視において矩形状に並んでいる。第1辺B1に沿う部分において、複数の改質スポット列13は、複数の改質スポット12の並び方向(第1辺B1に平行な方向)と垂直な方向(第1辺B1に垂直な方向)に沿って並んでいる。第2辺B2~第4辺B4に沿う部分においても同様である。
【0038】
図4(a)の例では、複数の改質スポット列13は、第1改質スポット列13A、第2改質スポット列13B及び第3改質スポット列13Cを含んでいる。第3改質スポット列13C、第2改質スポット列13B及び第1改質スポット列13Aは、この順に第1領域R1(境界B)の近くに配置されている。改質スポット形成工程では、第1領域R1から遠い順に複数の改質スポット列13が形成される。この例では、複数の改質スポット列13は、第1改質スポット列13A、第2改質スポット列13B、第3改質スポット列13Cの順に形成される。
【0039】
改質スポット形成工程では、複数の改質スポット列13が第2領域R2に形成されることにより、第2領域R2から第1領域R1に延びる亀裂が形成される。より具体的には、第2領域R2に形成された改質スポット12から延びる亀裂(クラック)が第1領域R1の側に向けて(加工対象物10の中心側に向けて)伸展することにより、第2領域R2から第1領域R1に延びる亀裂が形成される。図2及び図3には、亀裂が伸展する方向が矢印で示されている。この点は後述する図6についても同様である。この例では、複数の改質スポット列13が第2領域R2に形成されることにより、第1領域R1の全体にわたって亀裂が形成される。
【0040】
改質スポット形成工程では、図4(b)に示されるように複数の改質スポット列13が第2領域R2に形成されてもよい。この例では、複数の改質スポット12が、平面視において略渦巻き状(螺旋状)に一繋がりに並ぶように配置されている。この場合においても、複数の改質スポット12の並び方向と垂直な方向に沿って並ぶ複数の改質スポット列13が形成されているとみなすことができる。すなわち、複数の改質スポット列13は、図4(a)の例と同様に、第1改質スポット列13A、第2改質スポット列13B及び第3改質スポット列13Cを含むとみなすことができる。
【0041】
図5は、加工対象物10を実際に加工した結果の例を示す図である。図5には、表面10a側から見た加工対象物10が示されている。この例では、加工対象物10として、酸化マグネシウム(MgO)により矩形板状に形成された部材を用いた。加工対象物10の表面10aの面方位は<100>であり、表面10aの一辺の長さは5mmであり、加工対象物10の厚さは500μmであった。第2領域R2として、幅1mmの領域を設定した。したがって、第1領域R1は、一辺が3mmの正方形状の領域である。第2領域R2に、図4(a)の例と同様に、3列の改質スポット列13を形成した。図5中の矢印は、複数の改質スポット列13が形成される順序を示している。この例では、図4(a)と同様に、第1領域R1から遠い順に複数の改質スポット列13を形成した。加工後の加工対象物10においては、第2領域R2から第1領域R1に延びる亀裂が形成されていた。当該亀裂は、第1領域R1の全体にわたって形成されていた。第2領域R2の4つの辺部に形成された改質スポット12から延びる亀裂が第1領域R1の中央部において繋がることで、第2領域R2の内側に、亀裂が繋がった閉領域(閉空間)が形成されていた。
【0042】
実施形態に係るレーザ加工方法は、改質スポット形成工程の後に、仮想面Sを境界として加工対象物10を分離させる分離工程を更に備えている。分離工程では、例えば、加工対象物10の表面10a,10bに両面テープを貼り付け、表面10a,10bが互いに離れるように加工対象物10に力を作用させることにより、仮想面Sを境界として加工対象物10を2つの部分に分離させる。分離された2つの部分のうち、表面10bを含んでデバイス部20が形成された部分が、半導体デバイスを構成する。以上の工程により、第1領域R1にデバイス部20が形成された半導体デバイスが得られる。なお、分離工程は上記の態様に限定されず、例えば、表面10a,10bに両面テープを貼り付けることなく、加工対象物10に何らかの力を作用させることにより、加工対象物10を分離させてもよい。
[作用及び効果]
【0043】
実施形態に係るレーザ加工方法では、複数の改質スポット列13を第2領域R2に形成することにより、第2領域R2から第1領域R1に延びる亀裂が形成される。このように第2領域R2から第1領域R1へ伸展(伝播)させて亀裂を形成することで(すなわち、加工対象物10の劈開性を利用して亀裂を伸展させることで)、例えば第1領域R1に改質スポット12を形成することにより第1領域R1に亀裂を形成する場合と比べて、加工時間を短縮することができると共に、切断面の平坦度を向上することができる。すなわち、第1領域R1に改質スポット12を形成することにより第1領域R1に亀裂を形成する場合、切断面上にレーザ加工痕(改質スポット12)が残存することにより切断面に凹凸が発生し得るのに対し、実施形態に係るレーザ加工方法では、第2領域R2から第1領域R1へ伸展させて亀裂を形成するため、そのような凹凸の発生を抑制して切断面の平坦度を向上することができる。また、実施形態に係るレーザ加工方法では、第2領域R2に複数の改質スポット列13を形成することにより、第2領域R2から第1領域R1に延びる亀裂を形成する。これにより、第1領域R1に対してレーザ照射が与える影響を低減することができ、その結果、第1領域R1に形成されるデバイス部20に対してレーザ照射が与える影響を低減することができる。例えば、第1領域R1にデバイス部20が形成されている状態において第1領域R1にレーザ光Lを照射して改質スポット12を形成すると、加工対象物10を透過したレーザ光Lがデバイス部20に入射することでデバイス部20に好ましくない影響が生じる可能性がある。或いは、第1領域R1にデバイス部20が形成される前の状態において第1領域R1にレーザ光Lを照射して改質スポット12を形成し、改質スポット12の形成後に第1領域R1にデバイス部20を形成する場合にも、レーザ照射によりダメージを受けた第1領域R1にデバイス部20を形成することになるため、デバイス部20に好ましくない影響が生じる可能性がある。これに対し、実施形態に係るレーザ加工方法では、第2領域R2に複数の改質スポット列13を形成することにより、第2領域R2から第1領域R1に延びる亀裂を形成するため、上記のような事態の発生を抑制することができ、第1領域R1に形成されるデバイス部20に対してレーザ照射が与える影響を低減することができる。よって、実施形態に係るレーザ加工方法によれば、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物10に対する影響の低減を図ることができる。なお、第1領域R1と第2領域R2との間の境界Bに沿って並ぶ複数の改質スポット12からなる改質スポット列13を、複数の改質スポット12の並び方向と交差する方向に沿って並ぶように第2領域R2に形成することにより、第2領域R2から第1領域R1に延びる亀裂を形成することができるとの知見は、本発明者らが見出した知見である。
【0044】
改質スポット形成工程では、第1領域R1の全体にわたって亀裂が形成されるように、第2領域R2に複数の改質スポット列13が形成される。これにより、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。
【0045】
改質スポット形成工程では、第1改質スポット列13Aを形成した後に、第1改質スポット列13Aよりも第1領域R1の近くに配置された第2改質スポット列13Bが形成される。これにより、第2領域R2から第1領域R1へ亀裂が伸展しやすく、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。なお、第1領域R1から遠い順に複数の改質スポット列13を形成すると第2領域R2から第1領域R1へ亀裂が伸展しやすいとの知見は、本発明者らが見出した知見である。
【0046】
第2領域R2が、平面視において第1領域R1を囲んでいる。これにより、第2領域R2から第1領域R1へ亀裂を好適に伸展させることができ、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。
【0047】
加工対象物10の材料が、窒化ガリウム、炭化ケイ素、サファイア、シリコン又はヒ化ガリウムを含んでいる。実施形態に係るレーザ加工方法では、このような場合にも、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物10に対する影響の低減を図ることができる。
【0048】
加工対象物10が、チップ形状を有している。実施形態に係るレーザ加工方法では、このような場合にも、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物10に対する影響の低減を図ることができる。
【0049】
加工対象物10が、半導体材料により形成されている。実施形態に係るレーザ加工方法では、半導体材料により形成された半導体対象物を加工対象物10として好適に切断することができる。
【0050】
第1領域R1が、デバイス部20を形成するための領域であり、第2領域R2が、デバイス部20が形成されない領域である。実施形態に係るレーザ加工方法では、デバイス部20に対してレーザ照射が与える影響を低減することができる。
【0051】
改質スポット形成工程では、第1領域R1にデバイス部20が形成されている状態において、第2領域R2に複数の改質スポット列13が形成される。この場合、第1領域R1に形成されたデバイス部20に対してレーザ照射が与える影響を低減することができる。
【0052】
改質スポット形成工程の後に、仮想面Sを境界として加工対象物10を分離させる分離工程が実施される。これにより、加工対象物10を好適に分離させることができる。
[変形例]
【0053】
図6及び図7に示される第1変形例のように、加工対象物10は、平面視において円形状に形成されていてもよい。この場合、仮想面Sは、加工対象物10の内部において表面10aと向かい合う円形状の面である。この例では、第1領域R1は円形状であり、第2領域R2は、第1領域R1を囲む円形リング状(円環状)である。第1領域R1と第2領域R2との間の境界Bは円形状である。
【0054】
図7(a)に示されるように、改質スポット形成工程では、複数(この例では3列)の改質スポット列13が第2領域R2に形成される。複数の改質スポット列13は、複数の改質スポット12の並び方向と交差する方向(この例では径方向)に沿って並んでおり、同心円状に配置されている。複数の改質スポット列13は、第1改質スポット列13A、第2改質スポット列13B及び第3改質スポット列13Cを含んでいる。第3改質スポット列13C、第2改質スポット列13B及び第1改質スポット列13Aは、この順に第1領域R1(境界B)の近くに配置されている。改質スポット形成工程では、第1領域R1から遠い順に複数の改質スポット列13が形成される。この例では、複数の改質スポット列13は、第1改質スポット列13A、第2改質スポット列13B、第3改質スポット列13Cの順に形成される。第1変形例の改質スポット形成工程においても、複数の改質スポット列13が第2領域R2に形成されることにより、第2領域R2から第1領域R1に延びる亀裂が、第1領域R1の全体にわたって形成される。
【0055】
第1変形例の改質スポット形成工程では、図7(b)に示されるように複数の改質スポット列13が第2領域R2に形成されてもよい。この例では、複数の改質スポット12が、平面視において渦巻き状に一繋がりに並ぶように配置されている。この場合においても、複数の改質スポット12の並び方向と垂直な方向に沿って並ぶ複数の改質スポット列13が形成されているとみなすことができる。すなわち、複数の改質スポット列13は、図7(a)の例と同様に、第1改質スポット列13A、第2改質スポット列13B及び第3改質スポット列13Cを含むとみなすことができる。
【0056】
このような第1変形例によっても、上記実施形態と同様に、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物10に対する影響の低減を図ることができる。
【0057】
図8図9及び図10に示される第2変形例のように、加工対象物10は、ウェハ形状を有していてもよい。第2変形例の加工対象物10は、例えば、半導体材料により円板状に形成された半導体ウェハである。加工対象物10を後述する直線状部分33において切断して個片化することにより、複数の半導体デバイス(半導体チップ)が得られる。
【0058】
第2変形例の第2領域R2は、加工対象物10の周縁部を構成する円形リング状の周縁部31と、格子状の格子状部分32と、を有している。格子状部分32は、複数の直線状部分33を含んでいる。複数の直線状部分33の幾つかは、一の方向に沿って並んでおり、複数の直線状部分33の残りは、当該一の方向と垂直な方向に沿って並んでいる。格子状部分32は、加工対象物10を切断するための切断領域(ダイシングストリート)である。第1領域R1は、複数の直線状部分33により囲まれた複数の矩形状部分41を有している。各矩形状部分41には、デバイス部20が形成されている。
【0059】
各直線状部分33(参照直線部分)について、平面視において当該直線状部分33の中心線CLに対して一方側の領域を第1部分P1とし、中心線CLに対して他方側の領域を第2部分P2とする。中心線CLは、平面視において直線状部分33の幅方向の中心を通り且つ直線状部分33の延在方向に沿って延在する直線である。
【0060】
改質スポット形成工程では、周縁部31に複数の改質スポット列13を形成する。周縁部31に複数の改質スポット列13を形成する態様は、例えば、第1変形例において第2領域R2に複数の改質スポット列13を形成する態様と同様である。また、第1部分P1に複数(この例では2列)の第1改質スポット列13Dを形成すると共に、第2部分P2に複数(この例では2列)の第2改質スポット列13Eを形成する。より具体的には、中心線CLに近い順に(すなわち第1領域R1から遠い順に)複数の第1改質スポット列13Dを形成すると共に、中心線CLに近い順に複数の第2改質スポット列13Eを形成する。第2変形例の改質スポット形成工程においても、複数の改質スポット列13が第2領域R2に形成されることにより、第2領域R2から第1領域R1に延びる亀裂が、第1領域R1(矩形状部分41)の全体にわたって形成される。
【0061】
このような第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物10に対する影響の低減を図ることができる。
【0062】
また、第2変形例では、第2領域R2が、複数の直線状部分33を含む格子状部分32を有し、第1領域R1が、複数の直線状部分33により囲まれた複数の矩形状部分41を有している。この場合、第2領域R2から第1領域R1へ亀裂が伸展しやすく、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。また、例えば、半導体ウェハを個片化するための格子状の切断領域を第2領域R2として利用することができる。
【0063】
第2変形例の改質スポット形成工程では、第1改質スポット列13Dが第1部分P1に形成されると共に、第2改質スポット列13Eが第2部分P2に形成される。これにより、第2領域R2から第1領域R1へ亀裂が伸展しやすく、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。
【0064】
第2変形例の改質スポット形成工程では、中心線CLに近い順に複数の第1改質スポット列13Dが第1部分P1に形成されると共に、中心線CLに近い順に複数の第2改質スポット列13Eが第2部分P2に形成される。これにより、第2領域R2から第1領域R1へ亀裂が伸展しやすく、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。
【0065】
図11に示される第3変形例のように、第1領域R1及び第2領域R2が設定されてもよい。第3変形例では、第2領域R2は矩形状であり、第1領域R1は、第2領域R2を囲む矩形リング状である。第1領域R1は、加工対象物10の外縁に沿って延在しており、加工対象物10の周縁部を構成している。第1領域R1には、デバイス部20が形成されてもよいし、デバイス部20が形成されなくてもよい。
【0066】
図11(a)に示されるように、改質スポット形成工程では、複数(この例では3列)の改質スポット列13が第2領域R2に形成される。複数の改質スポット列13は、第1改質スポット列13A、第2改質スポット列13B及び第3改質スポット列13Cを含んでいる。第3改質スポット列13C、第2改質スポット列13B及び第1改質スポット列13Aは、この順に第1領域R1(境界B)の近くに配置されている。改質スポット形成工程では、第1領域R1から遠い順に複数の改質スポット列13が形成される。この例では、複数の改質スポット列13は、第1改質スポット列13A、第2改質スポット列13B、第3改質スポット列13Cの順に形成される。第3変形例の改質スポット形成工程においても、複数の改質スポット列13が第2領域R2に形成されることにより、第2領域R2から第1領域R1に延びる亀裂が、第1領域R1の全体にわたって形成される。第3変形例では、第2領域R2に形成された改質スポット12から延びる亀裂が第1領域R1の側に向けて(加工対象物10の外縁側に向けて)伸展することにより、第2領域R2から第1領域R1に延びる亀裂が形成される。
【0067】
第3変形例の改質スポット形成工程では、図11(b)に示されるように複数の改質スポット列13が第2領域R2に形成されてもよい。この例では、複数の改質スポット12が、平面視において略渦巻き状に一繋がりに並ぶように配置されている。この場合においても、複数の改質スポット12の並び方向と垂直な方向に沿って並ぶ複数の改質スポット列13が形成されているとみなすことができる。すなわち、複数の改質スポット列13は、図11(a)の例と同様に、第1改質スポット列13A、第2改質スポット列13B及び第3改質スポット列13Cを含むとみなすことができる。
【0068】
このような第3変形例によっても、上記実施形態と同様に、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物10に対する影響の低減を図ることができる。
【0069】
第4変形例として、改質スポット形成工程では、レーザ光Lを分岐させて照射することにより、複数の改質スポット列13を同時に形成してもよい。この場合、例えば、光源3によりパルス発振されたレーザ光Lが、Y方向に並ぶ複数(例えば6つ)の集光点Cに集光されるように、空間光変調器4によって変調される。そして、複数の集光点Cが、X方向に沿って仮想面S上を相対的に移動させられる。これにより、X方向に沿って並ぶ複数の改質スポット12からなる複数の改質スポット列13が、Y方向に等間隔で並ぶように、同時に形成される。
【0070】
図12は、レーザ光Lを6点分岐させて照射することにより6列の改質スポット列13を同時に形成した結果を示す図である。この例では、加工対象物として酸化マグネシウム(MgO)からなる部材を用いた。図12には、表面から見た加工対象物が示されている。図12では、6列の改質スポット列13が、図中上下方向に並ぶように形成されている。加工後の加工対象物においては、6列の改質スポット列13が形成された領域(第2領域R2)から、当該領域に隣接する一対の領域A(第1領域R1)の各々に延びる亀裂が形成されていた。また、加工対象物の表面には亀裂が形成されておらず、加工対象物の内部のみに亀裂が形成されていた。
【0071】
このような第4変形例によっても、上記実施形態と同様に、加工時間の短縮、切断面の平坦度の向上、及びレーザ照射の加工対象物10に対する影響の低減を図ることができる。また、第4変形例の改質スポット形成工程では、レーザ光Lを分岐させて照射することにより、複数の改質スポット列13が同時に形成される。この場合、第2領域R2から第1領域R1へ亀裂が伸展しやすく、加工時間を一層短縮することができると共に、切断面の平坦度を一層向上することができる。なお、レーザ光Lを分岐させて照射して複数の改質スポット列13を同時に形成すると第2領域R2から第1領域R1へ亀裂が伸展しやすいとの知見は、本発明者らが見出した知見である。第4変形例では、レーザ光Lを分岐させて照射することにより、少なくとも2つの改質スポット列13が同時に形成されればよく、例えばレーザ光Lを2点分岐させて照射することにより2列の改質スポット列13が同時に形成されてもよい。
【0072】
本発明は、上記実施形態及び変形例に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。加工対象物10の材料は、酸化マグネシウム(MgO)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化カルシウム(CaF)又は雲母等の非半導体材料であってもよい。加工対象物10は、インゴット形状を有していてもよい。例えば、加工対象物10は、半導体材料により円板状に形成された半導体インゴットであってもよい。半導体インゴットを表面と向かい合う仮想面Sに沿って切断することにより、半導体インゴットから半導体ウェハを切り出すことができる。
【0073】
上記実施形態及び変形例では加工対象物10の内部に1つの仮想面Sが設定され、加工対象物10が2つの部分に分離されたが、加工対象物10の内部に厚さ方向に並ぶ2つ以上の仮想面Sが設定され、加工対象物10が3つ以上の部分に分離されてもよい。上記実施形態及び変形例ではデバイス形成工程の後に改質スポット形成工程が実施されたが、デバイス形成工程は改質スポット形成工程の後に実施されてもよい。この場合、改質スポット形成工程では、第1領域R1にデバイス部20が形成されていない状態において、加工対象物10に複数の改質スポット列13が形成される。
【0074】
上記実施形態及び変形例の改質スポット形成工程では複数の改質スポット列13が第2領域R2に形成されることにより第1領域R1の全体にわたって亀裂が形成されたが、複数の改質スポット列13が第2領域R2に形成されることにより第1領域R1に部分的に亀裂が形成されてもよい。この場合にも、分離工程において例えば加工対象物10に力を作用させることにより、仮想面Sを境界として加工対象物10を2つの部分に分離させることができる。
【0075】
上記実施形態及び変形例では加工対象物10のうち平面視においてデバイス部20が形成される部分には改質スポット列13が形成されていなかったが、当該部分の一部に改質スポット列13が形成されてもよい。すなわち、第2領域R2にデバイス部20が形成されてもよい。上記実施形態及び変形例ではデバイス部20が第1領域R1における加工対象物10の表面10bに形成されていたが、これに代えて又は加えて、デバイス部20は第1領域R1における加工対象物10の表面10aに形成されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…レーザ加工装置、2…ステージ、10…加工対象物、10a,10b…表面、12…改質スポット、13…改質スポット列、13A,13D…第1改質スポット列、13B,13E…第2改質スポット列、20…デバイス部、32…格子状部分、33…直線状部分、41…矩形状部分、B…境界、CL…中心線、L…レーザ光、P1…第1部分、P2…第2部分、R1…第1領域、R2…第2領域、S…仮想面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12