IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イビデン株式会社の特許一覧

特開2023-183071プリント回路板の製造方法及びプリント回路板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183071
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】プリント回路板の製造方法及びプリント回路板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/18 20060101AFI20231220BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H05K1/18 F
H05K3/34 507C
H05K3/34 504Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096478
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】牧野 雅人
【テーマコード(参考)】
5E319
5E336
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AA07
5E319AB06
5E319AC01
5E319BB05
5E319CC36
5E319CD04
5E319CD29
5E319GG03
5E319GG07
5E336AA04
5E336AA11
5E336CC31
5E336CC53
5E336EE03
5E336GG07
(57)【要約】
【課題】外部電極付近に残存するフラックス残渣による外部電極間ショートが発生することがないプリント回路板を提供すること。
【解決手段】内部電極を備えた誘電体部と当該誘電体部の両端に設けられた外部電極とがフラックス膜により被覆され、前記誘電体部に複数の溝が前記外部電極と略平行して形成されている表面実装部品を準備することと、前記表面実装部品をプリント配線基板の予め定められた位置に固定することと、前記外部電極と前記プリント配線基板とを接着するための半田が前記フラックス膜を介して前記外部電極に濡れ拡がっている状態において前記外部電極と前記半田とを接着することにより前記表面実装部品を前記プリント配線基板に実装することと、前記表面実装部品を前記プリント配線基板に実装した後に前記誘電体部及び前記外部電極に残存している前記フラックス膜のフラックス残渣を除去することと、を含むプリント回路板の製造方法。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極を備えた誘電体部と当該誘電体部の両端に設けられた外部電極とがフラックス膜により被覆され、前記誘電体部に複数の溝が前記外部電極と略平行して形成されている表面実装部品を準備することと、
前記表面実装部品をプリント配線基板の予め定められた位置に固定することと、
前記外部電極と前記プリント配線基板とを接着するための半田が前記フラックス膜を介して前記外部電極に濡れ拡がっている状態において前記外部電極と前記半田とを接着することにより前記表面実装部品を前記プリント配線基板に実装することと、
前記表面実装部品を前記プリント配線基板に実装した後に前記誘電体部及び前記外部電極に残存している前記フラックス膜のフラックス残渣を除去することと、を含むプリント回路板の製造方法。
【請求項2】
請求項1のプリント回路板の製造方法であって、
さらに前記表面実装部品を前記プリント配線基板に予め定められた位置関係に固定することは、
保持部材に前記予め定められた位置関係に対応するように前記表面実装部品を固定し、
前記保持部材を前記プリント配線基板の実装面に供給し、前記外部電極が前記プリント配線基板に形成されたパッドと向かい合うように位置決めをして固定することを含む。
【請求項3】
請求項1のプリント回路板の製造方法であって、
前記フラックス膜の膜厚が5~500μmであることを含む。
【請求項4】
請求項1に記載のプリント回路板の製造方法によって製造されたプリント回路板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路板の製造方法及びプリント回路板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の表面実装部品を配線板の適性位置に精度よく半田付けすることができるプリント回路板を開示する。特許文献1に開示されたプリント回路板は、複数の表面実装部品(チップコンデンサ)、配線板および保持部材を備えており、複数のチップコンデンサが並列にされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-179317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプリント回路板の製造方法は、保持部材に表面実装部品を固定した後、半田付けによって、当該保持部材に固定されている表面実装部品を配線板に実装する。その後、保持部材は、配線板から除去される。ここで、表面実装部品の外部電極と配線板とを接着するために用いられる半田が外部電極に濡れ拡がっていない場合がある。半田が外部電極に濡れ拡がっていない場合には、表面実装部品の外部電極と半田との接着が不十分となる。
【0005】
その結果、保持部材が配線板から除去されると同時に表面実装部品の外部電極は、配線板上の半田から完全に剥がれる。また、保持部材が配線板から除去されると同時に外部電極が配線板上の半田から離れることにより、当該表面実装部品の位置ずれ、浮き、立ち上がり(「ツームストーン現象」、或いは「マンハッタン現象」ともいう。)等の問題が発生する。最終的に従来のプリント回路板の製造方法により製造されるプリント回路板は、当該プリント回路板の外部電極と半田との間において接続不良を発生する欠陥製品となる。
【0006】
図3は、従来のプリント回路板の製造方法により製造されるプリント回路板15にマンハッタン現象が発生している状態を示した模式図である。通常、表面実装部品16の外部電極17及び外部電極18は、プリント配線板19の実装面20においてそれぞれ半田21及び半田22によって接着される。しかしながら、図3に示されるように、一方の外部電極18と半田22との接着力が他の外部電極17と半田21との接着力よりも弱い場合には、当該一方の外部電極18は、半田22から離れる。半田22から離れた一方の外部電極18は、当該他の外部電極17が半田21を介してプリント配線板19の実装面20と接着している部分を支点として矢印方向に立ち上がる。その結果、半田22から離れた一方の外部電極18は、プリント配線板19に対して立ち上がることによって、表面実装部品16が立ち上がった状態を維持したまま実装される。
【0007】
そこで、プリント配線基板に表面実装部品を半田により実装する際にフラックス膜により被覆された外部電極を備えた表面実装部品を用い、半田を表面実装部品の外部電極に濡れ拡がるようにして、表面実装部品の外部電極と半田との接着強度を大きくすることが検討されている。
【0008】
フラックス膜により被覆された外部電極を備えた表面実装部品を用いることによって、面実装部品の外部電極と半田との接着強度を大きくしてプリント回路板の外部電極と半田との間において発生するマンハッタン現象等を抑制することができる。そして、フラックス膜により被覆された外部電極を備えた表面実装部品を用い、プリント配線基板に表面実装部品を半田により実装した後、不要となったフラックス膜をフラックス残渣として洗浄等により除去する必要がある。
【0009】
しかしながら、プリント配線基板に表面実装部品を半田により実装した後、外部電極付近に残存するフラックス残渣を十分に除去することができない場合がある。外部電極付近に存在するフラックス残渣を十分に除去することができない場合には、外部電極付近に残存するフラックス残渣により外部電極間にショートが発生する。
【0010】
本発明は、このような技術的事情に鑑みなされたものであって、プリント配線基板に表面実装部品を半田により実装する際にフラックス膜により被覆された外部電極を備えた表面実装部品を用いた場合であっても、外部電極付近に残存するフラックス残渣による外部電極間ショートが発生することがないプリント回路板の製造方法及びプリント回路板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るプリント回路板の製造方法は、内部電極を備えた誘電体部と当該誘電体部の両端に設けられた外部電極とがフラックス膜により被覆され、前記誘電体部に複数の溝が前記外部電極と略平行して形成されている表面実装部品を準備することと、前記表面実装部品をプリント配線基板の予め定められた位置に固定することと、前記外部電極と前記プリント配線基板とを接着するための半田が前記フラックス膜を介して前記外部電極に濡れ拡がっている状態において前記外部電極と前記半田とを接着することにより前記表面実装部品を前記プリント配線基板に実装することと、前記表面実装部品を前記プリント配線基板に実装した後に前記誘電体部及び前記外部電極に残存している前記フラックス膜のフラックス残渣を除去することと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれは、外部電極付近に残存するフラックス残渣による外部電極間ショートが発生することがないプリント回路板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の一実施形態に係るプリント回路板の製造方法を実施するために用いられる表面実装部品を説明するための概略図である。
図1B】本発明の一実施形態に係るプリント回路板の製造方法を実施するために用いられる表面実装部品の基本構造を説明するための上面図である。
図1C】本発明の一実施形態に係るプリント回路板の製造方法を実施するために用いられる表面実装部品の基本構造を説明するための断面図である。
図1D】本発明の一実施形態に係るプリント回路板の製造方法を実施するために用いられる表面実装部品の構造を説明するための断面図である。
図1E】本発明の一実施形態に係るプリント回路板の製造方法を実施するために用いられるフラックス膜を備えた表面実装部品を製造するための一例を示した模式図である。
図2A】本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における一工程を説明するための図である。
図2B】本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における一工程を説明するための図である。
図2C】本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における一工程を説明するための図である。
図2D】本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における一工程を説明するための図である。
図2E】本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における一工程を説明するための図である。
図2F】本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における一工程を説明するための図である。
図3】従来のプリント回路板の製造方法により製造されるプリント回路板にマンハッタン現象が発生している状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1Aは、本発明の一実施形態に係るプリント回路板の製造方法を実施するために用いられる表面実装部品を説明するための概略図である。図1Aに示されるように、表面実装部品2は、プリント配線基板3の実装面31に半田付けによる半田9によって実装され、プリント回路板1を構成する。
【0015】
図1Bは、本発明の一実施形態に係るプリント回路板の製造方法を実施するために用いられる表面実装部品の基本構造を説明するための上面図である。図1Bに示されるように、表面実装部品2は、誘電体部4と、当該誘電体部4の両端に設けられた2つの外部電極5と、を備える。2つの外部電極5は、右側外部電極52と左側外部電極53からなる。
外部電極5は、誘電体部4の両端に銅等の金属を塗布して焼き付けることによって形成される電極層(図示せず)を有している。さらに、外部電極5は、電極層の表面を保護するためにニッケル層及びスズ層の二層から構成されるめっき層51を有している。すなわち、外部電極5は、めっき層51及び電極層を有する。
なお、表面実装部品2としては、積層セラミックチップコンデンサ(CC)、SOP等のICパッケージを例示することができる。表面実装部品2は、その大きさ、その高さが同一であっても、異なるものであってもよい。なお、表面実装部品2の製造方法としては、グリーンシート工法、印刷工法を例示することができる。
【0016】
誘電体部4は、外部電極5と略平行して形成されている複数の溝6を有している。すなわち、誘電体部4は、右側外部電極52と左側外部電極53との間に形成される上面領域41に複数の溝6を有している。ここで、複数の溝6は、本実施形態に係るプリント回路板の製造方法において、表面実装部品2をプリント配線基板3に実装した後に誘電体部4及び外部電極5に残存しているフラックス膜8のフラックス残渣を除去し易くするために形成されている。
【0017】
複数の溝6は、上面領域41の一端42から他端43まで形成されている。さらに、上面領域41の一端42に形成された溝6は、外部電極5と略平行に位置しつつ、上面領域41の他端43と繋がって延設されている。さらに、上面領域41の他端43と繋がって延設された溝6は、誘電体部4の正面領域44、底面領域45及び背面領域46まで延設されて形成されている。
【0018】
図1Cは、本発明の一実施形態に係るプリント回路板の製造方法を実施するために用いられる表面実装部品2の基本構造を説明するためのX-Y断面の断面図である。図1Cに示されるように、誘電体部4は、複数の内部電極7を備えている。複数の内部電極7は、誘電体部4を構成する複数の誘電体シートにそれぞれスクリーン印刷されている。すなわち、誘電体部4は、内部電極7がスクリーン印刷された複数の誘電体シートが圧着された積層体である。なお、内部電極7は、外部電極5に接続されている。
【0019】
誘電体部4に形成されている複数の溝6は、表面実装部品2をプリント配線基板3に実装した後に誘電体部4及び外部電極5に残存しているフラックス膜8のフラックス残渣を除去し易くするために形成されている。溝6の形態は、本実施形態に係るプリント回路板の製造方法において、前述したフラックス残渣を除去することができるように適宜設定することができる。溝6の溝幅は、5~50μmであることが好ましい。溝6の溝深さは、5~50μmであることが好ましい。溝6の断面形状は、U字溝、V字溝、L字溝であることが好ましい。溝6のピッチ幅は、5~50μmであることが好ましい。
なお、溝6の形成方法としては、溝形成用プレス板等を用いて誘電体部4をプレス加工すること、ドリル、レーザ等を用いて誘電体部4を機械加工すること等を例示することができる。
【0020】
図1Dは、本発明の一実施形態に係るプリント回路板の製造方法を実施するために用いられる表面実装部品の構造を説明するための断面図である。
図1Dに示されるように、表面実装部品2は、誘電体部4及び外部電極5の表面にフラックス膜8を有している。すなわち、誘電体部4及び外部電極5のすべての表面は、フラックス膜8によって被覆されている。
フラックス膜8は、外部電極5をプリント配線基板3の実装面31に接着するために用いる半田9を当該外部電極5に濡れ拡がるようにすることによって、外部電極5と半田付けに用いる半田9との接着強度を大きくすることができる。
【0021】
フラックス膜8の膜厚は、5~500μmであることが好ましい。フラックス膜8の膜厚が5μm以上であれば、外部電極5の表面全体に半田9を十分に濡れ拡げることができるため好ましい。フラックス膜8の膜厚が500μm以下であれば、外部電極5とプリント配線基板3とを接着した後に残存するフラックス膜8のフラックス残渣を除去し易いため好ましい。
【0022】
本発明に係るプリント回路板の製造方法は、内部電極7を備えた誘電体部4と当該誘電体部4の両端に設けられた外部電極5とがフラックス膜8により被覆され、前記誘電体部4に複数の溝6が前記外部電極5と略平行して形成されている表面実装部品2を準備することを含む。誘電体部4及び外部電極5を被覆するフラックス膜8の役割は、以下の通りである。
【0023】
誘電体部4及び外部電極5を被覆するフラックス膜8に含まれるフラックスは、外部電極5の表面に付着している酸化被膜等を洗浄して取り除く。さらに、フラックス膜8に含まれるフラックスは、半田9の表面張力を抑えてプリント配線基板3と半田9との接触面積を大きくする。また、フラックス膜8に含まれるフラックスは、半田9の酸化を防止する。表面実装部品2のすべての表面を被覆するフラックス膜8がこのような役割を発揮することにより、半田9が外部電極5の全体に濡れ拡がっている状態を形成して、外部電極5と半田9とを強固に接着することができる。
【0024】
フラックス膜8は、樹脂系フラックス、有機酸系フラックス、無機酸系フラックスをフラックス成分として含んでいてもよい。樹脂系フラックスとしては、ロジン、変性ロジン及び合成樹脂から選ばれる1つを主剤とし、当該主剤に無添加の樹脂系フラックスの他、当該主剤にアミンのハロゲン塩を活性成分として添加したフラックス、当該主剤に有機酸又はアミン有機酸塩を活性成分として添加したフラックスを例示することができる。
【0025】
有機酸系フラックスとしては、水又は溶剤を主剤とし、当該主剤にアミンのハロゲン塩を活性成分として添加したフラックス、当該主剤に有機酸又はアミン有機酸塩を活性成分として添加したフラックスを例示することができる。無機系フラックスとしては、水を主剤とし、当該主剤にアミンのハロゲン塩を活性成分として添加したフラックス、当該主剤に有機酸又はアミン有機酸塩を活性成分として添加したフラックス、ワセリンを主剤とし、当該主剤にアンモニウムハイドライド、ハロゲン化亜鉛等を活性成分として添加したフラックスを例示することができる。なお、樹脂系フラックス、有機酸系フラックス、無機酸系フラックスに適宜フッ化物が含有されていてもよい。
【0026】
図1Eは、本発明の一実施形態に係るプリント回路板の製造方法を実施するために用いられるフラックス膜8を備えた表面実装部品2を製造するための一例を示した模式図である。図1Eに示されるように、フラックス82が充填されたフラックス槽81に表面実装部品2を浸すことにより、当該表面実装部品2の全体にフラックス塗膜を形成させる。その後、フラックス塗膜が形成された表面実装部品2をフラックス槽81から引き揚げ、当該表面実装部品2の全体に形成されたフラックス塗膜を乾燥させることにより、フラックス膜8を表面実装部品2の誘電体部4及び外部電極5に形成することができる。
【0027】
また、フラックス膜8は、その材料となるフラックスを表面実装部品2の誘電体部4及び外部電極5に塗布した後、乾燥することによって形成されてもよい。また、フラックスを誘電体部4及び外部電極5に塗布することは、スプレー等を使用することにより、フラックスのエアロゾルを生成させ、当該エアロゾルを誘電体部4及び外部電極5に噴霧して行ってもよい。
【0028】
次に、本発明に係るプリント回路板の製造方法は、フラックス膜8によって被覆されたフラックス膜8によって被覆された前記表面実装部品2をプリント配線基板3の予め定められた位置に固定することを含む。かかる表面実装部品2をプリント配線基板3の予め定められた位置に固定することは、1個の表面実装部品2をプリント配線基板3に固定してもよいし、同一又は異なる複数の表面実装部品2をプリント配線基板3に固定してもよい。プリント配線基板3の実装面31上の予め定められた位置に部品搭載機等を用いて、表面実装部品2をそれぞれ固定して行ってもよい。
【0029】
さらに、本発明に係るプリント回路板の製造方法は、前記外部電極5と前記プリント配線基板3とを接着するための半田9が前記フラックス膜8を介して前記外部電極5に濡れ拡がっている状態において、前記外部電極5と前記半田9とを接着することにより前記表面実装部品2を前記プリント配線基板3に実装することを含む。なお、前記表面実装部品2を前記プリント配線基板3に実装することには、前記半田9と前記プリント配線基板3の実装面31とを接着することが含まれる。
【0030】
外部電極5は、半田9によってプリント配線基板3の実装面31にリフロー半田付けされる。外部電極5は、フラックス膜8を有しているので、フラックス膜8の作用によって、外部電極5とプリント配線基板3とを接着するために用いられる半田9が外部電極5に十分に濡れ拡がっている状態を形成することができる。その結果、半田9が外部電極5に十分に濡れ拡がっている状態において、表面実装部品2の外部電極5と半田9とを強力に接着することができ、外部電極5と半田9との接着強度を格段に大きくすることができる。
【0031】
そして、本発明に係るプリント回路板の製造方法は、前記表面実装部品2を前記プリント配線基板3に実装した後に前記外部電極5に残存している前記フラックス膜8のフラックス残渣を除去することを含む。外部電極5に残存しているフラックス膜8のフラックス残渣を除去することにより、プリント回路板1を得ることができる。外部電極5に残存しているフラックス膜8のフラックス残渣は、プリント回路板1の電極間ショート、絶縁信頼性の低下、接続不良、リーク、腐食等の不具合を引き起こす。このため、外部電極5に残存しているフラックス膜8のフラックス残渣を当該外部電極5から除去する必要がある。
【0032】
フラックス膜8のフラックス残渣を除去する方法としては、フラックス膜8を構成するフラックスの種類に応じて、種々の洗浄方法を適宜採用することができる。洗浄方法としては、例えば、臭素系洗浄剤又は代替フロン系洗浄剤による洗浄、炭化水素系洗浄剤による洗浄、グリコールエーテル等の溶剤に界面活性剤又は水を加えた洗浄剤による洗浄、グルコールエーテル系の洗浄剤による洗浄、スプレー洗浄、蒸気洗浄、ブラッシングによる洗浄等を挙げることができる。
【0033】
本発明に係るプリント回路板の製造方法は、誘電体部4に複数の溝6が外部電極5と略平行して形成されている表面実装部品2を採用している。このため、表面実装部品2をプリント配線基板3に実装した後に不要となったフラックス膜8のフラックス残渣は、洗浄により溝6に集積される。ここで、溝6は、誘電体部4の全体に外部電極5と略平行して形成されている。さらに、誘電体部4の正面領域44及び背面領域46に形成された溝6は、プリント配線基板3の実装面31と対向している。誘電体部4に溝6を形成することにより、誘電体部4の上面領域41に形成された溝6に集積されている不要となったフラックス膜8のフラックス残渣を表面実装部品2の外部に排出することができる。また、洗浄剤による洗浄、スプレー洗浄、ブラッシング洗浄を溝6に集積されたフラックス膜8のフラックス残渣に対して上記洗浄を集中的に行うこともできる。
このように、外部電極5に残存している不要となったフラックス膜8のフラックス残渣は、外部電極5から完全に除去される。
【0034】
本発明に係るプリント回路板の製造方法は、フラックス膜8により被覆された誘電体部4及び外部電極5を有する表面実装部品2を採用して、半田9がフラックス膜8を介して外部電極5に濡れ拡がっている状態を形成し、外部電極5と半田9とを強固に接着することができる。そして、表面実装部品2は、外部電極5と略平行して形成されている複数の溝6を有している。このため、複数の溝6に集積したフラックス膜8のフラックス残渣を洗浄等により、除去することができる。その結果、本発明に係るプリント回路板の製造方法は、フラックス残渣に起因する電極間ショートが発生することがないプリント回路板1を提供することができる。
【0035】
また、本発明に係るプリント回路板の製造方法は、以下の方法を採用することにより、プリント配線基板3に表面実装部品2を予め定められた位置関係を保つように実装することができる。
【0036】
図2A図2Fは、それぞれ、本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における各工程を説明するための図である。なお、図2A図2Fに示す例において、各部材の寸法については、本発明の特徴をより良く理解できるようにするために、実施の寸法とは異なる寸法で記載している。以下、図2A図2Fを参照して、本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態を説明する。
【0037】
まず、図2Aに示すように、複数の表面実装部品2をその固定面となる保持部材10の接着剤層11の表面に配置して、固定する。さらに、複数の表面実装部品2のうち、一方の表面実装部品2の外部電極5の右側側面と、他方の表面実装部品2の外部電極5の左側側面とが対向するように隣接して保持部材10の固定面に固定する。そして、保持部材10の予め定められた位置関係に対応するように複数の表面実装部品2を保持部材10の固定面に並べて配置して固定する。複数の表面実装部品2を保持部材10の固定面に固定することは、部品搭載機等を用いて、保持部材10の当該固定面上の予め定められた位置に複数の表面実装部品2をそれぞれ搭載して行う。
【0038】
なお、複数の表面実装部品2のうち、一方の表面実装部品2の外部電極5の右側側面と、他方の表面実装部品2の外部電極5の左側側面との間に形成される間隔を10~80μm、好ましくは、40~60μmとなるように設定して、複数の表面実装部品2を保持部材10の固定面に配置して、固定してもよい。
【0039】
次に、図2Bに示すように、保持部材10は、接着剤層11と、当該接着剤層11の下層としてベース材12を備えている。複数の表面実装部品2を保持部材10の接着剤層11の上に接着する。複数の表面実装部品2を保持部材10の接着剤層11の上に接着することは、当該接着剤層11に含まれる接着剤を加熱によって溶融させた後、溶融させた接着剤を冷却により固化することによって行う。
【0040】
次に、図2Cに示すように、複数の表面実装部品2の上面となる接着剤層11をプリント配線基板3の実装面31と対向するように配置する。すなわち、保持部材10のベース材12を外側に向けると同時に、複数の表面実装部品2をプリント配線基板3の実装面31と保持部材10の接着剤層11との間に挟んで配置する。
【0041】
次に、図2Dに示すように、プリント配線基板3の実装面31には、複数の表面実装部品2の位置決めをするためのパッド13が設けられている。パッド13は、表面実装部品2が備えている誘電体部4の両端に形成された外部電極5の位置に対応するように、プリント配線基板3の実装面31の予め定められた位置関係に従って配置されている。それぞれのパッド13の表面には、半田9が設けられている。半田9は、半田ペーストをパッド13の表面に印刷することによって形成される。なお、パッド13の表面に半田ペーストを印刷することは、公知のスクリーン・マスクを用いて行ってもよい。
【0042】
このように、プリント配線基板3の実装面31には、表面実装部品2の位置決めをした後に、当該表面実装部品2をプリント配線基板3の実装面31に実装するための半田付けに用いる半田9が設けられている。複数の表面実装部品2を固定した保持部材10をプリント配線基板3に対向して、矢印方向に移動する。複数の表面実装部品2を固定した保持部材10を矢印方向に移動することにより、複数の表面実装部品2を固定した保持部材10とプリント配線基板3とを貼り合わせることができる。
【0043】
次に、図2Eに示すように、複数の表面実装部品2の上面をプリント配線基板3の実装面31と対向するように配置して貼り合わせた後、加熱処理をする。加熱処理により、表面実装部品2をプリント配線基板3の実装面31に固定するための半田9を溶解させることにより、複数の表面実装部品2の外部電極5とプリント配線基板3の実装面31とを接着する。
【0044】
その結果、プリント配線基板3と、フラックス膜8により被覆された外部電極5を有する表面実装部品2とを備え、表面実装部品2がプリント配線基板3に予め定められた位置関係に固定され、プリント配線基板3に固定された複数の表面実装部品2が半田付けよって実装されたプリント回路板用構造体14が提供される。プリント回路板用構造体14をリフロー炉に収容して加熱を行う。この加熱により、半田9が溶融し、溶融した半田9がパッド13と表面実装部品2の外部電極5との間に充填される。
【0045】
その後、プリント回路板用構造体14をリフロー炉から取り出して冷却し、溶融した半田9を硬化させる。これにより、表面実装部品2の外部電極5がパッド13に電気的かつ機械的に接合される。
【0046】
そして、プリント回路板用構造体14から保持部材10を剥離する。プリント回路板用構造体14から保持部材10を剥離することは、当該保持部材10をプリント配線基板3の実装面31から離れる方向に引き離すことによって行う。ここで、表面実装部品2は、溶融した半田9が固化することによって、プリント配線基板3に強固に実装されている。すなわち、表面実装部品2とプリント配線基板3との接着強度は、表面実装部品2と保持部材10との接着強度よりも大きく設定されている。このため、プリント回路基板用構造体14から保持部材10のみを容易に剥離することができる。
【0047】
次に、図2Fに示すように、表面実装部品2をプリント配線基板3に実装した後に外部電極5に残存しているフラックス膜8のフラックス残渣を除去することにより、プリント回路板1が提供される。外部電極5に残存しているフラックス膜8のフラックス残渣を除去することは、フラックス膜8を構成するフラックスの種類、フラックス膜8のフラックス残渣の量に応じて、種々の洗浄方法を適宜採用して行うことができる。
【0048】
このように、プリント回路板1の製造方法は、半田9を表面実装部品2の外部電極5に濡れ拡がるようにして、表面実装部品2の外部電極5と半田9とを接着して、その接着強度を大きくすることができる。しかも、プリント回路板の製造方法は、誘電体部4に形成された溝6により、表面実装部品2をプリント配線基板3に実装した後に外部電極5に残存しているフラックス膜8のフラックス残渣を完全に除去することができる。その結果、プリント回路板の製造方法は、外部電極付近に残存するフラックス残渣による外部電極間ショートが発生することがないプリント回路板を提供することができる。
【0049】
すなわち、上述した本発明のプリント回路板の製造方法によれば、表面実装部品2の外部電極5と半田9との間の接着強度を大きくすることができ、かつ、フラックス残渣に起因する電極間ショート、表面実装部品2と半田9との間の接続不良を原因とする位置ずれ、浮き、立ち上がり等の不具合がないプリント回路板1を提供することができる。
【0050】
以上、図示の実施形態に基づき説明したが、本発明に係るプリント回路板の製造方法、及びプリント回路板は、上述の実施形態に限られず、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で適宜変更することができる。本発明に係るプリント回路板の製造方法、及びプリント回路板は、積層セラミックチップコンデンサのみならず、例えば、SOP等のICパッケージ等の部品を実装したプリント回路板にも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 プリント回路板
2 表面実装部品(積層セラミックコンデンサ)
3 プリント配線基板
31 実装面
4 誘電体部
41 上面領域
42 一端(上面領域)
43 他端(上面領域)
44 正面領域
45 底面領域
46 背面領域
5 外部電極
51 めっき層
52 右側外部電極
53 左側外部電極
6 溝
7 内部電極
8 フラックス膜
81 フラックス槽
82 フラックス
9 半田
10 保持部材
11 接着剤層
12 ベース材
13 パッド
14 プリント回路板用構造体
15 プリント回路板(従来例)
16 表面実装部品
17 外部電極(右側)
18 外部電極(左側)
19 プリント配線板
20 実装面
21 半田(右側外部電極)
22 半田(左側外部電極)

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3