(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183075
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20231220BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096495
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】512028116
【氏名又は名称】株式会社アドダイス
(74)【代理人】
【識別番号】100141427
【弁理士】
【氏名又は名称】飯村 重樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 大輔
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】疾患の検知及びその評価から予防介入の処方に至るまでの過程を適切に実行することができる情報処理システム、情報処理装置、プログラム及び情報処理方法を提供する。
【解決手段】疾患に関する特徴が現れるユーザの身体に関するデータを生体データとしてユーザから取得する生体データ取得装置と、生体データ取得装置で取得した生体データに基づいて疾患の重症度を評価した評価情報を生成する評価情報生成処理、評価情報生成処理で生成した評価情報に基づいて疾患に対する予防介入で処方される療法に関する情報を療法情報として生成する療法情報生成処理を実行する情報処理装置と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患に関する特徴が現れるユーザの身体に関するデータを生体データとして前記ユーザから取得する生体データ取得装置と、
該生体データ取得装置で取得した前記生体データに基づいて前記疾患の重症度を評価した評価情報を生成する評価情報生成処理、該評価情報生成処理で生成した前記評価情報に基づいて前記疾患に対する予防介入で処方される療法に関する情報を療法情報として生成する療法情報生成処理を実行する情報処理装置と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、
学習済みモデルによって前記評価情報生成処理及び前記療法情報生成処理を自律的に実行する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記情報処理装置は、
前記評価情報生成処理で生成した前記評価情報及び前記療法情報生成処理で生成した前記療法情報を疾患情報として前記ユーザが保有するユーザ端末に送信する疾患情報送信処理と、
該疾患情報送信処理で送信された前記疾患情報に基づいて前記ユーザが前記療法を実行したか否かを検知する検知処理と、を実行する、
請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記情報処理装置は、
前記検知処理で前記ユーザによる前記療法の実行を検知した場合に前記ユーザ端末に報酬情報を送信する報酬情報送信処理を実行する、
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記情報処理装置は、
前記検知処理で前記ユーザによる前記療法の実行を検知しない場合に前記ユーザ端末あるいは前記生体データ取得装置の少なくともいずれかに任意の処理を実行させる処理信号を前記ユーザ端末に送信する処理信号送信処理を実行する、
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項6】
疾患に関する特徴が現れるユーザの身体に関するデータを生体データとして前記ユーザから取得する生体データ取得装置で取得した前記生体データに基づいて前記疾患の重症度を評価した評価情報を生成する評価情報生成処理と、
該評価情報生成処理で生成した前記評価情報に基づいて前記疾患に対する予防介入で処方される療法に関する情報を療法情報として生成する療法情報生成処理と、
を実行する情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータによって実装される情報処理装置に、
疾患に関する特徴が現れるユーザの身体に関するデータを生体データとして前記ユーザから取得する生体データ取得装置で取得した前記生体データに基づいて前記疾患の重症度を評価した評価情報を生成する評価情報生成処理と、
該評価情報生成処理で生成した前記評価情報に基づいて前記疾患に対する予防介入で処方される療法に関する情報を療法情報として生成する療法情報生成処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項8】
コンピュータによって実装される情報処理装置を用いて、
疾患に関する特徴が現れるユーザの身体に関するデータを生体データとして前記ユーザから取得する生体データ取得装置で取得した前記生体データに基づいて前記疾患の重症度を評価した評価情報を生成する評価情報生成処理と、
該評価情報生成処理で生成した前記評価情報に基づいて前記疾患に対する予防介入で処方される療法に関する情報を療法情報として生成する療法情報生成処理と、
を実行する情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理装置、プログラム及び情報処理方法、特に、ユーザの疾患に関する情報を処理する情報処理システム、情報処理装置、プログラム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の到来に伴って、認知機能の低下によって発症する認知障害や鬱状態が表れる気分障害といったいわゆる精神疾患を患ったり、運動不足や偏食等といった生活習慣に起因する生活習慣病といった、特定の疾患の発症には至らないものの健康な状態から離れつつある未病の状態に陥ったりする者が増加しており、このような未病を含む疾患の早期の発見は、我が国の今後の大きな課題である。
【0003】
特許文献1には、呼吸筋等の動作に関する動作情報及びこれに対応する電位情報を取得するセンサを備え、センサで取得した動作情報及び電位情報に基づいて呼吸器系疾患の異常を検出し、異常を検出した場合に異常情報を出力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような未病を含む疾患による重症化を未然に防止する観点からは、疾患の早期の発見もさることながら、重症化の進行を抑制する目的で行われる予防介入とも称される健康状態の管理の観点からの検分に基づいて、各種の療法が適切に処方されることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、疾患の検知及びその評価から予防介入の処方に至るまでの過程を適切に実行することができる情報処理システム、情報処理装置、プログラム及び情報処理方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る情報処理システムは、疾患に関する特徴が現れるユーザの身体に関するデータを生体データとしてユーザから取得する生体データ取得装置と、生体データ取得装置で取得した生体データに基づいて疾患の重症度を評価した評価情報を生成する評価情報生成処理、評価情報生成処理で生成した評価情報に基づいて疾患に対する予防介入で処方される療法に関する情報を療法情報として生成する療法情報生成処理を実行する情報処理装置と、を備えるものである。
【0008】
ここで、「疾患」には、「特定の疾患の発症には至らないものの健康な状態から離れつつある未病の状態」であることも含まれる。
【0009】
これによれば、評価情報生成処理において、生体データに基づいて評価情報を生成することから、疾患を検知したうえで疾患の重症度及び重症化するリスクを適切に評価することができる。
【0010】
さらに、療法情報生成処理において、生成した評価情報に基づいて予防介入で処方される療法に関する療法情報を生成することから、疾患の検知、その評価及び予防介入で処方される療法の提供に至るまでの過程を連続して適切に実行することができる。
【0011】
したがって、疾患を早期に検知することができるとともに、疾患を検知した場合に予防介入がスムーズに実行されることから、疾患の重症化の進行を抑制することができる。
【0012】
この情報処理システムの情報処理装置は、学習済みモデルによって評価情報生成処理及び療法情報生成処理を自律的に実行するものである。
【0013】
さらに、この情報処理システムの情報処理装置は、評価情報生成処理で生成した評価情報及び療法情報生成処理で生成した療法情報を疾患情報としてユーザが保有するユーザ端末に送信する疾患情報送信処理と、疾患情報送信処理で送信された疾患情報に基づいてユーザが療法を実行したか否かを検知する検知処理と、を実行するものである。
【0014】
一方、情報処理システムの情報処理装置は、検知処理でユーザによる療法の実行を検知した場合にユーザ端末に報酬情報を送信する報酬情報送信処理を実行するものであってもよい。
【0015】
情報処理システムの情報処理装置は、検知処理でユーザによる療法の実行を検知しない場合にユーザ端末あるいは生体データ取得装置の少なくともいずれかに任意の処理を実行させる処理信号をユーザ端末に送信する処理信号送信処理を実行するものであってもよい。
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る情報処理装置は、疾患に関する特徴が現れるユーザの身体に関するデータを生体データとしてユーザから取得する生体データ取得装置で取得した生体データに基づいて疾患の重症度を評価した評価情報を生成する評価情報生成処理と、評価情報生成処理で生成した評価情報に基づいて疾患に対する予防介入で処方される療法に関する情報を療法情報として生成する療法情報生成処理と、を実行するものである。
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係るプログラムは、コンピュータによって実装される情報処理装置に、疾患に関する特徴が現れるユーザの身体に関するデータを生体データとしてユーザから取得する生体データ取得装置で取得した生体データに基づいて疾患の重症度を評価した評価情報を生成する評価情報生成処理と、評価情報生成処理で生成した評価情報に基づいて疾患に対する予防介入で処方される療法に関する情報を療法情報として生成する療法情報生成処理と、を実行させるものである。
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係る情報処理方法は、コンピュータによって実装される情報処理装置を用いて、疾患に関する特徴が現れるユーザの身体に関するデータを生体データとしてユーザから取得する生体データ取得装置で取得した生体データに基づいて疾患の重症度を評価した評価情報を生成する評価情報生成処理と、評価情報生成処理で生成した評価情報に基づいて疾患に対する予防介入で処方される療法に関する情報を療法情報として生成する療法情報生成処理と、を実行するものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、疾患の検知、その評価及び予防介入で処方される療法の提供に至るまでの過程を連続して適切に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施の形態に係る情報処理システムの構成の概略を説明するブロック図である。
【
図2】同じく、本実施の形態に係る情報処理システムのウェアラブルデバイスの構成の概略を説明するブロック図である。
【
図3】同じく、本実施の形態に係る情報処理システムのユーザ端末の構成の概略を説明するブロック図である。
【
図4】同じく、本実施の形態に係る情報処理システムの情報処理装置及び医療従事者端末を実装するコンピュータの構成の概略を説明するブロック図である。
【
図5】同じく、本実施の形態に係る情報処理システムの情報処理装置の機能の概略を説明するブロック図である。
【
図6】同じく、本実施の形態に係る情報処理システムの情報処理装置の処理の概略を説明するブロック図である。
【
図7】同じく、本実施の形態に係る情報処理システムで処理される疾患情報の構成の概略を説明するブロック図である。
【
図8】同じく、本実施の形態に係る情報処理システムの情報処理装置の処理の概略を説明するシーケンス図である。
【
図9】同じく、本実施の形態に係る情報処理システムの医療従事者端末の機能の概略を説明するブロック図である。
【
図10】同じく、本実施の形態に係る情報処理システムの処理の概略を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、
図1~
図10に基づいて、本発明の実施の形態に係る情報処理システムについて説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る情報処理システムの構成の概略を説明するブロック図である。図示のように、情報処理システム10は、生体データ取得装置であるウェアラブルデバイス20、ユーザ端末30、情報処理装置40及び医療従事者端末50を備える。
【0023】
本実施の形態では、ウェアラブルデバイス20とユーザ端末30とが例えば近距離通信ネットワーク等を介して互いにアクセス可能に接続され、ユーザ端末30、情報処理装置40及び医療従事者端末50がネットワークNを介して互いにアクセス可能に接続される。
【0024】
ウェアラブルデバイス20は、ユーザ1の身体に装着され、ユーザ端末30は、ユーザ1に保有され、情報処理装置40は、情報処理システム10を用いたサービスを提供する事業者2に配備され、医療従事者端末50は、例えば医師等の医療従事者3に保有される。
【0025】
図2は、ウェアラブルデバイス20の構成の概略を説明するブロック図である。ウェアラブルデバイス20は、ユーザ1の身体の任意の部位、本実施の形態ではユーザ1の手首に装着される腕時計型のいわゆるスマートウォッチであって、図示のように、制御部21、ディスプレイ22、生体センサ23及び加速度・方位センサ24を主要構成として備える。
【0026】
制御部21は、本実施の形態では、ディスプレイ22、生体センサ23、加速度・方位センサ24等といったウェアラブルデバイス20の各部を制御するものであって、例えばプロセッサ、メモリ、ストレージ、送受信部等によって構成される。
【0027】
この制御部21には、ウェアラブルデバイス20上で起動する各種のアプロケーションが格納され、本実施の形態では、後述する生体データD1を管理するアプリケーション等が格納される。
【0028】
ディスプレイ22には、本実施の形態では、生体データD1を管理するアプリケーション等といったウェアラブルデバイス20で実行される各種のアプリケーションの画面インターフェースが表示される。
【0029】
このディスプレイ22は、表示面への接触によって情報の入力を受け付けるいわゆるタッチパネルであって、抵抗膜方式や静電容量方式といった各種の技術によって実装される。
【0030】
生体センサ22は、LED光をユーザ1の手首に向けて照射するLED及びLED光を受光するフォトトランジスタで実装される受光部を備え、LEDがLED光を手首に向けて照射して反射されたLED光を受光部が受光するセンサである。
【0031】
加速度・方位センサ24は、本実施の形態では、ユーザ1の移動に追従してウェアラブルデバイス20が移動する際の加速度や、ウェアラブルデバイス20が向けられている方位等を検出するセンサである。
【0032】
これら生体センサ22及び加速度・方位センサ24によって、本実施の形態では、疾患に関する特徴が現れるユーザ1の睡眠時間、歩数、呼吸数、心拍数、血中酸素濃度あるいは皮膚温等といった各種の生体データD1が取得される。
【0033】
図3は、ユーザ端末30の構成の概略を説明するブロック図である。ユーザ端末30は、本実施の形態では、携帯型情報端末であるスマートフォンやタブレット状のコンピュータであって、図示のように、制御部31及びディスプレイ32を主要構成として備える。
【0034】
制御部31は、本実施の形態では、ディスプレイ32を含むユーザ端末30の各部を制御するものであって、例えばプロセッサ、メモリ、ストレージ、送受信部等によって構成される。
【0035】
この制御部31には、ユーザ端末30上で起動する各種のアプリケーションが格納され、本実施の形態では、例えば、情報処理装置40から提供される情報を処理するアプリケーション等が格納される。
【0036】
ディスプレイ32には、本実施の形態では、情報処理装置40から提供される情報を処理するアプリケーション等といったユーザ端末30で実行されるアプリケーションの画面インターフェースが表示される。
【0037】
このディスプレイ32は、表示面への接触によって情報の入力を受け付けるいわゆるタッチパネルであって、抵抗膜方式や静電容量方式といった各種の技術によって実装される。
【0038】
情報処理装置40及び医療従事者端末50は、本実施の形態では、ほぼ同様のハードウェア構成を具備するコンピュータ、例えばデスクトップ型あるいはノート型のコンピュータによって実装される。
【0039】
図4は、コンピュータの構成の概略を説明するブロック図である。図示のように、コンピュータは、プロセッサ101、メモリ102、ストレージ103、送受信部104及び入出力部105を主要構成として備え、これらが互いにバス106を介して電気的に接続される。
【0040】
プロセッサ101は、コンピュータの動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御や、アプリケーションプログラムの実行に必要な処理等を行う演算装置である。
【0041】
このプロセッサ101は、本実施の形態では例えばCPU(Central Processing Unit)であり、次述するメモリ102に展開されたアプリケーションプログラムを実行して各処理を行う。
【0042】
メモリ102は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶装置によって実装される。
【0043】
このメモリ102は、プロセッサ101の作業領域として使用される一方、コンピュータの起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び各種の設定情報等が格納される。
【0044】
ストレージ103は、アプリケーションプログラム等による各種の処理に用いられるデータ等が格納されている。
【0045】
送受信部104は、コンピュータをネットワークに接続するものであって、本実施の形態では、送受信部104を介したネットワークを経由して、ユーザ端末30及び医療従事者端末50と相互に通信可能に接続される。
【0046】
この送受信部104は、Wi-Fi等の無線通信規格に対応するものであってもよいし、Bluetooth(登録商標)やBLE(Bluetooth Low Energy)といった近距離通信インターフェースを具備するものであってもよい。
【0047】
入出力部105には、必要に応じて、キーボードやマウスといった情報入力機器やディスプレイ等の出力機器が接続される。本実施の形態では、キーボード、マウス及びディスプレイがそれぞれ接続される。
【0048】
バス106は、接続したプロセッサ101、メモリ102、ストレージ103、送受信部104及び入出力部105の間において、例えばアドレス信号、データ信号及び各種の制御信号を伝達する。
【0049】
図5は、情報処理装置40の機能の概略を説明するブロック図である。図示のように、情報処理装置40は、記憶部41、評価情報生成処理部42、療法情報生成処理部43、疾患情報送信処理部44、検知処理部45、報酬情報送信処理部46及び処理信号送信処理部47を備える。
【0050】
記憶部41は、ストレージ103の記憶領域が区画されることによって実現される。この記憶部41には、本実施の形態では、ウェアラブルデバイス20で取得された生体データD1、後述する学習データD2及び疾患情報D5が格納される。
【0051】
評価情報生成処理部42、療法情報生成処理部43、疾患情報送信処理部44、検知処理部45、報酬情報送信処理部46及び処理信号送信処理部47は、メモリ102に記憶されたプログラムをプロセッサ101で実行することによって実現される。
【0052】
評価情報生成処理部42は、本実施の形態では、生体データD1に基づいてユーザ1の疾患の重症度を評価した評価情報を生成する評価情報生成処理を実行するものである。
【0053】
療法情報生成処理部43は、本実施の形態では、評価情報生成処理で生成した評価情報に基づいて、疾患に対する予防介入で処方される療法に関する情報を療法情報として生成する療法情報生成処理を実行するものである。
【0054】
これら評価情報生成処理及び療法情報生成処理は、本実施の形態では、学習済みモデルによって自律的に実行される。
【0055】
図6は、情報処理装置40で学習済みモデルを生成する処理及び学習済みモデルに基づいて自律的に実行される評価情報生成処理及び療法情報生成処理の概略を説明する図である。
【0056】
図示のように、情報処理装置40は、ウェアラブルデバイス20で取得したユーザ1の生体データD1に評価データD3及び処方情報D4を関連づけることによって、学習データD2を生成する。
【0057】
評価データD3は、本実施の形態では、ウェアラブルデバイス20が取得した生体データD1に基づいて、ユーザ1が例えば認知障害や生活習慣病といった未病を含む疾患を患っている場合における疾患の重症度を数値的に評価したデータであって、この評価データD3に基づいて、疾患の現在の重症度が判明するとともに、今後、疾患が重症化する可能性(重症化リスク)についても想定することができる。
【0058】
この評価データD3は、本実施の形態では、睡眠時間、歩数、呼吸数、心拍数、血中酸素濃度あるいは皮膚温等が組み合わせられて精度が高められた複数の生体データD1に基づいた医療従事者3の診断によって作成される。
【0059】
例えば、睡眠時間及び呼吸数等に基づいて、睡眠時間の乱れに起因する精神疾患の重症度が評価され、歩数及び心拍数等に基づいて、運動不足に起因する生活習慣病の重症度が評価される。
【0060】
このように作成された評価データD3は、医療従事者端末50を介して医療従事者3によって入力される。
【0061】
処方情報D4は、本実施の形態では、評価データD3で評価した疾患の重症度に基づいた医療従事者3の診断によって作成される、予防介入としての処方に関する情報であって、医療従事者端末50を介して入力される。
【0062】
この処方情報D4は、本実施の形態では、認知障害や気分障害といった精神疾患を患っている場合には、その重症度に応じて例えば、そのユーザ1に由来があってユーザ1の精神状態を安定させるような映像や音楽等に関するコンテンツをユーザ1に提供する旨の情報であることが想定される。
【0063】
一方、処方情報D4は、生活習慣病のような未病に陥っている場合には、その重症度に応じて例えば、適宜な運動のメニューが組み込まれた運動プログラムや、食事のメニューが組み込まれた食事プログラムをユーザ1に提供する旨の情報であることが想定される。
【0064】
学習データD2の生成に続いて、情報処理装置40は、生成された学習データD2で機械学習を行うことによって、学習済みモデルMを生成する。機械学習を行う手法としては、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、SVM(Support Vector Machine)等、各種のアルゴリズムが適宜用いられる。
【0065】
続いて、情報処理装置40は、生成した学習済みモデルMに基づいて、ウェアラブルデバイス20で取得したユーザ1の生体データD1を解析して、疾患情報D5を生成する。
【0066】
図7は、疾患情報D5の構成の概略を説明するブロック図である。図示のように、疾患情報D5は、評価情報d1及び療法情報d2によって構成される。
【0067】
評価情報d1は、本実施の形態では、ユーザ1の疾患の重症度を数値的に評価した情報であって、例えば「重症度:1」、「重症度:2」、「重症度:n」のように、重症度を複数の段階に区分して評価したものである。
【0068】
療法情報d2は、本実施の形態では、認知障害や気分障害といった精神疾患を患っている場合には、その重症度に応じて例えば、そのユーザ1に由来があってユーザ1の精神状態を安定させるような映像や音楽等を視聴させるコンテンツに関する情報であることが想定される。
【0069】
このコンテンツに関する情報には、例えば、コンテンツがアップロードされたウェブサイトのURLが含まれていてもよい。
【0070】
一方、療法情報d2は、生活習慣病のような未病に陥っている場合には、その重症度に応じて例えば、適宜な運動のメニューが組み込まれた運動プログラムに関する情報や、食事のメニューが組み込まれた食事プログラムに関する情報であることが想定される。
【0071】
この運動プログラムに関する情報や食事プログラムに関する情報には、例えば、プログラムが記載されたテキストデータや映像等のコンテンツがアップロードされたウェブサイトのURLが含まれていてもよい。
【0072】
図8は、疾患情報送信処理部44、検知処理部45、報酬情報送信処理部46及び処理信号送信処理部47の処理の概略を説明するシーケンス図である。
【0073】
図示のように、ステップS1において、情報処理装置40が疾患情報D5を生成すると、ステップS2において、疾患情報送信処理部44が疾患情報D5をユーザ端末30に送信し(疾患情報送信処理)、ステップS3において、ユーザ端末30が疾患情報D5を受信する。
【0074】
本実施の形態では、ユーザ1が、受信した疾患情報D5の療法情報d2において処方された療法(例えば、ユーザ1の精神状態を安定させるような任意の映像コンテンツを視聴する。)を実行すると、映像コンテンツを視聴した旨のログが記録される。
【0075】
映像コンテンツを視聴した旨のログが記録されると、ステップS4において、検知処理部45がログの記録に基づいて療法の実行を検知し(検知処理)、ステップS5において、療法の実行を検知した旨の検知信号を情報処理装置40に送信する。
【0076】
ステップS6において、情報処理装置40が検知信号を受信すると、報酬情報送信処理部46は、ステップS7において、報酬情報をユーザ端末30に送信し(報酬情報送信処理)、ステップS8において、ユーザ端末30は報酬情報を受信する。
【0077】
この報酬情報は、本実施の形態では例えば、任意の店舗でキャッシュレス決済が可能な金銭的価値を有するポイントであってもよい。すなわち、療法の実行によって、ユーザ1には金銭的価値を有するポイントが付与されることから、療法の実行が促進される。
【0078】
一方、ステップS9において、情報処理装置40が任意の時間内に検知信号を受信しない場合は、処理信号送信処理部47は、ステップS10において、処理信号をユーザ端末30に送信する(処理信号送信処理)。
【0079】
ユーザ端末30が処理信号を受信すると、ステップS11において、本実施の形態では、ユーザ端末30あるいはウェアラブルデバイス20のいずれか一方において、ユーザ端末30あるいはウェアラブルデバイス20に内蔵されるモータが駆動してユーザ端末30あるいはウェアラブルデバイス20が振動(バイブレーション)する、あるいはユーザ端末30のディスプレイ32あるいはウェアラブルデバイス20のディスプレイ22に例えば「映像を見ましょう」といった旨のメッセージが表示される等の任意の処理が実行される。
【0080】
このように、処理信号に基づいてバイブレーションが発生したりメッセージが表示されたりすることによって、療法を実行していないユーザ1にその療法の実行を促すことができる。
【0081】
図9は、医療従事者端末50の機能の概略を説明するブロック図である。図示のように、医療従事者端末50は、評価データ受付部51、処方情報受付部52及び送信処理部53を備える。
【0082】
評価データ受付部51、処方情報受付部52及び送信処理部53は、メモリ102に記憶されたプログラムをプロセッサ101で実行することによって実現される。
【0083】
評価データ受付部51は、評価データD3を受け付ける処理を実行し、処方情報受付部52は、処方情報D4を受け付ける処理を実行し、かつ送信処理部53は、受け付けた評価データD3及び処方情報D4を情報処理装置40に送信する処理を実行する。
【0084】
次に、情報処理システム10の処理について説明する。
【0085】
図10は、情報処理システム10の処理の概略を説明するフローチャートである。図示のように、ステップS20において、ウェアラブルデバイス20がユーザ1の生体データD1を取得する。
【0086】
ウェアラブルデバイス20がユーザ1の生体データD1を取得すると、この生体データD1に基づいて医療従事者3が評価データD3を作成するとともに、この評価データD3に基づいて処方情報D4を作成する。
【0087】
続いて、医療従事者3が医療従事者端末50を介して、作成した評価データD3及び処方情報D4を入力すると、ステップS21において、入力した評価データD3及び処方情報D4を受け付ける。
【0088】
評価データD3及び処方情報D4を受け付けると、受け付けた評価データD3及び処方情報D4を教師データとして生体データD1に関連づけて学習データD2を生成する。
【0089】
学習データD2を生成すると、ステップS22において、生成した学習データD2で機械学習を行うことによって、学習済みモデルMを生成する。これによって、学習段階(学習済みモデル生成段階)が終了し、以後、学習済みモデルMの利用段階が開始される。
【0090】
ステップS23において、ウェアラブルデバイス20がユーザ1の生体データD1を取得すると、情報処理装置40は、学習済みモデルMに基づいて、評価情報生成処理及び療法情報生成処理を自律的に実行して、ステップS24において、疾患情報D5を生成する。
【0091】
本実施の形態では、例えば、生成した疾患情報D5のうちの評価情報d1が認知症の「重症度:2」であり、療法情報d2が、例えばユーザ1の興味関心を喚起させるような映像コンテンツがアップロードされたウェブサイトのURLが含まれるものであるとする。
【0092】
疾患情報D5を生成すると、情報処理装置40は疾患情報D5をユーザ端末30に送信する(疾患情報送信処理)。このとき、ユーザ1が療法情報d2に含まれるウェブサイトのURLを介して映像コンテンツを視聴すると、映像コンテンツを視聴した旨のログが記録され、ステップS25において、ログの記録に基づいて療法の実行を検知する(検知処理)。
【0093】
療法の実行を検知すると、ステップS26において、報酬情報をユーザ端末30に送信し(報酬情報送信処理)、ユーザ端末30は報酬情報を受信する。
【0094】
一方、ステップ25において、任意の時間内に療法の実行を検知しない場合は、処理信号をユーザ端末30に送信し(処理信号送信処理)、ステップ27において、処理信号に基づいて、ユーザ端末30において任意の処理を実行する。
【0095】
本実施の形態では、ユーザ端末30を振動させる、あるいはユーザ端末30のディスプレイ32に例えば「映像を見ましょう」といった旨のメッセージを表示させる等といった任意の処理を実行する。
【0096】
ユーザ端末30で処理が実行されてユーザ1が療法を実行する(例えば、ウェブサイトのURLを介して映像コンテンツを視聴する)と、ステップ28において、ログの記録に基づいて療法の実行を検知する(検知処理)。
【0097】
療法の実行を検知すると、ステップS26において、報酬情報をユーザ端末30に送信し(報酬情報送信処理)、ユーザ端末30は報酬情報を受信する。
【0098】
一方、ステップ28において、任意の時間内に療法の実行を検知しない場合は、再度、処理信号をユーザ端末30に送信する(処理信号送信処理)。
【0099】
ところで、本実施の形態では、疾患情報D5の療法情報d2で提示される療法を実行した後のユーザ1の生体データD1を取得して、この生体データD1について、療法を実行した後の疾患の重症度の改善の程度を評価した評価データD3及び処方情報D4を改めて作成して、これらを入力する処理が実行されることが好ましい。
【0100】
改めて作成した評価データD3及び処方情報D4を教師データとして学習データD2を生成して、この学習データD2で再度、機械学習を実行すれば、学習済みモデルMの精度が向上することから、評価情報生成処理で生成される評価情報d1及び療法情報生成処理で生成される療法情報d2が向上する。
【0101】
さらに、療法を実行した後のユーザ1の生体データD1の再度の学習によって、報酬情報送信処理及び処理信号送信処理を実行するタイミングや処理内容についても機械学習が実行されることから、処理を実行するタイミングや処理内容の最適化が図られる。
【0102】
例えば、療法を実行する前のユーザ1の生体データD1に基づいて生成された評価情報d1及び療法情報d2と、療法を実行した後のユーザ1の生体データD1に基づいて生成された評価情報d1及び療法情報d2との差分に基づいて、報酬情報送信処理及び処理信号送信処理を実行するタイミングや処理内容について機械学習が実行される。
【0103】
その結果、例えば、処理信号送信処理によってユーザ端末30が振動する処理が実行されていたところ、ウェアラブルデバイス20が振動する処理のほうが好適であると機械学習されて、最適化されたタイミングと処理内容で処理信号送信処理を実行する。
【0104】
このように、評価情報生成処理において、生体データD1に基づいて評価情報d1を生成することから、疾患を検知したうえで疾患の重症度及び重症化するリスクを適切に評価することができる。
【0105】
さらに、療法情報生成処理において、生成した評価情報d1に基づいて予防介入で処方される療法に関する療法情報d2を生成することから、疾患の検知、その評価及び予防介入で処方される療法の提供に至るまでの過程を連続して適切に実行することができる。
【0106】
したがって、疾患を早期に検知することができるとともに、疾患を検知した場合に予防介入がスムーズに実行されることから、疾患の重症化の進行を抑制することができる。
【0107】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0108】
上記実施の形態では、評価情報生成処理及び療法情報生成処理が学習済みモデルMを用いて実行される場合を説明したが、例えば、予め取得されて情報処理装置40に格納された生体データD1とウェアラブルデバイス20で取得した生体データD1とを対比して疾患に関する評価情報d1を生成するとともに、この評価に対応して予め設定された処方情報D4に基づいて療法情報d2を生成するように構成してもよい。
【0109】
上記実施の形態では、ユーザ1が精神疾患を患っている場合には、処方情報D4がユーザ1の精神状態を安定させるような映像や音楽等に関するコンテンツをユーザ1に提供する旨の情報である場合を説明したが、例えば、ユーザ1の精神状態を安定させるような芳香剤をユーザ1に提供する旨の情報であってもよい。
【0110】
この場合、療法情報d2は、精神疾患を患っている場合には、例えば、ユーザ1の居住空間に配置されるディフューザを介してその居住空間に向けてユーザ1の精神状態を安定させるような芳香剤を噴射するようにディフューザを制御する情報であることが想定される。
【0111】
このディフューザを制御する情報は、例えば、ネットワークを介してディフューザにアクセスしてディフューザを起動させる信号であってもよく、この場合、ディフューザがユーザ端末となる。
【0112】
なお、ディフューザを起動させる信号によってディフューザが芳香剤を噴射したときに、ユーザ1が療法を実行したとして検知処理が実行される。
【0113】
ところで、療法情報d2として運動プログラムに関する情報が提供された場合は、ウェアラブルデバイス20を装着したユーザ1が運動プログラムを実行すると、ウェアラブルデバイス20がユーザ1の運動の状態をデータとして取得することから、このデータに基づいて検知処理が実行される。
【0114】
一方、療法情報d2として食事プログラムに関する情報が提供された場合は、食事プログラムに従った食事を摂取している画像を撮像して任意のウェブサイトにアップロードすると、アップロードされた際に記録されるログに基づいて、検知処理が実行される。
【0115】
上記実施の形態では、処理信号に基づく任意の処理がユーザ端末30で実行される場合を説明したが、ウェアラブルデバイス20を含む生体データ取得装置で実行されるように構成してもよい。
【0116】
上記実施の形態では、情報処理装置40が事業者2に配備される場合を説明したが、情報処理装置40はクラウド環境で実装されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 ユーザ
3 医療従事者
10 情報処理システム
20 ウェアラブルデバイス(生体データ取得装置)
30 ユーザ端末
40 情報処理装置
50 医療従事者端末