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特開2023-183082組立作業手順特定支援装置、組立作業手順特定支援システム、組立作業手順特定支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183082
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】組立作業手順特定支援装置、組立作業手順特定支援システム、組立作業手順特定支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20231220BHJP
   G06F 119/18 20200101ALN20231220BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F119:18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096503
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】村上 拓明
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA07
5B146AA17
5B146DE12
5B146DE16
5B146EA09
5B146EC10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】干渉の有無を考慮した組立作業手順の特定を容易にする組立作業手順特定支援装置、システム、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】組立作業手順特定支援装置と情報管理装置が、ネットワークを介して接続する組立作業手順特定支援システムにおいて、組立作業手順特定支援装置は、組み立て対象の製品を構成する各部品の3次元モデルと部品の相互の配置関係の情報を含む設計データを記憶する第1記憶部と、設計データに基づいて、各部品を、締結部品と被締結部品とに分類する分類部と、分類された締結部品により被締結部品を締結する際に、締結に使用する締結工具と組み立て途中の製品とが干渉するか否かを判定する干渉チェック部と、組み立て手順の複数の候補のそれぞれについて、干渉チェック手段による判定を行って、締結工具と組み立て途中の製品とが干渉しない組立可能手順を求め、求めた組立可能手順の評価指標値を求める評価部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み立て対象の製品を構成する各部品の3次元モデルと前記部品の相互の配置関係の情報を含む設計データを記憶する設計データ記憶手段と、
前記設計データに基づいて、各前記部品を、締結部品と該締結部品により締結される被締結部品とに分類する分類手段と、
前記分類された前記締結部品により前記被締結部品を締結する際に、締結に使用する締結工具と組み立て途中の前記製品とが干渉するか否かを判定する干渉チェック手段と、
組み立て手順の複数の候補のそれぞれについて、前記干渉チェック手段による判定を行って、前記締結工具と前記組み立て途中の製品とが干渉しない組立可能手順を求め、求めた組立可能手順の評価指標値を求める評価手段と、
を備える、組立作業手順特定支援装置。
【請求項2】
前記評価手段により求められた評価指標値に基づいて、前記評価手段により求められた組立可能手順のうちから、前記製品の組立手順を選択する手順選択手段をさらに備える、請求項1に記載の組立作業手順特定支援装置。
【請求項3】
前記干渉チェック手段は、締結工具が組み立て途中の前記製品と干渉すると判定すると、前記締結工具とは異なる他の締結工具について、前記組み立て途中の前記製品と干渉するか否かを判定する、
請求項1又は2に記載の組立作業手順特定支援装置。
【請求項4】
前記干渉チェック手段は、判定対象の締結部品を判定対象の締結工具で締結処理したときに、締結工具が占める空間と前記組み立て途中の製品が占める空間が重なるか否かにより、締結工具と組み立て途中の前記製品とが干渉するか否かを判定する、
請求項1又は2に記載の組立作業手順特定支援装置。
【請求項5】
前記評価指標値は、複数の指標値を備え、
前記複数の指標値には、それぞれ、優先順位が予め定められており、
前記手順選択手段は、前記優先順位の上位の評価指標値に基づいて、前記製品の組立手順を選択する、請求項2に記載の組立作業手順特定支援装置。
【請求項6】
前記評価指標値は、前記製品の組立作業に要する作業時間を含む、請求項5に記載の組立作業手順特定支援装置。
【請求項7】
前記手順選択手段によって求めた前記組立手順を出力する手順出力手段をさらに備える、請求項2に記載の組立作業手順特定支援装置。
【請求項8】
請求項1に記載の組立作業手順特定支援装置と、情報管理装置とを備え、
前記情報管理装置は、
組み立て対象の製品を構成する各部品の3次元モデルと前記部品の相互の配置関係の情報を含む設計データの登録を受け付ける登録受付手段と、
新規製品を指定する製品特定情報を受け付ける製品特定情報受付手段と、
受け付けた製品特定情報で特定される製品の前記設計データを前記組立作業手順特定支援装置に送付する製品情報送付手段と、を備える、
組立作業手順特定支援システム。
【請求項9】
組み立て対象製品の設計データを記憶し、
前記設計データに基づいて、前記対象製品を構成する部品を、締結部品と該締結部品により締結される被締結部品とに分類し、
前記分類された前記締結部品により前記被締結部品を締結する際に、締結に使用する締結工具と組み立て途中の前記製品とが干渉するか否かを判定し、
前記干渉の生じない組立可能手順を求める、
組立作業手順特定支援方法。
【請求項10】
コンピュータに、
組み立て対象製品の設計データを記憶し、
前記設計データに基づいて、前記対象製品を構成する部品を、締結部品と該締結部品により締結される被締結部品とに分類し、
前記分類された前記締結部品により前記被締結部品を締結する際に、締結に使用する締結工具と組み立て途中の前記製品とが干渉するか否かを判定し、
前記干渉の生じない組立可能手順を求める、
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組立作業手順特定支援装置、組立作業手順特定支援システム、組立作業手順特定支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
3次元CADデータを用いて、加工工程の設定および工数見積もりを行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、加工対象物の3次元CADデータから抽出した部品構成情報および形状要素情報に属性情報を付加し、これらの情報に基づいて加工対象物に対する加工工程の設定及び工数見積もりを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-280715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、実際の加工工程で生ずる様々な制約を考慮していない。例えば、組み立て工程で、複数の部品をネジ等の締結部品で互いに締結する場合、締結に使用する工具と組み立て途中の製品とが干渉してしまい、その工具を使用できない、或いは、工程が成立しない場合が発生しうる。このため、特許文献1に開示された技術では、適切な組み立て作業手順を特定できない場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、適切な組立作業手順を容易に特定可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示に係る組立作業手順特定支援装置は、設計データ記憶手段と、分類手段と、干渉チェック手段と、評価手段を備える。設計データ記憶手段は、組み立て対象の製品を構成する各部品の3次元モデルと部品の相互の配置関係の情報を含む設計データを記憶する。分類手段は、設計データに基づいて、各部品を、締結部品と該締結部品により締結される被締結部品とに分類する。干渉チェック手段は、分類された締結部品により被締結部品を締結する際に、締結に使用する締結工具と組み立て途中の製品とが干渉するか否かを判定する。評価手段は、組み立て手順の複数の候補のそれぞれについて、干渉チェック手段による判定を行って、締結工具と組み立て途中の製品とが干渉しない組立可能手順を求め、求めた組立可能手順の評価指標値を求める。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、組み立て作業手順の候補について、干渉の有無の判定を行って、干渉の発生しない組立可能手順を求めると共に組立可能手順の評価指標値を求める。従って、干渉の発生の有無と評価指標値を考慮して、適切な組立作業手順を容易に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る組立作業手順特定支援システムの構成を示すブロック図
図2】実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置の機能構成を示すブロック図
図3】実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置の第1記憶部に保存される製品管理テーブルの一例を示す図
図4】実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置の第1記憶部に保存される部品管理テーブルの一例を示す図
図5】実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置の第1記憶部に保存される締結部品マスタテーブルの一例を示す図
図6】実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置の第1記憶部に保存される材料マスタテーブルの一例を示す図
図7】実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置の第1記憶部に保存される工具マスタテーブルの一例を示す図
図8】実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置の第1記憶部に保存される締結マスタテーブルの一例を示す図
図9】実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置の第1記憶部に保存される制約マスタテーブルの一例を示す図
図10】実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置の第1記憶部に保存される優先手順マスタテーブルの一例を示す図
図11】実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置の第1記憶部に保存される基準時間データの一例を示す図
図12】締結工具と被締結部品とが干渉する状態を説明するための図
図13】実施の形態に係る情報管理装置の機能構成を示すブロック図
図14】実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置のハードウェア構成の一例を示す図
図15】実施の形態に係る組立作業手順決定処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置、組立作業手順特定支援システム、組立作業手順特定支援方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態に係る組立作業手順特定支援装置を、締結部品で被締結部品を互いに締結して組み立てることにより製造される製品の組立作業手順の特定を支援する装置を例に説明する。なお、締結部品は、被締結部品を相互に連結又は接続できるならば、その種類は任意であり、例えば、ネジ、リベット、ファスナ、蝶番、継手、リンク機構、接着剤、等を広く含む。ただし、以下の説明では、理解を容易にするため、締結部品をネジとする。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態に係る組立作業手順特定支援システム1は、処理対象の製品の組立作業手順を特定する組立作業手順特定支援装置100と、組立作業手順を特定するために必要な種々の情報を管理する情報管理装置200とを含む。
【0012】
組立作業手順特定支援装置100と情報管理装置200とは、ネットワークNWを介して相互に通信可能に接続されている。組立作業手順特定支援装置100と情報管理装置200は、それぞれ、例えば、コンピュータで構成されている。ネットワークNWは、有線、無線、WAN(Wide Area Network),LAN(Local Area Network)、イントラネット、エクストラネットを問わない。
【0013】
組立作業手順特定支援装置100は、図2に示すように、組立作業手順の決定に必要なデータを記憶する第1記憶部120と、製品の情報を取得する製品情報取得部101と、構成部品を、ネジと被締結部品に分類する分類部102と、締結の際に使用される締結工具の干渉の有無をチェックする干渉チェック部103と、各種の判定を行う判定部104と、被締結部品の重量、組立に要する各種作業時間等を算出する算出部105と、組立作業手順を決定する手順決定部106と、決定された手順を出力する手順出力部107とを備える。なお、本実施の形態において、締結工具はドライバーを含む。
【0014】
第1記憶部120は、処理対象の製品を構成する部品と部品それぞれの個数を格納する製品管理テーブル121と、各部品の属性情報を格納する部品管理テーブル122と、締結部品であるネジの諸元情報を格納する締結部品マスタテーブル123と、被締結部品を構成する可能性がある材料の属性情報を格納する材料マスタテーブル124と、締結工具の諸元情報を格納する工具マスタテーブル125と、ネジとそのネジに使用する締結工具との組み合わせを示す情報を格納する締結マスタテーブル126と、組立作業時の作業の制約を示す情報を格納する制約マスタテーブル127と、組立作業手順を決定する際の基準となる要素の優先順位を示す情報を格納する優先手順マスタテーブル128と、各作業の基準となる所要時間を示す基準時間データ129と、算出されたデータを格納する算出データ記憶部130を保存する。第1記憶部120は、本開示に係る設計データ記憶手段の一例である。
【0015】
図2に示す製品管理テーブル121は、図3に例示するように、設計された各製品について、その識別情報と、その製品を構成する構成部品の識別情報とその数を示す情報を格納する。図3の例では、例えば、識別情報PD1が付された製品は、部品M1を4個、部品M3を3個、部品M7を1個...によって構成される。
【0016】
図2に示す部品管理テーブル122は、図4に例示するように、製品を構成する部品の識別情報と、その属性、具体的には、「名称」と「種別」と「材質」、さらに、部品がネジの場合、「呼び径」と「ネジピッチ」と「ネジ長さ」と「頭形状」と「穴形状」と「図面情報」...を対応付けたテーブルである。部品は、締結部品と被締結部品の両方を含む。識別番号は各部品を識別する情報である。属性の項目は、部品毎に設定される。また、「図面情報」は、各部品の図面、図面番号、各部品が製品のどの部分に位置するかを示す図面、3次元モデル上の位置座標等を示す情報又はその格納位置のアドレスが格納されている。
【0017】
図4は、図3に示す製品PD1についての部品管理テーブル122の例であり、4つの構成部品M1のうちの001番の部品は、「名称」が「ネジA1」で、種別が「メートル並目」で、「材質」が「SUS304」で、...図面のファイル名が「FiginfoM1_001」であることを例示している。
【0018】
図2示す締結部品マスタテーブル123は、図5に例示するように、設計に使用される様々な締結部品について、その特性情報を格納する。本実施形態では、締結部品はネジであるので、ネジの識別番号と、「名称」と「ネジ種別」と「材質」と「呼び径」と「ネジピッチ」と「ネジ長さ」と「頭形状」と「穴形状」と「図面情報」とを対応付けたテーブルである。「図面情報」は、ネジの図面、図面番号、ネジと締結工具とが接する箇所を示すシンボルマークの付された図面等の情報又はその格納場所のアドレスが格納されている。
【0019】
図2に示す材料マスタテーブル124は、図6に例示するように、設計で使用される様々な部品を構成する材料の識別番号と、「名称」と「記号」と「比重」と「金属/非金属」と「鉄/非鉄」とを対応付けたテーブルである。「金属/非金属」は、材料が金属に該当する場合は、「○」で示される。「鉄/非鉄」は、材料が鉄に該当する場合は、「○」で示される。例えば、「ステンレスA」は、非鉄金属のため、「金属/非金属」の欄には「○」で示され、「鉄/非鉄」の欄には「-」で示される。
【0020】
図2に示す工具マスタテーブル125は、図7に例示するように、様々な製品の組み立てに使用される工具の識別番号と、「名称」と「種別」と「先端サイズ」と「全長」と「軸長」と「図面情報」とを対応付けたテーブルである。図7における「名称」は、工具の名称を意味する。「種別」は、工具の種類を意味し、例えば、プラスドライバー、マイナスドライバー等が該当する。「先端サイズ」は、工具の先端の大きさを示す、先端の軸径を意味する。例えば、先端サイズは、「#1」、「#2」等が該当する。なお、サイズ番号が大きくなるにつれて、先端の軸径が大きくなる。「全長」は、工具の軸方向の長さを意味する。「軸長」は、軸の付け根から先端までの長さを意味する。また、「図面情報」は、工具の図面、図面番号、ネジと接する箇所を示すシンボルマークを付した図面等の情報又はその記憶位置のアドレスが格納されている。
【0021】
図2に示す締結マスタテーブル126は、図8に例示するように、締結方法の識別番号と、「名称」と「ネジ」と「工具」と「推奨フラグ」とを対応付けたテーブルである。図8における「名称」は、締結方法の名称を意味する。「推奨フラグ」は、ネジと工具との推奨される組み合わせに「○」が示される。例えば、識別番号S1のネジ締めAの場合、ネジA1の締め付けにドライバーAを使用することが推奨される。なお、締結マスタテーブル126には、推奨する工具以外にも、使用可能な工具が列記されている。
【0022】
図2示す制約マスタテーブル127は、図9に例示するように、予め想定される基準となる部品について、「サイズ」と「重量」と「運搬時間」と「複数人作業有無」等の制約情報を対応付けたテーブルである。「部品」は、部品の認識番号を意味する。「サイズ」は、部品の幅×奥行×厚さを意味する。「重量」は、部品の重さを意味する。「運搬時間」は、部品を運搬するのに要するメートル単位の時間を意味する。「複数人作業有無」は、複数人の作業を要する部品の場合には「○」で示される。なお、図9に示される制約情報に限らず、任意の種類の制約情報が制約マスタテーブル127に格納されてもよい。例えば、「クレーン要否」の欄が設けられて、部品の運搬にクレーンを必要とする部品の場合は、「○」で示されてもよい。図9の制約マスタテーブル127における数値は、一例に過ぎない。製品を構成する部品の識別情報、サイズ、重量、それらに対応する運搬時間等が管理者または作業者によって制約マスタテーブル127に追加されてもよい。さらに、制約マスタテーブル127におけるサイズ、重量等の情報は、数値に限らず、数値範囲を示す情報であってもよい。
【0023】
図2に示す優先手順マスタテーブル128は、図10に例示するように、特定基準要素と、その「上限値」と「下限値」と「優先順位」とを対応付けたテーブルである。特定基準要素は、組立作業手順を特定する際に基準となる評価の要素であり、その組み立て作業手順を採用したときの、作業時間、工具取り替え回数、作業者移動距離等を意味する。「上限値」は、各特定基準要素の上限の値を意味する。「下限値」は、各特定基準要素の下限の値を意味する。「優先順位」は、組立作業手順を決定する際に、優先される順位を意味する。組立作業手順の決定において、各特定基準要素の上限値を超える値を示す手順、または、下限値を下回る値を示す手順は、候補から外される。なお、特定基準要素は、本開示に係る評価指標値の一例である。
【0024】
図2に示す基準時間データ129は、図11に例示するように、作業内容と、それに対応する所要時間とを示すデータである。「工具取替」は、別の工具に取り替えることを意味する。工具取替には、使用中のドライバーから別のドライバーへの持ち替え、ドライバーのビットの取り替え等が含まれる。「締結」は、部品の締結を意味する。また、「工具取り」は、工具取り替えをするために、作業者が対象工具を取りに行ってから戻ってくるまでを意味する。図11の例では、例えば、作業内容が「工具取替」の場合、1回の工具取り替えに要する時間は、2分である。なお、基準時間データ129に保存された基準データは一例であって、各作業内容には、任意の作業時間が設定されてもよい。
【0025】
図2に示す算出データ記憶部130は、組立作業手順特定支援装置100における各種の処理によって求められたデータが一時的に保存される。
【0026】
図2に示す製品情報取得部101は、ネットワークNWを介して、情報管理装置200の第2記憶部230に保存された製品情報231を取得する。製品情報231は、例えば、3次元のCADデータ等の設計情報である。この3次元CADデータは、製品の3次元形状を示す3次元モデルと、フィーチャ情報と、製品を構成する部品の名称、個数、材質などの部品構成情報を含む。本実施の形態において、フィーチャ情報とは、3次元モデルの形状要素の情報を示す形状要素情報を意味する。形状要素情報は、例えば、特定の部品に施された、穴、カーブなどの形状の種類、個々の形状要素の寸法情報といった文字情報で管理可能な情報である。製品情報取得部101は、取得した3次元CADデータから、製品を構成する構成部品とその個数を求め、製品管理テーブル121に追記する。また、製品情報取得部101は、3次元CADデータから、部品の名称、材質など、部品の属性を示す部品属性情報を求め、部品管理テーブル122に追記する。3次元CADデータは、組み立て対象の製品を構成する各部品の3次元モデルだけでなく、部品の相互の配置関係の情報を含む設計データである。なお、3次元CADデータは、本開示に係る設計データの一例である。
【0027】
分類部102は、締結部品マスタテーブル123に基づいて、製品を構成する部品を、ネジと被締結部品とに分類する。通常、3次元CADデータは、被締結部品と締結部品とを区別していない。このため、分類部102は、製品を構成する部品を締結部品と被締結部品とに分類する。例えば、製品管理テーブル121に登録されている製品PD1を構成する部品M1のうち、部品管理テーブル122に登録された部品「M1_001」の場合、名称「ネジA1」等の属性は、締結部品マスタテーブル123におけるネジの識別番号「T1」の属性と同じである。このため、分類部102は、部品「M1_001」をネジに分類する。なお、枝番「001」は、複数の部品M1のうち、各部品が製品上のどの部分に位置する部品であるかを識別するための識別情報である。分類部102は、本開示に係る分類手段の一例である。
【0028】
図2に示す干渉チェック部103は、各製品の想定しうる各組み立て手順の各工程において、締結工具が組み立て中の製品に干渉するか否かをチェックする。例えば、図12に示す製品500を想定する。製品500は、被締結部品502、504を備える。被締結部品502は、側面視でL字型の形状を有している。被締結部品504は、ネジH1によって被締結部品502に締結されている。この状態で、例えば、被締結部品502と薄板TpとをネジH0で締結する工程を想定すると、干渉チェック部103は、ドライバー510の3次元モデルとその動き、さらに、組み立て途中の製品の3次元モデルとから、ドライバー510をネジH0の頭部に配置すると、図示するように、ドライバー510と被締結部品504とが干渉すると判定する。当該干渉の有無の判定は、ドライバー510の位置座標と、被締結部品504の位置座標の重なりの有無によって行われる。本実施の形態において、干渉が生じた場合、干渉チェック部103は、締結マスタテーブル126を参照し、ネジH0を締めるのに使用可能な他の工具を特定し、干渉の有無をチェックする。図12の構成の場合、ドライバー510よりも軸方向の長さが短いドライバーに替えてネジ締めを行うことにより、干渉チェック部103は、ドライバーと被締結部品504との干渉が回避され得ると判定する。
なお、干渉の有無は、組み立て作業の手順の差により変化する。例えば、被締結部品504を被締結部品502に締結する前に、ドライバー510によって被締結部品502に簿板TpをネジH0によりネジ締めする場合には、被締結部品504が存在しないため、干渉チェック部103は、ドライバー510は組み立て途中の製品と干渉しないと判定する。干渉チェック部103は、本開示に係る干渉チェック手段の一例である。
【0029】
判定部104は、製品を構成する部品のうち、分類部102によって分類されていない構成部品があるか否かを判定する。また、判定部104は、ネジの個数mの階乗(m!)通りの作業手順候補のうちの全ての手順が特定されたか否かを判定する。詳細は後述する。
【0030】
図2に示す算出部105は、被締結部品の体積、重量を求める。また、算出部105は、作業手順の候補を求める。さらに、算出部105は、工具取替回数、作業者移動距離を求める。また、算出部105は、求めた組立可能な手順に対して、運搬時間、締結時間、工具取り時間、工具取替時間を求める。さらに、算出部105は、求めた各組立可能手順の運搬時間、締結時間等を加算して合計値を、各組立可能手順の作業時間として求める。詳細は後述する。なお。算出部105は、これらに限らず、組立手順決定処理を行うに際し、他の任意の種類の値、データ等を求めてもよい。求めた値、データ等は、算出データ記憶部130に保存される。算出部105は、本開示に係る評価手段の一例である。
【0031】
図2に示す手順決定部106は、優先手順マスタテーブル128に基づいて、算出部105によって求めた組立可能な手順の中から、組立手順を決定する。具体的には、手順決定部106は、優先手順マスタテーブル128に示される各特定基準要素の上限値を超える組立可能な手順と、各特定基準要素の下限値未満の組立可能な手順を除外する。図10の場合には、優先順位が最上位の特定基準要素は作業時間である。このため、手順決定部106は、各組立可能手順の作業時間に基づいて、予め定められた数の組立手順を選択する。具体的には、手順決定部106は、除外されずに残った組立可能な手順の中から、作業時間が最小値である手順を予め定められた数だけ特定する。なお、手順決定部106は、本開示に係る手順選択手段の一例である。
【0032】
手順出力部107は、手順決定部106によって決定した組立手順を出力する。具体的には、手順出力部107は、組立作業手順特定支援装置100の図示しない表示部に組立手順を表示する。なお、手順出力部107は、図示しない表示装置、作業者のユーザ端末等、組立作業手順特定支援装置100の外部に組立手順を表示してもよい。なお、手順出力部107は、本開示に係る手順出力手段の一例である。
【0033】
情報管理装置200は、図13に示すように、製品情報の登録を受け付ける登録受付部201と、製品特定情報を受け付ける製品特定情報受付部202と、製品の3次元CADデータを組立作業手順特定支援装置100に送付する製品情報送付部203と、製品情報231を保存する第2記憶部230とを備える。
【0034】
登録受付部201は、製品情報の登録を受け付け、製品情報を第2記憶部230に保存する。本実施の形態において、上述したように、製品情報は3次元CADデータである。製品特定情報受付部202は、新規製品情報を指定する製品特定情報を受け付ける。対象製品の組立作業手順の決定処理を行うために、製品情報送付部203は、第2記憶部230に保存された製品情報231を組立作業手順特定支援装置100へ送付する。なお、登録受付部201は、本開示に係る登録受付手段の一例である。また、製品特定情報受付部202は、本開示に係る製品特定情報受付手段の一例である。さらに、製品情報送付部203は、本開示に係る製品情報送付手段の一例である。
【0035】
以上、組立作業手順特定支援システム1の機能的構成を説明した。次に、組立作業手順特定支援装置100のハードウェア構成について図14を用いて説明する。なお、情報管理装置200のハードウェア構成は、組立作業手順特定支援装置100と同様である。図14に示すように、組立作業手順特定支援装置100は、制御プログラムをロードする一時記憶部111、組立作業手順特定支援装置100の処理を計算部113に行わせるためのプログラムを予め記憶する記憶部112、制御プログラムに従って、組立作業手順特定支援装置100の各機能部が実行すべき処理を実行する計算部113、入力装置と、入力装置を内部BUSに接続する入力部114、網終端装置または無線通信装置、およびそれらと接続するシリアルインタフェースまたはLAN(Local Area Network)インタフェースを備える送受信部115およびLCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(electroluminescence)ディスプレイなどの表示装置を備える表示部116を備える。一時記憶部111、記憶部112、入力部114、送受信部115および表示部116はいずれも内部BUSを介して計算部113に接続されている。
【0036】
計算部113は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備える。計算部113は、記憶部112に記憶されている制御プログラムに従って、組立作業手順特定支援装置100の分類部102と、干渉チェック部103と、判定部104と、算出部105と、手順決定部106の実行すべき処理を実行する。
【0037】
一時記憶部111は、例えばRAM(Random-Access Memory)を備える。一時記憶部111は、記憶部112に記憶されている制御プログラムをロードし、計算部113の作業領域として用いられる。
【0038】
記憶部112は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD-RAM(Digital Versatile Disc - Random Access Memory)、DVD-RW(Digital Versatile Disc - ReWritable)などの不揮発性メモリを備える。記憶部112は、組立作業手順特定支援装置100の処理を計算部113に行わせるためのプログラムを予め記憶し、また、計算部113の指示に従って、このプログラムが記憶するデータを計算部113に供給し、計算部113から供給されたデータを記憶する。締結部品マスタテーブル123、材料マスタテーブル124等を格納する第1記憶部120は、記憶部112に構成される。
【0039】
入力部114は、キーボード、ポインティングデバイス、音声入力機器などの入力装置と、入力装置を内部BUSに接続するインタフェース装置を備える。入力部114を介して、ユーザが入力した情報が計算部113に供給される。ユーザが組立作業手順特定支援装置100に製品情報を直接入力する構成では、入力部114は、製品情報取得部101として機能する。
【0040】
送受信部115は、ネットワークに接続する網終端装置または無線通信装置、およびそれらと接続するシリアルインタフェースまたはLAN(Local Area Network)インタフェースを備える。送受信部115は、製品情報取得部101および手順出力部107として機能する。
【0041】
表示部116は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(electroluminescence)ディスプレイなどの表示装置を備える。組立作業手順特定支援装置100が組立作業手順を画面表示する構成では、表示部116は、手順出力部107として機能する。
【0042】
図2に示す組立作業手順特定支援装置100の製品情報取得部101、分類部102,干渉チェック部103、判定部104、算出部105、手順決定部106、手順出力部107、および、第1記憶部120は、制御プログラムが、一時記憶部111、計算部113、記憶部112、入力部114、送受信部115および表示部116などを資源として用いて実行すべき処理を実行する。
【0043】
組立作業手順特定支援装置100による組立手順決定処理の動作を説明する。
前提として、設計者は、第1記憶部120の各種のマスタテーブルに保存されているデータの範囲内で対象製品を設計する。設計者は、製品の設計を完了し、組み立て作業手順を決定する段階になると、自己の端末から、完了した製品の製品情報231を、製品の識別情報とともに情報管理装置200における第2記憶部230に保存する。なお、製品の識別情報は、第2記憶部230に保存されるときに、登録受付部201によって自動的に割り当てられてもよい。また、製品情報231の保存は、作業施設の管理者が行っても良い。製品の組立作業手順を決定するために、管理者が組立作業手順特定支援装置100を起動する。起動すると、管理者は、組立作業手順を決定する製品の識別情報を特定する。組立作業手順特定支援装置100は、図15に例示する組立作業手順決定処理を開始する。
【0044】
まず、組立作業手順特定支援装置100の製品情報取得部101は、特定された製品の識別情報に基づいて、情報管理装置200の第2記憶部230から3次元CADデータ231を取得し、構成部品の識別情報とその数、部品属性情報を、製品管理テーブル121と部品管理テーブル122に追記する(ステップS11)。
次に、分類部102は、製品を構成する構成部品を1つ特定する(ステップS12)。
【0045】
分類部102は、特定した部品の部品属性情報と同一の情報が締結部品マスタテーブル123に登録されているか否かを判定する(ステップS13)。なお、完全一致でなくても、一定の許容差を認めてもよい。例えば、分類部102は、部品管理テーブル122において、部品「M1_001」を特定し、部品「M1_001」の「名称」「ネジ種別」等の部品属性情報と、同一の情報が締結部品マスタテーブル123に登録されているか否かを判定する。登録されていれば(ステップS13:Yes)、分類部102は、その構成部品をネジに分類し、算出データ記憶部130に登録する(ステップS14)。部品「M1_001」の例であれば、部品「M1_001」と同じ部品属性情報を示すデータが、締結部品マスタテーブル123におけるネジの識別番号「T1」に存在するので、部品「M1_001」を、ネジに分類し、算出データ記憶部130にネジとして登録する。
【0046】
上述したように、構成部品は、ネジと被締結部品の何れかに属する。このため、ステップS13において、締結部品マスタテーブル123に登録されていないと判定された場合(ステップS13:No)、分類部102は、構成部品を、被締結部品に分類し(ステップS15)、その構成部品を、被締結部品として算出データ記憶部130に登録する。
【0047】
続いて、算出部105は、被締結部品に分類された当該構成部品の正味の体積を、その部品の3次元CADデータを用いて求める(ステップS16)。
【0048】
算出部105は、その被締結部品の材質を特定し、その比重を材料マスタテーブル124から求め、求めた体積に比重を乗算して、被締結部品の重量を求める(ステップS17)。その後、処理はステップS18へ進む。なお、求めた体積、重量は、第1記憶部120の算出データ記憶部130に保存される。
【0049】
判定部104は、他に構成部品があるか否かを判定する(ステップS18)。例えば、製品PD1の場合、製品管理テーブル121に格納された構成部品M1、M3、M7...の全個数について、部品管理テーブル122から部品が特定されて分類処理が行われたか否かが判定される。
【0050】
他に構成部品が有ると判定された場合(ステップS18:Yes)、処理はステップS12に戻る。他に構成部品が無いと判定された場合(ステップS18:No)、処理はステップS19へ移る。
【0051】
一般に、m個の締結部材が存在する場合、1回の締結処理を1つの工程として、m個の組み立て工程を備える、mの階乗=m!個の工程の組み合わせ、即ち組み立て手順が想定しうる。例えば、2つの締結部品C1とC2が存在する場合には、C1を締結してから、C2を締結する組み立て手順と、C2を締結してから、C1を締結する組み立て手順と、2!=2個の組み立て手順が考えられる。そこで、算出部105は、算出データ記憶部130に記憶された算出データに基づいて、ネジの個数mを求めて、m!通りの作業手順の候補を求める(ステップS19)。
【0052】
干渉チェック部103は、算出部105によって求められたm!通りの作業手順の候補の中から、1通りの作業手順の候補を評価対象として特定する(ステップS20)。なお、干渉チェック部103は、m!通りの作業手順の候補のうちで、様々な制約条件、例えば、下から上へ積み上げていく作業手順のみを抽出する、複数の締結部品を並行して締結する、特定の部品について、締結の順番を制限する等の制約条件により候補に絞り込んだ上で、評価対象の作業手順の候補を特定してもよい。
【0053】
干渉チェック部103は、特定した作業手順の候補について、含まれているm個の工程のそれぞれについて、干渉が発生するか否かを判定する(ステップS21)。干渉チェック部103は、特定した作業手順の候補に基づいて、ネジにより被締結部品を締結する際に、ネジに使用する工具と組み立て途中の製品とが干渉するか否かを判定する。干渉チェック部103は、判定対象のネジを判別対象の締結工具で締結処理したときに、締結工具が占める空間と組み立て途中の製品が占める空間が重なるか否かによって、締結工具と組み立て途中の製品とが干渉するか否かを判定する。なお、ネジと、ネジに使用する工具の組み合わせは、締結マスタテーブル126に基づいて、推奨フラグに○印が付された組み合わせが干渉チェック部103によって優先的に選定される。
【0054】
特定した作業手順の候補に対して、いずれの工程でも干渉が発生し無いと判断された場合(ステップS21:No)、干渉チェック部103は、特定した作業手順の候補を、使用工具とともに算出データ記憶部130の、実際に製品を組み立てることが可能な組立可能手順として追加する(ステップS23)。
【0055】
特定した作業手順の候補について、m個の工程の何れかで干渉が発生すると判定された場合(ステップS21:Yes)、干渉チェック部103は、他の工具で干渉があるか否かを判定する(ステップS22)。具体的には、干渉チェック部103は、異なる他の締結工具について組み立て途中の製品と干渉するか否かを判定する。例えば、干渉チェック部103は、締結マスタテーブル126に基づいて、推奨フラグに○印が付されていないネジと工具の組み合わせの中から、ランダムに組み合わせを選択する。そして、干渉チェック部103は、3次元モデル上のネジのシンボルマークに対して、選択した締結工具のシンボルマークが接する位置に、締結工具を配置することによって、干渉の有無を判定する。
【0056】
登録されている他の全ての工具で干渉有りと判定された場合(ステップS22:Yes)、処理はステップS26に進む。登録されている他の何れかの工具で干渉なしと判定された場合(ステップS22:No)、処理はステップS23に進み(ステップS22:No)、干渉チェック部103は、特定した作業手順の候補を、使用工具とともに算出データ記憶部130の組立可能手順に加える(ステップS23)。
【0057】
算出部105は、その組み立て可能手順での工具取替回数、各種作業の所要時間等を求める(ステップS24)。具体的には、算出部105は、運搬時間、締結時間、工具取り時間、工具取替時間、工具取替回数、作業者移動距離を求める。なお、これらの値に限らず、算出部105は、組立作業手順を求めるために、任意の種類の値を求めてもよい。
【0058】
運搬時間は、例えば、被締結部品が置かれている置き場所と作業場所との距離と、単位距離あたりの運搬時間とに基づいて求められる。例えば、被締結部品のサイズと重力が、制約マスタテーブル127における部品R1のサイズ、重量に相当し、かつ、置き場所と作業場所との距離が10メートルの場合、運搬時間は15秒となる。図9における制約マスタテーブル127は一例に過ぎない。また、管理者、作業者等によって、サイズ、重量、単位距離あたりの運搬時間が変更、追加されてもよい。
【0059】
締結時間は、図11に例示する基準時間データ129に基づいて求められる。例えば、ネジの締結回数が20回の場合、言い換えると、ネジの締結箇所が20箇所ある場合、1回あたりの締結所要時間は1分のため、締結時間は20分となる。本実施の形態においては、穴あけ加工、ネジ切り加工等のネジ締結の前段階の加工が施された状態で、ネジの締結が行われる。図11のネジ締結の所要時間は一例に過ぎないので、他の任意の所要時間であってもよい。
【0060】
工具取りの所要時間は、工具取り替えをするために、作業者が対象工具を取りに行ってから戻ってくるまでの1回あたりの所要時間を意味する。例えば、組立可能手順の工具取替回数が10回の場合、図11に示す基準時間データ129に基づいて、1回の工具取りの所要時間は1.5分のため、工具取りの所要時間は15分である。図11の工具取りの所要時間は一例に過ぎないので、他の任意の所要時間であってもよい。
【0061】
工具取替の所要時間は、使用中の工具から別の工具への取り替えまでの所要時間を意味する。工具取替の所要時間は、例えば、使用中のドライバーのビットの取り外しを開始してから別のビットの取り付け終了までの1回あたりの所要時間である。例えば、組立可能手順の工具取替回数が10回の場合、図11に示す基準時間データ129に基づいて、1回の工具取替の所要時間は2分のため、工具取替の所要時間は20分である。図11の工具取替の所要時間は一例に過ぎないので、他の任意の所要時間であってもよい。
【0062】
工具取替回数は、算出データ記憶部130に記憶されたデータに基づいて求められる。作業者移動距離は、本実施の形態において、工具取りのために作業者が移動する距離を意味する。工具取り1回あたりの作業者の移動距離は、作業場と工具置き場との往復の距離である。算出部105は、工具取り1回あたりの作業者移動距離に工具取替回数を乗算して、作業者移動距離を求める。本実施の形態における作業者移動距離の求め方は一例である。求めた運搬時間、締結時間、工具取り時間、工具取替時間、工具取替回数、作業者移動距離は、算出データ記憶部130に保存される。
【0063】
算出部105は、算出データ記憶部130に記憶されたデータに基づいて、作業時間を求める(ステップS25)。具体的には、算出部105は、求めた運搬時間、締結時間、工具取り時間、工具取替時間を加算することによって得られた加算値を、作業時間として求める。求めた作業時間は、算出データ記憶部130に保存される。
【0064】
判定部104は、m!通りの作業手順の全てを特定し、評価処理を行ったか否かを判定する(ステップS26)。
【0065】
m!通りの作業手順候補が特定済みでないと判定された場合(ステップS26:No)、処理はステップS20に戻り、未処理の作業手順候補を選択し、上述の処理を実行する。
【0066】
m!通りの作業手順が特定済みであると判定された場合(ステップS26:Yes)、手順決定部106は、組立可能手順の中から、作業時間が最小となる組立手順を、予め設定された数だけ決定する(ステップS27)。具体的には、まず、手順決定部106は、優先手順マスタテーブル128に基づいて、各組立可能手順の作業時間、工具取替回数、作業者移動距離...の各上限値を超えている組立可能手順と、各下限値未満の組立可能手順を除外する。手順決定部106は、当該除外後に残った組立可能手順の中から、優先手順マスタテーブル128において優先順位が最上位である作業時間が最小となる組立手順を決定する。作業時間が最小となる組立可能手順が複数ある場合には、手順決定部106は、次に優先順位が上位である工具取替回数が少ない組立可能手順を、組立手順として決定する。組立手順決定処理は、終了する。
【0067】
手順出力部107は、組立手順決定処理によって求められた組立作業手順を、図示しない表示部に出力する。なお、手順出力部107は、組立手順決定処理によって求められた組立作業手順を、作業者端末、管理者端末等の組立作業手順特定支援装置100の外部に出力してもよい。表示部、作業者端末、管理者端末等は、受信した組立作業手順を画面表示、音声出力などで出力する。
【0068】
以上説明したように、実施の形態に係る組立作業手順特定支援システム1によれば、締結に使用する締結工具と組み立て途中の製品とが干渉するか否かを判定し、組立作業手順の複数の候補のそれぞれについて、判定を行って、締結工具と組み立て途中の製品とが干渉しない組立可能手順を求める。また、算出部105は、求めた組立可能手順の工具取替回数、作業時間等を求める。従って、干渉の有無、作業効率等を評価して、適切な組立作業手順を容易に特定できる。
【0069】
また、締結部品と被締結部品を自動的に分類するので、設計データ上で締結部品と被締結部品を区別する必要がなく、一般のCADデータを使用することも可能となる。
【0070】
(変形例)
実施の形態では、第1記憶部120の各種テーブルとデータは、組立作業手順特定支援装置100に設けられていたが、組立作業手順特定支援装置100の外部に設けられていてもよい。例えば、第1記憶部120の各種テーブルとデータは、組立作業手順特定支援装置100の外部のクラウド型サーバに設けられていてもよい。
【0071】
実施の形態では、組立作業手順決定処理において、組立作業可能手順のうち、作業時間が最小の組立作業手順が決定されていたが、本開示はこれに限られない。作業時間が最小の組立作業手順に加えて、2番目および3番目に作業時間が小さい組立作業手順が決定されてもよい。
【0072】
実施の形態では、下限値と上限値の制約が設定されていたが、設定されてなくてもよい。
【0073】
実施の形態では、処理において、各テーブルの全てが参照されていたが、一部が参照されてもよい。例えば、組立作業手順決定処理において、優先手順マスタテーブル128の優先順位のみが参照されてもよい。
【0074】
実施の形態では、組立作業手順決定処理において、作業時間に基づいて、作業時間が最小の組立作業手順が決定されていたが、本開示はこれに限られない。組立作業手順は、作業時間に限らず、他の任意の種類の特定基準要素に基づいて、決定されてもよい。組立作業手順は、例えば、工具取替回数に基づいて決定されてもよい。
【0075】
実施の形態では、組立作業手順は、作業時間に基づいて決定されていたが、作業時間に加えて、工具取替回数、作業者移動距離等の他の特定基準要素も加味して決定されてもよい。
【0076】
実施の形態では、作業時間が最小となる組立可能手順が複数ある場合には、次に優先順位が高い工具取替回数が少ない組立可能手順が組立手順として決定されていたが、本開示はこれに限られない。作業時間が最小となる組立可能手順が複数ある場合には、締結マスタテーブル126の推奨フラグに「○」が付された、ネジと工具の組み合わせの多い組立可能手順が組立手順として決定されてもよい。
【0077】
実施の形態では、締結部品マスタテーブル123において、名称、ネジ種別、材質等の部品属性情報が格納されていたが、他の任意の種類の部品属性情報が格納されていてもよい。例えば、締結部品マスタテーブル123において、「規定締結トルク」の列が設けられ、規定締結トルクの数値情報が格納されてもよい。一方、工具マスタテーブル125においては、「最大締付けトルク」、「最小締付けトルク」の列が設けられ、各工具の仕様に基づき数値情報が格納されてもよい。そして、締結マスタテーブル126において、締結トルクが反映されたネジと工具の組み合わせが格納されることによって、現実により忠実な工具選定が可能となる。
【0078】
その他、前記のハードウェア構成およびフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0079】
計算部113、一時記憶部111、記憶部112、入力部114、送受信部115、表示部116などの組立作業手順特定支援装置100の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc - Read Only Memory)などのコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する組立作業手順特定支援装置100を構成してもよい。また、インターネットに代表される通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロードすることで組立作業手順特定支援装置100を構成してもよい。
【0080】
また、組立作業手順特定支援装置100の機能を、OS(Operating System)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体、記憶装置に格納してもよい。
【0081】
また、輸送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して提供することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、通信ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを提供してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できる構成にしてもよい。
【0082】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0083】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0084】
(付記1)
組み立て対象の製品を構成する各部品の3次元モデルと前記部品の相互の配置関係の情報を含む設計データを記憶する設計データ記憶手段と、
前記設計データに基づいて、各前記部品を、締結部品と該締結部品により締結される被締結部品とに分類する分類手段と、
前記分類された前記締結部品により前記被締結部品を締結する際に、締結に使用する締結工具と組み立て途中の前記製品とが干渉するか否かを判定する干渉チェック手段と、
組み立て手順の複数の候補のそれぞれについて、前記干渉チェック手段による判定を行って、前記締結工具と前記組み立て途中の製品とが干渉しない組立可能手順を求め、求めた組立可能手順の評価指標値を求める評価手段と、
を備える、組立作業手順特定支援装置。
(付記2)
前記評価手段により求められた評価指標値に基づいて、前記評価手段により求められた組立可能手順のうちから、前記製品の組立手順を選択する手順選択手段をさらに備える、付記1に記載の組立作業手順特定支援装置。
(付記3)
前記干渉チェック手段は、締結工具が組み立て途中の前記製品と干渉すると判定すると、前記締結工具とは異なる他の締結工具について、前記組み立て途中の前記製品と干渉するか否かを判定する、
付記1又は付記2に記載の組立作業手順特定支援装置。
(付記4)
前記干渉チェック手段は、判定対象の締結部品を判定対象の締結工具で締結処理したときに、締結工具が占める空間と前記組み立て途中の製品が占める空間が重なるか否かにより、締結工具と組み立て途中の前記製品とが干渉するか否かを判定する、
付記1から付記3のいずれか1つに記載の組立作業手順特定支援装置。
(付記5)
前記評価指標値は、複数の指標値を備え、
前記複数の指標値には、それぞれ、優先順位が予め定められており、
前記手順選択手段は、前記優先順位の上位の評価指標値に基づいて、前記製品の組立手順を選択する、付記2から付記4のいずれか1つに記載の組立作業手順特定支援装置。
(付記6)
前記評価指標値は、前記製品の組立作業に要する作業時間を含む、付記1から付記5のいずれか1つに記載の組立作業手順特定支援装置。
(付記7)
前記手順選択手段によって求めた前記組立手順を出力する手順出力手段をさらに備える、付記2から付記6のいずれか1つに記載の組立作業手順特定支援装置。
(付記8)
付記1から付記7のいずれか1つに記載の組立作業手順特定支援装置と、情報管理装置とを備え、
前記情報管理装置は、
組み立て対象の製品を構成する各部品の3次元モデルと前記部品の相互の配置関係の情報を含む設計データの登録を受け付ける登録受付手段と、
新規製品を指定する製品特定情報を受け付ける製品特定情報受付手段と、
受け付けた製品特定情報で特定される製品の前記設計データを前記組立作業手順特定支援装置に送付する製品情報送付手段と、を備える、
組立作業手順特定支援システム。
(付記9)
組み立て対象製品の設計データを記憶し、
前記設計データに基づいて、前記対象製品を構成する部品を、締結部品と該締結部品により締結される被締結部品とに分類し、
前記分類された前記締結部品により前記被締結部品を締結する際に、締結に使用する締結工具と組み立て途中の前記製品とが干渉するか否かを判定し、
前記干渉の生じない組立可能手順を求める、
組立作業手順特定支援方法。
(付記10)
コンピュータに、
組み立て対象製品の設計データを記憶し、
前記設計データに基づいて、前記対象製品を構成する部品を、締結部品と該締結部品により締結される被締結部品とに分類し、
前記分類された前記締結部品により前記被締結部品を締結する際に、締結に使用する締結工具と組み立て途中の前記製品とが干渉するか否かを判定し、
前記干渉の生じない組立可能手順を求める、
処理を実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0085】
1 組立作業手順特定支援システム、100 組立作業手順特定支援装置、101 製品情報取得部、102 分類部、103 干渉チェック部、104 判定部、105 算出部、106 手順決定部、107 手順出力部、111 一時記憶部、112 記憶部、113 計算部、114 入力部、115 送受信部、116 表示部、120 第1記憶部、121 製品管理テーブル、122 部品管理テーブル、123 締結部品マスタテーブル、124 材料マスタテーブル、125 工具マスタテーブル、126 締結マスタテーブル、127 制約マスタテーブル、128 優先手順マスタテーブル、129 基準時間データ、130 算出データ記憶部、200 情報管理装置、201 登録受付部、202 製品特定情報受付部、203 製品情報送付部、230 第2記憶部、231 製品情報、500 製品、502,504 被締結部品、510 ドライバー、H0,H1 ネジ、Tp 薄板。

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