(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183083
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】細胞シート切断支援システム、細胞培養システムおよび細胞シート切断支援方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20231220BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20231220BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20231220BHJP
【FI】
C12M1/34 A
C12M1/00 A
C12N5/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096504
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 貴之
(72)【発明者】
【氏名】新見 夕姫
(72)【発明者】
【氏名】木山 政晴
(72)【発明者】
【氏名】平井 格郎
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA08
4B029AA09
4B029BB11
4B029CC02
4B029HA02
4B029HA09
4B065AA93X
4B065AC12
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】細胞シートの切断部分を見分ける工程の容易化を図る。
【解決手段】細胞シート切断支援システムは、プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを格納する記憶デバイスと、を有する。前記プロセッサは、細胞シートの評価基準と、培養した細胞シートの品質情報と、を入力として受け付ける入力処理と、前記品質情報が前記評価基準を満たすか否かを判定する、判定処理と、前記判定処理の結果に基づき、前記細胞シートの切断箇所を出力する、出力処理と、を実行する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを格納する記憶デバイスと、を有する細胞シート切断支援システムであって、
前記プロセッサは、
細胞シートの評価基準と、培養した細胞シートの品質情報と、を入力として受け付ける入力処理と、
前記品質情報が前記評価基準を満たすか否かを判定する、判定処理と、
前記判定処理の結果に基づき、前記細胞シートの切断箇所を出力する、出力処理と、
を実行することを特徴とする、細胞シート切断支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞シート切断支援システムであって、前記評価基準および前記品質情報は、前記細胞シートについて、穴の有無、厚み、細胞密度、細胞生存率、経時的な細胞占有率、のうち少なくとも1つを表す情報を含むことを特徴とする、細胞シート切断支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の細胞シート切断支援システムであって、前記プロセッサは、前記入力処理において、さらに前記細胞シートの枚数を入力として受け付けることを特徴とする、細胞シート切断支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の細胞シート切断支援システムであって、
前記プロセッサは、前記入力処理において、さらに、前記細胞シートが移植される患者の患者情報を入力として受け付け、
前記評価基準は前記患者情報に紐づけられている、
ことを特徴とする、細胞シート切断支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の細胞シート切断支援システムであって、前記患者情報は、移植される細胞シートの枚数、大きさ、および形を表す情報を含むことを特徴とする、細胞シート切断支援システム。
【請求項6】
請求項4に記載の細胞シート切断支援システムであって、
前記プロセッサは、前記入力処理において、さらに、
第一の患者に対する前記細胞シートの移植がキャンセルされたことを表す、前記細胞シートのキャンセル情報と、
前記細胞シートを移植する第二の患者の患者情報と、
前記第二の患者の患者情報に紐づけられた評価基準と、
を入力として受け付けることを特徴とする、細胞シート切断支援システム。
【請求項7】
請求項4に記載の細胞シート切断支援システムであって、
前記プロセッサは、さらに、
前記細胞シートが移植された患者の予後情報と、移植された前記細胞シートの品質情報とを入力として受け付け、機械学習によって予後情報予測モデルを生成する処理と、
前記患者情報を入力として受け付ける処理と、
前記予後情報予測モデルに前記患者情報を入力する処理と、
を実行することを特徴とする、細胞シート切断支援システム。
【請求項8】
請求項1に記載の細胞シート切断支援システムであって、
前記記憶デバイスは、切断された前記細胞シートの品質情報と、識別情報とを紐づけて記憶し、
前記プロセッサは、
前記識別情報を入力として受け付ける処理と、
前記識別情報に紐づけられた前記細胞シートの品質情報を出力する処理と、
を実行することを特徴とする、細胞シート切断支援システム。
【請求項9】
請求項1に記載の細胞シート切断支援システムであって、
前記細胞シート切断支援システムは光源を備え、
前記光源は前記切断箇所に光を投射する、
ことを特徴とする、細胞シート切断支援システム。
【請求項10】
請求項9に記載の細胞シート切断支援システムであって、
前記光源は、
前記細胞シートの下方において1地点以上に設置されるか、または、
前記細胞シートの上方において2地点以上に設置される、
ことを特徴とする、細胞シート切断支援システム。
【請求項11】
請求項9に記載の細胞シート切断支援システムであって、前記光源は、1以上の種類の色、記号、印、または作業内容を投射することを特徴とする、細胞シート切断支援システム。
【請求項12】
請求項9に記載の細胞シート切断支援システムであって、前記細胞シート切断支援システムは、前記光によって前記細胞シートを切断することを特徴とする、細胞シート切断支援システム。
【請求項13】
請求項1に記載の細胞シート切断支援システムと、
培養容器と、
細胞の観察を行う観察装置、または、細胞培養上清のモニタリングを行うモニタリング装置と、
を備えることを特徴とする、細胞培養システム。
【請求項14】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを格納する記憶デバイスと、を有する細胞シート切断支援システムによって実行される、細胞シート切断支援方法であって、
細胞シートの評価基準と、培養した細胞シートの品質情報と、を入力として受け付ける入力処理と、
前記品質情報が前記評価基準を満たすか否かを判定する、判定処理と、
前記判定処理の結果に基づき、前記細胞シートの切断箇所を出力する、出力処理と、
を含むことを特徴とする、細胞シート切断支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞シート切断支援システム、細胞培養システムおよび細胞シート切断支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臓器等の機能を回復させるための再生医療は、従来治療法のなかった疾病に対する根治療法として期待される。再生医療の代表的な移植形態の一つに、細胞と細胞が結合した、または、細胞と細胞外マトリックスが結合した、細胞シートが挙げられる。細胞シートは、皮膚、角膜、心臓、軟骨、食道等の幅広い部位の治療を対象とした研究が進められており、一部は製品化に至っている。また、今後見込まれる細胞シートの需要から、一定の品質を有する細胞シートを工業的に供給するために、複数の細胞シートを一度に、大量に培養、製造する技術の開発が求められている。近年、他家由来の細胞シートを一度に大量に製造することで、一度に複数患者分の細胞シートを準備することができ、製造コストの低減を可能にすることが期待されている。
【0003】
一方で、細胞シートは細胞を原料とする三次元組織であり、細胞シートを構成する細胞の密度、細胞シートの厚さ等を、完全に均一に培養することは困難である。また、細胞シートの品質は、原料となる細胞の状態や、培養される容器内の位置、培養容器により異なることがある。さらに、細胞シートの品質は、培養容器が大きくなればなるほど、一定の品質を保つことは難しい。
【0004】
特許文献1では、複数の細胞培養単位であるウェルの配置を変更しながら培養を行い、かつそのウェル毎の品質の評価を行う細胞培養評価システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、1枚の細胞シートを切断することは想定されていない。したがって、所定の品質条件を満たす細胞シートの領域から、切断部分を見分ける工程が煩雑であった。
【0007】
そこで、本発明は、細胞シートの切断部分を見分ける工程の容易化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る細胞シート切断支援システムの一例は、
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを格納する記憶デバイスと、を有する細胞シート切断支援システムであって、
前記プロセッサは、
細胞シートの評価基準と、培養した細胞シートの品質情報と、を入力として受け付ける入力処理と、
前記品質情報が前記評価基準を満たすか否かを判定する、判定処理と、
前記判定処理の結果に基づき、前記細胞シートの切断箇所を出力する、出力処理と、
を実行することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る細胞培養システムの一例は、
上述の細胞シート切断支援システムと、
培養容器と、
細胞の観察を行う観察装置、または、細胞培養上清のモニタリングを行うモニタリング装置と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る細胞シート切断支援方法の一例は、
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを格納する記憶デバイスと、を有する細胞シート切断支援システムによって実行される、細胞シート切断支援方法であって、
細胞シートの評価基準と、培養した細胞シートの品質情報と、を入力として受け付ける入力処理と、
前記品質情報が前記評価基準を満たすか否かを判定する、判定処理と、
前記判定処理の結果に基づき、前記細胞シートの切断箇所を出力する、出力処理と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る細胞シート切断支援システム、細胞培養システムおよび細胞シート切断支援方法によれば、細胞シートの切断部分を見分ける工程がより容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】細胞シート切断支援システムの構成例を示す図である。
【
図3】記憶デバイスに格納されているテーブルの例を示す図である。
【
図4】細胞シートにおける品質判定処理の例を示す図である。
【
図6】実施例1における細胞シート切断支援システムの画面の表示例を示す図である。
【
図7】実施例2における細胞シート切断支援システムの画面の表示例を示す図である。
【
図8】実施例4における細胞シート切断支援システムによる予測結果データの一例を示す説明図である。
【
図9】実施例4における切断箇所の出力例を示すフロー図である。
【
図10】実施例5における細胞シート切断支援システムの構成例を示す図である。
【
図11】実施例5における細胞シート切断支援システムの光源の設置例を示す説明図である。
【
図12】実施例5における光源による光の投射例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明は以下の構成を有する。尚、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により当業者には明らかであり、本明細書の記載から当業者であれば容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例等は、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示または説明のために示されているのであり、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図及び範囲内で、本明細書の記載に基づき様々な改変ならびに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る細胞シート切断支援システム、細胞培養システムおよび細胞シート切断支援方法の概要を説明する図である。
【0015】
例えば、細胞シート切断支援システム100は、細胞培養装置を有する機関101(医療機関、製薬企業、細胞シート製造会社、等)から、培養した細胞シートの品質情報および評価基準を取得する。そして、この品質情報および評価基準に基づき、後述するように、培養した細胞シートの切断箇所を出力する。
【0016】
また、細胞シート切断支援システム100は、個別の切断箇所に対応した細胞シートの品質情報を保持しており、細胞培養装置を有する機関101から細胞シートの品質情報の問い合わせを受けた場合に、取得した細胞シートに対応する品質情報を回答する。
【0017】
他の例では、細胞シート切断支援システム100が細胞シートの培養を行う場合に、細胞シート切断支援システム100は、細胞培養装置を有さない機関102(医療機関、製薬企業、等)から、要求される細胞シートの評価基準を取得する。評価基準は、たとえば細胞シートの移植を希望する患者ごとに取得される。
【0018】
細胞シート切断支援システム100は、培養中、又は培養後の細胞シートの品質情報を随時取得することができる。細胞シート切断支援システム100は、取得した評価基準および品質情報に基づき、細胞シートの切断箇所を算出する。細胞シートの切断作業は、手技、レーザー、多関節ロボット、等により行われ、切断された細胞シートが納品される。また、細胞シート切断支援システム100により、切断された細胞シートの識別番号に基づき、品質情報の管理や、細胞シートの保存、輸送方法の管理を行ってもよい。
【0019】
このように、細胞シート切断支援システム100は、培養した細胞シートの品質情報に基づき、細胞シートを切り分けることを可能にする。
【0020】
図2は実施例1に係る細胞培養システムのハードウェア構成及びソフトウェア構成を示すブロック図である。細胞培養システムは、細胞シート切断支援システム100と、観察装置207およびモニタリング装置208の少なくとも一方と、細胞培養装置209とを備える。観察装置207は細胞の観察を行う装置であり、モニタリング装置208は細胞培養上清のモニタリングを行う装置である。観察装置207およびモニタリング装置208は、細胞シート切断支援システム100および細胞培養装置209に接続される。
【0021】
このような構成によれば、細胞培養システムは、切断の支援のみならず、細胞シートの培養と、細胞シートの観察またはモニタリングとを行うことができる。
【0022】
細胞培養装置209は培養容器209aを有し、細胞の培養を行う。細胞培養装置209は閉鎖系培養装置であってもよく、筐体型培養装置であってもよい。培養対象の細胞の種類は限定されない。また、細胞は単層であってもよく、重層化した多層構造であってもよい。
【0023】
観察装置207およびモニタリング装置208は、培養中、又は培養後の細胞の品質情報を取得する。
【0024】
観察装置207は、たとえば、位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡、明視野顕微鏡などの顕微鏡を備えたものである。これらの顕微鏡は、CCDセンサ、CMOSセンサなどの撮像素子を備えている。観察装置207は、培養容器内の細胞シートを観察することによって画像データを作成する。そして、培養容器の位置毎の画像データを基に、細胞シートの品質情報を取得する。品質情報は、たとえば、細胞シートについて、穴の有無、厚み、細胞密度、細胞生存率、および経時的な細胞占有率(または細胞占有率の変化量)を含む。さらに、細胞の増殖率、コロニーを形成する幹細胞の頻度、などを含んでもよい。細胞シートの画像に基づいて品質情報を取得するための具体的な処理は、当業者が公知技術等に基づいて適宜設計可能である。
【0025】
モニタリング装置208は、培養容器毎に含まれる培養上清に基づき、pHや成分を測定する。具体的には、培養上清からグルコース、ラクトース、グルタミン、グルタミン酸、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、二酸化炭素分圧、酸素分圧、pH、エキソソーム、RNA、DNA、タンパク質等の培地成分を測定し、これらを品質情報として取得する。
【0026】
観察装置207およびモニタリング装置208の少なくとも一方によって取得された細胞シートの品質情報は、ネットワークを介して細胞シート切断支援システム100に送信される。また、観察装置207およびモニタリング装置208は、品質情報として、細胞シートの品質が一様な領域に関する情報を有してもよい。
【0027】
細胞シート切断支援システム100は、プロセッサ201、記憶デバイス202、入力デバイス203、出力デバイス204、通信インターフェース205を有する。各ハードウェア要素は、バス206を介して互いに接続される。
【0028】
入力デバイス203は、各種情報を入力するためのデバイスであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、スキャナ、及びマイク等であり、アプリケーションプログラムまたはその一部を含んでもよい。入力デバイス203は、要求される細胞シートの評価基準を入力として取得する。
【0029】
評価基準は、品質情報と同一の項目またはそれらに対応する項目(たとえば、細胞シートについて、穴の有無、厚み、細胞密度、細胞生存率、および経時的な細胞占有率(または細胞占有率の変化量))についての情報を含むことが好ましい。たとえば、評価基準および品質情報が、細胞シートについて、穴の有無、厚み、細胞密度、細胞生存率、経時的な細胞占有率、のうち少なくとも1つを表す情報を含むように構成すると、細胞シートの適切な評価を行うことができる。しかしながら、評価基準はこれらに限られず、品質情報に対応する項目をすべて含む必要はなく、また、それら以外の項目についての情報を含んでもよい。とくに、評価基準は、細胞種、細胞の培養条件、等を表す情報を含んでもよい。培養条件を表す情報は、培養期間、培地交換頻度、培養中の観察、モニタリング頻度、等を含む。
【0030】
評価基準は、各項目について許容可能な値または許容可能な範囲を定義する。たとえば、穴がないこと、厚みが特定の閾値厚み以上であること、細胞密度が所定の閾値細胞密度以上であること、等が指定される。
【0031】
記憶デバイス202は、例えば、一時的または恒久的な記憶媒体である。記憶デバイス202は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等からなる半導体記憶装置(SSD)等の大容量かつ不揮発性の記録装置によって構成されている。記憶デバイス202は、プロセッサ201が実行するプログラム、患者データベース210、細胞情報データベース211、識別情報データベース212を格納する。
【0032】
患者データベース210は、
図3(A)に示すように、入力デバイス203を介して入力された評価基準および培養条件を含むデータが記憶される。培養条件は評価基準に含まれてもよい。
【0033】
細胞情報データベース211は、
図3(B)に示すように、培養容器番号(「No」)に、培養中、又は培養後の細胞シートの位置情報(たとえば座標)と、観察装置207およびモニタリング装置208から取得された品質情報(「観察結果」および「モニタリング結果」)と、が紐づけて記憶される。
【0034】
なお、
図3の例では、
図3(A)の患者データベース210の評価基準と、
図3(B)の細胞情報データベース211の品質情報との項目が完全には一致しないが、これらは共通する項目を少なくとも1つ含んでいればよい。評価基準および品質情報の具体的な項目は上述のように当業者が適宜決定可能である。
【0035】
識別情報データベース212は、
図3(C)に示すように、切断された細胞シート(すなわち特定の患者への供給のために切り分けられた個別の細胞シート)について、その識別番号(「No」)に、切断された細胞シートの識別情報(「識別情報」)と、当該細胞シートに関する他の情報とが紐づけて記憶される。
【0036】
なお
図3(D)については実施例2に関連して後述する。
【0037】
プロセッサ201は、記憶デバイス202に格納されるプログラムを実行することによって、各細胞シートについて、品質情報および評価基準に基づき、培養後の細胞シートの切断箇所を算出する。例えば、プロセッサ201は、患者データベースに含まれる各評価基準に基づき、各細胞シートの品質情報が評価基準を満たすか否かを判定し、いずれかの評価基準を満たす細胞シート(またはその細胞シート内の特定領域)を抽出する。そして、プロセッサ201は、抽出された細胞シートまたは領域において、細胞シートを切断するための切断箇所を算出する。
【0038】
図4を用いてプロセッサ201による細胞シートの判定処理の一例を説明する。例えば、細胞シート301について、観察装置207によって取得された品質情報が、要求される評価基準を満たす場合(たとえば、細胞が培養容器の培養面全面に均等に分布し、細胞シートに穴が無く、厚みが評価基準を上回る場合)には、プロセッサ201は、全面について品質情報が評価基準を満たすと判定してもよい。この場合には、全面が移植に適した範囲304となる。
【0039】
一方、細胞シート302のように、培養面の一部に細胞が存在せず、すなわちシートに穴305が生じている場合や、細胞シート303のように、細胞シートに薄い領域306が存在するため厚みが一部において評価基準を満たさない場合には、プロセッサ201は、その範囲について品質情報が評価基準を満たさないと判定してもよい。この場合には、薄い領域306は移植に使用されない。
【0040】
なお、
図4の例では細胞シートの領域ごとに判定処理が行われるが、判定処理の単位は任意に設計可能である。たとえば、細胞シート内の所定サイズの領域単位で判定処理を行ってもよいし、細胞シート単位で判定処理を行ってもよいし、培養容器単位で判定を行ってもよい。とくに、プロセッサ201は、モニタリング装置208によって取得された品質情報に基づき、培養容器毎に、品質情報が評価基準を満たすか否かを判定してもよい。
【0041】
通信インターフェース205は、ネットワークと接続し、データを送受信する。例えば、通信インターフェース205は、ネットワークを介して、細胞培養装置を有する機関101および細胞培養装置を有さない機関102に各種情報を送受信する。
【0042】
出力デバイス204は、各種情報を出力するためのデバイスであり、例えば、ディスプレイ、プリンタ、及びスピーカ等である。出力デバイス204は、細胞シートの品質情報、細胞シートの切断箇所、切断方法、細胞画像、等を出力することができる。なお、情報はアプリケーションプログラムを介して出力されてもよく、たとえば細胞シートの培養終了またはユーザーが希望する任意のタイミングで出力される。
【0043】
図5は、細胞シート切断支援システム100における処理の流れを説明するフロー図である。
図6は、細胞シート切断支援システム100が出力する画面の一例を示す図である。
【0044】
まず、細胞シートの培養が細胞培養装置によって開始される(S400)。培養中、細胞シート切断支援システム100は、観察装置207およびモニタリング装置208によって取得された細胞シートの品質情報を取得する(S401)。
【0045】
S401において、細胞シート切断支援システム100は、
図6(A)(B)で示すように、培養中、又は培養後の細胞情報、品質情報を画面に出力してもよい。
図6(A)には、品質情報の一覧が表示されており、
図6(B)には、細胞シートの画像が表示されている。細胞シート切断支援システム100は、
図6(B)に示すように、検索条件として解析対象および培養容器番号の入力を受け付け、該当する細胞シートの画像および培養容器における位置を検索結果として表示してもよい。このような画面表示によれば、ユーザーは、画面を参照して、患者に移植する細胞シートを確認することができる。
【0046】
細胞シートの培養が終了したか否かが判定され(S402)、細胞シートの培養が終了していない場合にはS401およびS402が繰り返される。細胞シートの培養が終了したと判断された場合には、プロセッサ201は、患者データベース210から、各患者について、細胞シートの評価基準を入力として受け付ける(S403、入力処理)。評価基準は、予め記憶デバイス202に格納されているものが入力されてもよく、新たに入力デバイス203を介して入力されてもよい。
【0047】
その後、プロセッサ201は、各細胞シートについて、品質情報が評価基準を満たすか否かを判定する(S404、判定処理)。判定の単位は上述のように任意に決めておくことができる。たとえば、すべての患者について、ある細胞シートの品質情報が、その患者の評価基準を満たすか否かを判定する。品質情報がいずれの評価基準も満たさない細胞シート(またはその特定領域)は、移植には不適であると考えることができ、移植には使用しない(S406)。なお、S403とS404との間に、改めて最新の品質情報を取得してもよい。
【0048】
プロセッサ201は、S404(判定処理)の結果に基づき、細胞シートの切断箇所を出力する(S405、出力処理)。たとえば、品質情報がいずれかの患者の評価基準を満たす細胞シートのうちから、1つの細胞シートまたはその特定領域を抽出し、抽出された細胞シートまたは領域に基づいて、切断箇所を算出する。複数の細胞シートまたは領域において品質情報が特定の患者の評価基準を満たす場合に、1つの細胞シートまたは領域を抽出するための基準は、当業者が適宜設計可能である。
【0049】
出力デバイス204は、
図6(C)で示すような切断箇所を出力してもよい。
図6(C)は、細胞シートから円形の移植用領域を5つ切断する場合の例である。ある細胞シートについて、品質情報が評価基準を満たす領域がグレーで表示され、当該領域において切断すべき領域が1~5の番号を付して示されている。
【0050】
なお、細胞シートまたは領域において、切断すべき領域(面)または切断すべき位置(線)を決定するための方法は、当業者が適宜設計可能である。単純な方法の一例として、
図6(C)の例では、細胞シートまたは領域の左上から右に向かって、所定の切断形状を一列に並べ、次の切断形状が細胞シートまたは領域の右側にはみ出す場合に、ひとつ下の行の左端から右に向かって所定の切断形状を一列に並べ、以下同様にして決定することができる。
【0051】
出力デバイス204に切断箇所が出力された後、細胞シートが切断される。細胞シートの切断は何ら制約されるものではなく、人間の作業者が手技でまたは道具を用いて行ってもよいし、細胞シート切断支援システム100または細胞培養装置209が自動的に行ってもよい。
【0052】
具体例として、メス、はさみ、型抜、レーザー光、プラズマ波、超音波、等を用いた切断治具を使用する方法でも良い。メス、はさみ、治具による切断の場合、作業者は、安全キャビネットにおいて、プロセッサ201により算出された切断箇所に基づき、細胞シートを切断する。
【0053】
細胞培養装置209が、レーザー光、プラズマ波、超音波、等による細胞シートの切断装置を有する場合には、細胞培養装置209は、プロセッサ201により算出された切断箇所に従い、切断装置に切断箇所の情報を読み込ませ、切断装置がレーザー光等を照射し、細胞シートの切断を行うように構成することができる。切断した細胞シートは、任意の方法で容器から剥離処理し、個別包装容器へ封入し、運搬する。
【0054】
また、これらの工程は、安全キャビネット内に設置した多関節ロボットを用い、自動で実施されることも可能である。なお、本実施例における細胞シートとは、細胞組織や三次元組織を含むものであってもよい。
【0055】
以上のように構成された細胞シート切断支援システム100は、細胞シートの評価基準および培養した細胞シートの品質情報に基づき、移植に適した細胞シートの領域を抽出し、抽出した領域から、細胞シートの切断箇所を算出する。これによって、作業者は、細胞シートの切断箇所を容易に把握することができるので、細胞シートの切断部分を見分ける工程が容易化される。
【0056】
なお、実施例1の変形例として、細胞シート切断支援システム100は、S403(入力処理)において、切断する細胞シートの枚数および/または形を、評価基準に関連付けて、入力として受け付けてもよい。そして、品質情報が評価基準を満たす細胞シートまたは領域において、
図6(c)に示すように、枚数および/または形に基づいて切断箇所を算出することも可能である。この場合、抽出された領域をより効率的に使用することができる。
【0057】
[実施例2]
実施例2では、実施例1において、さらに患者情報に基づいて細胞シートの切断箇所を算出するものである。以下、実施例1との差異を中心に実施例2について説明する。
【0058】
実施例2において、入力デバイス203は、S403(入力処理)において、さらに、細胞シートが移植される患者の患者情報を入力として受け付ける。評価基準は、患者情報に紐づけられていてもよい。
【0059】
具体例として、患者情報は、移植される細胞シートの枚数、大きさ、および形を表す情報を含む(これらの情報は、評価基準の一部を構成してもよい)。さらに、患者ID(Identifier)、移植に係る医療機関名、患部の大きさ、疾患名、予約情報、移植手術のキャンセル情報、等の情報を含んでもよい。細胞シートの形は、患者の患部の形態、大きさ、状態に合わせて定義することが可能であり、たとえば円形、楕円形、四角形、多角形などである。
【0060】
患者データベース210は、
図3(D)に示すように、入力デバイス203を介して入力され、患者毎に、患者IDを含む患者情報と、評価基準と、培養条件とを含むデータを紐づけて記憶する。評価基準および培養条件は、実施例1(
図3(A))と同一の項目を含んでもよい。
【0061】
実施例2の細胞シート切断支援システムの処理の流れは実施例1と同一である。ただし、切断箇所の算出方法が一部異なる。
【0062】
S403において、細胞シート切断支援システム100のプロセッサ201は、患者データベース210から、細胞シートの移植を予定している複数の患者について患者情報を取得する。そして、プロセッサ201は、S404において評価基準を満たした細胞シートの領域について、取得した患者情報に基づき、S405において、培養後の細胞シートの切断箇所を算出する。
【0063】
S405で使用される患者データベース210は、細胞シートの培養前から培養終了までの間、随時取得可能である。
【0064】
移植する予定であった患者の移植手術がキャンセルとなった際、プロセッサ201は、S403において、細胞シートのキャンセル情報を入力として受け付けてもよい。キャンセル情報は、たとえば第一の患者に対する細胞シートの移植がキャンセルされたことを表す情報である。
【0065】
そして、いずれかの患者に対する細胞シートの移植がキャンセルされた場合には、プロセッサ201は、患者データベース210に記録された患者のうちから、代わりに手術を行う患者、すなわち細胞シートを移植する第二の患者の患者情報を、入力として受け付けてもよい。この第二の患者は、入力デバイス203から識別情報が入力されることによって特定されてもよく、プロセッサ201が自動的に選択して特定してもよい。
【0066】
プロセッサ201は、第二の患者の患者情報を取得した場合には、第二の患者の患者情報に紐づけられた評価基準を入力として受け付ける。
【0067】
そして、プロセッサ201は、培養した細胞シートの品質情報が、選択された患者(たとえば第一の患者であるが、キャンセルが発生した場合には第二の患者となる可能性がある)の評価基準を、満たしたか否かを判定し、満たしている場合は、選択された患者の患者情報に基づき、細胞シートの切断箇所を出力する。
【0068】
出力デバイスを介して、
図7のように切断箇所が出力される。なお、形および大きさに基づく具体的な切断箇所の決定方法は、当業者が公知技術等に基づいて適宜設計可能である。
【0069】
実施例2では、培養した細胞シートの品質情報が、選択された特定の患者の評価基準を満たしているか否かが個別に判定され、満たしていない場合は、再度、患者データベース210から新たな患者が選択され、同様の判定処理が繰り返される。新たな患者の選択は、入力デバイスを介して、新たに入力された患者でもよい。なお、品質情報と評価基準との比較の具体的な手順は、当業者が適宜設計可能であり、たとえば実施例1と同様に、すべての患者について判定処理をまとめて行ってもよい。
【0070】
切断した細胞シートは、任意の方法で容器から個別包装容器へに移し替えて封入され、運搬される。移植に係る医療機関情報などの患者情報に基づいて封入および運搬してもよい。
【0071】
以上のように構成された細胞シート切断支援システムは、細胞シートの評価基準と、患者情報に基づき、培養した細胞シートの品質情報から、複数の患者が移植に用いるための切断箇所を出力するので、各患者に最適の細胞シートを割り当てることができる。とくに、様々な形、大きさを有する細胞シートを、希望される形、大きさおよび枚数に応じて、効率的に切断することができる。このことから、細胞シートのロスを低減し、不使用の細胞シートの廃棄量を削減することができる。
【0072】
また、キャンセル情報を受け付ける構成では、ある患者が細胞シートの移植をキャンセルした場合に、別の患者にその細胞シートを移植することができるので、さらに細胞シートのロスを低減し、不使用の細胞シートの廃棄量を削減することができる。
【0073】
[実施例3]
実施例3では、実施例1または2において、算出された切断箇所に基づいて、切断された細胞シートに識別情報を付与するようにしたものである。以下、実施例1との差異を中心に、実施例3について説明する。
【0074】
細胞シートは、細胞シート切断支援システム100によって出力された切断箇所に基づき、切断され、個装容器に包装され、輸送される。個装容器には、切断された細胞シートの識別情報(識別番号、識別子、等)が付与される。
【0075】
識別情報は、
図3(C)に示すように、切断した細胞シートのそれぞれについて生成される情報であり、培養中、若しくは培養後の品質情報、および/または患者情報に関連付けることが可能である。記憶デバイス202は、切断された細胞シートの品質情報と、識別情報とを紐づけて記憶する。また、プロセッサ201は、識別情報を入力として受け付ける処理と、識別情報に紐づけられた細胞シートの品質情報を出力する処理と、を実行可能であってもよい。このようにすると、作業者が切断された細胞シートに表示された識別情報を読み取って入力することに応じて、その細胞シートの品質情報を出力することができる。
【0076】
細胞シートにおける識別情報の具体的な表示方法は任意であるが、たとえば、細胞シートに直接表示してもよく、また、例えば細胞シートの剥離や移動時などのハンドリングに使用する支持体に付与してもよい。支持体には、任意の識別符号(文字情報、1次元バーコード、2次元バーコード、QRコード(登録商標)、RFIDタグ、等)を1つ、または複数選択して付与することができる。例えば、文字情報とRFIDタグを付与した場合、作業者による文字情報の認識と、電子読み取り機等によるRFIDタグの認識が可能となる。識別符号を付与する方法として、個装容器や支持体に直接的に所定形状を刻み込む方法、レーザープリンタを用いてインクにより印字する方法、タグやチップを埋め込む方法、などを選択できる。選択した方法が細胞毒性を示さず、また滅菌可能であれば好適である。
【0077】
以上のように実施例3では、切断された細胞シートごとに、品質情報に関連付けられた識別情報を付与することにより、患者に細胞シートを提供した後であっても、細胞シートの品質情報を追跡することができる。このため、たとえば必要に応じて、識別情報に基づき、品質情報を参照することができる。
【0078】
[実施例4]
実施例4では、実施例2における、細胞シートの切断箇所の算出(S405)において、実施例2に記載の細胞シートの品質情報と患者情報だけでなく、さらに細胞シートを移植した後の患者の予後情報を踏まえて、細胞シートの切断箇所を算出するものである。以下、実施例2との差異を中心に実施例4について説明する。
【0079】
実施例4の細胞シート切断支援システムのハードウェア構成は、実施例1または2と同一とすることができる。
【0080】
入力デバイス203は、細胞シートが移植された患者の予後情報を入力として受け付ける。入力デバイス203によって取得された予後情報は、記憶デバイス202の予後情報データベースに格納される。
【0081】
図8は、予後情報を格納する予後情報データベースの例である。予後情報は、具体例として、患者ID、移植された細胞シートの細胞種、患部の大きさ、移植された細胞シートの大きさ、移植による患者の治療効果、等を含む。また、予後情報は、移植された細胞シートの識別番号、移植に使用した細胞シートの枚数、患者の既往歴、細胞シートの移植後に実施した処置、等を含んでもよい。評価基準および培養条件は、実施例1(
図3(A))と同一の項目を含んでもよい。
【0082】
実施例4の細胞シート切断支援システムの処理の流れを
図9に示す。
【0083】
まず、細胞シートの培養が細胞培養装置によって開始される(S800)。プロセッサ201は、入力デバイス203を介して、細胞シートが移植された患者の予後情報と、移植された細胞シートの品質情報とを入力として受け付ける(S801)。
【0084】
次に、プロセッサ201は、機械学習によって予後情報予測モデルを生成する(S802)。予後情報予測モデルは、たとえば、予後情報(ただし治療効果を除く)に基づき、治療効果を推定するモデルである。機械学習のモデルとしてはニューラルネットワークやロジスティック回帰等の周知又は公知の手法を採用すればよく、本実施例では詳述しない。
【0085】
予後情報の構成は当業者が適宜設計可能であるが、たとえば
図8に示すものであってもよく、品質情報の全部または一部と同一の項目を含んでもよく、評価基準の全部または一部と同一の項目を含んでもよく、患者情報の全部または一部と同一の項目を含んでもよい。治療効果は、移植に係る医療機関の担当者等が適宜決定することができる値であり、たとえば疾患が治る確率(百分率)を表す。
【0086】
次に、プロセッサ201は、患者情報を入力として受け付ける(S803)。
【0087】
次に、プロセッサ201は、取得した患者情報を予後情報予測モデルに入力することにより、患者に適した細胞シートの評価基準を算出してもよい(S804)。なお、後述するように、S808において治療効果が最大と推定される細胞シートを選択する処理を実行する場合には、S804は省略可能である。
【0088】
プロセッサ201は、実施例1と同様にして、細胞シートの品質情報を取得し(S805)、細胞シートの培養が終了したか否かを判定し(S806)、品質情報が評価基準を満たすか否かを判定する(S807)。なお、S807またはそれより前において、各患者の評価基準を取得してもよい。品質情報が評価基準を満たさない細胞シート(またはその特定領域)は、移植には使用しない(S809)。
【0089】
そして、プロセッサ201は、S807の結果に基づき、細胞シートの切断箇所を出力する(S808)。ここで、1枚の細胞シートが、複数の患者の評価基準を満たす場合には、プロセッサ201は、予後情報予測モデルを用いて最適な患者を選択する。たとえば、プロセッサ201は、予後情報予測モデルに該当する各患者の患者情報(たとえば、
図8に示す予後情報のうち、患者IDおよび治療効果を除く部分)を入力することにより、各患者に対する治療効果を推定し、治療効果が最も高くなる患者を、移植対象として決定する。
【0090】
なお、細胞シート切断支援システム100は、患者の評価基準が定まっていない場合や、評価基準が不適切であると判定される場合(たとえば細胞シートが大きすぎる、又は小さすぎる場合等)には、予後情報予測モデルに基づき、患者に適した細胞シートの大きさまたは評価基準等に関する助言(リコメンド)を出力してもよい。
【0091】
以上のように、実施例4では、移植後の患者の予後情報を用いることで、細胞シートと患者の組み合わせをより最適化することができる。
【0092】
[実施例5]
実施例5では、実施例1において、細胞シート切断支援システム100が光源を有し、光源を用いて切断箇所の出力を行うものである。以下、実施例1との差異を中心に実施例5について説明する。
【0093】
図10は実施例5における細胞シート切断支援システム100のブロック図である。実施例5の細胞シート切断支援システム100は、実施例1(
図2)の構成に加え、光源901を備える。光源901は、プロセッサ201によって算出された細胞シートの切断箇所に基づき、培養された細胞シートの切断箇所に光を投射する。光源901は、出力デバイス204(
図2)に対応するものであってもよい。
【0094】
【0095】
図11(A)の例では、透明な培養容器1006の下に、光源を含む光投射機1002を設置している。光投射機1002はたとえば液晶ディスプレイ装置であり、上方に向けて光を投射する。光投射機1002は多数の光源(たとえば発光素子)を含むので、細胞シート1005の下方において複数地点に光源が設置されるということができる。光投射機1002は、
図12のように細胞シート1005の切断箇所1004に光を投射する。作業者は、切断箇所1004に沿って細胞シート1005を切断することができ、細胞シートの切断部分を見分ける工程が容易化される。
【0096】
光源901からの光は、細胞シートの切断工程において、細胞シート毎又は細胞種毎に色分けされていてもよい。また、投射内容は細胞シートの識別情報又は細胞種を異なる記号または印によって示してもよく、作業者への作業内容を示してもよい。このように、光源901が、1以上の種類の色、記号、印、または作業内容を投射するよう構成することにより、作業者はより多くの情報を得ることができる。
【0097】
また、光源901は、細胞シートの包装工程において、切断された細胞シートに対し、包装される個装容器の識別情報を投射してもよい。光源901は、時刻に応じて、切断や輸送等の作業が必要な細胞シートを投射してもよい。なお、細胞シート切断支援システム100は、センサを有してもよく、作業者が切断箇所1004とは異なる位置を切断しようとした場合に、センサによりエラーを検知し、光によってアラートを警告するよう構成してもよい。
【0098】
以上のように、実施例5では、細胞シートの切断箇所を光によって出力することで、非侵襲的に細胞シート上へ情報を付与することができるので、細胞シートの切断部分を見分ける工程が容易化され、作業者の誤作業の低減および作業効率の向上が実現される。
【0099】
また、実施例5では、細胞シートに非侵襲的に情報を付与することができるため、移植手術のキャンセルが発生し、細胞シートを移植する患者の一部が作業の直前に変更となった場合においても、切断箇所の表示内容を容易かつ迅速に変更できる。
【0100】
なお、光源901の具体的な設置態様として、
図11(B)または
図11(C)に示す構成も考えられる。
【0101】
図11(B)は、安全キャビネット1001の床面の下部に光源を含む光投射機1002を設置し、光投射機1002からの光を、光透過用窓1007を介して細胞シート1005へ照射する構成の例である。これにより、作業位置である培養容器1006の底面が安全キャビネット1001の上面と略同一の高さに位置する為、作業性が向上する。
【0102】
図11(C)は、作業空間の上方に設置した複数の光源1003より、細胞シート1005に複数方向から光を投射する構成の例である。これにより、作業時、ある光源1003からの光が作業者の手等に当たって遮られても、別の光源1003からの光が細胞シート1005へ照射され、上述した切断箇所等の情報をより確実に付与することが可能となる。
【0103】
なお、作業者の手は細胞シート1005の上方に位置するので、このような効果は、
図11(A)または
図11(B)のように、光投射機1002を細胞シート1005の下方に設置する場合であっても実質的に得ることができる。また、単一の光源1003を細胞シート1005の下方に設置する場合も同様である。このように、光源は、細胞シート1005の下方において1地点以上に設置されるか、または、細胞シート1005の上方において2地点以上に設置されると好適である。
【0104】
細胞シート切断支援システム100は、
図11(C)に示す光源1003からの光によって細胞シート1005を自動的に切断してもよい。たとえば、光源1003からの光をレーザーとし、当該レーザーが、切断箇所1004を出力すると同時に、当該箇所を切断してもよい。このようにすると、細胞シートの切断部分を見分ける工程がさらに容易化される。また、切断作業が自動化され作業効率が向上する。
【0105】
以上のように、上述した実施例1~実施例5に係る細胞シート切断支援システムによれば、細胞シートの切断部分を見分ける工程が容易化される。また、このため、細胞シートの切断効率が向上する。さらに、実施例4によれば、治療効果が向上する。
【0106】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。たとえば、前述した各実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、または置換をしてもよい。
【0107】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、たとえば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0108】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)の記録媒体に格納することができる。
【0109】
なお、本発明の各実施例に係る細胞シート切断システムを用いて、病院や製薬企業、細胞シート製造会社などの顧客は、細胞シートの発注受付から細胞シートの培養、包装、運搬の一連の作業を行ってもよい。具体的な実施形態として、病院や製薬企業、細胞シート製造会社から細胞シートの発注と予定納品日を受け付けた細胞シート切断支援システムは、予定納品日に合わせて、培養に必要な条件を設定し、条件に基づき細胞培養装置を稼働させる。培養中は前述の通り、細胞シートの品質情報を取得する。細胞シートの培養終了後、細胞シート切断支援システムにより割り当てられた作業員は、画面に出力されている細胞シートの切断箇所に基づき、細胞シートを切断、剥離し、包装、運搬を行う。病院や製薬企業、細胞シート製造会社は、発注内容に基づいて培養された細胞シートを受け取ることができる。
【符号の説明】
【0110】
100…細胞シート切断支援システム
101…細胞培養装置を有する機関
102…細胞培養装置を有さない機関
201…プロセッサ
202…記憶デバイス
203…入力デバイス
204…出力デバイス
205…通信インターフェース
206…バス
207…観察装置
208…モニタリング装置
209…細胞培養装置
209a…培養容器
210…患者データベース
211…細胞情報データベース
212…識別情報データベース
301~303…細胞シート
304…移植に適した範囲
305…穴
306…薄い領域
901…光源
1001…安全キャビネット
1002…光投射機
1003…光源
1004…切断箇所
1005…細胞シート
1006…培養容器
1007…光透過用窓