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  • 特開-筆記具用インキカートリッジ 図1
  • 特開-筆記具用インキカートリッジ 図2
  • 特開-筆記具用インキカートリッジ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183085
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】筆記具用インキカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/03 20060101AFI20231220BHJP
   B43K 5/02 20060101ALI20231220BHJP
   B43K 7/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B43K8/03
B43K5/02
B43K7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096508
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小出 託也
(72)【発明者】
【氏名】田島 聡之
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350KC05
2C350KC11
2C350KC22
2C350KD09
(57)【要約】
【課題】
本発明は、インキ補充時のノズル押し込み動作によってガイド部に負荷がかかったとしても、ノズルが安定した状態を維持でき、インキカートリッジ内壁へのインキ飛散を確実に防止することができる筆記具用インキカートリッジを提供する。
【解決するための手段】
インキを貯留する本体と、該本体の上部に補充用ノズルを挿通する為の補充孔と、該補充孔を閉塞する密閉部と、前記補充孔の下方には、補充したインキを誘導する棒状のガイド部と、からなる筆記具用のインキカートリッジであって、前記ガイド部は前記本体内で動かないように固定されていることを特徴とする筆記具用インキカートリッジである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキを貯留する本体と、
該本体の上部に補充用ノズルを挿通する為の補充孔と、
該補充孔を閉塞する密閉部と、
前記補充孔の下方には、補充したインキを誘導する棒状のガイド部と、からなる筆記具用のインキカートリッジであって、
前記ガイド部は前記本体内で動かないように固定されていることを特徴とする筆記具用インキカートリッジ。
【請求項2】
前記ガイド部の外表面に軸線方向に沿った溝が1つ以上形成されていることを特徴とする請求項1に記載の筆記具用インキカートリッジ。
【請求項3】
前記ガイド棒の軸線方向と垂直な方向の断面形状が十字型であることを特徴とする請求項2に記載の筆記具用インキカートリッジ。
【請求項4】
前記密閉部は、
前記ガイド部に配した弾性体と、
該弾性体に付勢されて前記補充孔を閉塞する弁体と、から構成されており、
前記ガイド部が、前記補充用ノズルで前記弁体を押圧した際のストッパーとして機能することを特徴とする請求項1~3に記載の筆記具用インキカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用インキカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記により消費したインキを筆記具に備えたインキカートリッジに、補充用ノズルによりインキ補充可能としたカートリッジ式の筆記具が知られている。前記インキカートリッジは通常、インキ補充量を確認できるように開部からインキ液面が視認可能な透明性の部材で形成されている。しかしながら、この種のインキカートリッジにインキを補充する際、補充用ノズルから吐出されるインキが補充孔から飛散することでカートリッジ内壁に付着する為、補充したインキの液面が外部から視認できず、適切な補充量がわからなくなる問題が生じていた。
また、出願人はインキカートリッジへのインキ補充方法として、筆記具をセットすると自動的にインキカートリッジに適量のインキ補充が行えるインキ補充装置を先に出願している(先行文献1)。この補充装置は、インキカートリッジ内の液面を、透明なインキカートリッジを透して内部のインキを検知可能な光学式センサで認識する事により、適切な量のインキを補充できる構成となっている。その為、補充の際、インキがカートリッジ内壁に付着していると、光学センサが、インキ残量が補充閾値に達していないと誤認識し、インキ補充が開始されない等の不具合があった。
一方、先行文献2には、筆記具用インキタンク後端の尾栓(ノズル挿入壁を兼用)からペン先方向に向けて押し棒を備えた構成の開示がある。かかる構成によれば、インキ補充の際に押し棒を伝ってインキが流動する為、カートリッジ内壁へのインキ飛散は防止できると考えられる。
しかしながら、前記押し棒は、インキ収容部分とペン先の収容部分との区画する弁を操作する為の部材であり、インキ補充における飛散防止を目的として設けられたものではない為、インキタンク内で前後に摺動することを前提としている。従って、かかる構成では、インキ補充時のノズル押し込み動作によってガイド部に負荷がかかると、ノズル側が静止せず安定した状態を保てない為、インキタンク内壁へのインキ飛散効果が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-199018号公報
【特許文献2】特開2000-190678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであって、インキ補充時のノズル押し込み動作によってガイド部に負荷がかかったとしても、ノズルが安定した状態を維持でき、インキカートリッジ内壁へのインキ飛散を確実に防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために完成された本発明は、インキを貯留する本体と、該本体の上部に補充用ノズルを挿通する為の補充孔と、該補充孔を閉塞する密閉部と、前記補充孔の下方には、補充したインキを誘導する棒状のガイド部と、からなる筆記具用のインキカートリッジであって、前記ガイド部は前記本体内で動かないように固定されていることを特徴とする筆記具用インキカートリッジである。
【0006】
前記ガイド部の外表面に軸線方向に沿った溝が1つ以上形成されていることが好ましい。
【0007】
前記ガイド棒の軸線方向と垂直な方向の断面形状が十字型であることが好ましい。
【0008】
前記密閉部は、前記ガイド部に配した弾性体と、該弾性体に付勢されて前記補充孔を閉塞する弁体と、から構成されており、前記ガイド部が、前記補充用ノズルで前記弁体を押圧した際のストッパーとして機能することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、インキを貯留する本体と、該本体の上部に補充用ノズルを挿通する為の補充孔と、該補充孔を閉塞する密閉部と、前記補充孔の下方には、補充したインキを誘導する棒状のガイド部と、からなる筆記具用のインキカートリッジであって、前記ガイド部は前記本体内で動かないように固定されている為、インキ補充時のノズル押し込み動作によってガイド部に負荷がかかったとしても、ノズルが安定した状態を維持でき、インキカートリッジ内壁へのインキ飛散を確実に防止することができる。
【0010】
前記ガイド部の外表面に軸線方向に沿った溝が1つ以上形成されている為、補充インキが毛細管現象により前記溝の中に取り込まれた状態で流動する為、インキの飛散を更に防止することができる。
【0011】
前記ガイド棒の軸線方向と垂直な方向の断面形状が十字型である為、交差部分に形成される4つの溝によりインキを取り込むことで略全周に亘ってインキの飛散を防止することができる。
【0012】
前記密閉部は、前記ガイド部に配した弾性体と、該弾性体に付勢されて前記補充孔を閉塞する弁体と、から構成されており、前記ガイド部が、前記補充用ノズルで前記弁体を押圧した際のストッパーとして機能する為、弾性体が最大限に圧縮される前にガイド部に当接する事で弁体が停止することによりガイド部5への負荷は軽減される。また、前記ガイド部は前記本体内で動かないように固定されている為、補充用ノズルが弁体を介して固定され、安定したインキ補充が可能となり、インキカートリッジ内壁へのインキ飛散を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態によるインキカートリッジを搭載した筆記具の断面図である。
図2】本発明の実施形態による筆記具用インキカートリッジの平面図(密閉部、コイルバネなし)である。
図3】本発明の実施形態による筆記具用インキカートリッジへの補充動作を説明する為の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図3を用いて本発明の実施形態に係る筆記具用インキカートリッジについて説明する。
尚、本発明において「下方」「下端」とは、ペン芯側を指し、「上方」「上端」とは、その反対側を指す。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るインキカートリッジを搭載した筆記具の断面図であり、図において、軸体11は下端にペン芯7を保持する為のホルダー11a、上端に開口部を有する筒状の部材であり、内筒12はこの軸体11内下方部に嵌挿されている。前記内筒12は、後端が栓体13で閉塞されており、内部にポリエステルやアクリル繊維等を集束したいわゆる中綿、あるいはスポンジ等からなるインキ吸蔵体6が収容されている。また、軸体11上端の開口部には、下端に開口部、上端にインキ補充用ノズル8を挿入する為の補充孔14aが形成された中筒14が嵌挿されている。軸体11、内筒12、栓体13及び中筒14で仕切られた空間によってインキカートリッジが形成されており、該空間がインキを貯留する為の本体1となっている。このインキカートリッジ内のインキを、前記内筒12の壁面に形成したインキ供給孔12aを通じてインキ吸蔵体6、及びその先端側に装着したペン芯7に供給する構造となっている。尚、本実施形態では前記複数の部材によりインキカートリッジの本体を形成しているが、これらの部材とは独立して個別にインキカートリッジを形成しても良い。
【0016】
ガイド部5は、図1図2に示すように、補充孔14aの下方に軸線方向に設けられ、補充したインキを誘導し、飛散するのを防止する断面十字型の棒状体である。ガイド部5は、下端が栓体13の上端に一体的に形成されており、該栓体13が取り付けられた内筒12は前述したように軸体11に対して嵌挿されている為、本体1内で動かないように固定されている。
【0017】
尚、本実施形態において、四隅に溝を形成する為にガイド部5の断面形状を十字型としているが、溝の数、断面形状は適宜変更可能である。また、溝は必ずしも設けられている必要は無く、断面が円形、三角形、四角形等のものであってもインキ飛散防止の効果は問題なく発揮される。但し、ガイド部5の全集に亘ってインキの飛散を効果的に防止する為には2以上の溝が等間隔で設けられていることが好ましい。
【0018】
また、補充孔14a近傍からガイド部5の中間位置に亘ってガイド部5周囲を覆い、後述するコイルバネ3及び補充孔14aを閉塞する密閉部2を収容支持する為の支持筒4が中筒14内部に設けられている。該支持筒4は上下端が開口しており、その下端においてガイド部5と一体的に形成されている。また支持筒4内部において、ガイド部5上端位置より下方において、ガイド部5の十字の各頂点を支持筒内壁まで延長することで、コイルバネ3を支持する為のリブ5aが形成されている。
【0019】
密閉部2は、図1に示すように、コイルバネ3によって付勢されてインキ補充孔14aを閉塞する球状の弁体である。コイルバネ3は、コイル内部にガイド部5を収容する形で配されており、下端がガイド部5のリブ5aに支持された状態で密閉部2を、インキ補充孔14aの周囲に圧接するように付勢している。一方、密閉部2は支持筒4内で上下動自在に収納されており、ノズル押し込みにより密閉部2が下方に移動した際、密閉部2がガイド部5上端に接触して止まるようにガイド部5が密閉部2のストッパーとして機能している。即ち、リブ5a上端部からガイド部5上端までの長さは、コイルバネ3の密着長さ(荷重をかけて最大限まで圧縮した状態のコイルバネ3の長さ)よりも長くなるように設計されている。
尚、密閉部2の形状は球状以外にインキ補充孔14aを密閉できるものであれば特に形状は限定されない。また、本実施形態では密閉部2を弁体として説明したが、インキ補充孔14aを閉塞できる構成であれば適宜変更可能であり、例えば、着脱自在のキャップを採用する事もできる。
【0020】
次に、上述した本実施形態に係る筆記具用インキカートリッジにインキを補充する際の作用及び機能について図3を参照して説明する。
図3(a)は、補充用ノズル8を補充孔14aに挿入する前の状態の断面図である。この状態ではコイルバネ3で付勢された密閉部2により補充孔14aが閉塞されている為、補充孔14aからのインキの揮発、漏出を防止している。次に図3(b)に示すように、補充用ノズル8をインキ補充孔14aから挿入し、下動させると、密閉部2が、リブ5aに支持されたコイルバネ3の弾発力に抗して下方に移動し、補充孔14aが解放される。このとき、リブ5a上端部からガイド部5上端までの長さは、コイルバネ3の密着長さ(荷重をかけて最大限まで圧縮した状態のコイルバネ3の長さ)よりも長くなるように設計されている為、コイルバネ3が最大限に圧縮される前にガイド部5上端に当接する事で密閉部2が停止する。これによりガイド部5(リブ5a)への負荷は軽減される。また、このとき、密閉部2を介してガイド部5に負荷が加わるが、ガイド部5は、下端が栓体13の上端に一体的に形成されており、該栓体13が取り付けられた内筒12は軸体11に対して嵌挿されて本体1内で動かないように固定されている為、補充用ノズル8が密閉部2を介して固定され、安定したインキ補充が可能となる。これにより補充時に補充用ノズル8が揺動することがなく、インキカートリッジの本体1内壁面にインキが飛散することを防止できる。
【0021】
一方、補充用ノズル8の先端部には、密閉部2に当接しない側壁の一部に、スリット孔状のインキ吐出口(図示なし)が形成されており、このインキ吐出口から吐出したインキは、密閉部2を伝ってガイド部5に流出する。ガイド部5は断面十字型に成形されている為、四隅の溝によりインキが捕捉された状態でインキが補充される為、インキカートリッジの本体1内壁面へのインキ飛散をより確実に防止することができる。
【0022】
以上、本発明に係る筆記具用インキカートリッジの好ましい実施形態を説明したが、本発明の技術的思想は、ここで説明された実施形態に限定して解釈されるべきではない。当業者は、本発明の要旨又は技術思想から逸脱しない範囲で、この実施形態を適宜、変更又は改良を加えることができる。そのような変更又は改良を伴う筆記具用インキカートリッジ及び関連する周辺技術は、本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0023】
1 本体
11 軸体
11a ホルダー
12 内筒
12a インキ供給孔
13 栓体
14 中筒
14a 補充孔
2 密閉部
3 コイルバネ
4 支持筒
5 ガイド部
5a リブ
6 吸蔵体
7 ペン芯
8 補充用ノズル
図1
図2
図3