(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183089
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】油中水型日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20231220BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20231220BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20231220BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/73
A61K8/25
A61K8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096518
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田地 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】三原 祐理子
(72)【発明者】
【氏名】赤田 昌
(72)【発明者】
【氏名】荘司 涼佳
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝治
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC342
4C083AC532
4C083AD042
4C083AD162
4C083AD221
4C083AD222
4C083AD241
4C083AD242
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD32
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】紫外線散乱剤の配合量を抑えつつ紫外線防御効果を有し、汗をかいた際に落ちにくく、メイク化粧料の塗りムラを抑制可能な油中水型日焼け止め化粧料を提供する。
【解決手段】(A)式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体0.5~10質量%、(B)紫外線散乱剤5~35質量%、(C)デキストリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステル0.1~5質量%、(D)カチオン変性粘土鉱物0.1~5質量%を含む油中水型日焼け止め化粧料。
(式(1)中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、aはAOの付加モル数を示し、bはEOの付加モル数を示し、aは0~50の数を示し、bは1~50の数を示し、a+b≧10であり、0≦a/b≦2である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)を0.5~10質量%、成分(B)を5~35質量%、成分(C)を0.1~5質量%、成分(D)を0.1~5質量%含む油中水型日焼け止め化粧料。
(A)下記式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体
【化1】
(式(1)中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、aは前記炭素数3~4のオキシアルキレン基の付加モル数を示し、bは前記オキシエチレン基の付加モル数を示し、aは0~50の数を示し、bは1~50の数を示し、a+b≧10であり、0≦a/b≦2である。式(1)に示すアルキレンオキシド誘導体が前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基との両方を有するとき、前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基とは、ランダム状またはブロック状に付加しており、ブロック付加である場合配列順は問わない。)
(B)紫外線散乱剤
(C)デキストリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステル
(D)カチオン変性粘土鉱物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線によるダメージから皮膚を守ることは、スキンケアやボディケアにおいて重要な課題であり、種々の日焼け止め化粧料が開発されている。日焼け止め化粧料には、紫外線防御能を有する紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が用いられるが、紫外線散乱剤は高水準の日焼け止め効果を達成するために高配合すると塗布後にきしみや白浮きが生じるといった課題があった。心地よい感触や使用感、良好な紫外線防御効果を得るためには紫外線散乱剤の配合量を抑えることが求められている。
【0003】
油中水型化粧料は、連続相が油であることから、紫外線散乱剤固有のきしみ感が生じにくく、また耐水性に優れる等の利点がある。
【0004】
例えば、特許文献1では紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ネオペンタン酸イソデシルとシリコーン油、を含有することで、紫外線防御効果に優れ、かつ、使用性、安定性、洗浄性に優れた水中油型または油中水型日焼け止め化粧料が提案されている。
【0005】
また、日焼け止め化粧料はメイクをする前の下地として用いられることが多い。特に油中水型の日焼け止め化粧料を、吸油性の粉体が多く用いられるファンデーションなどのメイク化粧料を使用する前に塗布すると、日焼け止め化粧料の油分が吸われてしまい、塗布膜に塗りムラが生じてしまうことがあった。
【0006】
特許文献2では、カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル計重合体、疎水化処理粉体、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルを組み合わせた、ファンデーションがきれいに付く、油中水型乳化化粧料を提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-222349号公報
【特許文献2】特開2016-160191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、使用性、安定性等に優れた油中水型日焼け止め化粧料が提案されている。しかし、油中水型化粧料は、油の使用感によるべたつきが生じやすい。また、夏場に汗をかいた際には、汗に水分と塩分が含まれるために再乳化が起こり、塗布膜が崩れてしまう(化粧料が落ちてしまう)ことがあった。そして、特許文献1で提案された油中水型日焼け止め化粧料は、汗をかいた際の落ちにくさや紫外線防御効果の向上性については不十分だった。
【0009】
また、特許文献2では、メイクする前の下地として用いたときにファンデーションがきれいに付く油中水型乳化化粧料が提案されており、この油中水型乳化化粧料は紫外線防御化粧料などに適用できるとされている。しかし、特許文献2で提案された油中水型乳化化粧料は、汗をかいた際の落ちにくさの面では不十分だった。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑み、SPF向上成分により紫外線散乱剤の配合量を抑えつつ紫外線防御効果を有し高め、汗をかいた際に落ちにくく、ファンデーションなどメイク化粧料の塗りムラを抑えることができる油中水型日焼け止め化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、紫外線散乱剤、デキストリン又はショ糖の脂肪酸エステル、カチオン変性粘土鉱物、特定構造を持つアルキレンオキシド誘導体を所定の配合量で組み合わせることにより、上記課題を解決できる油中水型日焼け止め化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記成分(A)を0.5~10質量%、成分(B)を5~35質量%、成分(C)を0.1~5質量%、成分(D)を0.1~5質量%含む油中水型日焼け止め化粧料に関する。
(A)下記式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体
【0013】
【0014】
式(1)中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、aは前記炭素数3~4のオキシアルキレン基の付加モル数を示し、bは前記オキシエチレン基の付加モル数を示し、aは0~50の数を示し、bは1~50の数を示し、a+b≧10であり、0≦a/b≦2である。式(1)に示すアルキレンオキシド誘導体が前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基との両方を有するとき、前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基とは、ランダム状またはブロック状に付加しており、ブロック付加である場合配列順は問わない。
(B)紫外線散乱剤
(C)デキストリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステル
(D)カチオン変性粘土鉱物
【発明の効果】
【0015】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料によれば、SPF向上成分により紫外線散乱剤の配合量を抑えつつ紫外線防御効果を高め、汗をかいた際に落ちにくく、ファンデーションなどメイク化粧料の塗りムラを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。
【0017】
本発明の日焼け止め化粧料は、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を少なくとも含有する。以下、各成分について説明する。
【0018】
〔成分(A)〕
成分(A)は、式(1)に示すアルキレンオキシド誘導体である。
【0019】
【0020】
式(1)中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、aは前記炭素数3~4のオキシアルキレン基の付加モル数を示し、bは前記オキシエチレン基EOの付加モル数を示し、aは0~50の数を示し、bは1~50の数を示し、a+b≧10であり、0≦a/b≦2である。前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基とは、ランダム状またはブロック状に付加しており、ブロック付加である場合配列順は問わない。
【0021】
aを50以下とすることで、SPF向上効果及び汗をかいた際の落ちにくさを向上させ、べたつきを軽減することができる。そのため、aは0~50とするが、0~40が好ましく、0~30が最も好ましい。
【0022】
bを1以上とすることで、SPF向上効果及びメイクの塗りムラを抑える効果を向上させる。また、bを50以下とすることで、汗をかいた際の落ちにくさを向上させることができる。そのため、bは1~50とするが、10~40が好ましく、10~30がさらに好ましい。
【0023】
a+bを10以上とすることで、メイクの塗りムラを抑える効果を向上させることができる。そのためa+bは10以上とするが、20以上が最も好ましい。a+bの上限は特に限定されないが、SPF向上効果を向上させる観点から、50以下とすることが好ましい。
【0024】
aが0より大きい場合、炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基は、ランダム状またはブロック状に付加している。ブロック状に付加している場合の配列順は問わない。aが0より大きい場合、炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基は、ランダム状に付加していることが好ましい。
【0025】
a/bを2以下とすることで、べたつきを軽減させ、SPF向上効果および汗をかいた際の落ちにくさを向上させ、メイクの塗りムラを抑えることができる。そのため、a/bは2以下とするが、1.2以下が最も好ましい。a/bの下限値は0であるが、0.3以上としてもよい。
【0026】
炭素数3~4のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基やオキシブチレン基が挙げられるが、オキシプロピレン基が最も好ましい。なお、式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基のいずれか一方のみを有してもよいし、これらの双方を有してもよい。これらの双方を有するとき、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基は、ランダム状およびブロック状のいずれであってもよい。ブロック状に付加している場合の配列順は問わない。
【0027】
式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体はグリセリンの三つの水酸基のうち、一位の水酸基にアルキレンオキシドが付加したモノエーテル構造を有する。モノエーテル体純度は80%以上であり、90%以上が好ましく、95%以上が更に好ましい。モノエーテル体純度の上限は特に限定されないが、100%以下とすることができる。
【0028】
モノエーテル体純度は1H-NMR測定で得られるピーク積分値を使用して、下記式より算出できる。
【0029】
【0030】
Xは、モノエーテル体のみに検出されるグリセリン2位メチン基に由来する約3.3ppmの積分値を1とした際の、エチレンオキシドが付加したグリセリン1,3位メチレン基に由来する約2.4ppm付近のピーク積分値を示す。但し、モノエーテル体のグリセリン2位メチン基に由来する約3.3ppmのピーク積分値が検出できない場合は、モノエーテル体純度を0とする。
【0031】
本発明の式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。アルキルアルコール、例えばグリセリンの一位水酸基以外を保護したイソプロピリデングリコールに、アルカリ触媒下、50~160℃、0.5MPa(ゲージ圧)以下にてアルキレンオキシドを付加重合する。2種類以上のアルキレンオキシドを使用する場合、ランダム体の場合はあらかじめ2種類以上のアルキレンオキシドを混合した後に付加重合し、ブロック体の場合は、AOを重合した後にEOを重合しても、EOを重合した後にAOを重合してもよい。その後、塩酸、リン酸、酢酸などの酸を添加し、脱アセタール化を行い、過剰の酸を水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基にて中和し、さらに水分および中和塩を除去することでアルキレンオキシド誘導体を得ることができる。
【0032】
成分(A)の添加濃度は、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対して0.5~10質量%であり、好ましくは1~8質量%、さらに好ましくは1.5~5質量%である。成分(A)の含有量を多くすることで、SPF向上効果、汗をかいた際の落ちにくさを向上させ、メイクの塗りムラを抑えることができる。成分(A)の含有量を過剰としないことで、メイクの塗りムラを抑える効果の低下や、べたつきの発生を抑制することができる。
【0033】
〔成分(B)〕
成分(B)は、紫外線散乱剤である。紫外線散乱剤とは、紫外線を反射・散乱させて皮膚等を紫外線から防御することができる粒子状物質を指す。本発明で使用し得る紫外線散乱剤の材料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等があげられる。また、紫外線散乱剤としてこれらの材料を微粒子化したものや、複合化したものを使用してもよい。紫外線の反射・散乱効果の高さから、酸化チタン及び酸化亜鉛から選択される1種又は2種を含むことが好ましい。
【0034】
紫外線散乱剤として用いられる酸化チタン及び酸化亜鉛は、化粧料に通常用いられている酸化チタン及び酸化亜鉛であってよい。好ましくはより分散性に優れたもの、例えば必要に応じて公知の方法で表面を表面処理、具体的には疎水化処理したものを肌用組成物中に含有することができる。
【0035】
表面処理の方法としては、メチルハイドロゲンポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン処理;レシチン処理;金属石鹸処理;脂肪酸処理;アルキルリン酸エステル処理等があげられる。
【0036】
成分(B)は、平均一次粒子径8~80nmのサイズに微粒子化したものが好ましく、10~30nmがさらに好ましい。
【0037】
成分(B)の添加濃度は、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対して5~35質量%であり、好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは15~25質量%である。成分(B)の含有量を多くすることで、日焼け止め化粧料として、十分な紫外線防御効果を得ることができる。成分(B)の含有量を過剰としないことで、メイクの塗りムラを生じにくくし、きしみや白浮き等、使用感の低下を抑制することができる。
【0038】
〔成分(C)〕
成分(C)は、デキストリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステルである。
【0039】
本発明に用いられるデキストリン脂肪酸エステルは、脂肪酸とデキストリンのエステルである。上記脂肪酸は、炭素数8~24の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸であることが好ましい。デキストリンの平均重合度は10~50であることが好ましく、より好ましくは20~30である。
【0040】
デキストリン脂肪酸エステルの具体例としては、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸デキストリン等が挙げられる。
【0041】
また、本発明に用いられるショ糖脂肪酸エステルは脂肪酸とショ糖のエステルである。上記脂肪酸は、炭素数8~30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸であることが好ましく、18~22がより好ましい。
【0042】
ショ糖脂肪酸エステルの具体的としては、ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステルを挙げることができる。
【0043】
成分(C)としては、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。メイクの塗りムラを抑える観点から、好ましくはパルミチン酸デキストリンである。
【0044】
成分(C)の添加濃度は、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対して0.1~5質量%であり、好ましくは0.5~3質量%、さらに好ましくは0.5~2質量%である。成分(C)の含有量を多くすることで、SPF向上効果を向上させ、汗をかいた際の落ちにくさ、メイクの塗りムラを抑える効果が十分に高まる。成分(C)の含有量を過剰としないことで、使用時のべたつき感を生じにくくし、汗をかいた際の落ちにくさを向上させ、メイクの塗りムラを抑えやすくすることができる。
【0045】
〔成分(D)〕
成分(D)は、カチオン変性粘土鉱物である。成分(D)は、第四級アンモニウムイオンで置換されたカチオン変性粘土鉱物であることが好ましい。成分(D)は、通常の化粧料で用いられるものであれば制限されないが、ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム等の層状粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理したものが好ましい。
【0046】
成分(D)の具体的としては、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等を挙げることができる。メイクの塗りムラを抑える観点から、好ましくは、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトである。
【0047】
第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤の具体的としては、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、および上記各化合物のクロリドに代えてブロミド化合物としたもの等、さらにジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。
【0048】
成分(D)の添加濃度は、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対して0.1~5%であり、好ましくは0.5~3%、さらに好ましくは1~2%である。成分(D)の含有量を多くすることで、SPF向上効果が向上し、メイクの塗りムラを抑える効果が十分に得られる。成分(D)の含有量を過剰としないことで、SPF向上効果が向上し、汗をかいた際の落ちにくさが十分に高まり、メイクの塗りムラを抑える効果が十分に得られ、化粧料の安定性が低下しにくくなる。
【0049】
〔他の成分〕
本発明の日焼け止め化粧料は、上記成分(A)~(D)に加え、通常、水を含有する。水としては、例えば、精製水、水道水、工業用水、脱イオン水等が挙げられる。本発明の日焼け止め組成物における水の添加濃度は、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対して通常、5~60質量%であり、好ましくは10~55質量%、さらに好ましくは15~50質量%である。
【0050】
本発明の日焼け止め化粧料は、上記成分(A)~(D)および水に加え、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、化粧料、医薬部外品、医薬品等に使用される添加剤を含有してもよい。
【0051】
かかる添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、界面活性剤((C)成分を除く)等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、パラジメチル安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、サリチル酸2-エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エトキシエチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アリニノ]-1,3,5-トリアジン、オクトクリレン、4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、ビスエチルへキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、必要に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0052】
界面活性剤としては、HLB3~7の界面活性剤が良く、例えば、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-10ジメチコン、オレイン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、オレイン酸ポリグリセリル―2、ステアリン酸ポリグリセリル―2等が挙げられる。
【0053】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料がその他の成分を含有する場合、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対するその他の成分の含有量は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%~20質量%である。
【0054】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料は、油性成分と水相成分とが乳化されて形成され、通常用いられている方法に従って製造することができる。例えば、油剤などの油性成分と(C)成分を混合溶解し、それを攪拌しながら(B)成分及び(D)成分を添加し、次に、(A)成分等を水に混和溶解させた水相成分を添加して乳化させることにより製造することができる。
【0055】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料は、様々な用途に応じた形態で提供することができ、例えば、乳液、クリーム、ジェル等として提供される。
【実施例0056】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0057】
〔実施例1~11、比較例1~7〕
<合成例1:実施例化合物A-1>
イソプロピリデングリコール100gと触媒としてカリウムtert-ブトキシド0.5gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら130℃で触媒を溶解した。引続き、130℃、0.2~0.5MPa(ゲージ圧)にて、滴下装置によりエチレンオキシド866gを滴下し、1時間攪拌した。その後、オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸でpH3とし、脱アセタール化を行った。その後、水酸化カリウムで中和し、減圧-0.095MPa(ゲージ圧)、100℃で3時間処理することで含有する水分を除去し、濾過を行い、実施例化合物A-1を得た。
【0058】
<合成例2~3:実施例化合物A-2、比較例化合物A’-1>
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドの各付加量を変更したこと以外は、合成例1と同様の方法にて、実施例化合物A-2、比較例化合物A’-1を得た。ただし、比較例化合物A’-1のようなランダム付加体の場合、エチレンオキシドとプロピレンオキシドまたはブチレンオキシドをあらかじめ混合し、滴下装置により滴下し反応を行った。また、実施例化合物A-2のようなブロック付加体の場合、プロピレンオキシドを所定の付加モル数になるよう滴下装置により滴下することにより反応させた後、エチレンオキシドを所定の付加モル数になるよう滴下装置により滴下することにより反応を行った。
【0059】
また、JIS K1557-1に準じた水酸基価測定によって得られる水酸基価からエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物の数平均分子量を求め、その数平均分子量から式(1)におけるa、bの値を特定した。実施例化合物A-1~A-2、比較例化合物A’-1の、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの各平均付加モル数の合計などを表1に示す。なお、表1の「AO」は式(1)に示すアルキレンオキシド誘導体が有するオキシアルキレン基(AO)の種類を示し、「PO」はオキシプロピレン基を、それぞれ表す。表1には、上述した方法で算出したモノエーテル体純度も示す。
【0060】
【0061】
〔評価方法〕
成分(A)~(D)、(A′)、(D′)、その他成分を、表2~3(実施例)、表4(比較例)に示す組成で、油中水型日焼け止め化粧料として調製し、(1)SPF向上効果(2)汗をかいた際の落ちにくさ、(3)ファンデーションの塗りムラについて、下記評価基準にて、評価を行った。なお、評価に使用した成分(A)の化合物組成については、表1に示した。
【0062】
(1)SPF向上効果
実施例、比較例に示す各化粧料に対し、成分(A)及び成分(A’)を含まないブランクを調整し、各試料を、PMMAプレート(Labsphere社製 HELIOPLATE HD6)に2mg/cm2塗布後、暗所で20分静置したサンプルについて、SPFアナライザー(Labsphere社製 UV-2000S)を用いたSPF測定を行い、前記プレート上を9点測定し、平均値から[SPFブランク]を得た。実施例および比較例の各化粧料も同様に[SPF試料]を測定した。下記式よりブランクに対するSPFの変化率を求めた。
ブランクに対するSPFの変化率=[SPF試料]/[SPFブランク]×100
【0063】
ブランクに対するSPFの変化率を下記の基準で評価し、125%以上の場合、SPF向上効果を有する油中水型日焼け止め化粧料と判断した。
【0064】
<評価基準>
◎:変化率が150%以上
○:変化率が125%以上、150%点未満
△:変化率が110%以上、125%未満
×:変化率が110%未満
【0065】
(2)汗をかいた際の落ちにくさ
20名の女性(23~55才)をパネラーとし、実施例および比較例の油中水型日焼け止め化粧料を前腕に0.1g塗布した。40℃、70%の恒温恒湿室に30分入り、発汗させた。部屋から出たのちにティッシュペーパーで汗を拭き取った。拭き取った後の前腕の感触について、下記評価基準により点数化した。パネラー20名の評価点の合計点を求め、合計点が20点以上の場合、汗で落ちにくい油中水型日焼け止め化粧料と判断した。
【0066】
<評価基準>
2点:日焼け止め化粧料が十分に残っている。
1点:日焼け止め化粧料がわずかに落ちてしまっている。
0点:日焼け止め化粧料がほとんど落ちてしまっている。
【0067】
◎:合計点が30点以上
○:合計点が20点以上、30点未満
△:合計点が10点以上、20点未満
×:合計点が10点未満
【0068】
(3)ファンデーションの塗りムラ
20名の女性(23~55才)をパネラーとし、実施例および比較例の油中水型日焼け止め化粧料を前腕に0.1g塗布した。3分間乾燥させた後、市販のパウダーファンデーションをパフに取り、前腕に塗り広げた際の塗りムラについて、下記評価基準により点数化した。パネラー20名の評価点の合計点を求め、合計点が20点以上の場合、ファンデーションなどメイクの塗りムラを抑える油中水型日焼け止め化粧料と判断した。
市販のファンデーション:インテグレート プロフィニッシュファンデーション(株式会社資生堂製)
【0069】
<評価基準>
2点:塗り広げた際に、塗りムラが生じない。
1点:塗り広げた際に、わずかに塗りムラがある。
0点:塗り広げた際に、塗りムラがある。
【0070】
◎:合計点が30点以上
○:合計点が20点以上、30点未満
△:合計点が10点以上、20点未満
×:合計点が10点未満
【0071】
実施例1~11および比較例1~7の組成および評価結果を表2~表4に示す。なお、表2~表4に記載した組成は、全体の質量を100質量部としたときの各成分の比率(質量部)を示す。また、油中水型日焼け止め化粧料に共通する成分の組成を表5に示す。なお、表5に記載した組成は、表2~表4に記載した組成の全体の質量を100質量部としたときの、各成分の比率(質量部)を示す。
【0072】
なお、油中水型日焼け止め化粧料に使用した材料は以下の通りである。
酸化チタン:脂肪酸処理微粒子酸化チタン(テイカ株式会社製「MTー10EX」、平均一次粒子径10nm)
酸化亜鉛:シリコーン処理微粒子酸化亜鉛(テイカ株式会社製「MZY-505M」、平均一次粒子径25nm)
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
実施例1~11については、いずれのサンプルにおいても、十分なSPF向上効果を有し、汗をかいた際に落ちにくく、ファンデーションの塗りムラを抑えることができた。
【0078】
一方、比較例1~7については、十分な効果は得られなかった。
【0079】
すなわち、比較例1では、成分(A)が含まれていなかったため、SPF向上効果は無く、汗をかいた際の落ちにくさ、ファンデーションの塗りムラを抑える効果が不十分だった。比較例2では、成分(C)が含まれていなかったため、汗をかいた際の落ちにくさ、ファンデーションの塗りムラを抑える効果が不十分だった。比較例3では、成分(D)が含まれていなかったため、ファンデーションの塗りムラを抑える効果が不十分だった。比較例4では、成分(A)と異なるアルキレンオキシド誘導体を配合したため、SPF向上効果、汗をかいた際の落ちにくさ、ファンデーションの塗りムラを抑える効果が不十分だった。比較例5では、成分(A)の含有量が多かったため、ファンデーションの塗りムラを抑える効果が不十分だった。比較例6では、成分(C)の含有量が多かったため、汗をかいた際の落ちにくさ、ファンデーションの塗りムラを抑える効果が不十分だった。比較例7では、成分(D)の含有量が多かったため、汗をかいた際の落ちにくさ、ファンデーションの塗りムラを抑える効果が不十分だった。
本発明の油中型日焼け止め化粧料は、顔や肌などの皮膚に適用することができ、従来の日焼け止め化粧料では得られない特有の効果、具体的には、汗で落ちにくく、メイクをした際の塗りムラを抑えることができるため、日焼け止め化粧料や化粧下地などへの適用が期待できる。