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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183104
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】トラックボール装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0354 20130101AFI20231220BHJP
   G06F 3/038 20130101ALI20231220BHJP
【FI】
G06F3/0354 431
G06F3/038 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096545
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】510140847
【氏名又は名称】エフアンドエフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】谷口 隆一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 英明
(72)【発明者】
【氏名】鎌本 健夫
【テーマコード(参考)】
5B087
【Fターム(参考)】
5B087AA02
5B087AA06
5B087AD00
5B087BB02
5B087DD03
(57)【要約】
【課題】小型化を図りつつ回転操作に応じた出力情報の精度の低下を抑制する。
【解決手段】トラックボール装置1は、情報入力のための回転操作がなされるボール2と、ボール2を回転自在に支持するケース3と、ボール2の回転量を検出する検出部4と、回転量の検出結果が入力される制御部5と、を含み、回転操作に応じた情報を出力する。ケース3の収容部31の内面のうちの、ボール中心2dから斜め下方に延びる仮想線Lが交わる部分に、検出窓32が開口される。検出部4は、ボール中心2dの斜め下方から所定の仰角θでボール表面2bを仰ぐ姿勢をとった状態で、検出窓32を収容部外から塞ぐ、一つの光デバイス4Aからなる。光デバイス4Aはボールの回転量を上下方向の移動量D1と左右方向の移動量D2とに分離して検出する。制御部5は上下方向の移動量D1及び左右方向の移動量D2のうちのいずれか一方を所定の仰角θに基づいて補正する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報入力のための回転操作がなされるボールと、
前記ボールの少なくとも下半部が収容される収容部を有し、前記ボールの頂部を含む部分を外部に露出させた状態で前記ボールを回転自在に支持するケースと、
前記ケースに設けられ、前記ボールの表面に光を照射すると共に、前記ボールの表面で反射した反射光を検知し、前記反射光の検知結果に基づいて前記ボールの回転量を検出する検出部と、
前記回転量の検出結果が入力される制御部と、
を含み、前記回転操作に応じた情報を出力するトラックボール装置であって、
前記収容部の内面のうちの、前記ボールの中心から斜め下方に延びる仮想線が交わる部分に、検出窓が開口され、
前記検出部は、前記ボールの中心の斜め下方から所定の仰角で前記ボールの表面を仰ぐ姿勢をとった状態で、前記検出窓を収容部外から塞ぐ、一つの光デバイスからなり、
前記光デバイスは、前記ボールの回転量を、該光デバイスから前記ボールの中心に向かって視た平面視において、上下方向の移動量と左右方向の移動量とに分離して検出し、
前記制御部は、前記上下方向の移動量及び前記左右方向の移動量のうちのいずれか一方を、前記所定の仰角に基づいて補正する、トラックボール装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記左右方向の移動量に対して、前記所定の仰角に基づく増加補正を実行する、請求項1に記載のトラックボール装置。
【請求項3】
前記ボールの少なくとも前記ボールの表面には、細菌の増殖を抑制する抗菌性を有した抗菌粒子が分散されている、請求項1又は2に記載のトラックボール装置。
【請求項4】
前記抗菌粒子は、外部から光学的に視認され得るように分散されている、請求項3に記載のトラックボール装置。
【請求項5】
前記ボールと前記ケースとの間に設けられると共に、該ボールを前記収容部の内部で吊り下げた状態で保持する吊り下げリングと、
前記ボールと前記吊り下げリングとの間に設けられると共に、前記ボールの外径よりも小さい内径を有したボール露出孔を有する保持リングと、
を含み、
前記抗菌粒子は、前記吊り下げリングの少なくとも上面及び前記保持リングの少なくとも上面にも分散されている、請求項3に記載のトラックボール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置の入力操作部として用いられるトラックボール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の情報処理装置、例えば医用画像診断装置、内視鏡装置、船舶誘導装置又は航空監視システム等の入力操作部として、トラックボール装置が用いられる場合がある。このトラックボール装置は、情報入力のための回転操作がなされるボールと、このボールの回転量を検出する検出部とを有し、ボールの回転操作に応じた情報を情報処理装置の制御部等に出力するようになっている。
【0003】
トラックボール装置の一例として、特許文献1に記載された光学式トラックボール装置が知られている。このトラックボール装置は、指などで操作するための操作部材となるボールと、ボールを回転可能に支持する支持部材と、ボールに向かって光を発する発光部と、発光部から発せられた光に対し、ボールにより反射された反射光を検知する検出部とからなる。そして、一般に、トラックボール装置では、ボールの回転量を、ボールに向かって視た平面上において、互いに直交する二方向の移動量に分離して検出する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-38368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された光学式トラックボール装置においては、ボールの下方に配置された検出部によってボールからの反射光を検知して、ボールに対する回転操作量(つまり、ボールの回転量)を検出するようになっているので、ボールの下方に検出部を配置するためのスペースが必要である。その結果、トラックボール装置の全体の高さが概ねボールの直径と検出部の配置スペースとを合わせた高さになり、トラックボール装置が大型化してしまう。これに対し、例えば、検出部等がボールの直下の領域を避けた位置、つまり、ボールの中心に対して斜め下方に配置されることで、トラックボール装置の全体の高さが低くなり得る。
【0006】
しかし、単に、検出部等がボールの中心の斜め下方に配置されるだけでは、ボールの回転量についての検出精度が低下してしまい、その結果、外部へ出力する回転操作に応じた情報の精度が低下し得るという問題がある。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑み、装置の高さ方向についての小型化を図りつつ、外部に出力する回転操作に応じた情報の精度の低下を抑制することができるトラックボール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、情報入力のための回転操作がなされるボールと、前記ボールの少なくとも下半部が収容される収容部を有し、前記ボールの頂部を含む部分を外部に露出させた状態で前記ボールを回転自在に支持するケースと、前記ケースに設けられ、前記ボールの表面に光を照射すると共に、前記ボールの表面で反射した反射光を検知し、前記反射光の検知結果に基づいて前記ボールの回転量を検出する検出部と、前記回転量の検出結果が入力される制御部と、を含み、前記回転操作に応じた情報を出力する、トラックボール装置が提供される。このトラックボール装置において、前記収容部の内面のうちの、前記ボールの中心から斜め下方に延びる仮想線が交わる部分に、検出窓が開口されている。前記検出部は、前記ボールの中心の斜め下方から所定の仰角で前記ボールの表面を仰ぐ姿勢をとった状態で、前記検出窓を収容部外から塞ぐ、一つの光デバイスからなる。前記光デバイスは、前記ボールの回転量を、該光デバイスから前記ボールの中心に向かって視た平面視において、上下方向の移動量と左右方向の移動量とに分離して検出する。前記制御部は、前記上下方向の移動量及び前記左右方向の移動量のうちのいずれか一方を、前記所定の仰角に基づいて補正する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、装置の高さ方向についての小型化を図りつつ、回転操作に応じた出力情報の精度の低下を抑制することができるトラックボール装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るトラックボール装置の斜視図である。
図2】カバーが取り外されたトラックボール装置の斜視図である。
図3】カバーが取り外されたトラックボール装置の正面図である。
図4】トラックボール装置の分解斜視図である。
図5】トラックボール装置の縦断面図である。
図6】トラックボール装置の内部構造を説明するための上面図である。
図7】トラックボール装置のボールと吊り下げリングの関係を示す正面図である。
図8】トラックボール装置の検出部の構造を説明するための概念図である。
図9】検出部によるボールの回転量の検出方式を説明するための概念図である。
図10】X軸方向の回転操作によるボールの回転量(移動量)の検出について説明するための概念図である。
図11】Y軸方向の回転操作によるボールの回転量(移動量)の検出について説明するための概念図である。
図12】トラックボール装置の制御部の動作を説明するためのブロック図である。
図13】制御部の動作の変形例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態によるトラックボール装置1の斜視図であり、図2及び図3は後述するカバー8が取り外されたトラックボール装置1の図であり、図2は斜視図、図3は正面図である。図4はトラックボール装置1の分解斜視図である。トラックボール装置1は、例えば、医用画像診断装置、内視鏡装置、船舶誘導装置又は航空監視システムなどの各種の情報処理装置100(後述する図12参照)の入力操作部として用いられる装置である。
【0012】
[トラックボール装置の概要]
図1図4を参照すると、本実施形態では、トラックボール装置1は、ボール2と、ケース3と、ボール2の回転量を非接触で検出する光学式の検出部4と、制御部5(図3参照)と、吊り下げリング6と、保持リング7と、カバー8と、を含む。ケース3、吊り下げリング6、保持リング7及びカバー8は、例えば合成樹脂材又は金属などで製造されている。
【0013】
ボール2は、情報入力のための回転操作がなされる操作部材となるものであり、例えば合成樹脂材又はガラス材などで製造されている。操作者(情報入力者)は、例えば、ボール2の頂部2a(以下、ボール頂部2aという)に指や手のひら等を接触させた状態で、指や手を移動させることで、ボール2を回転させる。特に限定されるものではないが、ボール2の直径は、25.4mm(1インチ)~63.5mm(2.5インチ)の範囲の所定値に設定され、例えば、50.8mm(2インチ)である。本実施形態では、ボール2の回転量が検出部4により光学的に非接触で検出されるべく、ボール2の表面2b(以下、ボール表面2bという)には、微小粒径(例えば、概ね直径50μmから70μm)のショットブラスト材による微細な粗面化処理が施されている。これにより、ボール表面2bに、ランダムな模様としての複数の微小凹部2c(後述する図9及び図10参照)が形成されている。なお、後述する図9及び図10では、図の簡略化のため複数の微小凹部2cのうちの一部のみが示されており、且つ、微小凹部2cは図の明瞭化のため実際よりも大きく示されている。
【0014】
ケース3は、ボール2の少なくとも下半部が収容される収容部31を有し、ボール頂部2aを含む部分を収容部31の外に露出させた状態でボール2を回転自在に支持する部材である。ケース3の収容部31は、ボール2の下半部が収容される概ね半球シェル状に形成される半球シェル部31aと、半球シェル部31aの上縁から上方に延びる概ね円筒状に形成される円筒部31bとを含む。収容部31の内面は、半球シェル部31aではボール表面2bと対向すると共に上方に開放された概ね半球面(凹半球内面)として形成されている。ボール2の少なくとも下半部が、収容部31に上方から嵌まり込むようになっている。
【0015】
検出部4は、ケース3に設けられ、ボール表面2bに光を照射すると共に、ボール表面2bで反射した反射光を検知し、検知した反射光の検知結果に基づいてボール2の回転量を検出するデバイスである。検出部4は、収容部31に開口される検出窓32を通じてボール表面2bに光を照射し、ボール表面2bで反射し検出窓32を通過する反射光を検知し、反射光の検知結果に基づいてボール2の回転量を検出する。なお、外部から光学的に識別可能な模様がボール2に施され、この模様により、ボール2の回転量が検出部4により非接触で光学的に検出され得る場合には、ショットブラスト材による微細な粗面化処理がボール表面2bに施されなくてもよい。
【0016】
制御部5は、所定の信号処理や演算処理等を実行するものであり、CPUなどからなる。検出部4によるボール2の回転量の検出結果は、制御部5に入力される。そして、制御部5は、回転量の検出結果に基づいて、操作者による回転操作に応じた情報を外部(情報処理装置100の制御部)に出力するように構成されている。
【0017】
吊り下げリング6は、ボール2とケース3との間に設けられると共に、ボール2を収容部31の内部で吊り下げた状態で保持する部材である。吊り下げリング6は、円環状のリング部61と、リング部61における周方向の所定の角度位置から下方に延びた複数の吊り下げアーム62とを有する。
【0018】
保持リング7は、ボール2と吊り下げリング6との間に設けられると共に、ボール2の外径よりも小さい内径を有したボール露出孔71を有する部材である。
【0019】
カバー8は、ケース3の下側及び径方向外側からケース3を囲む部材である。カバー8は、上方に開放された概ね円筒カップ状に形成されたカバー本体部81と、リング状に形成されると共にカバー本体部81の上端部に係止される上蓋部82とからなる。カバー8の周方向の所定箇所には、トラックボール装置1を情報処理装置に取り付けるためのボルト(図示省略)を通すための逃げ部83が設けられている。
【0020】
図4に示される各構成要素を有するトラックボール装置1は、図1に示されるように組み立てられる。具体的には、まず、ボール2が保持リング7の下方からボール露出孔71に嵌め込まれる。この状態で、ボール頂部2aがボール露出孔71から保持リング7の上方に突出(露出)しており、保持リング7がボール2の上側部分に載せられる。次に、吊り下げリング6がボール2及び保持リング7に上方から組み付けられ、ボール2、保持リング7及び吊り下げリング6からなるサブ組立体が一体的に組み立てられる。その後、このサブ組立体が、ケース3の収容部31の内部に嵌め込まれる。この時、カバー8の上蓋部82が、ケース3の上端部と吊り下げリング6のリング部61との間に挟持され、サブ組立体に取り付けられる。そして、カバー本体部81が上蓋部82に係止され、ケース3がカバー8によって囲まれる。このような手順で、トラックボール装置1が組み立てられる。その後、例えば、図示省略のボルトが逃げ部83に挿通されて情報処理装置に設けられたネジ部に螺合し、このボルトの頭部がケース3の円筒部31bに形成される座部31cに押し付けられることで、トラックボール装置1が情報処理装置に取り付けられる。
【0021】
[トラックボール装置の詳細構成]
次に、ボール2、ケース3、吊り下げリング6及び保持リング7について、詳述する。図5はトラックボール装置1の縦断面図であり、図6はトラックボール装置1の内部構造を説明するための上面図である。図7はボール2と吊り下げリング6の関係を示す正面図である。なお、図6では、ボール2、吊り下げリング6及び保持リング7が取り外された状態の、トラックボール装置1の上面図が示されている。
【0022】
本実施形態では、ボール2の少なくともボール表面2bには、細菌の増殖を抑制する抗菌性を有した抗菌粒子が分散されている。抗菌粒子のそれぞれはボール表面2bで外部に露出している。抗菌粒子としては、例えば、細菌の増殖を抑制する抗菌性を有する無機物等の適宜の抗菌剤が用いられる。抗菌粒子の平均粒子径は例えば概ね10μmである。ボール2は、前述のように合成樹脂材又はガラス材からなる。ボール2が合成樹脂材からなる場合には、抗菌粒子は合成樹脂材に所定の添加率で混合され、ボール2は抗菌粒子を含んだ成形材料(合成樹脂材)によって中実の球体又は中空の球状シェルとして形成される。また、ボール2がガラス材からなる場合には、抗菌粒子はガラス材に所定の添加率で混合され、ボール2は抗菌粒子を含んだ成形材料(ガラス材)によって中実の球体として形成される。
【0023】
本実施形態では、抗菌粒子は、ボール表面2bだけでなく、操作者の指や手が接触し得る、吊り下げリング6の少なくとも上面及び保持リング7の少なくとも上面にも分散されている。
【0024】
図4及び図5を参照すると、ケース3の収容部31は上方に開放された概ねお椀状に形成されている。収容部31の底部には、円形のケース底部開口33が開口されている。ケース3は、ケース底部開口33の縁部から下方に僅かに延びる小円筒部34を有している。小円筒部34の下端は、カバー8の底部に開口されたカバー底部開口84内に位置している。
【0025】
図6を参照すると、収容部31の半球シェル部31aの半球内面における円周方向に等間隔に離隔した複数の箇所(図では5箇所)には、ボール支持体35が設けられている。ボール支持体35は、ケース3の全体の高さの約1/2程度の位置に配置されている。ボール支持体35は、ケース3内にてボール2を回転可能に支持するための部材であり、例えば直径の小さい球体として形成されている。各ボール支持体35はボール表面2bに点接触で当接している。具体的には、ボール支持体35は、ルビー、ジルコニア、ステンレスなどの適宜の材料からなる。ボール支持体35の直径は、例えば、1.0mmから3.5mm、望ましくは、1.5mmから3.0mmまでの範囲の所定値に設定されている。なお、ボール支持体35の個数は、特に限定されるものではない。例えば、ボール支持体35は3個以上であればよい。
【0026】
図7を参照すると、リング部61は、ボール2の直径よりも小さい内径を有する。吊り下げアーム62は、リング部61における対向する2箇所から所定の幅及び長さでボール2の下半部まで下方に延びている。吊り下げアーム62は、ケース3内に組み込まれたボール2をケース3から取り出すときに、ボール2を吊り下げた状態で保持するものである。吊り下げアーム62は、その幅方向についてリング部61と同心円状に湾曲しており、その下端部はボール2の球面形状に応じた円弧状に形成されている。吊り下げアーム62の2個の下端部を円周の一部とする仮想円はボール2の直径より小さい。吊り下げアーム62は弾性変形可能な部材である。
【0027】
例えば、ボール2をケース3に組み付ける際には、吊り下げリング6がボール2及び保持リング7に上方から組み付けられる。この時、吊り下げアーム62はボール2と接触して外側に広げられ、吊り下げアーム62の下端部がボール2の最大外周円を通過すると、吊り下げアーム62は弾性により元の形状に復元する。この状態で、ボール2は、2個の吊り下げアーム62により吊下げ保持される。そして、吊り下げリング6が例えば時計回りに少し回転操作され、吊り下げリング6の下部周囲に設けられた複数の係合爪63がケース3の内周に設けられた係合溝36に係止される。このとき、ボール2は、複数のボール支持体35により回転可能に支持される。そして、ボール2をケース3から取り出す際には、リング部61が例えば反時計回りに少し回転されると共に吊り下げリング6がケース3から上方に引き上げられる。これにより、ボール2は、2個の吊り上げアーム62の下端部に引っ掛けられ、吊り上げリング6と共にケース3の上方へ取り出される。
【0028】
次に、検出部4の構造及び設置箇所について詳述する。図8は、検出部4の構造等を説明するための概念図である。
【0029】
図5図6及び図8を参照すると、検出部4は、ケース3の検出窓32を収容部外から塞ぐようにケース3に取り付けられる、一つの光デバイス4Aからなる。光デバイス4Aは、例えば、複数の素子を有したCCDイメージセンサなどの二次元の像を検出可能なデバイスなどからなる。
【0030】
具体的には、検出部4(光デバイス4A)は、センサ基板41と、ボール表面2bに照射する光を発する発光部42と、ボール2から反射された反射光を検知する複数の素子を有した受光部43と、ボール表面2bで反射した反射光を受光部43に導く導光部44とを有している。
【0031】
センサ基板41は、受光部43等を支持する支持基板である。センサ基板41には、発光部42、受光部43及び導光部44が取り付けられている。
【0032】
発光部42は、光源として、ランプ、発光ダイオード(例えば、赤外線LED)、レーザ発光素子のうちのいずれかを有する。ボール2の回転検出の精度の観点では、発光部42の光源としては、赤外線LEDやレーザ発光素子が用いられるとよい。なお、発光部42は、導光部44の裏面側に配置されている。
【0033】
受光部43は、例えば、二次元の像を検出可能であり、光の受光強度に応じた信号を出力可能な複数の素子を有したイメージセンサからなる。受光部43は、複数の素子(換言すると受光面)をボール表面2bに対向させた状態で、センサ基板41に固定されている。受光部43は、ボール表面2bからの反射光を常時又は所定時間毎に検知し、ボール表面2bのうちの検出窓32に対応する検出領域V(後述する図9及び図10参照)で、二次元の像を検出(撮像)する。受光部43は、検出領域Vを上下左右に区切って得られる各画素の素子において反射光を受光する。受光部43の各素子は、受光強度に応じた信号を出力する。
【0034】
導光部44は、受光部43とボール表面2bとの間に位置しており、受光部43の各素子(換言すると受光面)を覆うようにセンサ基板41に取り付けられる。
【0035】
図5及び図6を参照すると、光デバイス4Aは、前述のように、ケース3の検出窓32を収容部外から塞ぐようにケース3に取り付けられる。ここで、検出窓32は、収容部31の内面(半球シェル部31aの凹半球内面)のうちの、ボール2の中心2d(以下、ボール中心2dという)から斜め下方に延びる仮想線Lが交わる部分に、開口されている。そして、光デバイス4Aは、ボール中心2dの斜め下方から所定の仰角θでボール表面2bを仰ぐ姿勢をとった状態で、検出窓32を収容部外から塞ぐようにケース3に取り付けられる。特に限定されるものではないが、本実施形態では、仰角θは35°に設定されている。
【0036】
3次元座標の座標軸として、X軸方向に延びる軸線X、Y軸方向に延びる軸線Y、Z軸方向に延びる軸線Zが規定される。本実施形態では、軸線X及び軸線Yは、ボール頂部2a及びボール中心2dの直上から視た平面視において、ボール中心2dを通り且つ互いに直交する二方向に延びる軸線であり、軸線Zは、ボール頂部2a及びボール中心2dを通ると共に、軸線X及び軸線Yに対して直交する。本実施形態では、軸線Xが、ボール頂部2a及びボール中心2dの直上から視た平面視において、仮想線Lと重なっている。つまり、本実施形態では、光デバイス4Aは、ケース3におけるX軸方向の部分に設けられている。
【0037】
光デバイス4Aの取り付け傾斜角度は、前述の所定の仰角θで規定される。ここで、仰角θは、例えば、光デバイス4Aよりも下方に設けられた所定の基準面G0と仮想線Lとのなす角度のうちの小さい方の角度である。仰角θは、ボール中心2dを通り且つ基準面G0に対して平行に延びる仮想平面G1と、仮想線Lとのなす角度のうちの小さい方の角度でもある。また、基準面G0は、例えば、カバー8の底面であり、吊り下げリング6(リング部61)の上面及びカバー8(上蓋部82)の上面に対して平行に延びている。トラックボール装置1の使用状態(情報処理装置に取り付けられた状態)において、基準面G0(カバー8の底面)、吊り下げリング6の上面及びカバー8の上面は、例えば、水平方向に延びている。また、仰角θは、ボール頂部2a及びボール中心2dを通る軸線Zと、光デバイス4Aのセンサ基板41のボール表面2bに臨む基板面とのなす角度のうちの小さい方の角度と一致する。
【0038】
また、特に限定されるものではないが、図3に二点鎖線で示されているように、検出部4(光デバイス4A)は、帯状のフレキシブルな基板9に搭載されている。このフレキシブルな基板9は、他の図では図示を省略されている。フレキシブルな基板9は、例えば、厚さ0.2mm程度のポリイミド樹脂からなり、細長い帯状に形成されている。また、フレキシブルな基板9には、CPUなどからなる制御部5や、電力供給及び信号取出し用のコネクタ10も搭載される。フレキシブルな基板9は、ケース3の周囲に巻き付けられるように配置される。カバー8の底部の上面には、フレキシブルな基板9を固定するための固定プレート11が取り付けられている。なお、基板9は、フレキシブルな基板に限らず、リジッドな基板でもよく、また、フレキシブルな基板部とリジッドな基板部とからなるものでもよい。この場合、リジッドな基板部とフレキシブルな基板部との間は複数の配線材により接続され得る。
【0039】
次に、検出部4(光デバイス4A)によるボール2の回転量の検出方式について詳述する。
【0040】
図9は、検出部4によるボール2の回転量の検出方式を説明するための概念図である。図9(a)には、検出窓32越しに視たボール表面2bの状態が実線で示されている。同様に、図9(b)には、ボール2が図9(a)に示された状態から回転操作されたときの、ボール表面2bの状態が実線で示されると共に、図9(a)の状態が破線で示されている。
【0041】
検出部4は、各素子で検知された受光強度の信号からなる二次元の像の信号のデータを所定時間毎に記憶するように構成されている。操作者がボール2を回転操作すると、検出部4で検出される反射光の受光強度が変化し、検出部4は反射光の変化、つまり、二次元の像の変化を所定時間毎に検知する。
【0042】
例えば、検出部4が図9(a)の二次元の像の信号のデータを記憶した後に、回転操作に伴って検出領域V内の状態が図9(b)に実線で示される状態に変化すると、検出部4により検出される反射光の受光強度が変化する。そして、検出部4は、各素子から出力された受光強度の信号からなる現在の二次元の像(図9(b)の実線参照)についての検知信号と、既に記憶されている前回の二次元の像(図9(b)の破線参照)についての検知信号とを比較し、両検知信号の差異に基づいて像の二次元的な移動を検知することで、ボール2の回転量及び回転方向を検出するように構成されている。なお、図9に示される網掛けされた部分や破線で囲まれた部分は、ボール表面2bに模様として形成された微小凹部2cの部分に相当する。
【0043】
検出部4は、検出した像の二次元的な移動(図9(b)に破線矢印で示されるベクトル)について、互いに直交する二方向(上下方向及び左右方向)の成分に分離し、各方向の移動量(D1,D2)を演算する。そして、検出部4は、演算した上下方向の移動量D1と左右方向の移動量D2を、ボール2の回転量についての検出結果として出力するように構成されている。換言すると、光デバイス4Aは、ボール2の回転量を、該光デバイス4Aからボール中心2dに向かって視た平面視において、上下方向(第1方向)の移動量D1と上下方向と直交する左右方向(第2方向)の移動量D2とに分離して検出する。
【0044】
検出部4は、各移動量(D1,D2)のデータに移動方向を示す符号(例えば、+や-)を付すことで、各移動方向におけるブラス方向の移動とマイナス方向の移動とを識別可能なデータを演算する。つまり、検出部4は、ボール2の回転方向を識別可能なデータを演算する。検出部4による二次元の像の信号のデータの記憶や各移動量(D1,D2)の演算は、例えば、受光部43(イメージセンサ)に一体に設けられた図示省略されたCPUやメモリ部で実行される。但し、これに限定されるものではなく、検出部4は、これらの記憶及び演算のための要素を受光部43とは別に有してもよい。
【0045】
図10はX軸方向の回転操作によるボール2の回転量(移動量)の検出について説明するための概念図であり、図11はY軸方向の回転操作によるボール2の回転量(移動量)の検出について説明するための概念図である。
【0046】
図10(a)及び図11(a)には、操作者による回転操作の一例がそれぞれ上方から視た平面視で示されており、図10(a)ではX軸方向への回転操作の様子が示され、図11(a)ではY軸方向への回転操作の様子が示されている。図10(b)には、X軸方向への回転操作のときに、検出部4側から視たボール表面2bの像の変化(移動)の様子が示され、図11(b)には、Y軸方向への回転操作のときに、検出部4側から視たボール表面2bの像の変化(移動)の様子が示されている。図10(c)には、X軸方向への回転操作の際に、XZ平面に向かって視たボール表面2bの像の変化(移動)の様子が示され、図11(c)には、Y軸方向への回転操作のときに、XZ平面に向かって視たボール表面2bの像の変化(移動)の様子が示されている。なお、図10(a)、図10(b)、図11(a)及び図11(b)では、ボール表面2bにランダムに形成された模様としての微小凹部2cの一部が示されている。微小凹部2c(模様)は、実際にはボール表面2bの全体に設けられている。
【0047】
操作者は、ボール表面2bにおける露出した任意の部分に触れた状態で、任意の方向に回転のための力を加え得る。しかし、多くの場合は、操作者はボール頂部2aに触れた状態で回転操作を行う。検出部4は、操作者による回転操作の操作量や操作方向を検出すべく、ボール2の回転量や回転方向を検出する。操作者は任意の方向の回転操作をなし得るが、図10及び図11ではその一例としてX軸方向の回転操作やY軸方向の回転操作の様子が示されている。
【0048】
図10を参照すると、ボール2がX軸方向に回転操作されると(図10(a)参照)、検出部4の検出領域V内のボール表面2bについての二次元の像(図10(b)の黒塗りで示された微小凹部2cの像)は上下方向に移動する(図10(b)の白抜き破線参照)。本実施形態では、検出部4はケース3におけるX軸方向の部分に設けられているため、X軸方向の回転操作による微小凹部2cの移動は検出部4では上下方向の移動として検出される(図10(b)参照)、Y軸方向の回転操作による微小凹部2cの移動は検出部4では左右方向の移動として検出される(図11(b)参照)。つまり、検出部4は、図10(b)に示されるように、ボール2のX軸方向についての回転量(換言すると軸線Yを中心とした回転の回転量)として、上下方向の移動量D1を検出し、図11(b)に示されるように、ボール2のY軸方向についての回転量(換言すると軸線Xを中心とした回転の回転量)として左右方向の移動量D2を検出する。実際には、操作者によるボール2への回転操作の方向は、任意の方向でなされるため、操作者が、上方から視た平面視で、軸線X及び軸線Yと交差する任意の方向の回転操作がボール2になされた場合には、図9(b)に示すように、検出部4は、ボール2の回転移動のベクトルについて上下方向の成分と左右方向の成分を抽出し、ボール2の回転量として、上下方向の移動量D1と左右方向の移動量D2を検出する。そして、検出部4は、各移動方向におけるブラス方向の移動とマイナス方向の移動とを識別可能、つまり、ボール2の回転方向を識別可能なデータを演算する。また、検出部4は、検出結果のデータとして、符号付きの各移動量(D1,D2)のデータについての信号を制御部5に出力するように構成されている。
【0049】
ここで、例えば、図10及び図11に黒塗りで示されるように、微小凹部2cがボール表面2bにおける仮想線Lが交わる点に位置しているものとする。この場合に、例えば、ボール2がX軸方向に1回転分だけ回転操作されると、微小凹部2cは、XZ平面に向かって視た平面視(図10(c)参照)ではボール2の輪郭に沿った移動軌跡T1を辿り、軸線Yを中心として式(1)を満たすボール周長P1分だけ移動する。この移動軌跡T1は、YZ平面に向かって視た平面視(図10(b)参照)では、軸線Zと重なっている。そして、移動軌跡T1は、検出部4から視ると上下方向の移動として捉えられる(図10(b)参照)。
P1=2×π×r0 ・・・式(1)
但し、r0はボール2の半径である。
【0050】
そして、ボール2がY軸方向に1回転分だけ回転操作されると、微小凹部2cは、YZ平面に向かって視た平面視(図11(b)参照)ではボール2の輪郭より小さい円形の移動軌跡T2を辿り、軸線Xを中心として、式(2)及び式(3)を満たす周長P2分だけ移動する、この移動軌跡T2は、XZ平面に向かって視た平面視(図11(c)参照)では、軸線Zと離隔し且つ軸線Zに対して平行に延びている。そして、移動軌跡T2は、検出部4から視ると左右方向の移動として捉えられる(図11(b)参照)。
P2=2×π×r1 ・・・式(2)
r1=r0×sinθ ・・・式(3)
但し、θは、光デバイス4Aの取り付け傾斜角度である仰角θである。
【0051】
したがって、移動軌跡T2の周長P2は、移動軌跡T1のボール周長P1よりも短い(P2<P1)。このため、例えば、ボール2がY軸方向に1回転分だけ回転操作された場合に、検出部4によって検出される移動量D2は、ボール2がX軸方向に1回転分だけ回転操作された場合に、検出部4によって検出される移動量D1よりも小さくなる。つまり、Y軸方向への回転操作によるボール2の回転量がX軸方向への回転操作によるボール2の回転量と同じであっても、検出部4により検出されるY軸方向の回転操作に伴う回転量(左右方向の移動量D2)は、検出部4により検出されるX軸方向の回転操作に伴う回転量(上下方向の移動量D1)よりも小さくなってしまう。この問題は、ボール2に任意の方向への回転操作がなされた場合において、上下方向の移動量D1の検出精度と左右方向の移動量D2の検出精度の差として、顕在化する。このため、ボールの回転量についての検出精度が、低下してしまう。
【0052】
上記問題に対し、トラックボール装置1は制御部5により以下の補正を実行するように構成されている。図12は制御部5の動作を説明するためのブロック図である。
【0053】
制御部5は、上下方向の移動量D1及び左右方向の移動量D2のうちのいずれか一方を、光デバイス4Aの取り付け傾斜角度である所定の仰角θに基づいて補正する補正演算部51を有する。つまり、上下方向の移動量D1のデータと左右方向の移動量D2のデータがそれぞれ検出部4から制御部5に入力され、制御部5の補正演算部51は入力されたいずれか一方の移動量(D1又はD2)のデータに対して仰角θに基づく所定の補正を実行する。そして、制御部5は、補正後の一方の移動量(D1’又はD2’)のデータ、及び、未補正の他方の移動量(D2又はD1)のデータを、操作者による回転操作に応じた情報として、情報処理装置100の制御部に出力する。
【0054】
そして、情報処理装置100の制御部に出力された各移動量(D1’及びD2、又は、D1及びD2’)のデータ(回転操作に応じた情報)は、例えば、情報処理装置100の表示画面に表示されるカーソルやポインタの移動操作等の各種の情報処理に用いられる。
【0055】
図12を参照すると、本実施形態では、制御部5(補正演算部51)は、左右方向の移動量D2に対して、仰角θに基づく増加補正を実行する。つまり、制御部5は、実際の回転操作量よりも小さい量として検出される左右方向の移動量D2に対して、増加補正を実行する。具体的には、制御部5は、例えば、ボール周長P1と周長P2との比率により定まる補正係数Hを用いて補正を実行する。増加補正のための補正係数Hは、式(4)を満たす。
H=P1/P2=1/sinθ ・・・式(4)
【0056】
例えば、仰角θが35°の場合、増加補正の場合の補正係数Hは、1.74である。そして、制御部5は、検出部4からの移動量D2に補正係数Hを乗算してこれらの積(D2×H=D2’)を算出することで、移動量D2に対して、増加補正を実行する。その後、制御部5は、未補正の移動量D1のデータと、増加補正後の移動量D2’のデータを、情報処理装置100の制御部に、操作者による回転操作に応じた情報として出力する。
【0057】
本実施形態によるトラックボール装置1によれば、検出窓32は、収容部31の内面のうちの、ボール中心2dから斜め下方に延びる仮想線Lが交わる部分に開口されている。つまり、検出窓32はボール中心2dの直下を除く領域に設けられている。そして、検出部4としての一つ光デバイス4Aはボール中心2dの斜め下方から所定の仰角θでボール表面2bを仰ぐ姿勢をとった状態で、検出窓32を収容部外から塞いでいる。したがって、光デバイス4Aがボール2の真下の領域を避けた位置、つまり、ボール中心2dに対して斜め下方に配置されることになり、装置全体の高さがボール2の直径に近似した高さまで低く抑えられ、装置の小型化が図られる。
【0058】
そして、ボール2の回転量について光デバイス4Aによって分離して検出された、移動量D1及び移動量D2のうちのいずれか一方は、制御部5によって、仰角θに基づいて補正される。したがって、制御部5は、補正後の一方の移動量(D1’又はD2’)のデータ、及び、未補正の他方の移動量(D2又はD1)のデータを、操作者による回転操作に応じた情報として、情報処理装置100の制御部に出力することができる。これにより、検出部4による一方の移動量D1の検出精度と他方の移動量D2の検出精度との差が大きくても、トラックボール装置1から外部に出力する回転操作に応じた情報の精度の低下が抑制される。このように、トラックボール装置1は、装置の高さ方向についての小型化を図りつつ、外部に出力する回転操作に応じた情報の精度の低下を抑制することができる。
【0059】
本実施形態では、制御部5は、左右方向の移動量D2に対して、仰角θに基づく増加補正を実行する。これにより、制御部5は、実際の回転操作量よりも小さい量として検出される左右方向の移動量D2に対して、増加補正を実行することができる。したがって、制御部5は、実際の回転操作量に近似又は一致する補正後の左右方向の移動量D2’のデータを生成し、この移動量D2’のデータを実際の回転操作量に近似又は一致する移動量D1と共に情報処理装置100の制御部等に出力することができる。その結果、例えば、情報処理装置100の表示画面のカーソルやポインタは、違和感なく操作者の回転操作の操作量及び操作方向に応じた移動量及び移動方向に移動することになる。
【0060】
本実施形態では、抗菌粒子がボール2の少なくともボール表面2bに分散されているため、操作者により触れられるボール表面2bにおける細菌の増殖が抑制される。また、本実施形態では、抗菌粒子が吊り下げリング6の上面及び保持リング7の上面にも分散されているため、操作者により触れられ得る部分における細菌の増殖が、より確実に抑制される。
【0061】
なお、本実施形態では、制御部5(補正演算部51)は左右方向の移動量D2に対して補正を実行しているが、これに限らず、図13に示されるように、上下方向の移動量D1に対して補正を実行してもよい。この場合、制御部5は、上下方向の移動量D1に対して、仰角θに基づく減少補正を実行する。つまり、制御部5は、実際の回転操作量に近似又は一致する量として検出される上下方向の移動量D1に対して、減少補正を実行し、左右方向の移動量D2に対しては補正を実行しない。具体的には、制御部5は、例えば、ボール周長P1と周長P2との比率により定まる補正係数H’を用いて補正を実行する。減少補正のための補正係数H’は、式(5)を満たす。
H’=P2/P1=sinθ ・・・式(5)
【0062】
そして、制御部5は、検出部4からの移動量D1に補正係数H’を乗算してこれらの積(D1×H=D1’)を算出することで、移動量D1に対して、減少補正を実行する。その後、制御部5は、未補正の移動量D2のデータと、増加補正後の移動量D1’のデータを、情報処理装置100の制御部に、操作者による回転操作に応じた情報として出力する。この場合、上下方向及び左右方向の両方向について実際の回転操作量よりも小さい移動量のデータが出力されることになり得るが、移動量D1’及び移動量D2により定まる回転方向の情報は、実際の回転操作の操作方向に近似又は一致する情報になる。
【0063】
本実施形態では、光デバイス4Aは上方から視た平面視においてケース3におけるX軸方向の部分に設けられているが、これに限らず、上方から視た平面視においてケース3におけるY軸方向の部分に設けられてもよい。この場合、操作者によるY軸方向に回転操作によるボール2の回転量が検出部4では上下方向の移動量D1として検出され、操作者によるX軸方向に回転操作によるボール2の回転量が検出部4では左右方向の移動量D2として検出される。また、この場合、軸線Yが、ボール頂部2a及びボール中心2dの直上から視た平面視において、仮想線Lと重なることになる。これら以外の構成については、上述した構成と同じ構成が適用される。
【0064】
また、抗菌粒子はボール2の成形材料に混合されるものとしたが、これに限らず、抗菌粒子は成形後のボール表面2bにコーティング剤と一緒に塗布又は散布することによって、ボール表面2bに付着させてもよい。また、抗菌粒子は、ボール2の外部から光学的に視認され得るように分散されてもよい。例えば、透明なコーティング剤が塗布(散布)される場合には、抗菌粒子は透明なコーティング剤に混合され、抗菌粒子を含んだ透明なコーティング剤がボール表面2bに塗布又は散布される。これにより、抗菌粒子自体が検出部4によるボール2の回転量を検出するための模様になり得る。この場合、ショットブラスト材による微細な粗面化処理がボール表面2bに施されなくてもよい。
【0065】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0066】
1…トラックボール装置、2…ボール、2a…ボール頂部(ボールの頂部)、2b…ボール表面(ボールの表面)、2d…ボール中心(ボールの中心)、3…ケース、31…収容部、32…検出窓、4…検出部、4A…光デバイス、5…制御部、6…吊り下げリング、7…保持リング、L…仮想線、θ…仰角、D1…上下方向の移動量、D2…左右方向の移動量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13