(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183106
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/387 20060101AFI20231220BHJP
B41J 21/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H04N1/387 110
B41J21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096548
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 秀康
【テーマコード(参考)】
2C187
5C076
【Fターム(参考)】
2C187AC08
2C187AE01
2C187AE07
2C187CD12
2C187CD16
2C187CD18
2C187DB02
2C187DB22
2C187DB27
5C076AA01
5C076AA13
5C076AA21
5C076AA22
5C076AA23
5C076BA06
5C076CA02
5C076CA11
(57)【要約】
【課題】 原稿データの修正に伴う、検査領域の設定作業をやり直すユーザ負担を軽減する。
【解決手段】 印刷物の原稿データが示すページ画像に対して設定済みの検査領域を当該原稿データに紐づけて保存する。そして、保存された原稿データに修正を加えた修正原稿データが示すページ画像に応じて、保存された設定済み検査領域を変形する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置から出力される印刷物の欠陥を検査するための画像処理装置であって、
前記印刷物の原稿データを取得する取得手段と、
取得された前記原稿データが示すページ画像に対し、前記検査の対象となる検査領域を設定する設定手段と、
設定済み検査領域を前記原稿データに紐づけて保存する保存手段と、
を備え、
保存された前記原稿データに修正を加えた修正原稿データが前記取得手段によって取得された場合、前記設定手段は、保存された前記設定済み検査領域を、前記修正原稿データが示すページ画像に応じて変形する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記設定手段は、ユーザインタフェース画面を介してユーザが指定した前記ページ画像上の領域を前記検査領域として設定し、
前記修正原稿データに応じて変形された検査領域は、前記ユーザインタフェース画面に表示される、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記ユーザインタフェース画面を介したユーザによる前記保存の指示に従って、当該指示の時点で設定済みの検査領域を、前記原稿データに紐づけて保存することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記設定手段は、
保存された前記原稿データが示すページ画像に含まれるオブジェクトと前記修正原稿データが示すページ画像に含まれるオブジェクトとを比較して、対応関係にある同一オブジェクトを特定し、
特定された同一オブジェクト毎に、前記修正原稿データが示すページ画像における描画領域を算出し、
算出した描画領域に基づいて、保存された前記設定済み検査領域を変形する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ページ画像に含まれるオブジェクトは、オブジェクト属性がテキストであるテキストオブジェクトであり、
保存された前記設定済み検査領域には、前記テキストオブジェクトについての検査領域が含まれ、かつ、前記修正原稿データにおいて前記テキストオブジェクトが表す文字列のフォントに関する修正が行われていた場合、
前記設定手段は、
前記フォントに関する修正によって前記テキストオブジェクトの描画領域が拡大した場合は、当該拡大された描画領域に合わせて、保存された前記設定済み検査領域を変形し、
前記フォントに関する修正によって前記テキストオブジェクトの描画領域が縮小した場合は、当該縮小された描画領域に合わせて、保存された前記設定済み検査領域を変形する、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記設定手段は、保存された前記テキストオブジェクトについての前記設定済み検査領域を、前記テキストオブジェクトが表す文字列を構成する各文字のグリフ幅と描画位置原点情報に基づいて変形する、ことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ページ画像に、さらに、テキスト以外のオブジェクト属性を持つ他のオブジェクトが含まれる場合において、
保存された前記設定済み検査領域に、さらに、前記他のオブジェクトについての検査領域が含まれる場合、
前記設定手段は、
前記フォントに関する修正によって前記テキストオブジェクトの描画領域が変化した場合、当該変化した後の描画領域と前記他のオブジェクトの描画領域との位置関係が維持されるように、保存された前記他のオブジェクトについての前記設定済み検査領域を幾何変換によって変形する、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記他のオブジェクトは、オブジェクト属性がイメージであるイメージオブジェクトまたはオブジェクト属性がグラフィクスであるグラフィクスオブジェクトであることを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記設定手段は、保存された前記設定済み検査領域が、プレプリント領域についての検査領域である場合は、前記変形を行わないことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記原稿データに複数ページのページ画像が含まれる場合、
前記保存手段は、前記設定済み検査領域を、対応するページ画像のページ番号に紐づけて保存し、
保存された前記原稿データに修正を加えた修正原稿データが前記取得手段によって取得された場合、前記設定手段は、ページ番号と紐づけて保存された前記設定済み検査領域を、前記修正原稿データにおける当該ページ番号のページ画像に応じて変形する、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
印刷装置から出力される印刷物の欠陥を検査するための画像処理方法であって、
前記印刷物の原稿データを取得する取得ステップと、
取得された前記原稿データが示すページ画像に対し、前記検査の対象となる検査領域を設定する設定ステップと、
設定済み検査領域を前記原稿データに紐づけて保存する保存ステップと、
保存された前記原稿データに修正を加えた修正原稿データを取得する取得ステップと、
保存された前記設定済み検査領域を、前記修正原稿データが示すページ画像に応じて変形する変形ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、請求項11に記載の画像処理方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷物の検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置から出力される印刷物において、インクやトナー等の色材が意図しない箇所に付着する等の汚れが発生する場合がある。あるいは、画像を形成すべき箇所に十分な色材が付着せず、本来よりも色が薄くなってしまう色抜けが発生する場合がある。こうした汚れや色抜けといった印刷欠陥は、印刷物の品質を低下させるものである。そのため、印刷欠陥の有無を検査することによって、印刷物の品質を保証することが求められる。印刷欠陥の有無を目視で検査する目視検査は、多くの時間とコストを必要とするため、目視に頼らずに、自動で検査を行う検査システムが提案されている。このような検査システムにおいては、検査基準となるリファレンス画像を、印刷処理に使用する原稿データから事前に生成して登録し、当該リファレンス画像に対しては、印刷欠陥の検出を行う領域(検査領域)が予め設定される。そして、印刷装置から出力された印刷物をスキャンして得た検査対象の画像(検査画像)と登録しておいたリファレンス画像とを、予め設定しておいた検査領域を対象として比較し、2つの画像の差分に基づいて印刷欠陥の有無が検査される。この場合において、リファレンス画像の生成は、原稿データに含まれるPDL(Page Description Language)をRIP(Raster Image Processor)で解釈してページ画像に変換することで実現される。そして、このRIPによる変換処理の過程において、ページ画像内でのイメージやグラフィクスの位置ずれやテキストの文字化け等が生じ得るところ、このようなRIP不具合を検出する手法が提案されている。例えば特許文献1には、バリアブル印刷において、レイアウトデータが示す指定領域とバリアブルデータが示す印刷領域とが不一致のとき、ユーザに通知し、印刷領域が指定領域内に収まるように編集させる手法が開示されている。この他にも、1つの原稿データに対し複数のRIPで変換処理を施し、得られた複数の画像(RIP画像)間の差分を比較する手法や、RIP画像に対するOCR結果(認識文字列)と原稿データに付随するテキストデータとを照合するといった手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の手法は、バリアブル印刷において文字等がはみ出たり欠けたりして印刷されてしまう不具合を、領域間の比較によって検出し未然に防ぐものであり、領域間の整合が取れている場合には検出できない。また、OCR結果を利用する手法は、背景画像の色と背景画像に重ねて描画された文字の色とが近い場合、文字と背景とを適切に分離できずにOCR精度が低下して文字化け等を検出できなくなる。
【0005】
そして、検査領域の設定作業の途中で、上述のようなRIP不具合をユーザが見つけた場合は、原稿データを修正することになる。この場合にユーザは、修正後の原稿データに基づき検査領域の設定を始めからやり直す必要があり、その作業負担が大きかった。
本開示は係る点に鑑みてなされたものであり、原稿データの修正に伴う、検査領域の設定作業をやり直すユーザ負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る画像処理装置は、印刷装置から出力される印刷物の欠陥を検査するための画像処理装置であって、前記印刷物の原稿データを取得する取得手段と、取得された前記原稿データが示すページ画像に対し、前記検査の対象となる検査領域を設定する設定手段と、設定済み検査領域を前記原稿データに紐づけて保存する保存手段と、を備え、保存された前記原稿データに修正を加えた修正原稿データが前記取得手段によって取得された場合、前記設定手段は、保存された前記設定済み検査領域を、前記修正原稿データが示すページ画像に応じて変形する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、原稿データの修正に伴う、検査領域の設定作業をやり直すユーザ負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】検査装置の画像処理部における各種処理を実現するためのソフトウェア構成を示すブロック図。
【
図3】画像処理部によって実行される検査処理の手順を示すフローチャート。
【
図4】検査領域設定処理の詳細を示すフローチャート。
【
図5】(a)はページ画像の一例を示す図、(b)はPDFファイルのコンテンツストリームの一例を示す図。
【
図6】(a)及び(b)は、検査領域設定画面の一例を示す図。
【
図7】(a)はページ画像の一例を示す図、(b)はPDFファイルのコンテンツストリームの一例を示す図。
【
図8】(a)及び(b)は、オブジェクト毎の描画領域を示す図。
【
図9】(a)及び(b)は、検査領域設定画面の一例を示す図。
【
図10】(a)はページ画像の一例を示す図、(b)はPDFファイルのコンテンツストリームの一例を示す図。
【
図11】(a)及び(b)は、オブジェクト毎の描画領域を示す図。
【
図12】マルチページの原稿データについての検査領域の設定を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。
【0010】
[実施形態1]
本実施形態では、修正前の原稿データに対して設定済みの検査領域を修正後の原稿データに基づき自動調整する態様について説明する。
【0011】
<システム全体の構成>
図1は、本実施形態に係る検査システムの構成の一例を示す図である。
図1に示す検査システム100は、サーバ101、印刷装置102及び検査装置105を備える。検査システム100では、サーバ101が生成した印刷ジョブに基づいて印刷装置102が印刷処理を行って印刷物を出力し、検査装置105が当該印刷物の欠陥の有無を検査する。検査可能な印刷欠陥の種類としては、例えば、点形状(ポチ)の欠陥や線形状(スジ)の欠陥、面形状の欠陥、画像ムラ等が含まれる。
【0012】
サーバ101は、印刷ジョブを生成し、生成した印刷ジョブを印刷装置102へ送信する。サーバ101には、不図示のクライアント端末がネットワークを介して通信可能に接続されている。サーバ101は、クライアント端末から印刷ジョブの生成依頼等を受けて印刷ジョブを生成し印刷装置102に投入する。
【0013】
印刷装置102は、サーバ101から受信した印刷ジョブに基づいて用紙上に画像を形成する印刷処理を行う。なお、印刷方式として本実施形態では電子写真方式を用いる場合を想定しているが、オフセット印刷方式やインクジェット方式等の他の印刷方式を用いる構成であってもよい。印刷装置102は、給紙部103を備える。給紙部103には、ユーザによって、目的に応じた用紙が予めセットされている。なお、本明細書において「用紙」は、プラスチックシートなども含む概念であり、狭義の紙に限定されるものではない。印刷装置102は、サーバ101から受信した印刷ジョブに基づいて、給紙部103にセットされた用紙を搬送路104に沿って搬送し、当該用紙の片面又は両面に画像を形成し、画像が形成された用紙(すなわち、印刷物)を検査装置105へ出力する。
【0014】
検査装置105は、CPU106、RAM107、ROM108、主記憶部109、画像読取部110、印刷装置I/F111、汎用I/F112、UIパネル113及び画像処理部118を備え、これらはメインバス114を介して互いに接続されている。また、検査装置105は、印刷装置102の搬送路104と接続された搬送路115、出力トレイ116、及び出力トレイ117を備える。
【0015】
CPU106は、検査装置105全体を制御するプロセッサである。RAM107は、CPU106の主メモリやワークエリア等として機能する。ROM108は、CPU106によって実行される複数のプログラムを格納する。主記憶部109は、CPU106によって実行されるアプリケーションや、画像処理に用いられるデータ等を記憶する。画像読取部110は、印刷装置102から出力された検査対象となる印刷物の片面又は両面を光学的に読み取るスキャン処理を行って当該印刷物のスキャン画像を生成する。例えば、搬送路115の近傍に設けられた1以上の読取センサ(不図示)を用いて、搬送される印刷物の片面又は両面を読み取る。当該読取センサは、片面側のみに設けられてもよいし、両面を同時に読み取るために、搬送される印刷物の表面側と裏面側の両側に設けられてもよい。読取センサが印刷物の片面側のみに設けられる構成では、一方の面を読み取った印刷物を搬送路115における不図示の両面搬送路に搬送して当該印刷物の表裏を反転させて上記読取センサが他方の面を読み取る。
【0016】
画像処理部118は、画像読取部110で生成した検査対象となる印刷物をスキャンして得られた画像(以下、「検査画像」と呼ぶ。)と、検査において基準となる予め登録された画像(以下、「リファレンス画像」と呼ぶ。)とを比較して印刷欠陥の有無を検査する。また、検査に先立って、検査領域の設定なども行う。なお、リファレンス画像は「正解画像」とも呼ばれる。画像処理部118の詳細については後述する。
【0017】
印刷装置I/F111は、印刷装置102から出力される印刷物を処理するタイミングを調整(同期処理)したり、互いの稼働状況を通知し合ったりする。汎用I/F112は、USBやIEEE1394等のシリアルバスインタフェースである。例えば、汎用I/F112にUSBメモリを接続することで、主記憶部109に格納されたログ等のデータをUSBメモリに書き込んで持ち出したり、USBメモリに格納されたデータを検査装置105に取り込んだりすることができる。UIパネル113は、例えば、タッチパネル機能を有する液晶ディスプレイ(表示部)である。UIパネル113は、検査装置105のユーザインタフェースとして機能し、現在の状況や設定を表示してユーザに伝える。また、ユーザは、液晶ディスプレイ上に表示されたボタンを直接操作することにより様々な指示を入力することができる。
【0018】
全体として検査装置105は、印刷装置102から送られてきた印刷物を搬送路115で搬送しつつ、画像読取部110で印刷物を読み取って得た検査画像と予め登録したリファレンス画像とに基づき、以下に説明する検査処理を行う。検査処理の結果、印刷物が検査合格であれば合格の出力トレイ116に排出され、そうでなければ不合格の出力トレイ117に排出される。こうして品質の確認されたものだけを納品用の成果物として出力トレイ116に集めることができる。
【0019】
<ソフトウェア構成>
図2は、検査装置105の画像処理部118における各種処理を実現するためのソフトウェア構成(機能構成)を示すブロック図である。
図2に示すソフトウェア構成は、その機能を実現するためのプログラムをCPU106が実行することで実現される。
画像処理部118は、画像の取得、検査項目の設定、検査領域の設定、画像の位置合わせ、検査パラメータの設定、検査の実行、検査結果の出力をそれぞれ担当するソフトウェアモジュール201~207を備える。これら各モジュールにおける機能は、CPU106がROM108に格納されるプログラムをRAM107に読み出して実行することによって実現される。
【0020】
画像取得モジュール201は、検査対象となる印刷物のスキャン画像(検査画像)や、検査基準となるリファレンス画像を取得する。ここで、リファレンス画像は、印刷ジョブに含まれるPDL(Page Description Language)をRIP(Raster Image Processor)で解釈して得られたラスタ形式の画像データである。
【0021】
検査設定モジュール202は、UIパネル113に表示された検査設定用のユーザインタフェース画面を介したユーザ選択に基づいて、検査に関する条件を設定する。具体的には、どの種類の印刷欠陥を検出するのか(検査項目)、検出精度をどのくらいにするのか(検査レベル)、検査画像のどの範囲を対象にするのか(検査領域)といった条件を設定可能になっている。また、本実施形態の検査設定モジュール202は、検査領域が設定された後に原稿データの修正が行われた場合に、設定済みの検査領域を自動調整する処理も行う。この設定済み検査領域の自動調整については後述する。
【0022】
パラメータ設定モジュール203は、検査設定モジュール202にて設定された検査項目に応じたパラメータを設定する。この場合のパラメータは、ユーザが選択した種類の印刷欠陥を強調するためのフィルタ、印刷欠陥を判別するための閾値などである。
【0023】
位置合わせモジュール204は、検査画像とリファレンス画像との位置合わせ処理を実行する。検査モジュール205は、検査設定モジュール202にて設定された検査項目についての欠陥検出処理を実行する。検査結果出力モジュール206は、検査モジュール205が実行した欠陥検出処理の結果をUIパネル113に表示させる。
【0024】
<検査処理の流れ>
図3は、画像処理部118によって実行される検査処理の手順を示すフローチャートである。
図3のフローチャートに示す一連の処理は、CPU106がROM108に格納されたプログラムをRAM107に読み出して実行することによって実現される。なお、以下の説明において記号「S」はステップを意味する。
【0025】
S301では、準備処理が実行される。具体的には、ユーザ選択に基づき、検査項目の設定、検査項目に対応するパラメータの設定、検査領域の設定といった処理が、担当のソフトウェアモジュール202及び203によって行われる。本実施形態の特徴である検査領域の設定処理に関しては後述する。
【0026】
S302では、画像取得モジュール201が、印刷装置102から出力された印刷物を画像読取部110で読み取って生成した検査画像及びS301の準備処理において登録されたリファレンス画像を取得する。なお、検査画像の取得は、搬送されてくる印刷物に対して画像読取部110における読み取り動作を同期させて順次取得してもよいし、予め読み取って主記憶部109に保持しておいた検査画像を取得してもよい。リファレンス画像は、後述のとおり、サーバ101から送信された印刷ジョブの原稿データに含まれるPDLを解釈して得られたラスタ形式の画像データであり、RAM107又は主記憶部109から取得する。
【0027】
S303では、位置合わせモジュール204が、S302にて取得された検査画像とリファレンス画像との位置合わせ処理を行う。具体的には、検査画像に対し、アフィン変換等の線形変換による位置合わせや、自由形状変形(FFD:Free-Form Deformations)等の非線形変換による位置合わせが行われる。
【0028】
S304では、検査モジュール205が、S301の準備処理にて設定された検査項目についての欠陥検出処理を実行する。欠陥検出処理の大まかな流れは以下のとおりです。まず、位置合わせされた検査画像とリファレンス画像との違いを示す差分画像が生成される。差分画像は、例えば、位置合わせされた検査画像と参照画像との間で対応する画素同士を比較し、画素値(例えば、RGB毎の濃度値)の差分値を画素毎に取得することで得ることができる。次に、差分画像に対し、検出対象の印刷欠陥に対応する特定の形状を強調するためのフィルタ処理が実行される。そして、フィルタ処理が施された差分画像に対し二値化処理を行って差分二値画像を生成し、その各画素値に基づき検出対象の欠陥の有無が判定される。こうした処理によって欠陥が検出された場合は検査項目(印刷欠陥の種類)と検出した欠陥の位置(画像内の位置座標)とを対応付けてRAM107や主記憶部109に記憶される。
【0029】
S305では、検査結果出力モジュール206が、S301の準備処理にて設定された検査項目についての検査結果をUIパネル113に表示する。以上が、画像処理部118によって実行される検査処理全体の内容である。
【0030】
<検査領域設定処理>
続いて、前述の準備処理(S301)の一部として実行される、本実施形態に係る検査領域設定処理について、
図4のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の説明において記号「S」はステップを意味する。
【0031】
S401では、検査予定の印刷物の原稿データが取得される。ここでは、原稿データとして、
図5(a)に示す、2つのテキストオブジェクト501及び502、1つのイメージオブジェクト503を含んだページ画像のPDFファイルが、印刷装置102から取得されるものとする。
図5(b)は、当該PDFファイルのコンテンツストリームを示しており、テキストオブジェクト501及び502については、描画対象の文字列を構成する各文字の文字コード、フォントの種類、フォントサイズなどが記述されている。また、イメージオブジェクト503については、描画対象のイメージを表す例えばJPEGフォーマットの画像データが記述されている。
【0032】
S402では、S401にて取得した原稿データからRIP処理によってリファレンス画像が生成され、UIパネル113の検査領域設定用のユーザインタフェース画面(以下、「検査領域設定用画面」と表記。)内に表示される。
図6(a)は、検査領域設定画面の一例を示す図である。検査領域設定画面600には、プレビューエリア601、一時保存ボタン602、キャンセルボタン603及びOKボタン604が存在する。原稿データから生成されたリファレンス画像は、プレビューエリア601に表示される。キャンセルボタン603は検査領域の設定作業を中止するためのボタンであり、OKボタン604は検査領域の設定内容を確定させるためのボタンである。一時保存ボタン602については後述する。
【0033】
S403では、検査領域にするページ画像上の領域を指定するユーザ操作の受け付けが行われる。上述の
図6(a)の検査領域設定画面600は、プレビューエリア601に表示された
図5(a)のページ画像内のテキストオブジェクト501に対し、破線の範囲605を検査領域として、ユーザがマウスなどを操作して指定した状態を表している。
【0034】
S404では、ユーザによるボタン操作が受け付けられ、次のS405では受け付けたボタン操作の内容によって次の処理が振り分けられる。ボタン操作の対象が一時保存ボタン602であった場合はS406に進み、それまでにユーザが指定した設定済みの検査領域の情報(検査領域情報)が、ユーザが文字化けを発見した(修正前の)原稿データと紐づけてRAM107等に保存される。以下の表1は、検査領域情報の一例であり、指定された領域の「領域ID」と当該領域の「位置」を特定する位置座標(左上座標と右下座標)の情報を持つ。
【0035】
【0036】
ボタン操作の対象がOKボタン603であった場合はS412に進み、プレビューエリア601でユーザが設定した検査領域を確定し保存する処理を行った後、本フローを抜ける。ボタン操作の対象がキャンセルボタン603であった場合は本フローを抜ける。
【0037】
ここで、例えば前述の
図6(a)の状態まで設定作業を行ったユーザが、続けてテキストオブジェクト502に対しても同様に検査領域を指定しようとした際に、文字化けのRIP不具合(“づで”が“XY”に誤変換)を発見したとする。このようなRIP不具合は、指定されたフォント種が、実装されているRIPでは対応できないフォント種であった場合などに起こる。このような文字化けに気付いたユーザは、検査領域設定画面600内に設けられた一時保存ボタン602を選択する。これにより、それまでの作業内容に対応した検査領域情報、すなわち、上記表1に示すような設定済みの検査領域を表す情報がRAM107等に保持される。そして、一時保存ボタン602を選択したユーザは、原稿データ(ここではPDFファイル)に対し、文字化けが起きないようにするための修正を行う。
図7(b)は、
図5(b)のPDFファイルに対してユーザが修正を行った後のPDFファイルを示しており、この例では、テキストオブジェクト501及び502のフォント種が“F1”から“F2”に変更されている。原稿データに対するこのような修正がユーザによって行われることになる。
【0038】
続くS407では、修正が施された原稿データ(以下、「修正原稿データ」と呼ぶ。)が取得される。例えば前述の
図7(b)に示す修正後のPDFファイルを不図示のクライアント端末からユーザがアップロードすることによって取得される。
【0039】
S408では、S407にて取得された修正原稿データからRIP処理によってリファレンス画像が生成される。
図7(a)は、
図7(b)に示す修正後のPDFファイルから生成される、リファレンス画像としてのページ画像を示している。
図7(a)のページ画像内のテキストオブジェクト502’では文字化けが起きていない反面、フォント種の変更によってテキストオブジェクト501’及び502’の文字が一回り大きくなっている。
【0040】
S409では、S406にて一時保存した原稿データとS407にて取得された修正原稿データとに基づき、修正の前後で対応関係にある同一オブジェクトが特定される。この場合において、テキストオブジェクトに関しては、フォント種やフォントサイズの不一致は「同一オブジェクト」の範疇に含まれる。しかし、文字コードが違ったり、文字数が違ったりした場合は、別のテキストオブジェクトと判定され、修正の前後で対応関係にある「同一オブジェクト」としては扱われない。
【0041】
S410では、特定された同一オブジェクト毎に、修正原稿データが表すページ画像における描画領域が算出される。テキストオブジェクトの場合は、各文字のグリフ(字形)幅、各文字の描画位置原点情報から描画領域が算出される。
図8(a)は、
図5(b)に示す修正前のPDFファイルで指定された3つのオブジェクト501~503の描画領域を一点鎖線801~803で示している。
図8(b)は、
図7(b)に示す修正後のPDFファイルで指定された3つのオブジェクト501’、502’及び503の描画領域を一点鎖線811~813で示している。フォント種の変更により、修正後のテキストオブジェクト501’及び502’の描画領域811及び812は、修正前のテキストオブジェクト501及び502の描画領域801及び802よりも横方向に延びており大きくなっている。一方、イメージオブジェクト503については変化がなく、描画領域813は描画領域803と同じである。
【0042】
S411では、S410にて算出したオブジェクト毎の描画領域に基づいて、S406にて一時保存した検査領域が変形される。すなわちS410で算出された描画領域に応じて、一時保存中の設定済み検査領域を拡大/縮小等する変形処理が行われる。そして、変形された検査領域が前述の検査領域設定画面においてユーザに提示される。
図6(b)は、変形された検査領域をプレビューエリア601に表示した検査領域設定画面600’を示す図である。
図6(b)の検査領域設定画面600’のプレビューエリア601には、修正後の原稿データから生成されたリファレンス画像が表示されている。そして、フォント種が変更されたテキストオブジェクト501’に対し、その描画領域811(
図8(b)参照)を包含するように拡大された検査領域が破線の範囲605’で示されている。これによりユーザは、修正後の原稿データに応じてこのように自動調整された検査領域[(X
L1’,Y
L1’),(X
R1’,Y
R1’)]を確認することができる。そして、前述の表1の検査領域情報も以下の表2のように更新されることになる。
【0043】
【0044】
このような表示処理の後、S404に戻る。そして、自動調整による変形後の検査領域について問題がないことを確認したユーザによってOKボタン604が操作されれば、変形後の内容で検査領域が設定されることになる(S405を経てS412)。
【0045】
以上が、本実施形態に係る、検査領域設定処理の内容である。なお、本実施形態では、原稿データにおける修正の対象をテキストオブジェクトとしているが、イメージオブジェクトやグラフィクスオブジェクトを対象として行ってもよい。その場合も同様に、修正原稿データから算出した描画領域に応じて検査領域を変形させればよい。具体的には、後述の実施形態2で説明するように、対象となるイメージやグラフィクスの同一性を保ったまま変形(幾何変換)させればよい。この際、例えば変形後の検査領域が他のオブジェクトについて設定済みの検査領域と重複することになった場合には、その部分を強調表示するなどしてユーザに警告を行ってもよい。なお、設定済みの検査領域について、追加/削除(延長/短縮)するのか、幾何変換するのかの切り替えは、例えば後述の実施形態2で述べる検査領域情報が持つオブジェクト属性によって制御可能である。具体的には、オブジェクト属性がテキスト以外のイメージやグラフィクスのときは幾何変換する、といった具合である。
【0046】
<変形例1>
本実施形態では、原稿データから生成したリファレンス画像に対して検査領域を設定しているが、これに限定されない。例えば、より簡易なレンダリング方法で得たラスタ画像をプレビューエリア601に表示して検査領域を指定できるようにしてもよい。この場合、プレビューエリア601に表示されたラスタ画像における描画位置をリファレンス画像における描画位置と見做して、ユーザが指定した領域をリファレンス画像と紐づけ、検査領域として設定する。この場合も同様に、原稿データの修正に応じて検査領域を自動調整すればよい。
【0047】
以上のとおり本実施形態によれば、ページ画像内のあるオブジェクトについて検査領域を設定した後に文字化け等を発見して原稿データを修正した場合に、設定済みの検査領域を原稿データの修正内容に応じて自動調整する。これにより、原稿データの修正に伴う、検査領域の設定作業をやり直すユーザ負担を軽減することができる。
【0048】
[実施形態2]
実施形態1では、文字化けを発見したユーザが原稿データにおいてテキストオブジェクトのフォント種を変更したことによる描画領域の変化に応じて、テキストオブジェクトについて設定済みの検査領域を自動調整する例を説明した。次に、あるテキストオブジェクトに関して行った原稿データの修正に応じて、その影響を受ける他のオブジェクトの設定済みの検査領域についても併せて自動調整する態様を、実施形態2として説明する。なお、システム構成など実施形態1と共通する内容についてはその説明を省略し、以下では本実施形態に係る検査領域設定処理について、前述の
図4のフローチャートに沿って、実施形態1との差異点を中心に説明する。
【0049】
<検査領域設定処理>
S401及びS402は実施形態1と同じであり、まず印刷処理される原稿データが取得され、当該取得した原稿データからリファレンス画像が生成される。そして、S403では、検査領域設定画面に表示されたリファレンス画像に対する、検査領域を指定するユーザ操作の受け付けが行われる。ここでは、
図9(a)に示す検査領域設定画面900のように、ページ画像内のテキストオブジェクト501に対し破線の範囲605を指定した後、さらにイメージオブジェクト503に対し破線の範囲901及び902がそれぞれ検査領域として指定されたものとする。破線の範囲901によってイメージオブジェクト503の全体が、破線の範囲902によってイメージオブジェクト503内の顔部分が、それぞれ別の検査領域として指定されたことになる。このような指定は、1つのオブジェクトの部位毎に、検査項目や検査レベルを異ならせたい場合に行われる。そして、ここまでの指定を終えたユーザが続けてテキストオブジェクト502に対しても検査領域を指定しようとした際に、文字化け(“づで”が“XY”になる誤変換)を発見し、一時保存ボタン602を選択したものとする。これにより、それまでにユーザが指定した設定済みの検査領域を示す検査領域情報が、ユーザが文字化けを発見した(修正前の)原稿データと紐づけてRAM107等に保存される。以下の表3は、本実施形態に係る検査領域情報の一例であり、指定された領域の「領域ID」と当該領域の「位置」を特定する位置座標(左上座標と右下座標)の情報に加え、「オブジェクト属性」の情報が含まれている。
【0050】
【0051】
そして、一時保存ボタン602を選択したユーザは、原稿データ(ここではPDFファイル)に対し、文字化けが起きないようにするための修正を行う。
図10(b)は、
図5(b)のPDFファイルに対してユーザが修正を行った後のPDFファイルを示している。この例では、テキストオブジェクト501及び502のフォント種を“F1”から“F2”に変更した上でさらに、フォントサイズが“50”から“80”に変更されている。
【0052】
S404及びS405は実施形態1と同じであり、ユーザによるボタン操作の受付及び受け付けたボタン操作の内容に基づく処理の振り分けが行われる。そして、一時保存ボタン602が操作された場合のS406では、当該ボタン操作がなされた時点で設定済みの検査領域の情報が原稿データと紐づけてRAM107等に保存され、次のS407では修正原稿データが取得される。ここでは、例えば前述の
図10(b)に示すPDFファイルを不図示のクライアント端末からユーザがアップロードすることによって修正原稿データが取得されたものとする。
【0053】
S408は実施形態1と同じであり、S407にて取得された修正原稿データからRIP処理によってリファレンス画像が生成される。
図10(a)は、
図10(b)に示す修正後のPDFファイルから生成される、リファレンス画像としてのページ画像を示している。
図10(a)のページ画像内のテキストオブジェクト502”では、フォント種の変更によって文字化けが起きていない。そして、フォント種とフォントサイズの変更によってテキストオブジェクト501”及び502”の各文字が大きくなっている。さらに、テキストオブジェクト501”については改行位置が変わると共に、ライン数が2ラインから3ラインへと増えている。また、イメージオブジェクト503”の画像データ自体は変わっていないものの、後述のレイアウト調整によってページ画像内の表示サイズが縮小している。
【0054】
S409も実施形態1と同じであり、S406にて一時保存した原稿データとS407にて取得された修正原稿データとに基づき、修正の前後で対応関係にある同一オブジェクトが特定される。
【0055】
S410では、特定されたオブジェクトそれぞれについて、修正原稿データが表すページにおける描画領域が算出される。この際、前述のとおりテキストオブジェクトについては、各文字のグリフ幅(字形幅)、各文字の描画位置原点情報から描画領域が算出される。そして、イメージオブジェクトについては、コンテンツストリーム内に記述された描画位置を示す座標情報から描画領域が算出される。ここで、オブジェクト毎の描画領域は、印刷対象ページについて指定された余白を除いた領域(印刷可能領域)に収まるように決定する必要があり、そのためのレイアウト調整が必要に応じて行われる。例えば、フォント変更によってあるテキストオブジェクトの描画領域が大きくなったことで、他のオブジェクトの描画領域を小さくするといった調整が行われる。そして、このレイアウト調整は、オブジェクト同士の位置関係が維持されるように行われる。
図11(b)は、
図10(b)に示す修正後のPDFファイルで指定された3つのオブジェクト501”~503”の描画領域を一点鎖線1101~1103で示している。フォント種とフォントサイズの変更により、まず、修正後のテキストオブジェクト501”の描画領域1101は、修正前のテキストオブジェクト501の描画領域801(
図11(a)参照)よりも大きくなるだけでなく、形状も変化している。また、修正後のテキストオブジェクト502”の描画領域1102は、修正前のテキストオブジェクト502の描画領域802(
図11(a)参照)よりも大きくなっている。これに伴い、修正後のイメージオブジェクト503”の描画領域1103が、レイアウト調整によって描画領域同士の位置関係を維持したまま、修正前の描画領域803(
図11(a)参照)よりも大幅に小さくなっている。
【0056】
S411では、S410にて算出したオブジェクト毎の描画領域に基づいて、S406にて一時保存した設定済みの検査領域が変形される。この際、各オブジェクトの描画領域の位置関係が維持されるように、一時保存されている設定済みの検査領域が変形されることになる。いま、
図9(a)の状態の設定済み検査領域が一時保存されていたとする。この場合、まず、テキストオブジェクト501”の描画領域1101がフォント種とフォントサイズの変更によって大きくなっている。よって、テキストオブジェクト501”についての破線605の検査領域[(X
L1,Y
L1),(X
R1,Y
R1)]を、破線605”の検査領域[(X
A1,Y
A1),(X
A2,Y
A2),(X
A3,Y
A3),(X
A4,Y
A4),(X
A5,Y
A5)]に拡大する変形処理が行われる。また、さらに、レイアウト調整によって、イメージオブジェクト503”の描画領域1103が小さくなっているので、対応する破線901の検査領域[(X
L2,Y
L2),(X
R2,Y
R2)]も、幾何変換によって、破線901”の検査領域[(X
L2’,Y
L2’),(X
R2’,Y
R2’)]にまで縮小する変形処理が行われる。そして、これに伴い、イメージオブジェクト503”の顔の部分を対象にした検査領域もオブジェクト全体に対する相対的な位置関係を保ったまま縮小されることになる。すなわち、破線902の検査領域[(X
L3,Y
L3),(X
R3,Y
R3)]は、破線902”の検査領域[(X
L3’,Y
L3’),(X
R3’,Y
R3’)]まで縮小されることになる。そして、実施形態1と同様、変形された検査領域が、UIパネル113に表示中の検査領域設定画面のプレビューエリア601に表示される。
図9(b)は、変形後の検査領域がプレビューエリア601に表示された検査領域設定画面900’を示す図である。
図9(b)の検査領域設定画面900”のプレビューエリア601には、修正原稿データから生成されたリファレンス画像が表示され、テキストオブジェクト501”に対し、描画領域1101を包含するように変形された検査領域[(X
A1,Y
A1),・・・(X
A5,Y
A5)]が破線605”で示されている。さらに、イメージオブジェクト503”に対し、縮小された描画領域1103を包含するように変更された検査領域[(X
L2’,Y
L2’),(X
R2’,Y
R2’)]とそれに合わせて縮小された検査領域[(X
L3’,Y
L3’),(X
R3’,Y
R3’)]が、それぞれ破線901”及び902”で示されている。これによりユーザは、修正原稿データに応じて自動調整された検査領域を確認することができる。そして、表3の検査領域情報も以下の表4のように更新されることになる。
【0057】
【0058】
なお、変更後の検査領域をプレビューエリア601に表示する際、例えば修正を行っていないイメージオブジェクトの位置やサイズがレイアウト調整によって変わったことを知らせるメッセージを表示するなど、変更箇所に関する通知を行うようにしてもよい。このような表示処理の後、S404に戻り、変更された検査領域について問題がないことを確認したユーザによってOKボタン604が操作されれば、変更後の内容で検査領域が設定される(S405を経てS412)。
【0059】
以上が、本実施形態に係る、検査領域設定処理の内容である。なお、本実施形態では、テキストオブジェクトに対する修正によって、修正していないイメージオブジェクトに対する検査領域を付随的に自動調整する場合を説明したが、このような付随的な自動調整の対象となるオブジェクトの属性はイメージに限定されず、例えばグラフィクスなどでもよい。また、一時保存された設定済みの検査領域の1つが、例えばプレプリント領域(用紙に予めロゴなどが印刷された領域)に対応している場合など、レイアウト調整の影響を受けないものである場合は、当該検査領域については自動調整の対象外とするように設定してもよい。
【0060】
<変形例>
実施形態1及び2では、1ページの原稿データに対する修正とそれに対応する検査領域を自動調整する態様について説明したが、複数ページの原稿データ内の任意のページに対しても同様に適用することができる。
図12は本変形例における検査領域の設定を説明する図であり、各ページにテキストオブジェクトとイメージオブジェクトを含んだnページ分の原稿データを示している。1ページ目に文字列C
1とイメージI
1、2ページ目に文字列C
2とイメージI
2、・・・、nページ目に文字列C
nとイメージI
nといった具合にオブジェクトが配置されている。そして、ユーザが、前述の検査領域設定画面を介して、nページ分の原稿データのうち1ページ~m-1ページまでの原稿データのテキストオブジェクトに対して、破線で示す範囲RC
1、RC
2、・・・、RC
m―1を検査領域として指定したとする。さらに、イメージオブジェクトに対しても、破線で示す範囲RI
1、RI
2、・・・RI
m-1を検査領域として指定したとする。なお、mは1<m<nを満たす正の整数とする。そして、mページ目の文字列C
mに対して同じ様に検査領域を指定しようとした時に文字化けを見つけ、検査領域の設定作業を中断し、一時保存ボタンを選択したものとする。本変形例の場合、この時点で以下の表5に示すような、各検査領域とページ番号とを紐づけた検査領域情報を一時保存するようにすればよい。
【0061】
【0062】
そして、ユーザは、mページの原稿データについて実施形態1及び2と同様の修正を行い、当該修正を加えた原稿データをアップロードする。これにより、マルチページの原稿データにおける任意のページに対する一時保存した設定済みの検査領域に対しても、実施形態1及び2と同様に自動調整を行うことが可能となる。
【0063】
以上のとおり本実施形態によれば、あるテキストオブジェクトにおいて文字化け等を発見したユーザが原稿データに対して行った修正に応じて、その影響を受ける他のオブジェクトの設定済みの検査領域についても併せて自動調整することができる。
【0064】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0065】
また、本実施形態の開示は、以下の構成及び方法を含む。
【0066】
(構成1)
印刷装置から出力される印刷物の欠陥を検査するための画像処理装置であって、
前記印刷物の原稿データを取得する取得手段と、
取得された前記原稿データが示すページ画像に対し、前記検査の対象となる検査領域を設定する設定手段と、
設定済み検査領域を前記原稿データに紐づけて保存する保存手段と、
を備え、
保存された前記原稿データに修正を加えた修正原稿データが前記取得手段によって取得された場合、前記設定手段は、保存された前記設定済み検査領域を、前記修正原稿データが示すページ画像に応じて変形する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【0067】
(構成2)
前記設定手段は、ユーザインタフェース画面を介してユーザが指定した前記ページ画像上の領域を前記検査領域として設定し、
前記修正原稿データに応じて変形された検査領域は、前記ユーザインタフェース画面に表示される、
ことを特徴とする構成1に記載の画像処理装置。
【0068】
(構成3)
前記設定手段は、前記ユーザインタフェース画面を介したユーザによる前記保存の指示に従って、当該指示の時点で設定済みの検査領域を、前記原稿データに紐づけて保存することを特徴とする構成2に記載の画像処理装置。
【0069】
(構成4)
前記設定手段は、
保存された前記原稿データが示すページ画像に含まれるオブジェクトと前記修正原稿データが示すページ画像に含まれるオブジェクトとを比較して、対応関係にある同一オブジェクトを特定し、
特定された同一オブジェクト毎に、前記修正原稿データが示すページ画像における描画領域を算出し、
算出した描画領域に基づいて、保存された前記設定済み検査領域を変形する、
ことを特徴とする構成1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【0070】
(構成5)
前記ページ画像に含まれるオブジェクトは、オブジェクト属性がテキストであるテキストオブジェクトであり、
保存された前記設定済み検査領域には、前記テキストオブジェクトについての検査領域が含まれ、かつ、前記修正原稿データにおいて前記テキストオブジェクトが表す文字列のフォントに関する修正が行われていた場合、
前記設定手段は、
前記フォントに関する修正によって前記テキストオブジェクトの描画領域が拡大した場合は、当該拡大された描画領域に合わせて、保存された前記設定済み検査領域を変形し、
前記フォントに関する修正によって前記テキストオブジェクトの描画領域が縮小した場合は、当該縮小された描画領域に合わせて、保存された前記設定済み検査領域を変形する、
ことを特徴とする構成4に記載の画像処理装置。
【0071】
(構成6)
前記設定手段は、保存された前記テキストオブジェクトについての前記設定済み検査領域を、前記テキストオブジェクトが表す文字列を構成する各文字のグリフ幅と描画位置原点情報に基づいて変形する、ことを特徴とする構成5に記載の画像処理装置。
【0072】
(構成7)
前記ページ画像に、さらに、テキスト以外のオブジェクト属性を持つ他のオブジェクトが含まれる場合において、
保存された前記設定済み検査領域に、さらに、前記他のオブジェクトについての検査領域が含まれる場合、
前記設定手段は、
前記フォントに関する修正によって前記テキストオブジェクトの描画領域が変化した場合、当該変化した後の描画領域と前記他のオブジェクトの描画領域との位置関係が維持されるように、保存された前記他のオブジェクトについての前記設定済み検査領域を幾何変換によって変形する、
ことを特徴とする構成6に記載の画像処理装置。
【0073】
(構成8)
前記他のオブジェクトは、オブジェクト属性がイメージであるイメージオブジェクトまたはオブジェクト属性がグラフィクスであるグラフィクスオブジェクトであることを特徴とする構成7に記載の画像処理装置。
【0074】
(構成9)
前記設定手段は、保存された前記設定済み検査領域が、プレプリント領域についての検査領域である場合は、前記変形を行わないことを特徴とする構成1乃至8のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【0075】
(構成10)
前記原稿データに複数ページのページ画像が含まれる場合、
前記保存手段は、前記設定済み検査領域を、対応するページ画像のページ番号に紐づけて保存し、
保存された前記原稿データに修正を加えた修正原稿データが前記取得手段によって取得された場合、前記設定手段は、ページ番号と紐づけて保存された前記設定済み検査領域を、前記修正原稿データにおける当該ページ番号のページ画像に応じて変形する、ことを特徴とする構成1乃至8のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【0076】
(方法1)
印刷装置から出力される印刷物の欠陥を検査するための画像処理方法であって、
前記印刷物の原稿データを取得する取得ステップと、
取得された前記原稿データが示すページ画像に対し、前記検査の対象となる検査領域を設定する設定ステップと、
設定済み検査領域を前記原稿データに紐づけて保存する保存ステップと、
保存された前記原稿データに修正を加えた修正原稿データを取得する取得ステップと、
保存された前記設定済み検査領域を、前記修正原稿データが示すページ画像に応じて変形する変形ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【0077】
(構成12)
コンピュータを、構成1乃至10に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。