(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183109
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】水中浮遊式発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/10 20060101AFI20231220BHJP
B63B 22/20 20060101ALI20231220BHJP
B63B 25/00 20060101ALI20231220BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20231220BHJP
F03B 13/26 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
F03B13/10
B63B22/20
B63B25/00 101K
B63B35/00 T
F03B13/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096555
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】石黒 泰大
(72)【発明者】
【氏名】百々 泰
(72)【発明者】
【氏名】魚路 知生
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA08
3H074AA12
3H074BB16
3H074BB30
3H074CC01
3H074CC16
(57)【要約】
【課題】浮力の調整が浮体の姿勢維持に及ぼす影響を抑制可能な水中浮遊式発電装置を提供する。
【解決手段】水中に浮遊する水中浮遊式発電装置は、内部空間Sを形成する筒状の外殻30と、外殻30の長手方向に延在するように内部空間Sに配置されて、内部空間Sを、発電のための搭載機器が配置される水密である機器収容領域R1と水の出し入れによって浮力を調整するための浮力調整領域R2とに仕切る仕切り板32と、を備え、搭載機器を収容した外殻30が水中に浮遊した状態であるときに、仕切り板32は、外殻30及び搭載機器を含む重心よりも鉛直方向に沿う下側に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に浮遊する水中浮遊式発電装置であって、
内部空間を形成する筒状の外殻と、
前記外殻の長手方向に延在するように前記内部空間に配置されて、前記内部空間を、発電のための搭載機器が配置される水密である機器収容領域と水の出し入れによって浮力を調整するための浮力調整領域とに仕切る仕切り板と、を備え、
前記搭載機器を収容した前記外殻が水中に浮遊した状態であるときに、前記仕切り板は、前記外殻及び前記搭載機器を含む重心よりも鉛直方向に沿う下側に配置される、水中浮遊式発電装置。
【請求項2】
前記浮力調整領域は、1個のバラストタンクである、請求項1に記載の水中浮遊式発電装置。
【請求項3】
前記外殻の長手方向に沿って前記浮力調整領域に配置された複数の分割壁をさらに備え、
前記複数の分割壁は、前記浮力調整領域を互いに水密に隔てられた複数のバラストタンクセルに分割する、請求項1に記載の水中浮遊式発電装置。
【請求項4】
前記複数のバラストタンクセルは、前記外殻の長手方向に沿って並んでいる、請求項3に記載の水中浮遊式発電装置。
【請求項5】
リング状であって前記外殻の長手方向に沿って互いに間隔を設けて前記外殻の内周面に固定された補強部材をさらに備える、請求項3に記載の水中浮遊式発電装置。
【請求項6】
前記分割壁は、前記補強部材の一部を含む、請求項5に記載の水中浮遊式発電装置。
【請求項7】
前記分割壁は、前記補強部材と前記仕切り板との間を塞ぐ分割壁片をさらに含む、請求項6に記載の水中浮遊式発電装置。
【請求項8】
前記複数のバラストタンクセルごとに水を注水すると共に前記水を排水するための、注排水機構をさらに備える、請求項3に記載の水中浮遊式発電装置。
【請求項9】
前記注排水機構は、前記外殻に設けられた第1入出力口と、前記複数のバラストタンクセルごとに前記仕切り板に設けられた第2入出力口と、を有する、請求項8に記載の水中浮遊式発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中浮遊式発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、浮体式風力発電装置を開示する。特許文献1に開示される浮体式風力発電装置が有する浮体は、タワーの内部にバラスト水を注水することで潜水することができる。浮体は、タワーの内部のバラスト水を排水することで浮上することができる。
【0003】
特許文献2は、浮遊式水流発電装置を開示する。特許文献2に開示される発電装置の発電ポッドは、浮力調整機構を備えている。浮力調整機構は、バラストタンクと、注排水管と、ポンプとを含む。バラストタンクは、発電ポッドの内部に設けられている。注排水管は、バラストタンクと発電ポッドの外部とを接続する。ポンプは、注排水管に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/083684号
【特許文献2】特開2020-79575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2が開示する装置は、浮体の内部に水を注水すること及び排水することによって、浮力を調整する。このとき、浮体の内部に取り入れた水は、装置全体の重量の分布に影響を及ぼす。その結果、水を多く貯えているときの装置の重心の位置は、水が空に近い状態であるときの装置の重心の位置と異なる。重心の位置が変わると、浮体のバランスが不安定に向かう可能性がある。
【0006】
本発明は、浮力の調整によって浮体のバランスが不安定に向かうことを抑制する水中浮遊式発電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態である水中に浮遊する水中浮遊式発電装置は、内部空間を形成する筒状の外殻と、外殻の長手方向に延在するように内部空間に配置されて、内部空間を、発電のための搭載機器が配置される水密である機器収容領域と水の出し入れによって浮力を調整するための浮力調整領域とに仕切る仕切り板と、を備える。搭載機器を収容した外殻が水中に浮遊した状態であるときに、仕切り板は、外殻及び搭載機器を含む重心よりも鉛直方向に沿う下側に配置される。
【0008】
搭載機器を収容した外殻が水中に浮遊した状態であるときに、仕切り板は、外殻及び搭載機器を含む重心よりも鉛直方向に沿う下側に配置される。そのため、浮力調整領域は、上記重心よりも鉛直方向に沿う下側に位置する。その結果、浮力調整領域に水を入れることによって、水中浮遊式発電装置の重心は、鉛直方向に沿う下側に移動する。この移動によれば、浮心から重心が離れるので、浮体のバランスはより安定する方向に向かう。従って、浮力の調整によって浮体のバランスが不安定に向かうことが抑制される。
【0009】
上記の水中浮遊式発電装置の浮力調整領域は、1個のバラストタンクであってもよい。このような構成によれば、浮力調整領域を形成する構造を簡素化することができる。
【0010】
上記の水中浮遊式発電装置は、外殻の長手方向に沿って浮力調整領域に配置された複数の分割壁をさらに備えてもよく、複数の分割壁は、浮力調整領域を互いに水密に隔てられた複数のバラストタンクセルに分割してもよい。このような構成によれば、所望のバラストタンクセルに注水することができる。これにより、水中浮遊式発電装置は、浮体の前後方向におけるバランスを任意の状態とすることができる。その結果、ピッチ角を調整することができる。
【0011】
上記の水中浮遊式発電装置の複数のバラストタンクセルは、外殻の長手方向に沿って並んでいてもよい。このような構成によれば、所望のバラストタンクセルに注水することができる。この構成によっても、水中浮遊式発電装置は、ピッチ角を調整することができる。
【0012】
上記の水中浮遊式発電装置は、リング状であって外殻の長手方向に沿って互いに間隔を設けて外殻の内周面に固定された補強部材をさらに備えてもよい。この構成によれば、外殻は、補強部材によって補強されている。そのため、水中浮遊式発電装置が水中に浮遊するときに外殻に作用する水圧に対抗することができるので、外殻は形状を保つことができる。
【0013】
上記の水中浮遊式発電装置の分割壁は、補強部材の一部を含んでもよい。この構成によれば、補強部材を、バラストタンクセルの一部を形成することに用いることができる。
【0014】
上記の水中浮遊式発電装置の分割壁は、補強部材と仕切り板との間を塞ぐ分割壁片をさらに含んでもよい。この構成によれば、補強部材の形状に制限されることなく、任意の大きさの浮力調整領域を形成することができる。
【0015】
上記の水中浮遊式発電装置は、複数のバラストタンクセルごとに水を注水すると共に水を排水するための、注排水機構をさらに備えてもよい。この構成によれば、バラストタンクセルごとに注水すること、及び排水することができる。
【0016】
上記の水中浮遊式発電装置の注排水機構は、外殻に設けられた第1入出力口と、複数のバラストタンクセルごと仕切り板に設けられた第2入出力口と、を有してもよい。この構成によれば、外殻の周囲に存在する水を浮力調整領域に取り込むことができる。また、バラストタンクセルに貯められた水を外殻の周囲に排出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水中浮遊式発電装置は、浮力の調整によって浮体のバランスが不安定に向かうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図2は、第1実施形態の水中浮遊発電装置が備える発電ポッドの断面を側面視した図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す発電ポッドの一部を拡大して示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す発電ポッドの内部空間の一部を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すトランスリングと仕切板との嵌合を説明するための斜視図である。
【
図6】
図6は、浮力調整領域に水を入れることの効果を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の水中浮遊発電装置が備える発電ポッドの断面を側面視した図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す発電ポッドの内部空間の一部を拡大して示す断面図である。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、バラストタンクセルを用いたピッチ角の制御を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第一実施形態>
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
各図において直交する3方向をX方向、Y方向、Z方向として図示している。X方向及びY方向は、水平方向に沿っている。X方向は、例えば水流FWに沿う方向である。Y方向は、水流FWとは交差する方向である。Z方向は上下方向に沿う方向である。Z方向は、鉛直方向に沿う方向である。水流FWの上流側を前側とする。水中浮遊式発電装置2が海中に浮遊している状態において、水中浮遊式発電装置から海面に向かう方向を上とする。
【0021】
図1に示すように、海流発電システム1は、海流を利用して発電する。海流発電システム1は、発電した電気を地上の電力系統に送電する。海流発電システム1は、水中浮遊式発電装置2と、係留索5と、アンカー6と、を備える。
【0022】
水中浮遊式発電装置2は、水中で浮遊することができる。水中浮遊式発電装置2は、例えば、海中で浮遊した状態において、海流を利用して発電する。水中浮遊式発電装置2は、一対の発電ポッド3と、連結部4と、を備える。発電ポッド3は、海流によって、後述するブレード33aが回転することで、発電装置を動作させる。連結部4は、一方の発電ポッド3と他方の発電ポッド3に連結する。
【0023】
係留索5は、水中浮遊式発電装置2の浮遊範囲を制限する。係留索5の一端は、発電ポッド3に連結されている。係留索5の他端は、海底に配置されたアンカー6に連結されている。係留索5には、不図示の送電ケーブルが沿わされている。発電ポッド3が発電した電気は、送電ケーブルを介して送電される。
【0024】
図2に示すように、発電ポッド3は、外殻30と、複数のトランスリング31(補強部材)と、仕切り板32と、タービン33と、回転軸34と、発電機35(搭載機器)と、注排水機構36と、及び制御装置37(搭載機器)と、を有する。
【0025】
外殻30は、発電ポッド3の骨格となる部品である。外殻30は、前後方向(X方向、長手方向)に延びる筒状の形状を有する。外殻30は、内部空間Sを形成する。外殻30は、外殻外周面30aと、外殻内周面30bと、を有する。
【0026】
外殻外周面30aは、水中浮遊式発電装置2が水中に浮遊している状態において、水に接触する面である。外殻外周面30aは、前後方向において後端から前端に向かって円筒状の形状を有する。
【0027】
外殻内周面30bは、内部空間Sを形成する。外殻内周面30bは、円筒状の形状を有する。外殻内周面30bの中心軸は、外殻外周面30aの中心軸と一致する。
【0028】
入出力口30c(第1入出力口)(
図1参照)は、外殻30の外の空間と内部空間Sとを接続する。入出力口30cの一方の開口は、外殻外周面30aに形成されている。入出力口30cの他方の開口は、外殻内周面30bに形成されている。入出力口30cは、外殻内周面30bから外殻外周面30aに亘って形成されている。つまり、入出力口30cは、貫通穴である。入出力口30cの内径は、後述する取水管部36a1が入出力口30cに嵌合できる程度の大きさである。
【0029】
トランスリング31は、外殻30を補強するための部品である。トランスリング31の形状は、リング状である。トランスリング31は、複数設けられている。トランスリング31同士は、前後方向において互いに間隔を設けて配置されている。
【0030】
図3に示すように、トランスリング31は、トランスリング前面31aと、トランスリング後面31bと、トランスリング外周面31cと、トランスリング内周面31dと、を有する。トランスリング前面31aは、円環状の形状を有する。トランスリング前面31aは、円形を有する内側の輪郭と、内側の輪郭よりも大きい径を有する円形を有する外側の輪郭とを含む。トランスリング前面31aの外径は、外殻内周面30bの内径と等しい。トランスリング前面31aの幅は、外殻内周面30bの鉛直方向における底から後述する仕切り板32までの距離よりも短い。トランスリング前面31aの幅は、トランスリング31の径方向に沿って、トランスリング外周面31cからトランスリング内周面31dまでの距離として規定される。
【0031】
トランスリング後面31bは、トランスリング前面31aと同一の形状を有する。一つのトランスリング31が有するトランスリング前面31aとトランスリング後面31bとは、平行である。
【0032】
トランスリング外周面31cは、トランスリング前面31aの外側の輪郭とトランスリング後面31bの外側の輪郭とを接続する。トランスリング外周面31cは、トランスリング前面31aと直交する。トランスリング外周面31cは、トランスリング後面31bと直交する。トランスリング外周面31cは、円筒状の形状を有する。トランスリング外周面31cは、外殻内周面30bに固定されている。その結果、トランスリング31は、外殻30に固定される。トランスリング外周面31cが、外殻内周面30bに固定された状態において、トランスリング外周面31cは、前後方向と平行である。換言すると、トランスリング外周面31cが、外殻内周面30bに固定された状態において、トランスリング前面31a、及びトランスリング後面31bは、前後方向と直交する。
【0033】
トランスリング内周面31dは、トランスリング前面31aの内側の輪郭をトランスリング後面31bの内側の輪郭に接続する。トランスリング内周面31dは、トランスリング前面31aに直交する。トランスリング内周面31dは、トランスリング後面31bにも直交する。トランスリング内周面31dは、トランスリング外周面31cに対して平行である。トランスリング内周面31dは、円筒状の形状を有する。
【0034】
仕切り板32は、内部空間Sを仕切る。より詳細には、仕切り板32は、内部空間Sを機器収容領域R1と、浮力調整領域R2とに仕切る。機器収容領域R1は、浮力調整領域R2よりも鉛直方向(Z方向)に沿って上側に位置する。発電機35及び制御装置37は、機器収容領域R1に配置されている(
図2参照)。機器収容領域R1は、水密である。浮力調整領域R2には、水の出し入れをすることができる。浮力調整領域R2への水の出し入れによって浮力を調整することができる。
【0035】
仕切り板32は、内部空間Sに配置されている。仕切り板32は、外殻30に固定される。仕切り板32は、トランスリング31にも固定される。仕切り板32は、仕切り板上面32aと、仕切り板下面32bと、仕切り板側面32cと、溝32dと、入出力口32e(第2入出力口)と、を有する。
【0036】
仕切り板上面32aは、機器収容領域R1の一部を形成する。機器収容領域R1は、仕切り板上面32aと、外殻内周面30bとによって、形成される。仕切り板上面32aは、前後方向に長い略矩形状を有する。仕切り板上面32aの前後方向における長さは、外殻内周面30bの前後方向における長さと等しくてもよい。仕切り板上面32aの左右方向の長さは、外殻内周面30bの直径よりも短い。発電機35及び制御装置37は、仕切り板上面32aに配置されている。
【0037】
図4に示すように、浮力調整領域R2は、仕切り板下面32bと、外殻内周面30bとによって、形成される。仕切り板下面32bは、トランスリング内周面31dと対面する。仕切り板下面32bは、トランスリング内周面31dには接しない。つまり、仕切り板下面32bとトランスリング内周面31dとの間には、隙間Kが形成されている。従って、浮力調整領域R2は、それ以上に仕切られていない一つの空間である。換言すると、浮力調整領域R2は、1つのバラストタンクである。
【0038】
図5に示すように、仕切り板側面32cは、仕切り板上面32aと、仕切り板下面32bとを接続する。仕切り板側面32cと、仕切り板上面32a、及び仕切り板下面32bとは、直交する。仕切り板側面32cが、外殻内周面30bに固定されることによって、仕切り板32は、外殻30に固定される。
【0039】
仕切り板32には、複数の溝32dが設けられている。溝32dには、トランスリング31が挿入される。なお、
図5では一部のトランスリング31の図示を省略している。溝32dにトランスリング31が挿入された状態で、仕切り板32は、トランスリング31に固定される。溝32dは、左右方向(Y方向)と平行である。溝32dは、1個のトランスリング31に対して、2個設けられている。溝32dは、溝前面32fと、溝後面32gと、溝底面32hとに囲まれている。溝前面32fは、溝32dの前端の面である。溝前面32fは、仕切り板32がトランスリング31に固定された状態において、トランスリング前面31aと接触している。溝後面32gは、溝32dの後端の面である。溝後面32gは、仕切り板32がトランスリング31に固定された状態において、トランスリング後面31bと接触している。溝底面32hは、溝32dのうち仕切り板32の中央に最も近い面である。溝底面32hは、仕切り板32がトランスリング31に固定された状態において、トランスリング内周面31dと接触している。
【0040】
入出力口32eは、機器収容領域R1と、浮力調整領域R2とを接続している。入出力口32eは、貫通穴である。入出力口32eの一方の開口は、仕切り板上面32aに設けられている。入出力口32eの他方の開口は、仕切り板下面32bに設けられている。つまり、入出力口32eは、仕切り板上面32aから仕切り板下面32bに亘って形成されている。入出力口32eは、上下方向と平行である。入出力口32eの内径は、後述する枝管部36a3が入出力口32eに嵌合できる程度の大きさである。入出力口32eは、複数設けられている。入出力口32eは、隣り合うトランスリング31の間のそれぞれに1つずつ設けられている。
【0041】
仕切り板32の左右方向における長さは、外殻内周面30bの内径よりも短い。そのため、仕切り板32が外殻30、及びトランスリング31に固定されている状態では、仕切り板32は、外殻30の中心軸線よりも下側に配置されている。
【0042】
外殻30の重心は、外殻30の中心軸線Lの近傍に位置する。外殻30の重心の位置は、仕切り板32の位置よりも上である。発電機35及び制御装置37は、仕切り板32の上に配置されている。そのため、発電機35、及び制御装置37を含んだ重心の位置は、仕切り板32の位置よりも上である。したがって、仕切り板32の位置は、外殻30、発電機35、及び制御装置37を含んだ重心の位置よりも下である。
【0043】
再び
図2に示すように、タービン33は、水の流れを受けて回転運動を生じる。タービン33は、ブレード33aを有する。タービン33は外殻30の外部に配置されている。ブレード33aは、水流によって回転する。
【0044】
回転軸34の一端には、タービン33が連結されている。回転軸34の他端には発電機35が連結されている。回転軸34は、回転力を発電機35に伝達する。回転軸34の一部は機器収容領域R1に配置される。
【0045】
発電機35は、回転の運動エネルギを電気エネルギに変換する。発電機35は仕切り板32の上に配置されている。発電機35は機器収容領域R1に配置されている。
【0046】
注排水機構36は、発電ポッド3の外部に存在する水を、浮力調整領域R2に供給する。また、注排水機構36は、浮力調整領域R2に貯められた水を、発電ポッド3の外部に排出する。注排水機構36は、供給管36aと、ポンプ36bと、バルブ36cと、を有する。
【0047】
図3に示すように、供給管36aは、外部から取り入れた水を浮力調整領域R2に導く。供給管36aは、取水管部36a1と、1本の主管部36a2と、複数の枝管部36a3と、を有する。取水管部36a1の一端は、外殻30の入出力口30cに連結されている。取水管部36a1の他端は、ポンプ36bに連結されている。主管部36a2は、ポンプ36bに連結されている。複数の枝管部36a3の一端は、主管部36a2に連結されている。複数の枝管部36a3は、仕切り板32に設けられた入出力口32eに差し込まれている。複数の枝管部36a3の他端は、浮力調整領域R2に配置されている。
【0048】
ポンプ36bは、水を圧送することができる。ポンプ36bは、仕切り板上面32aに配置されている。ポンプ36bは、入出力口30cから入出力口32eに向かって水を圧送することができる。また、ポンプ36bは、入出力口32eから入出力口30cに向かって水を圧送することができる。
【0049】
バルブ36cは、水の流量を調整することができる部材である。バルブ36cは、水の流量をゼロにすることができる。バルブ36cは、主管部36a2と枝管部36a3との連結部分に設けられている。従って、バルブ36cの数は、入出力口32eの数と同じである。
【0050】
制御装置37は、注排水機構36の動作の制御を行う部材である。制御装置37は、ポンプ36b及びバルブ36cの動作を制御する。制御装置37は、仕切り板上面32aに配置されている。制御装置37は、機器収容領域R1に配置されている。制御装置37は、ポンプ36b及びバルブ36cと不図示の配線で接続されている。
【0051】
浮力調整領域R2に水を貯めるときの制御を説明する。制御装置37は、バルブ36cを開放する。制御装置37は、全てのバルブ36cを開放してもよいし、一部のバルブ36cを開放してもよい。次に、制御装置37は、ポンプ36bに、入出力口30cから入出力口32eに向かって水を圧送させる。目標となる水の量が浮力調整領域R2に貯められたことに応じて、制御装置37は、ポンプ36bを停止し、バルブ36cを閉じる。
【0052】
浮力調整領域R2から水を排水するときの制御を説明する。制御装置37は、バルブ36cを開放する。制御装置37は、全てのバルブ36cを開放してもよいし、一部のバルブ36cを開放してもよい。次に、制御装置37は、ポンプ36bに、入出力口32eから入出力口30cに向かって水を圧送させる。目標となる水の量が浮力調整領域R2から排水されたことに応じて、制御装置37は、ポンプ36bを停止し、バルブ36cを閉じる。
【0053】
図6を用いて、浮力調整領域R2に貯水することの効果を説明する。浮力調整領域R2に水が貯まっていない状態における発電ポッド3の重心は、点G
1Aに位置している。仕切り板32は、発電ポッド3の中心軸線Lよりも下に位置している。そのため、発電機35の重量、及び制御装置37の重量により、点G
1Aは、発電ポッド3の中心軸線Lよりも下に位置している。
【0054】
連結部4の重心は、点G2に位置している。連結部4の内部には、重量物は含まれていないため、点G2は、連結部4の中心軸線L4と重なるように位置していると仮定してよい。水中浮遊式発電装置2の重心が位置している点GAの位置は、2点の点G1A、及び点G2の分布によって決定されるので点G2よりも下に位置している。
【0055】
次に、水中浮遊式発電装置2の浮心の位置を説明する。水中浮遊式発電装置2の浮心は、点Bに位置していると仮定する。浮心(点B)の位置は、重心より上にあると仮定する。
【0056】
次に、浮力調整領域R2に水が貯まった状態における水中浮遊式発電装置2の重心を説明する。浮力調整領域R2に水が貯まった状態における発電ポッド3の重心は、点G1Bに位置している。仕切り板32は、点G1Aよりも下に位置しているため、浮力調整領域R2の水の重心も点G1Aよりも下に位置している。したがって、点G1Bも点G1Aよりも下に位置している。連結部4の重心の位置は、浮力調整領域R2に水が入っているか否かに関わらず、一定である。そのため、浮力調整領域R2に水が入っている状態において水中浮遊式発電装置2の重心が位置している点GBは、点GAよりも下に位置している。
【0057】
以上により、浮力調整領域R2に注水されることによって、水中浮遊式発電装置2の重心の位置と、浮心の位置との距離は長くなる。
【0058】
搭載機器を収容した外殻30が水中に浮遊した状態であるときに、仕切り板32は、外殻30及び搭載機器を含む重心よりも鉛直方向に沿う下側に配置される。そのため、浮力調整領域R2は、上記重心よりも鉛直方向に沿う下側に位置する。その結果、浮力調整領域R2に水を入れることによって、水中浮遊式発電装置2の重心は、鉛直方向(Z方向)に沿う下側に移動する。この移動によれば、浮心から重心が離れるので、浮体のバランスはより安定する方向に向かう。従って、浮力の調整によって浮体のバランスが不安定に向かうことが抑制される。
【0059】
例えば、水流等の影響により、水中浮遊式発電装置2は前後方向を軸とする軸回りの一方向に回転し、ロール角が変動することがある。浮力調整領域R2に水が貯まっていない状態において、水中浮遊式発電装置2の重心は、点GAに位置している。水中浮遊式発電装置2の浮心は、点Bに位置している。点GAには、水中浮遊式発電装置2の重量と等しい大きさの力が下向きに作用する。点Bには、水中浮遊式発電装置2の浮力と等しい大きさの力が上向きに作用する。したがって、水中浮遊式発電装置2には、上記一方向と反対方向に回転させるモーメントが働く。このとき、浮力調整領域R2に水が貯まっていると、水中浮遊式発電装置2の重心は、点GBに位置している。点GAと点Bとの距離よりも、点GBと点Bとの距離の方が長いため、より大きなモーメントを働かせることができる。したがって、浮力の調整が水中浮遊式発電装置2の姿勢維持に及ぼす影響を抑制可能である。
【0060】
浮力調整領域R2は、1個のバラストタンクである。このような構成によれば、浮力調整領域R2を形成する構造を簡素化することができる。
【0061】
上記の実施形態では、トランスリング31を備えている。この構成によれば、外殻30は、トランスリング31によって補強されている。そのため、水中浮遊式発電装置2が水中に浮遊するときに外殻30に作用する水圧に対抗することができる。その結果、外殻30は形状を保つことができる。
【0062】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態の水中浮遊式発電装置を説明する。第一実施形態の発電ポッド3が備える浮力調整領域R2は、一つのバラストタンクであった。
図7に示すように、第二実施形態の発電ポッド3Aの内部領域SAは、機器収容領域R1と浮力調整領域R2Aとを含む。浮力調整領域R2Aは、複数のバラストタンクセルR2a~R2qによって構成される。
【0063】
発電ポッド3Aは、浮力調整領域R2Aに配置された複数の分割壁39をさらに備える。分割壁39は、前後方向(X方向)に沿って配置されている。
【0064】
浮力調整領域R2Aは、分割壁39によって、互いに水密に隔てられた複数のバラストタンクセルR2a~R2qに分割される。複数のバラストタンクセルR2a~R2qは、前後方向に沿って並んでいる。仕切り板32には、複数のバラストタンクセルR2a~R2qのそれぞれの位置に対応するように、入出力口32eが設けられている。注排水機構36は、バラストタンクセルR2a~R2qごとに注水する。また、注排水機構36は、バラストタンクセルR2a~R2qごとから排水する。複数のバラストタンクセルR2a~R2qは、互いに仕切られている。あるバラストタンクセルR2a~R2qに注水された水は、隣接する別のバラストタンクセルR2a~R2qに移動しない。
【0065】
図8に示すように、分割壁39は、トランスリング31のタンク形成面31e、31fと分割壁片39aとを含んでいる。タンク形成面31eは、トランスリング前面31aのうち仕切り板下面32bよりも下側に位置している部分である。タンク形成面31fは、トランスリング後面31bのうち仕切り板下面32bよりも下側に位置している部分である。
【0066】
分割壁片39aは、仕切り板32とトランスリング31との間を塞いでいる。具体的には、分割壁片39aは、第一実施形態で説明した隙間Kに配置されている。第二実施形態では、隙間Kは、分割壁片39aによって塞がれている。分割壁片39aは、扇状の形状を有している。中心軸線Lの方向から見て、分割壁片39aは、仕切り板下面32bと、トランスリング内周面31dとによって囲まれる開口と同一の形状を有する。中心軸線Lの方向から見て、分割壁片39aの輪郭のうち、弧の部分がトランスリング内周面31dに固定されることによって、分割壁片39aは、トランスリング31に固定される。中心軸線Lの方向から見て、分割壁片39aの輪郭のうち、弦の部分が、仕切り板下面32bに固定されることによって、分割壁片39aは、仕切り板32に固定される。
【0067】
制御装置37には、姿勢センサ37aがさらに接続されている(
図7参照)。姿勢センサは、水中浮遊式発電装置2の姿勢を測定する。姿勢センサは、水中浮遊式発電装置2のピッチ角を測定する。
【0068】
上記の実施形態では、所望のバラストタンクセルR2a~R2qに注水することができる。バラストタンクセルR2a~R2qは、前後方向(X方向)に沿って並んでいる。これにより、水中浮遊式発電装置2には、注水されたバラストタンクセルR2a~R2qによって、注水されたバラストタンクセルR2a~R2qの位置に上下方向に沿う下側の力が働く。したがって、水中浮遊式発電装置2は、ピッチ角を変更することができる。
【0069】
例えば、
図9(a)に示すように、発電ポッド3Aの機首を下げたい場合には、前方に配置されたいくつかのバラストタンクセルR2a、R2b、R2cに注水する。そのほかのバラストタンクセルR2d~R2qには注水しない。
図9(b)に示すように、発電ポッド3Aの機首を上げたい場合には、後方に配置されたいくつかのバラストタンクセルR2k、R2p、R2qに注水する。そのほかのバラストタンクセルR2a~R2jには注水しない。
【0070】
上記の実施形態では、分割壁39は、トランスリング31の一部を含んでいる。上記の水中浮遊式発電装置2Aの分割壁39は、トランスリング31の一部を含む。この構成によれば、トランスリング31を、バラストタンクセルR2a~R2qの一部を形成することに用いることができる。
【0071】
上記の実施形態では、分割壁39は、分割壁片39aをさらに含んでいる。この構成によれば、トランスリング31の形状に制限されることなく、任意の大きさの浮力調整領域R2Aを形成することができる。
【0072】
上記の実施形態では、注排水機構36を備えている。この構成によれば、バラストタンクセルR2a~R2qごとに注水すること、及び排水することができる。
【0073】
上記の実施形態では、入出力口30cと、複数の入出力口32eと、を有する。この構成によれば、外殻30の周囲に存在する水を浮力調整領域R2Aに取り込むことができる。また、バラストタンクセルR2a~R2qに貯められた水を外殻30の周囲に排出することができる。
【0074】
本開示は、前述した実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0075】
分割壁39は、タンク形成面31e、31fのみによって構成されてもよい。この場合、分割壁39は、高い強度、及び高い水密性を確保することができる。
【0076】
連結部4の上部には、中央ポッドが接続されていてもよい。この場合、発電ポッド3の内部に収容することができない装置を中央ポッドに収容することができる。
【0077】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の目標14.海の豊かさを守ろう「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する。」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 海流発電システム
2 水中浮遊式発電装置
3 発電ポッド
30 外殻
30c 入出力口(第1入出力口)
31 トランスリング(補強部材)
32 仕切り板
32e 入出力口(第2入出力口)
35 発電機(搭載機器)
36 注排水機構
37 制御装置(搭載機器)
R2a,R2b,R2c,R2d,R2e,R2f,R2g,R2h,R2i,R2j,R2k,R2p,R2q バラストタンクセル
39 分割壁
39a 分割壁片
R1 機器収容領域
R2 浮力調整領域
S 内部空間