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特開2023-183110車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターの配設構造
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  • 特開-車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターの配設構造 図1
  • 特開-車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターの配設構造 図2
  • 特開-車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターの配設構造 図3
  • 特開-車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターの配設構造 図4
  • 特開-車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターの配設構造 図5
  • 特開-車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターの配設構造 図6
  • 特開-車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターの配設構造 図7
  • 特開-車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターの配設構造 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183110
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターの配設構造
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/60 20180101AFI20231220BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20231220BHJP
   F21V 29/90 20150101ALI20231220BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20231220BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20231220BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20231220BHJP
【FI】
F21S45/60
F21S41/20
F21V29/90
F21V3/00 340
F21W102:155
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096556
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】近江 武史
(72)【発明者】
【氏名】渥美 樹
(57)【要約】
【課題】車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターにおいて、配光性能を改善させる配設構造を提供する。
【解決手段】アウターレンズ2は、インナーレンズ33と対向する第1領域21と、第1領域以外の第2領域22を含む。第1領域21は、インナーレンズ33の中心部と対向する第3領域23を含む。ヒーター11は、通電により発熱する熱線12を備え、熱線12は、第1領域21に配設される第1部分13と、第2領域22に配設される第2部分14と、を含む。第1部分13が第3領域23に配設される面密度が、第2部分14が第2領域22に配設される面密度よりも小さくなるように配設する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターの配設構造であって、
前記ヒーターが、通電により発熱する熱線を含み、
前記車両用灯具が、光源光を配光する配光手段を含み、
前記アウターレンズが、前記配光手段と対向する第1領域と、前記第1領域以外の第2領域と、を含み、
前記第1領域が、前記配光手段の中心部と対向する第3領域を含み、
前記熱線が、前記第1領域に配設される第1部分と、前記第2領域に配設される第2部分と、を含み、
前記第2部分同士は、互いに平行に配設され、
前記第1部分が前記第3領域に配設される面密度は、前記第2部分が前記第2領域に配設される面密度よりも小さいことを特徴とするヒーターの配設構造。
【請求項2】
前記車両用灯具が、ランプユニットを含み、
前記配光手段は、前記ランプユニットのインナーレンズであり、
前記インナーレンズ及び前記第3領域は、前記車両用灯具の正面視において円形に設けられ、
前記第3領域の半径は、前記インナーレンズの半径の1/2以下である請求項1に記載のヒーターの配設構造。
【請求項3】
前記第1部分が、前記第3領域を迂回する湾曲部を含む、請求項1又は2に記載のヒーターの配設構造。
【請求項4】
前記第1部分は、前記第2部分よりも幅狭に設けられた請求項1又は2に記載のヒーター配設構造。
【請求項5】
前記第1部分は、前記第2部分よりも幅狭かつ肉厚に設けられた請求項1又は2に記載のヒーターの配設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具のアウターレンズにおいて、融雪ヒーターとして機能する熱線の配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用灯具の構成要素として、赤外線を放出しないLED光源が多く採用されている。LED光源やPESレンズは、灯具の温度上昇を抑制できるという利点があるが、反面、灯具表面に積もった雪が溶けにくいという難点があった。
【0003】
この難点を解消すべく、アウターレンズ全域に熱線を這い回し、通電により熱線を発熱させ、アウターレンズに積もった雪を融雪する融雪ヒーターの技術が知られている。例えば、特許文献1には、レンズの内側に略透明な熱可撓性基板を設け、該熱可撓性基板に導電性インク回路(熱線)を配設し、該導電性インク回路に通電してレンズを加熱するレンズヒーターの技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開特開2020-205234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図6に示すように、従来の技術によれば、ヒーターの熱線12により光源からの光Lが遮光されたり、熱線12の縁部12a付近で光の散乱が生じたりし、図7に示すように、特に、領域Xにおいて、Loビームのカットオフ・ラインC付近でグレアが増加するという問題があった。また、熱線12により遮光され、Lo/Hiビーム共に、遠方の視認性が低下するという問題もあった。図8に、熱線無しの場合(破線)と、熱線有りの場合(実線)とを比較した「Loビームの路面等照度曲線シミュレーション」のグラフを示す。この比較結果によれば、明らかに、熱線による遮光によって遠方視認性が低下していることがわかる。
【0006】
そこで、本開示の目的は、配光性能を改善可能なヒーターの配設構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のヒーターの配設構造は、以下の特徴を備える。
(1)車両用灯具のアウターレンズに配設されるヒーターの配設構造であって、ヒーターが、通電により発熱する熱線を含み、車両用灯具が、光源光を配光する配光手段を含み、アウターレンズが、配光手段と対向する第1領域と、第1領域以外の第2領域と、を含み、第1領域が、配光手段の中心部と対向する第3領域を含み、熱線が、第1領域に配設される第1部分と、第2領域に配設される第2部分と、を含み、第2部分同士は、互いに平行に配設され、第1部分が第3領域に配設される面密度は、第2部分が第2領域に配設される面密度よりも小さいこと。
【0008】
(2)(1)の特徴を備えたヒーターの配設構造であって、車両用灯具が、ランプユニットを含み、配光手段は、ランプユニットのインナーレンズであり、インナーレンズ及び第3領域は、車両用灯具の正面視において円形に設けられ、第3領域の半径は、インナーレンズの半径の1/2以下であること。
【0009】
(3)(1)又は(2)の特徴を備えたヒーターの配設構造であって、第1部分が、第3領域を迂回する湾曲部を含むこと。
【0010】
(4)(1)又は(2)の特徴を備えたヒーターの配設構造であって、第1部分は、第2部分よりも幅狭に設けられたこと。
【0011】
(5)(4)の特徴を備えたヒーターの配設構造であって、第1部分は、第2部分よりも幅狭かつ肉厚に設けられたこと。
【発明の効果】
【0012】
本開示のヒーターの配設構造によれば、第1部分が第3領域に配設される面密度を、第2部分が第2領域に配設される面密度よりも小さくなるように構成したため、言い換えると、第3領域の光の遮蔽率は第2領域の光の遮蔽率が低くなるように配設した。このため、配光に寄与し得る範囲、特に、配光に寄与する主要な範囲において、車両用灯具の配光性能の低下を防止できるいう効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施形態を示すヘッドランプの(a)正面図、(b)A-A線端面図である。
図2】アウターカバーのヒーターの配設構造を示す図1の要部を拡大した模式図である。
図3】アウターカバーのヒーターの配設構造を示す図1の要部を拡大した模式図である。
図4】アウターカバーのヒーターの配設構造を示す図1の要部を拡大した模式図である。
図5】アウターカバーのヒーターの配設構造の変形例を示す図1の要部を拡大した模式図である。
図6】従来のヒーターの配設構造を示す図1の要部を拡大した模式図である。
図7】ヘッドランプのグレアが発生する可能性のある視野を示す模式図である。
図8】Loビームの路面等照度曲線シミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示をヘッドランプに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すヘッドランプ1は、主にトラック等の大型車両51(図7参照)に採用されるヘッドランプであって、車体に取り付けられる灯具ボディ6と、透明樹脂材料からなるアウターレンズ2と、を備える。アウターレンズ2と灯具ボディ6とは周縁部で密封され、両者の内側には灯室7が形成されている。
【0015】
灯室7内には、HL(ヘッドランプ)ユニット3と、SL(シグナルランプ)ユニット4と、フォグランプユニット5と、が配置されている。HLユニット3は、HL用のLED光源31、リフレクタ32、インナーレンズ33、ソケット(図示なし)等を備え、エイミング機構(図示なし)を介して灯具ボディ6に傾動可能に支持されている。インナーレンズ33は、PES(ポリカーボネート)材からなり、LED光源31の光Lを車両外部に配光する配光手段として機能する。なお、インナーレンズ33には、他の透明樹脂材料を採用することも可能である。
【0016】
アウターレンズ2は、灯室内側に配設されたヒーター11(12,15)を備える。ヒーター11は、導電性インク回路であり、熱線12と、熱線12に電力を供給するコネクタ15と、を備える。熱線12は、通電により発熱する導電性インク等を好ましく採用できる。ヒーター11の製法としては、例えば、アウターレンズ2の灯室内側面に銀ペーストをディスペンサーで塗布し、その後に熱硬化させる方式等を採用できる。熱線12は、アウターレンズ2の所定の範囲を這い回すように配設され、熱線12の両端部は、コネクタ15と接続されている。ヒーターを配設する範囲は、適宜変更可能である。
【0017】
図2~4に示すように、アウターレンズ2は、インナーレンズ33と対向する第1領域21と、第1領域以外の領域である第2領域22と、を備える。第1領域21は、インナーレンズ33の中心部と対向する第3領域23を含む。ここで、第1領域21は、配光に寄与し得る範囲であり、第2領域22は、配光に寄与しない範囲である。また、第3領域23は、配光に寄与する主要な範囲である。第3領域23は、特に配光性能の低下を抑制したい領域である。例えば、第3領域23を、インナーレンズ33の半径1/2以下の大きさとした場合には、発熱性能と配光性能の両立を図ることができる。
【0018】
熱線12は、第1領域21に配設される第1部分13と、第2領域22に配設される第2部分14と、を備える。第2部分14は、第2領域22の端部で折り返され、互いに平行に配設されている。熱線12の間隔(ピッチ)は、熱線12の太さが1mm程度の場合は10~12mm程度が好ましく、熱線12の太さが0.5mm程度の場合は6~8mm程度が好ましい。熱線12をこのように配設することで、40~60度の温度上昇を実現している。
【0019】
熱線12の第1部分13は、第3領域23を迂回するように湾曲する湾曲部13aを有する。湾曲部13aの頂点と水平位置との間の距離dは、4.5mm(図2参照)~6mm(図3参照)程度とすることができる。湾曲部13aの曲率はインナーレンズ33の曲率と同じ程度に設けることが好ましく、例えば、R30mmが好適である。さらなる配光性能を確保したい場合には、図4に示すように、第1領域21の周縁部のみに熱線12を設けることも可能である。
【0020】
以上の構成のヒーター11の配設構造によれば、第1部分13を、第3領域23を迂回するように配設したため、第3領域23に配設される熱線12(第1部分13)の面密度は、第2領域22に配設される熱線12(第2部分14)の面密度よりも小さくなる。このため、第3領域23において、熱線12による遮光、熱線表面による光の散乱が抑制され、Loビームのカットオフ・ライン付近のグレアを低減することができる。
【0021】
続いて、本開示のヒーターの配設構造の変形例について説明する。図5に示すように、熱線12の第1部分13の幅w1を、第2部分14の幅w2と比べて幅狭に設けることができる。例えば、第2部分14が太さ1mmの熱線12である場合、第1部分13をw2の1/2の太さ0.5mmとすることができる。第1部分13を幅狭に設けたため、第1領域21に配設される熱線12(第1部分13)の面密度は、第2領域22に配設される熱線12(第2部分14)の面密度よりも小さくなる。このため、第1領域21において、インナーレンズ33を経た光Lの透過を阻害せず、配光性能を改善することができる。
【0022】
このとき、さらに、第1部分13の厚みhを肉厚に設けることが好ましい。ここで、「肉厚」とは、灯室7の内側に向けて嵩高となる状態を言う。例えば、第1部分13の厚みh1を第2部分14の厚みh2の2倍とすることができる。第1部分13と第2部分14との間で断面積に偏りがあると、通電時の抵抗値に偏りが生じ、幅狭の第1部分13において高負荷がかかり、断線するおそれがある。第1部分13を幅狭かつ肉厚に配設することにより、第1部分13と第2部分14との間の抵抗値を均一化し、異常発熱や熱線12の断線を防止するとともに、熱線12の耐久性を向上させることができる。
【0023】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。例えば、ヘッドランプ1の非点灯時にも、ヒーター11をONにすることも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 ヘッドランプ
2 アウターレンズ
3 HLユニット
4 SLユニット
5 フォグランプユニット
6 灯具ボディ
7 灯室
11 ヒーター
12 熱線(a:縁部)
13 第1部分(a:湾曲部)
14 第2部分
15 コネクタ
21 第1領域
22 第2領域
23 第3領域
31 LED光源
32 リフレクタ
33 インナーレンズ
51 車両
L 光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8