(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183113
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】動翼、及びこれを備えているガスタービン
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
F01D5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096561
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】仁内 隆志
(72)【発明者】
【氏名】宮久 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 俊介
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202CA08
3G202CB02
3G202JJ02
3G202JJ19
3G202JJ27
(57)【要約】
【課題】冷却空気の使用量を抑えつつも、動翼の耐久性を高める。
【解決手段】動翼の冷却空気通路は、冷却空気が流入可能な主通路と、翼面中で前側を向く部分である前縁周り部から冷却空気を噴出可能な複数の前噴出孔と、翼体の負圧面で開口している翼面噴出口を有し、冷却空気を前記翼面噴出口から翼面に沿って噴出可能な複数のフィルム孔と、を有する。前記主通路は、前記翼体内で前記翼高さ方向に延びる3以上の奇数個の翼内通路を有する。前記複数の前噴出孔は、奇数個の前記翼内通路のうちで最も前側の第一翼内通路に連通している。前記複数のフィルム孔は、奇数個の前記翼内通路のうち、前記第一翼内通路に隣接する第二翼内通路に連通している。前記翼体における前記翼高さ方向の中央位置を基準にして、前記ハブ側の単位面積当たりの前記翼面噴出口の面積である開口率が、前記チップ側の単位面積当たりの前記翼面噴出口の面積である開口率より高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向に延びる翼体と、
前記翼高さ方向におけるチップ側とハブ側とうち、前記翼体の前記ハブ側の端に設けられているプラットフォームと、
前記プラットフォームの前記ハブ側に設けられている翼根と、
前記翼根、前記プラットフォーム及び前記翼体にかけて形成され、冷却空気が流通可能な冷却空気通路と、
を備え、
前記翼体は、前記翼高さ方向に対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面と、前記翼高さ方向における前記チップ側を向くチップ面と、を有し、
前記翼面は、前記翼高さ方向に延びる前縁及び後縁と、前記前縁から前記後縁にまで広がっている正圧面及び負圧面と、を有し、
前記冷却空気通路は、
前記翼根の表面で開口して冷却空気が流入可能な入口を有する主通路と、
前記翼面中で、前記前縁を含み且つ前記後縁に対して前記前縁の側である前側を向く部分である前縁周り部で開口している前噴出口を有し、前記主通路を通ってきた冷却空気を前記前噴出口から噴出可能な複数の前噴出孔と、
前記翼面中で、前記前縁周り部を除き、且つ前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方の翼面で開口している翼面噴出口を有し、前記主通路を通ってきた冷却空気を前記翼面噴出口から前記少なくとも一方の翼面に沿って外部に噴出可能な複数のフィルム孔と、
を有し、
前記主通路は、前記入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている導入通路部と、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる3以上の奇数個の翼内通路を有する翼体冷却通路部と、を有し、
奇数個の前記翼内通路は、前記翼体のキャンバーラインに沿って、前記導入通路部から前記前側に並び、
前記翼体冷却通路部が前記翼高さ方向に通路がうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、奇数個の前記翼内通路のうちで互に隣り合う翼内通路は、前記ハブ側の端と前記チップ側の端とのうち、一方の端で互いに連通し、
前記複数の前噴出孔は、奇数個の前記翼内通路のうちで、最も前記前側の第一翼内通路に連通し、
前記複数のフィルム孔は、奇数個の前記翼内通路のうち、前記第一翼内通路と、前記第一翼内通路に隣接する第二翼内通路との少なくとも一の翼内通路に連通し、
前記翼体における前記翼高さ方向の中央位置を基準にして、前記ハブ側の単位面積当たりの前記翼面噴出口の面積である開口率が、前記チップ側の単位面積当たりの前記翼面噴出口の面積である開口率より高い、
動翼。
【請求項2】
請求項1に記載の動翼において、
前記翼面噴出口の数は、前記翼体における前記翼高さ方向の中央位置を基準にして前記チップ側よりも前記ハブ側の方が多い、
動翼。
【請求項3】
請求項1に記載の動翼において、
前記翼面噴出口は、前記翼体における前記翼高さ方向の中央位置を基準にして前記ハブ側にのみ存在し、前記チップ側には存在しない、
動翼。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の動翼において、
前記複数のフィルム孔は、奇数個の前記翼内通路のうち、前記第一翼内通路のみに連通している、
動翼。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の動翼において、
前記翼面噴出口は、前記負圧面のみに形成されている、
動翼。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の動翼において、
前記翼体における前記翼高さ方向の中央位置を基準にして、前記チップ側の単位面積当たりの前記前噴出口の面積である開口率が、前記ハブ側の単位面積当たりの前記前噴出口の面積である開口率より高い、
動翼。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載の動翼において、
前記冷却空気通路は、前記第一翼内通路の前記チップ側の端と連通し、前記第一翼内通路内を通ってきた冷却空気を前記チップ面から噴出可能なチップ抜き孔を有する、
動翼。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一項に記載の動翼において、
前記冷却空気通路である第一冷却空気通路の他に、前記翼根、前記プラットフォーム及び前記翼体にかけて形成され、冷却空気が流通可能な第二冷却空気通路を備え、
前記第二冷却空気通路は、
前記第一冷却空気通路を基準にして、前記前縁に対して前記後縁の側である後側に配置され、
前記翼根の表面で開口して冷却空気が流入可能な入口を有する主通路と、
前記主通路を通ってきた冷却空気を、前記後縁から外部に噴出可能な後噴出口を有する複数の後噴出孔、
を有し、
前記第二冷却空気通路における前記主通路は、前記第二冷却空気通路における前記入口から前記プラットフォームと前記翼体の境まで延びている導入通路部と、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる複数個の翼内通路を有する翼体冷却通路部と、を有し、
前記第二冷却空気通路における複数個の前記翼内通路は、前記翼体のキャンバーラインに沿って、前記第二冷却空気通路における前記導入通路部から前記後側に並び、
前記第二冷却空気通路における前記翼体冷却通路部が前記翼高さ方向に通路がうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、前記第二冷却空気通路における複数個の前記翼内通路のうち、互に隣り合う翼内通路は、前記ハブ側の端と前記チップ側の端とのうち、一方の端で互いに連通し、
前記複数の後噴出孔は、前記第二冷却空気通路における複数個の前記翼内通路のうちで、最も前記後側の最後部翼内通路に連通している、
動翼。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一項に記載の動翼を複数備えると共に、
軸線を中心として回転可能で、複数の前記動翼が前記軸線に対する周方向に並んで取り付けられているロータ軸と、
複数の前記動翼及び前記ロータ軸の外周側を覆うタービンケーシングと、
を備え、
前記動翼は、前記翼高さ方向が、前記軸線に対する径方向になり、前記ハブ側が前記軸線に対する径方向における径方向内側と径方向外側とのうちの前記径方向外側になり、前記前側が、前記軸線が延びる軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうちの前記軸線上流側になるよう、前記ロータ軸に取り付けられている、
ガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動翼、及びこれを備えているガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼ガスで駆動するタービンと、を備える。タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、このロータを覆うタービンケーシングと、複数の静翼列と、を備える。タービンロータは、軸線を中心とするロータ軸と、ロータ軸に取り付けられている複数の動翼列と、を有する。複数の動翼列は、軸線が延びる軸線方向に並んでいる。各動翼列は、いずれも、軸線に対する周方向に並ぶ複数の動翼を有する。複数の静翼列は、軸線方向に並んで、タービンケーシングの内周側に取り付けられている。複数の静翼列のそれぞれは、複数の動翼列のうちのいずれか一の動翼列の軸線上流側に配置されている。各静翼列は、いずれも、軸線に対する周方向に並ぶ複数の静翼を有する。
【0003】
動翼は、一般的に、翼体と、プラットフォームと、翼根と、を有する。翼体は、軸線に対する径方向に垂直な断面が翼形を成し、径方向に延びている。プラットフォームは、翼体の径方向内側に端に設けられている。翼根は、プラットフォームの径方向内側に設けられている。この翼根は、動翼をロータ軸に取り付ける部分である。
【0004】
ガスタービンの動翼は、高温の燃焼ガスに晒される。このため、動翼は、一般的に、空気等で冷却される。
【0005】
例えば、以下の特許文献1に記載の動翼は、静翼の翼体には、冷却空気が流通可能な二つの冷却空気通路が形成されている。二つの冷却空気通路は、いずれも、翼根の表面で開口して冷却空気が流入可能な入口を有する主通路と、主通路を通ってきた冷却空気を翼体の端部から外部に噴出可能な複数の端部孔と、を有する。各冷却空気通路の主通路は、翼根の入口からプラットフォームと翼体との境まで延びている導入通路部と、翼体内で径方向に延びる3つの翼内通路を有する翼体冷却通路部と、を有する。三つの翼内通路は、翼体のキャンバーラインに沿って並んでいる。翼体冷却通路部が径方向に通路がうねって一つのサーペンタイン通路を構成するよう、3つの翼内通路のうち、互に隣り合う翼内通路は、径方向内側の端と径方向外側の端とのうち、一方の端で互いに連通している。二つの冷却空気通路のうち、第一冷却空気通路は、翼体中の前側に配置され、第二冷却空気通路は、翼体中の後側に配置されている。第一冷却空気通路が有する3つの翼内通路のうち、最も前側の翼内通路には、前述した複数の端部孔としての複数の前噴出孔が連通している。複数の前噴出孔は、翼面中で前縁を含む前縁周り部で開口している。また、第二冷却空気通路が有する3つの翼内通路のうち、最も後側の翼内通路には、前述した複数の端部孔としての複数の後噴出孔が連通している。複数の後噴出孔は、翼体の後縁で開口している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高温の燃焼ガスに晒されるガスタービンの動翼には、冷却空気の使用量を抑えつつ、耐久性を高めることが求められる。
【0008】
そこで、本開示は、冷却空気の使用量を抑えつつも、耐久性を高めることができる動翼、及びこの動翼を備えるガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための発明に係る一態様の動翼は、
断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向に延びる翼体と、前記翼高さ方向におけるチップ側とハブ側とうち、前記翼体の前記ハブ側の端に設けられているプラットフォームと、前記プラットフォームの前記ハブ側に設けられている翼根と、前記翼根、前記プラットフォーム及び前記翼体にかけて形成され、冷却空気が流通可能な冷却空気通路と、を備える。前記翼体は、前記翼高さ方向に対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面と、前記翼高さ方向における前記チップ側を向くチップ面と、を有する。前記翼面は、前記翼高さ方向に延びる前縁及び後縁と、前記前縁から前記後縁にまで広がっている正圧面及び負圧面と、を有する。前記冷却空気通路は、前記翼根の表面で開口して冷却空気が流入可能な入口を有する主通路と、前記翼面中で、前記前縁を含み且つ前記後縁に対して前記前縁の側である前側を向く部分である前縁周り部で開口している前噴出口を有し、前記主通路を通ってきた冷却空気を前記前噴出口から噴出可能な複数の前噴出孔と、前記翼面中で、前記前縁周り部を除き、且つ前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方の翼面で開口している翼面噴出口を有し、前記主通路を通ってきた冷却空気を前記翼面噴出口から前記少なくとも一方の翼面に沿って外部に噴出可能な複数のフィルム孔と、を有する。前記主通路は、前記入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている導入通路部と、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる3以上の奇数個の翼内通路を有する翼体冷却通路部と、を有する。奇数個の前記翼内通路は、前記翼体のキャンバーラインに沿って、前記導入通路部から前記前側に並んでいる。前記翼体冷却通路部が前記翼高さ方向に通路がうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、奇数個の前記翼内通路のうちで互に隣り合う翼内通路は、前記ハブ側の端と前記チップ側の端とのうち、一方の端で互いに連通している。前記複数の前噴出孔は、奇数個の前記翼内通路のうちで、最も前記前側の第一翼内通路に連通している。前記複数のフィルム孔は、奇数個の前記翼内通路のうち、前記第一翼内通路と、前記第一翼内通路に隣接する第二翼内通路との少なくとも一の翼内通路に連通している。前記翼体における前記翼高さ方向の中央位置を基準にして、前記ハブ側の単位面積当たりの前記翼面噴出口の面積である開口率が、前記チップ側の単位面積当たりの前記翼面噴出口の面積である開口率より高い。
【0010】
本態様では、冷却空気通路における主通路の入口から主通路内に流入した冷却空気が、主通路の導入通路部を経て、主通路の翼体冷却通路部内に流入する。冷却空気は、この翼体冷却通路部における3以上の奇数個の翼内通路内を流れる過程で、各翼内通路周りを対流冷却する。3以上の奇数個の翼内通路内を流れる冷却空気の一部は、複数のフィルム孔から正圧面又は負圧面に沿って外部に噴出される。この冷却空気の一部は、複数のフィルム孔内を流れる過程で、フィルム孔周りを対流冷却する。さらに、複数のフィルム孔から噴出された冷却空気は、正圧面又は負圧面をフィルム冷却する。3以上の奇数個の翼内通路のうち、最も前側で、冷却空気の流れの下流側に位置する第一翼内通路に流入した冷却空気の一部は、複数の前噴出孔から外部に噴出される。この冷却空気の一部は、複数の前噴出孔内を流れる過程で、前噴出孔周りを対流冷却する。さらに、複数の前噴出孔から噴出された冷却空気は、翼面の一部である前縁周り部に高温の燃焼ガスが直接衝突するのを抑制する。
【0011】
ところで、正圧面と負圧面との間隔である翼幅は、翼体のチップ側からハブ側に向かうに連れて次第に大きくなる。また、翼内通路の内面と翼面との間隔は、翼面を冷却する観点から、所定の範囲内の間隔である。この関係で、翼高さ方向に延びる複数の翼内通路の幅も、翼体のチップ側からハブ側に向かうに連れて次第に大きくなる。翼内通路の幅が、翼体のチップ側からハブ側に向かうに連れて次第に大きくなっていると、この翼内通路を流れる冷却空気の流速は、チップ側よりもハブ側の方が低くなる。このため、翼内通路のハブ側の部分を流れる冷却空気と翼体との間の熱伝達率は、この翼内通路のチップ側の部分を流れる冷却空気と翼体との間の熱伝達率よりも低くなる。従って、翼内通路を流れる冷却空気による対流冷却効果は、翼体のハブ側の部分で低くなる。
【0012】
そこで、本態様では、翼体における前記翼高さ方向の中央位置を基準にして、ハブ側の単位面積当たりの翼面噴出口の面積である開口率を、チップ側の単位面積当たりの翼面噴出口の面積である開口率より高くして、ハブ側の部分でのフィルム冷却効果を向上させて、動翼50の耐久性を高めている。
【0013】
また、本態様において、複数のフィルム孔に流入する冷却空気は、3以上の奇数個の翼内通路のうち、最も後側の翼内通路から少なくとも第二翼内通路の下流側部分まで流れてきた冷却空気で、既に、ある程度加熱された冷却空気である。なお、ここでの下流側とは冷却空気の流れの下流側である。本態様では、このように、ある程度加熱されて対流冷却効果が低くなった冷却空気をフィルム冷却用の空気として利用するため、冷たい冷却空気を無駄にせず、効率的に翼面を冷却することができる。さらに、本態様において、複数の前噴出孔に流入する冷却空気は、3以上の奇数個の翼内通路のうち、最も後側の翼内通路から第一翼内通路まで流れてきた冷却空気で、既に、かなり加熱された冷却空気である。なお、ここでの上流側とは冷却空気の流れの下流側である。本態様では、このように、かなり加熱されて対流冷却効果が低くなった冷却空気を、翼面の一部である前縁周り部の冷却用の空気として利用するため、冷たい冷却空気を無駄にせず、効率的に翼面を冷却することができる。
【0014】
よって、本態様では、冷却空気の使用量を抑えつつも、動翼の耐久性を高めることができる。
【0015】
前記目的を達成するための発明に係る一態様のガスタービンは、
前記一態様における動翼を複数備えると共に、軸線を中心として回転可能で、複数の前記動翼が前記軸線に対する周方向に並んで取り付けられているロータ軸と、複数の前記動翼及び前記ロータ軸の外周側を覆うタービンケーシングと、を備える。前記動翼は、前記翼高さ方向が前記軸線に対する径方向になり、前記ハブ側が前記軸線に対する径方向における径方向内側と径方向外側とのうちの前記径方向外側になり、前記前側が前記軸線が延びる軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうちの前記軸線上流側になるよう、前記ロータ軸に取り付けられている。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様によれば、冷却空気の使用量を抑えつつも、動翼の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービンの模式的な断面図である。
【
図2】本開示に係る第一実施形態における動翼の斜視図である。
【
図3】本開示に係る第一実施形態における動翼の側面図(動翼を負圧面側から見た側面図)である。
【
図4】本開示に係る第一実施形態における動翼の断面図である。
【
図7】本開示に係る第二実施形態における動翼の側面図(動翼を負圧面側から見た側面図)である。
【
図8】
図7におけるVIII-VIII線断面図である。
【
図9】本開示に係る第三実施形態における動翼の側面図(動翼を正圧面側から見た側面図)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の静翼、及びこの静翼を備えるガスタービンの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
「ガスタービンの実施形態」
ガスタービンの実施形態について、
図1を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のガスタービン10は、空気Aを圧縮する圧縮機20と、圧縮機20で圧縮された空気A中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスGを生成する燃焼器30と、燃焼ガスGにより駆動するタービン40と、を備えている。
【0021】
圧縮機20は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ21と、圧縮機ロータ21を覆う圧縮機ケーシング25と、複数の静翼列26と、を有する。タービン40は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ41と、タービンロータ41を覆うタービンケーシング45と、複数の静翼列46と、を有する。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸線方向Daの一方側を軸線上流側Dau、その反対側を軸線下流側Dadとする。また、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。
【0022】
圧縮機20は、タービン40に対して軸線上流側Dauに配置されている。
【0023】
圧縮機ロータ21とタービンロータ41とは、同一軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ11を成す。このガスタービンロータ11には、例えば、発電機GENのロータが接続されている。ガスタービン10は、さらに、中間ケーシング14を備える。この中間ケーシング14は、軸線方向Daで、圧縮機ケーシング25とタービンケーシング45との間に配置されている。圧縮機ケーシング25と中間ケーシング14とタービンケーシング45とは、互いに接続されてガスタービンケーシング15を成す。
【0024】
圧縮機ロータ21は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸22と、このロータ軸22に取り付けられている複数の動翼列23と、を有する。複数の動翼列23は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列23は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列23の各軸線下流側Dadには、複数の静翼列26のうちのいずれか一の静翼列26が配置されている。各静翼列26は、圧縮機ケーシング25の内側に設けられている。各静翼列26は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0025】
タービンロータ41は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸42と、このロータ軸42に取り付けられている複数の動翼列43と、を有する。複数の動翼列43は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列43は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列の各軸線上流側Dauには、複数の静翼列46のうちのいずれか一の静翼列46が配置されている。各静翼列46は、タービンケーシング45の内側に設けられている。各静翼列46は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0026】
燃焼器30は、中間ケーシング14に取り付けられている。
【0027】
圧縮機20は、空気Aを圧縮して圧縮空気を生成する。この圧縮空気は、燃焼器30内に流入する。燃焼器30には、燃料Fが供給される。燃焼器30内では、圧縮空気中で燃料Fが燃焼して、高温高圧の燃焼ガスGが生成される。この燃焼ガスGは、燃焼器30からタービンケーシング45内の環状の燃焼ガス流路49に送られる。燃焼ガスGは、燃焼ガス流路49内を軸線下流側Dadへ流れる過程で、タービンロータ41を回転させる。このタービンロータ41の回転で、ガスタービンロータ11に接続されている発電機GENのロータが回転する。この結果、発電機GENは発電する。
【0028】
以下、タービン40の初段の動翼列43を構成する動翼に関する実施形態、及びその変形例について説明する。
【0029】
「動翼の第一実施形態」
動翼の第一実施形態について、
図2~
図6を参照して説明する。
【0030】
図2及び
図3に示すように、本実施形態における動翼50は、翼体51と、プラットフォーム58と、翼根59と、第一冷却空気通路60と、第二冷却空気通路80と、を備える。
【0031】
翼体51は、断面が翼形を成し、断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向Dhに延びている。この翼体51は、翼高さ方向Dhに対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面52と、翼高さ方向Dhにおけるチップ側Dhtとハブ側Dhhとのうち、チップ側Dhtを向くチップ面55と、を有する。翼面52は、翼高さ方向Dhに延びる前縁53f及び後縁53bと、前縁53fから後縁53bにまで広がっている正圧面54p及び負圧面54nと、を有する。正圧面54pと負圧面54nとは、互に背合わせの関係である。正圧面54pは、凹曲面であり、負圧面54nは凸曲面である。
【0032】
この動翼50を前述のロータ軸42に取り付けると、翼高さ方向Dhが径方向Drになり、チップ側Dhtが径方向外側Droになり、ハブ側Dhhが径方向内側Driになる。また、後縁53bに対して前縁53fが存在する前側Dfが軸線上流側Dauになり、前縁53fに対して後縁53bが存在する後側Dbが軸線下流側Dadになる。さらに、正圧面54pと負圧面54nとが並んでいる方向が周方向Dcになる。また、この動翼50をロータ軸42に取り付けると、翼体51が燃焼ガス流路49中に位置することになる。
【0033】
プラットフォーム58は、翼体51のハブ側Dhhに設けられている。このプラットフォーム58は、翼高さ方向Dhである径方向Drに垂直な方向の方向成分を含む方向に広がる四角板状の部材である。
【0034】
翼根59は、プラットフォーム58のハブ側Dhhに設けられている。この翼根59は、動翼50をロータ軸42に取り付けるための部分である。この翼根59は、断面形状がクリスマスツリー形状を成している。
【0035】
第一冷却空気通路60及び第二冷却空気通路80は、いずれも、翼根59、プラットフォーム58及び翼体51にかけて形成され、冷却空気Acが流通可能な通路である。第二冷却空気通路80は、動翼50中で、第一冷却空気通路60よりも後側Dbに配置されている。
【0036】
第一冷却空気通路60は、主通路61と、チップ抜き孔71と、複数の前噴出孔72と、複数のフィルム孔74と、を有する。主通路61は、翼根59の底面59bで開口し、ロータ軸42からの冷却空気Acが流入可能な入口63を有する。なお、翼根59の底面59bとは、翼根59の表面中で、最もハブ側Dhhに位置しハブ側Dhhを向く面である。この主通路61は、入口63から翼高さ方向Dhにプラットフォーム58と翼体51との境まで延びている導入通路部62と、翼体51内で、翼高さ方向Dhに延びる3個の翼内通路66を有する翼体冷却通路部65と、を有する。
【0037】
3個の翼内通路66は、翼体51のキャンバーラインCLに沿って、導入通路部62から前側Dfに並んでいる。ここで、3個の翼内通路66のうち、最も前側Dfの翼内通路66を第一翼内通路66a、この第一翼内通路66aに隣接する翼内通路66を第二翼内通路66b、最も後側Dbの翼内通路66であって第二翼内通路66bに隣接する翼内通路66を第三翼内通路66cとする。第三翼内通路66cは、導入通路部62から翼高さ方向Dhに延びている。
【0038】
翼体冷却通路部65は、翼高さ方向Dhに通路がうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、3個の翼内通路66のうちで互に隣り合う翼内通路66が、ハブ側Dhhの端とチップ側Dhtの端とのうち、一方の端で互いに連通している。具体的に、第三翼内通路66cのチップ側Dhtの端と第二翼内通路66bのチップ側Dhtの端とが連通し、第二翼内通路66bのハブ側Dhhの端と第一翼内通路66aのハブ側Dhhの端とが連通している。
【0039】
チップ抜き孔71は、第一翼内通路66aのチップ側Dhtの端と連通し、チップ面55で開口している。
【0040】
複数の前噴出孔72は、いずれも、翼面52中で、前縁53fを含み且つ前側Dfを向く部分である前縁周り部56で開口している前噴出口73を有する。この前縁周り部56は、翼面52中で、前縁53fから正圧面54pに沿って後側Dbに所定の距離までの範囲と、前縁53fから負圧面54nに沿って後側Dbに所定の距離までの範囲とを合わせた範囲の部分である。ここで、所定の距離とは、例えば、正圧面54p(又は負圧面54n)に沿って前縁53fから後縁53bまでの距離の例えば1/20の距離である。複数の前噴出孔72は、いずれも、第一翼内通路66aに連通し、この第一翼内通路66aから所定の方向に延びて、翼面52中の前縁周り部56で開口している。ここで、所定の方向とは、前噴出口73の位置における翼面52の接線と平行な方向の成分よりも、前噴出口73の位置における翼面52の法線と平行な方向の成分の方が多い方向である。
【0041】
複数の前噴出孔72毎の前噴出口73は、前縁周り部56におけるハブ側Dhhからチップ側Dhtにかけて形成されている。但し、前縁周り部56における翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、チップ側Dhtの部分における単位面積当たりの前噴出口73の面積である開口率は、ハブ側Dhhの部分における単位面積当たりの前噴出口73の面積である開口率より高い。具体的に、本実施形態では、前縁周り部56における翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、チップ側Dhtの前噴出口73の数が、ハブ側Dhhの前噴出口73の数より多い。
【0042】
複数のフィルム孔74は、いずれも、翼面52中で、前縁周り部56を除き、且つ正圧面54pと負圧面54nとのうち少なくとも一方の翼面52で開口する翼面噴出口75を有する。複数のフィルム孔74は、いずれも、3つの翼内通路66のうち、少なくとも一つの翼内通路66に連通し、この翼内通路66から所定の方向に延びて、前述の少なくとも一方の翼面52で開口している。ここで、所定の方向とは、翼面噴出口75の位置における翼面52の法線と平行な方向の成分よりも、翼面噴出口75の位置における翼面52の接線と平行な方向の成分の方が多い方向で、且つ後側Dbに向かう方向である。なお、本実施形態における複数のフィルム孔74は、第二翼内通路66bに連通し、その翼面噴出口75は、いずれも、負圧面54nのみで開口している。
【0043】
前述の少なくとも一方の翼面52における翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、ハブ側Dhhの部分における単位面積当たりの翼面噴出口75の面積である開口率は、チップ側Dhtの部分における単位面積当たりの翼面噴出口75の面積である開口率より高い。具体的に、本実施形態では、前述の少なくとも一方の翼面52における翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、ハブ側Dhhの部分における翼面噴出口75の数が、チップ側Dhtの部分における翼面噴出口75の数より多い。より具体的に、本実施形態では、ハブ側Dhhの部分にのみ複数の翼面噴出口75が形成され、チップ側Dhtの部分には翼面噴出口75が形成されていない。なお、翼面噴出口75の数は、前述の少なくとも一方の翼面52における翼高さ方向Dhの中央位置を基準にしてチップ側Dhtよりもハブ側Dhhの方が多ければ、チップ側Dhtに翼面噴出口75が形成されていてもよい。
【0044】
第二冷却空気通路80は、主通路81と、複数の後噴出孔88と、を有する。主通路81は、翼根59の底面59bで開口し、ロータ軸42からの冷却空気Acが流入可能な入口83を有する。この第二冷却空気通路80における主通路81の入口83は、第一冷却空気通路60における主通路61の入口63よりも後側Dbに形成されている。この主通路81は、入口83から翼高さ方向Dhにプラットフォーム58と翼体51との境まで延びている導入通路部82と、翼体51内で、翼高さ方向Dhに延びる3個の翼内通路86を有する翼体冷却通路部85と、を有する。
【0045】
3個の翼内通路86は、翼体51のキャンバーラインCLに沿って、導入通路部82から後側Dbに並んでいる。ここで、3個の翼内通路86のうち、最も前側Dfの翼内通路86を第四翼内通路86a、この第四翼内通路86aに隣接する翼内通路86を第五翼内通路86b、最も後側Dbの翼内通路86であって第五翼内通路86bに隣接する翼内通路86を第六翼内通路86cとする。第四翼内通路86aは、導入通路部82から翼高さ方向Dhに延びている。
【0046】
翼体冷却通路部85は、翼高さ方向Dhに通路がうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、3個の翼内通路86のうち、互に隣り合う翼内通路86が、ハブ側Dhhの端とチップ側Dhtの端とのうち、一方の端で互いに連通している。具体的に、第四翼内通路86aのチップ側Dhtの端と第五翼内通路86bのチップ側Dhtの端とが連通し、第五翼内通路86bのハブ側Dhhの端と第六翼内通路86cのハブ側Dhhの端とが連通している。
【0047】
複数の後噴出孔88は、いずれも、後縁53bで開口している後噴出口89を有する。複数の後噴出孔88は、翼高さ方向Dhに並んでいる。複数の後噴出孔88は、いずれも、第二冷却空気通路80における複数の翼内通路86のうち、最も後側Dbの第六翼内通路86c、言い換えると最後部翼内通路86cに連通し、この最後部翼内通路86cから後縁53bにまで延びている。
【0048】
なお、本実施形態の第二冷却空気通路80における翼内通路86の数は、3個であるが、2個であっても、4個以上であってもよい。また、第二冷却空気通路80における翼内通路86の数が本実施形態のように、奇数個である場合、第二冷却空気通路80は、最後部翼内通路86c(第六翼内通路86c)のチップ側Dhtの端と連通し、チップ面55で開口しているチップ抜き孔を有してもよい。さらに、第二冷却空気通路80は、複数の翼内通路86のうち、いずれかに翼内通路86に連通し、正圧面54p又は負圧面54nで開口する複数のフィルム孔を有してもよい。
【0049】
本実施形態では、第一冷却空気通路60における主通路61の入口63から主通路61内に流入した冷却空気Acが、主通路61の導入通路部62を経て、主通路61の翼体冷却通路部65内に流入する。冷却空気Acは、この翼体冷却通路部65における3個の翼内通路66内を流れる過程で、各翼内通路66周りを対流冷却する。3個の翼内通路66内を流れる冷却空気Acの一部は、複数のフィルム孔74から正圧面54p又は負圧面54nに沿って外部に噴出される。この冷却空気Acの一部は、複数のフィルム孔74内を流れる過程で、フィルム孔74周りを対流冷却する。さらに、複数のフィルム孔74から噴出された冷却空気Acは、正圧面54p又は負圧面54nをフィルム冷却する。3個の翼内通路66のうち、最も前側Dfで、冷却空気Acの流れの下流側に位置する第一翼内通路66aに流入した冷却空気Acの一部は、複数の前噴出孔72から外部に噴出される。この冷却空気Acの一部は、複数の前噴出孔72内を流れる過程で、前噴出孔72周りを対流冷却する。さらに、複数の前噴出孔72から噴出された冷却空気Acは、翼面52の一部である前縁周り部56に高温の燃焼ガスが直接衝突するのを抑制する。さらに、第一翼内通路66aに流入した冷却空気Acの残りは、チップ抜き孔71から外部に噴出される。
【0050】
本実施形態では、第二冷却空気通路80における主通路81の入口83から主通路81内に流入した冷却空気Acが、主通路81の導入通路部82を経て、主通路81の翼体冷却通路部85内に流入する。冷却空気Acは、この翼体冷却通路部85における3個の翼内通路86内を流れる過程で、各翼内通路86周りを対流冷却する。3個の翼内通路86内を流れる冷却空気Acの一部は、3個の翼内通路86のうち、最も後側Dbで、冷却空気Acの流れの下流側に位置する第六翼内通路(最後部翼内通路)86cから、複数の後噴出孔88を経て、外部に噴出される。この冷却空気Acは、複数の後噴出孔88内を流れる過程で、後噴出孔88周りを対流冷却する。さらに、複数の後噴出孔88から噴出された冷却空気Acは、後縁53bの後側Dbに燃焼ガスのウェイクが生成されるのを抑制する。
【0051】
ところで、正圧面54pと負圧面54nとの間隔である翼幅は、翼体51のチップ側Dhtからハブ側Dhhに向かうに連れて次第に大きくなる。また、翼内通路66の内面と翼面52との間隔は、翼面52を冷却する観点から、所定の範囲内の間隔である。この関係で、
図5及び
図6に示すように、翼高さ方向Dhに延びる複数の翼内通路66の幅も、翼体51のチップ側Dhtからハブ側Dhhに向かうに連れて次第に大きくなる。翼内通路66の幅が、翼体51のチップ側Dhtからハブ側Dhhに向かうに連れて次第に大きくなっていると、この翼内通路66を流れる冷却空気Acの流速は、チップ側Dhtよりもハブ側Dhhの方が低くなる。このため、翼内通路66のハブ側Dhhの部分を流れる冷却空気Acと翼体51との間の熱伝達率は、この翼内通路66のチップ側Dhtの部分を流れる冷却空気Acと翼体51との間の熱伝達率よりも低くなる。従って、翼内通路66を流れる冷却空気Acによる対流冷却効果は、翼体51のハブ側Dhhの部分で低くなる。
【0052】
そこで、本実施形態では、翼体51における前記翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、ハブ側Dhhの単位面積当たりの翼面噴出口75の面積である開口率を、チップ側Dhtの単位面積当たりの翼面噴出口75の面積である開口率より高くして、ハブ側Dhhの部分でのフィルム冷却効果を向上させて、動翼50の耐久性を高めている。
【0053】
本実施形態の翼体冷却通路部65は、3個の翼内通路66を有するため、最も前側Dfの第一翼内通路66a内では、冷却空気Acがハブ側Dhhからチップ側Dhtに向かって流れる。このため、第一翼内通路66a内のチップ側Dhtの冷却空気Acは、この第一翼内通路66a内のハブ側Dhhの冷却空気Acよりも加熱されることになる。
【0054】
そこで、本実施形態では、翼体51における翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、チップ側Dhtの単位面積当たりの前噴出口73の面積である開口率を、ハブ側Dhhの単位面積当たりの前噴出口73の面積である開口率より高くしている。この結果、本実施形態では、チップ側Dhtの前噴出口73から噴出する冷却空気Acの流量が、ハブ側Dhhの前噴出口73からの冷却空気Acの流量よりも多くなり、動翼50の耐久性を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態において、複数のフィルム孔74に流入する冷却空気Acは、3個の翼内通路66のうち、最も後側Dbの第三翼内通路66cから第二翼内通路66bの下流側部分まで流れてきた冷却空気Acで、既に、ある程度加熱された冷却空気Acである。なお、ここでの下流側とは冷却空気Acの流れの下流側である。本実施形態では、このように、ある程度加熱されて対流冷却効果が低くなった冷却空気Acをフィルム冷却用の空気として利用するため、冷たい冷却空気Acを無駄にせず、効率的に翼面52を冷却することができる。また、本実施形態において、複数の前噴出孔72に流入する冷却空気Acは、3個の翼内通路66のうち、最も後側Dbの第三翼内通路66cから第一翼内通路66aまで流れてきた冷却空気Acで、既に、かなり加熱された冷却空気Acである。本実施形態では、このように、かなり加熱されて対流冷却効果が低くなった冷却空気Acを、翼面52の一部である前縁周り部56の冷却用の空気として利用するため、冷たい冷却空気Acを無駄にせず、効率的に翼面52を冷却することができる。
【0056】
凸曲面である負圧面54nに沿って流れる燃焼ガスGの流速は、凹曲面である正圧面54pに沿って流れる燃焼ガスGの流速よりも高い。このため、負圧面54nに沿って流れる燃焼ガスGとこの負圧面54nとの間の熱伝達率は、正圧面54pに沿って流れる燃焼ガスGとこの正圧面54pとの間の熱伝達率より高い。すなわち、負圧面54nの方が正圧面54pよりも、燃焼ガスGにより加熱され易い。
【0057】
そこで、本実施形態では、翼面噴出口75を負圧面54nのみに形成し、負圧面54nをフィルム冷却して、動翼50の耐久性の向上を図る一方で、負圧面54nよりも燃焼ガスGにより加熱されにくい正圧面54pに翼面噴出口75を形成せず、冷却空気Acの使用を抑えている。
【0058】
よって、本実施形態では、冷却空気Acの使用量を抑えつつも、動翼50の耐久性を高めることができる。
【0059】
「動翼の第二実施形態」
動翼の第二実施形態について、
図7及び
図8を参照して説明する。
【0060】
本実施形態における動翼50aは、第一実施形態における動翼50と同様、翼体51と、プラットフォーム58と、第一冷却空気通路60aと、第二冷却空気通路80と、を備える。本実施形態における動翼50aで第一冷却空気通路60aの構成を除く構成は、第一実施形態における動翼50で第一冷却空気通路60の構成を除く構成と同じである。
【0061】
本実施形態における第一冷却空気通路60aも、第一実施形態における第一冷却空気通路60と同様、主通路61と、チップ抜き孔71と、複数の前噴出孔72と、複数のフィルム孔74aと、を有する。主通路61は、翼根59の底面59bで開口し、ロータ軸42からの冷却空気Acが流入可能な入口63を有する。この主通路61は、第一実施形態における第一冷却空気通路60の主通路61と同様、入口63から翼高さ方向Dhにプラットフォーム58と翼体51との境まで延びている導入通路部62と、翼体51内で、翼高さ方向Dhに延びる3個の翼内通路66を有する翼体冷却通路部65と、を有する。翼体冷却通路部65は、第一実施形態における第一冷却空気通路60の翼体冷却通路部65と同様、翼高さ方向Dhに通路がうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、3個の翼内通路66のうち、互に隣り合う翼内通路66が、ハブ側Dhhの端とチップ側Dhtの端とのうち、一方の端で互いに連通している。チップ抜き孔71は、第一実施形態における第一冷却空気通路60のチップ抜き孔71と同様、第一翼内通路66aのチップ側Dhtの端と連通し、チップ面55で開口している。複数の前噴出孔72は、第一実施形態における第一冷却空気通路60の複数の前噴出孔72と同様、いずれも、翼面52中で、前縁53fを含み且つ前側Dfを向く部分である前縁周り部56で開口している前噴出口73を有し、第一翼内通路66aと連通している。
【0062】
本実施形態における複数のフィルム孔74aも、第一実施形態における複数のフィルム孔74と同様、翼面52中で、前縁周り部56を除く負圧面54nで開口する翼面噴出口75を有する。本実施形態においても、負圧面54nにおける翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、ハブ側Dhhの部分における単位面積当たりの翼面噴出口75の面積である開口率は、チップ側Dhtの部分における単位面積当たりの翼面噴出口75の面積である開口率より高い。但し、本実施形態における複数のフィルム孔74aは、3個の翼内通路66のうち、最も前側Dfの第一翼内通路66aに連通している。
【0063】
このため、複数のフィルム孔74aに流入する冷却空気Acは、3個の翼内通路66のうち、最も後側Dbの第三翼内通路66cから第二翼内通路66bを経て第一翼内通路66aの上流側部分まで流れてきた冷却空気Acであり、既に、かなり加熱された冷却空気Acである。本実施形態では、このように、かなり加熱されて対流冷却効果が低くなった冷却空気Acをフィルム冷却用の空気として利用するため、冷たい冷却空気Acを無駄にせず、第一実施形態よりも、効率的に翼面52を冷却することができる。
【0064】
「動翼の第三実施形態」
動翼の第三実施形態について、
図9及び
図10を参照して説明する。なお、
図9は、
図3及び
図7と同様、動翼の側面図であるが、負圧面側から見た動翼の側面図ではなく、正圧面側から見た動翼の側面図である。
【0065】
本実施形態における動翼50bは、第一実施形態における動翼50と同様、翼体51と、プラットフォーム58と、第一冷却空気通路60bと、第二冷却空気通路80と、を備える。本実施形態における動翼50bで第一冷却空気通路60bの構成を除く構成は、第一実施形態における動翼50で第一冷却空気通路60の構成を除く構成と同じである。
【0066】
本実施形態における第一冷却空気通路60bも、第一実施形態における第一冷却空気通路60と同様、主通路61と、チップ抜き孔71と、複数の前噴出孔72と、複数のフィルム孔74bと、を有する。主通路61は、翼根59の底面59bで開口し、ロータ軸42からの冷却空気Acが流入可能な入口63を有する。この主通路61は、第一実施形態における第一冷却空気通路60の主通路61と同様、入口63から翼高さ方向Dhにプラットフォーム58と翼体51の境まで延びている導入通路部62と、翼体51内で、翼高さ方向Dhに延びる3個の翼内通路66を有する翼体冷却通路部65と、を有する。翼体冷却通路部65は、第一実施形態における第一冷却空気通路60の翼体冷却通路部65と同様、翼高さ方向Dhに通路がうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、3個の翼内通路66のうち、互に隣り合う翼内通路66が、ハブ側Dhhの端とチップ側Dhtの端とのうち、一方の端で互いに連通している。チップ抜き孔71は、第一実施形態における第一冷却空気通路60のチップ抜き孔71と同様、第一翼内通路66aのチップ側Dhtの端と連通し、チップ面55で開口している。複数の前噴出孔72は、第一実施形態における第一冷却空気通路60の複数の前噴出孔72と同様、いずれも、翼面52中で、前縁53fを含み且つ前側Dfを向く部分である前縁周り部56で開口している前噴出口73を有し、第一翼内通路66aと連通している。
【0067】
本実施形態における複数のフィルム孔74bは、複数の負圧側フィルム孔74bnと、複数の正圧側フィルム孔74bpと、を有する。複数の負圧側フィルム孔74bnは、翼面52中で、前縁周り部56を除く負圧面54nで開口する翼面噴出口としての負圧面噴出口75nを有する。また、複数の正圧側フィルム孔74bpは、翼面52中で、前縁周り部56を除く正圧面54pで開口する翼面噴出口としての正圧面噴出口75pを有する。負圧側フィルム孔74bnは、第一実施形態におけるフィルム孔74と同様、第二翼内通路66bに連通している。一方、正圧側フィルム孔74bpは、第一翼内通路66aに連通している。
【0068】
本実施形態においても、負圧面54nにおける翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、ハブ側Dhhの部分における単位面積当たりの負圧面噴出口75nの面積である開口率は、チップ側Dhtの部分における単位面積当たりの負圧面噴出口75nの面積である開口率より高い。また、正圧面54pにおける翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、ハブ側Dhhの部分における単位面積当たりの正圧面噴出口75pの面積である開口率は、チップ側Dhtの部分における単位面積当たりの正圧面噴出口75pの面積である開口率より高い。但し、複数の正圧側フィルム孔74bpの数は、複数の負圧側フィルム孔74bnの数より少ない。
【0069】
本実施形態では、負圧面54nのみならず正圧面54pをフィルム冷却することができる。このように、本実施形態では、負圧面54nのみならず正圧面54pをフィルム冷却する関係で、以上の各実施形態よりも冷却空気Acの使用量が増えることになる。そこで、本実施形態では、負圧面54nより燃焼ガスGで加熱されにくい正圧面54pをフィルム冷却するための正圧側フィルム孔74bpの数を、負圧側フィルム孔74bnの数より少なくしている。さらに、本実施形態では、正圧側フィルム孔74bpを第一翼内通路66aに連通して、冷たい冷却空気Acを無駄にせず、効率的に正圧面54pをフィルム冷却している。
【0070】
なお、本実施形態は、第一実施形態の変形例であるが、第二実施形態においても、本実施形態と同様、複数の負圧側フィルム孔の他に、複数の正圧側フィルム孔を設けてよい。
【0071】
「動翼のその他の変形例」
以上の各実施形態及び各変形例では、ハブ側Dhhの部分における噴出口の開口率とチップ側Dhtの部分における噴出口の開口率とを異ならせるために、ハブ側Dhhの部分における噴出口の数とチップ側Dhtの部分における噴出口の数とを異ならせている。しかしながら、ハブ側Dhhの部分における各噴出口の開口面積とチップ側Dhtの部分における各噴出口の開口面積とを異ならせることで、ハブ側Dhhの部分における噴出口の開口率とチップ側Dhtの部分における噴出口の開口率とを異ならせてもよい。
【0072】
また、以上の各実施形態は、いずれも、初段の動翼を対象にしている。しかしながら、本発明は、初段を以外の例えば第二段の動翼を対象にしてもよい。
【0073】
本開示は、以上で説明した実施形態及び変形例に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0074】
「付記」
以上の実施形態及び変形例における動翼は、例えば、以下のように把握される。
【0075】
(1)第一態様における動翼は、
断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向Dhに延びる翼体51と、前記翼高さ方向Dhにおけるチップ側Dhtとハブ側Dhhとうち、前記翼体51の前記ハブ側Dhhの端に設けられているプラットフォーム58と、前記プラットフォーム58の前記ハブ側Dhhに設けられている翼根59と、前記翼根59、前記プラットフォーム58及び前記翼体51にかけて形成され、冷却空気Acが流通可能な冷却空気通路60,60a,60bと、を備える。前記翼体51は、前記翼高さ方向Dhに対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面52と、前記翼高さ方向Dhにおける前記チップ側Dhtを向くチップ面55と、を有する。前記翼面52は、前記翼高さ方向Dhに延びる前縁53f及び後縁53bと、前記前縁53fから前記後縁53bにまで広がっている正圧面54p及び負圧面54nと、を有する。前記冷却空気通路60,60a,60bは、前記翼根59の表面で開口して冷却空気Acが流入可能な入口63を有する主通路61と、前記翼面52中で、前記前縁53fを含み且つ前記後縁53bに対して前記前縁53fの側である前側Dfを向く部分である前縁周り部56で開口している前噴出口73を有し、前記主通路61を通ってきた冷却空気Acを前記前噴出口73から噴出可能な複数の前噴出孔72と、前記翼面52中で、前記前縁周り部56を除き、且つ前記正圧面54pと前記負圧面54nとのうち少なくとも一方の翼面52で開口している翼面噴出口75,75n,75pを有し、前記主通路61を通ってきた冷却空気Acを前記翼面噴出口75,75n,75pから前記少なくとも一方の翼面52に沿って外部に噴出可能な複数のフィルム孔74,74a,74bと、を有する。前記主通路61は、前記入口63から前記プラットフォーム58と前記翼体51との境まで延びている導入通路部62と、前記翼体51内で、前記翼高さ方向Dhに延びる3以上の奇数個の翼内通路66を有する翼体冷却通路部65と、を有する。奇数個の前記翼内通路66は、前記翼体51のキャンバーラインCLに沿って、前記導入通路部62から前記前側Dfに並んでいる。前記翼体冷却通路部65が前記翼高さ方向Dhに通路がうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、奇数個の前記翼内通路66のうちで互に隣り合う翼内通路66は、前記ハブ側Dhhの端と前記チップ側Dhtの端とのうち、一方の端で互いに連通している。前記複数の前噴出孔72は、奇数個の前記翼内通路66のうちで、最も前記前側Dfの第一翼内通路66aに連通している。前記複数のフィルム孔74,74a,74bは、奇数個の前記翼内通路66のうち、前記第一翼内通路66aと、前記第一翼内通路66aに隣接する第二翼内通路66bとの少なくとも一の翼内通路66に連通している。前記翼体51における前記翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、前記ハブ側Dhhの単位面積当たりの前記翼面噴出口75,75n,75pの面積である開口率が、前記チップ側Dhtの単位面積当たりの前記翼面噴出口75,75n,75pの面積である開口率より高い。
【0076】
本態様では、冷却空気通路60,60a,60bにおける主通路61の入口63から主通路61内に流入した冷却空気Acが、主通路61の導入通路部62を経て、主通路61の翼体冷却通路部65内に流入する。冷却空気Acは、この翼体冷却通路部65における3以上の奇数個の翼内通路66内を流れる過程で、各翼内通路66周りを対流冷却する。3以上の奇数個の翼内通路66内を流れる冷却空気Acの一部は、複数のフィルム孔74,74a,74bから正圧面54p又は負圧面54nに沿って外部に噴出される。この冷却空気Acの一部は、複数のフィルム孔74,74a,74b内を流れる過程で、フィルム孔74,74a,74b周りを対流冷却する。さらに、複数のフィルム孔74,74a,74bから噴出された冷却空気Acは、正圧面54p又は負圧面54nをフィルム冷却する。3以上の奇数個の翼内通路66のうち、最も前側Dfで、冷却空気Acの流れの下流側に位置する第一翼内通路66aに流入した冷却空気Acの一部は、複数の前噴出孔72から外部に噴出される。この冷却空気Acの一部は、複数の前噴出孔72内を流れる過程で、前噴出孔72周りを対流冷却する。さらに、複数の前噴出孔72から噴出された冷却空気Acは、翼面52の一部である前縁周り部56に高温の燃焼ガスGが直接衝突するのを抑制する。
【0077】
ところで、正圧面54pと負圧面54nとの間隔である翼幅は、翼体51のチップ側Dhtからハブ側Dhhに向かうに連れて次第に大きくなる。また、翼内通路66の内面と翼面52との間隔は、翼面52を冷却する観点から、所定の範囲内の間隔である。この関係で、翼高さ方向Dhに延びる複数の翼内通路66の幅も、翼体51のチップ側Dhtからハブ側Dhhに向かうに連れて次第に大きくなる。翼内通路66の幅が、翼体51のチップ側Dhtからハブ側Dhhに向かうに連れて次第に大きくなっていると、この翼内通路66を流れる冷却空気Acの流速は、チップ側Dhtよりもハブ側Dhhの方が低くなる。このため、翼内通路66のハブ側Dhhの部分を流れる冷却空気Acと翼体51との間の熱伝達率は、この翼内通路66のチップ側Dhtの部分を流れる冷却空気Acと翼体51との間の熱伝達率よりも低くなる。従って、翼内通路66を流れる冷却空気Acによる対流冷却効果は、翼体51のハブ側Dhhの部分で低くなる。
【0078】
そこで、本態様では、翼体51における前記翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、ハブ側Dhhの単位面積当たりの翼面噴出口75,75n,75pの面積である開口率を、チップ側Dhtの単位面積当たりの翼面噴出口75,75n,75pの面積である開口率より高くして、ハブ側Dhhの部分でのフィルム冷却効果を向上させて、動翼50の耐久性を高めている。
【0079】
また、本態様において、複数のフィルム孔74,74a,74bに流入する冷却空気Acは、3以上の奇数個の翼内通路66のうち、最も後側Dbの翼内通路66から少なくとも第二翼内通路66bの下流側部分まで流れてきた冷却空気Acで、既に、ある程度加熱された冷却空気Acである。なお、ここでの下流側とは冷却空気Acの流れの下流側である。本態様では、このように、ある程度加熱されて対流冷却効果が低くなった冷却空気Acをフィルム冷却用の空気として利用するため、冷たい冷却空気Acを無駄にせず、効率的に翼面52を冷却することができる。さらに、本態様において、複数の前噴出孔72に流入する冷却空気Acは、3以上の奇数個の翼内通路66のうち、最も後側Dbの翼内通路66から第一翼内通路66aまで流れてきた冷却空気Acで、既に、かなり加熱された冷却空気Acである。なお、ここでの上流側とは冷却空気Acの流れの下流側である。本態様では、このように、かなり加熱されて対流冷却効果が低くなった冷却空気Acを、翼面52の一部である前縁周り部56の冷却用の空気として利用するため、冷たい冷却空気Acを無駄にせず、効率的に翼面52を冷却することができる。
【0080】
よって、本態様では、冷却空気Acの使用量を抑えつつも、動翼の耐久性を高めることができる。
【0081】
(2)第二態様における動翼は、
前記第一態様における動翼において、前記翼面噴出口75,75n,75pの数は、前記翼体51における前記翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして前記チップ側Dhtよりも前記ハブ側Dhhの方が多い。
【0082】
(3)第三態様における動翼は、
前記第一態様における動翼において、前記翼面噴出口75,75n,75pは、前記翼体51における前記翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして前記ハブ側Dhhにのみ存在し、前記チップ側Dhtには存在しない。
【0083】
(4)第四態様における動翼は、
前記第一態様から前記第三態様のうちのいずれか一態様における動翼において、前記複数のフィルム孔74aは、奇数個の前記翼内通路66のうち、前記第一翼内通路66aのみに連通している。
【0084】
本態様において、複数のフィルム孔74aに流入する冷却空気Acは、3以上の奇数個の翼内通路66のうち、最も後側Dbの翼内通路66から第二翼内通路66bを経て、第一翼通路部の上流側の部分まで流れてきた冷却空気Acで、既に、かなり加熱された冷却空気Acである。本態様では、このように、かなり加熱されて対流冷却効果が低くなった冷却空気Acをフィルム冷却用の空気として利用するため、冷たい冷却空気Acを無駄にせず、効率的に翼面52を冷却することができる。
【0085】
(5)第五態様における動翼は、
前記第一態様から前記第四態様のうちのいずれか一態様における動翼において、前記翼面噴出口75は、前記負圧面54nのみに形成されている。
【0086】
凸曲面である負圧面54nに沿って流れる燃焼ガスGの流速は、凹曲面である正圧面54pに沿って流れる燃焼ガスGの流速よりも高い。このため、負圧面54nに沿って流れる燃焼ガスGとこの負圧面54nとの間の熱伝達率は、正圧面54pに沿って流れる燃焼ガスGとこの正圧面54pとの間の熱伝達率より高い。すなわち、負圧面54nの方が正圧面54pよりも、燃焼ガスGにより加熱され易い。
【0087】
そこで、本態様では、翼面噴出口75を負圧面54nのみに形成し、負圧面54nをフィルム冷却して、動翼50の耐久性の向上を図る一方で、負圧面54nよりも燃焼ガスGにより加熱されにくい正圧面54pに翼面噴出口を形成せず、冷却空気Acの使用を抑えている。
【0088】
(6)第六態様における動翼は、
前記第一態様から前記第五態様のうちのいずれか一態様における動翼において、前記翼体51における前記翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、前記チップ側Dhtの単位面積当たりの前記前噴出口73の面積である開口率が、前記ハブ側Dhhの単位面積当たりの前記前噴出口73の面積である開口率より高い。
【0089】
本態様の翼体冷却通路部65は、3以上の奇数個の翼内通路66を有するため、最も前側Dfの第一翼内通路66a内では、冷却空気Acがハブ側Dhhからチップ側Dhtに向かって流れる。このため、第一翼内通路66a内のチップ側Dhtの冷却空気Acは、この第一翼内通路66a内のハブ側Dhhの冷却空気Acよりも加熱されることになる。
【0090】
そこで、本態様では、翼体51における翼高さ方向Dhの中央位置を基準にして、チップ側Dhtの単位面積当たりの前噴出口73の面積である開口率を、ハブ側Dhhの単位面積当たりの前噴出口73の面積である開口率より高くしている。この結果、本態様では、チップ側Dhtの前噴出口73から噴出する冷却空気Acの流量が、ハブ側Dhhの前噴出口73からの冷却空気Acの流量よりも多くなり、動翼50の耐久性を高めることができる。
【0091】
(7)第七態様における動翼は、
前記第一態様から前記第六態様のうちのいずれか一態様における動翼において、前記冷却空気通路60,60a,60bは、前記第一翼内通路66aの前記チップ側Dhtの端と連通し、前記第一翼内通路66a内を通ってきた冷却空気Acを前記チップ面55から噴出可能なチップ抜き孔71を有する。
【0092】
本態様の翼体冷却通路部65は、3以上の奇数個の翼内通路66を有するため、最も前側Dfの第一翼内通路66a内では、冷却空気Acがハブ側Dhhからチップ側Dhtに向かって流れる。仮に、チップ抜き孔71がない場合、第一翼内通路66a内のチップ側Dhtの部分で、冷却空気Acの流れが滞り、このチップ側Dhtの部分における対流冷却効果が低下する。そこで、本態様では、チップ抜き孔71を設けることで、第一翼内通路66a内のチップ側Dhtの部分における冷却空気Acの流れを確保し、このチップ側Dhtの部分における対流冷却効果の低下を抑えている。
【0093】
(8)第八態様における動翼は、
前記第一態様から前記第七態様のうちのいずれか一態様における動翼において、前記冷却空気通路60,60a,60bである第一冷却空気通路60,60a,60bの他に、前記翼根59、前記プラットフォーム58及び前記翼体51にかけて形成され、冷却空気Acが流通可能な第二冷却空気通路80を備える。前記第二冷却空気通路80は、前記第一冷却空気通路60,60a,60bを基準にして、前記前縁53fに対して前記後縁53bの側である後側Dbに配置され、前記翼根59の表面で開口して冷却空気Acが流入可能な入口83を有する主通路81と、前記主通路81を通ってきた冷却空気Acを、前記後縁53bから外部に噴出可能な後噴出口89を有する複数の後噴出孔88と、を有する。前記第二冷却空気通路80における前記主通路81は、前記第二冷却空気通路80における前記入口83から前記プラットフォーム58と前記翼体51の境まで延びている導入通路部82と、前記翼体51内で、前記翼高さ方向Dhに延びる複数個の翼内通路86を有する翼体冷却通路部85と、を有する。前記第二冷却空気通路80における複数個の前記翼内通路86は、前記翼体51のキャンバーラインCLに沿って、前記第二冷却空気通路80における前記導入通路部82から前記後側Dbに並んでいる。前記第二冷却空気通路80における前記翼体冷却通路部85が前記翼高さ方向Dhに通路がうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、前記第二冷却空気通路80における複数個の前記翼内通路86のうち、互に隣り合う翼内通路86は、前記ハブ側Dhhの端と前記チップ側Dhtの端とのうち、一方の端で互いに連通している。前記複数の後噴出孔88は、前記第二冷却空気通路80における複数個の前記翼内通路86のうちで、最も前記後側Dbの最後部翼内通路86cに連通している。
【0094】
本態様では、第二冷却空気通路80の複数の翼内通路86を冷却空気Acが流れる過程で、この冷却空気Acにより、各翼内通路86周りが対流冷却される。複数の翼内通路86のうち、最も後側Dbの最後部翼内通路86c内を流れる冷却空気Acの一部は、複数の後噴出孔88から外部に噴出される。この冷却空気Acの一部は、複数の後噴出孔88内を流れる過程で、後噴出孔88周りを対流冷却する。さらに、複数の後噴出孔88から噴出された冷却空気Acは、後縁53bの後側Dbに燃焼ガスGのウェイクが生成されるのを抑制する。
【0095】
以上の実施形態及び変形例におけるガスタービンは、例えば、以下のように把握される。
(9)第九態様におけるガスタービンは、
前記第一態様から前記第八態様のうちのいずれか一態様における動翼を複数備えると共に、軸線Arを中心として回転可能で、複数の前記動翼が前記軸線Arに対する周方向Dcに並んで取り付けられているロータ軸42と、複数の前記動翼及び前記ロータ軸42の外周側を覆うタービンケーシング45と、を備える。前記動翼は、前記翼高さ方向Dhが、前記軸線Arに対する径方向Drになり、前記ハブ側Dhhが前記軸線Arに対する径方向Drにおける径方向内側Driと径方向外側Droとのうちの前記径方向外側Droになり、前記前側Dfが、前記軸線Arが延びる軸線方向Daにおける軸線上流側Dauと軸線下流側Dadとのうちの前記軸線上流側Dauになるよう、前記ロータ軸42に取り付けられている。
【符号の説明】
【0096】
10:ガスタービン
11:ガスタービンロータ
14:中間ケーシング
15:ガスタービンケーシング
20:圧縮機
21:圧縮機ロータ
22:ロータ軸
23:動翼列
25:圧縮機ケーシング
26:静翼列
30:燃焼器
40:タービン
41:タービンロータ
42:ロータ軸
43:動翼列
45:タービンケーシング
49:燃焼ガス流路
50,50a,50b:動翼
51:翼体
52:翼面
53f:前縁
53b:後縁
54n:負圧面
54p:正圧面
55:チップ面
56:前縁周り部
58:プラットフォーム
59:翼根
59b:底面
60,60a,60b:第一冷却空気通路(又は単に冷却空気通路)
61:主通路
62:導入通路部
63:入口
65:翼体冷却通路部
66:翼内通路
66a:第一翼内通路
66b:第二翼内通路
66c:第三翼内通路
71:チップ抜き孔
72:前噴出孔
73:前噴出口
74,74a,74b:フィルム孔
74bn:負圧側フィルム孔
74bp:正圧側フィルム孔
75:翼面噴出口
75n:負圧面噴出口(翼面噴出口)
75p:正圧面噴出口(翼面噴出口)
80:第二冷却空気通路
81:主通路
82:導入通路部
83:入口
85:翼体冷却通路部
86:翼内通路
86a:第四翼内通路
86b:第五翼内通路
86c:第六翼内通路(最後部翼内通路)
88:後噴出孔
89:後噴出口
A:空気
Ac:冷却空気
F:燃料
G:燃焼ガス
Ar:軸線
CL:キャンバーライン
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
Dh:翼高さ方向
Dhh:ハブ側
Dht:チップ側
Df:前側
Db:後側