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  • 特開-はんだ付け装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183115
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】はんだ付け装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 31/02 20060101AFI20231220BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20231220BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B23K31/02 310A
H05K3/34 507H
B23K1/00 330E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096563
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】滝下 裕基
(72)【発明者】
【氏名】江草 稔
(72)【発明者】
【氏名】中島 泰
(72)【発明者】
【氏名】浅地 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】勅使河原 一成
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA01
5E319AB05
5E319BB02
5E319CC36
5E319CD21
5E319GG03
5E319GG07
5E319GG15
(57)【要約】
【課題】はんだ内のボイドの体積を低減可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】はんだ付け装置は、はんだが設けられた加工対象物をはんだ付けする。はんだ付け装置は、チャンバーと、加圧冷却部とを備える。チャンバーは、はんだが溶融された加工対象物の周囲を気密封止する。加圧冷却部は、チャンバーの内部を大気圧よりも高い圧力で加圧することによって、はんだ内のボイドの体積を低減し、かつ、チャンバー内のはんだを冷却して凝固させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだが溶融された加工対象物の周囲を気密封止するチャンバーと、
前記チャンバーの内部を大気圧よりも高い圧力で加圧し、かつ、前記チャンバー内の前記はんだを冷却して凝固させる加圧冷却部と
を備える、はんだ付け装置。
【請求項2】
請求項1に記載のはんだ付け装置であって、
前記加圧冷却部は、
前記チャンバーの前記内部を加圧し、かつ、前記はんだを冷却するガスを導入するガス導入部を含む、はんだ付け装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のはんだ付け装置であって、
前記チャンバーの前記内部と第1開閉バルブを介して接続された高圧用逆流防止弁と、
前記チャンバーの前記内部と第2開閉バルブを介して接続された常圧用逆流防止弁と
をさらに備える、はんだ付け装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のはんだ付け装置であって、
前記加圧冷却部は、
前記チャンバーの前記内部に設けられたガス循環機構を含む、はんだ付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、はんだ付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばチップと基板との間、または、基板とベースとの間などの面接合に、はんだが用いられることが多い。しかしながら、例えばフラックスなどに含まれるガスなどによって、はんだ内に気泡などのボイドが存在することが知られている。このボイドが、基準を超える大きさであれば、一定品質を満たさないという理由で加工対象物の廃棄ロスが発生したり、X線検査の手間が発生したりするという問題がある。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1には、加工対象物の周囲を減圧することによって、はんだ内のボイドを膨張させてはんだ外に排出させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-154785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術によってもはんだ内にボイドが残存する場合がある。このような場合に、加工対象物の周囲が減圧された状態ではんだが凝固すると、ボイドが減圧によって大きくなった状態ではんだに残存してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本開示は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、はんだ内のボイドの体積を低減可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るはんだ付け装置は、はんだが溶融された加工対象物の周囲を気密封止するチャンバーと、前記チャンバーの内部を大気圧よりも高い圧力で加圧し、かつ、前記チャンバー内の前記はんだを冷却して凝固させる加圧冷却部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、チャンバーの内部を大気圧よりも高い圧力で加圧し、かつ、チャンバー内のはんだを冷却して凝固させる。このような構成によれば、はんだ内のボイドの体積を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るはんだ付け装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2】実施の形態1に係るワークの一例を示す側面図である。
図3】実施の形態2に係るはんだ付け装置の構成を模式的に示す断面図である。
図4】実施の形態3に係るはんだ付け装置の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の各実施の形態で説明される特徴は例示であり、すべての特徴は必ずしも必須ではない。また、以下に示される説明では、複数の実施の形態において同様の構成要素には同じまたは類似する符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「表」または「裏」などの特定の位置及び方向は、実際の実施時の位置及び方向とは必ず一致しなくてもよい。
【0011】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1に係るはんだ付け装置51の構成を模式的に示す断面図である。以下の説明では、はんだ付け装置51がトンネル型のリフロー炉を有する装置について説明するが、これに限ったものではない。はんだ付け装置51は、以下と同様の作用を実現できるのであれば、例えばバッチ式や固定式で処理可能な装置などであってもよい。
【0012】
図1のはんだ付け装置51は、ワーク1の加工としてはんだ付けを行う。はんだ付け装置51は、ベルト3と、トンネル4と、熱源部5と、ファン6と、チャンバー7a,7b,10a,10bと、チャンバー駆動部7c,10cと、減圧部8,12と、ガス導入部9,11とを備える。
【0013】
図2は、ワーク1の一例を示す側面図である。ワーク1は、はんだ43が設けられた加工対象物である。図2の例では、ワーク1は、半導体素子41と、被接合部42と、はんだ43と、突起44aを有する熱交換用のピンフィン44とを備える。はんだ付け装置51に投入される前のワーク1では、はんだ43は、半導体素子41と、被接合部42とを接合していない。
【0014】
図1に示すように、ワーク1は、パレット2に搭載され、パレット2は、ベルト3上に搭載されてトンネル4内を搬送される。トンネル4内の雰囲気は、概ね窒素雰囲気である。
【0015】
図1のはんだ付け装置51は、ワーク1にステップ状の処理を行う。すなわち、ワーク1は一回当たり決められた距離ずつ搬送され、かつ、搬送先の領域で予め定められた処理がワーク1に行われる。はんだ付け装置51は、ワーク1のはんだ43に予熱、溶融及び冷却の処理を行う。このため、トンネル4内には、少なくとも3つの領域が設けられる。
【0016】
図1の例では、トンネル4内に6つの領域(第1~第6領域4a~4f)が設けられている。第1~第3領域4a~4cで予熱の処理が行われ、第4領域4dで溶融の処理が行われ、第5及び第6領域4e,4fで冷却の処理が行われることによって、ワーク1のはんだ付けが行われる。なお、トンネル4内には、6つの領域に限ったものではなく、少なくとも3つの領域が設けられればよい。各々の領域は、ワーク1の通過部分を除いて隔壁で分離されている。なお、複数のワーク1が、はんだ付け装置51に順次投入されて並行的に処理されてもよい。
【0017】
次に、第1~第6領域4a~4fについて説明する。
【0018】
第1~第3領域4a~4cのそれぞれには、熱源部5及びファン6が設けられており、熱源部5及びファン6は、各領域内が所定の温度となるように熱風を循環する。図1の下側の図は、ワーク1の温度変化の例を示す。第1領域4a及び第2領域4bでは、ワーク1は、はんだ43の融点未満の温度まで段階的に加熱される。第3領域4cでは、はんだ付けの品質を高めるために、ワーク1全体の温度が、はんだ43の融点未満の温度で均一化される。第3領域4cは、熱容量の小さいワーク1に対しては省略可能である。
【0019】
第4領域4dには、チャンバー7a,7bと、チャンバー駆動部7cと、減圧部8と、ガス導入部9とが設けられている。チャンバー7a,7bは、チャンバー駆動部7cの駆動によってパレット2と着脱可能に移動し、パレット2を挟み込んでワーク1の周囲を気密封止する。図示しないが、例えば、ゴム状のシール部をチャンバー7a,7bの合わせ面に設けると、気密性を高めることができる。
【0020】
ワーク1がチャンバー7a,7bによって気密封止された状態で、ガス導入部9は、窒素などのガスを供給し、減圧部8は、チャンバー7a,7bの内部を大気圧よりも低くする。ガス導入部9から供給されるガスの温度は、はんだ43の融点よりも高いことが好ましく、その最低温度は、ガス導入によってはんだ43が凝固しない温度である。
【0021】
このような第4領域4dでは、チャンバー7a,7bの内部が減圧された状態で、ワーク1ははんだ43の融点以上に加熱される。これにより、ワーク1に設けられたはんだ43は溶融し、はんだ43内のボイドが膨張してはんだ43外に排出される。
【0022】
第5領域4eには、チャンバー10a,10bと、チャンバー駆動部10cと、ガスノズルなどのガス導入部11と、減圧部12とが設けられている。チャンバー10a,10bは、チャンバー駆動部10cの駆動によってパレット2と着脱可能に移動し、パレット2を挟み込む。これにより、チャンバー10a,10bは、第4領域4dではんだ43が溶融されたワーク1の周囲を気密封止する。図示しないが、例えば、ゴム状のシール部をチャンバー10a,10bの合わせ面に設けると、気密性を高めることができる。
【0023】
はんだ43が溶融され、かつ、ワーク1がチャンバー10a,10bによって気密封止された状態で、ガス導入部11は、チャンバー10a,10bの内部を加圧し、かつ、はんだ43を融点より低い温度に冷却する窒素などのガスを導入する。これにより、ガス導入部11は、チャンバー10a,10bの内部を大気圧よりも高い圧力で加圧し、かつ、チャンバー10a,10b内のはんだ43を冷却して凝固させる。なお、ガス導入部11から供給される加圧用のガスと、ガス導入部11から供給される冷却用のガスとは互いに異なってもよい。減圧部12は、チャンバー10a,10bの内部の圧力が高くなり過ぎないようにするために設けられる。
【0024】
第6領域4fには、第1領域4aなどと同様にファン6が設けられており、ファン6は、第6領域4f内が比較的低い所定の温度となるように冷却風によって調節する。
【0025】
<実施の形態1のまとめ>
以上のような本実施の形態1に係るはんだ付け装置51によれば、チャンバー10a,10bの内部を大気圧よりも高い圧力で加圧し、かつ、チャンバー10a,10b内のはんだ43を冷却して凝固させる。ボイドの体積は圧力が大きくなるほど小さくなるため、このような構成によれば、ボイドの体積が小さい状態ではんだ43を凝固することができる。これにより、はんだ43の凝固によって形成されるはんだ層内のボイドの体積を低減することができる。
【0026】
なお、はんだ43にペーストはんだを用い、はんだ付け後にペーストに含まれていたフラックスを図示しない洗浄設備で洗浄して除去れば、良好な品質の製品を得ることができる。
【0027】
<実施の形態2>
図3は、本実施の形態2に係るはんだ付け装置51のチャンバー10a,10bの構成を模式的に示す断面図である。図3に示すように、はんだ付け装置51は、可変的に逆流防止の圧力を変更できる機構として、第1開閉バルブ20と、高圧用逆流防止弁21と、第2開閉バルブ22と、常圧用逆流防止弁23とを備える。
【0028】
常圧よりも高い圧力に調整可能な高圧用逆流防止弁21は、チャンバー10a,10bの内部と第1開閉バルブ20を介して接続されている。常圧に調整可能な常圧用逆流防止弁23は、チャンバー10a,10bの内部と第2開閉バルブ22を介して接続されている。第1開閉バルブ20及び第2開閉バルブ22が、高圧用逆流防止弁21及び常圧用逆流防止弁23をチャンバー10a,10bに選択的に接続することによって、可変的に逆流防止の圧力を変更できる機構が実現される。
【0029】
ここで一般的に、ガス導入部11からのガス流量を大きくしないと、はんだを高速に冷却ができず、はんだ層に引け巣が生じる原因となる。このため、ガスの流量を大きくするには、チャンバー10a,10bの内部にガスを送り込むだけでなく、ワーク1と熱交換したガスを排出して低温のガスを次々に導入することが有効である。その一方で、第6領域4fにワーク1を搬送するために、第5領域4eでチャンバー10a,10bを開放するためには、チャンバー10a,10bの内圧は大気圧と同等にすることが好ましい。
【0030】
<実施の形態2のまとめ>
そこで本実施の形態2では、冷却時には、第2開閉バルブ22を閉じ、第1開閉バルブ20を開いて高圧用逆流防止弁21を用いる。これにより、ガス導入部11から高圧でガスを導入しつつ、高圧でガスを排出することができるので、はんだ層の引け巣を低減することができる。一方、ワーク1及びパレット2の排出の際には、第1開閉バルブ20を閉じ、第2開閉バルブ22を開いて常圧用逆流防止弁23を用いる。これにより、高圧から常圧に戻すためのチャンバー10a,10bの内部のガスの排出が実施され、チャンバー10a,10bの内部の圧力を常圧に戻すことができる。
【0031】
なお、高圧用逆流防止弁21の外側に排出されてきたガスの温度を、熱交換手段を用いて下げ、当該ガスをガス導入部11に送り込んで再使用してもよい。このような構成によれば、使用するガスの量を減らすことができる。一方、高圧用逆流防止弁21の外側に排出されてきたガスを単純に放出した場合は、はんだ付け装置51全体の小型化が可能となる。
【0032】
<実施の形態3>
図4は、本実施の形態3に係るはんだ付け装置51の構成を模式的に示す断面図である。図4の構成は、第5領域4eを除けば図1の構成と同様である。
【0033】
はんだ付け装置51は、図4の第5領域4eにおいて、チャンバー10a,10bの内部に設けられたガス循環機構30を備える。このような構成によれば、冷却時に冷却用のガスを導入しつつ、ガス循環機構30を動作させることで、ワーク1に対する冷却能力を高めることができる。図4の例では、ガス循環機構30はファンであるが、これに限ったものではない。
【0034】
ここで一般的に、一定体積の容器内のガスの圧力が増大した場合には、容器内の温度が上昇する。このため、ガス導入部11から低温のガスをチャンバー10a,10bに導入しても、チャンバー10a,10b内を加圧すると、低温ガスによる冷却能力が弱められる傾向にある。また、図2のように突起44aが設けられたワーク1は、パレット2及び治具類とほとんど接触させることができないので、はんだ43を冷却することが困難である。
【0035】
<実施の形態3のまとめ>
これに対して本実施の形態3では、ガス循環機構30によって、冷却風をワーク1に吹き付けることができるので、効率的に温度を低減でき、はんだ層の引け巣を低減することができる。特に、図2のように突起44aが設けられたワーク1では、冷却風が当てられる面積が大きいので、はんだ43の温度を効率よく下げることができ、はんだ層の引け巣を低減することができる。
【0036】
<変形例>
実施の形態1では、チャンバー10a,10bの内部を大気圧よりも高い圧力で加圧し、かつ、チャンバー10a,10b内のはんだ43を冷却して凝固させる加圧冷却部は、ガス導入部11であるものとして説明したが、これに限ったものではない。例えば、加圧冷却部は、チャンバー10a,10bの気密封止を維持したまま、チャンバー10a,10bをパレット2に押し付けることにより加圧し、かつ、実施の形態3のガス循環機構30で冷却する構成であってもよい。
【0037】
なお、各実施の形態及び各変形例を自由に組み合わせたり、各実施の形態及び各変形例を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0038】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0039】
(付記1)
はんだが溶融された加工対象物の周囲を気密封止するチャンバーと、
前記チャンバーの内部を大気圧よりも高い圧力で加圧し、かつ、前記チャンバー内の前記はんだを冷却して凝固させる加圧冷却部と
を備える、はんだ付け装置。
【0040】
(付記2)
前記加圧冷却部は、
前記チャンバーの前記内部を加圧し、かつ、前記はんだを冷却するガスを導入するガス導入部を含む、付記1に記載のはんだ付け装置。
【0041】
(付記3)
前記チャンバーの前記内部と第1開閉バルブを介して接続された高圧用逆流防止弁と、
前記チャンバーの前記内部と第2開閉バルブを介して接続された常圧用逆流防止弁と
をさらに備える、付記1または付記2に記載のはんだ付け装置。
【0042】
(付記4)
前記加圧冷却部は、
前記チャンバーの前記内部に設けられたガス循環機構を含む、付記1から付記3のうちのいずれか1項に記載のはんだ付け装置。
【符号の説明】
【0043】
1 ワーク、10a,10b チャンバー、11 ガス導入部、20 第1開閉バルブ、21 高圧用逆流防止弁、22 第2開閉バルブ、23 常圧用逆流防止弁、30 ガス循環機構、43 はんだ、51 はんだ付け装置。
図1
図2
図3
図4